シナリオ詳細
掘った芋いじるな!~鉄帝超芋掘り大会~
オープニング
●いも、いも、いも
「うう……こまったのぅ」
とある鉄帝の農村。一人の鉄騎種の老人が、腰を抑えながらゆっくりと歩いていた。
その目前に広がるは広大な芋畑。老人は一つ一つその芋を引き抜いては、蒸気機関で動く車に積まれた籠にどさどさと乱雑に積み……また腰を抑える。
「いた、たたたた……これも歳のせいかのう」
そう悔しそうに言うと、また芋を引き抜こうとかがみ……腰を抑えた。
それでもなお、芋を抜こうとするも、ピクリと動かす事すら敵わない。老人はため息をついた。
例えこの芋が引き抜けたとしても、まだまだ大量にある芋の全てを引き抜く事は不可能だろう。と
嘘のように暑い夏が過ぎ去り、鉄帝の厳しい気候は一足早い秋の訪れをこの地域にもたらしていた。
その寒気が、この老人の腰の関節を痛めてしまったのだ。「その戦闘力は混沌世界を見渡しても勝るものが無い」とまで噂される鉄帝の民族であっても、腰痛には勝てなかったようだ。そうその老人は愚痴る。
「一週間もすれば良くなるんじゃがのう……芋が駄目になってしまう……」
当然、周囲の住民に助けを借りるという手もあった。鉄帝の民ならば、例え一般人であろうともその芋をほじくり返すことなど朝飯前であろう。
だが、その無敵の鉄帝民というプライドが、「腰が痛いから力を貸してほしい」と言うのを許さなかった。老人は完全に参っていた。いっそ芋を腐らせるべきか……
「……いや、それでは儂が死んでしまう……」
完全に袋小路になり、悩んだ老人がひたすら思い悩んだ末、編み出した答えは――
「……誰にも言ってくれないようなところにこっそりおねがいするしか……ないかのう」
●ほっくほくのジャガイモを食べませんか?
「依頼なのです! ボランティアスタッフの募集が来ているのです!」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は翼をぱたぱたさせながら、イレギュラーズ達に声をかけた。
集まったイレギュラーズ達の前に置かれた一枚の紙に、皆が顔をしかめる。
それは一枚のチラシ……皮の突いたごつごつとしたじゃがいものようなイラストの上に、これまたごつごつとした大きな文字で「鉄帝いも」とかかれていた。
「……何、これ?」
チラシを不思議な顔で眺める『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)に、ユリーカが説明する。
「依頼はこのお芋を作っている農家さんからなのです……鉄帝いも、という品種のお芋を育てているらしいのです」
鉄帝いも。その高い栄養価は、貧しい土地の鉄帝には欠かせない食材の一つであるが、引き抜くのに相当の力が必要な厄介者であるという。恐らく依頼主は、その作業中に痛めてしまったのだろう。
「そこで、腰を痛めてしまった農家さんの代わりにこのお芋の収穫をして欲しいとの事なのです」
鉄帝の人ですら音を上げる代物だ。引き抜くにはかなりの力と体力が必要であるが、イレギュラーズ達の手にかかれば造作もないだろう。万が一非力でも、相応の神秘を発動すれば引き抜くことが可能だ。
「皆さんなら適任だと思うのです! それにボランティアとは言っても、もちろんタダ働きじゃないのです……現金払いではないのですが」
そう言うユリーカに、「何払いなの?」とカルアが尋ねれば、満面の笑みでこう返した。
「いも払いなのです!」
- 掘った芋いじるな!~鉄帝超芋掘り大会~完了
- GM名塩魔法使い
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年09月10日 21時40分
- 参加人数52/∞人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 52 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(52人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●芋掘り放題
厳しい気候に晒される鉄帝の大地に、一足早い秋が訪れた。
雲ひとつ無い乾いた空の下、暑さの中を冷たい風が駆け走る。
そしてその下には、広大な大地と、無数の芋が生い茂る芋畑。
「儂はこのひろーい農場を芋一筋で数十年、一人で手入れしてきたのじゃ。腐らせるのだけはあってはならん! 多少持ち帰っていいから、ぜひコイツラを全部……あいたたたた」
その芋畑の中、初老の鉄騎種の男性――農場主が、腰を痛そうに抑える。その老人をワルドが支え、私達に任せてほしい、家事等も手伝うと優しく声を掛ける。老人はその言葉に申し訳なさそうに「すまんのう、それでは一つ、採れたての芋を後で儂に持ってきてくれんかの」と語りかければ、ワルドは微笑んで快諾した。
「それでは皆、頼んだぞ」そう言いながら、ワルドに支えられ帰る農場長。そうして、イレギュラーズ達にその芋畑は明け渡された。そう、あくまで明け渡されたのは芋畑。
報酬(いも)にありつくための、イレギュラーズ達の戦いが始まったのである。
「え……イモ掘るの……マジ……?」
リリーが殻の中で驚愕とめんどくささの混ざった声をあげる。すっかり食べるだけと思い込んでいた彼女はしくじったという顔でダルそうに貝殻から這い出て、力任せに鉄帝いもを引き抜こうとする……も、名前に恥じぬ頑固さの芋。抜けることも、ちぎれることすらなく土を若干盛り上げる程度で。
「超メンドー……もういいや、叩こう……」と諦めながら、取り出したバールで地面を叩いて掘り出そうとダルそうに腕を振り上げる。
「これが噂の鉄帝芋……!」
ロクがその硬さに驚きながら、はしゃぎながら犬のように幾つかの芋を半分ほど掘り出せば「うん! だいぶ掘れたね!」と満足げに、何かを呼び出す。
その呼声に応じてどこからともなく現れたのはキモ可愛いロバの様な生き物達が数体。
「引き抜いたお芋あげるからとりあえず全力で引き抜いてね、がんばれロリババア!! そして運べ!!」
そうロクが檄を飛ばせば、其れ等老婆の様な鳴き声とともにその口で鉄帝いもを抜き取っていく。
「いっぱいお芋掘るぞー!」「大きなイモを掘りますよ~!」
首にタオルを巻いて意気込むノーラとノースポール。そして白い2人に挟まれ見よう見まねで準備をしている黒いシラス。3人の芋掘りだ。
早速、ノーラはマシュマロに適当な芋を選ばせ、それを引き抜こうと取り掛かる。一方、ノースポールはサツマイモが欲しいなぁと考えながら、何かを期待する目でシラスを見つめ……。
「芋は食えるよ、緑色してないから」
その視線が胸に刺さったのか、シラスは目線をそらし、とにかく取り掛かろうと細い芋を引っ張ろうとするも――びくともしない。
「んぎぃ!」
硬さに声を上げるも、やはりいもは動かない。ノーラはそんなシラスを見ながら自らも別の芋を引っ張り「強いぞこのお芋!」と感心している。全力で踏ん張り、勢いを付け――抜けた瞬間一回転。空を舞うじゃがいも。
ノースポールが驚き心配するも、その手にある芋に気づけば「……おぉ、初収穫おめでとうございますっ♪」と拍手して。ノーラも「シラス綺麗な一回転だな!」と別の意味で拍手。
一方のシラスは、ぺっぺと土を吐き出しながら、その手に握られていた芋の蔓にぶら下がっていたそれを見れば。「うおっ! 本当に芋!」と子供の様にはしゃいでしまい。
すっかり楽しくなってしまった3人は、シラス以外の2人が難儀していた芋を3人で力を合わせてひっぱりあげようと、ワイワイ騒いで。
「エイサッサ。ホイサッサ」
スウェンが汗水を流しながらいもの根を掘り進めていく。頑丈な鉄帝いもを掘り出すのは、スピードを追い求める彼にとってはいい足腰を鍛えるトレーニング。多少の土汚れも今は気にせず、掘り出した芋を体全体を倒し、思い切り引っ張れば、大量に実った大きな芋がゆっくりと土より姿を現す。
「スウェンさんお疲れ様です! 麦茶どうですかー!」
どこから持ち出したのかやかんを持ったヨハンが休憩がてら周りのイレギュラーズに水分補給を呼びかける。あらかた周りやかんが空っぽになれば、元気いっぱいで「うおーっ!」と一気にスパークしながら一気に鉄帝いもを装備で掘り出していく。
「鉄帝いもか、昔はこれによく助けられたものだよ。あの頃、いもをかけて毎日死闘を繰り広げた八百屋のおやじ殿は元気にしているかな」
鉄帝いもを手にしながら、メートヒェンが懐かしそうにそれを眺める。思わず溢れ出た思い出にしばらく手が止まってしまうが、ふと我に返り。
「お腹を空かせている鉄帝の子供たちの為にも頑張って掘り出すとしようか……ん? そんな目的だったかな? まぁ掘り出せば結果としては一緒だからいいよね」と再びその芋掘りの作業を再開する。
「てってってー! てってててー! レッツ芋掘り!」
そんな上機嫌で芋を掘るのはクリスティアン。「皆がお腹いっぱい食べられるように、たっくさん掘ろうじゃないか!」と気合十分で引き抜けば、現れたのはある意味激レアの鉄帝タロイモ。
「……意外と変わった芋も混じっているね? さながら闇市気分?」と何の因果か(お持ち帰りの分を除いて)カースド枠らしきイモを次々と掘り出していく。
「どの辺がええやろ……この辺り、一緒に掘ってみる?」
いつもと違って庭仕事用の服装を着た蜻蛉が、ジャージに着替えたセティアの髪を縛りながら芋掘りに取り掛かる場所の相談をする。しばりおわれば、セティアはお礼をいい、「ここ掘る」と指差し、鉄帝国らしくと「ぬ゛わ゛あ゛あああああ!!」なんて声をあげながら踏ん張って、土を掘り起こせば、大きめの塊のものがごろりと取れて、芋の端っこが顔をだす。
その色にセティアの向かいに腰を降ろしていた蜻蛉も「あら……お芋さん、お芋やないやろか? あともう少し頑張って!」と夢中になり一緒に掘り進める。
根に付いたのは、大小様々の立派で巨大な鉄帝いも。「!! これ、みて! すごいやばいのでた」と間延びながらも若干興奮した声でセティアが言うのも無理はない。蜻蛉も思わず笑顔で、「おめでとう!よお頑張りました。きっと、美味しいお芋さんや」とセティアを褒めた。
50人近くの力自慢のイレギュラーズ達が総出で引き抜こうが、広大な芋畑を掘り尽くすにはまだまだ至らない。その勢いを少しでも増やす為にルチアーノが一つの提案をする。
「夏バテを吹き飛ばせ― 競い合えばやる気も漲る! ってことで芋掘りバトル!」
より多くの芋、大きな芋、珍しい芋を掘り出す芋掘りバトル。その提案に、一部の競争好きのイレギュラーズ達は盛大に盛り上がり、一斉に芋をハイペースで掘り出し始める。
ルチアーノもまた、透視能力を用いながら地面を丁寧に探し、子供ぐらいはありそうな巨大な鉄帝さつまいもを見つければ「皆で抜いてポイントを山分けしない?」と他のイレギュラーズや相変わらず寝ぼけながら鉄帝いもを片手で引き抜いていたカルアも誘いながら全員で掘り出そうとその大きな枝葉を掴み。
鉄帝いもにすら暇を持て余していたハロルドもその一人、勇みながらその勝負に乗る。
「芋掘りだろうが何だろうが、それが“戦い”であるなら喜んで参加しよう」
そのハロルドの武器は誰よりも高いスタミナと回復力。息をつく暇もなくひたすらいもを掘り出し、誰よりも多く引き上げることで量で勝負する戦法である。
「ははははっ! おら、根絶やしにしてやるぜ!」と黒い笑みを浮かべながらひたすら掘り出しては積み上げていく。
「……それにしても農作業なんて何年ぶりかしら」
芋掘り競争に励んでいた竜胆はふと思い出したかのようにそう呟いた。最も、勝負事ならば久しぶりの農作業だろうと負ける気は全くないが。
道具を用い、引き抜き易い状態にしては威勢よく引き抜く。その繰り返し作業を慣れと共に次第にペースを上げていきながらも、時折現れる不思議な混沌の芋の数々に息を呑むのであった。
焔珠もまた数での勝負を仕掛ける。質を判別する前にとにかく沢山引き抜く精神で芋を喜々としながらひたすら引き抜いていく。
「お芋がたくさん! 素敵ね! どこにでも美味しく育ってお腹にたまるお芋。私大好きだわ!」
時折、さつまいもや長芋の様な色や形のいもが出れば、その不思議さに驚きつつもそれを使った料理が楽しみな様子で、上機嫌で芋掘りを続ける。
サイモンは、勝負と聞いて燃えて来たのか「勝負事ってなるなら面白くなりそうだ」と芋の密集した地区を見つければそこの一つに手を付けて。彼もまた数を狙う作戦だが彼の武器はそのコンビネーション。リズミカルに流れるように数多くの芋を掘り出していく。
史之が引っぱってもびくともしない芋の頑丈さに驚きながら、畝を掘り進めていく。少し芋が顔を出し、グラグラ動くようになれば、それを掴み。
「いち、にの……おりゃああああ!」
全身全霊を込め引き抜けばぶちぶちと音を立て、まるで西瓜のような大きさの鉄帝いもがゴロンと地面に転がり、その大きさに驚く史之の姿がそこにあった。
「こういう畑仕事をするのも久しぶりだな」
イーディスはそんな事をつぶやきながら芋の位置を辺りの植物から聞き出し、手当たりしだいに掘り出していく。もちろん競争目的ではあったが、イーディスの狙いは『面白そうな芋』。
「ほら、ここって鉄帝だろ? なんかこう、それっぽい変な芋があっても可笑しくないだろ。上腕二頭筋を誇示しているかのような形状の芋とか……」
流石にない。と言い切れないのが混沌の恐ろしいところである。
「いやー困ったな。困った困った」とマイペースに言うのはウィリアム。暫く振りの鉄帝いもと洒落込もうとしたは良いものの、掘り出すには体力が必要と思い直したのだ。
「でもほら、働かざる者食うべからずって言うじゃないか。というわけで頑張らないとね」と彼なりに気合を入れれば、イモ達と意思疎通をし、自分でも抜けそうなイモや珍しいいもを探ってはそれをぽいぽいと掘り出していく。
一方、汰磨羈は派手に掘り進めるメンバー達から離れ、殆ど芋のないところを歩いていた。
栄養を奪い合う競争相手の居ない、ドでかいサイズの芋が1本生えているのを見つければ、「貴様だぁー!」と根本の土を素手で一掴み、直後、流石の汰磨羈も驚くサイズのバカでかい地下茎が顔を見せれば「ザ・ビーストのパウワァを舐めるなよ!」と不敵に笑い、脳筋思考(至高)で掘り進めていく。
「予想以上にしっかり根を張っていてびっくりだよ。普通にぐいぐいひっぱったんじゃ抜けないな」
競争に励むメンバー達のおかげもあってか、土から掘り出された鉄帝いもが大量に転がっている。
「……牛の姿になって背負って、運べるかな」
自らも芋掘りに励んでいた牛王はその芋の山を見れば、運搬の準備を進め、ギフトで雄牛の姿へと転ずる。
芋掘りに燃えるイレギュラーズ達が引き抜き積み上げた芋を背負い、更に大盾の裏側に自らが掘り出した芋を積み引きずり、ゆっくりと調理の準備を進めているイレギュラーズ達の方へと運んでいく。彼らが競争の審判代わりにもなってくれるだろう。
もう、掘り出されていない芋はわずかであった。その仕上げの最中。紅葉が空を舞い、彼らの間を通り抜けていく。イレギュラーズ達の中には芋掘りの合間に、あるいは同行ついでの観光に、この地域に訪れた秋の中を歩こうとする者もいた。
弥恵は近くの農家で華麗な舞を披露していた。鉄帝いものしぶとさを相手するのに自信が持てなかった故の思いつきではあったが、売り込みと娯楽の提供を兼ねた彼女なりの行動は鉄帝の人々にかなりウケがよかったようだ。
その証拠に農作業でもしていたのだろう若い男性が何人かその姿に魅了されてしまったようで、彼らに思わず声をかけられれば、微笑みながらやんわりと断る。
「一時でも良いですので、月明かりのように皆様の楽しみになれるなら幸いですよ」
千歳と冬佳の二人が、農場の周囲を散歩しながら、あたりを見回す。
「こうして歩いていると、ちょっとした小旅行にでも来た気分を味わえるだけなんだけれどね」
千歳のそんな言葉に、冬佳が「外国なら、こういう風景もあるのでしょうけど。そういう意味では、本当に旅行に来たみたい」と家々を眺める。旅行とは言えど、帰れる手段も保証もわからない混沌への旅行。前途多難ではあるけれど、なんとか適応していかなければならない険しい旅。
暫く歩き続けた後、千歳が冬佳の手を握る、その反対側の腕で一軒の商店を指さして、「あそこに行ってみよう。丁度お土産屋さんがあるみたいだよ」と声を掛ける。その先には、鉄帝らしい無骨な土産店。
お土産――その言葉に思わず冬佳は苦笑してしまう、でも、それくらいの気持ちでいくべきなのであろう……そう思いながら、冬佳は「物を持って帰れれば良いのですけど」と彼と共にその土産店へと向っていった。
アナスタシアは、芋掘りや他の仲間が掘り出した芋を運ぶ合間に周囲の住民に声をかけ、鉄帝いもの調理法を訪ねて回る。豪快な鉄帝民の口から出た言葉は、それこそ豪快な調理法……というだけではなく、案外知る人ぞ知るここだけの食べ方もあり。おどおどとお礼を言えば、仲間の元へと戻っていく。おそらく彼の信頼できる人に伝え、作ってもらうのだろう。
●芋食べ放題!
芋掘りが始まり数時間後。無事に巨大で大きな芋達はすっかり掘り出され、何箱にも山盛りに積み上げられては時折ゴロゴロと転げ落ちていた。
体力を殆ど使い切り汗を流す運命特異座標達であったが、お楽しみはこれから。
皆何かを期待する様子で根から大きく角ばった芋を切り離し。流水でそれを洗い、芽をくり抜いていく。幾つもの芋が蒸され、焼かれ、潰されていく。
お楽しみはこれからだ。
「労働の後はやっぱり美味しい食事だよNE」
そうアシルの言う通り、これから美味しい芋パーティーが始まろうとしているのだ。
大好きな粉吹き芋に何をかけようか、アシルは考えながら、「今日は違う味を試してみたいNE」と調味料を選び、それを剥きたての粉吹き芋へとふりかけた。
悪戯好きのどらは持ち込んだ怪しい調味料の数々――やけに赤い辛子マヨネーズやタバスコの混ざったケチャップ等――をこっそりと調味料に混ぜ、それが見える場所でいもの皮むきの手伝いを申し出る。
「ほら、依頼人にイタズラするわけには行かないし?」なんて言い訳を心の中でつぶやきながら、皮むきを続け……誰かがまんまとそれをつかめば、しめた顔をして。
「余は鉄帝いものおいしい食べ方を知っておるのじゃよえっちゃん。マッシュポテト! じゃがそれを……小さく丸めて揚げるッ!! カリッとサクッともちっと!」
剥きたての芋を持ちそんな事をいいながらながらアマルナが偉そうにエッダに鉄帝いもの美味しい喰らい方を説く。「なるほどポンデケージョのようなものでありますな」とエッダはうなずくも……直後アマルナの頭を両手で鷲掴み。
「然らば粉砕してやるであります。貴様の頭をな!」「あれちょっとまってえっちゃん余は芋じゃないからそんな力いっぱい握ったら中身でちゃうのじゃあァ!?」
そんなこんなで芋よりあっけなく頭蓋骨が崩壊しそうなアマルナを置いといて、エッダは調理にかかる。アマルナが頼んだそれを作る前にと豪快に料理して出来上がったのは鉄帝名物邪我刃多悪。
「なんじゃその胸焼けしそうなモノは?!」などと呻くアマルナの口(というか顎)を抑え「いいから食えオラッ」と芋を豪快にぶちこもうとし……なんだかんだで楽しそうな二人であった。
「お芋といったらやっぱり焼き芋だよね!」
セララは焼き立て割り立ての香ばしい鉄帝さつまいもを手に、一口味わい。
「んー! 甘くて美味しい!」
更にバターを塗って一口頬張れば、そのハーモニーに思わず魅了されてしまい、思わずおかわりの言葉が出てしまう。
「じゃがいもは救荒穀物とも言われるが……煮ても焼いても美味い」
レイヴンは早速出来上がったホクホクのじゃがバターを一つ食べながら考える、食事会が終わった後に、農場主に交渉していざという時の為に優秀な鉄帝いもを非常食として仕入れようかと。「……発芽だけ気をつけないとだけど」
「おーいも、おーいも、るるるおーいも」
そう歌いながら転がる白い鶏、もとい聖鳥トリーネが結依に見守られ悠々自適にころころ転がっている。結依が火をくべながら「トリーネ、おっきな芋がとれたからな。蒸かし芋にしよう」と声をかければ大はしゃぎでコロコロと火元へと転がり……込む前に抱き上げられ火から離されてしまう。
そんなやり取りをしている内に大きな大きなふかし芋ができあがれば、結依が刃物を入れ、真っ二つにし片方をトリーネへ差し出す。我慢の限界とその芋に食らいつくトリーネであったが――「こけえぇぇ!?」正直なめてた蒸かし芋の熱さに悶絶。
結依が心配そうに「熱いから気を付けて……」と声をかけるも……トリーネが猫舌であることを察すれば、芋を冷ますことを提案して、トリーネもそれを了承する。結依は彼女が満足するまで、自分の分を食べるのを中断して、ふぅふぅ冷ましつづける。
料理好きなイレギュラーズの一部は、一箇所に集まり皆に振る舞うためのイモ料理を準備していた。また、それに釣られる形で何人ものイレギュラーズ達が集まり、大盛り上がりの様相を呈していた。
「アタシは配膳のほうを手伝いまーす!」
ギギエッタは後者で、コップやお皿等の食器を大急ぎで運んで用意を進める……揚げたてのポテチを一枚、こっそり拝借しながら。
「凄い……ポテト天国だ」
無類の芋好きである威降にとってこの土と芋の香りはまさに極楽浄土。何か手伝えることがないだろうかと彼なりに考え……数分後、大きな鍋にたっぷりと水を張り、一気に加熱する。
そして鉄帝いものなかでも大きな物を何個も入れ、茹で、茹で上がったら更に茹で、その間に茹で上がった芋の皮を剥き……彼の好きな芋料理を作る人を手助けするために茹で上がった芋を配っていく。
「おいも! 美味しそうなのです!」
芋掘りの代わりに農場主の腰の治療を行っていたルアミィは無事にその仕事を終え、ギギエッタを手伝う形で芋料理を食べるための準備を上機嫌で進めていた。芋を焼き上げる器具や食器を運びながら、どんな芋が出てくるのだろうかと心を弾ませて。
「みんなで一緒に食べるお料理はきっととっても美味しいのです!」
「ああ、それに懸命に働いた後の飯は美味い――ってのは、異世界に来ても変わらないってか」
ルアミィに同調する様に要が頷き、早い内に出来たふかし芋を手に取り、備えてあるバターをナイフに取る。
「さて、まずは……やっぱじゃがバタかなぁ? こういう、シンプルで分かりやすい美味さってのは好きだ」バターを塗りそんな事を考えながら、大きく頬張って。……コレを食べ終えたら何か凝ったものを食わせてもらおうなんで考えながら芋の味を堪能する。
その表情に気が付いたのだろうか、調理を終え皿を大量に抱えて訪れたゴリョウが「おぅ、揚げたてのコロッケはどうだ!」と何人かに振る舞う。自信満々に高笑いをするのもそのはず、ただのコロッケではなく、ゼシュテルパンや闘牛の肉、鉄帝のありとあらゆる特産品を詰め込んだ魂のコロッケなのだ。その美味に感動した何人かが感想を述べれば、得意げにその素材を説明し、「正に鉄帝料理ってワケだ!」と大笑い。
パーシャはイレギュラーズ達の積み上げた芋のその量に感動し、目を輝かせる。
「わあ、お芋がたくさん……! 皆さん、本当にお疲れさまでしたっ」
そんな彼女が作るのは温かい芋のポタージュ。浸して一緒に食べるように固いゼシュテルのパンを並べ、用意する。後は味見を……と、その時。
「パーシャさま、味見おねがいできませんかー?」
そう呼びかけたのはアニー。根菜とじゃがいもを煮込み出来上がったコンソメスープの味を確認してほしいと声をかける。
「先輩の作ってくれたお料理ですか? 喜んで!」と彼女は快諾し、交換しあったスープの味と暖かさで、思わず笑顔が溢れてしまう二人なのであった。
アーリアもまた、イレギュラーズ達が作る芋料理の数々に心を躍らせる。彼女にとって、芋料理が色々食べられると言う事は心置きなくそれに合う飲み合わせのお酒を呑むことができるという事である。
「片っ端から食べて、沢山のおいも料理と色んなお酒のマリアージュを楽しむわぁ!」と幾つも用意した酒瓶を出しながら、手始めに用意されたコロッケを一つ取り、エールを一杯――
「次のお料理、持ってきてちょうだぁい!」と、1杯目からにして既に上機嫌で。
「えへへ、たくさんイモが掘れたし手を洗ったらさっそく食べよう!」
笑顔で手を洗い、調理した芋を手にとったチャロロはシンプルにじゃがバターを作ろうと、芋に切れ込みを入れ、その湯気の中にバターをおいて、次第にとろけていくその光景に思わず舌なめずり。後であげいもにするための一部の芋だけを茹でる鍋に入れれば、まずはじゃがバターを味わおうとテーブルへ向かい、ひとかじり。
「イモ料理ってのもわるかねーな、種類に合わせて味付けは変えるとして……」
アオイが一つ、じゃがいもを手に取り、どうしてやろうかと一考。何かを思いついたかのように、塩で薄味をつければ、それを切り、軽く揚げて簡単にポテトチップスやフライドポテトを作れば、テーブルにて自らの口に運ぶ。時折横から指が伸びれば、「つつくのは構わないけど、ケチャップとかは勝手につけて食ってくれよ」とだけ伝え。
「はい。では本日は夏の季節でありながらどこか肌寒い鉄帝よりお届けしております。本日作るのは……」
クロバがどこかお料理番組でも収録しているかのような口調で話しながら、材料を炒め、ホワイトソースを作り上げていく。今までの経験と勘だけで豪快に火を付け、出来上がったのはポテトグラタン。「冷めないうちに召し上がれ、ってな」といつもの話し方でテーブルに熱々のそれを乗せ、ふぅと一息つく。
「……!お芋料理がこんなに沢山」
ノエルが次々と振る舞われる芋料理の数々を興味深そうに眺め、さつまいも料理の一つを取り皿に取る。
「不思議ですね、じゃがいもを作っていた筈なのに別種の物が混ざっているなんて」と訝しむ。それは無垢なる混沌の超常現象故か、あるいは単に農場主が大雑把なだけなのか。「それにしても美味しいですね、このお芋は」
ニミッツは、他のイレギュラーズ達が取り僅かに残った最後の1個や端っこの方を取り、こっそり食べる。自分が他の人と一緒に食べるのはおごまかしいという理由故の行動ではあるが、頑張って楽しもうという意思があるのだろう。周りの人から一緒に食べないかと声をかけられれば、それにびくびくしながらも応じて。
シンプルに芋を塩茹でしていたカティアは、内心「食べるときはそうでもないけれど、作ろうとすると貧乏育ちが露呈しちゃうよね」と苦笑いで。
じゃがバターを作りつつも、同時にちょっとした贅沢気分を味わおうとじゃがいもをくし型に切り、ハーブソルトで炒める。
時折、使い終わった皿が山積みになっているのを見つければそれを取り、料理の合間に洗おうとして。
「折角だし、みんなで美味しく食べられるようにできると良いな!」とアレクシアはじゃがいもを使ったスイートポテトに挑戦。すりつぶした芋に材料を混ぜ焼き上げれば、香ばしい匂いを放つじゃがいものスイートポテトが出来上がり。
「さあ、どんどん食べてね!」と他の仲間たちへと配っていく。
「美味しそうな芋がいっぱいだね!これは腕のふるいがいがあるよ☆」
ミルキィが作ったのは野菜とチーズを豪華に乗せたゴージャスなポテトピザ風の料理。
焼き上がったそれを居切り分け、イレギュラーズ達に振る舞えば、自らも置かれていたスイートポテトを一つ取り……その美味しさに気に入ったのか、レシピを教わりに作った人の事を周りのイレギュラーズから聞き出そうとする。
皆が思い思いの食事を振る舞い、食べて。最後にリゲルとポテトの二人が大きなお盆と共に食卓に付けば、歓声が上がる。
リゲルが綺麗に薄くスライスされたポテトに教わり作ったじゃがいもとさつまいものポテトチップスを乗せた皿を円弧状に並べれば、ポテトがその中に作った様々な芋料理を並べる――オムレツ、長芋、そしてサツマイモとりんごのタルト――それが置かれれば、皆が息を呑み、思わず一つ頂こうとつめよせる。
席に座り、用意された他の料理人達の料理にポテトが微笑み、「みんなの料理も多種多様で美味しそうだな」と思わず笑顔が溢れ。リゲルもまた「料理につまみに甘味もあるとは至れり尽くせりだな」とニッコリ答え、改めて芋掘り班へ感謝の言葉を投げかければ、二人で一緒にいただきますの言葉を料理へ捧げ――
そして、鉄帝の一足早い秋の空の下、50人以上のイレギュラーズ達による芋パーティーが始まったのである。
●鉄帝の秋、イレギュラーズ達の秋
それから、数時間後。
その味と風景と、苦労(?)をたっぷりと楽しんだイレギュラーズ達は、皆お腹いっぱいで、まっさらになった芋畑を後にする――袋に詰めたお土産の大きな大きな鉄帝いも達と共に。
「また来るのじゃぞー」
農場主はそんな彼らを満面の笑みで送り出すのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
50人超えの参加、ありがとうございました。停電でデータが消える等のトラブルもありましたがなんとか文字数ぴったり、書ききりました!
今回も非常に楽しく書けました。頑固な農場主も皆様の働きに感謝しているようで、何人かに称号を半ば押し付ける形でプレゼントしました。
皆様が「参加してよかった」と思っていただければ本当に幸いなのです。
それではまたの機会をお待ちしております。
GMコメント
こんにちは、芋魔法使いです。
前回の盛況ぶりに大変感涙しております。
夏もだいぶ過ぎ去り、おいもが美味しい季節がやってまいりました。
●概要
鉄帝のとある芋農場。農場主が腰を痛めてしまったようです。
報酬代わりに一部を皆さんへ納めるようです。皆さんで芋掘りを手伝ってあげましょう。
掘り出した体験がEXPとして入ります。お持ち帰りした芋で浮いた食費がGOLDとして入ります。
●鉄帝いも
正式名称「鉄帝じゃがいも」
鉄帝の厳しい気候でも難なく育ち、非常に高い栄養価を持つ食用植物。
でんぷんを豊富に含む地下茎が食用として愛されている。
潰したり蒸してバターや塩を乗せたりスライスして揚げたりすると美味しく食べれます。
時々「鉄帝さつまいも」やら「鉄帝山芋」、「鉄帝タロイモ」なんてのも混ざってるかもしれません。
●行動タグ
お一つどうぞ
1)鉄帝いもをみんなでひたすら掘ります。
タグは【掘る】
土まみれになりながらみんなで芋を掘りましょう。所詮芋掘りだから簡単……と思いきや結構引き抜くの大変です。
鉄帝の植物らしく地球のそれよりやたらと芋の数が多く、力がいるのです。
中にはとんでもサイズの芋やじゃがいも以外も?
2)掘ったらみんなで食べます。
タグは【食事】
このシナリオの(おそらく)メインとなります。
みんなで掘り出した芋の一部を報酬代わりにと農場主が納めてくれました。
野外ですが簡単な調理機材と火と調味料(例:塩、砂糖、バターやケチャップ)は不自由なくあります。みんなで作って食べましょう。
その他食材の持ち込みも自由です。
3)その他散策とかご自由にどうぞ。
タグは【他】
自然の多い田舎。芋掘りの合間に雑木林の散策でもするのもご自由に。
あるいは不思議なお土産屋さんを見つけてふらりと立ち寄るとか。腰を痛めた農場主を労うとか。
雰囲気を壊さない程度にご自由に。鉄帝の厳しい気候はこの地域では一足早い秋の雰囲気となって表れているようです。
まだまだ暑いですがこの地域では夏が過ぎ去りかけ、少しだけ葉っぱが赤色がかっています。
●NPC
『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)が芋掘りしています。
皆に混ざって眠そうに茎を掴んでぼーっとしてると思ったら怪力で一気に引き抜くルーティンを繰り返してます。
【掘る】タグの人は同行者(ID不要)やプレイング部分に彼女の名前を書けば一緒に芋掘りできます。前回は多数の交流ありがとうございます。
●情報精度
A?です。想定外の事は絶対に起きないはずですが、イレギュラーズ達の行動次第ではそうとは限りません。
●描写について
アドリブ……そこそこ。
絡み……ソロの時はプレイング次第で絡みます。グループならグループ内で、コンビの時は相手のみ。
以上の様になっております。それ以外を望む場合はプレイングにてご指定お願いします。
●書式
1行目:行動タグ
2行目:同行者やグループタグ
3行目以降:自由
最後の行:(あれば)アドリブ・絡み等
前回は皆書式を厳守していただき誠にありがとうございます。今回も以上の様によろしくお願いします。
同行者はIDとファーストネームをお互いに。
文字数の都合が合わない場合は1行目は無くても大丈夫です。(プレイングよりGMが判断します)
それでは、皆様のプレイングお待ちしております。
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