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シナリオ詳細

ほしのゆめ~ユリーカの誕生日

完了

参加者 : 70 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ご存知、ローレットの情報屋である『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は7月14日に生まれた。
 夏を思わせる明るい空色の髪と父親譲りの若草色の瞳がユリーカのお気に入りだ。
「流星群、なのです?」
 ぱちくりと瞬くユリーカに彼女の父代わり――実際は兄代わりと言いたいがユリーカが幼い頃には「レオンおじさん」と呼ばれていた経験がある――『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ (p3n000002)はそうだと頷いた。
「丁度見えるらしいよ。幻想でね。プルーやショウからのとっておきの情報だ」
「……! 幻想で流星群が見えるなんてとてもとても珍しいのです!」
 同僚の情報屋達は冒険譚に憧れる少女が好むものをよく知っている。
 いつかの日に旅人が持ち込んだ銀河を駆ける鉄道の童話にも瞳を輝かせて憧れていたのだ。
「ボク、イレギュラーズの皆さんと一緒に星を見たいのです!」
 鉄帝ならば星はきれいに見えるだろうけれど、そうではない――生れ育ち愛着のあるこの『幻想』の街で見れるのならばどれだけ嬉しい事だろうか。
「ほら、ユリーカ」
「……星まつり、なのです?」
「七夕は生憎の雨だったからって理由で流星群の日に祭りをずらしたそうだ」
 ユリーカは祭りをどうしても楽しみたいと幻想の某王様がワガママを言ったのだろうと理解した。共に行動する花の騎士の苦労顔が目に浮かぶ……。
「いっておいで。その日は『情報屋』や『イレギュラーズ』は抜きに友達と遊ぶ気分でいいよ」
「わあ、嬉しいのです! ありがとうなのです! レオン『おじさん』」
 ――ほら、また呼ばれてしまった。


 母の顔は知らず、父を早くに亡くしたユリーカにとってローレットは家族の様なものだ。
 そんなローレットの特異運命座標たちと楽しく星を見れるのであればどれ程に嬉しい事か。
「ユリーカー? 広告張ったぜ」
「はいなのです!」
『男子高校生』月原・亮(p3n000006)はぺたりとローレットの掲示板に『星まつり』の広告を挟む。
 その下にこっそりと「ユリーカの誕生日です」と書き添えた事にきっと特異運命座標は気付いてくれるだろう。
 煌びやかな空。幻想の星まつり。
 屋台もずらりと並ぶだろう――亮にとっては『日本の夏祭り』を想像させる。
「楽しみなのですっ」
 さあ、美しい星を一緒にみよう。

GMコメント

 ユリーカの誕生日が7/14。
 御伽噺と英雄譚が好きで、何時も元気いっぱいなローレットの看板娘。
 特異運命座標と共に冒険することはできませんが、こうしてお祭りを一緒に楽しむ事は出来るのです。
 よければ、この日を楽しみませんか?

●流星群の日
 ユリーカの誕生日7/14には美しい星空が見れるのだそうです。
 プルーやショウ曰く「ユリーカはきっと喜ぶ!」とのことでした。
 幻想の何処に居たって見れますよ。皆さんの幻想にあるギルドからもきっと。

●星まつり
 七夕祭りの様に行われるはずでしたが生憎の雨……。
 お祭りは流星群の日にずらされて行われます。
 ずらりと縁日が並ぶ通りは亮曰くどこか日本の祭りを思わせるそうです。
 ユリーカは折角なので用意した浴衣を着て皆さんとお祭りを楽しみたい気分。

●ユリーカ・ユリカ
 お誕生日様。なんだって物珍しいし、なんだって楽しいのです。
 露店で買ったチョコバナナの様なものを手にふらふら。お星さまがきれいなのです。

●登場NPC
 お名前を呼んでいただければステータスシートのあるNPCでしたら駆けつけます。
 特異運命座標の皆さんなら空中庭園にも行けるのでざんげとも会えますね。
(ユリーカは特異運命座標ではないので、空中庭園にいけないので、ちょっと寂しいのです……)

 どうぞ、宜しくお願い致しますね。
 楽しい一日を。

  • ほしのゆめ~ユリーカの誕生日完了
  • GM名夏あかね
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年07月25日 21時00分
  • 参加人数70/∞人
  • 相談5日
  • 参加費50RC

参加者 : 70 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(70人)

鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
竜胆・シオン(p3p000103)
木の上の白烏
グレイシア=オルトバーン(p3p000111)
勇者と生きる魔王
レンジー(p3p000130)
帽子の中に夢が詰まってる
クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
ディエ=ディディエル=カルペ(p3p000162)
夢は現に
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
エマ(p3p000257)
こそどろ
ルアナ・テルフォード(p3p000291)
魔王と生きる勇者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
ツリー・ロド(p3p000319)
ロストプライド
ルアミィ・フアネーレ(p3p000321)
神秘を恋う波
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
蒼銀一閃
マナ・ニール(p3p000350)
まほろばは隣に
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
Lumilia=Sherwood(p3p000381)
渡鈴鳥
レッド(p3p000395)
赤々靴
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
ティバン・イグニス(p3p000458)
色彩を取り戻す者
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
ティア・マヤ・ラグレン(p3p000593)
穢翼の死神
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
暁蕾(p3p000647)
超弩級お節介
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
シャロン=セルシウス(p3p000876)
白い嘘
久遠・U・レイ(p3p001071)
特異運命座標
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
想星紡ぎ
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
再び描き出す物語
クロジンデ・エーベルヴァイン(p3p001736)
受付嬢(休息)
セレネ(p3p002267)
Blue Moon
タルト・ティラミー(p3p002298)
あま~いおもてなし
アリエール=フォン=ウィンクルム(p3p002309)
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
アグライア=O=フォーティス(p3p002314)
砂漠の光
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
クローネ・グラウヴォルケ(p3p002573)
幻灯グレイ
ノーラ(p3p002582)
方向音痴
九重 竜胆(p3p002735)
青花の寄辺
マリス・テラ(p3p002737)
Schwert-elf
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
フルオライト・F・フォイアルディア(p3p002911)
白い魔女
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
レスト・リゾート(p3p003959)
にゃんこツアーコンダクター
ミーシャ(p3p004225)
夢棺
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
ハロルド(p3p004465)
ウィツィロの守護者
竜胆 碧(p3p004580)
叛逆の風
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
大樹の精霊
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)
煌きのハイドランジア
クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)
煌めきの王子
ミラーカ・マギノ(p3p005124)
森よりの刺客
フルート(p3p005162)
壊れた楽器
ロク(p3p005176)
クソ犬
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
グレン・ロジャース(p3p005709)
理想の求心者
ミルキィ・クレム・シフォン(p3p006098)
甘夢インテンディトーレ
鼎 彩乃(p3p006129)
凍てついた碧色
オスヴァルト=シュミット(p3p006173)
ダニエル・オッペンハイマー(p3p006193)
黒焰 怨寿(p3p006210)

リプレイ


 きらきらと輝く星は、まるで金平糖のようだから。
 こんな日にたくさんの大切な人と過ごせるのはとてもとてもうれしくて――

「ククク、ユリーカよ。今日はキミの誕生日だそうだな?」
 にぃ、と笑みを溢したディエ。その表情に瞬くユリーカは「はいなのですよ」と頷いた。
 意味ありげに笑うディエはゆっくりと掌を上に翳す。そう、これは彼女のなりの『バースディプレゼント』だ
「いつも情報屋として働くキミに褒美をやろう。特別に我が錬成術を見せてやる。とくとみよ!!」
 星を模った小さな石は宝石と呼ぶに相応しい輝きを見せている。まるで、星まつりの鮮やかな星々が掌に落ちて来たかのようで。
「わ、わあっ! お星さまが手の中にあるのですっ」
「ふふ、今日も楽しそうですね。ユリーカさん。お誕生日おめでとうございます。これからも情報屋として頼りにさせていただきますね」
 瞳を輝かせるユリーカの傍らでエリーナは微笑む。ペットと共に歩み出し、彼女は手にしていた林檎飴をそっと差し出した。
 縁日に並ぶ食事はどれも魅力的だった。水色の浴衣に、林檎飴。縁日を楽しむにぴったりの格好になったと嬉しそうにユリーカはぴょんと跳ねる。
「ありがとうなのです! これからも宜しくなのですよ!」
「はい。お祭りを楽しみましょうね」
 ひらりと手を振り星空の下を歩くエリーナを見送れば、傍らで水の跳ねる音がする。
「おっと、ユリーカ」
「グレンさん……金魚さんなのですか?」
 ポイとお椀を手にしたグレンにユリーカはこてりと首を傾いだ。知られていて光栄だと笑う彼にローレットの仲間なのです、とユリーカは胸を張る。
「新米の俺が言うのも何だが……どんな力があろうと、倒すべき敵が分からなきゃ振るいようがねえ。
 情報ってのは何よりも価値がある。例えば、こういう祭りの急な予定変更や、流星群だのの情報もな……」
「はい。情報はとってもっとっても、大事です」
 まだまだ『新米情報屋』と呼ばれるユリーカ。敏腕美少女情報屋と強がっているが稀代の情報屋と謳われた父にはまだまだ遠い事を自覚している。
 ユリーカがぎゅ、と林檎飴を握りしめた様子に気付きグレンは何処か気取ったようにウィンクを一つ。
「ああ、それと、可愛らしい情報屋の嬢ちゃんが生まれた日ってのもな」
「……! えへへ」
「さぁて、どの魚が欲しい? 赤いのか、あの黒いのか? 見てな、好きなの取ってやるからよ」
 指先は揺れ動く。どれがいいかな――ああ、あの黒いおめめが大きいのが欲しいかもしれない!

「ユリーカちゃんお誕生日なのねぇ……!
 折角色んな人が集まるんだもの、ユリーカちゃんには内緒でお誕生日プレゼントとして寄せ書きを集めましょ~!」
 意気込むアーリアは祭りの中を歩みながら、小鳥たちと共に寄せ書きを集めていく。
「あら? あらあら、レオンくん。丁度よかったわ~。ユリーカちゃんのお誕生日だから、メッセージを集めてるのよぉ……!」
 きっと喜んでくれるわよと微笑むアーリアにレオンは頬を掻く。幼いころから少女を知ってる身としてはなんともこそばゆいものだ。
 クリスティアンは短冊を手に「七夕風って言うのもオツだろう?」と瞳をきらりと輝かした。
 笹に飾ればあら不思議、願い事を飾った『七夕飾り』の出来上がりだ。願い事とメッセージ両方を書けばユリーカだって全力で喜ぶことだろう。
「ユリーカ君の喜ぶ顔が目に浮かぶようだ!」
「そうねぇ、きっと笑顔で受け取ってくれるわぁ~」
 微笑み合うアーリアとクリスティアンの傍らでヨハンはせこせことメッセージ作り。寄せ書きと言えば混沌にもある学び舎の卒業式や別れのシーズンのものというイメージがある。
 ヨハンはゆっくりと目を伏せる。イメージに添うようにしっかりとメッセージをこさえたならば――

『さよなら……ユリーカちゃん鉄帝でも元気で……』

 カンタンに言えばこれはゼシュテルジョークだ。流石は冬の地、ゼシュテル。ジョークも冷たさ全開である。
 流星群の中で笑っているユリーカのイラストを描きながらルアミィは美術と色彩感覚を活かすのだとそのスキル全開だ。

『お誕生日おめでとうなのです!
 これからの一年も、ユリーカさんにいっぱいの楽しいが
 降り注ぎますように!
              ルアミィ・フアネーレ』

 にこにこと笑みを漏らしてアグライアは事前に空中神殿に行ってきたのだと『寄せ書き』のメンバーに告げた。ユリーカは空中庭園に行くことはできない――つまりは神殿のざんげに会う事が出来ないのだ。
『16歳の誕生日おめでとうございます、今年という一年が素敵でありますように。これからもよろしくお願いしますね!』
 アグライアは自分のメッセージの他にざんげからのメッセージを貰っていた。『がんばるがいいじゃねーですか』という簡素なものだが、ざんげなりに考えたものなのだろうとアグライアは小さく笑みを溢す。
「皆さん! お揃いなのですねっ」
「ユリーカさん、お誕生日おめでとうなのです!
 いつも頑張ってるの見てるのです、これからもよろしくなのですよ。今日はいっぱい楽しんで下さいです!」
 ルアミィはにこりと微笑む。きっと、この後、彼女の下に届くのはケーキだ。その時はぜひ一緒に行こうと心に決めてルアミィはユリーカが先を行く事を促した。
「ユーリカ様、お誕生日おめでとうございますっ! 七夕は生憎の雨でしたが、今日は晴れて星がよく見えますね。
 普段からお世話になっている御礼に、素敵なプレゼントを用意しますからね」
 お礼に関して秘密ですよ、と微笑んだアグライア。ヨハンの意地の悪い表情にきょとんとしたユリーカは首を傾げる。
「大丈夫大丈夫」
「な、なにがなのです?」
 ――ゼシュテルジョークが待って居ることを彼女はまだ…知らない……。
「……?」
「まあ! 今日は可愛らしい浴衣を着ているのね。とってもとっても似合っているわ~。
 せっかく浴衣を着ているんだもの、お祭りを思いっきり楽しみましょう~。お誕生日おめでとう~」
 ひらひらと手を振ってリゾートはユリーカの下へ歩み寄った。ひらひらと手招き、ユリーカを誘ったのは『型抜き』の屋台。
 見慣れぬユリーカはぱちくりと瞬くがリゾートはふふと小さく笑う。
「きっと楽しいわ。板から上手に絵を削りだせば景品がもらえるのよ。おばさんがちょいちょいとお手本を見せちゃうから~」
 緊張した表情で見守るユリーカの前でいざ、実践。けれど――「あ、あら~……?」
 ぱきり、と割れてしまえば、形も見事に崩れてしまう。割れてしまったわね、と笑う彼女にユリーカも釣られててへと笑う。
「でも安心してね、割れてしまったものは~……こ~やって食べちゃえばいいのよ~。んふふ~、結構イケるんだからぁ」
 型抜きをはむはむと食べていたユリーカの下にひょこりと顔を出してフルオライトはにこっと笑う。
「誕生日はめでたいことだ! 誕生日おめでとうの歌をうたうぞ!」
 フルオライトは直向きに謳う。楽し気に謳い始めるフルオライトの歌声にユリーカは嬉しそうにこくこくと頷いた。
「綺麗な星空と素敵なお歌で心もハッピーなのですっ」
 幸せ気分で歩いているユリーカを見かけて胡蝶は「あら、」と笑みを漏らす。
「露店でぶらついていらっしゃるのかしら? ユリーカさん」
 お誕生日だと聞いて来たけれど――と口にして胡蝶は小さく笑う。誕生日じゃなくとも可愛がりたくなるのがユリーカ・ユリカという情報屋だ。
(甘やかしたくなるっていうか……ま、今宵はお誕生日様な彼女に、何品か好きな食べ物やら、おごりたいわね)
 くす、と微笑みを溢した胡蝶にユリーカはきょとんとした表情で首を傾ぐ。
「……ああ、その前に。大事なこと。
 お誕生日おめでとう、ユーリカさん。あなたが生まれた事に感謝を。そして……今年も息災に過ごせますように」


 二人で別々のかき氷。ミーシャは女性ものの白い浴衣を身に纏い、シオンはお気に入りの水色を着ている。
 浴衣を着れば、夏の暑さもどこへやら。涼しさもバッチリ感じられる。
「かき氷……は、ボクはあまーい練乳。甘くて、冷たくて、美味しい」
「俺はー……じゃあブルーハワイで……!!」
 青いかき氷は気分を晴れやかにするようで。まるで青い宝石みたいだというシオンは「ブルーは青だってわかるけど、ハワイってなんだろ」と首を傾げる。
「ハワイは解らないけど、さっぱり。幸せ。だね」
 ミーシャはぱちりと瞬いて、一口上げるね、とシオンへと差し出した。
「あーん……ん、美味しい……!! もう一口ちょーだい……!! あーん……!!」
「んー……もう一口だけ、だよ?」
 シオンのブルーハワイをぱくりと口に含んでミーシャは小さく笑う。流れ星が見えたなら――なんてお願いをしようか。
「そーだね……願い事はぁ……」
 すやぁと寝に行ってしまったシオンにくすりと笑みを漏らす。シオンが寝てしまったならミーシャの願い事は決定だ。良い夢、見れますように。
「我、誕生日に祝う事が何故なのかが分かりませんが、そういう流れのようなので」
 碧にとってお誕生日というものがどういうものなのかということが理解できなかった。なぜなのか――本当に、どうしてかは分からない。
 アルテナならばわかるのだろうかと碧は首を傾ぐ。
「お誕生日? そうね……やっぱり、生まれてきてくれてありがとうって意味を込めるのかしら」
 碧の問い掛けにアルテナは柔らかに答えた。何時もの調子で言った彼女に碧は「生まれてきてくれて」と小さく呟く。
「そのようなもの――でありますか」
「ええ、そうよ。これからも幸せでありますように、ってお星さまに願う様にお祝いしてあげるのよ」
 微笑むアルテナに碧はこくりと頷いた。ならば、そのお誕生日様をお祝いするべく碧ができるのは周辺の警備だ。
 人の往来が多い場所では整列誘導を行い、争いの目が見えたら手を取って落ち着いてもらう。それこそが大事なことではなかろうか。
「レオンさんは今日はどうしているのかしら……?」
 華蓮は周囲をきょろりと見回す。ユリーカが遊べるように仕事をしているのだろうかとローレットの関係者達へ情報網を駆使して問い掛ける。
 もしも祭りで参加できてないならば少しでも祭りの気分をプレゼントしたいと華蓮は歩を進める。
(たこ焼きとか、綿飴とか、お好み焼きとか、ちょっとした玩具とか、お祭り気分になれそうな物を買うの)
 邪魔にならない食べ物ならばデスクワークの傍らに楽しむ事が出来るだろうと華蓮は小さく笑みを溢す。
 さあ、向かうはギルド・ローレット。レオンの様子を伺いに行こうではないか。
「遊ぶにゃ! 楽しむにゃ! さあさあ、祭りにゃ、祭りにゃ!」
 るんるん気分の怨寿は幸せそうに周囲を見回す。出店を回って楽しく遊んでいっぱい食べて熱気を上げればそれこそ祭りを楽しむ醍醐味だ。
 皆で楽しんで皆でいっぱい騒げば神様も怨霊も何もかもの心が躍る。怨寿はにへへと笑みを溢す。
「さあさあ、いくにゃ!」
 怨寿が祭りを大盛り上げの最中――ダニエルはニヒルな笑みを浮かべていた。
「祭りといえば……? そう! ナ ン パ ! 美しく可憐な少女たちと甘くとろけるような夏を満喫するため、俺は祭りに乗り出した」
 もはや『台詞』と例えたくなるようなその一言。ダニエルはこの日の為にしっかりと準備をしてきていた。
 仕上げて来たのだ・そう、上腕二頭筋をだ。マッスルで女の子はメロメロになってしまうに違いないのだ――あぁっ、ダニエルってば罪な男。
「さぁ、そこのおねえさん! 俺と一緒に楽しく祭りをまわってみないか? ご飯を食べたり、星を眺めたり!」
 衛兵さん。
 衛兵さん。
「む、俺の邪魔をする気か? いやみなまで言うな。
 お前も一緒にまわりたいんだろう? 俺のマッスルは男でさえも魅了してしまう……あぁっ、やはり俺は罪なオ・ト・コ。いいぜ、俺について来い!」
 ――もはやだれも止められる気はしないのだった。
「おじさま早く! 売切れちゃ……にゃあ!?」
 グレイシアに着つけて貰った浴衣を身に纏ったルアナは派手に転ぶ。慣れない格好は、成程、幼い彼女の足を縺れさせたのだろう。
「そう急がずとも、そうそう売り切れることは……」
 このような格好では転ぶ、と言いかけたグレイシアはやはり、と肩を竦める。軽い擦り傷なのだろうがルアナは何処かしょんぼりとしている。
「この程度であれば、そのうち治るだろうが……」
「でも、折角の浴衣が……」
 しょぼんとするルアナにグレイシアはハンカチを巻く。きつく止血の為に結んだそれ。さっそくと顔を上げたルアナは「もう大丈夫っ」と笑みを浮かべ――
「気を取り直して、ヤキイカと、お好み焼きと、りんごあめと、あとは……」
「その前に、ちゃんとした治療だ。これだけの祭りなら、治癒を行える者が待機しているだろう……屋台はその後だな」
 ひょい、と荷物の様に抱えられて。ルアナはいやだああと叫びを漏らす。グレイシアが心配性……なのかもしれないが、傷は何処から悪くなるかはわからない。
 終わった後は勿論、しっかりと『美味しいもの』を楽しむ時間を用意しているのだが、当のルアナは知る由なくやだやだと足をばたつかせていた。
「浴衣とは意外と歩きにくいものなのですね……」
 雪ちゃん、と。そう呼ぶだけでもどこかくすぐったい。花柄の浴衣を着た雪之丞は頭巾をとったクラリーチェは初めてだと笑みを溢した。
「浴衣は、とてもお似合いです。可愛らしいですね」
「ありがとうございます。髪を出しているのは滅多にないので……雪ちゃんこそ、浴衣姿素敵です」
 ふんわりと微笑んだクラリーチェにつられて雪之丞も笑みを溢す。気になる屋台に行こうと歩み出せば、並ぶ飴細工はどこか『猫だまり』の猫たちのようで。
「猫さんの飴細工。可愛いです。うちの子たちにも似て…。え?」
「こちらの猫は、クラリーチェに少し似ていませんか?」
 え、とぱちりと瞬けば。差し出された猫の飴細工は雪之丞からのプレゼント。
 眼鏡模様の猫が何所か楽し気に笑っている――今日の思い出に、と言われるならばクラリーチェも『雪ちゃん似』を探しましょうと微笑んだ。
 懐かしい、と周囲を見回すルナールにマリスは「馴染みのない行事」とぼんやりと周囲を見回した。
「おにーちゃん、おなかが空きました」
 ぐうう、と高らかな飢えをコールしたテラ。「……我が妹は相変わらずのハラペコ」と苦笑したルナールにマリスとテラは『興味深そう』な雰囲気。
「うむ、おにーちゃんが奢ってやるぞ。一緒に屋台巡りと洒落込もう」
 その言葉に頷き歩み出したマリス・テラ。さあ、その手には大きなたこ焼き。差し出されたそれにルナールはぱちり。
『やるってよ』
「いつも色々付き合って貰っているので」
 その言葉にくすりと笑い差し出したのは林檎飴。自分用のそれはまだ一口も食べてないから――こちらこそを込めての交換だ。
 エンニチ、と口にして。
「今日のこれにそっくりだ、規模も大小色々だなー。
 ……また遊びに連れて行ってやるさ、楽しい事は何度あってもいいからな」
「おにーちゃんは解りますか、ふむまた何かあったら連れて来てください。まだまだ遊びの知識は足りてませんので」
『エンジョイしまくってんな』
 浴衣を着て二人。似合ってるだろうかとちょっとした距離を開けてセレネは歩き出す。その歩幅に合わせて少しばかりゆっくりと、ライセルは「セレネちゃん」と呼んだ。
「は、はい……!」
 慌てて顔を上げるセレネの前に白くてふわふわの綿あめ。おいしそうだろ、と微笑んで差し出す綿あめは甘そうで。
「ほら」
「……美味しいです。ライセルさんも食べますか?」
 お兄さんに任せなさいと言われたそれの甘さに思わず表情が緩む。「美味しいね、甘くてセレネちゃんのほっぺみたいだ」と冗談の様に言われた言葉にセレネははっと瞬いた。
「食べ終わったかい? ほら、お手をどうぞ、お嬢さん」
 小さな手を握ろうと差し出されて、失礼しますと握り返せばドキドキとするのは何故だろう。
「あとさ、言いそびれたんだけど」
 振り向いて、ライセルは言う。セレネちゃん――浴衣、とても似合ってるね。


「ハッピーバースデー、ユリーカ!」
 レイヴンはユリーカににこりと笑みを溢した。折角だ、この機会に『敏腕情報屋』を称えようではないか。
「我々が適切に依頼へ対処できるもの情報屋さんの活躍あればこそだよね。お兄さんが何か買ってあげようじゃないか。なんでも言うといいよ!」
「ふむ、美味しいものはあったかな?」
 レイヴンの言葉にユリーカとレンジーはぱちりと瞬いた。浴衣姿で街歩き中のレンジーは雑な味付けもまた祭りを彩るスパイスだと豪語する。
「ユリーカ、誕生日おめでとう。お誕生日様は人気者だね。
 レンジーはこそりと笑う。プレゼントは後で星を見ながら異世界の星物語を話てあげよう。
 英雄譚が好きで、御伽噺にあこがれて、どこまでも、乙女のように、少女の様に嬉しそうに笑う彼女だから。
「まずは、腹ごしらえに行ってらっしゃい。彼がエスコートしてくれるようだしね」
 勿論だよ、と胸を張るレイヴンにユリーカの表情が綻んだ。
 ぱちり。
 ぱちり。
 繰り返しおろされるのはシャッター。練達特製のカメラは旅人たちの持ち込んだ技術なのだろう。ヘイゼルは常日頃からお世話になっているからお誕生日のお祝いを――と『思い出を切り取っている』。
 例えば、星まつりの為の浴衣姿。
 例えば、誕生日のお祝いの品を渡す場面。
 例えば、今日という特別な日に降り注ぐ流星群。
 残さず掬って撮って保存して。
「あの……ヘイゼルさんは写らないですか?」
「私は写りませんので――ですが、この写真たちをとった人がいたなと思い起こしていただければ幸いなのですよ」
 その言葉にぱちりと瞬く。うれしい、と笑みを綻ばせて。
「ユリーカさーん、お誕生日おめでとーございまーす!」
 走り寄るエマ。ぱちり、とシャッターの音がする。
「えっひっひ、いやーいいですね、ずらっと並ぶ屋台、おやつにご飯。
 それと浴衣! 薄くて着やすくて不思議な形でいい感じです! ユリーカさん、お似合いですよ!」
「エマさんも浴衣かわいいのです!」
 にこりと笑うユリーカにエマが「ひひ」と笑み溢す。さて、今日は誕生日――ならば『こそどろ』からもお祝いを一つ送ろう。
「何食べたいですか? えっひっひ、大丈夫大丈夫、私も依頼で稼がせてもらってますから、お金ちゃーんと持ってるんですよ!」
 それは盗んだものじゃないといい笑顔で答えたエマにユリーカは可笑しそうにくすくすと笑って見せた。
 サイズは悩んでいた。ローレットの看板娘、彼女は沢山の人からプレゼントを貰うはずだ。
 情報屋として動いている以上、『名前』は知られているだろうが面識深くない自分からの誕生日プレゼントを喜んでくれるのだろうか、と。
「まあ……誕生日は武器でも人間でも妖精でも大切なものだ……確り祝わないとな」
 サイズが用意したのは鍛冶屋スキルをしっかりと発揮した星型のブローチ。飾りに翼を添えればユリーカを思わせる。
 透明に寄った水色の、空の様な色の石。売り物としては価値はないだろうけれど、彼女を模れば世界に一つだけのものになるから。
「どうだろうか」
「……ボク、ですか?」
 ぱちりと瞬くユリーカは驚いた様にまじまじとブローチを見詰めて笑みを綻ばせる。ああ、なんて嬉しいんだろう。
「わぁ、美味しそうな匂いがあちこちから!」
 シャルレィスは匂いに魅かれて鼻先をくん、と動かす。屋台で一番おいしかったものをユリーカにプレゼントするのだと意気込んで。
「ユリーカさん! 誕生日おめでとう。一番おいしかったものをプレゼントしようと思ったんだけど、今そこで買ったばかりの熱々をプレゼントだよ!」
「わあ、おいしそ――熱っ」
 びい、と目を伏せたユリーカにシャルレィスは「あっ」と声を上げる。
「ユリーカさん、上っ!」
 指さすそれを追い掛ければ星が空を泳いでいる。また、まただ、と落ちる流星に喜ぶようにシャルレィスが声を上げる。
「ユリーカさんの一年がまた楽しいものになりますように!」
「じゃあ、僕はシャルレィスさんの一年が楽しくって、後、美味しいものでいっぱいになりますように!」
 Lumiliaは星と英雄の物語を奏でる。広場に腰かけて、タコ焼き片手にまったりと星を眺めるユリーカはその物語に聞き惚れる様に息を漏らした。
 好きな英雄譚はレオン『おじさん』に聞いてきた。幼い頃に彼女の父が幼い彼女に伝えたという英雄の詩。
 けれど、Lumiliaはそれは奏でない。あくまで旋律、あくまでフルート。
 今宵の主役は『いつかの英雄』ではなく、空の星と情報屋の彼女だから、
「ユリーカさん、お誕生日、おめでとうございます」
「Lumiliaさん、ありがとうなのです、もっと、お歌を聞かせてくださいですよ」
 広場から見える位置でレッドは手を振りユリーカさんとその名を呼んだ。レッドの目の前には射的の屋台がある。
 レッドの隣には笑みを浮かべたプルーが立っていた。どうやら、ローレットでの仕事を二人で終えて、そのまま屋台に来たようだ。
「ユリーカさーん! こっちに射的なるモノがあるっす。一緒にどうっすか?」
 プルーとレッドを見てユリーカは「面白そうなのですっ」と笑みを溢す。早速と屋台に挑む彼女の料金を払ったプルーの裾をくいと引いてレッドは耳打ち一つ。
 大きな綺麗な色のクマのぬいぐるみ。あれをゲットしてユリーカにプレゼントしよう。
 その様子に待ってましたとフルートは顔を出す。「一緒にいい~?」と微笑んだフルート。射的はまかせろと意気込んで。
「浴衣っていいよねぇ……! なんていうんだろう? 風情がある!」
「なのです!」
 へらりと笑ったフルートにユリーカは大きく頷き――さあ、レッドの作戦通り大きなクマさんをゲットしてみよう。
 夏といえばお祭りだとアレクシアは射的、面白そうだねとユリーカに微笑んだ。
「屋台って食べ物ばっかりなのかとおもってたけど、そうじゃないんだね。ユリーカ君、度の景品がいいだろう?」
「んーと……あの、お花の……」
 比較的取りやすい位置にある玩具を指さすユリーカにアレクシアは了解と頷いた。どこか、アレクシアを思わせる其れをドキドキと見守るユリーカ。
 その後ろでは大いなる作戦が始まっているが――それには彼女たちは気付かぬままだ。
「ユリーカさん! はい! プレゼントです!」
 無事にゲットできたクマを差し出すレッドにユリーカは嬉しいと熊をぎゅっと抱き締める。
 フルートはうんうんと頷いてぐへへと笑みを漏らした。
「っと……私からの誕生日プレゼントは……はい! ぐへへ、お誕生日おめでとう、ユリーカ!」
 小さなジュエリーボックスとメッセージカード。それはとてもうれしくて。思い出を詰め込もうとユリーカは幸せそうに微笑みを漏らした。
「本当に、いつもありがとね! 誕生日おめでとう!」
 さあ、もっとたくさん廻ってみよう、とアレクシアは微笑んでユリーカを手招いた。
「星降る夜に誕生日、ってのはまた随分とロマンチックね。
 何でこの綿菓子ってやつの袋は、無駄にイラスト描かれてるのかしら。てか何素材? ウォーカーの文化って謎よね」
 ぶつぶつと呟きながらミラーカは歩み寄る。普段から世話になっているから『おめでとう位なら言ってあげる』と視線を逸らして告げるミラーカはたくさんもらっているでしょ、とそう告げて動物のキャラクターイラストの描かれた綿菓子を差し出す。
「他の人からもいっぱいもらってるでしょうけど、せいぜい食べ過ぎでお腹壊さないことね。まんまる太ると、スカイウェザーじゃなくてガチョウになっちゃうわよ」
「ガ、ガチョウ……!」
 は、としたように顔を上げたユリーカにミラーカはふん、と視線をそらして「まだ、大丈夫ね」とだけ小さく告げた。
 浴衣姿で夏祭りに出かけるのはどこか懐かしい。花火大会もあったりするのかなと首を傾いだアリスは色とりどりの打ち上げ花火が咲き誇る姿は風物詩だよねと笑みを溢した。
 今日はユリーカの大切な誕生日。たくさんの仕事やイベントを教えてくれる彼女にお礼をしたいとアリスはゆっくりと歩み寄る。
「こんばんは、ユリーカさんっ! もう色んな人が言ってるかもしれないけど、お誕生日おめでとうっ!
 良かったら一緒にお祭りを回らせて貰えたら嬉しいな。楽しい事は皆と分かち合ってこそ、だしねっ!」
「はいなのです! いっぱいいっぱい一緒に回りましょうですよっ」
 その頃、オスヴァルトは苦悩していた――「お金の問題もあるので慎重に。浮かれて食べてたら食費が無い! なんて笑えないですし」と緊張しながら屋台を回る。
 勿論、屋台の準備や困っている人いれば駆けつけてその準備を手伝おうとオスヴァルトは決めていた。
 何をしないで楽しむよりか、何かしているほうがいい。役には立つし、何よりお腹が減る――つまりは空腹はスパイスだ。
「よう、誕生日なんだってな。
 ほかのやつからも大量に菓子をもらってるかもしれんが……とりあえず俺からもプレゼントだ。帰ってから食ってくれ」
 ティバンの差し出したおやつにユリーカは嬉しいと笑みを溢した――が、渡す前にはっと気づいた様に彼は言う。
「おっと、寝る前に食うなよ、それから食べたらちゃんと歯を磨くんだぞ。
 それから飯を食べる前はダメだ、夕飯が食えなくなるからな。約束だぜ?」
「は、はいなのです」
 まるでお母さんだ――そう思いながらユリーカは貰ったおやつを大きめの鞄に詰め込んだ。
「じゃあ、誕生日おめでとうな」
 ひらりと手を振ったティバンにユリーカはこくこくと頷いた。

「……正直な所アタシから祝う気は無いッスよ……悪魔や吸血鬼の施しなんざロクな物にならないのは分かるでしょう?
 ……流石のアタシだってこんな日にそんなことをしてやるつもりは無いさ………情報屋としてもう少ししっかりしてくれとは言いたくなるッスけど……」
 ぶつぶつと呟きながらクローネは珍しくローレットの受付に腰かけて仕事をしているレオンへと告げる。
「……そんなわけでアタシから渡す物は何も無いッスよ………アンタの方は一つや二つ位はプレゼントもあるんじゃないッスか……?
 それと一緒に渡してやればいいさ………今日くらい娘の喜ぶ顔でも見てやったらどうッスか? ……レオン『おじさん』?」
「俺の娘じゃないんだけどね。けど、『彼』からの預かり物の喜ぶ顔は大事なのは分かってるよ」
 レオンはクローネに冗句めかして笑う。笑顔は特異運命座標たちが沢山彼女に与えてやっただろう。
 帰ってきてお腹を鱈腹膨らませたユリーカが明日起きたときに消化が良く食べれる朝食くらいなら用意してやろうと思うとまるで父親の様に言って。
 その言葉にクローネは、そうですかと小さく告げた。差出人不明のスパークリングリンゴジュースをその食卓にでも乗せておいてくれと視線をそらして机の上に一つ、置いて。




 空中庭園に月見団子を持って暁蕾は神殿のざんげのもとへと向かった。
「こんばんは。今日はろーれっとのかわいい情報屋さんの誕生日らしいのよ」
「そうでごぜーますね。何人かの特異運命座標がやってきてメッセージを書いて欲しいと頼まれました」
 金の瞳を細めたざんげに暁蕾は頷いた。ふう、と小さく息をつき暁蕾はねえ、と囁く。
「貴方は夢を見る?」
「――応えたいのはやまやまなんでごぜーますが、『立場』上、あまりフリートークが許されないもので」
 ざんげは小さく呟く。その言葉に暁蕾は、そう、とだけつぶやいた。
「私は何かと戦っている夢をよく見るわ。そして暗闇の中で一人、孤独に居る夢も。
 私は召喚前の記憶がないから、それが過去の出来事なのかは分からないけれど――偶に夢の中で私を呼ぶ人がいるの」
 それは、あなたじゃないみたい。そう言った暁蕾の隣からざんげは立ち上がる。彼女は振り仰いで首を傾いだ。
「記憶、戻ればいいでごぜーますね。これは『ざんげ』としての単なる考えですが」
「いえ、それでいいわ。……そうね、寂しいわね。こんなところに一人」
 その言葉に神託の少女は曖昧に笑う。まだ、『こたえ』られない。

(誕生日、命の生まれた日か。成程、確かにめでたい事だね。
 それにしても、ユリーカ。これ程までに皆から祝福されるというのは……それだけ愛されているという事かな。いや、でも私の言う所の愛とはまた違うような、何だろう、私が知らない感情に満ちている気がする)
 マルベートはスパークリングワインを飲みながら星空を眺める。
「……まあいいさ。此処は素直に祝っておこう。ユリーカとこの星空に、乾杯」
 唯一人、幸福な光景と星空を酒の肴にして。今という時間を楽しもう――お祭りの喧騒から離れた場所は何処までも、静かだ。
「おや、ユーリカ君の誕生日なのだね。いつも頑張ってるし、お祝いぐらい言わないと罰が当たりそうだね?」
 冗談めかした鼎にシャロンはくすりと笑う。
「会えるかな? きっと会えるか。……鼎、何か食べたいものはある?」
 浴衣姿で歩む二人。鼎はかき氷が食べたいなと指先を揺れ動かして。
「私はコーラ味にするよ。ふふ、ちょっと色合いがシャロンの髪の色みたい。シャロン味、なんてことはないけれど」
 冗談めかした鼎にシャロンは「もう」と小さく笑う。大丈夫――照れないよ、と優しい笑みを浮かべて。
「ああ、僕は君に甘い、甘いとも」
「おや、照れなくなったね」
 一気に口に含んだかき氷であたまがきん、とする。その感覚に鼎は大丈夫かいと顔を覗き込んだ。
「……慣れない事は言うもんじゃないね? おっと、あ、あれは、ミス・ユリーカ」
「目標発見だね」
 二人揃ってユリーカを追い掛ける。振り向いたユリーカはシャロンと鼎をその瞳に映し込むと減らりと微笑んだ。
「こんばんは、なのです」
「誕生日おめでとう、ユリーカ君。いつもお仕事お疲れ様、とても助かってるよ。でも無理せずにね?」
「いつもローレットのお仕事お疲れ様です、今日はお誕生日おめでとう。素敵な一年になりますように」
 ユリーカは幸せそうに笑みを溢す。ユリーカの姿を見つけオラボナはゆっくりと彼女の下へ歩み寄った。
「我等『物語』はオラボナ。オラボナ=ヒールド=テゴス。誕生に祝福の星を」
 ギフトで派手に祝おうとオラボナは折角の星の下、花を咲かせる。ぱちりと驚いた様に顔を上げたユリーカが「わあ」と微笑んだ。
 花達は主役たるユリーカの名を呼んだ。おめでとう、と綻んでほしbの使徒混ざり消えていく。
「虚空に花『星』飾りを」
「……きれい、なのです」
 はあ、と息を吐くユリーカにオラボナは頷いた。花飾り、星飾り、きらりと瞬く流星が祝福と変わりますように。
「ん、ユリーカ、お誕生日おめでとう」
『この一年が良きものになる様にだ』
「これからも情報収集頑張ってね」
『無理は禁物だぞ? 無茶ならいいが』
 ティアは神様と共にユリーカの下へと向かった。浴衣姿、お祭り満喫中のユリーカに「何が欲しい?」とティアは告げる。
『好きなものは?』
「ティアさんと一緒に食べれるものが良いです」
 じゃあ、林檎飴を一緒に食べようとティアは小さめのものを購入する。手に握れば、一緒に食べている気分を味わえるから。
「こっちの流星群ってどんなのだろう?」
『元の世界より距離的には遠いが良く見えるだろう』
「少しでも魂が安らかになりますように」
 瞬く星を綺麗だとレイはふらりと歩む。お金の許す限り満喫するというレイはユリーカの下へと歩み寄りユリーカさんと名を呼んだ。
「誕生日なんだってね、おめでとう。それからいつもありがとう。毎日の情報楽しみにしてるよ」
 転ばないようにね、とユリーカを支えるふりをしてプレゼントを詰め込んだ大きめの鞄に星のバッジを飾る。
 気付かぬユリーカの笑みを見送ってレイはもう一度、星巡りに歩み出した。
「誕生日おめでとさん」
 ウィリアムは浴衣姿で焼きそば片手にユリーカへと声をかけた。普段からローレットで見かける賑やかな情報屋だ。
「流星群か。珍しいよな」
「はいなのです。ボクはあまり見た事ないのでうれしいのです」
 ウィリアムは星が好きだが、流星群はまたとない。イレギュラーズとなった転機が流星群だったと告げるウィリアムにユリーカは瞬いた。
「ユリーカにとっても、今日と言う日が大きな区切り……何かの転機になると良いな。
 誕生にはその後の一年の抱負を語るらしい。ユリーカはどんな事をしたい? どんな情報屋になりたい?」
「ボクはろーれっとの皆さんと楽しく過ごしたいです。皆さんのお役に立てる情報屋になりたい、です」
 お父さんのような――へらりと笑うユリーカにウィリアムは大きく頷いた。気丈にあらんとする幼い情報屋。
 彼女の話を聞きながら星見散歩を続けようか。
「おー! ユリーカー、誕生日おめー!」
 ローレット勤めのクロジンデにとってユリーカは幼いころから知っている存在だ。
 大きくなって、と微笑むクロジンデにユリーカはえへへと肩を竦める。
「どっちにしろ情報屋としては依頼をあれだけ回せてるんだから、もー一人前だよねー。
 まだまだおっちょこちょいなとこはあるけど、それは経験で治っていくはずだからねー」
「それならうれしいのです」
 やる気十分のユリーカにクロジンデはうんうんと頷いた。
 さて、お誕生日様に星まつりついでにお祝いをおくってやろうとクロジンデは意気込んだ。
「ボクが奢るだなんて多分初めてだろー。まー、受付嬢の安月給からFAのイレギュラーズに変わったから奢れるんだけどー」
「えへへ、じゃあ、クロジンデさんと一緒にタコ焼きが食べたいのですよ」
「おっ、いいよー」
 聞き耳を活かしてユリーカの元へ戻るアリエールは林檎飴を両手に持ちながら何を買おうかと舞踏の様な軽やかなステップで周囲を動く。
「欲しい物があれば、言ってくれればすぐに買ってくる、ぞ」
 そう告げて、そろそろ咽喉も乾くだろうとラムネを購入してアリエールはユリーカに「まだ冷えている」と差し出した。
「ラムネってしゅわしゅわで美味しいですよね。ボク、とっても好きなのです」
 ヨルムンガンドは屋台がいっぱいあると瞳を輝かせる。全部食べなくてはと屋台特有の料理を期待するのもはらぺこさんのお仕事だ。
「ユリーカが持ってるのも美味しそうだなぁ……。
 ……! ユリーカ、一緒にあの雲みたいなの食べよう……!」
「はいなのです! はい、ヨルムンガンドさん」
 たこやきなのですとあーんとしたユリーカにヨルムンガンドは「あつい……」とぱちりと瞬いた。
「流星群か……! 前の世界でも空ばっかり眺めてたけど…珍しいし綺麗だよなぁ……!
 今は一人じゃなくて…一緒に見る仲間が居て私はとても嬉しいぞ……! この星空は忘れられない星空になりそうだ……!」
「雲を食べながらお星さまを見るってとってもとっても素敵、なのですっ!」
 広告の下にはユリーカの誕生日と書いてあった。それを思い出しながら竜胆は悩まし気に首を傾げる。
 依頼やイベントの紹介で会っていたけれど、何れにせよお祝いの言葉だけでも言わなくてはと瞬いて。
「竜胆さん」
 ひらりと手を振ったユリーカに竜胆はへらりと笑う。
「お誕生日おめでとう、ユリーカ。浴衣、似合ってるじゃない。
 今日は屋台の食べ物でも奢らせてね。本当は気の利いたものでも贈れたらよかったんだけど、ちょっとね」
 竜胆の言葉にユリーカは屋台のご飯だけでもうれしいのですよと微笑んだ。竜胆は浴衣の裾で口元隠し『女性』の様に茶化して笑う。
「出来ればユリーカの好みだとか、今日は色々とお話を聞かせてもらえると嬉しいわ。
 そうすれば来年にはちゃんとした物も改めてプレゼント出来そうだし……ね?」
「じゃあ、ボクにも竜胆さんの事を教えてほしいのですよ」
 ミディーセラは冗談めかして微笑んでユリーカへとそう告げた。
「まあ、まあ。おうさまったら……ふふふ。でも、そうですね。
 勿体無いですもの、潰れてしまうのなんて。そのおかげでこうして流星群の日にユリーカさんの誕生日ばーすでーをできるわけですし。
 なんならユリーカ記念日にしてユリーカグッズも販売しましょう。きっと、ステキな祝日になりますわ」
 その言葉にユリーカは慌てた様に首を傾げる。どうしましょう、なんて、そう言った雰囲気で言って。
 ミディーセラの冗談は冗談の用には聞こえないのですよ、とユリーカは慌てた様に首をふるふると振る。
「わたしが頑張ってのろ……祝福系のアレをこめた黒革のベルトなのです。
 これで物を纏めれば落ちても壊れなくなるし汚れにも強い。意識しなければ外れなくなるのです。想定外の使い方に責任は持ちません」
 少しばかり『怪しい』言葉が聞こえた気がするがユリーカは聞かないふりして「すてきなのですね」と微笑んで見せた。
 きっと『のろ……』という言葉は気のせいなのだ。きっと。
「ええ、ええ。おめでとうございますわ、ユリーカさん。また、来年も祝える事を願っておりますわ」
 浴衣も開けてしまいそうな程に、ノーラははしゃぎ笑みを漏らす、こっちこっちとポテトとリゲルの手を引いて。
「焦らなくても屋台は逃げないから大丈夫だぞ」
 ノーラの手を握るポテトは小さく笑う。まだまだ時間はあるからな、と笑うリゲルにノーラはこくこくと頷いた。
「ママ、ママ、あれなんだ!? りんごがまるまる串に刺さってる! あ、串焼きも美味しそうだな!」
 お肉に買いにエビに具沢山が並んでいる。それだけでも嬉しいと食いしん坊さんはぴょこりと跳ねた。
 天の星に地上の星が輝いているみたいだと屋台の灯りに笑うリゲルにポテトも大きく頷いた。
 ポテトにとっても初めて見る『林檎飴』。串焼きは晩御飯にぴったりだと考えるポテトに「分けっこがいい」とノーラは告げる。
「色々食べたいなら、肉と海鮮と一本ずつ買って食べようか。リゲルは他に食べたい物あるか?」
「俺はたこ焼きにしようかな? 丸くて食べやすい上に、熱々でおいしそうだ」
 親子そろって舌鼓を打つ。ふと、目の前のユリーカを見かけてノーラは走り出した。
「あ、ユリーカ! お誕生日おめでとうだ!
 夜空もみんなも賑やかで楽しい誕生会だな。また来年もみんなでお祝い出来たら良いな!」
「ユーリカ、誕生日おめでとう。この1年は賑やかで楽しかったな。
 これからも楽しいことや辛いこと、色々あるだろうが、皆で一緒に乗り越えていこうな」
「ユリーカは誕生日おめでとう。大変だったと思うが、いつも色んな情報を有難う。また一年、賑やかで楽しい一年になると良いな」
 その言葉にユリーカは大きく頷く。くる、と振り返ったノーラは「パパも」と微笑んだ。
「パパの誕生日ちょっとだけ過ぎたけど、きっとお星さま、パパの誕生日もお祝いしてくれてると思うんだ!」
「そうだな……きっとリゲルのことも祝ってくれている。おめでとう、私のお星様」
 頬にキス一つ。お祝いの言葉にリゲルは幸せ者だなと頬を掻いた。


 貧乳情報屋の誕生日か、とアランは小さく呟いた。周辺警備を担当する自警団たち。今日はなんだかお暇である。
「あ~……しかし、こうやって突っ立ってるのも暇だな」
 大剣を支えにしたアランは小さく溜息を吐く。利香はユリーカをお祝いしたいけれど、何かあると厭だからと警備に回っていた。
 大丈夫、リカちゃんは我慢強いのだ。ひたすらに受け止め続けることくらいオールオッケーだ。
「特にしてあげられることがなくても、ユリーカさんもたまにはゆっくり休んで欲しいですね……」
「そうだな。幻想でここまで星が綺麗に見られる日は、そう多くはないからな」
 ラデリは利香の言葉に頷いた。ユリーカの誕生日をお祝いすいるのだ。折角だからお土産を用意しておくのだっていいだろう。
 利香は警備をして、祭りを楽しむユリーカの安全を見守りラデリはルチアーノから受け取ったタコ焼きを頬張りながら星を思わせる金平糖を手に取った。
 賑やかな場所はスリが増えるかもしれないと周辺を警備するルチアーノは「皆さんお疲れ様」とタコ焼きを差し入れる。
「全員で決戦を生きて帰れたからこそお祭りを思いっきり楽しむ事が出来て、かけがえのない時間だね」
 柔らかに笑うルチアーノ。その言葉にハロルドは大きく頷いた。
「……戦いとは無縁な奴は、ああやって平和の中で笑っているのが一番だな」
 彼女は戦うことができない――いや、正確には戦えるには戦えるだろうが特異運命座標とは少し違った普通の存在だ。
 炭素い気なユリーカを眺めながら彩乃はほっと息をつく。
「良い日ですよね……何も起きないのが一番善いんでしょうけども」
 皆が祭りを楽しむ一助になるならば――騒ぎが起きないようにと彩乃は周辺をきょろりと見回した。
 一緒に楽しむのもいいが、こういう時に誰かがこうして警備をするのも大事だと自警団の面々は心得ている。
 チョコバナナやたこ焼きを購入したアランの隣でたこ焼き一口食べて利香はふうと息をつく。
「あ」
 その視線の先にはユリーカ。彩乃と利香はフフ、と小さく笑う。
「…楽しそうだな。星が良く見える日で良かったわ」
 星の下、ロクとペッカートに挨拶するユリーカの姿が見える。
「ユリカさんは誕生日おめでとう! 情報も沢山もってきてくれてありがとね!
 屋台でクッキーを見つけたんだけど、良かったらお土産にどう? お仕事のお供になるといいな」
 もう一つはお土産にするとクッキーを手にしたルチアーノの言葉に自警団の皆は想いを込める。おめでとう、今日を楽しんで。
「やぁ、偶然。たくさん祝えてもらえてよかったな。まぁ俺もそのうちの一人ってことで数えといてくれ。Buon Compleanno.」
 ユリーカにひらりと手を振って祭りの賑やかしをしているんだとペッカートは笑みを溢した。道中警備やサプライズを楽しむ面々に気付いては、し、と小さく唇に指先あてて悪戯めかす。
「ペッカートさんは楽しんでますか?」
「勿論、楽しいだろう。これ、射的の景品だ。どうぞ」
 ぴょん、と跳ねるロクは何処までも楽し気だ。今日はユリーカの誕生日でしかも、流星群が見られる飛騨。
(……まあ、みんなユリーカさんのためにはりきっているみたいだから、わたしみたいなポンコツは邪魔しないように隅っこでほそぼそ楽しむんだ! 誕生日おめでとう、ユリーカさん!)
 なんて――敏腕情報屋がそんなロクをスルーするわけではなく。小鳥の笛をぴよぴよ吹いているロクと楽し気に歩む。
 お祭りの時に鳴らしていると風情があって楽しいのだとロクは奏で続けた。
「ピーピヨピヨピヨ、ピロロロロロロ!
 ねえ聞いて聞いて! わたしの水笛! お星様も聞いて聞いて! 小鳥の声!」
 ――普段なら煩いけど、今ならとってもとっても楽しい音色に聞こえるでしょう?
「旅人に聞いたが、日本とやらの祭りでは御輿という物を担ぐと風情があるらしいな」
 リュグナーは悩まし気にふむ、とだけ呟いた。縁と共に神輿を作ろうと作業を進めている。
「ほー、流星群の日が誕生日とはめでたいねぇ」
 屋台の面々には説明し、余っている板に飾り付けが出来そうなものを探してきて。椅子を設置して、板とロープで固定する。
 星や花を飾れば祭りの景観も損ねないだろうと考えて作成される神輿は完成間近だ。
 一方で――
「ケーキで御神輿? なんだかおもしろそうなこと考えてるね」
 ミルキィはぱちりと瞬く。神輿という事は結構な大きさのケーキになるだろう。
 タルトは面白そうだとケーキ作りに参戦していた。え? ケーキくらいタルトは出せるだろう、って? ……気のせいだ。
 今日は他のメンバーと一緒に作りましょうとタルトは楽し気に準備を整える。
「ボクはマカロンやチョコプレートなんかをギフトで出してトッピングしようと思うわ♪
 カラフルに、豪勢にいきましょ☆★☆ そういえばアレね、大きなケーキに小さいケーキをトッピングするっていうのも面白そうね……」
 その言葉にミルキィもなるほど、と小さく頷いた。様々なトッピングは用意できるミルキー。
「ま、まぁこれは見栄えが良くなる程度にみんなと相談しつつやりましょ! とびっきり美味しいケーキを作るわよ〜♪」
「マナちゃんもよろしくね♪ わからない事があればサポートするからね」
 楽し気な二人にマナはこくりと頷いた。ケーキ作りは初めてだと緊張した様にマナは生クリームを泡立てる。
「このレシピ本には愛を込めて作れば美味しくなると書かれていますし、とびきりの祝いの気持ちを込めてお作りしましょう……!
 人の為に何かをするというのも、とても良いものですね……ユリカ様の笑顔を楽しみに、頑張りましょう……!」
「そうね♪ 仕上げにユリーカちゃんのマジパンも用意しましょうね」
 一方で――
 祭り、何処からともなくその情報を聞いたクロバは何故か料理を作っていた。
 ケーキはケーキでもなぜか家を作っている。ケーキのお家を作るクロバは燃えていた。
「ダンボールハウスよりかは楽だ。なんせ作った後は食って片付ければいいだけだからな」
 ……何ともすごい言葉だ。和風チックに作るくろば。ノリノリなのはなぜだろうか――
 彼の住まいが段ボールハウスだからだろうか。この死神本当に楽しそうである。
 さて、ケーキと神輿が完成したならばユリーカを迎えに行こう。タルトとミルキィは楽し気に笑みを浮かべている。
 マナはユリカ様とユリーカを呼んだ。
「空を飛ぶ者が居なければ、現状この椅子の上が一番星に近い特等席だ」
「さーて嬢ちゃん、俺達の代わりにナビを頼まれてくれや。右手には何が見える?」
 さて、神輿を担いだリュグナーと縁。それに付きそう女性陣は楽し気だ。
「誕生日おめでとうさん、ユリーカ。今年も沢山食って、沢山学んで、立派な情報屋になるんだぜ?」
「誕生日おめでとう、だな。なに、我らなりのサプライズというやつだ!」
 辿り着けばそこにはケーキ。マジパンのユリーカが楽し気にケーキを散歩している。ああ、それだけでテンションは上がっていく。
「わ、わあ……っ! とってもとっても楽しいのです!」
 自分に翼はあるけれど、まるで飛んでるみたいだったとユリーカは微笑んだ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お誕生日おめでとう、ユリーカ。
 皆さんにこうして祝って頂けれ嬉しく思います。
 ありがとうございます! イレギュラーズたち!

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