PandoraPartyProject

シナリオ詳細

アロンゲノム・インシデント

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ここに偶像を建てよう。人は神を見られなどしないのだから。
 幻想国の冒険者アムラムにとって、それはいつもと変わらぬ安い仕事の筈だった。
 深い森に包まれたエドガイ山林には古くからゴブリンやオークといった亜人種族が住み着き、凶暴化した野犬が山を下りて麓の村を襲うことがある。
 特に食料の不足しがちな冬などは、春の内に山で確保しきれなかった連中が飢えと焦りのあまりちらほらと下山してくるため、村の若い男達が農具やら棍棒やらをもって駆除するのが習慣であった。
 とはいえ若者の多くは華やかな仕事を求めて王都へ上京し、村の高齢化が進んだ昨今はフリーの冒険者ギルドに依頼を出して定期的に駆除してもらうことになる。
「戦闘もちまちましててつまらんし、山に入ると汚れるし疲れるし、そのくせ賃金は低いし……美味しくはねえが、仕事がないよりマシか」
 アムラムは苦労して山へ分け入り、獣道をせっせと進んでいく。
 一人で済むような仕事ゆえに仲間もいない。話す相手もなく、無言で足を動かすのみ。
 思えば最近、スリリングな仕事が減ったように思う。幻想国のあちこちでモンスターが蔓延って、それを自慢の剣で切り倒していく日々は危険ながらも充実していた。だがこれでは、庭にできた蜂の巣を取り除く業者とさしてかわらない。
「さっさと終わらせて、麓で飲むか」
 ため息交じりに茂みへ手をかけ、先をのぞき込み。
 そして。
 アムラムは呼吸を止めた。
 呼吸だけではない。
 目を剥いて、口を半開きにし、茂みをどけた手の指先までもが硬直した。

 そこにあったのは、畑だった。
 うすく積もった雪を端にどかし、柔らかく耕された土。
 その先では、衣服と帽子を纏ったオークが木と石でできたクワをふって土を今まさに耕している。歩きやすい藁の靴まで履いてだ。
 オークはこちらに気づき、ギョッとめをむき声を上げた……が、クワを持って冷静に逃げ出した。
 ハッと呼吸が戻り、肩から力が抜ける。
 気が狂って幻覚でも見たのかと首を振ったが、土は確かに耕され、雪をどけるためのスコップまでもが置かれていた。
 群れを作り略奪をし、野獣のようにその辺の動物や虫を捕まえてむさぼり食い、冬は穴蔵に詰まって冬眠する。そんなモンスターだったはずだ。
 それがどんな歪な変化を遂げれば農耕などという考えに行き着くのか。
 試しに土をかきわけてみると、ゼシュテルジャガイモが等間隔に埋められている。幻想でもよく用いられる品種で、寒い山に住む人々が好んで育てる芋だ。
 この先を見るべきだろうか。
 あの逃げ去ったオークを追っていくべきだろうか。
 この仕事のために貰った賃金は、それに見合う額だろうか?
「…………」
 アムラムは息を呑み、しかし胸から湧き上がる好奇心にあらがえずに歩を進めた。

●怪王種(アロンゲノム)
「翌日、冒険者アムラムは無残な死体となって山の麓へ届けられました。
 額に刃物で×印が彫り込まれた死体は、山へ入ることへの警告であり、それが可能なだけの武力がある証なのです」
 所変わってローレットギルド酒場。『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)はテーブルに並べた資料をイレギュラーズたちと囲んでいた。
 モンスターの突然変異。あるは進化。研究機関『プロテオミクス』のゲノム研究が何人かのイレギュラーズの脳裏をよぎった。
 そしてそれは、おおむね間違ってはいない。
「『プロテオミクス』は現在、主導者を入れ替え活動拠点を練達に移して『滅びのアーク』がモンスターにもたらす変化について研究を進めていたのです。
 その結果、肉腫(ガイアキャンサー)のようにいちから自然発生する種と異なり、既存のモンスターや動物種を改造して入れ替わる『怪王種(アロンゲノム)』が誕生していることが報告されました。
 怪王種は一個の王を中心として周囲のモンスターを統率し、同じ怪王種へと変異させていきます。彼らは共通して世界廃滅の本能を持っていることから、魔種と同じく人類の敵……あるいはイレギュラーズの明確な敵であることがわかったのです」
 イレギュラーズが精霊種や秘宝種との結びつきを経て新種の誕生に寄与したように、魔種たちが集める『滅びのアーク』もまた肉腫や怪王種の誕生に結びついているのだ。
「今回の事件はそのリアルケースを調査する機会でもあるのです。
 まずは山林へと入り、モンスターの集落を調査してください!」

GMコメント

このシナリオはラリーシナリオです。仕様についてはマニュアルをご覧ください。
https://rev1.reversion.jp/page/scenariorule#menu13

■グループタグ
 誰かと一緒に参加したい場合はプレイングの一行目に【】で囲んだグループ名と人数を記載してください。所属タグと同列でOKです。(人数を記載するのは、人数が揃わないうちに描写が完了してしまうのを防ぐためです)
 このタグによってサーチするので、逆にキャラIDや名前を書いてもはぐれてしまうおそれがあります。ご注意ください。
例:【もふもふチーム】3名

■オーダー:エドガイ山林への調査と異常なモンスター事件の解決
 不可解なモンスターの異常発達が報告されました。
 ローレットへこの事件への調査、および解決が依頼されています。

■怪王種(アロンゲノム)
 練達へ移籍した研究機関『プロテオミクス』がモンスターとアークの関係を調査するうちに発見した新種のモンスター種別です。
 まだ実際の発生ケースが少ないため詳しい情報も不足しています。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

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●第一章:エドガイ山林への調査
 農耕オークが目撃された畑の先。木造家屋の並ぶ集落を調査します。
 ほぼ確実にモンスターとの遭遇が予想されるため、戦闘の準備を必ずしてください。
 このあたりで出没していたモンスターは『オーク』『ゴブリン』『野犬』といったオーソドックスかつあまり脅威にならないようなものばかりですが、もし彼らが異常発達ないしは異常進化を遂げたならその限りではありません。
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  • アロンゲノム・インシデント完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2021年01月21日 00時30分
  • 章数2章
  • 総採用数60人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

●怪物の王
 並ぶ民家を破壊しながらこちらへと突き進む巨大な影。
 数歩すすむたびに巨大化し、しまいには民家の二倍ほどの大きさへと変貌した角つきのオーク――仮称『アークスクエイク』。
 アークスクエイクはおびえて逃げようとしたオークを掴むと、巨大な口でもって食いちぎり、ふたくち程で平らげてしまう。そして飲み込んだ次の瞬間には、自身の肉体を網一段階巨大化させた。
「同族を喰らうことで巨大化するのか……こいつ」
 アークスクエイクは両腕の指先端をガトリングガンのように穴だらけにし、回転させながら骨の弾丸をばらまいてくる。
 その威力たるやすさまじく、民家を建てしようとも壁事破壊していくほどだ。
「集落南に集合! ポイントは言わなくても分かるよな! 角つきの巨大オークだ!」

 仲間のあげた大声は、確かに他のポイントで探索していたイレギュラーズにも聞こえたしなんなら巨大オークも見えていたが……。
「こっちはそれどころじゃありませんよ!」
 負傷した仲間を抱え、慌てて集落の外へと走る。
 それを追いかけるのはイナゴのような特徴を有したゴブリンの群れだった。
 すべての固体が羽根をもって飛行し、木々を一瞬で食いちぎり腕は鎌のように鋭く変異している。
 注目すべきは個体ごとの意思疎通能力の高さで、完全にリンクした彼らの意思は『群れを巨大な一固体』とした恐るべき怪物となっていた。
「怪王種を一匹みたら三十匹とでも? 近くに居るひと……誰でもいいから東のポイントまで集合してください!」
 天空に向けて銃を何発も撃ちながら走る。

 その銃声は北側の仲間達にも聞こえていたし実際空を飛ぶゴブリンや巨大オークにも驚いていたが……。
「よそへ人員を割いてる余裕は、ないわね……」
 こちらをじっとにらみつける巨大な狼。おそらくは野犬だったのだろう。それが怪王種となり変異を起こし、力を膨らませていった結果、できあがったのは……。
 人間の胴体を食いちぎれるほどの巨体と、周囲に浮かぶ炎や氷、雷や石といった様々な物体を魔術によって生み出す力。
 さらには銃撃や剣による攻撃を跳ね返す魔法の毛皮。
 魔法によって完全武装したボス狼がそこにはいた。
「応援要請を出して。各員、自分の得意なポイントへ移動! 目標は、三体のボスモンスターの撃破!」

 集落の調査が最終段階に入ったところで現れた三体のボスモンスターたち。
 怪王種との本当の戦いが、始まったのである。

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●第二章:怪物の王
 エドガイ山林に作られたモンスター集落。
 モンスターたちはみな変異をとげ、高い戦闘能力を有していました。
 調査とその予測によれば、元となった『最初の怪王種(ファーストキャリアー)』から変異が感染し、群全体に広がったのだろうということでした。
 それはつまり、調査の最終段階に入ったイレギュラーズたちにそのファーストキャリアーが襲いかかる事実を示していました。

■パートタグ
 参加したいパート名を【】で囲んでプレイング冒頭に記載してください。

【A】
巨大なボスオーク怪王種『アークスクエイク』と戦います。
アークスクエイクは手下の変異オークを食うことでどんどん巨大化するボスモンスターです。
指ガトリングによるかなりの広範囲にわたる射撃に加え、その巨体から繰り出される怪力が脅威になります。
仲間と力を合わせ、巨大なモンスターを打ち倒しましょう。

【B】
変異ゴブリン怪王種の群れ『ダイダルウェイブ』と戦います。
イナゴの群れのように密集し、すべての固体が完全に意思をリンクさせています。
個体ごとの意識はほぼ消滅しており、群れ全体でものを考えるいわば『群一固体』の怪物です。
その特徴から集団戦闘に長けていると有利です。
また、すべての味方が例外なく攻撃に晒されるので防衛能力も必要です。

【C】
複数の魔法を自在に操る犬型怪王種『シルバーウィザード』と戦います。
様々なBSを操る上、回復能力にも優れており上手なHPの削り方やBSの突破能力が要求されます。
アタッカーが高威力の魔術を叩きつけながらタンク担当が攻撃を引き受け、山盛りになったBSをヒーラーが急いで除去するといった連係プレイが理想になるでしょう。


第2章 第2節

ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
観音打 至東(p3p008495)
刹那一願
ヴェルグリーズ(p3p008566)
桜舞の暉剣
オウェード=ランドマスター(p3p009184)
真竜鱗

「巨大オークの『アークスクエイク』だぁ? 同じオークとして見てらんねえぜ!」
 『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は腹堤をパァンと叩くと腹から通る声を出した。
「貸部屋組、集合!」
「「応!!」」
 雄々しい叫びと共に出現するオウェード=ランドマスター(p3p009184)。両手にダブルアックス。頭からつま先までを覆う鋼の鎧というガチガチのスタイルだが……。
「呼んだでござるか?」
 段ボールからシュッて顔を出す『破竜一番槍』観音打 至東(p3p008495)。
「どうやら俺の出番らしいね」
 その段ボールからにょきっとはえてくる剣もとい『全てを断つ剣』ヴェルグリーズ(p3p008566)。
「こんぺいとう食べる?」
 同じ段ボールからにょきっとはえてくる『黄昏夢廸』ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)。
 オウェードがゆっくりと振り返った。
「なぜ三人ともそこから出るんじゃ。みんなで『応』て言いながらゴリョウの周りでポージングする約束だったじゃろ」
「そうでござったっけ?」
「俺、記憶にないな」
「右に同じ」
「じゃあさっきの『応!!』はなんだったんじゃ……ワシ一人か!?」
「まあまあ、一致団結しようって気持ちは一緒だから」
 ヴェルグリーズは人間形態にチェンジすると、宙返りをかけてゴリョウの横へと立った。投げ渡された剣に『別れ』の力を流して抜刀する。
 同じく至東も刀を抜き、段ボールを一瞬にしてバラバラに。
 ランドウェラはこんぺいとうの入った布袋をしまって右腕に術式の紋様を光らせた。
 オークを掴んでムシャムシャと喰らっていた『アークスクエイク』が、彼らをぎろりと見下ろす。
「これが集落の外に出たら一大事だ。ここで止めるよ」
「無論!」
「タンクは任せとけ! テメェは強ぇが間違った強さだ! 本物のオークってもんを教えてやらぁ!」
 真っ先に前へ出たゴリョウ。アークスクエイクはそんなゴリョウを派手に蹴っ飛ばし、身体をボールのように丸めたゴリョウは民家を数棟ほど破壊しながらバウンドしていった。
「一瞬だったけど!?」
「問題ない。次はワシが止める!」
 斧をクロスして前に出たオウェード。
 その左右を固めるようにヴェルグリーズと至東が走った。
「『絶対分割』――」
 別れの力を拡大し、アークスクエイクのすねを狙って剣を打ち込むヴェルグリーズ。
 そこへ至東が複数に分身をつくり一斉斬撃。
「――『空谷幽境告天子』」
 集合した分身たちがひとつに戻ったところで、アークスクエイクはがくんと膝を突いた。
 反撃として繰り出された拳を、オウェードがふんぬと叫んで受け止める。
「あと三秒とめておいて。……いける」
 ランドウェラがオウェードに治癒のエネルギーを流し込み、汗を吹き出しながら歯を食いしばって震えるオウェードに活力を呼び戻させた。
 ぐぬうと叫びなんとか数十センチ押し返すオウェード……のすぐ横を。
「待たせたな!」
 ジェット噴射で突っ込んできたゴリョウがすりぬけ、アークスクエイクの顔面に大籠手のパンチをたたき込んだ。
 思わずよろけ、転倒するアークスクエイク。
 拳を地に着ける形で着地したゴリョウと、クロスアックスのオウェード。
 剣を水平にかざすヴェルグリーズと背を向けて上着の裾をなびかせるランドウェラ。
 その端で刀を収め、至東は……。
(このシチュエーション……まさに逆ハーレム)
 ちょっと浸っていた。

成否

成功


第2章 第3節

郷田 貴道(p3p000401)
喰鋭の拳
コレット・ロンバルド(p3p001192)
破竜巨神
わんこ(p3p008288)
犬の一噛み
長谷部 朋子(p3p008321)
蛮族令嬢
ボディ・ダクレ(p3p008384)
ぬくもり

 派手に転倒した巨大オーク『アークスクエイク』。
 その状態から復帰するためにか膝立ち姿勢から両手をかざし、指ガトリングによって周囲をなぎ払い始めた。
 イレギュラーズたちは建物の裏に隠れたり防御自慢の仲間を盾にしたりと弾幕を防いでいたが……その中で、なんと真っ向から突っ込んでいく者たちがいた。
「ヒャッホーゥ! なんだか派手に賑やかじゃーん! あたしもまーぜてっ、とお!」
 『蛮族令嬢』長谷部 朋子(p3p008321)は厚着していたコートや上着をパージし極めて薄い軽装状態になると、弾幕が自らをターゲットするよりも早く走り出し、弾が発射されるよりも早くアークスクエイクへと跳躍。
「唸っとけ! ネアンデルタール!!!!」
 勝負は先手必勝。一撃必殺。
 大上段から振り上げた巨大な石斧が、アークスクエイクの指を強引に切断。アークスクエイクは思わず手を押さえて唸った。
「進化もできぬ人間ごときが、こんな……!」
「えっなにあんた喋れたの? さっきまで怪獣みたいに唸ってたじゃん」
 アークスクエイクが指を押さえ歯がみする。
 いくら知恵をつけたとて、経験は稼げない。ローレット・イレギュラーズは時としてリスク覚悟で迫ってくるということを、彼は知らなかった。
「キャヒヒヒ! 三方面からの同時攻撃たぁ、味な真似するじゃねぇデスカ。
 さぁ、やろうかデカブツ……指鉄砲ならわんこも負けちゃいマセンゼ!!」
 豪快に姿をさらした『シャウト&クラッシュ』わんこ(p3p008288)が両手をかざし、突撃しながら空気砲を乱射した。
 咄嗟に手をかざして防御するアークスクエイクだが、その動きが致命傷となった。
「隙有り、デス!」
 跳躍からのサマーソルトキック。靴から展開した仕込みナイフつき。
 突き刺さった足をとっかかりにしてさらなる乱射。
 そこへ増援としてかけつけた『痛みを背負って』ボディ・ダクレ(p3p008384)と『煌希の拳』郷田 貴道(p3p000401)が現れた。
「オークがここまで巨大化するとは、怪王種は前までとは一線を画すのですね。
 しかしやる事は変わりません。撃滅、ただそれだけです。全霊で依頼を遂行します」
 肉体をみなぎらせ、画面に赤いエマージェンシーマークを表示するボディ。
「どうせやるならデカブツだよな、HAHAHA!
 怪王種だったか? 殴り甲斐がありそうじゃねえか!」
 同じく貴道もパンプアップをかけると拳でそのへんの壁をぶち抜いた。
「しっかしあそこまで暴れ回ると、どこから殴ったもんかな」
「誰かが動きを止めてくれればいいんですが……」
「話は聞かせて貰ったわ」
 巨大な剣を引きずって現れるコレット・ロンバルド(p3p001192)。
 ボディたちが思わず見上げるほどの巨体に艶めかしいほどの鎧を纏い、貴道の身長以上はあろうかという剣を上段に持ち上げる。
「持久戦になればオークを食われ、時間が経つほど不利になる。なら、速攻をかけるべきね」
 こくりと頷く二人。コレットはその二人の顔をそれぞれ見ると、まず一歩前に出た。
「私が隙を作る。そこをお願い」
 言うやいなや、コレットはあろうことか剣をアークスクエイクめがけてぶん投げた。
 咄嗟にそれをキャッチするアークスクエイクへ、助走をつけて殴りかかる。
 全長3mのボディから繰り出されるパンチが、アークスクエイクを僅かにぐらつかせる。
 元々足の踏ん張りがきいていないこともあって、アークスクエイクは思わず片手を地に着いた。
「離れろ、巨大な人間!」
 なぎ払おうと繰り出した腕を、コレットは腕でガード。足を踏ん張ってとめると――。
「今です」
 ボディは画面に『FIRE』のシグナルを出し突撃。
 すさまじい突進力から繰り出されるキックがアークスクエイクの顔面に炸裂。
 更に巧みなフットワークでみるみる距離をつめた貴道の射撃範囲外からの打ち抜くようなパンチがアークスクエイクの腹へ命中。螺旋状のうねりをみせた肉がそのまま背中まで貫通する穴をあけ、顔面はといえば頭蓋骨を半壊させながら脚を振り抜いていった。
 轟音をたてて沈むアークスクエイクの肉体。
 コレットは拳を天に突き上げ、勝利の宣言とした。

成否

成功


第2章 第4節

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
諦めない
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
天才になれなかった女
古木・文(p3p001262)
ifを願えば
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
蒼騎雷電
ウォリア(p3p001789)
戮神・第四席
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
無名偲・無意式の生徒
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと

 モンスター集落。その扉が開く。
 開く、開く、いくつも同時に開く。
 そして彼ら……ゴブリン群一体型怪王種『ダイダルウェイブ』は、同時に腕を鎌状に変化させた。
「十人や二十人なら潰せたものをよお」
「大勢でうじゃうじゃ出やがって」
「どこから湧いてでてくるんだ? 人間ン」
「それはコッチの台詞ッスよ!」
 次から次へと湧き出ては民家の周りや屋根の上などに集まりこちらへ威嚇するように歯をガチガチと鳴らす連中に、『蒼騎雷電』イルミナ・ガードルーン(p3p001475)はビッと指をさした。
 碧く流線型のデザインをした鎧に憑依し、両腕からクローを展開する『終縁の騎士』ウォリア(p3p001789)。
「大物、大群、選り取り見取り。
 全く、魔種に関わると強敵に事欠かんな!
 ――数は判り易い脅威だからこそ、焔としての本懐が果たせる場面と言えよう
 背中は任せたぞイルミナ、害虫退治といこうじゃないか!」
「任されましたよウォリアさん! みんな違ってみんな良い、って所を見せてやるッス!」
「「さえずるな劣等種族ゥ!」」
 十匹のダイダルウェイブが全く同時に、そして一切のかぶりなく複数の方向から斬りかかる。
「おお、なんと懐かしい光景だ! 些か『あやつ』には届かないが、まるで蝗の様なあの悪意はそれに近いものがある!」
 ウォリアは強引に前へ出ると彼らの攻撃をすべて受けた。鎧を刃が貫通し、数本に至っては背中から突き出る程だが――。
「ならば、オレも終縁の焔を以て思い知らせねばなるまい!
 如何に大いなる群であろうとも、焼き尽くされて焦土に還れば真の意味で一つになる!」
 両目からボウッと炎を漏らすと、ウォリアは両腕のクローで強引に暴れ始める。
 そこを狙って飛び込むイルミナ。
 ウォリアの周囲をぐるぐると駆け回るような軌道をとりつつも、群がったダイダルウェイブの首を次々に切り落としていく。
「ウォリアさん、無事ッスか!」
「この数に任せた猛攻、蚊帳の外ならぬ『蚊帳の内』に籠もることは不可能。だが心配するな。我はそうそう死なん」
 そんな彼らの側面からさらなる群れ。10体前後のダイダルウェイブがウォリアを仕留めようと飛行する――が、それを鋭い斬撃が斜めに走り、遮った。
 群れで意識を共有しているためか、つい10体全部で警戒し飛び退くダイダルウェイブ。
 ターンして戻ってきたのは、脚に装備した鉤爪をギラリと凶悪に光らせた『虚刃流直弟』ハンス・キングスレー(p3p008418)だった。
「ふふっ! お待ちかねの百鬼夜行みたいだよ頼々くん!」
「そのようだな!」
 ハンスの腕に吊される形で運ばれていた『虚刃流開祖』源 頼々(p3p008328)が着地し、具現鞘に手を『かける』。
「これが進化したモンスターだというのか。それに羽根……羽根だと? そしてイナゴのような夥しい数……つまり触角もあるな貴様ら! つまり鬼! ぶっころ!」
「どうどう」
 角を生やして激高しそうになる頼々の頭を撫でて落ち着かせるハンス。
 ひっこむ角。
「いちゃつきやがって……」
「ゆるせねえ……」
 目を血走らせたダイダルウェイブは比較的動きが遅いであろう頼々を狙って一斉攻撃――しようとした所、ハンスが炎をまとった蹴りで牽制。
 広がった炎にまかれたダイダルウェイブめがけ、頼々は空想の刃を抜刀した。
「虚刃流……その、なんかこう吹雪!」
 連続で放たれた斬撃が飛び、空気ごと氷結させそれまでの熱量と相まって激しい破裂現象を引き起こした。
 針でつついた水風船のようにはじけるダイダルウェイブ。
「ここで『よくも仲間達を』とわめくのが旧式」
「だが今の『我』にとっては足の小指をぶつけた程度の損傷よ」
 新たなダイダルウェイブが追加され、べろりと鎌の腕を舐める。
「足の小指って……それ転げ回るほどの痛打では?」
 『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)はぽつりともらし、ダイダルウェイブたちは一様に斜め上を見て口笛を吹いた。
 知能が発達し特殊な精神性をもっても、だからといって特別賢いわけではないらしい。
 では改めまして……と剣を抜いて構えるリディア。
「我が名はリディア・T・レオンハート! スコフニュングの名に賭けて、戦場を切り拓く者なり!! ――七星極光『断空牙』!」
 叫ぶやいなや、国伝説の剣技を繰り出した。
 翠色の闘気を纏った輝剣リーヴァテインを大上段から振り下ろせば、大地をえぐり突き進む破壊の波となる。
「「ぐおっ!」」
 ダイダルウェイブの一部を撃滅――したと同時に残る群れが襲いかかる。
 牽制や脅しというものが通じないのもこの敵の特徴だ。一体一体が我が身を犠牲にして群れの利益を上げようとする。
 で、あるからして。
「群れで意識を共有するなら、同じ穴にもはまるわけだ」
 『文具屋』古木・文(p3p001262)は空にペンで文字を書くと熱砂の魔術を発動。密集したダイダルウェイブをまとめて吹き上げていく。
「しかしゴブリンの知能と能力が此処まで高くなるとは……」
 懐から流体金属でカスタムした短銃を取り出し、ダイダルウェイブへと向ける。
「BSはどうやら有効みたいだ。とにかく敵を停滞させておくよ。その間に誰かチェックメイトしてもらえるかな」
 文は眼鏡のブリッジに中指を当て、僅かにうつむくようにして視線を仲間へやる。
 彼がこのときアテにしたのは、『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)たち四人のチーム『銀狐分隊』であった。
「了解したわ。……マニエラ、例のプランでよろしく」
「一節によれば、蝗害を収めた者は神格化されるという。さて、集まってこい。私は脆くて、厄介だぞ?」
 『策士』マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)はイーリンたちに『ソリッド・シナジー』を付与すると『クェーサーアナライズ』のフィールドを展開。
「驚異の一つや二つ、わたし達師弟にお任せあれ!」
 『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)はそのフィールド内に陣取ると、神気閃光によって集まってきたダイダルウェイブをなぎ払った。
「走るよマニエラちゃん。――赫塊!」
 真っ赤な馬が駆け抜け、飛び乗ったココロはダイダルウェイブたちを引き連れながら馬を加速させる。
 一方でマニエラはココロの手をかりつつ白い流線型のバイクへと飛び乗り、走り出した。
 併走を始めるラムレイ騎乗中のイーリンと、同じく黒い軍馬にまたがった『恋の炎に身を焦がし』フラーゴラ・トラモント(p3p008825)。
「モンスターが文化を持つのは喜ばしいこと……。でも世界廃滅を願うなら、それは看過できないな」
 そしてマニエラに視線をやって、小さく笑った。
「姉弟子……マニエラさんの見せ場だね。妹弟子も務めを果たすよ!」
「そういうわけだ。来るぞ」
 振り返るマニエラ。
 一斉に襲いかかるダイダルウェイブ相手に、フラーゴラは馬から両手をはなして手刀による飛翔斬を連発。
 追跡するダイダルウェイブ数体を撃墜したところでイーリンが『カリブルヌス・改』を発動。
 まっすぐになったダイダルウェイブの群れを一息になぎ払った。
「ふう……」
 撃滅を終え、周囲のクリアリングを始めるイーリンたち。
「意識を統合した群れ、ね……突然こんな集落ができて不思議だと思ってたけど、学習も早くて文句も言わず働く人員がこれだけいれば納得だわ。
 なにより、こんな連中がこのさき『偶発的』に発生するんだから……まさに蝗害よね」
 けれど、だからといって泣き寝入りなんてしていられない。
 戦わなければ、滅びるのだ。
 それはどんな世界でだって同じ、生物の摂理なのだろうから。

成否

成功


第2章 第5節

フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)
海淵の騎士
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
フロントライン・エレガンス
ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)
影を歩くもの
クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)
海淵の祭司
フリークライ(p3p008595)
水月花の墓守
笹木 花丸(p3p008689)
竜交
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に

 空に踊る氷の槍たち。
 空に荒ぶる炎の剣たち。
 空に奔る雷の鞭たち。
 そのすべてが周囲の風景を書き換えるほどの苛烈さで暴れ回る。
 『ふたりのワルツ』ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)は飛来する炎の剣を次々に蹴り落とし、直撃コースにあった炎を黄金の風を纏ったハイキックで打ち落とした。
「魔法使いはお姫様や王子様の味方をすることが多いけれどね……君はどうやら違うようだ。」
「『悪い魔法使い』は初めてか、人間?」
 犬型怪王種『シルバーウィザード』は牙を見せ、笑うように頬をあげた。
 山に出る野犬にすぎなかった彼らがここまでの変異を起こす。野生動物板の反転と言われるのも頷ける脅威だ。
 氷の槍が束ねられ、アントワーヌへと連続で発射される。
 それを横から割り込んだ『舞蝶刃』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が水晶の剣によって鋭く切り払った。
「王と呼称されるだけはある、という事かしら。実に厄介な能力ね……。更に変異が進む可能性だってあるし、下手すると本当に国が出来かねない」
「いかにも。我らの脅威がいかなる種類のものか、理解できたか?」
 くつくつと冷酷そうに笑うシルバーウィザード。氷の槍と炎の剣が交互に、そして円を描くようにアントワーヌたちを取り囲む。
 アンナは両手でクロスをひらりと握ってかざすと、アントワーヌと背をあわせるように立った。
「生物の反転。それは、生態系の破壊……」
 アンナは想像した。
 平和な農夫の生活が、一滴垂らされた怪王種という存在によって浸食される風景だ。
 一頭の牛でも、一匹のネズミでも、たまたま通りかかった鳥でもいい。その一匹が怪王種となっただけで農夫の命はない。たとえ八人組の屈強な傭兵が派遣されたとて、家畜たちがすべて怪王種化したなら牧場はたちまち地獄と化すだろう。
 『ただのハイレベルなモンスター』ならこうはならない。広がること。それを巧みに利用できることが、彼らの脅威なのだ。
 もしこんな事が続けば村ひとつ程度なら簡単に飲み込まれてしまう。それもサイコロの目が揃う程度の偶然で。ある日突然に。それは動物を食べなくては生きていけない人類にとって回避不能な災害となるだろう。
「滅びを止めるために私達は在る。悪いけれど、あなたの王国はここで終わりよ」
 一斉に放たれた炎と氷はしかし――高速で生えた細い樹木のシェルターによって防がれた。
「犬トシテ 死ネズ 歪メラレタ生命ト 怪王種トシテノ 生命ニ 弔イヲ」
 両手を開き、腕に埋め込まれた宝石状の物体を輝かせる『水月花の墓守』フリークライ(p3p008595)。
 シェルターは次々と花をつけ、蛍火のように輝く粉を放って散っていく。
「フリック達 支エル。攻メル 護ル 託ス」
 地面に手を突き、目の光を明滅させる。
 フリークライの意思に応えるように『木漏れ日の先』ヴァイオレット・ホロウウォーカー(p3p007470)は懐から取り出したタロットカードを扇状に広げた。
「やれやれ、滅びのアークはモンスターをここまでの異形に変えてしまうのですね!
元となったモンスターになかった性質、見た目を見れば、元の世界で異形慣れしているワタクシとて、流石に戦慄せざるを得ません」
 前髪が風になびき、ヴァイオレットの額にある第三の目が開く。
 すると一瞬だけ闇のとばりがおり、開く頃にはヴァイオレットがもつ真の姿を露わにした。
 返したタロットカードのすべてが死神を示し、灰になって朽ち落ちていく。
 隠されていた口元はゆがみ、彼女の影から伸びた無数の手や鉤爪がシルバーウィザードへと襲いかかっていった。
 次々と展開される氷の壁が影の手を阻み、反撃にと放たれた電撃をフリークライの展開した茨の壁が阻んでいく。
 一本だけ突破した影の手。そして仲間によって隠され隙を突くことに成功したアントワーヌとアンナによる跳び蹴り。
 シルバーウィザードは咄嗟に氷の壁を形成するも薄すぎたためか打ち砕かれ、シルバーウィザードの身体は突き飛ばされた。
「束になればこうも手強いか……」
 シルバーウィザードは舌打ちし、そしてその場から大きく飛び退いた。
 高所より降下し、片膝と拳を突いた姿勢で着地する『海淵の祭司』クレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)をかわすためである。
 同じく着地する『人為遂行』笹木 花丸(p3p008689)。自分を送ってくれた飛行部隊の仲間に手を振ると、ヨッシャといってファイティングポーズをとった。
「どんな相手だって皆が居れば絶対に勝てるよっ!」
「ふん。だろうな……滅びの竜すら追い返したのじゃから」
 クレマァダも水が流れるようななめらかな動きで格闘の構えをとる。結ばれた印によって青い古文式魔方陣が描かれ、両腕にガントレットのように装着される。
「へばるでないぞフェルディン! このまま畳みかけるからな!!」
「ええ、ここで倒れるつもりはありませんよ! クレマァダさんも気を付けて!」
 二人の間から歩み出た『放浪の騎士』フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)が星剣コメットブレイバーをクルクルと回し、突きの構えでもってシルバーウィザードへと突きつける。
「来るが良い、人間。たまたま湧いた『たかが一匹』の恐ろしさ、思い知らせてくれよう」
 シルバーウィザードは目を大きく見開くと、空中に雷の球をいくつも作りだし電撃を乱射。
 真っ先に突っ込んだフェルディンは剣と籠手によって電撃を引き受け、直接飛んできた無数の雷球を斜めにかざした剣で防御――したがその衝撃で思い切り吹き飛ばされていく。
「フェルディン!」
 振り返――りはしない。彼は無事だ。そういう奴だ。
 クレマァダは雪ふる夜の温かさを思い出して、シルバーウィザードへと急接近をかけた。
 籠手の『ソング・オブ・カタラァナ』に空の青さと仲間の大切さをうたった歌の記録円盤を装填。ギュンと指で回転させると彼女の身体が急速に軽くなった。
「絶海拳――『砕波段波』」
 魔術を放った直後のシルバーウィザード。防御のための壁を出しそびれたのか、クレマァダのパンチはそのボディに直撃した。
「あっその必殺技かんいーな! どうしよえっとあのあの――」
 更に花丸が助走をつけ跳躍。
 弓矢のように引き絞った拳を、シルバーウィザードの顔面めがけて打ち込んだ。
「はなまるぱんち!」
 バギャンという魔術障壁を破砕する独特の音と共に花丸状のオーラが花火のように広がり、衝撃でもってシルバーウィザードを突き飛ばしていく。

成否

成功


第2章 第6節

夢見 ルル家(p3p000016)
離れぬ意思
ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)
旅人自称者
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
純白の聖乙女
マルク・シリング(p3p001309)
リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)
紅炎の勇者
シラス(p3p004421)
竜剣
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
黒狼の勇者

 爆風によって辺り一面がなぎ払われ、続いて無数の氷の柱が立ち上がった。
 ドライアイスでもたいたかのように白い煙が地面を覆い、氷の柱からばちばちとスパークが走る。
「これは……」
 『リインカーネーション』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は自らの両足が地面から動かなくなっているのを確認すると、聖域化したフィールドを適用することで強制解除。氷越しに走る電撃を空気中へと受け流した。
「本気を出してきた、ってことかな」
「そう思うか、人間」
 犬型怪王種シルバーウィザードはグルルと唸ると、空気を直接振動させた拡張音声で話し始めた。
「おそらく私はここで死ぬだろう。だが、少なくともお前達に傷を負わせることはできる。すぐに癒える傷だろうが、こんな戦いが二日続いたなら? 三日なら? 一週間続いたらどうだ。お前達はピックに削られる氷塊のようにすりきれ、やがては死に絶えるだろう。やがてそんな世が来る。そのための一太刀なのだ。恐怖を刻むためのな」
「…………」
 スティアはまわりに集まった仲間達に『破邪転成』の術をかけると、氷で動きを鈍らせていた者やダメージを受けていた者たちからそれらを取り除いていく。
「急な招集に何かと思いましたら、これが怪王種……。
 伝え聞きましたのよりも実物は数段厄介なようですね。
 気を引き締めて参りませうか、まあ普段通りに!」
 『旅人自称者』ヘイゼル・ゴルトブーツ(p3p000149)は指先から赤い魔力糸を放つと結界を形成。その間を縫うように青い糸が形成される。
 無数に分かれた糸がシルバーウィザードへと発射され、対するシルバーウィザードは氷の柱を次々に形成して防御。
 青い糸の殆どは柱に阻まれ止められてしまうが、一本だけがシルバーウィザードの脚へと絡みついた。
 ぐっと握り、引っ張る動作をするヘイゼル。その隙を突くかのように、死角に回り込んでいたマルク・シリング(p3p001309)が両手を重ねるようなフォームで『魔光閃熱波』を連射。
「魔法を自在に操る上に、頑丈な毛皮……元は野犬というけど、これはもはや完全な別物だね」
 マルクの放った魔力の波動はすべて命中……したが、シルバーウィザードはフッと白い息を吐くのみ。
「なかなかの威力だ。雑兵程度なら数発で塵にできよう」
 シルバーウィザードが目を見開くと、すべての氷の柱が弾け、弾けたそばから打ち上げ花火のようにエネルギー弾が拡散。渦を巻いて踊り始める。
「これは、まずいね……!」
 マルクは弾幕の間をすり抜けるようにステップをふむが、青い弾幕に隠れてホーミングしてくる白い氷の矢が脚へと直撃。バランスを崩して転倒する。
 真上から迫る紅蓮の炎。ひと一人を容易に焼き殺せそうな大きさに目を見開き両腕をかざした――その時。『黒狼領主』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)がマルクの上に被さるかたちで魔法を引き受けた。
「ぐうっ……!」
 背中の生皮がすべて引っぺがされるような痛みに歯を食いしばり、自慢のタフネスで立ち上がる。
「これまで現れていた敵性生物の格がこの様に跳ね上がるとは……。
 だが、それでも。この手が届く限り、無辜の民達の、戦友達の命が散らぬ事が無い様にどの様な相手であろうと戦うのみ!」
 シルバーウィザードがマルクを狙って飛びかかり牙をむき出しにするのを、マナガルムは水平にかざした槍でもって防御。這い上がったマルクに『下がれ!』と鋭く発した。
 槍をかみ砕いてしまうのではというほどの力でかじりつかれ、強引に踏み込まれる。マナガルムは一歩、二歩と思わず後退してしまった。
「どうした人間。踏みとどまらんか。仲間の頭がクルミのようにかみ砕かれるのが怖いか?」
「脅しても無駄だ。仮にも王の種だというのであれば俺程度まかり通して見せろ!」
「小癪な、貴様などひねり潰してくれる!」
 目を見開き無数の剣を空中に形成するシルバーウィザード。その剣がマナガルム――を無視して後退する別の仲間達へと飛んだ。
「――ッ!」
「などと、な」
 歯を見せてクツクツと笑う。
「人間は知恵をつけたばかりの獣を見るとそのように挑発する。我を失い自滅するのを誘うのだ。賢いのう。ゆえに利用しやすい」
「…………」
 マナガルムは目を細めた。
 知恵のあるモンスターなどいくらでもいる。
 群れを作るモンスターも、道具を使うモンスターも、なんなら魔法をあやつるモンスターだっている。
 だがそれが、つい先日まで吼えて噛みつくことしかできなかった野犬であったなら話は別だ。
 人間とチェスゲームができるほどの知恵を、そこらへんの雑魚モンスターが持ち始めたなら……。
「いや、違うな」
「――」
 マナガルムは笑い、そしてシルバーウィザードの目をまっすぐに見た。
「もしそれができるなら、今頃各国家は滅びている。
 お前は不安にさせたいのだろう。俺たちを。俺たちがいつ来るかも分からない災害におびえ縮こまるように――自滅するように誘うのだ」
 一瞬。シルバーウィザードが笑ったように見えた。
 が、それも本当に一瞬のこと。
 横から強烈な跳び蹴りをたたき込んだシラス(p3p004421)によって、シルバーウィザードは突き飛ばされ転倒。
 凍った地面を滑りつつ素早く復帰し、反撃の魔術を発動させる。
「この野郎……強えな。いろんな意味で」
 降り注ぐ氷のナイフを上半身の動きだけで回避すると、シラスは油断なく『両手をポケットに突っ込んで』構えた。
「アンタが強いのは肌で分かる。けどな、潜り抜けてきた幾つもの死線が俺達を鍛え上げた。
 生まれたばかりの変異種なんかにそれがあるか? 意味わかんねーくらい強え魔種に頭掴まれてて振り回されたことは? でけえ壁みたいに強い騎士にたたきのめされたことは? 練達の三塔みてえにデカい竜に海ごと吹き飛ばされたことは?
 俺たちはなあ、『イチから』やってきてんだよ。
 だから、アンタは俺一人で殺(ヤ)る!!」
 吼えるように叫び、走り、ポケットからナイフを取り出し跳躍し――。
 た直後。
 シルバーウィザードの左右後方から二人の女が現れた。
 魔力を纏わせた影人形と共に蒼い剣を振りかざす『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク(p3p000172)。
 下段から振り上げるようなフォームでクリスタル状の剣を握り込む『春告げの』リースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)。
 リースリットの刀身が血のように赤く変色し、その表面からのろいの焔が湧き上がる。
 シラスがにやりと笑ってナイフを放り投げた。
「一人でってのは、嘘だ」
「――!」
 咄嗟に自らの周囲に結界を張り巡らすシルバーウィザード。
 が、その結界がシラスの蹴りによって即座に破砕。ガラスが砕け散るような音をたて、無防備となったシルバーウィザードのボディにリースリットの剣が深々と食い込み、至近距離から激しいスパークを流し込んでいった。
「ぐ、おおお……!?」
 歯を食いばり、身をよじって逃れようとするシルバーウィザード。
 だがそれを阻むように、反対側から攻め込んだドラマの剣が突き刺さる。
「ここまで手強い敵だとは……応援を呼ばれた理由も納得ですね」
「この滅びのアークを起因とする変異。まるで自然界に対する『呼び声』」
 リースリットとドラマは同時に剣を抜き、飛び退いた。
 吹き上がる血のなかで、シルバーウィザードは数歩だけすすみ、そして眼前にかすみのごとく現れた『離れぬ意思』夢見 ルル家(p3p000016)をにらみつけた。
「これで勝ったと思わぬことだ。私のようなものなど、どこにでも湧く」
「知っていますよ。今までだってそうでした」
 ルル家はかつて失い、そして別の形で取り戻した片目を片手で覆った。
 闇の中に見えたのは追憶。唐突に出会った強敵や、唐突に訪れた別れ。そして胸を焦がすような挑戦と、それを乗り越えてきた勇気と……そして何より、今ここにいる仲間達の姿だった。
 前髪を払い、両目を大きく見開く。
「さぁワンちゃん! 我が燃える三眼をご覧あれ! 決着です――!」
「人間――風情がッ!!」
 魔力を使い果たしてしまったのだろうか。それともドラマによって抜き取られ尽くしたのか。シルバーウィザードは牙をむいてルル家へと食らいついた。
 ルル家の首や脇腹に牙がつきささり一息に噛みちぎられる――という、幻覚をみた。
「――!?」
 口を閉じ、目を見開き、なにもない空間を噛みちぎっていたシルバーウィザードのその真上。
 背の上に、ルル家は二本指をたてて立っていた。
「魔を払うことこそ、私たちローレット・イレギュラーズに課せられた使命。
 戦い抜いて見せます。必ず……」
 目を閉じたその途端に、シルバーウィザードの首は切り取られて地面へと落ちた。

成否

成功


第2章 第7節

 こうして、モンスターによって作られた集落は壊滅し、改めてすべてが焼き払われた。
 この事件は、ここで終わりである。
 だが脅威はどうか。

 怪王種は反転する人々のようにどこにでも発生し、そして致命的な脅威となる。
 故に備え続け、戦い続けなくてはならない。
 情報屋はネットワークを張り巡らせ、ローレット・イレギュラーズは世界中へと飛び回るのだ。
 この世界が、侵され尽くしてしまわぬように。

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