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シナリオ詳細

<大願成就>希望の宴へ錨を揚げよ

完了

参加者 : 42 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●絶望の海での勝利、そして
 第二十二回の海洋王国大号令は、冠位嫉妬・アルバニアと滅海竜リヴァイアサンを辛くも退け、成功を迎えた。
 これは海洋王国にとって大きすぎる一歩であるとともに、この戦いで失ったものが余りに多いことの裏返しでもある。
 しかし、海洋の民は『この成功に沸き立ち、騒ぎ、歓喜すること』こそが勇者達への鎮魂であることを理解していた。
 あの海に沈んだ数多の英霊とともに乾杯をし、今だけは涙を忘れ、笑顔で喜びを分かち合おう、と。人々は拳を掲げる。

●グレイス・ヌレ周遊船上パーティー
「お前達ならやると思ってたぜ、ひとまずお疲れ様だ」
 海洋の漁師、ネギール・トロスキーはイレギュラーズと海洋・鉄帝国合同部隊の人々を見回し、満足げにそう告げた。
 彼は普段はいち漁師として漁船を操る立場にある。が、今回はグレイス・ヌレ海戦以降の一連の出来事で少なからず関係があった点を踏まえ、こうして戦勝記念の船上パーティーで操舵手として駆り出されたのだ。
 船名は「ユニオン・オブ・クイーン」。先ごろの戦いの顛末を聞いた船主が、進水直後のこの船の名を急遽変更したのだ。
 かの海戦の部隊をパーティー会場とする船上での宴会は、両国家の面々が少なからず集まっている。
「ワタシはローレットがやってくれるって信じてたぴょん♪ コンテストの前にみんなに水着を見てもらって楽しんでもらうんだぴょん!」
 ウサミ・ラビットイヤー……元・地下闘技場ファイターは水着姿で祝賀会に乱入。
 来たるべきコンテストへ向けて、存在感をアピールせんとする腹積もりだ。インパクトは十分過ぎるほどに発揮されている。
「ウサミ殿は元気で結構なことだ。今後の我が国と海洋との交渉を考えると……」
 鉄帝文官、ダン・ドラゴフライはといえば、海洋と鉄帝の戦後処理が終わりかけの段階で、新たに放り込まれた(喜ばしい)出来事とそれに次ぐ処理を思い、腹部をさする。悲壮感が感じられないのは、この状況を心から喜んでいればこそ。
「ともあれ、ローレットの皆様が大号令を成し遂げて帰って来られたことは喜ばしきこと。私は賑やかしに交じるといたしましょう」
 ローレットと浅からぬ関係にある水蓮にとっては、祖国、そしてローレットによる大号令成功は両手を挙げて喜ぶべきこと。一切の異論なく、だ。

 そして、かつてローレットで催された宴会に勝るとも劣らぬ勢いで、人々は酒と食事に明け暮れている。
 ……ローレットほど好きには出来まいが、少なくとも無礼講の場だ。

 海域を一周するまで、相当な時間がある。宴会に明け暮れるもよし、戦いを振り返るもよし。
 各々のやり方で、この祝賀を楽しもうではないか。

GMコメント

 この間イベントシナリオ終わったばかりじゃないですかー!
 めでたいから仕方ないですね。

●祝賀パーティー
 リッツパークを出発した大型客船「ユニオン・オブ・クイーン」は、グレイス・ヌレ海域を一周するコースを取ります。非常にゆっくりとした移動ですので、夕暮れ出発から朝方帰還ほどの時間があるとお考え下さい。
 洋上では給仕・シェフ共に十分な人数がおり、両国家の人々とイレギュラーズを憩うに十分な体制を整えています。
 食事は海洋風のものがメインですが、鉄帝国からもシェフが来ているのでそれっぽい料理も出ます。
(Union of Queen……教授、コレは一体?)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●プレイング書式
 1行目:パートタグ
 2行目:同行者名(IDがあればなおよし)orグループタグor空白
 3行目:プレイング本文

 書式例
【宴会】
〇〇さん(p3pxxxxxx)とor【グループA】で、等
飲んで騒ぐぞ!(以下プレイング)

 上記書式を『徹底』してください。
 特に『2行目空け、3行目にグループタグ』『パートタグとグループタグをまとめて1行目』『パートタグとプレイングの行き先の極めて重篤な乖離』『2行目からプレイング』等の書式誤りは特に扱いづらいため、今回以降に関しては『高確率で描写を保証しません』のでご注意下さい。迷子になった場合、仮に描写されてもあっさり感が増す可能性が上がります。

●パートタグ
・【宴会】
 船上パーティーでのどんちゃん騒ぎに参加します。
 海洋および鉄帝のそこそこすごいお酒、かなりの手練のシェフによる料理が提供されます。
 なお、今回は両国家の軍人もいますので、無礼講ですが度の過ぎたインモラル行為はマスタリング対象となります。ただし、別に吐いてもいいです。
 船の上なので普通の樽はともかく、家一軒分みたいな樽を持ち込もうとしたら港で没収された扱いになります。やめろよ。船が沈むからな。
 ウサミ(水着のすがた)、水蓮、ダンはこの辺りにいます。

・【給仕】
 十分足りていますが、どうしてもやりたいという要望があれば。所要数は少数です。
 基本的には接客と給仕、調理場に回らなくても大丈夫です。大丈夫だってば。

・【散策】
 船内で宴会に参加せず散策したり少人数でしっとりやる場合はこちらです。プレイング(3行目以降)に描写される時間帯とか書くと雰囲気出ます。
 なお、多少の酒や料理の持ち出しはこちらのタグ、かつ船内であればセーフです。
 ネギールはここです。操舵室とかにいます。

・【他】
 これらに囚われない行動など。
 公序良俗に則った健全な行動範疇にてご容赦願います。

●注記
 このシナリオは『無制限イベントシナリオ』です。
 鉄帝国・海洋王国、ローレットの(他の祝賀会を出しているGMの担当NPC以外の)NPCが参加する場合もあります。

  • <大願成就>希望の宴へ錨を揚げよ完了
  • GM名ふみの
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2020年06月27日 22時05分
  • 参加人数42/∞人
  • 相談8日
  • 参加費50RC

参加者 : 42 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(42人)

アルテナ・フォルテ(p3n000007)
冒険者
ビューティフル・ビューティー(p3n000015)
クソザコ美少女
エンヴィ=グレノール(p3p000051)
サメちゃんの好物
エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
フェリシア=ベルトゥーロ(p3p000094)
うつろう恵み
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
安寧を願う者
ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
嶺渡・蘇芳(p3p000520)
お料理しましょ
ラズワルド(p3p000622)
あたたかな音
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ランドウェラ=ロード=ロウス(p3p000788)
黄昏夢廸
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
御堂・D・豪斗(p3p001181)
例のゴッド
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
リースリット・エウリア・F=フィッツバルディ(p3p001984)
紅炎の勇者
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
リョウブ=イサ(p3p002495)
老兵は死せず
十夜 蜻蛉(p3p002599)
暁月夜
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
矢都花 リリー(p3p006541)
ゴールデンラバール
彼岸会 空観(p3p007169)
ウィズィ ニャ ラァム(p3p007371)
私の航海誌
エリス(p3p007830)
呪い師
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃
源 頼々(p3p008328)
虚刃流開祖
楊枝 茄子子(p3p008356)
虚飾
カイン・レジスト(p3p008357)
数多異世界の冒険者
夜式・十七号(p3p008363)
蒼き燕
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
テルル・ウェイレット(p3p008374)
料理人
ボディ・ダクレ(p3p008384)
アイのカタチ
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
天下無双の貴族騎士
コスモ・フォルトゥナ(p3p008396)
また、いつか
ハンス・キングスレー(p3p008418)
運命射手
リリオス・ルーシェル(p3p008426)
可愛いを求めて!

リプレイ

●見捨てる神あれば拾う神あり
「オーッホッホッホッホッホ! 宴会と聞いて参りましたわ! わたくしパンの耳が大好きなので一週間ほどそればかり食べていたのですけれどなぜかしら最近フラつきますの。なぜ……?」
 ビューティは宴会と聞いて、居ても立ってもいられず船に乗り込んだ。そこまではいい。が、気が抜けたのか栄養不足か、食事に近づく足取りが怪しい。
「お、おなかが……す……きゅう」
「あらー、これでも食べてまずは落ち着いてー?」
 あわや床と熱烈なキッスをかわそうかという直前、彼女を抱え上げたのは蘇芳だった。逆の手に持っていたのは運良く海洋風リゾット。急に食べると逆効果なビューティには丁度いい。
「もうちょっと食べたいなら言ってねー? 持ってきてあげるからー」
「ありがたいですわ! 地獄に仏……いえ天国に天使……?」
 リゾットを口の周りに貼り付けながら、ビューティは首をかしげるのだった。
「思った以上に軍人が多いな……め、面倒くせぇ!」
 エイヴァンは皿と酒を両手に持ちながら右往左往。どこに向かっても同僚上司部下その他、両国の軍人だらけ。舌の乾く暇すらない。寧ろ話しすぎて乾くぐらい。
「よう、エイヴァン! 疲れてないか?」
「カイトか。そりゃあ……軍の連中にあちこちで捕まって……いや、それより誰だそれ」
 疲れ気味のエイヴァンに声をかけたのは、如何にも軍人然とした男の胴にタックルかました状態のカイトだった。物凄くいい笑顔なところを見ると知り合いなのだろう。うーんこの19歳児。
「お初にお目にかかる。私はダン・ドラゴンフライ。鉄帝の軍人だ。そちらも軍人とお見受けする。以後お見知りおきを」
「……エイヴァンだ」
 軍人から逃れてもまた軍人。ここまでくると軍人としての宿命じみたものを感じなくもない。
「折角の機会だ。カイト、挨拶回りについて来い。交渉事のなんたるかを教えてやる」
「おお? なんかよくわからないけど楽しいことならいいぞっ!」
 カイトを引きずって行こうとするダンは、ちらとエイヴァンに視線を投げかける。付いてきてもいい、という目だ。彼は肩を竦めてそれを辞去。二人は人混みの中に消えていく。
「……変に利用されなきゃいいんだけどな」
 エイヴァンは直後、追いついた海軍軍人達と相手を潰すまで飲み明かすこととなり、カイトはカイトで父の手を煩わせる羽目になったのは想像に難くない。
「……あぁ、本当に終わったんだな」
 縁は煙管の煙を吐き出し、ゆるゆると夜暗に溶け消えるそれを眺めた。いっときの泡沫とも見紛うそれは、彼自身の過去にも似る。
 魔種リーデル・コールとの再開と再びの別離は、幻というにはあまりに酷な事態であった。情欲はなくただ恋があるだけの過去を振り払った彼は今、目指す未来が見えないでいる。
「悪ぃ、鉄帝の酒と料理を貰えるかい」
「あ、はい、こちらにとびきり強いものが」
 縁が気紛れに声をかけると、通りすがったテルルは丁度いいとばかりにシンプルなグラスを彩る琥珀と重厚な肉料理を差し出してくる。何れも鉄帝のものとひと目でわかる。
 味付けも辛味をベースとしたシンプルなもので、付け合せもこれまたシンプルなマッシュポテト。食材に恵まれないかの国らしい質実剛健なそれだ。
「高くて強いお酒があるなら、僕にもくぅださいっ! あと海洋の料理っ!」
 えへへー、と出来上がった顔で二人の間に現れたのはラズワルド。酔いを楽しむために飲んでいる彼は、味というものを吟味できないが……アルコールの強弱は理解できよう。
「こちらのお酒をお渡ししておきますね、海洋の料理……ちょうどあちらのテーブルに!」
 宴会だけあって半ば立食パーティーだったのも幸いしてか、テルルの指した先には海洋謹製の華やかな料理が並ぶ。目を輝かせたラズワルドは、ぐいと縁の袖を引っ張った。
「えへへぇ、おにぃさんも一緒にどう?」
「……そうだな、飲むか」
 男二人、酔いが回った双方はふらふらと料理が並ぶテーブルへと足をむけた。テルルは周囲の喧騒を縫って駆け、次の要望を受けるべく向かうのだった。
「召喚されて早々に海洋での戦闘でしたので、こうしてギルドの皆様方と集まるのは初めてですね」
「うんうん。同時期に召喚されてイレギュラーズ同期組って感じで結成したギルドだけれど……ロクに落ち着いて話もできなかったし、ここらでのんびり仲良くしたいね」
 ボディの言葉に、ハンスも大きく頷く。無論、周囲の仲間達も。【ギャザリング・キャッスル】として集まった9人はほぼ同時期にイレギュラーズとなり、そしてひとところに集った者達だ。
 思えば、召喚直後に海洋の運命を左右する戦いに投じられた彼らだが、その甲斐あって成長著しい者達でもある。
 盃を交わし合う仲間から少し距離を置けば、彼らを見守るシューヴェルトの姿も。彼は宴会の雰囲気を楽しみながら、周囲の会話や今回の戦いの逸話などに耳を傾けていた。
「敵を打ち倒した誉れ、救った命の価値、そして竜に穿った意気はこれからもイレギュラーズとして活動していく支えになるだろう……と、これ以上の長口上は必要ないな?」
「目出度い事あれば全力で其れに心傾けるべし。新たな仲間達とのギルドの結成に、この無辜なる混沌の日々に、イレギュラーズの躍進に、そして大敵への勝利に――乾杯!」
 錬は仲間達の活躍が誇らしいのだろう、滑らかに仲間達への称賛を紡ぎ、思い出したように口を抑えた。カインはそんな彼の様子に笑みを浮かべつつ、乾杯の音頭をとった。
「乾杯。……折悪く『決戦』に居合わせた我々だが、こうして落ち着いて親睦を深める機会が出来たのは良かったように思う」
 ギルドの纏め役である十七号は、樽から注いだ水を飲み干すと、しみじみと語る。
 召喚と出会いの時期こそ騒々しかったが、過ぎてしまえばいい機会だったのかも、と。
「うーむ、傷ついた体に樽の水が染み渡る……!」
「うん、おいしい……」
 頼々とハンスは十七号同様、以前の飲み会で手にした樽の水を口にしていた。酒に弱い、ないし飲めぬ者には上等な水もまた癒やしである。
「やっぱ角の生えた奴は竜だろうがなんだろうがろくでもない鬼というのがよくわかる地獄じゃった……ああ、そういえば新天地にこれから向かうらしいな。どんなところであろうか。まさか鬼とかいう蛮族が蔓延る未開の地でもあるまい。……違うよな?」
「そんな不安を解消するためにも! 羽衣教会を、羽衣教会をよろしくお願いします! 是非とも! 入ってね!! おら! 入信ありがとうございます!!」
 頼々は知らない。盛大なフラグを立てたことに。そして、そんな彼に忍び寄り免罪符を押し付けてくる茄子子の姿。頬に押し付けられるそれを鬱陶しげに払う彼だが、しかし仲間である以上は無碍にもできない。なんだこの地獄絵図。
「ではこれらの本を読破して頂いて、より多くを学んで新天地へと向かおうではありませんか」
「ちょ、我そんな不安なわけじゃ、やめ、やめろァ!」
 逆方向からは悪ノリの気配に敏感に乗っかったボディが頼々へと手持ちの本4冊セットを胴へと押し付けに行く。そうだ、顔はだめだぞ、ボディだボディ。ボディだけにな。うっせえわ。
 なお、この様子をハラハラしながら見つめるのは頼々の弟子であるハンスだ。新天地に待っている者が師の地雷だったらどうしよう。人、それをフラグという(n回目)。
「何だか日々が目まぐるしいような気がしますね。今まで……そう、今まで、私に『何か起こることはなかった』のですから、当たり前かもしれません」
 悠久の時間と共にあった彼女――コスモにとって、目の前で起きる出来事一つ一つが得難い経験であった。
 他人という概念、誰かと過ごす時間、そして「違う」ということは決して友好を築けるわけではない……そんなことも、彼女は学んだ。
 そして目の前にある酒も、今まさに「知り得ぬもの」である。
「ああ、『ドレイクの渇望』……洒落た名前だろ?」
 カインはグラスに揺れるラム酒を差し出し、笑ってみせる。
 コスモも噂程度に知っているだろう、ドレイクの名を冠した酒。皮肉な名と、それに見合う刺激的な味はなるほど、気持ちを高揚させる効果は十分といえるだろう。
「世界に知らない事があって、自分とは違う誰かが存在して。それらを何と表すのか、私にはまだ分かりませんが――なるほど、ヒトとはこういうものなの、ですね?」
「ああ、悲しみに身を置くことも、それをいっとき忘れて楽しむことも、新しいことを学ぶことも、ヒトの特権だ」
 十七号はコスモの感想に首肯し、星月夜が揺れるグラスを傾けた。この滋味が新たな門出への原動力となることを祈って。
「諸君! よくぞこのフィアスバトルを戦い抜いた! あの時、エンジェルたちにゴッドはアルコールはプレーオフの後と言ったな! 今がその時! そのプレジャーも! ソローも! すべて飲み干すがよい!」
 豪斗……否、ゴッドは【酒樽】の面々を前に杯を高々と掲げ口上を述べる。前々から戦いの果てに飲み会を、気晴らしをと誓いあった面々の結束は固い。
「浴びるのは海水じゃなくお酒って、頑張った甲斐があったわぁ……!」
 結束は固いがタイミング問題はルーズなことはここでアーリアが早々に飲み始めて示している通りだ。ゴッドがそんなタイトな性格なはずないが。
「誰一人欠けることなくこうやって無事に宴会できて良かったですよ! 今日はもうガンガン飲みましょう! かんぱーい!」
「約束、しました……から、ね……乾杯、乾杯……!」
 エリスの言葉に合わせ、フェリシアは両手に持ったジョッキをがちんと打ち合わせるとぐぐっと一気にいく。まるで酒など水と同じで親和対象だといわんばかり。
「ゴッドはほら、神様だし供物としてお酒を嗜んでそうだけど……エリスちゃんにフェリシアちゃん、ってほら『カルーアミルクで』みたいに見えるのにイケる口なのよねぇ」
「ゴッドもリキュールを捧げられることも多い故な! テイスティングには少しうるさいぞ!」
「わたしは……色々と飲んでいたら、いつの間にかお酒の、沼に……いたので……水中適正も、つくかな、と…………これ、水でしょう?」
 アーリアの言葉に、ゴッドはふふんと鼻を鳴らし、フェリシアは澄んだ目でアーリアに問いかける。前回の件があったからきちんと確認したけど『水中親和』がアルコールに適用される可能性は低いぞ(ケースによる)。落ち着くんだ。
「こうして共にパーティを過ごすこと! これこそが何よりもゴッドアルコールよ! このシップをエンプティにするまでソングをシングしよう! パーティにエンディングは無いぞ!」
「お酒の重さで船が沈んじゃったら大変だものね! ちゃんと全部飲み切らないと! 樽持ってきてー!」
「コックさんも、ずっと忙しいままだと……大変だと思う、ので……食料庫、空っぽにしてあげて……あげましょう、ね。頑張り、ましょう……!」
「フェリシアさんのおっしゃる通り、コックさんの負担も減らさないといけませんね!」
 ゴッドの言葉に、思い出したようにアーリアが酒を、フェリシアとエリスが食事を頼もうと声を上げる。アルハラモンスターと場酔い海種とゴッドと酒豪&食いしん坊エルフ。この船に乗せたのはマズかったのでは? いや周囲が楽しんでるならいい……のか?
「船の上でのパーティーだなんて素敵だなぁ、よーし今日は楽しんで……って、あれ?」
 焔は周囲の喧騒と豪華な雰囲気に盛り上がった気分そのまま、素直にパーティーを楽しもうとしていた。が、そんなところに予想外の姿があれば、驚きに目を丸くする。
「ウサミちゃん!? なんでここに? 確か最近は鉄帝で復興作業のお手伝いとかしてたはずじゃ……」
「き、キミもこの宴会に着てたんだ……ぴょん? これは夏の水着大会での下準備だぴょん!」
 そう、ウサミだ。焔の言葉通り、彼女は鉄帝の事件後、復興に協力していた……はずである。こうして顔を出しているのは、抜け出したとしか思えず。理由を聞けば、納得ものだ。
「コンテストってバトルロワイアル形式じゃないんだぴょん? 尚更宣伝のために客引きが必要だぴょん……」
「じゃあ、せっかくだからここでライブでもやってみない? ボクが提案したから、今日は手伝ってあげる!」
 いつもならウサミの誘いを断る焔であったが、今日は彼女が言い出しっぺだ。驚きに目を丸くするウサミの手を引いて、焔は目立つ場所を取るべく駆け出した。
「ウサミちゃんなんて大胆なの僕と一緒に子供なんて作っ、あ」
 夏子はいつもの調子で新手の女子(ウサミ)の尻を追いかけようとした。そして今、【黒狼】の面々で集まっていることを思い出した。鈍い。
「それでは、ベー君から宴の前の一言を頂くのじゃ!」
「期待されている様な言葉は言えないと思うが、音頭を取らせて貰うよ」
 そんな彼を脇に置き、アカツキはベネディクトへと音頭を促す。謙遜しつつも話し始める彼の周囲では、リュティスが夏子の背をつねり制止を促していた。怖い。
「それと、祝杯を挙げる前に皆に報告だ。シリングが黒狼隊のメンバーに入ってくれる事になった、もう顔は知っている者が多いと思うが──」
「えっと、ご紹介に預かりました、マルクです。今回のご縁を機に、僕も黒狼隊に入れてもらう事になりました。ほとんどの人はどこかの依頼で会ったことがあると思うけど、改めてよろしくね」
 ベネディクトの紹介を受け、マルクは笑顔で挨拶をする。改めて同じ集団となった、というだけで依頼に積極的な彼の顔は、存外広い。
「マルくんお久~。何度か顔合わせたね振り~……顔合わせ たよ……ね?」
「マルクさん、よろしくなのじゃー。シャボン玉のお祭り以来かのう?」
「「黒狼隊、というと、私はちょっと微妙な立場でもあるのですけど……。此方でも宜しくお願いします、マルクさん」
 夏子はおずおずと。アカツキは元気よく。そしてリースリットは静かに、三者三様にマルクと言葉を交わす。マルクは、夏子に気づかわしげに頷き、他の面々とも笑顔を交わす。リュティスも、ベネディクトの傍らで静かに頭を下げた。
(……もう、越えて、その先へと至った。なら、前を向いて進み続ける事こそが、散った全てへの手向けなのでしょうから)
 リースリットは、談笑する中で静かに己の想いをリセットする。失ったものは多い。得たものは言わずもがな。過去に足を捕われぬよう、己に強く言い聞かせる。
「決戦の勝利と、これからの我々の未来に──乾杯だ!」
「乾杯ー! 隊の皆が無事で良かったのじゃ、本当に」
「かんぱぁーい! いやあホントしんどい戦いだったね、海は水着女性と戯れたいだけの場所だってのにさ!」
 ベネディクトの音頭で乾杯した一同の感想は、アカツキと夏子の感想に尽きる。手の伸びる範疇で、皆無事。視野を広げればその限りではないが、幸せを享受できる程度には無事といえた。
「いやあそれにしても奇遇だなぁ俺は最近ね~、馬の厩舎借りるついでにふわりと入隊ったばっかなのよ~。あ、いや結構見知った顔と素敵な女性が多いってことと? ベネベネの近くにいると女性と知り合うチャンスが多そう? 的な? 僕なりの鋭敏な女性を探る嗅覚が働いてさあ~!」
 夏子、既に2杯ほど飲み干している。ベネディクトに酌をさせる(本人の希望だが)という凄いアレなことをしているぞこの男。
「ああ、普段給仕をしてくれている者は偶には休んでも良いぞ。今日くらいは俺がだな……」
「あっははは悪いねベネベネ~……僕自己紹介したっけ?」
(夏子さんお酒のペース早いけど大丈夫かな?)
(ベネディクトさんの給仕姿が様になっていますが、夏子さんは駄目そうですね)
(妾、101歳なので飲酒できるけどあそこまでペース早くないのじゃ)
 すっかり気分を良くした夏子が早くも記憶の混濁を起こしたのを、マルク、リースリット、アカツキの三者は呆れたように見ていた。リュティスはちらりと凄い形相で夏子を見たのみで、ベネディクトを補助している。
 ……なおこの後、当のアカツキは火の玉リフティングを始めて一時海にロープ付きで投げ込まれる破壊消火(物理)を受けたが、当然の扱いといえた。湿気れば燃えない。
「おーい、マルベートさん、いっしょに食べよー!」
「おや。そこに見えるはリリーだね」
 周囲の空気を楽しみつつ周囲を観察していたマルベートは、身の丈を大きく上回る声で話しかけてくるリリーの姿を見て取った。
 リリーもまた、食事をより楽しめる相手を探していたのだから、好都合ではある。
「私は勿論ワインで、リリーもジュース等でどうかな?」
「うん、そうする。……じゃあ、乾杯」
 二人分の食事と飲み物を用意すると、お互い静かに杯を交わした。リリーはどこかいつもの彼女らしくない……というか、気疲れしたような印象をマルベートは受けた。
「色々あったよね、今回は……悲しいことも、凄いことも、嬉しいことも、色々。……なんだか疲れちゃった」
「……君は今回大変だったね」
 リリーの身に起きた数々の混乱を思えば、その感想も分かろうというものだ。細かく切った料理を差し出しながら、マルベートは大仰に頷き、話を聞く。
 今は、目の前の食事に舌鼓を打ち、楽しく語らい、英気を養おう。そうすれば、次が見えるだろうから。

●甲板の喧騒を遠く離れて
「こんなにおっきな船って、のったことってないから……ちょっとお行儀悪いけど、もちろん食べ物も持って! サンドイッチとかお肉をバスケットにもらっちゃえ♪」
「いいね、美味しい食べ物いっぱい持っていっちゃお!ボクはデザートを用意するね」
「平和な船は久々に乗る気がするなぁ……いや初めて? ならこの初めてを楽しまなければ損だよな!!」
 アルテナ、リリオス、そしてランドウェラの3人は、【探検隊】として船内の探索に乗り出した。
 長い海での戦いの後に、軍艦ではなく客船に。とくれば、三人にとっても非常に新鮮な体験であるわけで。
「これからはまた、陸での冒険が始まるんだね。戦ってる時は、うんざりしていた海だけど……」
「船旅から離れるとなると、少し寂しく感じるから……」
 リリオスの言葉を継ぐように、アルテナが憂いの表情を見せた。だからこそ、楽しむ。道理である。
「この初めてを楽しまなければ損だよな!! 記念ついでにキメちゃうか?」
 ランドウェラが星夜ボンバーを構えると、流石に二人は止めに入るが。なにせ船内は広い。一同、上へ下への大冒険である。
「こっちには何があるんだろ」
「大分下に着たな……船倉のあたりかな?」
 アルテナとランドウェラが船倉を見回り、その貯蔵量(と酒)に驚いたり。
「このマストとか、登ったら楽しそうよね」
「えっアルテナその姿で上がるの?」
「危ないよアルテナ、見えちゃう! よかったらボクの上着を使って」
 奔放なアルテナに二人が翻弄されたり。
 その合間に、こっそりもらってきた料理を三人で頬張ったり。
 海風が肌を撫で、三人の道行きを指し示しているようにもかんじられる……悪くない、一時だった。

「海上は天義とは別世界だな……あまりにも強大な相手だった」
「リゲルもお疲れ様。大罪だけでも大変だったのに、竜種まで出てきたのはびっくりしたな……少し、海を見ながらゆっくりしよう」
 海域一周、一昼夜。数年前までは天義しか知らなかったリゲルにとっては、聞いただけで気が遠くなる世界の話だ。尤も、傍らのポテトと共に旧『絶望の青』を駆け抜けた彼にとって、狭いと言えるのかは疑問だろうが。
「水竜様をはじめ、沢山の縁が奇跡を生んで、沢山の犠牲を出しながら漸く勝てた……」
「多くの仲間が奇跡を紡いでくれた。……あの人達がもう居ないだなんて正直信じられない、信じたくない」
 それは『必要な犠牲』だったのかもしれない。何度死を覚悟したかも覚えていない。リゲルの若々しい感受性には、その衝撃は受け止めるに尚早すぎた。
「共に戦ってくれて有難う。リヴァイアサンを、アルバニアを倒すために命を使ってくれて有難う」
「俺たちは皆の為にも、未来ヘムと歩み続ける」
 祈りは短い。撒かれた花の如くに儚い命であった、とは思いたくはない。
 十字を切ったリゲルは、ポテトへと微笑むと甲板へと戻っていく。失いたくないものが出来た。命を投げ出さない理由ができた。この戦いの意義は、その再確認として十分すぎたのだ。

(此度の戦、非常に大きな意味があった)
 無量は船のへりで海洋の戦いを思い返しながら、己の想いの変遷に思いを馳せた。
 「悩める者を断ち切り彼岸へ送る」ことを使命と信じて生きてきた彼女は、鏡面世界の魔種・ミロワール……シャルロットという名を持つ相手を見て、思うところが出来た。
「一度絶望し、伏した目を上げる事など余人には出来ぬと思っていた。彼女は特別な何かを持って生きた者ではなかった。……ならば、何故?」
 思い当たるところは一つ。彼女と向き合った者達――自分も含め――が『特異運命座標』であったから。
「結局、世界を変えたのは俺達……散っていった連中も含め、イレギュラーズなんだよな」
「…………」
 無量は、唐突に挟まれた声に顔を上げた。
 そこにいたのは、酒とつまみとを抱えたリョウブだ。老兵然とした彼は、しかしイレギュラーズとしては新米だ。十分な年季があってこそ、その運命の力が実感できた。
「悔いがないとしても、未来あるはずのものがあんなにも失われたことに、寂しさもある……まぁ、全部抱いたままでいいだろうさ。海っていうのは、優しくなんて無いけど、全部受け入れてくれるからね」
「小さき力では何も変えられないと思っていた。世界だけを変えるために、この力があると思っていた……然し、もし、今回の様に小さき者ですら運命を変え得る存在へと至らせる事が出来るなら」
 リョウブの言葉に、誰に語るともなく無量は口にする。その言葉に込められた覚悟の意味は、リョウブとて知らぬわけではなく。
「少し、相手してくれ。肴が少し『塩っけが強くて』な。一人では片付かんのだ」
「……お相手しよう」

「皆様も、大きな怪我なく戻られて、ほっとしました」
「皆無事で……ほんに良かった、うちの心の支えやったよ。ありがとう」
 甲板上の宴会を離れれば、イレギュラーズには客船が充てられている。【泪雨】の四人が集まったのも、そんな部屋のひとつだった。
 雪之丞と蜻蛉の言葉が、この面々の本心として真っ先に来るものだ。
 多くの命が散った戦場から、戻ってお茶と菓子とを囲んで話せることのなんと幸せなことか。
「危険な航海だったけど……再びお茶会が出来て良かったわ」
「皆がこうして、無事に顔を合わせることができた。雪之丞さんじゃないですけど、ほっとした……という気持ちのほうが大きいですね」
 エンヴィとクラリーチェも、脅威のない波の揺れに身を任せられたことにホッとした様子を見せていた。ともすれば安堵の吐息ひとつで、肩から、そして全身から力が抜けかねぬ程度には。
 蜻蛉にとっては一際、だろうか。一同、戦闘経験の多寡こそあれど『本来なら戦場が似合う者達ではない』。それでも足を踏み出し、危機の前で一歩も退かなかったのは仲間があったればこそ。
「お祝い……ていう所まで行かへんけど、お疲れさまくらいは言うてもええよね」
「ええ。貴女が今ここにいる事。それが何よりですから……命を繋いだ者として、これからを生きる責務を果たさなければ」
 蜻蛉の言葉に、クラリーチェがその手を相手の手に重ねながら頷く。
 生きていてくれた貴女に。生き延びられた自分に。そして、命を賭けてくれたここにいる、そしてこの世界に在る仲間に対して。彼女達は感謝と責務を抱えることとなったのだ。
「はい、雪ちゃん、あーん」
「蜻蛉さんも。お疲れ様でした。心の休養には、甘味がいいと聞きます」
 雪之丞と蜻蛉がお互いに甘味を相手の口へと放り込むのも、今ならば楽しい日々の一幕となろう。
 これからも思い出を増やしていきたい。語り合う時が来ればいい。……エンヴィの願いは、この先の不撓不屈の決意の先にある。

「魔種やらオネェやら竜やら何やらさぁ……いっぱい出すぎ……自重しろだよねぇ……」
 ごろごろと転がる樽が、唐突に喋った。それの周囲に人が居たなら、驚きで振り返りもしただろう。
 だが、そこに居たのは樽……いやさ、顔を出したリリーだけであった。
「もうなんか色々ありすぎてあたい(の精神)は死んだ……スイーツでも食べないとやってけないよねぇ……」
 リリーは色々ありすぎて結構ボロボロだったらしい。スイーツ食べながら誰にも干渉されずに過ごしたい。夜になったら樽で寝て、朝になったら荷物と降りたい。……さて、彼女の希望がそのまま叶ったのかは、彼女のみぞ知るところである。

 ウィズィは、暁の水平線に日が昇るより少し早く目を覚ました。
「東……あの太陽が見える方角に、新天地があるのか」
 静かな海を眺め、彼女は海賊帽に触れた。
「……辿り着いたのかな、彼らは」
 ブラッドオーシャンを見送ったときのことを思い出す。バルタザールと船のクルー、そして。
(ドレイク)
 その名を、口にすることはしなかった。名前とともに、あふれるものがあるだろうと感じたからだ。
 だが、その名を呼ぶにはこの海は静寂すぎた。思い出を声に出すには、夜と呼ぶには明るすぎた。
 東から昇る日は、過去を顧みる者を照らすには眩しすぎるのだ。
 空が白み始める。その日に照らされることがないよう、ウィズィは踵を返し、船内に戻っていく。
 帽子で目元を隠したまま……暁の海は、彼女の零した「それ」を飲み込んでキラキラと光っていた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加有難うございました。
 白紙ゼロ。平均字数も多く、書きごたえのある内容でした。
 この船旅が新しい一歩への助けになることを願ってなりません。

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