PandoraPartyProject

ギルドスレッド

惑いの花酒亭

【酒場/RP-テーブル席】

合縁奇縁、とはどこのウォーカーから聞いた言葉だったろうか。

二度、依頼を共にする機会を経て個人的な興味が湧いた。
きつく弦を張った、うつくしい銀の弓矢のようなヒトだと思う。
爪弾けばどんな音を響かせるのか、その鏃は何処へ向いているのか。
聊か性質の悪い好奇心は尽きない。

花灯りの下、とびきりの香酒を一瓶。
黒豹が一匹、尾を揺らしながら白銀のおとないを待っていた。

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お呼びした方とのスレッドです。
カウンターから少し離れた酒場のテーブル席。
窓際、月が見えている。

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(黒い夜空に白く眠たげな半月が浮かんでいる。硝子の窓越し、それを肴に黒豹が酒を舐めている。透明なグラスに薄紅の酒が月明りに光っていた。テーブルに置かれた酒瓶にはこの時期見頃の可憐な花が揺蕩っている) (カウンターから離れたその席は不思議と静けさが満ちているようだった)
(漆黒の天鵞絨に半月がぼんやりと浮かぶ。星屑の瞬きも朧気な、そんな夜だった。春霞を薄く纏った空気は心地好く、夜と月を好む吸血鬼の足取りも心無しか常より軽い。然れど、目深に被ったフードと黒衣、背を丸めて前屈みに歩く癖…更には覗く目付きの鋭利さからーー見る者によっては、影がそろりと妖しく夜道を這っている様な不気味な印象を与えて来た。果たして、彼女の月を彷彿とさせる黄金の双眸には如何様に映るだろうか。
彼女も、宵闇がとても似合う。例えるならばーー今宵の様な、影を溶かした様な漆黒に月が浮かぶ夜。夜を体現した様な存在であろう。そんな彼女の言に従い…鼻腔を擽る仄かに甘い花の香りを頼りに、件の店を見付けだす。顔を上げれば、ヘテロクロミアに映る幻燈の如き花の洋灯。)
……花の香り。此処か。
よう、待たせたなァ。1杯引っ掛けるって約束、忘れちゃいねぇぜ。
(店に足を踏み入れれば…彼女も依頼で目にしたであろう、黒衣の上に羽織った緋色の外套ーー目深に被ったフードを下ろし。店内をぐるりと一度見回せば揺れる黒豹の尾を見付ける。微かに口角を緩やかに吊り上げれば、真っ直ぐに窓際のテーブル席へと歩みを進めるだろう。嵌め込まれた硝子窓からは丁度月が顔を覗かせるーー己好みの席だった。)
(闇夜に血の色が混じったように見えた。ゆっくりと瞬きをした金目が窓越し、待ち人を見付けて僅かに笑みを浮かべる。ドアを潜ってきた姿にゆらりと手を振って存在を示した)
先に飲んでたの、気にしないで。良い月夜ね。
(向かいの椅子を勧めながらもう一つのグラスに己と同じ薄紅の酒を注ぐ。酒精に浸され僅かに透明度を増した花弁が一枚くるりとグラスの中に躍った)

今夜は無事に辿り着けたみたいで安心したわ、この辺りは本当に入り組んでるもの。
(グラスを差し出し、己のそれも掲げた。乾杯を強請る仕草)
嗚呼、良い夜だ。
月と酒。で、目の前にゃ良い女ーー最高じゃねぇか。
(促されるが侭に彼女の向かい側の席へ腰を下ろす。外套がふわりと広がった刹那。己の身体に染み付いて離れない鉄錆ーー死の香りもまた、ほんの微かに漂うだろう。「ありがとさん」と礼を告げるのも忘れずに…くつくつと喉を鳴らしては双眸を愉しげに細めて見せた。乾杯に応じてグラスを合わせた高音は酒場の喧騒の中でも微かな余韻を残す様に響いては空気に溶けて消える。そして、グラスに注がれた可憐な薄紅を一口。)
前は迷っちまったからなァ。
にしても…良い酒だ。この花弁は…今の時期、咲く花か?
(喉を流れる液体。鼻腔を擽るのは花を漬け込んだ酒精特有の心地好い芳香だ。浮かぶ花弁はーー春先に咲き誇る薄桃色の花だろうか。視線は自然と薄紅へ浮かぶ花弁へと向けられる。)
んふ、お上手ね。
(咽喉を鳴らすように笑ってゆったりと尾を揺らした。鼻先を擽る嗅ぎ慣れた鉄錆臭さを気にした様子もなくグラスを重ねた。薄紅が揺れる)
花の香はイイ道標だったでしょう?迷う人にはそう教えてるのよ。
――ふふ、綺麗な色してるでしょ?サクラよ。
今夜飲むならこのお酒が良いと思っていたの、気に入ったなら何よりだわ。
(月を肴に花を飲む、中々洒落ているでしょうと黒豹は笑った)
もっともアナタには薔薇のお酒を用意しようかとも思ったわ、血のように真っ赤な薔薇の。
そういうのはお好きかしら?
ククク…少なくとも、俺より全然良い女だと思うぜ?
ーー何よりも肝が据わってる。慣れてるだろ、荒事に。
(己が血の匂いを纏うのは…夜を生きる化け物ーー吸血鬼だから。然れど死を彷彿とさせる香りを目の前にして尚動じないのは、彼女が手練れと言う何よりもの証拠だ。揺らめく薄紅の水面から視線を外せば、身長差と猫背故に彼女の月色の眸を僅かに見上げる形となる。蒼と金のヘテロクロミアをつぅと細めゆったりと言の葉を列ねて。依頼での僅かな邂逅なれど、洗練された彼女の所作には目を奪われたのだ。)
ああ、今度は迷わずに来れたからなァ。花の香を纏う酒場…だから、惑いの花酒亭か?
桜は色も香りも可憐で優しいよな。花のリキュールとは洒落てるなァ。
(まるで水中を漂う様に酒精をゆらゆらと揺らめく桜花…薄紅のリキュールは口当たりも良く、心地好い酔いに身を任せる様に更に一口煽る。)
真っ赤な薔薇は好きだぜ。ああーー本物の血液でも、無論。
(徐にワントーン声色を落とせば、鋭利な牙を覗かせながら獰猛に笑う。からかっている証拠に二つの瞳は何処か愉しげだ。)
いやァね、荒事に関しては負けるわ。
そんなに――たっぷり薫るくらいに色々漂わせてるアナタに比べたらね。
(蒼金を見返し微笑む。ただの傭兵なだけよ、と謡うように告げながら花弁ごと一息に香酒を飲み干した。ふ、と零す吐息も薄紅に染まるよう)
そうよ、花の香に惑わされる物好き御用達の酒場。色々なお酒が取り揃えてあるけどここは花酒が一番美味しいわ。
(鉄錆と入り混じる芳香は複雑さを増し、ゆったりと月の窓辺に揺蕩っている。その最中に落とされる冗句にくつくつと咽喉を震わせて笑った)
ふふ、ごめんなさいね。でもやっぱり新鮮な血はアナタの糧になるのかしら?
随分と匂いを振りまいているんだもの、気になってしまうわ。ほんと、ウォーカーって不思議な存在ばかりなんだもの。
(手酌で自分のグラスに酒を注ぐ。また花の香が強く漂った)
ははは…何の事だァ?俺はしがない藪医者に過ぎないンだがな。
しっかし、傭兵か。鼻も利くみてぇだし色んな意味で敵には回したくねぇよ、アンタは。
(藪では無い、元は本当にただのヒトで善良な医者だった。黒豹の彼女は聡い。軽く両肩を竦めてみせた吸血鬼は真実と嘘を混ぜ込んだ曖昧な答えを返しては煙に巻こうとするだろう。グラスを煽り、紅色の酒精を飲み干しては紅い舌で己の薄い唇を舐める。)
俺も花の香りに惑わされた物好きの一人って訳だ。
花を見るのは好きだったが、こうやって酒として呑んでも美味いとはなァ。
(一杯だけのつもりがーー花の香の誘惑は理性も溶かすらしい。空になったグラスに薄紅を注げば、また花弁が液体を漂うだろう。差し込む月明かりが薄い影を落として、目の前の彼女の蠱惑的な魅力を更に引き出しているようだ。彼女のグラスが空になれば然り気無く酒を継ぎ足すだろう。)
ああ、本来の主食は血液だ。なンなら提供してくれたって良いんだぜ?
俺はヒト寄りだが…中にはすげぇのもゴロゴロ居るよな。
(己への評価には咽喉を鳴らして笑った。光栄だわ、とグラスを掲げて礼を述べる)
あらあら、お医者様にしては物騒な目をしてらっしゃること。
ここの花酒もその険を削ぐには少し甘すぎるみたいだし、もう少し強いお酒を用意しておくべきだったかしらね。
(それでも夜は長いのだ。杯を重ねるごとに解ける口もあるだろうと金目の黒豹は舌に触れる花弁を噛み砕く。酒を注がれれば礼を言ってグラスを傾けた)
ご馳走してあげたいのは山々だけど、アナタのお口に合うかしら?火酒のようにその咽喉を焼くかもしれないわよ。
ちなみにお好みの味なんてあるのかしら?
(酒に濡れる唇を指先で撫で、からかうように笑みを向ける。先に理性を溶かすのはどちらか、いっそ楽しんでいるかのように)
同じ獣種かと思えば違うヒトが居たり、そもそもヒトかも分からないモノが居たり。ウォーカーって飽きないわよね、そこが好きよ。
アナタは元々どんな世界に居たの?
ククク…医者に過ぎんが、裏社会に携わっていりゃ自然と荒んだ眼にもなるさ。
上等な酒は大歓迎だぜ。だが…素敵なお嬢さんの魅力にやられねぇように気を付けねぇとなァ。
(グラスへ薄紅を注ぎ、ボトルを再びテーブルへと置く一連の所作は…粗野な口調とは対照的に優雅さを心掛け。花弁を食らう彼女の仕草は獲物を狙う猫の様だ。己もグラスへ再び口付ければ薄紅の芳香を楽しむ様に口に含んだ酒を舌先で転がしてじっくりと味わう。)
ああ、喉が焼かれようが美味いのが味わえるンなら後悔はねぇなァ。
好みの味はーー敢えて挙げるとすれば複雑な味わい。血はそいつの生き様が出るモンだと思ってる。
(くつくつと喉を鳴らして笑う。血は生命の根源。“美食家”では無いがーー複雑な味わいから伝わる、その生き様を己は好ましく思うのだろう。)
俺の知り合いの旅人には“魔剣”が居るぜ。
俺の居た世界は…そうだなぁ。混沌で言うなら、何れ練達の様に科学技術が発展するだろうが、途上と言うか。街並みは幻想に近いな。その中にーー裏で異形や魔術が密やかに存在している感じだ。廃れゆく魔術と発展する科学、今思えば時代の過渡期に居たのかもしれんなァ。
そういうお仕事にとってはその眼も箔になるんじゃなぁい?
悪いヒト、私に酔ってくれる気もないくせに。
(私以上の人誑しだわ、と笑いながら肩を竦めてみせた)
(後悔はない、と。その一言に目を細めれば左手、薬指を口元へと引き寄せる。尖った犬歯で殊更ゆっくりとその指先に血を滲ませてみせて。見せつけるように伸ばした指先は相手のグラス上へ)
では――どうぞ、召し上がれ。
アナタの舌を満足させられる味であれば僥倖なのだけど。
(薄紅の酒へ赤い血が滴り落ちる。花酒の湖面を5回ほど揺らした血の滴はじわりと酒に混じり馴染んだ。味わってみれば何てことはない、ただの血だ)
(引き戻した指先を舐める仕草は少し獣染みていたかもしれないけれど)

魔剣?あら、それってこの間の戦尽剣みたいね。
――…聞くだに不思議よね、旅人の世界って。私そういうお話が好きでよく旅人には聞くんだけどいつも少しずつ違うのよ。似ている世界もあれば全く想像のつかない世界もあるし。レイチェルの世界はまだ理解が及ぶ方かしら。こちらに来てから何か苦労はないの?
ま、確かに…ひょろっこい医者よりは舐められる事は少ないかもなァ。
善人か悪人かなら確実に後者だろうさ。つれねぇのはリノもだろ?お互い様だと思うぜ。
(両腕を組み昔日に思いを馳せる様に一度双眸を伏せれば、金と蒼の瞳を縁取る睫毛がほんの少し揺れて。軈て両の口角を吊り上げ、からかう様に笑みを深める。お互いの腹を探る様な…緊張感漂うこのやり取りが好ましい。)
(吸血鬼としての性か…すらりとした指から目が離せず、白い喉がコクリと小さく鳴る。行儀良く振る舞えども所詮は餓えた獣に過ぎないーー故に、瞬きも忘れて見開かれた金と蒼。縦に開いた瞳孔は異形のそれだ。)
嗚呼ーー血は…ヒトの生き血は、久しい。甘美で妖しい、“華の香”だ。
(薄紅を喉へ流し込めば久方振りの“食事”に身体が震えた。趣向品では無い、本来糧にすべき物。名残惜しいとばかりに空のグラスを一瞥した後、ヘテロクロミアは彼女の長い指を追う。然れどーー『そちらを舐めたい』と本音を洩らす程、品位を捨て去ってはいない。ふ、と小さな吐息を漏らせば彼女の長い指から視線を外すのだった。)

戦尽剣の時は足引っ張っちまって悪かったなァ。俺とした事が、若人に遅れを取っちまった。
旅人の世界はどいつもバラバラだよな。俺の世界と兄弟なんじゃねぇかって位、似てる所もあるかもしれん。
苦労は……向こうの世界でもそうだったが、食料問題と強い日差し対策か?
(緊張感をまるで気にもしないような、そんなヒトを食ったような笑みを浮かべ黒豹はそうね、と頷いた。お互い様、確かにその通りだ。だってこの空気こそを楽しんでいるのだから)
(指の傷を舐めながら彼女の口へ消えていく血酒を眺める。お気に召したようだと判れば満足げに微笑んでみせた)
獣の血でごめんなさいね、でもお口に合ったようで何よりだわ。そうね、お近付きの印というところかしら?
――…今後、仕事でまたかち合うことがあるかもしれないもの。アナタとは仲良くしておきたいし。
(そんな打算を隠すことなく指先を唇から離す。蒼金の目が僅かにその動きを追っていたのを分かった上でひらりとその手を揺らしてみせた。見せつけるよう、に)
また機会があったらご馳走してあげたいわ、次は『原液』をね。

あら、私はとっても楽しめたわよ。そして依頼は無事完遂された、それだけで十分じゃなぁい?それに作戦は一緒に立てたんだもの、連帯責任よ。とても良い戦いだったわ。
(お相手も強かったわよねぇ、とつい先日の不可思議な剣を巡る依頼を脳裏へ思い浮かべる。あの背筋が凍るほどに甘美な一時は忘れられないとでも言うかのようにうっとりと呟きを零して)
普通のお食事じゃダメなのかしら、ブラッドソーセージが美味しいお店なら知ってるわよ。
陽射しについてはどうしようもないわよねぇ、やっぱり灰になってしまうの?
(にんにくや十字架はお嫌い?とからかって笑う)
……少なくとも、俺の方が浅ましいケダモノだと思うぜ?他の生き物の血を糧にするんだから。
(ひらりひらりと舞う手と…その度に己の鼻腔を擽る芳しい血の香り。首輪を着けて飼い慣らした本能を宥めるように、きゅっと眉根を寄せれば顔を右手で覆って。欲望を振り払うべく数度かぶりを振った。)
ククク…お楽しみは又今度って奴か。黒豹のお嬢さんは中々に吸血鬼の扱いが上手だなァ。
ーーああ、次が待ち遠しい。
(程好く回った花酒のアルコール。小さく喉を鳴らして余裕を繕えば、口許に笑みを浮かべるもーーその眼はぎらぎらと獰猛な輝きを孕み、甘い囁きを落とす。空のグラスへ薄紅の液体を注げば、渇きを誤魔化すように喉へ流し込み。)

ま、楽しかったのは事実だぜ。なぁに、単なる負けず嫌いだな。
しっかし…若人は良いねぇ、この目ン玉が焼けるンじゃねぇかって位に眩しかったさ。
(純粋で真っ直ぐな在り方は、まるで網膜を焼くような光だ。年を経て、ヒトを止めて、喪ったモノ。色の抜けた銀灰の髪と同じく、グラスへと落とした聲に年齢以上の老いを滲ませよう。)
普通の食事は…ヒトで言うと菓子とか茶とかそんな感じだ。必須栄養素が足りない、所謂嗜好品って奴だなァ。ブラッドソーセージは嫌いじゃないぜ。
…元の世界じゃ、日光で皮膚が焼け爛れたな。此方じゃ浴び過ぎると気分わりぃ程度で済んでるが。
俺は然程信心深くねぇからか、十字架やニンニクは平気。
(弾むようなからかいの声に愉快だとばかりに悪乗りするのがこの吸血鬼だ。牙をわざとちらつかせながらからからと笑えば、カウンターのマスターへと目配せし。)
あ、そうだ。リノが好きな食いもんはあるのか?
血を糧にする生き物なんてごまんといるわよ、気に病むようならお食事の前にお祈りなんてしてみたら?神様今日も糧をありがとうございます、ってね。
(少しは気分が晴れるかもしれないわよ、と肩を竦めてみせた)
んふ、処世術みたいなものよ。生意気な小娘の拙い駆け引きと思ってちょうだい。
(刺さるほどに鋭い視線を、まるで柔らかな羽で擽られているような笑みで受ける。瓶にたっぷり満たされていた薄紅ももうすぐ干されてしまいそうだ)

ほんと、ステキなお二人だったわ。あぁいうのってスキよ、火傷しそうに熱くて。――アナタも同じくらいにステキ。やっぱり強いヒトって良いわ、ゾクゾクしちゃう。
(響く声色の陰りと深みに益々楽しげに唇を歪ませる。月明りに照らされる顔はどこか太陽を見た後のような、そんな顔をしていたようで。この吸血鬼も太陽に焦がれることがあるのだろうか、とグラスのふちを指先でなぞりながら考えた)
なるほど、あってもなくてもって感じなのかしら。嗜好品だったら尚更厳選しなくちゃ損よねぇ、どうせ口に入るなら美味しいほうが良いわ。
こっちではそれほどじゃないってことは召喚される時に少し体の作りが変わったのかしらね。私も夜の方が相性がいいし、気持ちはわかるわ。
(ニンニクや十字架は信心の問題なのか、と不思議そうに頷く。彼女の口端から覗く牙に目を細めて。目配せを受けたマスターは柔く微笑んで視線を返した)
好きな食べ物?そうねぇ、水気の多い果物かしら。あとはシンプルに焼いたお肉とかが好きよ。
ーー言っただろう?
俺は然程信心深くは無い。糞ったれって唾吐く事はあっても、祈りなんざしねぇよ。
(神とは世界と言う小さな箱庭の創造主にして観察者。あの時、幾ら神に祈っても手は差し伸べてくれなかったーー少なくとも、己の世界の神は。モノトーンの昔日に想いを馳せる吸血鬼は片手で頬杖をしながら穏やかな笑みを浮かべるも、金と銀のヘテロクロミアは冷たく涼やかに。グラスの中、溶けて小さくなった氷がカラリと音を奏でた。)
こりゃ、掌で踊らされんように気を付けないと。
だが…素敵なお嬢さんの掌上なら、世の殿方は悪い気はしねぇかもなァ。
(彼女の方が年若くも…然れど育った環境故にか、己よりも遥かに上手で。愉快だと謂わんばかりにくつくつと喉を鳴らして。)

お褒め頂き、至極光栄の極みだ。
あれは若さ故の輝きだなァ。純粋に強くもあるんだろうが。
血が滾るような闘争ーー俺も嫌いじゃない。リノとも今度手合わせしたいもんだ。
(片目を伏せれば自らの胸元へ右手を添え優雅に一礼を。何処か老いたかんばせは鳴りを潜め、まるで道化の様に振る舞うだろう。花酒の瓶を一瞥すれば満たされていた筈の薄紅はもう僅か。窓から覗く月も傾き、時の経過を感じさせる。)
んー、食っても大した栄養にはならん形だなァ。嗜好品で腹自体は膨れても…血飲まないで居たら引っくり返る感じだな。
…身体の造りがヒト寄りに戻ってなかったら、あっと言う間に灰になっちまってたかも。
(美貌を誇るマスターへ手早く注文済ませ。肉では無く果物を選んだのはーー上品で優しい香りの花酒には果物が合うと思ったからだ。)
マスター、折角だし彼女の好きな果物を頼みたい。
でしょうねぇ、そんな顔してるわ。
(けらけらと笑う。そんな祈り程度で救われるのならば彼女は今ここに居ないのだろうと容易く予想できる。先程の熱帯びた視線が急速に冷え切っていく様を眺めた)
踊ってくれるなら嬉しいのに、残念だわ。そうねぇ、悪い気にさせない程度の礼儀は弁えてるつもりよ。イイ思いをして快く踊ってくれるようなヒトって後腐れがなくて楽だもの。
(悪びれることもなくそんな言葉を口にする。己を使って他人を手玉にとる行為に後ろめたさすら感じていないらしい。遊ぶようにグラスを揺らせば花弁がくるりと薄紅の中を泳ぐ)

やぁん、嬉しいけど優しくしてちょうだいね?私、単体だととってもか弱いの。酷くされたら泣いちゃうかもしれないわ。
(優雅な一礼を受けながらわざとらしくしなを作ってみせる。口元に手を当てて媚びるような色を目に浮かべて相手を見つめようか。――その手の下で笑みに歪む口元は隠しきれているだろうか)
嗜好品なんてそんなものよ、煙草だって口寂しさを紛らわすだけの代物だもの。いいわ、ブラッドソーセージのお店には今度行きましょうね。灰にならない分是非こっちの世界を楽しんでちょうだい。
(注文をされる果物に嬉しげに表情が華やいだ)
アナタって女にしておくのが勿体ないわねぇ、ほんと。マスター、苺を山盛りちょうだい。それとキウイ、黄色いの。
(遠慮なく注文をしながら瓶に残った酒を相手のグラスに全て注いでやった。綺麗に形の残った最後の花がくるりと彼女のグラスの中で回る。――花酒の匂い立つ夜はゆるゆると更けていく。言葉を繰り、弄ぶ一時は尚も続いていくようだった……。)
ククク…少なくとも真っ当な善人の貌じゃねぇって自覚はあるぜ?
(くつくつと咽頭を鳴らして笑うのは最早癖になっていて。このやり取りを楽しむが故に声色は弾む。未だに燻る憎悪の焔こそ己が本質ーー彼女の予想と違わず『レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン』として混沌の地に召喚されて居なかっただろう。彼女の金眼は笑顔の仮面の下の本質を見事見抜いていた。)
ま、俺が果たすべき事を果たした後なら。流れに任せて誰かに踊らされるのも悪くは無い…リノくらい良い女なら尚更。
(冗談めいた笑みを引っ込め、最後の一杯が注がれたグラスを煽る。鼻腔一杯に広がったのは酒精と花の甘い香り。薄く透けた花弁まで薄紅と一緒に飲み干した頃には、青白い肌には仄かに朱が差していて。)

咲き誇る花の涙もまた美しく。其を手折るのが此の化け物たる俺と云うのは…そそるなァ。
ーーなんて、冗句は程々にして。リノの実力が折り紙付きなのは既に知ってるさ。
(ヘテロクロミアに確かに映ったのは艶やかさの裏に隠された獰猛な笑み。嗚呼、何と愉快な事だろう !彼女は化け物たるこの身をもその爪で引き裂き、牙で食千切るのだろうか?双眸を細め、血が高揚するのを隠そうともせずに言葉を連ねるだろう。)
ああ、是非とも。次の機会を楽しみにしてる。
なぁに俺のつまらん与太話に付き合ってくれた礼だ。今宵は月が綺麗な良い夜だったしなァ。
(然り気無く席を立てば布袋から貨幣を数枚取り出して勘定を済ませる。多めに乗せられた1枚の金貨は上等な酒と楽しい一夜を提供した『惑いの花酒亭』へのチップだ。再び席に戻れば、山盛りの果実の中から真っ赤に熟れた苺を選んで頬張る。口一杯に広がる甘味と程好い酸っぱさ。赤さが増した舌で自らの薄い唇を舐めれば、悪戯小僧の様な笑みを深めた。)
(こうして夜は耽るーー宵闇は深まり、星々が息を潜める中で月は尚優しく夜を生きる者達を導くのだろう。この後に黒豹の彼女と吸血鬼が何を語らったのか知るのは、硝子の先の月だけだった。)

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