シナリオ詳細
<マジ卍文化祭2021>輝け! 学園アイドルフェスティバル
オープニング
●アイドル活動始めます(か?)
「学園祭ですね! アイドルやりたいです」
「校内倫理的にバラエティ風味はちょっと……」
「バラドルじゃねえんですよ!!!」
というやり取りがあったかどうかはともかく。九重 縁(p3p008706)はアイドルとしての活動を本格的にやりたかったのだが、それっぽい依頼を発掘できないまま今に至っている。
だからといって笑ったらケツバットされるバラエティに参加するのはどうかと思うが、まあそれくらい仕事というのはシビアであった。
で、今回。学園祭という美味しすぎる状況に、学生と言い張ってセーフな外見から彼女はここぞとばかりにアイドル活動を決意した。……したのだけれど、クラス単位とかで提案したらバラエティ化を懸念され、頓挫してしまう。なんという酷いことを。
「でも、私一人じゃアイドル活動には限界があります……どうしましょう……?」
縁は自分に自信はあるが、自信過剰ではないので程度というものを弁えていた。希望ヶ浜でそれなりの(知ってる人もいるかな? 程度の)知名度を誇る自分ひとりでは多分、集客は不十分だ。
縁は腹をくくった。文化祭当日までにアイドルとして活動する人員を集めよう。ぶっちゃけスタッフも要る。色々手を回す人間とかいると助かる。
ないないづくしの状態から、絶対に――学園祭のアイドル活動を成功させるのだ!
●体育館だヨ48人くらい集合
そんなこんなで文化祭当日。
そこには、学園側をガッツリ言いくるめてそれなりの時間、体育館ステージ上で出し物をする枠を勝ち取った縁の姿があった。
申請時は机上の空論であった(けど強引に通した)アイドル活動は、取り敢えず形になる程度の状況は整えた(かもしれない)。
集客もした。練習もしてきた。人数は……多分きっと、それなりに揃えた。そこそこ色々手を回した(はずだ)。
あとはどれだけ本番でそつなく、否、盛大に成功を収められるかどうかにかかっている。
(多分)大人数で(きっと)一糸乱れず(もしかしたら)アレンジを加えてアンコールの嵐が響き渡る(かもしれない)!
ステージ上へと颯爽と飛び出して行くアイドル達の姿に――最早迷いなどあろうはずがない。
今日こそ希望ヶ浜に高らかにアイドルを求める声が響き渡る……はず!
「今日までいろんなコトがありました……」
あ、回想には言った。
はい、多分回想4:ステージ6かステージもうちょっと比率あるかな? そんなお話です。
- <マジ卍文化祭2021>輝け! 学園アイドルフェスティバル完了
- GM名ふみの
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2021年10月14日 23時40分
- 参加人数50/50人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
リプレイ
●開幕から濃い
「れでぃすあんどじぇんとるめん!」
「ユカリちゃんのお願いでも無理、無理だってばー!」
文化祭でアイドルフェス! そんなとんでもない計画をブチあげた縁は、柚子を伴って司会として舞台に上がっていた。すでにボルテージが上がりっぱなしの観客――最前にすごいのがいるが――はその掛け声に歓声で応じた。
話を聞きつけた特待生や教師達は、今日この日のために全霊を傾け練習と特訓に勤しんだ。或いは人を集めた。そんなのっけが……。
「オーッホッホッホッ! 『輝け!学園アイドル』……ですって? ノンノン!違いますわーー! 『輝け』ではなく!」
\きらめけ!/
\ぼくらの!/
\\\タント様!///
「――ですわーー!!」
で、ある。
タントの元気の良い声と輝く愛嬌は驚く学生たちを数秒後にはテンションMAXに引き上げ、振るわれる腕に合わせサイリウムが振るわれる。
そんなタントが何を歌うのか? 期待は尽きぬが。
「ぱっぱっぱー、ぱかだくらー♪ ぱっぱかぱかぱか、ぱかだくらー♪」
まさかの『パカダクラのうた』に、一瞬の静寂と万雷の拍手が沸き起こる……!
「……あいどると言うのは、人の心を奪う物だと聞く」
いつのまにか採寸され衣装を用意され歌と踊りのレッスンをみっちりうけたルクトは、得意ではないといいつつ練習の成果を遺憾なく発揮する。
魅力があるとかないとか心配していた割に、動きは綺麗でソツがなく、アイドルらしい歌声とステップは初めてとは思えない。
(だが、視線を逸らせないように……ここで)
ちらりと視線を観客に投げかけ、とりわけ大きい声援めがけ微笑む。
うちわに向けてポーズを取るようにステップ。心得があるものの挙動である。
そして、目立つ理由はそれのみならず。
「アイドルといえばこの私! 『レディ・ガーネット』の彼方ちゃんだよね!」
ルクトのバックで、というか彼女に合わせるように、彼方がアクロバティックに跳ね回っていたからである。
ルクトの歌と、その合間に入る彼方のパフォーマンス。いつ練習したのか、タイミングを合わせハモることも忘れない。経験もスタンスもかなり違う2人の奇跡のセッションは、しかし盛り上がりを加速させることとなった。
そして――そんな2人のセッションが綺麗に整ったのは1人の演奏家による助力があったことを、観客たちはすぐに理解する。
「アイドルらしく、はわかりませんが、音楽イベントだというならわたしの出番です!」
そう、涼花の演奏が大きく貢献していたのだ。タントの牧歌的な演奏に続いて2人のバックミュージックをもこなした彼女は、入れ替わるように前に躍り出ると、激しく楽器をかき鳴らす。
アイドル、とは言うまい。アーティスト、あたりが妥当か。激しい演奏、軽妙なステップ、そして喉を酷使する激しい歌唱。
一般的な意味には遠いが、それもまた偶像(アイドル)的ではあったのだ。
「1日だけのアイドルだけど皆よろしくねー! 一緒に楽しんで貰えると嬉しいな!」
元気よく袖から飛び出してきたスティアは、聖女風の衣装の裾で危うく転びそうになりながらも、それ以外はしっかり目の足取りでステージに立つ。
元気な挨拶と打って変わってきりっとした表情を見せた少女は、静かな歌い出しとゆるやかなステップで舞い踊る。
1人だけの社交ダンスめいた踊りから、盛り上がりのあるサビへ。音楽は徐々にテンポをあげ、彼女の魔力は音となって響きわたる。
笑顔を振りまく姿は、会場の学生達の視線を静かに釘付けにしたのは言うまでもない。
「皆凄いな……でもせっかくの舞台だ、盛り下げちゃいけないよな」
女性(的な外見含む)続きだった舞台で、唐突に躍り出たアオイの、凛々しくも中性的な姿に観客は息を呑む。
小道具に刃を潰した槍を持ち、大胆な動きと通る歌声でもって此方を見ろとばかりに身を捌く。
照れや恥じらい、焦りは総て置き去りにして、彼は彼らしく舞い踊る。
「…………っ、あ、かっこいい」
そんな観客のなかに、リウィルディアは混じっていた。アオイが参加すると聞いて来てみれば、周囲の歓声と彼自身の演技から目が離せない。
アイドルとはなんぞや、というのは彼女にはわからない。だが、アオイが精一杯頑張って、自分らしくを貫いていることは分かる。
常に見る彼の姿とはまた違う、舞台上の彼からしか得ることの出来ないときめきがある。
槍を上に衝き上げ、振り下ろす姿は演舞を超えた凄みがあり、彼の魅力を詳らかにする魅力があり……だからこそ、リウィルディアは暫くの間、己の胸に湧き上がったもやもやとした感情に翻弄されることになるのだろうけれど。
「はい、佐藤でス。今回は観客として参加です。イレギュラーズってとにかく皆、顔がいいでスからねー……っていうかさっきからステージが眩しすぎませんか。タント様ステイ!」
……などと美咲がステージに野次っている中、舞台袖から現れたのは裾が長く落ち着いた色合いの、山ガール風ドレスとも言うべき格好のフラーゴラだった。
敢えて自身を照らさないライト、ゆったりとあふれるスモークのなか歌い出した彼女は、指先を掲げバラードを歌い出す。
寂しさ、会いたいという気持ちを与えてくれた、ここにいない誰か。
全体的に動きは静かだが、迷いながら探るような、そんな所作で思慕を歌い上げる姿は恐ろしく『刺さる』。
「うぅっ、フラーゴラ氏、いやフラーゴラちゃんが眩しい……! そう、そうなの、心を学んでいく少年少女からしか得られない栄養素があるっスよ……! うぁー……! 恋してフラーゴラちゃーん……!」
美咲はもうこんな感じで完全にダメになっていた。恐るべしフラーゴラ。
「やるからには気合い入れますよ! 目指せトップアイドルです!」
そんな気合いの声とともに現れたシフォリィの姿に、観客たちはどよめきをあげた。女性的なフリル多めの格好で現れるかと思いきや、パンキッシュな装いでキメてきたのだ。
「皆さんマジ卍してますかー!?」
「「「マジ卍ィー!!」」」
「いいお返事ですね! さあ今回のナンバーはこちら、伝説のアイドル、リア☆ロックから魔神黙示録のロックアレンジカバーです!」
格好に反して言葉遣いは普段の彼女そのもの。そんなシフォリィの選曲に、誰あろう運営に回っていたリア本人が顎が外れそうな勢いで驚愕する。
「ふxxきゅー!」
「あたしは裏方なのにいきなり煽り倒されてキレそう」
多分リアさんがもうちょっと煽り倒されるのは後のことになりますよ。
「『格好良い』の称号は、男衆だけには渡さないぜ?」
「恰好良いは色々あるけれど、私達故の恰好良さってヤツを見せつけてやりましょ」
そう言って現れたゼファーとウィズィは、黒と赤のセットアップ(スーツ)に身を包み、男性的な歩みで壇上に現れた。
シフォリィが「カッコイイ女」の空気感を温めた後だけあって、観客の反応はかなり激しい。どころか、投げキッスが彼女らから飛ぶのだからたまらない。
声もなく視線を交わして、ちらと観客に笑みを飛ばすゼファーのファンサービスで数名が胸を抑えた。
「この眼で君を撃ち抜きます?──?『Icy-Blue Eyes』」
ウィズィがギターを、ゼファーがベースを。叩きつけ、刻むような音から始まったその旋律と歌声は、ミーハー気味に期待していた少女達の顔を強張らせ、優男達のチャラい気分を叩き切った。
叩きつける声、刻むビート、一瞬たりとも観客から目を離さず、飛び跳ねすらする女達の姿は完全にロックバンドのそれである。
「皆熱くなれたかしら。私達はまだまだ、熱くなれるわよ!」
「今日の主役は……私! そして、ゼファー、出演者の皆……それから、観客の皆! 全員だっっ!」
2人の声に、歓声を忘れていた者達はつんざくような大歓声でそれに応えた。
「文化祭限定ユニット『トリア・リトス』只今参上! 改めまして、アメジスト担当の九重ユカリでーす!」
「私はルビー担当、ジュリエットよ」
「し、シトロン担当、伊達柚子……です……!」
司会者コンビにジュリエットを加えた『トリア・トリス』の3人は元気いっぱいに……いっぱいに? 改めてステージに上がってくる。既に柚子の目がぐるぐる回っているし、ジュリエットは揃いの色違いの衣装にすでに満足げ。縁はそりゃあ堂に入った構えで二人に視線で合図する。
「さぁ柚子も腹括りなさい!」
「ジュリエットさんはもうノリノリぃ……」
一挙一動の豪奢さで人々の目を強引に自分に引き付けるジュリエット、小動物めいて頼りないというのにいざ始まれば冷静なステップ運びと、視線や声を逃さないファンサでガチ恋勢をガッチリ掴んでいく柚子。
そしてそんな2人をまとめ上げるような選曲で、センターに回っても個性を一切損ねない縁のアイドルムーブは成程、言い出しっぺの貫禄すらも漂わせている。
「まだついてこれるでしょうジュリエットさん! 柚子ちゃんは皆を見て! きっと皆が柚子ちゃんにぞっこんだよ!」
仲間達の意識のコントロールからの、自らもきちんと見本として激しくファンサを行う縁の姿は、スポットライトよりも明るく周囲を照らしたことは間違いない。
「なあ」
「なんだよ」
サファイアはルビィに心からの疑念マシマシの視線を投げかける。ルビィは心底不機嫌そうに、「やるしかねえだろ」と返し、両者は舞台へと上がる。
――「やってやろうじゃねぇかよ」と売り言葉に買い言葉で言い出したのはサファイアだった。ルビィは完全に巻き込まれ事故だが、やるからには手抜きができない質だった。それがよくなかった。
「オレ達をナメた奴らに目に物見せてやんのよ、なァ?」
「アタシとお前の2人なら、誰の目だって釘付けだぜ」
そんなノリで、互いが互いを高め合うかのようにトレーニング、ボイトレ、筋トレ……やれることは全てやった。
そして、2人は乱れなきダンスで歩調を合わせ、完璧なタイミングで見つめ合い、呼吸ひとつ乱さず、それでいて全力でアイドルらしさを演出する。
花の妖精モチーフの衣装は、ツンケンしてる雰囲気の2人だからこそバチクソ映え大将軍であり――
「……なんでこんなコトになってんだっけ?」
正直なところ、観客たちもわかってないまま盛り上がっている。
「いやーいいスね。無自覚百合営業からしか摂取できない栄養がありますね」
美咲お前さっきからそればっかりだけど必須栄養素の摂取手段が少なすぎない?
「今日は故あってソロでの参加だ。……新曲だ、聞いてくれ。『可能性の翼』」
堂々とした足取りでステージ中央まで歩いてきたゲオルグは、大きな動きで観客に振り返り、ダンディでニヒルな笑みを見せた。それだけで数名膝をついた。
低く、しかしよく通る声は体育館に響き渡り、まるで空中を歩くような――そんな不思議能力を持つ者は希望ヶ浜にはいないので雰囲気だろう――ステップで人々を魅了する。
「えっ、えっ……ワイヤーアクション?!」
「体育館で?」
「うわ、スッゲ……」
これが希望ヶ浜でやっているということを割と忘れがちのゲオルグのファンサは、ちょっとした騒ぎを呼んだとか呼ばないとかの話になったがギリギリセーフ。
「混沌を揺るがす稀代のソロアイドル、キサナ・ドゥ! ……かどーかは知らねぇが、よろしくなお前ら」
リアが後方音楽教師面で見守るなか、キサナは男装姿で舞台袖から現れる。先程の男装デュオ・セッションに勝るとも劣らぬ期待感がその場を席巻したのは、ピンクで長い、いかにも女性ってノリの髪をひとつに纏め、きりっとした表情だったからだ。
流れる歌は女性のそれ、しかしパフォーマンスが男顔負けのそれだ。男勝りの女性がとみにおおいこのイベントで、然し彼女は個性で負けるところがない。
しっかりと、自分の脚で立っている。
「こからは――お前らの出番だぜ、【イレギュラーズプリンス】!」
●イレギュラーズ・プリンス(前)
「Hey Yo
堂々登場 オレらがイレギュラーズ
危険な運命 世界救うヒーロー
煌々上がる熱気見ろ観客! あっちこっち会場全体は最高潮!
この間奏を駆使したMC.Aceの最高のRhyme
It's like art, everything you see is exciting.
開けた口閉じんなよ? 魅せる音速越えの言葉のシュート
パッと取るぜその心にハットトリック!
さぁさどうぞこの後もお楽しみあれ!」
キサナの呼びかけに応じるように飛び出してきた葵は、ストリートラッパーのスタイルで壇上にあがり、身振りを大きくしつつ軽快なラップを披露する。文化祭の出し物といえば気楽なものだが、それでも手を抜かぬあたりは実に葵らしい。最後の声に合わせるように恭しく礼をし、舞台袖に手を向ける姿に観客の期待度は大きく上がった。
――僕がアイドルって何かの冗談だろう? しかも加賀さん日車さん鳳圏の軍人二人に千尋さんって言う華のある三人に混ざって!
――俺と迅の指導は甘くないぜ! 訓練後アイスを用意しているから頑張れ!
定は最初、【まほろば隊】として舞台にあがる、ということに対し非常に懐疑的だった。だが、栄龍の優しい(?)スパルタの成果は十分あったらしく、特訓前より幾分か顔がきりっとしている。
(越智内! ビシッと止めんだよここは !キレを意識しろキレを!)
そう言って定にアドバイスをくれた千尋は、常のおちゃらけた雰囲気と打って変わって、観客ではなく仲間達、そして自分の一挙手一投足に全神経を捧げていた。
当然だ、今回の彼は、彼らは『儀仗隊』がモチーフ。白を基調とした軍服然とした格好に模擬銃を持ち、4人がひとつの生き物のように振る舞うのだ。
(勇ましい行進曲に乗ってテキパキいきましょう!)
迅の指導は決して優しくなかったが、さりとて礼節と親切心を忘れぬ姿は爽やかな青年としての一面が非常に強い。だからこそ、定は気後れせずにすんだのかもしれない。
歌はない。行進曲に沿って一糸乱れず動く彼等の足音がリズムであり歌声である。
定を除く3名が横に並び、彼等に正対する形で定が観客に背を向ける。
模擬銃を手の延長のごとくに取り回し、振るい、持ち上げ構え直す流れに、気弱な青年の面影は一切なく。最後に投げた銃を振り向きざまキャッチし、観客に向けて撃つ仕草からの残心は、観客たちの喉を唸らせた。
「加賀さん……僕、上手く出来ましたかね?」
「いつどこに儀仗隊として出しても恥ずかしくない姿だったぜ!」
「よくやった! お前なら出来ると思ってたぜ!」
舞台袖で互いを称え合う4人の後ろで、恐ろしく通る歓声が響き渡った。
(ひゃー! 越智内さん「3秒見つめて」の団扇見てくれたかな? 見てくれたよね?!)
歓声の主であるフランは、最前でペンラ片手に目を輝かせていた。葵も、まほろば隊もパない。既に心臓の鼓動がアレだが、まだ本番はこれからなのだ。マジか? 死んでしまうのではないだろうか?
「アイドル、偶像……なるほど、魅せれば良いんだな?」
「ああ、今だけの醒めない夢を観客に魅せるのが俺達の役目だぜ!」
「誘ってもらえて助かったし嬉しいぞ、宜しくな」
アルトゥライネル、オラン、アーマデルの3人は【舞踏花嵐】として、男達の楽園を盛り上げるべく尽力する。
3人ともに身体能力は並の者より高めで、他人を喜ばせる勘所を心得ているフシがある。
改造チャイナ服に身を包むアルトゥライネル、オリエンタルな衣装で現れたアーマデル、そしてホストらしさを隠さず、しかし厭らし過ぎないバランスを保ったオラン、三者三様な統一感のない衣装は、しかし花の嵐にふさわしい華やかさを顕にする。
アーマデルは舞台全体を使うように、スモークを利用してそれとなく仕掛けを重ねていく。オランとアルトゥライネルはそれに合わせるようにステップを踏む。
アルトゥライネルは歌が得手ではない分を踊りでカバーし、オランはその分の歌声を遠くまで響かせる。
しっかりと練習してきたのが察せられる連携は、見た目のちぐはぐさすらも華やかさという統一感を観客に理解させる一助となっただろう。
「……あ、それは爆竹点火……」
アーマデルの言葉にあわせて炸裂した爆竹が、3人のステップをより迫力のあるものへと変えたのは……まあ、言うまでもない。
「アル。皆のステージを盛り上げる手伝いだ。よろしく頼むな。終わったら肉でも食おうぜ」
「グォオオォウッ!」
アルペストゥスは誠吾を背に乗せ、花吹雪に合わせるように雷の欠片を振りまいていく。希望ヶ浜の学生達にその光景はちょっと、というかとんでもなく刺激が強い光景だったワケだが、彼等も自己補完はしっかり出来ているらしく、「SFXってすごいなー」で済ませる気満々だった。
最初はアイドルが混沌にあるのはなんでだよとか、皆が集まって特訓している意味が理解できないとか、どう仲間に入ればいいのやら、だった2人であったけれど、そんな2人だからこそできる演目というのもまた、あるわけで。
(みんなたのしそう。すき)
「皆が盛り上がってくれるなら、俺も裏方冥利に尽きるというものだ。……アル、もうひと頑張りだ!」
もう自分達がどう見られるかなど2人には関係なく、ただただ人々を盛り上げるためだけにそこにいる、そんな感覚だった。
だからこそ――眼下、ステージ上に降りたスクリーンに展開される『その風景』が多くの人達を魅了したのだが。
●イレギュラーズ・プリンス(幕間)
「アイドルの仕事って聞いたからここに来たんですけどまさかの野郎共の裏方ですか!? き、聞いてないです! しにゃだって表舞台でやんややんやされたいですうう!」
「まあそう言わないでくれ。ステージで華やかに輝く者がいるならば、それを支える影……俺達のような黒衣(くろこ)が必要なのだ」
映像のなかで、のっけから響いたのはしにゃこの叫び声だった。よかったな、ステージデビューだぞ。
それを宥め賺すようにやんわりと諭す鬼灯の姿は、なるほど家庭科教師らしい穏やかさと説得力にあふれている。説得力しかないが、まあ章姫が嬉しそうなのでまあよし。
「微力ながらボイスレッスンとか皆の役に立てて嬉しいっすよ俺! 皆すっごい頑張ってるっすから!」
後ろで説得している様子を背にコメントしているのは無黒。『主催』のデザインに近づけた衣装に袖を通し、無邪気に笑う姿は観客の目を釘付けにした。そして、片手間に厳しいボイトレ指導をするのも忘れない。
「長く苦しい戦いダッタネ……」
「歌も踊りも未経験だったから、練習は大変だったけどね」
身体能力はかなりのものなのに歌は苦手なクロバ、そして初めてづくしで皆に支えられながら舞台に立つことになったシャルティエのインタビュー映像が続く。
(ほ、ホンモノを見る前に映像が!? クラリウス様のアップが!)
なお、この時点で観客として隠れて参加していたネーヴェが思わずサイリウムをガンガンに振っている事実も忘れてはならない。
「文化祭ってことはお祭りなんだろう? なら、みんなで楽しまないとね」
「広報活動の依頼は受けたことあるが、こういう風な事は本当に初めてだな……」
ヴェルグリーズとマカライトは、仲間達の真剣な様子に気圧されつつも、しっかり自分らしく、そして誰が見ても恥じるところのない己を魅せるべく真剣に練習に打ち込む。
バックダンサーも、メインのシンガーも、そして観客すらも!
その場に集った男達の楽園の住人なのである。
つまりは――
「先ずはこのステージに集まってくれた俺の呼びかけに応えてくれた皆、裏方となって支えてくれた皆。そしてこの場に観客として足を運んでくれた皆にお礼が言いたい。本当に有難う!」
「改めまして、学園アイドルフェスティバルにようこそ! ……今よりここは熱く煌めくメンズステージ。マジ卍文化祭スペシャルイベントーーイレギュラーズプリンス、開幕です!」
『イレギュラーズ・プリンス』主催であるところのベネディクト、そしてそれに続く魅力を持つハンスの高らかな声にあわせ現れたメンバーは、そのすべてが主役なのである――!
●イレギュラーズ・プリンス(後)
「皆がこうして集まって踊れる奇跡、楽しんでいこう!」
ベネディクトの挨拶と入れ替わりで前に出たシューヴェルトは、MCとしてメンバーの紹介や軽口を叩くことに全霊を尽くす。いざ舞台に出て緊張が続く者もいよう、歌詞が飛びかけている者もいるだろう。
それを纏めてこそ、声と弁の立つ者の役割なのだから。
「俺はアイドルってのが何か詳しくは知らねえ、客として楽しもうと思ってたんだがな……だけど、ダチが人を集めてるっつーんなら手伝うさ。恩のあるやつに声かけられたっつーんなら尚更だ!」
「みんな来てくれてありがとう!今日は一緒に楽しもうね!!」
ルカはそう言いつつも、ベネディクトとあわせの衣装に袖を通し、堂々たる佇まいをキメている。完璧に過ぎる姿に、既に女性陣には失神者が。そして、ヴェルグリーズの声もまた、随分とよく通る。
「レディース&ジェントルメン、ボーイズ&ガールズ。皆様を泡沫の夢へとお連れいたしましょう。準備はよろしいですか? Its Showtime!」
それじゃあ、聞いてくれ。この場に集まってくれた皆に捧げる一曲目は──『Irregulars Prince!』」
フォークロワが恭しく頭を下げるのと、ベネディクトが拳を突き上げ合図をする、その間によどみなくメンバーは隊列を形成していた。
(ベネディクトさんに誘われたんだから、断るわけには行かないよね……だからこそ、上手い下手ではなくステージを楽しみ、成立させる努力を!)
(俺は鳥として……バレない程度にアクロバティックで魅せていくぜ!)
マルクはカイトと手を繋ぎ、互いの動きを引き立てつつバックダンサーに注力する。
親しく、そして敬意を持つベネディクトからの誘い。経験が、実力が、ではない。誰しもステージにたった経験など多くはないだろう。どれだけ真剣であるかを、見せる場なのである。
(ヘマは主役を貶めてしまう。学園祭だからと手は抜かない。努力は如何なる事も裏切らない!)
マカライトは、自分のプライドが決して立派ではないことを理解している。だが、この舞台を形作った人々の努力は得難いものであることも理解している。だからこそ、それを成功させようとする自分に誇りを持てる。だからこそ努力を重ねてきた――その成果は、前で歌う者達をより映えさせることで結実する。
(僕、見た目はちっちゃいにゃ。分かってるにゃ。だからこそ、目立たないポジションで一生懸命歌ったり踊ったりしてる姿に、応援したくなったりするのにゃ)
ちぐさはバックダンサーに徹しつつ、己の体格を理解しているように手を振り、身振りを大きくし、一生懸命であることに全力を注いだ。
目立たないような奴が、目立つことをして。それが人々の目に留まる。その時の落差、カタルシスこそが脇役を主役に引き上げる。身内がそういうタイプに弱かったことを思い出せば、その効果の素晴らしさが理解できる――だからこそ、真剣に!
「今宵の星々の煌きが、どうか皆さんの胸に残り続けますよう。……僕の事も、覚えていてくれると嬉しいな?」
シャルティエの誘うような言葉に、サイリウムを全力で振りながらネーヴェは夢ここちであった。好きな人が舞台の上で頑張って、そして歯の浮くような台詞を投げかけてくれる。
それが誰に宛ててなのかとか、そういうのではなく。ただその言葉が、素振りが、美しいと思うからこそサイリウムを振る手が止まらないのだと、彼女はそこで理解した。
「時の砂が落ちるのは早い――だが、今日の我らはその砂すらも止める。一瞬が永遠になるマジックアワーを、御身に捧げよう」
リースヒースは静かにそう告げ、仲間達が下がるのに合わせて前進する。明るい雰囲気を一気に変えるような、危険でシックな雰囲気はしかし、観客の息を呑む音すら飲み込むような魅力に満ちていた。
リースヒースのバラードが響く。ファンタジックな雰囲気、ステップ、そして流し目。これだけで何人の少女が目元を抑えたかわからない。
「みんな楽しんでる? 精一杯皆の為に歌うからもっともっと楽しんでいってね!」
(きらきらした衣装が彼らしいなとか似合ってるなとか、笑顔が眩しいなとか思ってませんから!! だから明るいところは……!)
ヴェルグリーズの華やかな姿を前に、一般人Cこと星穹は既に喜びと緊張で心臓が止まりそうだった。なお、最前の一般人Aはもう涎と涙で顔がベチョベチョんなってるし、ちょっとだらしないカラダしてる一般人Bは「毎月やりません? だめでスか」とか言い始めている。それに比べれば星穹はまだ……まあ、まだセーフだ。
「本当に、ヴェルグリーズ様は素敵だな……」
かーっ! ほんわかした空気だしやがってからに! かーっ!
奏でろ 喩え終わりが決まってても
星のように可能性集め 新たな未来拓くのさ
Breaking Dispairs イレギュラーな明日を
「――よし!」
「クロバさんお上手なのです! 次は俺が歌う番ですね!」
クロバの鮮やかな(ボイトレの成果が出すぎている)歌声と入れ替わり、ラクリマが前に出る。なおマヨネーズは無いらしいが求めている小娘はいない。
ド派手な音と光をだしつつ舞い踊るその姿は、成程見た目がいいだけに破壊力(物理)もおおきい。だが愛想笑いだ。彼の本当の笑みを見たいと思う女性陣、轟沈。
「さあ――ルカ先輩! ベネディクトさん! マルク先生!まだまだそんなものじゃあ無いでしょう!? 歌え、踊れ、高らかに! 心のままに! このステージの上、僕らは王の群れ。さいっっこうに煌めこう!」
ハンスの高らかな声に、ベネディクト達が前に出る。ことここに至って、バックダンサーに徹していたマルクもベネディクトと背中合わせになり、コーラスを紡ぐ。
こういうところで、ハンスは盛り上げ上手なのだろう。
「あたしがステージに立つ? そんなのする訳ないじゃない、バカバカしい」
その頃、広報スタッフ面に徹していたリアは、既にステージを追えた女子達に煽りに煽られ擦り倒されていた。音楽教師なのにとか、歌に自信がないのかとか。まー全員、わかってやってる。
「あたしは音楽教師よ! このあたしを煽るとか上等よガキ共! あたしの歌唱の実力、全生徒達に思い知らせてやるわ!」
……なおこのやり取りはステージ上でスクリーンにうつされていたわけで、リアに逃げ場など残されちゃいなかった。
どっとはらい。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
【イレプリ】だけで6割ぶっちぎってて、50人なんてチャチい枠にした自分を心から恥じました。
GMコメント
皆さん、本日までよく頑張って頂きました。これからアイドルオンステージが開催されますので成功に向けて頑張って下さい。
……とはならんやろ。ちゃんと順序を踏んでいきましょう。
●やること
マジ卍文化祭でのステージ出し物の成功
●場所・時間など
体育館のステージ上。時間は他シナリオと干渉しないであろういい感じの時間帯を長尺で取れましたヤッタネ!
適当が過ぎる。
一応規模の大きい出し物だとか48人アイドルダンスだとか書いてある書類が通っていますが、多分そうはならんと思います。
●実際のところ
アイドル的なことをすれば大抵OKです。
ウルトラCとして参加者全員で一糸乱れぬダンスみたいなこともできなくはないですが、個別描写という盛大な壁があるので数名単位のグループが入れ代わり立ち代わりがいいのかな? と思います。
なお、若干名ですが演出とかライティングとかあと後方プロデューサー面する人がいるととてもよいです。このアイドル達はワシが育てた。
もちろん「見に来た」って感じでアイドルファンですムーブも歓迎です。優先参加の縁さんはステージだけどまあ、それはね?
なおステージに立つ側のひとは少し「今日まで色々あった……ぶつかりあいとか……」みたいなのを入れると非常にエモ散らかします。
●注意事項
特にタグとかはありませんが、3名以上で動くなら【】でグループ名を指定、ペアとかなら互いの名前+IDをお願いします。
行方不明回避のためです。
●NG(ってほどじゃないけど一応控えた方が映える要素)
バラエティが始まること。おでんとか持ち出したり熱湯風呂が運ばれてきたりすること。
……いや前フリじゃなくて「バラドルじゃねえんだ!」って心の叫びが聞こえたので。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
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