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Deserted House

古寂れた居室

人通りもない寂れた通り。
元は住宅街だっただろう家々は古く、中でも一等朽ちた家が建つ。
ところどころ補修の跡があるその家は大きく、元は立派な屋敷だったことが窺える。
けれど、草木が伸び放題の庭に一部欠け落ちた壁、取手の外れた扉からは最早威容の一片も感じられないだろう。

人の気配は感じられず、物音も聞こえない。
扉は最早鍵もないのかプラプラと揺れている。

その奥に見えるのは居室だろうか。
古寂れた絨毯は虫食いで、置いて行かれたドレッサーに付いているのは割れた鏡。

人が寄りつくことは殆どないだろう。

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…………

(扉に手をかけようとして、少し、止まる)


………………………………

(そう、ここで止まってしまえば。ジェック様に借りを作ったと、助けて頂いた命と。いくらでも…生きる大義名分にできる)

…………

(泣いた気持ちの中には、確かにあった。
「生きたい」って気持ちが。
「死にたくない」って渇望が。
「誰かと共に歩みたい」って願いが。
それを許さないのは、自分自身だから、ここで止まってしまえと、強く頭の中で鳴り響く)


………っ

(腕が震える。足が、重くなる。扉を開けてしまえば、きっともう、戻れない。もう二度と、陽のあたる場所を…望むことは、できないのだ)

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