PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ローレット・トレーニングIX<ラサ>

完了

参加者 : 84 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●砂漠のオアシス
「よう、今年もこの時期か。要件は分かってるだろ?」
 君達の姿をみとめ、口元に不敵な笑みを浮かべて声をかけたのは赤髪の男――この国の顔ともいえる傭兵『赤犬』ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)だ。
 照りつける日差しの熱から逃れるように君達は酒場の中に足を踏み入れた。
 ここはラサ――『傭兵』とも通称される砂の国、正式名をラサ傭兵商会連合という。
 深緑ことアルティオ=エルムとの深い交流を持ち、その他に幻想レガドイルシオン、ゼシュテル鉄帝国とも国境を有している。
 砂漠の中に存在するオアシス都市であり都でもあるネフェルストは、その美しさから『夢の都』の異名を持ち、闇市こと『サンドバザール』はイレギュラーズにもなじみが深い。
 そんなラサの特色は数多く所属する傭兵団と、商人達が結びついて成立したことによる『自由を愛する気風』といえよう。
 契約に忠実に、敵にも味方にもなりうる彼ら傭兵ではあるが、そんなこの国が滅ぼされることがないのは、まさに傭兵であるからこそといえた。
 ディルクを頭領とする『赤犬の群れ』や、『凶頭』ハウザー・ヤーク(p3n000093)を頭領とする獣種傭兵団『凶(マガキ)』、砂漠の幻想種とも呼ばれる幻想種の傭兵団『レナヴィスカ』などなど、ラサの傭兵の戦闘力は厄介というに尽きる。

 酒場の中には、ディルクの赤犬の群れはもちろんの事、他にも多くの傭兵の姿がある。
 店の中央を堂々と陣取り、既に酒を呷って出される肉を喰らっているのは凶の獣種たち。
 イレギュラーズに気づいたのか、その集団の中、1人の獣人が視線を向けてくる。
「ファルベライズの一件で見たが、お前らまた強くなってんだろ。俺ほどじゃないが」
 鼻を鳴らすように言ったハウザーが闘争心を覗かせれば、周囲の獣種傭兵も同様に。
 移動民族パサジール・ルメスの故郷『ファルベライズ』。
 紆余曲折を経て封印されていたその遺跡に眠っていた『願いを叶える秘宝』、色宝。
 今から半年と少し前、イレギュラーズはそれを悪用せんとする大鴉盗賊団との争奪戦を制し、同時に遺跡の中で眠っていた悲しき因縁を晴らした。
「あの一件以来、貴方達との合同訓練に参加したいという傭兵は更に増えてきているのですよ」
 柔らかく微笑むのは『砂漠の幻想種』イルナス・フィンナ(p3n000169)。
 レナヴィスカの頭領であり、ラサと深緑の親交を護る彼女は、ディルクの副官のような立場でもある。
 よく見れば、幻想種の集団が一角を占めていた。
 ラサを代表する三大傭兵団――そのトップを含めて酒場に集まっている理由は、ただ一つ。
「此処にいる奴ら全員、今年もイレギュラーズとの『合同訓練』に喜び勇んで駆け付けた連中だ」
「ディルクばっかに楽しませるわけにいかねえだろ」
「さすが、いの一番に嗅ぎつけてきただけはある」
 ハウザーの言葉にディルクが他愛のない調子で返している。
 ちょうど一年前にもイレギュラーズ――ローレットへ合同訓練を持ち掛けたディルクは今年も同じように持ち掛けた。
 あれから、イレギュラーズ側にもラサの側にも、新顔というものが出来てきつつある。
 一年越しの合同訓練にはその新顔の顔も見受けられた。
 ラサに故郷を持つ者や、ディルク、ハウザーに薫陶――あるいは覚えめでたき者などなど、ここに集まるイレギュラーズは大なり小なりラサに縁がある。

「今年は私達も一枚かませてもらいますよ」
 落ち着いた声色で店主と共に姿を見せたのはファレン・アル・パレスト(p3n000188)だった。
 非常に端正な顔立ちをした青年は豪商パレスト家の当主であり、ラサを政治と財政力を以って支えている。
 その発言力は『傭兵王』とも謳われるディルクに次ぐものであり、ラサの重鎮の一人である。
 店主からオーナーと呼ばれたのを踏まえると、ここの酒場はどうやらパレスト家が営んでいるもののようだ。
「こんなこと言ってるっすけど、今日、あんた達が来るって聞いて珍しく張り切って――」
「フィオナ」
 いつの間にか近くにいたフィオナ・イル・パレスト(p3n000189)がそんなことを言えば、言い切る前にファレンに視線で制されていた。
 重鎮パレスト家のご令嬢であるフィオナはファレンの妹である。
 政治的にはたいした影響力もないが、その人柄もあってマスコット的な人気を持っている。
 その上、小難しい政治のお話を分かり易く噛み砕くのに一役を買っている部分もある。
「ともかく、宴が終わり次第、合同訓練を始めましょう。
 商人の中にも、皆さんのことが気になっている者もいることですし」
 話を切り替えるように、ファレンがそう言った。

GMコメント

Re:versionです。四周年ありがとうございます!
今回は昨年同様、特別企画で各国に分かれてのイベントシナリオとなります。

●重要:『ローレット・トレーニングIXは1本しか参加できません』
『ローレット・トレーニングIX<国家名>』は1本しか参加することが出来ません。
 参加後の移動も行うことが出来ませんので、参加シナリオ間違いなどにご注意下さい。

●成功度について
 難易度Easyの経験値・ゴールド獲得は保証されます。
 一定のルールの中で参加人数に応じて獲得経験値が増加します。
 それとは別に700人を超えた場合、大成功します。(余録です)
 まかり間違って1000人を超えた場合、更に何か起きます。(想定外です)
 万が一もっとすごかったらまた色々考えます。
 尚、プレイング素敵だった場合『全体に』別枠加算される場合があります。
 又、称号が付与される場合があります。

●プレイングについて
 下記ルールを守り、内容は基本的にお好きにどうぞ。
 
【ペア・グループ参加】
 どなたかとペアで参加する場合は相手の名前とIDを記載してください。できればフルネーム+IDがあるとマッチングがスムーズになります。
 『レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)』くらいまでなら読み取れますが、それ以上略されてしまうと最悪迷子になるのでご注意ください。
 三人以上のお楽しみの場合は(できればお名前もあって欲しいですが)【アランズブートキャンプ】みたいなグループ名でもOKとします。これも表記ゆれがあったりすると迷子になりかねないのでくれぐれもご注意くださいませ。

●重要な注意
 このシナリオで行われるのはスポット的なリプレイ描写となります。
 通常のイベントシナリオのような描写密度は基本的にありません。
 また全員描写も原則行いません(本当に)
 代わりにリソース獲得効率を通常のイベントシナリオの三倍以上としています。

●成功条件
・真面目(?)に面白く(?)トレーニングしましょう!
・楽しく過ごしましょう!

●訓練について
 住民の迷惑になるようなことをしなければ何をしても構いません。
 傭兵と鍛錬やサバイバルをするもよし、砂漠に出向いて魔物をぶちのめすもよし、ちょっとした遺跡に探検に良くもよし。
 あるいは、アプローチを変えて商人達とお茶会という名の交渉で自分の技術を鍛えるもよし。

●GMより
 こんばんは、春野紅葉です。
 周年ロレトレの担当は2回目でしょうか。今年はラサを担当させていただきます。
 排他処置がございますので、ご注意ください。
 それでは、皆様のプレイングを楽しみにお待ちしております!

  • ローレット・トレーニングIX<ラサ>完了
  • GM名春野紅葉
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2021年08月19日 23時16分
  • 参加人数84/∞人
  • 相談9日
  • 参加費50RC

参加者 : 84 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(84人)

リリファ・ローレンツ(p3n000042)
永遠の0・ナイチチンゲール
シルヴィア・テスタメント(p3p000058)
Jaeger Maid
ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
キドー(p3p000244)
最期に映した男
ラダ・ジグリ(p3p000271)
剣砕きの
上谷・零(p3p000277)
恋揺れる天華
ラクタ(p3p000501)
外なる
ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)
盲目の花少女
ヴィクトリアス=ベラブラッド=ヴァレンタイン(p3p000666)
特異運命座標
ルウ・ジャガーノート(p3p000937)
暴風
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
シエル(p3p001444)
ショゴス・カレン・グラトニー(p3p001886)
渇望
Dark Planet(p3p001915)
闇惑星
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
スティーブン・スロウ(p3p002157)
こわいひと
アリエール=フォン=ウィンクルム(p3p002309)
無鎧(p3p002545)
黒金の大鬼
鞍馬・誠司(p3p003090)
九眞・千(p3p003092)
エレム(p3p003737)
虹の騎士
ナバール・エルディア(p3p004267)
砂に蒔く命
京 千鳥(p3p004351)
緋色の
メル・ディアーチル(p3p004455)
笑顔の仮面
安宅 明寿(p3p004488)
流浪の“犬”客
黒星 一晃(p3p004679)
黒一閃
ヨランダ・ゴールドバーグ(p3p004918)
不良聖女
ティアブラス(p3p004950)
自称天使
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
夜に一条
緋道 佐那(p3p005064)
緋道を歩む者
カティア・ルーデ・サスティン(p3p005196)
グレイガーデン
三池・輝世(p3p006786)
武器をお供に
リック・ウィッド(p3p007033)
ウォーシャーク
グエン(p3p007151)
光阴似箭
ルカ・ガンビーノ(p3p007268)
竜撃
エルス・ティーネ(p3p007325)
竜首狩り
ルクト・ナード(p3p007354)
蒼空
ファルケ・ウェンダール(p3p007385)
砂に笑う筋肉
レミファ=ソラージット(p3p007739)
特異運命座標
ティエンシェ(p3p007879)
蠍追人
バトバヤル(p3p007891)
人馬一体
カスミ・スリーシックス(p3p008029)
愛しき影と共に
トゥリトス(p3p008152)
元気な商人
アルトゥライネル(p3p008166)
舞祈る
アレクサンドラ・スターレット(p3p008233)
デザート・ワン・ステップ
村上 朱鷺子(p3p008445)
はじめての日を終えて
しにゃこ(p3p008456)
可愛いもの好き
黎 冰星(p3p008546)
ラサの悪魔(出禁)
アンネ・アンネ(p3p008564)
特異運命座標
ザハール・ウィッカ・イグニスフィア(p3p008579)
一歩ずつ
蓮杖 綾姫(p3p008658)
断ち斬りの
バスティス・ナイア(p3p008666)
猫神様の気まぐれ
アティ・ザン・フィニガン(p3p008703)
特異運命座標
白鷺 奏(p3p008740)
声なき傭兵
白ノ雪 此花(p3p008758)
特異運命座標
徒花(p3p008799)
4分の1
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
恋する探険家
クンプフリット・メーベルナッハ(p3p008907)
砂翔ける曲芸師
セレステ・グラス・オルテンシア(p3p009008)
蛇霊暴食
シエル・アントレポ(p3p009009)
運び屋
シルヴィア・ザ・フルメタルコア(p3p009115)
レガシーライダー
チヨ・ケンコーランド(p3p009158)
元気なBBA
ラーディス=シュハ(p3p009201)
砂漠の獣
白萩(p3p009280)
虚構現実
藤袴(p3p009289)
探索上手
ナイアル・エルアル(p3p009369)
新たな可能性
ノニ・W・フォーゲル(p3p009408)
趣味は秘密
レリーチェ・ヴァンダーレン(p3p009424)
明けの明星
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
粛々たる狙撃
ナナ(p3p009497)
自分を失った精霊種
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
空に願う
ルナ・ファ・ディール(p3p009526)
月夜に吠える
シユ(p3p009562)
一匹狐
アム・ハーバーランド(p3p009564)
未知への期待
アンケル・ユルドゥズ(p3p009578)
新たな可能性
サルヴェナーズ・ザラスシュティ(p3p009720)
砂漠の蛇
ハビーブ・アッスルターン(p3p009802)
何でも屋
M1C-H43L(p3p009826)
鋼鉄の冒険者
トゥーラ(p3p009827)
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
倉庫マン(p3p009901)
アイテム保管係
ウルファ=ハウラ(p3p009914)
砂礫の風狼
イラリカ ハラス(p3p010039)
宝石吐き
ロザリア・ベルトーニ(p3p010050)
特異運命座標

リプレイ


 フラーゴラを主催とする『商人ギルド』は彼女が商人達と親交を深めつつ自身の商人を売り込もうという思いから始めたもの。
 グエンは会場設営の開始前にそう言って物資運搬を請け負った1人。
 それぞれのパカダクラに満載の物資を積む。グエンが姿を見せた。
「……はて、まずはどこに何を持って行けば良いのデショー」
 首をかしげるグエンの方へ、倉庫マンが姿を見せる。
「倉庫番としてお呼ばれいたしました、倉庫マンです。
 よろしくお願いします」
「あ、ドーモ」
 ぺこりとグエンが頭を下げる。
「物資の内容を確認させていただいてよろしいですか?」
「どーぞどーぞ」
「ありがとうございます。ええっと肉、ジュース、ミルクにお酒……ふむふむ」
 一つ一つを確認しながら、メモを取っていく。
 並ぶステーキ、ドネルケバブにシシケバブ。それ以外にもピラフやナン、揚げ餃子などラインナップは豊富だ。
 トーナメントが終わるのにはもう少し時間がありそうだ。
 今のうちに商人とのコネを作るのが良さそうだった。
「肉屋のゴラをよろしくお願いしまあす……」
 幾つかの商品を小分けに、あいさつ回りとばかりに商人達の方へ。
 もちろん、ひとりではない。
 そんなフラーゴラの口添えをしつつ、ハビーブは自分を売り込んでいく。
 上等の酒や料理の数々の一部はハビーブが妻子を言いくるめて取り揃えた者もある。
 おのずから育て上げたスルターン商会は運営こそ妻子のものとなっているが、言い含めることぐらいはできる。
 なにせ、折角の我が国(ラサ)重鎮や特異運命座標に名を売る投資ともいえるのだから。
「わしじゃよ!!!」
 ハビーブの隣にドンと迫力を持ち顔を出すのはチヨである。
「商人ギルド・サヨナキドリのみで流通しているジュエリー・フルーツを仕入れて生ジュースじゃよ!!
 本物の宝石のようにキラキラ輝く果肉! 甘く濃厚な味わいじゃ!!」
 それは未成年の参加者向けにばあちゃんが仕入れてきたものだった。
 宴は大人だけのものではない。子供らも楽しく騒げる環境こそが正解なのだから。

 ラダは事前に雇っていた楽団との打ち合わせを終わらせて小休止を入れる。
「それじゃあ、私もそろそろあいさつ回りに行こうか」
 そろそろ独自に持つのも頃合いだと思っていた。ちょうどそこへ、言わずと知れた人物を見た。
「ファレン殿、来てもらえたみたいで良かった」
「遅れましたか?」
「大丈夫さ。それより、今日の料理はちょっとお勧めでね。
 まずはしっかり味わってもらえると嬉しい。密かに私も楽しみにしてたんだ」
「それは……ぜひご相伴にあずかりましょうか」
「んだよ。普段のキャラバンとかわりゃしねぇな……お?」
 ルナは会場の様子に思わずつぶやき、その視界にラダを見た。
 そのまま近づいて声をかける。
「おぅ、相変わらずの商売人だな。頭が下がるもんだ。
 話してばかりじゃ喉も干からびちまうぜ」
 少しばかり話して後。
「 いつぞやの約束だ。若い女が潰れんなよ。んじゃな」
 忠告だけ残して別の場所へ歩き出す。

 ロザリアはファルンへのコンタクトを試みていた。
 ラサの商人、その中でもトップ実力者――ファレン・アル・パレスト。
 そんな彼であれば、兵站等の戦準備に秀でていないとは思えません。
 これから先の自身の目的を考えればそれは学んでおきたかった。
 あらかたファレンとの話を終えたロザリアは立ち上がる。
 目指すは最果て、ラストラストとの境界――終焉の監視者『クォ・ヴァディス』。

「ん~、いい匂い。それに目にも楽しい賑わいで……これは忙しくなっちゃいそうだ。
 体力には自信あるし、給仕として目一杯働くぞー!」
 元気よく「おー」と手を突き上げたトゥリトス。
(それに、こんなチャンスあんまりないし他の方もしっかり見て商売の勉強させてもらおっと)
 商売人らしく目ざとく目を輝かせるのだった。
「美味しそー。味見していいかな?
 説明を求められた時にぱっと答えれるようにしたいし」
 こんがり焼かれたステーキの方を見て、ちらりと視線を上げた。
 アレクサンドラは配膳の準備を進めていた。
 その一方で、新しい材料を持ってくる商人達には遠慮することなく声をかけていく。
「運送業は信頼第一! そしてその信頼を積み重ねるためにもまずは顔と名前を憶えて貰うところから、です!」
 ――と、じっと眼と眼を合わせ、顔と名前を覚えられるよう、覚えてもらえるように丁寧に進めていった。

 集まってくる傭兵や商人の様子をサヴェナーズは静かに見ていた。
「こんなに人が……盛況ですね。
 きっと、これまでに積み重ねてきた信頼がなせるわざなのでしょう」
(これだけ賑わっていれば、少しくらい訓練をさぼってのんびりしても、気付かれないでしょう)
 空へ舞い上がろうとしたその時、確かな視線。
 振り返れば少年が一人。
「あの、いつからそこにいらっしゃったのでしょう最初から?
 そうですか――私、このフルーツを食べるという重大な任務がありますので!
 きょとんとした彼をその場において、サルヴェナーズは飛行していく。

 そうやってやがてくる宴への準備を進める一方で、個人的に商人達と話をしようとする面々もいた。
 ことほぎはこそこそと数人の商人へ近づいていた。
「オレ、幻想国内の領地で人材育成と人材派遣をやってんだケド、どーにも人が足りなくってな。
 アンタ達、いい人材(ネタ)ないかい?」
「それってぇと、人を売れってことか?」
 商人は少しばかりバツの悪そうな表情を浮かべた。
「……人身売買? 違うが??? まー奴隷業は以前のゴタゴタでやりにくくなってるだろーし、
 そこにつけ込もうって気がないでもないが! あくまで合法的な商売だって!」
 声を押し殺して、こっそり商談を進めてみれば、訝しむ様子や警戒する様子を見せていた彼らも乗ってきた。
「いつも仲間や父がお世話になっております。今後とも父とイレギュラーズをご贔屓に」
 そう言って頭を下げるのは穏やかな笑みを浮かべた狐ないしは犬科の動物を思わせる女である。
 彼女――アリエールはいつもの姿とは明らかに異なる衣装で溶け込んでいた。
 自身が将来、商人となるか、冒険者のままであるのか――分からぬものの今のうちからパイプを作っておくことは利益になる。
 そう判断しての事だった。


 ラーディスは盧銀が幾らか残っているのを見ると、バザールの中に入っていく。
 購入したのは1つのネックレス。
 それを手にして、相も変わらず照り返す砂漠を見た。
「――よし。一息ついた。予定も決まった。
 あと何kmか数えるのも面倒だが――このまま砂漠を突っ切って、バザールまで走るとするか」
 面倒なうえに億劫だった故郷から離れるように、一気に走り出す。

「これまた、海洋王国とは全く異なる土地じゃな。
 あちらの姿では干物にでもされてしまいそうじゃ」
 シエルは賑やかなバザールを歩いて回っていた。
「随分と大盛況のようじゃな。あっちは衣類で……こっちは小物か。
 あそこのは海洋のアクセサリーかの? こうして見ると随分色々な場所から物が集結してるよう。
 なるほど、これは楽しくもなるものよ」
 興味深くひとつひとつを探しながら、折角だからと土産を買おうと探していく。

「やっぱり闇市でアイテム探しだよな!」
 にやりと笑うリックは商人との繋ぎをえながら砂漠のバザールにウインドウショッピングを楽しんでいた。
 いつか、覇竜の領域へと足を踏み入れねばならなくなるその時までに、新たな力を付けたかった。
「しかし、新緑にも鉄帝にも覇竜にも接してる、このラサってすごい場所だなー」
 大陸の中央に陣取る砂漠の国へ、リックは思わず思いを馳せる。

「ゔぇー……あっっっっつい……なんでわたしラサに来たんだろう…
 良い機会だからバザールを見てみたい、っていうのは確かにあったけれど、
 夏じゃなくても良かったんじゃないかなぁ!!」
 乾燥している分だけマシでもあるが、敵の疲弊は明らかだ。
「でもしょうがないや。自分で選んだ事だから、頑張ろう! むん!!
 あ、これは何だろ……商人さん、少し教えて欲しいな」
 自分を奮い立たせてバザールを楽しむ朱鷺子はふと立ち止まる。
 綺麗なその何かに興味を示して、朱鷺子は商人に問いかけた。

「えぇーっと、まだ探してない場所、と思って来てみたのですが、森、無い感じでしょうか……?」
 困惑しているのはアティである。
 ためしに商人達から情報を集めてみるに、完全に木がないわけではないらしい。
 ちらりと視線をバザールに巡らせれば、にぎやかな声がする。
「記憶の風景とは違いますが……、これはこれで、結構好きかもしれません」
 微笑し、いい香りに釣られるようにアティは歩き出した。

「すいません、少し商品を見せていただきたい」
 ノニが訪れたのは生地や装飾品を主な商品として売り出している商人だった。
 服飾工房を切り盛りする妻へ珍しい記事があれば持ち帰ることにしていた。
「これは美しい、妻の翡翠の髪にも似合うことでしょう」
 ちょうど見つけた生地に感嘆の息を漏らして、それを購入する。

「なんだこのクッソ集合タグ!?」
「ふっふっふー……この募集名良いでしょう? 紹介と商会を合わせた高度なギャグなんですよ?」
 呼ばれてきてみれば、良く分からない集合タグに驚いた無鎧に、ティアブラスは酷く棒読みに答える。
「ほら、神様である天使に逢わせちゃうーと、逢うための条件の免罪符を売りつけるという、私の高度なギャグセンスが輝いてしまいますね?」
「うわっ……、すんごい酷いギャグを聞いたわ。
 悪いけどそれ、絶対お客の前で言わないでね? 絶対滑るってわかるし」
「なるほド、コレが高度なギャグセンスというものなのですカ……」
 ドン引くエレムを他所に、Dark Planetがしきりに感心する。
「いや、Dark Planet、冷静に分析しても何も上手くないぞ」
 熱心にメモるDark Planetに無鎧は呆れ半分にツッコミを入れた。
「というか、そろそろまともにトレーニングをだな」
「ご冗談を、この美しき肌が傷を負っていいとでも? 罰当たりな言葉ですね」
 無鎧の言葉に全くの無表情で言い切れば、ディアブラスは懐から何やら胡散臭い像を取り出した。
「それより今回も私の正教活動を手伝ってもらいますよ、いいですね?
 ほら、今日は一人5個ずつ、この幸運で不幸をもたらす女神像を売りつけry
 ……ごほんっ、布教して信者集めに動きなさい」
「語るに落ちてるんだよなぁ……それに、我は何度も言っているが貴様の使いではないのだぞ。
 護衛程度ならやってやってもいいが、完全に販売なら貴様でなんとかしろ、我は知らん」
「えー……、この如何にも胡散臭そうなアイテムを信者に売りつけようっての?
 私はやめた方がいいと思うんだけど……」
 腕を組んで拒絶の意を示す無鎧とドン引きするエレム。
 Dark Planetは純粋に感心して更にメモを取っている。
「フフッ……、ワタシは皆さんと一緒に居られるだけで新しい事も一杯理解出ますのデ
 それニ、何だと言いながらモ無鎧さんモこうしていてくれまス、それだけでも嬉しいものですネ」
 突っぱねる無鎧にDark Planetが言えば、無鎧はふん、と鼻で笑う。
「そうね、こうやっていつものメンツで何だかんだ活動できるってのも悪くないものね。
 これが良い事かって言ったら疑問は残っちゃうんだけどね」
 肩を竦めつつも、エレムが同意すれば、4人も動き始める。


 それは砂の都ネフェルストの外、郊外に位置する場所にその場で創設された簡易の闘技場。
「ラサの闘技トーナメント開催だよ!」
 開けた広場で舞踊を示すはミルヴィだった。
「優勝者はこの後フラーゴラ達の『商人ギルド』が出してくれるご飯を食べ放題!
 更にアタシが一晩お酌や踊りのサービスするよ! あっ、でもいかがわしい事はダメだかんね?」
 ウインク1つ、汗の滲む美しき肢体を揺らして宣伝と共にアピールして見せる。
「ラサの傭兵どもも呼び込んだ、イレギュラーズ企画のトーナメント形式の戦闘訓練……ねェ。へ、いいじゃあねェか」
「個人の強さを極めれば嫁を守る力も手に入るか」
 パンフレットを手にしたキドーと、ジェイク。
「未熟な身なれば負ける経験も血肉になるというもの」
 同様に気迫を見せるのはアルトゥライネル。
「そんじゃ、優勝狙ってくつもりで参加するとすっか」
「勿論、負けるつもりは毛頭無いが」
 キドーに続けてアルトゥライネルが言えば、ジェイクも同様に。
 3人の他にも、腕試しを考えているイレギュラーズや傭兵達が続々と集まっていった。

 参加者がある程度集まった頃、闘技が開始された。
「おう傭兵ども! 俺の顔憶えておけよ。
 テメェらを手こずらせた大鴉盗賊団の頭コルボのトドメを刺したこの俺を!」
 キドーが宣戦とともに告げた挑発にも似た言葉に、傭兵の雄叫びが響く。
(優勝も名声も知名度も手に入れてやる。なんたって、ゴブリンは強欲な生き物だからな!)
 砂漠に溢れ出る水の邪妖たちが踊り傭兵達の動きを乱すのを見ながら、キドーは盗賊らしくにやりと強欲に笑う。

 銃声が戦場を彩っていた。
 大型拳銃『狼牙』と凶銃『餓狼』より超高速で放たれた銃弾がある傭兵を撃ち抜いた。
 やや遅れて相手が放った弾丸が直後にジェイクの腹部を掠めるように抜ける。
 戦場であれば、個人よりも集団間の連携がものをいう。
 これまでは闘技の場では、勝手が違う。
「まだまだ……さぁ、次は誰だ」
 それでも、戦場で培った技術は間違いなく。

「いざ――」
 疾走、眼前の傭兵の放った矢を文字通り舞い上がって躱せば、そのまま肉薄。
 アルトゥライネルはまさしく舞踏の技を以って迫り、狂熱的でさえあるダンスの合間に短刀を撃ちだした暗器が傭兵に撃ち込まれる。
「……手合わせ、感謝する」
 崩れ落ちる彼を見届けて、少年は礼を告げて次へ。


「いやぁ、鉄帝とどっちに来るかは悩んだんだけどな?
 まあラサの傭兵さん達の方が、アタシにとっちゃ参考にさせてもらう所が多そうだ。
 ――よろしく頼むぜ」
 獰猛な笑みを浮かべたシルヴィアが引き金を弾いた。
 模擬弾が構えた傭兵へと殺到していく。

「さて、さて…最近は依頼にも出ずじまいだったけれど。こういう機会を逃しては、ね。
 研鑽の良い機会だもの。誰か一手、試合でも如何かしら?」
「であれば、俺が相手しよう」
 それは両手で剣を握る傭兵だった。
「実りのあるものになる事は保証するわ」
 その言葉と同時、佐那は走った。

「カスミ・スリーシックスと申します!
 今回は、このような機会を与えて頂き有難うございます!」
 名乗りを上げたカスミに、数人の傭兵が視線を向ける。
 死なないためには、少しでも力を付けなくてはならない。
 しっとりと滲む汗が、片目を潰す。
 カスミの名乗りに応じるようにして肉薄してきた男の剣を、弾いて前へ押し戻す。

「ちっこいねえ……」
 構えを調整するジョシュアをみたある傭兵が思わずつぶやいた。
「……は? いえ、小さいのは背丈だけです」
 その言葉に、ジョシュアは引き金をかけた指に力を籠める。
「これでも先のファルベライズの件では部隊に参加していましたし。
 ……まぁいいです。僕はいつだって冷静なんです。
 見た目はどうしたって子供ですが技術は磨く事ができますから」
 そう言って撃ち抜かれた的が、綺麗に脳天をぶち抜いているのは――はてさて。

「あはははっ…! 可哀想なナナじゃ戦えないもの! 私が全部壊してあげる!」
 哄笑を上げるナナにしてナナならざる誰か。
「訓練だから殺しちゃいけないんでしょうけど、力を抑えて戦うなんて、特訓の意味もないでしょう。
 私に挑戦してくれる人は――貴女ね?」
 懐へ潜りうちこんだメイスが魔力を帯びて傭兵の加護を貫いた。
 大失敗か大成功か。二者択一の天秤に揺れるナナの衝撃に、傭兵が後退する。

 矢が降り注ぐ。
 砂漠の幻想種、レヴィナスカの文字通りの雨が如き無数の矢が。
「小物は小物らしく、傭兵達と暴れてドンパチやろうじゃねえか!」
 啖呵を切ったアンケル。矢を迂回した『凶』の構成員の爪が食い込んだ。
「後衛のレヴィナスカから倒したかったが……まあそうはいかねえよな!
 ハハッ、凶の奴らとやり合えるなんてサイコーじゃねーか!」
 爆ぜる業炎が周囲の砂を舞いあげる。
 舞いあげた砂の向こうから、矢が飛んできた。

「今回もよろしくお願いいたします。もちろんお礼もいたしますよ」
 そう言って笑う徒花は凶の面々と向かい合う。
 個人的には、仲良くなれたと思っていた。
「アンタか」
 構成員の一人がじっと徒花を見つめている。
 向き合い、鋼線を開く。踊るように徒花は相手へ向けて鋼線を叩きつけた。

 主戦場よりやや離れ、ルクトは集まってくる傭兵達に視線を向けた。
「……空を志す傭兵諸君。あるいは、空に焦がれた傭兵諸君!
 翼を持たぬからと言って、貴殿らが空を諦める理由にはなりはしない。
 例え無茶と言われようと、体に無理があろうと、空を舞う事をやめる理由はない」
 集まってきた傭兵達へ、堂々と語る文句に、彼らのボルテージが上がっていく。
 偽翼を彼らへ与え、一足先に空へ。
「――さぁ、蒼空の下で私と舞う者は居るか!!」
 応じるように出た喊声、偽翼を付けた傭兵達がルクトへ殺到する。

「ほう、あのような動きが」
 黒い日傘を差して、ラクタは戦場を見ていた。
「小さき者は面白いことをする」
 無表情のまま、淡々と訓練をしている面々を観察する。
 限界になったらしいある傭兵へと、戯れとばかりに魔術を仕掛けて回復させてやれば。
「また戦う姿をわたしに見せるといい。わたしはそれを望んでいる」
 そう、静かに告げるのだ。

「はーはっはっは!! 今年もこの季節がやってきた!
 ラサは暑い! 暑いと何が起きる? 答えは──熱中症である!!」
 筋骨隆々とした男が胸を張ってよく通る声で笑っている。
 男ことファルケはボリュームを下げることなく、闘技場でぶつかる傭兵やイレギュラーズのうち、体調を崩しかけている物を見つけては走る。
「水だけでは足りぬからな。塩も準備してあるぞ!! さぁ、思う存分、筋肉を鍛えるが良い!!!」
 熱かった。夏よりも暑い男の熱いサポートに支えられ、再び走り出す。

「おうおう、賑わっているな。俺の店も繁盛すると良いが」
 そんなファルケ同様に疲労を嵩みつつある者達へ水を手渡しているのはバトバヤルである。
 もちろん、こちらは有料。少しばかり高くともそこは技術料。
 キンキンに冷えた飲み物を飲める代償だ。

「おおー! 今回も盛り上がってますね!
 サバイバル鍛錬でも魔物退治でも、武器は少なからず消耗する。
 それなら、手入れをする職人もそれだけ必要なはずですよね!
 皆さんの武器の手入れを承りますよ!」
「おーい、相棒? いつものことだがあんまりはしゃぎ過ぎんなよ」
 目を輝かせ、だらしない笑みで武器を見つめる輝世を酔醒が宥めている。
 いつもの光景だった。
「武器の手入れをする人員は確かにありがたいだろうが、
そんなだらしない笑顔のまま武器を見つめてたら客がドン引きするだろう」
 そんな言葉にハッとする輝世だった。


「トレーニングですって、バスティスさん!
 面倒くさいですね!! 楽に強くなりたいですよね?
 神様なんですから、神パワーでどぎゃーっと強くできたりしません?」
「しにゃちゃんは楽に強くなりたいんだね。
 よしよし、ならばこのバスティスさんにお任せあれ。
 神パワーで強くするようなことは出来ないけれど強くなる手伝いをしてあげるよ!」
 開口一番とんでもないこと言い切ったしにゃこにうんうんと頷いたバスティスは笑みを浮かべてリングをしにゃこに差し出した。
「お、できるんですか! 話が早くて助かります!」
「まずはこのリングを両手で持ち上げてね。神力を込めたからちょっと負荷が強いよ。
 背筋を伸ばして胸の前に、基本の姿勢を出来る限りキープして……あとはその場でストレッチ、あ、しっかり足上げてね」
 目を輝かせたしにゃこがソレを受け取ると、バスティスはさっそく話を始める。
「このリングを両手で持ち上げて……この姿勢をキープ……なるほど! これだけで強くなれるんですね!?
 はー………………いやこれ長く続けると滅茶苦茶しんどいんですけど!?」
「さて、これから本番と行こうか。これより行われるは猫神バスティスの与える神の試練!
 千荊万棘にして艱難辛苦なる苦行の数々、しにゃちゃんの持つ無限のスタミナで
 乗り越えてみせるのです!」
 満面の笑みであった。
「え、本番? いや楽に強くなりたいって話で……無限のスタミナなんてないです!
 ただの美少女ですよ!? ちょっと、引きずらないでください!
 ああああー! 嫌ー!! 誰か助けてー! 神の裏切りがー!」
 引きずられていくのは、ネフェルストの外――魔物のいる砂漠へ。

「ここが豊穣……」
「いえ、違いますよ。ここはラサです……また本能に従ってしまったのですね、仕方がないですね」
 目を輝かせるザハールへ突っ込むと共に此花は生暖かい目を向ける。
「……まあ、結果オーライってヤツ!」
 じとっと視線を向けてから、此花は顔を上げて。
「それにしても強烈な日差しですね……」
「やっぱり夏はこうじゃなくちゃな! 海の方は暑さだけじゃなくて湿っぽくてな……
 やっぱ砂漠のカラッとした熱さの方が過ごしやすいだろ?
 此花も夏らしく裏表こんがり焼こうぜ!」
「私は溶けはしませんが、日焼けはあまり。炎症ですからね、あれ」
 さっとフードを目深にかぶって。
「よっし、折角だから砂漠で魔物をぶちのめそうぜ! 何頭イケるか競争だ!」
 言うや否や、ザハールはびゅーんと走り出して。
「『折角』の概念が乱れていますよ? やるなら連携の訓練にしましょう
 ……と言ってる間にもう行っちゃいましたね。鳥が苦手とのことですが……彼、鳥頭なのでは?」
 疑惑を向けながら、此花は走り出した。

「よぉお前ら。しっかりやってるか?
 腕上げたかみてやるから気合入れろよ!」
 ルカが呼び出したのはクラブ・ガンビーノに入った2人の新人。
 とはいえ、正面からぶつかるわけじゃない。
 寧ろ今回は、ラサ側だ。
「うかうかしてりゃあ俺も超えられちまう。
 だけど俺にも意地がある……やるべきこともな。
 だから、まだしばらくは俺の背中を見てて貰うぜ!」
「はい!」
 迫りくる魔獣へ黒犬を構え、獰猛に駆ける。
 その後ろを、アミラとジャミールがついてくるのを感じた。

「ディア……アンタは相変わらず非力だねぇ?
 ちったァリーチェを見守ったらどうだい?」
 煙草に火をつけたまま、陣より放った魔砲で直線状の魔物を焼き払い、ヨランダはその視線をディアーチルに向けた。
「そうですよディア兄様。この程度の魔物こうして……」
 モーニングスターを構え、真っすぐに叩きつけたレリーチェは、そのまま力押しでメキメキと魔物の頭部を砕いた。
「こう、すり潰せなくてどうします」
 しれっと担ぎなおせば、そのまま視線をディアーチルへ戻す。
「ったく母さんもリーちゃんも無茶し過ぎなんだから。
 あー無理だよ無理。オレ、そんな力持ちじゃないしー……
 っと、リーちゃんそこ気を付けてねー?」
 言いながら弾いた引き金。放たれた弾丸は、レリーチェの真後ろで起き上がった魔物の脳天を再び貫いた。
「あら? ふふ、相変わらず狙撃の腕前は流石ですわね」
 舞う砂埃、レリーチェはふるふると顔を振って砂を落として微笑んだ。
「にしてもこんなモンかい? 肩慣らしにもなりゃしなかったよ」
 倒れた魔物を見下ろして、煙を燻らせる。
「まっ銃の腕前だけは一丁前になったがね」
 ダメ押しとばかりに蹴りを叩きつけて、ヨランダはからりと笑う。
「いやいや、全く。ノンスコープで狙撃しなきゃいけない状況なんてどうかしてると思わない?」
 手を振ってディアーチルは否定する。

――渇望するは味だ。噛みごたえだ。血肉の香りだ。
――寄越せ、寄越せ。お馴染みの狩り時間だ。
 深い、底のような印象を思わせる赤が魔物を見る。
 青白いライオンのような魔物は、それを見て怯えたようにたじろいだ。
 腹の音が鳴る。ショゴスは静かに笑みだけを零し、全身の玉虫色の粘液をどろりと降ろし。
「テケリ・リ」
 射出された粘液が魔物を貪り喰らう。

 明寿はふるふると顔を振って汗を落とす。
 モフモフの秋田犬の毛皮をしっとりと濡れてしまっていた。
 自身の顔の下あたりに触れてみると、湿った毛皮の感触。
 眼前に姿を見せた蠍型の魔物に向けて、明寿は刀を構えた。
「魔物は多少なりと退治しておいたほうが道の邪魔が減ろうなぁ」
 避けていたわけではないにしろ、今までさしたる縁のなかったこの国。
「さて、参ろう」
 気迫に中てられた蠍が肉薄してくるのに合わせ、明寿は刀を振り下ろした。

「実はレミーは今まで来た事無かったのデス。
 そしてローレットの前は軍所属だったデスので、傭兵の生き方とかも知らないのデス。
 どんなもんデスか?」
 首を傾げ、レミファは近くにいる傭兵へ聞いてみた。
「まあそういうのも、戦い方に生き方が反映されるとも言いますデスし……よろしくデス。ちなみにレミーは」
 そう言うや否や、レミファはパチン、と指を鳴らす。
 空間に浮かび上がった魔方陣より巨大な火砲が姿を見せた。
「それでは、早速お見せしましょうデス!」
 視界に見つけた2匹の魔物。日で出来たやたら大きな蜥蜴のようなそいつに照準を合わせ――
「Fire!
 デス!」
 奈落の呼び声とも呼ばれる不意を打つ砲弾が2度に放物線を描いて魔物を貫いた。

 アンネは砂漠の中に立っていた。
「訓練? アンネはマスターの指示があったから砂漠に来た。
 装備も持たず、何の対策もせず、砂漠で魔物たちと戦えって」
 驚いた様子を見せた傭兵からの問いかけを『それが当たり前』とばかりに返し。
「それがマスターの望みなら、アンネは躊躇わない。マスターが悦ぶなら、それがアンネの喜び。
 魔物たちがどれほどのモノかはわからないけど、負傷も厭わずに戦う。
 アンネが傷つくことも、倒れることも、全てはマスターの悦びに繋がるのだから……」
 言うや否や、アンネは姿の見えた魔物めがけて突貫する。
 反撃は苛烈に、重く刺さる。それが喜んでもらえると信じて。

 冰星もまた、砂漠の只中に立っていた。
 近くには偶然ながら凶の一団が見える。
 獰猛に、過酷に、瞬く間に幾つかの魔獣が刻まれる。
 じっと見れば、あの人が――ハウザーがそこに入るようにも見えた。
(僕はあの人の役に立ちたい。せめて視界に入りたい。足元に及びたい。
 ……僕は凶じゃないけれど、それでも、あの人のせめて後ろを歩けるように)
「烏滸がましい? 分かってるよ。………分かってるよ!!
 それでも――来い! 魔物ども!」
 複数の魔物が見える。
 小柄を生かした鮮やかな身のこなしで魔物を躱し、撃ち込んだ足がまるで手応えのない魔物を屠っていく。
 それから少し。
「――っぐ! いてて……かなり張り切りすぎちゃった……」
 血みどろの戦場――その殆どは返り血だったが――冰星は立っていた。


 傭兵と戦ってみる者もいれば、遺跡の奥へと踏み出す者もいる。
 セレステとカティアもその1組であった。
「いつもだと草カフェの店員として忙しくしてるけど……なんで今日は追い出されちゃったんだろ」
「カティアさん、最近はちょっと依頼受けてましたからねえ……
 たまには休めという店長の親心でしょうね」
 なんてことを雑談していれば、視線の先に魔物が一匹。
 石造の竜のように見える遺跡の守護者であった。
「カティアさんのそれ、ずっと気になってたんですよねえ。
 以前、攻撃魔法を覚えてすぐ、試し撃ちだけして封印しちゃいましたよね」
 自らの紋章を輝かせ、神秘性を高めたカティアへ、セレステは小首をかしげる。
「……性に合わなくて、ね」
「何か信念があってそうしてるなら、それはそれでいいと思いますけど
 何となく、くらいなら……慣れた方がいいと思いますよ?」
 魔導書より死者の怨念を起こして叩きつけてながら呟いたセレステにカティアの表情が微かに歪む。
 幾度かの応酬、不意にセレステが構えるのをやめた。
「おっとAPが尽きてしまいました」
 思いっきり棒読みだった。尽きていないことは明らかだ。
「……セレステ、危ないから手を抜かない!」
 葛藤をままに、カティアは魔力を殴りつけた。
「ありがとうございます……まあ、でも、いつ何があるか分かりませんからね
 いざその時になって慌てても間に合わない事もありますから」
 セレステは微笑は絶やさず。
「遺跡の守護者なら生物じゃないからセーフ! ですよ!」
 そう言ってカティアを励ますのだった。

 ナバール、ナイアルの2人は遺跡の探索を始めてから偶然に合流することになった。
 2人は慎重かつ大胆に進んでいる。
「君はどうして遺跡の探検に?」
 戯れの雑談だが、その実はナバールには少しばかり気になることがあった。
「たぶん俺の故郷に一番似ているのが、この国だと思う。
 とはいえ、俺の故郷とは違う場所。いろいろ見て回りたくてな」
 ナバールの問いかけに、ナイアルは静かに返す。
「それに遺跡探検、というのに興味がある。
 人から話を聞くだけでなく、実際に行ってみたい。
 この国のことを知ってみたいんだ」
「そうだね、実際に歩いて、見て、感覚を養うのが一番いい」
 うんうん、と強く頷くナバールに、ナイアルが同意を示す。
「……俺は前の世界ではほとんど出歩くことがなかったんだ。
 でも今は違う。どこにだって行ける。なんだってできる。
 ……この身軽さを活かさないのはもったいないだろう」
「そっか……じゃあ、ボクが色々教えてあげる!」
 納得できた。どうにも、彼はどこか危うかった。
 滅多に外に出たことがないのなら理解できる。
「べ、別に一人で行くのが怖いとかいうわけじゃないからな!」
「……そうか」
 世間慣れしていない青年と人間不信の少年は、道を歩き続ける。
 その行く先に、灯りが揺れていた。

 アムはカンテラを片手に遺跡の奥深くを目指していた。
 罠への対処を行ないながらも、徐々に徐々に進んでいく。
(今回の訓練も……頑張って、成長の糧にしないと……!)
 その胸には真っすぐな本心が眠っていた。
 もっとこの世界を見てみたい。まだ見ぬ場所へ。
 その気持ちを胸に、前へ進んでいく。
「……これ」
 ふと立ち止まってしゃがみこむ。壁面に描かれた小さな文字のような模様へカンテラを掲げてみれば、気配を感じた。
「だれ……」
 ヴィクトリアス・フェローを構えたところで、向こうからナバールとナイアルが顔を出す。

(ラサ、砂漠、俺の肌に馴染む不思議。
 空に呼ばれるまで寝てたところに似てるから? わからない)
 イラリカは遺跡の壁面に触れた。
(遺跡、うん、知ってる匂い。懐かしい。眠気覚ましにちょっと歩く)
 するすると蛇が先を進んでいる。それに導かれるように、のんびりと歩いていく。
(護る子がいれば深くは入らない。勝手に入られるのは誰だって嫌。知ってる。
 力を使うのは、自分の身を守る程度に。痛いのは誰だって嫌。知ってる)
 それは自分へ呼びかけた約束のようなもの。
 なんとなしに歩いていけば、そこで見つけたゴーレムを見て、踵を返す。


「暑い暑い砂漠の国。本来ならこのような国は避けるのじゃが、最近この国で涼しく快適なオアシスを見つけてのぅ。
 快適な場を見つけるのは我らの得意技ゆえ、萩の字にも教えてやろうというわけじゃ。
 ありがたく思うのじゃ!」
 どや顔の藤袴に白萩はオアシスへ連れてこられていた。
「しかし髪伸びたなァ」
 じっと見てみれば、伸びてきた藤袴の髪。
「なんじゃ? 髪? そうじゃのう、わしの黒髪はいささかここの日差しには適さぬ」
「よし、おじさんが綺麗に結ってやろう。こう見えて器用な方だ」
 白萩が腰を上げて背中に回り込む。
「ふむ、結うてくれるとな? それは名案じゃ。
 よし、ではわしの髪を結う誉れをおぬしにくれてやろう。ありがたく思うが良いのじゃ」
「……結ぶだけじゃ味気ねェしな、三つ編み作ってお団子にしたらいいんじゃねェか?
 ああ、猫耳っぽいお団子にするか」
「……言っておくが、妙な形に結おうものならわしの爪が黙っておらぬぞ。
 丁寧に美しく飾ってほしいのじゃ」
「きっと似合うぜ、藤ちゃんなら」
 2人はオアシスでゆったりと休息を楽しむのだった。


「老いも若きも男も女も、人間もそうでないのもみんな集まってくるといい!
 旨い食べ物と飲み物はここにあるぞ!」
 エーレンのよく通る声が会場の外から響いていた。
 時間は更けてきている。
 どうやら、闘技の方は終了したらしい。
(ラサ杯の闘技、素晴らしかったな)
 会場で見ていたことにエーレンは思いをはせた。

「うめー!」
 ビールを一気に飲み干して、スティーブンは派手に騒いで見せる。
「いやー。どれもこれもさいっこうだな!」
 直ぐ近くにいた傭兵と肩を抱き合い、次の酒を頼みながら、上機嫌に笑っている。

(わたしは自分に、ハードな訓練を、課しましたの……
 それは、この、あつくて、かわいたラサの砂漠を旅して、この環境に、慣れるということ)
 ノリアは海種である。水の豊かな場所しか知らなかった。
 正反対なこの地を旅することで死角を減らせるだろうと。
 傭兵からは砂漠での過ごし方を聞きながら、視線は多様な食べ物に映る。
「さあ……おいしい飲み物も、豪華な食事も……どこからでも、かかってくることですの……!」
 宴もまた、ノリアの特訓の一部である。

「可愛い子がお酌でもしてくれれば完璧なんだが……周りにたくさんいるから目の保養にはなるな」
 給仕の面々を眺めながら、アントレポは煙草をふかしていた。
 昼間は稼ぎ時とばかりに商人どもの注文を運んでやった。
 ここからはゆっくり晩酌を楽しむつもりだ。
「今夜もいい夜だ。酒も煙草も美味い」
 酒をあおり、視線を空へ送る。

「ホント皆のご飯も美味しいんだよな……負けてられねぇぜ」
 出されている料理を眺めながら、零は静かに対抗心を燃やす。
 お昼にはギフトを駆使してフランスパンの実演販売を熟してきた。
 ついでにフランスパン以外も売り込んだことで、お得意様も増えている。
 だからこそ、楽しい宴会のメニューにいい意味で刺激を受けていた。

(今や年1でラサに戻っている気がするな。
 イレギュラーズとなった今でも、やっぱりこの『傭兵』の国の在り方が身体に馴染む)
 奏は会場にいた昔の傭兵仲間の中にいた。
 去年は早々に訓練にいそしんだが、今年は久々にお酒を一緒に楽しむことが出来ていた。
 この一年を振り返るようにしながら、奏はもう1杯飲みほした。

「トレーニング終わりにお酒は如何ですか? ……お酌、しますよ?」
 訓練後ではあるが、余裕の崩れぬディルクへエルスはすっ、と近づく。
(シトリン・クォーツの時は思わぬ反撃に油断してしまったけれど今回はきっと大丈夫でしょ)
 あの時の事を思い出して、『そこ』を見てしまえば、ディルクの顔に笑みが浮かんでいた。
「面白い顔しちゃって。お酌してくれるんじゃなかったか?」
「どう言う……んもう、はいはいお酌します!」
 注いだお酒を楽しむように飲むディルクを見ながら、エルスはぽつぽつと今日の事を語る。
「今日のトレーニングも勉強になりました。
 新たな発見もありましたし、少しだけ行き詰まっていましたが今日学んだ事をまた採り入れますね!」
 それを聞くディルクの眼は静かだった。

 楽しそうな声に誘われてやってきたソフィラはひと通り宴会を楽しんだ後、微笑を浮かべる。
「ご相伴に預かりっぱなしもなんだもの。私も一曲いいかしら」
 ソフィラが声をかけたのはラダが手配した楽団たち。
 そのままテンポの速めの陽気な一曲を奏で始めれば、宴は終わりを知らぬとばかりに進んでいく。
 夜の砂漠に明かりを灯し、美しき星と静かな空に包まれて。

 フォルトゥナリアは宴の行なわれる場所から少しばかり離れた所にいた。
 静かに目を閉じて捧げる祈り。
 この世ならざる世界へ――それは他愛のない近況報告から、『超変人・蒸れ匂いフェチ女』にされたなどの面白ネタまで。
(あの戦いがあったから……学んだことがあったから、冒険で成功できました。ありがとうございます)
 1つ1つ、大切に重ねていく。
「……出会った人、これから出会う人も、そうでない人も幸せでありますように。
 嘆きが、助けを求める声が、届くべき所に届きますように」
 いつの間にか声に漏れていた願いは、向こうの世界に通じたか分からずとも、少なくとも今日の夜の星々には届いたと信じて。


「私も遺跡の探索とかして刀剣類とか武具を探したかったのですが!!?」
 綾姫の悲痛な叫びが部屋に響いていた。
「でしたら溜まっているこれらの書類を片付けましょう」
「はい……すいません、仕事します……」
 ここはラサの一角にある彼女の領地である。
 今頃は多くの面々は合同訓練にいそしんでいる頃か。
「……はっ。私の領地は発掘現場が主。ならば現場の視察も立派な仕事ですよね!?
 しかも危険な罠とか怪物、守護者的なゴーレムがでたら……私の火力が役に立つはずでは!」
「……」
「……はい、すいません。書類にサインします」
 笑顔のまま、無言の圧を向ける執政官が手渡してきた資料へ、綾姫はげんなりした様子でサインするのだった――

成否

大成功

MVP

フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
恋する探険家

状態異常

なし

あとがき

4周年おめでとうございます!

PAGETOPPAGEBOTTOM