PandoraPartyProject

シナリオ詳細

壮絶! ゴブリン300匹大攻勢!! ガシャイヒ村を守れ

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ゴブリン大軍団到来!!
「聞けえええい、兄弟たちよォォォォッ!!」

 雄叫びであった。
 ホブゴブリンチーフが集まった戦士たちを前に、大音声で叫んだ。
 彼を群れのリーダーと認めるゴブリンたちは、武具を激しく打ち鳴らしてこれに答える。

 集まったゴブリンたちは多い。百を優に超える。
 その数、ざっと300匹――。
 まれに見る大軍勢であった。

「俺たちの同胞は、人間どもの集落を蹂躙し、恐怖に震えさせるはずだった。だが、やつらはみんな殺されちまった。何故だ!!」

 憎悪の声があった、怒りの声があった、怨嗟の声があった。

「人間どもが無慈悲だったんだゴブー!」
「あいつらは狡猾で残忍だったんだゴブー!」
「だから、ゴブたちは敵を討ちにいくんだゴブー!」

 同胞の死を嘆き、おいおいと泣きながらホブゴブリンチーフに訴える。
 人間どもがいかに恐ろしい存在であるべきか?
 無力だと侮ったが最後、村人たちが呼び寄せた冒険者たちによって返り討ちとなってしまったのだ。

「違あああああうッ!! てめえらが軟弱だったからだァ!」

 怒りすら込めた視線で300匹の同胞たちを睨みつける。
 その気迫に、あれだけ騒がしかったゴブリンたちが水を打ったように静まり返った。

「人間どもが無慈悲? 狡猾? 残忍だぁ? てめぇら! そいつは俺たちゴブリンのことだろうかぁ!」

 無慈悲! 狡猾! 残忍!
 それこそがゴブリンという種族の代名詞。

「思い出せ、兄弟たちよ! 俺たちが群れなして人間どもの集落を踏み散らし、女子供を追っかけ回して蹂躙してやった日々をよぉ? 最高だったろうが。俺たちを劣等種と侮った人間どもが、家族を失って泣き叫ぶさまはよぉ」

 ホブゴブリンチーフは、うっとりと陶酔して語った。
 泣いていたゴブリンたちも、顔を上げてやる気を取り戻している。

「いいか? 百匹もいて、ちっちぇえ村で返り討ちになったのはなぁ、無慈悲じゃなかったからだ! 騙し討ちにできなかったのは、狡猾さが足りなかったかったからだ! 女子供がいきてたのは、残忍じゃなかったからだ! 違うか? 違うかぁっ!!」

 300匹のゴブリンたちの目が爛々と光る。
 目指すは、100匹もの仲間が返り討ちにされた人間の集落、ガシャイヒ村。
 大群で押し寄せて、徹底的に踏み潰すのだ。


●求む、ゴブリン退治の勇者!
「今、ゴブリンの大集団が迫っていると報告があった!!」

 『女騎士』レディーナ・フォン・ロックシュタイン(p3n000146)は、ギルド・ローレットに現われ、冒険者たちを募集した。

「その群れは、300匹はいるという。ゴブリンどもが向かっているのは、幻想の方田舎にあるガシャイヒ村だ。冒険者の手引で100匹のゴブリンの襲撃を守りきったが、今度は3倍の数で復讐にやってきたらしい」

 女騎士レディーナは、真剣な表情で言う。
 村には、戦うことのできない村人たちがいる。
 冒険者たちが残した防御陣地もあるだろうが、300匹の群れに押し寄せられてはどうすることもできないだろう。

「手が空いている者は、早急にガシャイヒ村に向かってほしい。私も、できるかぎりのことはするつもりだ」

 女騎士レディーナの手にはガシャイヒ村の地図があった。前回の襲撃の防御施設の位置が書き記されている。
 300匹のゴブリンから、小さな村を守りきれるだろうか?

GMコメント

 
■このシナリオについて
 皆様こんちは、解谷アキラです。
 ファンタジーRPGの定番、王道のゴブリン退治のシナリオです。
 幻想の片田舎、ガシャイヒ村がゴブリン300匹の群れに狙われています。
 かつてこの村は100匹のゴブリンを迎え撃ち、なんとか退けました。
 なので、その時の防御陣地もあり、村人たちもある程度は自主避難しています。

・ガシャイヒ村
 200人程度の小さな集落です。若い男ではかき集めても20名程度です。
 村人たちは力仕事、単純作業はできますが、戦闘の役には立ちません。しかし、ゴブリンの襲撃でもパニックになることなく避難指示に従い、ある程度は手伝ってくれます。
 ただし、狡猾で卑劣な手伝いに出た村人から狙ってくるかもしれません。
 指示したことは懸命にこなそうとしますが、成功するかは指導次第です。

・風車
 風車は塔状になっており、過去の襲撃ではここに女子供が避難してやり過ごしました。
 十数名の弱者がすでに避難してはしごを揚げ、籠城の構えを見せています。

・納屋
 納屋は、村に4箇所あり、立てこもれます。
 風車に逃げなかった者たちは竹槍を持って構え、突入されたら防戦します。

・北側ルート
 北側は山地となっており、駆け下りて攻められます。
 しかし、山道は狭いので大群はやって来ないでしょう。
 バリケードと空堀が掘ってありますが、数が集まれば落ちるかもしれません。

・南側ルート
 街道沿いに面し、途中には流れの早い川があり、橋がかかっています。
 前回の襲撃と同じようにに、村人たちが橋を落として時間稼ぎをしています。
 ただし、ゴブリンたちもこの辺は学んでおり、渡河作戦用の雲梯や簡易筏を持っており、大した時間は稼げないようです。

・女騎士レディーナ
 先陣になって戦うつもりですが、放っておくと蹂躙されます。NPCですので村人よりちょいましです。

・ゴブリンの大群
 もはや戦術も戦略もなく、数の有為を生かして力押しでやってきます。
 しかし、それなりに知恵は回ります。

ゴブリン×200
 主力はショートソードや盾で武装した歩兵ゴブリンです。10匹に1匹は身体の大きなホブゴブリンがいます。
 20匹ほどが農作物の青田刈りをして火をかけて挑発しています。

ゴブリンアーチャー×20
 弓兵です。ショートボウで武装していますが、小回りがききます。火矢も撃ってきます。

・ゴブリンライダー×20
 狼を乗りこなす騎兵です。突破力よりも機動力です。

・ゴブリンシャーマン×4
 呪詛や呪文を使う魔法使いです。数は多くはありません。

???×55
 残り55匹はどういうゴブリンなのか情報がありません。戦場の霧というやつです。
 専門に索敵するまで不明です。もちろん、索敵にも成否があります。

・ホブゴブリンチーフ×1
 300匹もの群れを集めるだけあって力も知恵もあるようです。
 ウォーハンマーを振り回すパワータイプです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • 壮絶! ゴブリン300匹大攻勢!! ガシャイヒ村を守れ完了
  • GM名解谷アキラ
  • 種別ラリー
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2020年06月29日 15時38分
  • 章数3章
  • 総採用数163人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

「どれだけ残ってやがる? 10匹ずつ並べ」

 ホブゴブリンチーフが、引き上げた群れを並ばせる。
 彼が300匹もの大群を率いられたのも、ゴブリンにしては珍しく数を数えられたからだ。
 しかし、並べてみるとその痛々しさが露わになる。

「300匹いた大群も、こんなになっちまったうとはな……」

 ホブゴブリンチーフは、唸るように言った。
 木砲と山門とゴブリンライダーは全滅した。
 ゴブリンアーチャー、5匹。
 ゴブリンマローダー、3騎。
 ゴブリンシャーマン、2匹。
 ホブゴブリン、7匹。
 徒士ゴブリン、32匹。

「これに俺をくわえて、ちょうど50匹か」

 そんな群れのボスを視る、恨みがましい目に、怯える目――。
 残るゴブリンたちの目に、さまざまな感情が宿っている。
 だが、そんなことは知ったことではないのだ。
 群れのボスとは、群れの個々がいかなる感情を抱いていようがひとつのものとせねばならない。
 ここで必要な感情は、怒りと恐れである。

「いいかてめえら! あの村の人間どももへばってきてやがるんだ! このまま引き下がれるか? 俺たちゃあ、連中をビビらせに来たんだ。ゴブリンってのは、何匹殺されようがいくらでも湧いて出るってのを叩き込んでやれ!」

 ホブゴブリンチーフは一喝した。

「それができねえ者は俺がこの場で殺す! どうだ、人間に縊り殺されるのとどっちがマシだ? どうせ死ぬなら、ひとりでも多く人間を道連れにしやがれ!」

 ゴブリンたちは、これに応えるように雄々しく吠えた。
 やけっぱちと言ったら、それまでかもしれない。
 しかし、それでもひとつの意志としてまとめ、村を蹂躙しようとする群れとなればいい。

「よし、あれを出せ――」

 その号令で、後方に待機していた巨大なものが前進して来る。
 大型戦車(チャリオット)だ。
 車輪の軸には、刃が突き出ており、走るとともに回転する仕組みだ。
 これを、残った3騎のゴブリンマローダーが牽引するべく繋がれる。これで3頭立ての戦車ということになる。
 先頭部分にホブゴブリンチーフが乗り、その脇に2匹のゴブリンシャーマンが、立ち座には5匹のゴブリンアーチャーが乗って、2匹のホブゴブリンがハルバードを構えて露払いを担当する。
 これを残る徒士のゴブリンとホブゴブリンたちが囲みながら進撃を開始する。

「かかれえええっ!!」

 ホブゴブリンチーフが兜をまとい、大号令をかけると角笛が高らかに鳴り響く。
 ゴブリンチャリオットは、ガシャイヒ村をひと息に蹂躙すべく突進した。


第3章 第2節

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
マルク・シリング(p3p001309)
軍師
オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)
石柱の魔女
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ

「残る全軍を投入してきたね。これが、最後の正念場だ」
「いい加減諦めの悪い奴らだ、ここまでされてもまだ足掻くとはな」
「まったくです。ま、この辺りで総攻撃といった所でしょうねぇ」

 マルク・シリング(p3p001309)、『讐焔宿す死神』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)、『ステンレス缶』ヨハン=レーム(p3p001117)も、これがゴブリンたちの最後の攻撃であろうと見て取った。
 300匹もの群れで、ガシャイヒ村を脅かしたゴブリンたちも、逆にそこまで追い詰められたのだ。

「最後の足掻きということですか。とある世界では“窮鼠却って猫を噛む”と聞きます」

 追い詰められた相手の逆襲こそ、気をつけねばなるまいと『石柱の魔女』オーガスト・ステラ・シャーリー(p3p004716)は仲間たちにも警告した。
 事実、300匹のもの大群に襲われたガシャイヒ村こそ、“窮鼠”であったろう。
 いかなイレギュラーズといえど、数の差は圧倒的であったのだ。
 幾度もの攻勢を跳ね除け、こうして返り討ちにしてきたのである。

「良く言えば波状攻撃、悪く言えば逐次投入……。僕は戦略戦術戦闘において絶対に負けたくないもので、こんな力任せな作戦はすべて徹底的に否定してあげよう! 行くぞ――!!」
「おおっ!!」

 ヨハンの合図で、ガシャイヒ村の人々も板を使った即席の盾を構え、イレギュラーズとともに整然と並ぶ。

「この力は人々を守るためにある! 決して砕けぬ不滅の聖盾! ホーリーシールド!!

 その前衛に、聖盾の魔法が付与された。

「ははは! この古典的な防御布陣は何て言いましたっけ、あぁ! ファランクスだ!」

 見よ、鉄壁不破の陣を――。
 いかなる突撃をも跳ね返す、密集陣形である。
 それでもなお、ゴブリンチャリオットは突撃の構えを変えようとはしない。

「チャリオットまでゴブリンが出してくるなんて……!」

 『朝を呼ぶ剱』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は戦慄した。
 これまでの交戦で疲弊していると言うのに、敵は蹂躙の切り札を隠し持っていたのだ。

「マローダーの時以上に、簡単にこのままでは蹂躙されてしまいます! なんとかして、あの戦車を止めなければ!」

 シフォリィは前進した。
 戦車には、ゴブリンが随伴している。
 これを排除しなくては、戦車をどうにか知ることはできない。
 しかし、それは搭載されたゴブリンアーチャー弓射とゴブリンシャーマンからの攻撃を受けるということでもある。

 かまわない、村を守れるならば――。

「刻み付けろ、敗北を。完膚なきまでに」

 クロバも動く。
 狙いは、敵戦車の破壊および残存勢力。
 完膚なきまでに叩き、敗北を刻む。二度と、このような暴挙を繰り返さぬために。
 ガンブレードを引き抜くと、黒炎が吹き上がった。
 矢の嵐の中を、黒い炎をともなって超高速の斬撃が突き進む。

「ゴブゥゥゥゥゥッ!!」

 ホブゴブリンチーフの脇侍として構える歩ブブリンが、これを食い止めようとハルバードを突き下ろす。

「フッ、そう簡単にはいかんか」

 さらに、ホブゴブリンが盾となって群れのボスを守っている。

「ゴブハハハハ! そう簡単に親玉を獲られやしないんだゴブ!」
「しかし、射線は通りますね――」

 ゴブリンたちが言った途端、狙いすました弾丸が放たれた。
 兜を弾き、甲高い金属音を上げる。

「ボ、ボス!?」
「落ち着け、かすっただけだ。しかし、性格に狙ってやがる」

 血を流しながらも、ホブゴブリンチーフは冷静だった。
 弾いた相手は、『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)である。

「狙撃だ、反撃しろォォォォッ!」

 弓隊と、ゴブリンシャーマンの呪詛がイレギュラーズに飛んだ。

「……くっ、下がってください! 敵の反撃が来ます」

 随伴するゴブリンを切り払いながら、シフォリィが叫ぶ。
 今回の弓兵は、ゴブリンマローダーに牽引されて機動力を得ている。
 拠点を変えながら矢を降り注がせることができるのだ。
 彼女がここで発動させるスキルは、 AKA――アバター・カレイド・アクセラレーション。
 あり得るはずだったもう一人の自分の可能性。

「誰かが傷ついたなら、僕が癒やす。誰かを傷つけるなら、僕が倒す」

 マリクも、味方を回復しながら前に出た。

「相手は私たちを殺す気です――ですから同じ目に遭う覚悟はできてますよね?」

 オーガストは問いかける。
 そしてバジリスクの魔弾を放つ。
 無数の球体が、ゴブリンの群れめがけて弾け飛んでいった。

成否

成功


第3章 第3節

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
ミンティ・セレーニア(p3p007959)
特異運命座標
ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)
戦輝刃

 ゴブリンチャリオットの蹂躙は、かろうじて反らしたようであった。
 しかし、その威圧感はかなりの脅威である。
 
「チャリオット! あんなものまで用意しているなんて……」

 村を轢き潰さんとした兵器の投入に、『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)も呆気にとられた。

「一度、本格的な調査及び討伐を計画するべきでしょうか」

 その必要はあるかもしれない。
 ガシャイヒ村の周辺には、ゴブリンの一代群生地があるのだろう。

「困りましたね、あんなのに轢かれたらさすがに無事じゃ済みませんよ」
「でも、ようやく終わりが見えてきたかな。
たとえどっちが生き残るにしてもね」

 『特異運命座標』ミンティ・セレーニア(p3p007959)に、『初日吊り候補』セリア=ファンベル(p3p004040)が言う。
 この300匹の襲撃と防衛は、ゴブリンとガシャイヒ村の存亡を懸けた戦いであった。
 どちらがが滅びる、そこまでの意味を込めて繰り広げられた。
 
「ゴブリン風情がサキュバスにかなうもんですか! あんたらどうせ無駄死によ!」

 だが、いかなる意味があろうとも、この戦いの死は無駄であると『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)は言い切った。
 魂は、十分いただいた。
 おとなしく、尻尾を巻いて逃げていればよかったというのに。
 だからこそ、無駄だと嘲笑ってやるのだ。
 蹂躙しようとするチャリオットの正面に立ち、受け止めようとしている。

「あの女から轢き殺せえええ!!」

 ホブゴブリンチーフが怒声を張り上げた。
 この村への襲撃で、散々に翻弄させられた淫魔の一匹がいるのだ。
 血祭りにあげるには相応しい。

「いひひ――たっぷりと味わいなさい、瘴気の渦を♪」

 3騎のゴブリンマローダーが怒涛のように迫るも、淫猥な瘴気に飲まれていく。

「ほら誰か後ろにいるんでしょ、私が食い止めてる間にせいぜいデカいのぶっ放しなさいな!」

 利香も無傷なわけではない。
 イモータリティによる強靭な生命力あってのことである。

「……グルルル……」

 『煌雷竜』アルペストゥス(p3p000029)が襲いかかろうと、唸るように喉を鳴らした。

「相手の戦力はかなり減ったはずだが……それでも折れんか」

 その背に乗るのは、『ドゥネーヴ領主代行』ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)であった。

「頼むぞ、アルペストゥス。ゴブリンと聞いていたが、最後まで油断はできぬぬようだ。ならば、俺たちもまた火の粉を払い抜くまでのこと!」
「グルルル……!」

 機動力を持つゴブリンチャリオットに対抗するには、やはり機動力持って当たる。
 アルペストゥスが吼え、大地を蹴って天に駆け上がった。
 古代竜の末裔であるアルペストゥスは、羽ばたき、天を駆けられるのだ。

「ギッ!? 上からか!」

 機動力という面では、ゴブリンチャリオットを上回る。

「よし、今よ――」

 セリアは、戦車を引く3騎のゴブリンマローダーをサーチししていた。
 距離を測って精神力を弾丸にして放つソウルストライクを放った。
 頑丈な鉄鎧に阻まれるも、その足止めを果たすことを目的としている。一発、二発と連射する。

「そうです、川沿い、農地に追い込みましょう」
「わかりました、シズカさん!」

 盾を構えた村人たちとともに、ゴブリンチャリオットの進行方向を妨害する。
 側面から押して、ぬかるみに追いやる。
 戦車は強力に見えて小回りも利かず、扱いづらい兵器である。
 これに歩兵を随伴させるというのは、その弱点を補うためでもある。

「皆さん、ポールウェポンと車輪の刃物に気をつけて!」
「はい!」

 ガシャイヒ村の村人も、ハルバードを見舞われるが聖盾の効果で守られている。

「石でもなんでも投げて、御者を狙ってください!」
「おう!!」

 ホブゴブリンチーフの前の御者に、シズカの号令で投石が行われる。ゴブリンチャリオットを、青田刈りされた麦畑に追い込んでいく。

「ちくしょう、車輪が……!」

 柔らかい土に、車輪がめり込んで空転する。
 猪の突進力があろうが、土に埋まった車輪を押し出すのは骨だ。

「野郎ども、押し出せ!」
「ギギギィッ!!」

 随伴するゴブリンたちに押し出せるが、上空からアルペストゥスを駆るベネディクトが急降下してきた。

 ――潰えよ!

 アルペストゥスの怒りの意志が伝わったか、ゴブリンたちは怯んだ。
 呪われた魔弾と神気の光が、戦車を押すゴブリンたちを焼き払う。

「やはり牽制程度にしかならんか───ならば!」

 投げ槍だけでは仕留めきれないと見たベネディクトは、ヘイトレッド・トランプルによって急降下する。

「黒狼の爪牙をその身に刻み付けよ……!」
「グガアアアアッ!?」

 憎悪の爪牙が、牽引するゴブリンマローダーを1騎仕留めたのだった。

成否

成功


第3章 第4節

諏訪田 大二(p3p001482)
リッチ・オブ・リッチ
シラス(p3p004421)
超える者
アンネリース(p3p004808)
炎獄の魔女
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
雪村 沙月(p3p007273)
月下美人
リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)
黒狼の従者
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera

「やはり最終兵器を隠し持っていたか」

 古代竜を駆る竜騎士の突撃を受けても、なおゴブリンチャリオットを破壊するに至らなかった。
 『暴風バーテンダー』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)も戦慄せずにはいられない。
 ゴブリンマローダーを1騎失い、御者が深手を追っても、ゴブリンシャーマンが呪術で力を付与して戦車を畑から脱出させる。

「この疲弊した状況であんなモノに突っ込まれたら、村の守りが持たん。その前に止めるぞ!」
「わ、わかった!」

 ガシャイヒ村の人々は丸太を手にし、モカとともに戦車への接近を敢行する。
 随伴のゴブリンたちも相当減っている今こそ、ちゃんと言えただろう。

「まだやってるな、間に合ったぜ!」

 横合いから駆けつけたのは、『ラド・バウC級闘士』シラス(p3p004421)であった。
 ガシャイヒ村で壮絶な殲滅戦が繰り広げられているのは、すでにローレットにも伝えられていた。
 スタックから脱したゴブリンチャリオットを守るゴブリンを、まったく無駄のない動きで片付けていく。
 すかさず、ゴブリンたちが取り囲むが、シラスは動揺する素振りを見せてはいない。

「いくらでもかかって来な!」

 数にもひるまず、ゴブリンアーチャーへも光弾を放って攻撃する。

「懲りずにまた挑んでくるようですね。再度打ち倒して差し上げましょう」

 大型の戦車であっても攻略法があり、ゆえに恐れはしない――。

 『黒狼の従者』リュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)は冷静であった。
 ゴブリンシャーマンの呪詛をさらに抑えつけていく不運の呪いを与え、その機動力を支える車輪を狙うチャンスを作った。

「よし、今だ!」

 モカとともに、村人たちが丸太で車輪に対して攻撃していく。車輪の輻の部分に投げ込めれば、しめたもの。一気に無力化できるであろう。

「あいつらを追い払え、ホブゴブリンども!」

 ハルバードを構えた2匹のホブゴブリンが飛び降り、車輪を守ろうとハルバードを振り回した。

「オラアアアアッ!! 人間なんぞに戦車をやらせんのだゴブ!!」

 屈強なホブゴブリン2匹が、ハルバードを風車のように回して村人たちを追い払う。

「来たな、ならば毒蜂乱舞脚――!!」
「オブッ……!?」

 モカの足技は、そのハルバードのスピードも上回った。
 顔、眼、腕、脚と、二匹の急所を砕いていく。

「雪村沙月、参ります」

 『百錬成鋼之華』雪村 沙月(p3p007273)も、戦車の撃破のために突進した。
 立ちはだかるゴブリンを、徒手空拳の技によって退けていく。
 まるで舞いのように、軽やかにゴブリンタトを交わし、あっという間に転がしていく。

「ははっ、無様だねえ! 意気込んでる割にはもう後が無いんじゃない?」
「グギギギ……」

 『炎獄の魔女』アンネリース(p3p004808)の指摘は、的を射ていたかもしれない。

「いや…後が無いからこそ、焦って発破をかけてるのかな?? まぁ、何でもよいよ、どうせ死ぬのはきみらだからね!」

 いかに強力そうなゴブリンチャリオットを用いようが、最後の力であることは、明らかであった。
 マギシュートで牽制しつつ接近し、アンネリースはみずからを傷つける。
 その傷から噴き出した鮮血が槍の形となってゴブリンシャーマンに命中する。

「ゴヴァッ――!!」

 そいつは、苦悶の声を上げてはぜた。

「グフフ……。たいそうなオモチャを引っ張り出してきたようじゃが、すでに形勢は決しつつある」

 北側ルートから進撃した『リッチ・オブ・リッチ』諏訪田 大二(p3p001482)が、配置についた。

「大二先生、準備できとります!」
「おお、そうかそうか!」

 大二の指示で修理された、鹵獲品の木砲の発射準備が整ったのである。
 木砲の威力自体は、それほどのものではない。
 しかし、チャリオットへの対抗策があるというだけで士気は格段に上がる。
 軍事的プレゼンスの提示というやつである。

「どうやら……8時45分、トドメの時がきたようだネ」

 木砲の発射音とともに、『劫掠のバアル・ペオル』岩倉・鈴音(p3p006119)がさっそうとマントを翻した。
 8時45分……時代劇で言ったら成敗の時間帯である。
 その登場とともに、血湧き肉躍るようなBGMが流れる。バアルの英雄行進曲だ。

「さあ、ローレットの皆さん。やっておしまいなさい!」

 バアルが気合を入れると、ガシャイヒ村の戦況が大きく変わったかのように思えた。

「よし、味方だな。村を守ったら祝勝会だ」

 モカも、一層奮起する。
 大二が指揮する木砲の発射によって、ゴブリンたちは浮足立っている。

「祝勝会か、そいつは楽しみだ」

 ゴブリンアーチャー隊にまで接近したシラスは、力を集中して衝撃を放った。
 矢を番えようとしていたゴブリンたちを、戦車から叩き落とす。
 その戦車を守ろうとする随伴のゴブリンたちを文字通り蹴散らしながら、ゴブリンチーフを目指して飛び蹴りを見舞った。

「……うぐおっ!?」

 たったひと蹴りかもしれないが、それでも指揮官にダメージを与えたのである。

「長い時間、暴れさせるわけにはまいりません」

 続いて、リュティスが弓の宵闇を構える。すると、魔力が無数の矢となって放たれた。
 魔力の矢が、ゴブリンチャリオットの車輪目がけて降り注いだ。

成否

成功

状態異常
アンネリース(p3p004808)[重傷]
炎獄の魔女

第3章 第5節

コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
ディバイン・シールド
ヨシト・エイツ(p3p006813)
救い手
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
リンディス=クァドラータ(p3p007979)
ただの人のように
フィナ=フォルトゥナ(p3p008257)
鉛筆転がしの
マルカ(p3p008353)
Sweeper
メルーナ(p3p008534)
焔獣

「ハァ……ハァ……ハァ……」

 乱戦の中で、『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)は疲労を痛感していた。
 数というのは、それだけで脅威である。このガシャイヒ村の攻防で、そのことを存分に思い知らされた。

「あと何匹いやがるんだ……? いい加減しつけえなオイ……」

 ゴブリンチャリオットが進撃してきた時は、搭乗するゴブリンを合わせて、80匹はいたはずだ。
 これが半数近くとなったが、それでもまだまだ多い。

「バイクも結構無茶しちまったからな……くそっ、今回は使えねえか」

 バイクはガス欠、そうなったらどつきあいは混迷を増すだろう。

「とはいえ俺に遠距離攻撃の魔法的なアレなんて……ん? あるじゃねえか」

 そう、武器はまだある。

「手ごろな大きさの石がよ!」

 石を拾い、大きくワインドアップ。
 スポーツマンの極地に達するというZONEの域に入った。

「よーし村人の諸君!手ごろな石を持ってきな!」
「みんな、あのひとのフォームで投げるんだ」
「小学校の頃剛腕の千尋と呼ばれたこの俺がデッドボールの山を築いてやるぜ!」

 村人たちも、もう無力ではない。
 千尋に続いて、投石のフォームだ。

「ピッチャー第一球! 投げましたァ!!」

 振りかぶって、一斉に投石が開始された。

「ぐわ!?」「おぶっ!?」「がっ!?」

 ゴブリンたちは悲惨である。
 まともに石を顔面に食らったのまでいる。

(うーん。ハッキリ言って完全にビビってるから帰って欲しい)

 『一兵卒』コラバポス 夏子(p3p000808)は、内心でそう思っている。

「いくらなんでも死を恐れなさ過ぎでしょ……。ヤベえよな……」

 強力なリーダーに率いられているせいか、ゴブリンたちは逃げようとしない。
 山ほど投石を食らっても、まだ戦意を維持しているのだ。

「ただまあ……だからって思い通りになってやる義理もない、ってこったが」

 投石を終えた村人たちを指揮し、ゴブリンチャリオットの車輪に、丸太やら竹やらを突っ込んでいく。

「ずいぶん数が減っちまったか? こっちは全然減ってないのにぃ!?」

 わざとらしく叫ぶのは、ゴブリンたちの士気崩壊を狙ってのことである。
 300匹いたゴブリンも、その兵力は当初の5分の1を切った。

「やあ~、今回本気だった? 本気なら引き返して建て直しでしょ?」

 そのように煽りながら、犠牲を出さぬようすみやかに村人たちとともに後退する。
 深入りはしない、逃げを打つのも余計な犠牲を出さないためには重要だ。

「大型戦車……!? ゴブリンたちはどれだけ技術力を……」

 間近でゴブリンチャリオットを目にすると、『レコード・レコーダー』リンディス=クァドラータ(p3p007979)も驚かざるを得ない。
 未開な種族だと思われていたゴブリンが、これほどの工作技術がいる兵器まで引っ張り出してきたのは、意外中の意外であった。

「ですが、これだけの大型戦車であれば戦闘力は勿論ですがどこか欠点があるはず」

 リンディスは資料を検索する。
 戦車、チャリオットは重装騎兵の時代となるといつの間にか入れ替わっていた。
 地形の制限を受けやすく、維持にコストがかかる点がその欠点とされる。
 皆で、青田刈りした畑に追い込んだのは、正解だったのである。

「なるほど、そういうことですか。ゴブリン――がんばりましたが、ここまでです」

 ゴブリンの奮戦には、敵とはいえリンディスも感心するところだ。
 このまま追い込んで機動力を奪い、追い詰める。
 そのためにも、ミドリアハーモニクスによって味方の回復に努めた。

「いたたた……はっ!?」

 『ハードラックとダンスなう』フィナ=フォルトゥナ(p3p008257)は目を覚ました。
 木砲に抱きついて爆発とともに吹っ飛んだ彼女であったが、意識を取り戻すと偶然にもチャリオットに落下していた。
 
「やっぱりわたし、今日はとってもツイてますね!」

 そのまま、ゴブリンマローダーがいようが、チャリオットを足止めする。真正面からのブロックである。

「うっ、痛い!? 人間のアバラ骨は20本以上あるのでまだまだ大丈夫です!」

 常人なら気絶するほど痛い。
 しかし、ツイていると思うとハッピーさで痛みの感覚も麻痺する。フィナは、このまま足止めしようとしていた。

「戦いは終わりにしましょう! 平和が一番です!」

 フィナは、しぶとく食い下がる。

「ゴミ掃除の鉄則って知ってるっスか? ゴミを集めることっスよ」

 『Sweeper』マルカ(p3p008353)は、このガシャイヒ村の救援にやってきたメイドの中でも、冷酷なもののひとりである。
 いや、メイドといっても制服なだけで中身は戦闘員なのだが。
 ゴブリンマローダーに向かって、ひたすら弾丸を撃ちまくった。

「こりゃまたカッコ良――じゃなかった、生意気な物、持ち出してきたわね!」

 『焔獣』メルーナ(p3p008534)は、内心ゴブリンチャリオットに憧れていた。
 蹂躙する兵器には、機能美というか威圧的な外観であっても洗練されたものを感じてしまう。
 しかし、見惚れてばかりはいられない。

「上等よ! 迎え撃ってやろうじゃないの!」

 世界征服砲をぶっ放す。
 小細工なしで、破壊できるだけ破壊するのだ。

「ソッチが決死の覚悟なのは、よく分かったわ! だけどね、だからってコッチも負けらんないのよ!」

 ゴブリンチャリオットを守ろうとするゴブリンを、片っ端からふっとばしていった。

「うっし、踏ん張りどころだぜ。頑張ってきな!」
「ぶはははッ、大詰めってわけだ!」

 『救い手』ヨシト・エイツ(p3p006813)、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)も、ゴブリンチャリオットの進撃を食い止めに集まる。
 ゴリョウは、戦車の機動力であるゴブリンマローダーを叩きに向かう。
 足を止めてしまえば、もう脅威とはならないはずだ。
 ヨシトは、奮戦する味方の回復に努める。
 積極的に負傷者に向かって駆け回る。
 この戦いは、ヨシトにとっても犠牲を出さないための戦いでもあるのだ。

「いいぜ、とことん付き合ってやろうじゃねぇか!」

 ゴブリンマローダーを殴り倒すと、銃旋棍でその車輪も破壊した。
 足を止めての殲滅戦に持ち込むのだ。

成否

成功

状態異常
フィナ=フォルトゥナ(p3p008257)[重傷]
鉛筆転がしの

第3章 第6節

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
Lumière Stellaire
イーリン・ジョーンズ(p3p000854)
流星の少女
マニエラ・マギサ・メーヴィン(p3p002906)
記憶に刻め
レイリー=シュタイン(p3p007270)
ヴァイス☆ドラッヘ

「今回の件から貴方たちが得るべき教訓は――戦力の一極集中、分散の際は副長を用意すること」

 『天才になれなかった女』イーリン・ジョーンズ(p3p000854)は、教導隊の皆に戦いの意義を説いた。

「はい、お師匠様!」
「儂は狩りしかわからん……」

 神妙に正座して聞きつつ待機する『医術士』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)と、小難しい講義に辟易した感のある『こむ☆すめ』リアナル・マギサ・メーヴィン(p3p002906)であった。

「数の有利は集中と機動性が必要になる。攻城戦となれば特に」

 続いて、イーリンはこれまでの戦況を振り返って戦いの趨勢についてを語る。

「さらに戦車や騎兵の突破力は早期に即背面に投入すべきであり、戦線の膠着まで呑気に待てば簡単に本陣を崩される。相手は城なのだから」

 つまりは、ゴブリンたちの犯したミスは切り札としてゴブリンチャリオットを温存したことである。
 防御陣地を構築したガシャイヒ村の背面を突くべきであった。
 その敵失につけ込む、イーリンは教導隊が取るべき行動の意義を説いた。

「……そして士気を維持するには徹底したサポート……であってる?」

 リアナルはそう理解した。
 イーリンの薫陶あって結構言うことを理解しているようだ。

「そういうこと」
「はーい、わかりました。それじゃいきま。

 ココロも立ち上がって即座に行動に移す。旗を持って突撃準備だ。
 イーリンに率いられ、教導隊はすみやかに作戦を展開していた。

「そうさ、こうやって敵が固まるまえに崩すのさ」

 『展開式増加装甲』レイリー=シュタイン(p3p007270)は、イーリンの意図することを実現すべく、ゴブリンたちに向かっている。
 イーリンがチェインライトニングでゴブリンの陣形を崩すと、ココロが突撃していった。

「士気、すなわちやる気を引き出すためには、このような解りやすい目印が必要なのです!」

 ココロが神気閃光を炸裂させ、教導隊の旗を振り立てる。
 すかさずレイリーが突入し、キャッスルオーダーによって崩れたゴブリンの陣形に楔を入れた。

「我こそは、レイリー=シュタイン! さぁ、お前ら、格の違いを教えてやろう」

 派手な名乗り口上で、ゴブリンたちのヘイトを一身に集める。

「だったら、貴様から蹂躙してやるゴブッ!!」

 憎しみを込めたゴブリンたちの攻撃を、レイリーは巨大な盾によって押し返す。

「いいのかい、私ばっかり見て? いや、見たままでいい、もう終わる!」

 まずは、手筈どおりであった。

「チェックメイトを目指して、ココロ、行きます!」
「さ、詰路は見えている。差し詰め王手、かね?」

 ココロとリアナルが、陣形のほころびに合わせて動いていた。
 アーリーデイズからの私ノ舞・星天晴夜――。
 一気に、自身の能力を向上させ、味方の力を増幅していく。

「大した指揮官がいる見てえだな」

 味方が半壊していくさまを、ホブゴブリンチーフは苦々しく眺めることしかできない。

「いいえ、それは違う。あなたの作戦はなかなかだった――」

 イーリンは言う。

「村を包囲殲滅しようと部隊を分けたのはよかったけど、各個に撃破されてしまった。それは統率する副官育成を怠った、即ち――」

 そして、ホブゴブリンチーフに向かって講義の仕上げを言い放つ。

「貴方たちの敗北よ」

 群れを率いる力が強すぎたため、個々の部隊を率いる副官がいなかった。
 だからこそ、分断した部隊が潰された。
 教導隊は、それぞれが判断して戦うことができる、ここがゴブリンたちとの差であった。
 決定的な差を指摘し、反撃を受ける前に引き上げる。

「ってちゃんと聞きなさいよリアナルも!」

 ただし、結構勝手に動くのが玉に瑕である。

成否

成功


第3章 第7節

リゲル=アークライト(p3p000442)
白獅子剛剣
無限乃 愛(p3p004443)
魔法少女インフィニティハートC
糸巻 パティリア(p3p007389)
跳躍する星
コルウィン・ロンミィ(p3p007390)
靡く白スーツ

 コブリンたちの戦車は、青田刈りをした畑に追い込まれ、擱座している。
 防衛するガシャイヒ村にとって、有利な状況であるといえた。戦車に乗っていたゴブリンたちも、下車しての抵抗に推移している。

「まずは遠距離攻撃の手段を潰す!」

 『靡く白スーツ』コルウィン・ロンミィ(p3p007390)は、風に乗ってホバーのように移動し、戦車の鼻っ面にignorance over collapsでの狙撃を行なう。
 狙うは、1匹残っているゴブリンシャーマンである。

「ギ、ギギギギッ!!」

 ゴブリンシャーマンも、呪詛の呪文によって狙撃するコルヴィンに呪いを与えるが、それでも怯むことなく、徹底した狙撃で追い詰めていく。

「闇を粉砕する愛と正義の光撃! 魔法少女インフィニティハート、ここに見参!」

 再三名乗りを上げての登場は、『魔法少女インフィニティハートD』無限乃 愛(p3p004443)である。

「……さて、ゴブリンたちもだんだんと自覚してきたようですね。愛なき己の心への怒り。そして愛という真理への畏れを」

 名乗ったのちに、真顔になってこの戦局を分析する。ゴブリンチャリオットは、車輪がぬかるみに取られており、機動力を失っている。
 畳み掛けるチャンスであった。

「こんなゴブリン大戦争が行われていたとは!」

 援軍にやってきた『白獅子剛剣』リゲル=アークライト(p3p000442)も、このガシャイヒ村での戦闘規模に驚嘆する他なかった。
 300匹の襲撃というのは、噂には聞いていた。
 壮絶な数のゴブリンの亡骸と、戦車まで持ち出してきた知性には驚くばかりである。

「負けるわけにはいかない……。騎士の矜恃にかけて、人々の剣となり盾となる!」

 銀に輝く剣を抜き、目にも留まらぬ早業でチャリオットを復帰させようとするゴブリンたちを斬り払っていった。

「復讐の根も残さぬよう、残党は一匹たりとも逃さない。村の人々が被害者にならぬよう死力を尽くす!」

 ここで逃せば、さらなる禍根となろう。
 リゲルは、容赦なく殲滅の剣を振るう。

「ギィッ! ギィィィィィッ!! チーフをお守りしろ!」

 ゴブリンアーチャー、ゴブリンシャーマンが長射程で反撃するも、コルウィンと愛との射撃、魔砲によって押されている。

「ギイィィィィィッ!!」

 ついに、一発の銃声がゴブリンシャーマンの最期を告げた。
 コルウィンの狙撃が、ゴブリンシャーマンの頭部に命中したのである。

「あと一押しで、彼らの身も心も正義に屈することでしょう。さあ皆さん、私たちの勝利は目前です」

 New魔砲によって味方を再起させ、魔法少女ンフィニティハートは敵の弓兵部隊の殲滅を目指し、砲撃戦を開始する。

そして、『跳躍する星』糸巻 パティリア(p3p007389)は忍者にふさわしく戦場を駆け巡りながらアンチアストラルライフルによってゴブリンたちに牽制射撃を行なう。

「拙者、足りない戦線へと運ぶ“足”になるでござる」

 この乱戦の中、乱れた足並みによって起こる戦線の破綻を防ぐべく、パティリアは行動した。

「あいつだ、あいつを止めろ!」

 ホブゴブリンチーフが、パティリアの柔軟な機動を目にし、部下たちを差し向けた。
 乱戦による浸透こそ、ゴブリンの戦い方なのである。その戦術を封じて駆け回るニンジャを放っておくわけにはいかなかった。
 しかし、接近してもパティリアには手刀ソニックエッジがあった。

「切り捨て御免!」

 遠距離戦だげがニンジャの武器ではないのだ。

成否

成功


第3章 第8節

ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
津久見・弥恵(p3p005208)
薔薇の舞踏

「いよいよ最後だねっ……って戦車ぁ!?」
「今度は戦車ですか……。余り命は奪いたくないですが、それも戦の作法。舞台の幕が上がっている以上は舞を披露せねばなりません」

 『Ende-r-Kindheit』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)、『魅惑のダンサー』津久見・弥恵(p3p005208)のふたりは、戦いに終止符を打つべく舞う。

「ふふ、私を捕まえられたらこの肌に触れる事もできますよ」

 まずは弥恵がゴブリンたちを惹きつける。
 その魅惑のダンスは、殺戮の興奮の中にあるゴブリンたちを引き寄せる的としては十分すぎた。

「あ、あいつが戦利品なんだゴブ!!」
「さわる! さりまくるゴブ!!」

 目を血走らせたゴブリンたちが殺到する。これでは戦線の維持や戦車の復帰どころではない。
 その隙を突いて、ミルヴィがゴブリンマローダーの足元にスライディングして抜けていく。

「ガッ……!?」

 すれ違いざまに、膝裏を切るという芸当だ。

「倒せなくてもここを傷つけられたら力入んないっしょ」

 猪の股ぐらを抜けた先に、ゴブリンチャリオットの上で指揮を執るホブゴブリンチーフがいる。
 あれだけのゴブリンを率いた指揮官が、もう目の間にいる。リリスの魔眼によって、群れのボスを守ろうとするゴブリンの陣形を翻弄する。

「これで……終いだよっ!」

 二剣を構えての暁のグルーブ。
 これに、ホブゴブリンチーフが応戦した。

「ぬああああ! 貴様ら揃いも揃って!」

 頭に血が上ったホブゴブリンチーフが、みずから打って出たのである。

成否

成功


第3章 第9節

シグルーン・ジネヴィラ・エランティア(p3p000945)
混沌の娘
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)
氷雪の歌姫
長月・イナリ(p3p008096)
狐です
三國・誠司(p3p008563)
一般人

「頭に血が上ってるゴブリンか。ちょっと怖いかも!」
「あーあー。まーたずいぶんとすごい戦場になっちゃって……」

 ガシャイヒ村の戦場に新たに駆けつけた『陸の人魚』シグルーン・ジネヴィラ・エランティア(p3p000945)と『強く叩くとすぐ死ぬ』三國・誠司(p3p008563)であった。
 戦況は、ゴブリンたちを追い込んでいるように見える。
 ゴブリンチャリオットから指揮官も降り、イレギュラーズと混戦を繰り広げていた。

「だったら、チーフの注意をこちらに向けるようにするよ!」

 シグルーンは戦場を駆けた。
 残像のような影を引いて動き、ゴブリンたちを幻惑した。

「あの目障りな女から狙ええええっ!!」

 ホブゴブリンチーフが号令をかける。

「きゃー! 怖ーい!」

 シグルーンはあえて悲鳴を上げた。
 弱いと思わせて隙を作ろうというのである。
 その隙を、誠司は逃さなかった。
 弾丸を雨のように降らせ、車輪とチャリオットを押し戻そうとするゴブリンを狙う。

「チャリオットですかー。それなりの工作力はあったようですわねー」
「とんでもない物を持って来たわね……」
「チャリオット。やばい、さすがにっておもう、たぶん」

 『氷雪の歌姫』ユゥリアリア=アミザラッド=メリルナート(p3p006108)、『狐です』長月・イナリ(p3p008096)、『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)もゴブリンチャリオットの脅威を感じていた。

「村の人たち、いままでありがと。ここからは私たちやるから下がって」

 セティアはリフレックスのポーションを飲み干して瓶を投げ捨て、村人たちに下がるように言った。

「初手で出してこなかったのは悪手でしょうにー」

 誠司と同じく、ユゥリアリアもチャリオットの車輪を狙った。

「機動力さえ奪ってしまえば、後は攻城戦をこちらが仕掛けるだけですものー」

 血を媒介にして作り出した氷の槍を飛ばし、完全に片輪を破壊してしまう。
 しかし、ゴブリンたちは車体を盾として抵抗を続ける。

「ゴブリンの皆さん、こんにちわ♪ そして、さようなら、よ!」

 そんなゴブリンたちが立てこもる戦車に、イナリは飛び乗った。
 ルーンシールドとマギ・ペンタグラムを展開し、防御も万全であった。
 そのまま、迦具土連砲で薙ぎ払った。
 熱線ビームがぶんっ! と周囲のゴブリンたちを蹴散らしていく。

「レディーナさん、ドラゴンに勝ててあれにまけるっておもう?」
「ドラゴン……?」

 奮闘するレディーナは、セティアの心理を一瞬測りかねる。

「ドラゴン、勝てるっしょ。だから勝てるよね?」

 恐ろしい蹂躙兵器であるゴブリンチャリオットも、ドラゴンに比べればそれほどでもない――。
 強がりなのはセティア自身がわかっている。
 しかし、ここで強がることで勇気を引き出していくのだ。

「そうだな! 所詮はゴブリンたちが寄せ集まっただけの車に過ぎん!」
「そうだよ。やるから、わたし」

 レディーナを励まし、セティアは低空を滑空する立体機動でゴブリンとホブゴブリンチーフの中に切り込んでいった。

「いくよ、戦鬼暴風陣――!!」

 蝶の羽を羽ばたかせながら、セティアは残るゴブリンの群れの中で嵐のように剣を振るう。

「ギギギギィィィィィッ!!」

 ゴブリンたちも次々に倒れ、群れのボスまで守ることができない。

「ちっ……! 続け、兄弟ども!」

 ついにホブゴブリンチーフがみずから武器を持って逆襲してくる。

「攻撃を手を休めるな! 長期戦になったとき、必ずその傷口は開いていくはずだ」

 誠司も、この勢いを保ったまま攻撃を続行した。
 致命傷を与えられずとも、ホブゴブリンチーフの手足でも狙っていく。
 ガシャイヒ村の平和は、あと一歩のところまで来ていた。

成否

成功


第3章 第10節

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
シラス(p3p004421)
超える者
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ミンティ・セレーニア(p3p007959)
特異運命座標
グリーフ・ロス(p3p008615)
紅矢の守護者

 300匹の大群を誇ったゴブリンも、その数を大きく減らした。

「くそう……!」

 この侵攻自体が、軍をまとめ上げたホブゴブリンチーフの意地であった。しかし、その意地ゆえに引き際を見誤った感は否めない。

「なんてことだ……。あんなものを持ち出してくるなんて」

 大群を消耗したとはいえ、ゴブリンチャリオットという蹂躙兵器を繰り出してきたことは、『優心の恩寵』ポテト=アークライト(p3p000294)からしても脅威であった。
 ゴブリンたちが建造したのかそれともどこかから奪ってきたのか。
 いずれにせよ、これだけの兵器を調達したことと動員力は侮るものではない。

「皆の背中は守って見せる。だからここでこの戦いを終わらせよう!!」

 ポテトは宣言し、傷ついた仲間たちを癒やし、おのれの生命力を分け与えて味方を支援した。

「ゴ、ゴブッ……!?」
「ど、どうしたゴブ!? ……ギャッ!!」

 すると浮足立っているゴブリンたちが、見えない刃に斬りつけられたかのように切断されていった。

「先に到着された方々の働きで、状況はこちらの優勢に傾いている――」

 ガシャイヒ村に現われた増援、グリーフ・ロス(p3p008615)である。
 ゴブリンを切り刻んだのは、グリーフが操る超極細の糸だ。これを刃のように操る技がグリーフが得意とするマリオネットダンスである。
 これによって捕縛し、逃亡を防ぐ。

「追い詰めた……。だが! 手負いの相手こそ危険!」

 もはや、ホブゴブリンチーフを守るゴブリンは10匹を切ったが、シラス(p3p004421)も油断はしなかった。
 焦って出さずともよい被害を出すわけにはいかない。それに取り逃がしては、いずれまたゴブリンの軍勢が現われるだろう。
 必然的にゴブリンたちからの襲撃を受けやすいガシャイヒ村の立地条件を考えれば、特に強力な統率力を持つホブゴブリンチーフを確実に倒す必要がある。

「敵は総崩れ、あとは大将首を取ればもう立て直しはできないでしょう」

 『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)の判断も同じだった。
 
「まずはこの場に終止符を! 村に平穏を取り戻しましょう!」

 人的な被害は防いでいるが、放火や砲撃によってガシャイヒ村も大きな損害を被っている。
 青田刈りもされ、食料が不足するのは明らかだ。
 これ以上の被害は、その再建の士気にも関わる。
 シズカは、群れのボスを守ろうとするゴブリンとの戦いに備えて戦法を変えた。
 大将首は、他の仲間たちに任せる。そのために、道を切り拓くのだ。
 飛翔斬を放ち、脇士役のゴブリンにダメージを与える。

「もう少し、もう少しでこの村を守りきれる……!」

 勝利は近い。しかし、女騎士レディーナも逸る気持ちを抑える。
 シズカの冷静な戦いぶりに教えられた気持ちであった。
 今まで、どうしても突出する悪い癖が彼女にはあったのだ。

「大将が前に出てきましたか。やっとまともに戦えますね」

 『特異運命座標』ミンティ・セレーニア(p3p007959)は味方が拓いた道を進み、ついに大将首たるホブゴブリンチーフに剣を突きつけた。

「ちくしょお……!! 何だってこんなチンケな村にこんなに集まりやがったんだ……!」
「それはこちらのセリフでもあります! ですが、お答えしましょう。集まった皆が、当たり前の平穏と平和を愛するからです」

 ミンティはホブゴブリンチーフに言い返した。
 300匹ものゴブリンをまとめ上げ、さして意味があるとも思えぬ大攻勢を仕掛たホブゴブリンがガシャイヒ村を殲滅せねばならぬと強い信念によって決意したように、ミンティたちイレギュラーズも価値の差によって守るもの選んだり見捨てたりはしないという信念によって集まったのだ。

「これまであなたの武器は手数の多さとバリエーションでした。それを失った今、今度は何を使いますか? 膂力? 魔力? ……まあ、何でもいいのですが。さて、斃れてもらいます」

 防御を重視しつつ、にじり寄る。
 これにシラスも加わり、手下の攻撃を掻い潜りながら追い詰めていった。

「どうした、顔色悪いぜ?」
「ちっ……!」

 ここに至って、ホブゴブリンチーフは後退した。

「……貴様ら、捨て石になれ! 必ず敵をとってやるからなぁ!!」
「ゴ、ゴブ!?」
「そ、そんな、ボス……!?」

 兵を捨て石にして、大将が逃げる。
 古来からそうして再起を図るというのはたしかに常道であったろう。
 しかし、そうなったらもう軍は体を成さない。
 劣勢となっても死にものぐるいで戦っていたゴブリンたちも武器を捨て、逃散を試みる。
 ゴブリンの繁殖力があれば、300匹を超える軍勢をいつか集められるだろう。
 その機会を待ち、必ず復讐を果たすと決意しての逃亡であった。
 しかし――。

「ギャッ!?」

 銃声が響き、ホブゴブリンチーフが倒れた。

「さて、ずいぶんと狙いやすくなりましたね」

 この機会を待っていた『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)による狙撃である。

 射撃陣地を構築し、遮蔽から弾丸を撃つ。
 見捨てられたにもかかわらずボスを守ろうとするゴブリンも狙撃した。

「今や火力優勢はこちらにあります。敵将に圧を掛けて、そのまま押し潰して討ち取りましょう」

 ここでゴブリンたちを逃がすわけにはいかない。
 当面の平和を確保するためならば、いくらでも冷酷になれるのだった。

「ぐぞう……! 300匹をまとめた大族長の俺が、こんなところでぇ……!」
「優秀な指揮官であろうとも、剣の、槍の、矢の、そして銃弾の前に、戦場の死は平等です」

 絞り出すような声で呻くホブゴブリンチーフに、新田は戦場の理を説く。
 このガシャイヒ村をそんな戦場にしたのは、誰あろう彼自身であったのだ。

「観念しな、逃がさねえぜ!」

 起き上がるホブゴブリンチーフの前には、シラスが構えを取って立っていた。

「うがあああああっ!!」

 怒りに身を任せ、踊りかかってくる。
 最後に一矢を報いようという、破れかぶれであった。

「ここでこの戦いを終わらせよう!!」
「未熟だったわたしも、この戦いで鍛えられました! その力をお見せしましょう!」

 ポテトの支援を受け、シラスとミンティアがホブゴブリンチーフにとどめを見舞った。

「終わった、ついに……」

 女騎士レディーナは、剣を杖にして体を支えていた。
 この戦いでの消耗は、それほどのものであったのだ。

「レディーナさん、勝ったんです。この村を守りきったんですよ」
「ありがとう、シズカ。ありがとう、みんな……!」
「さあ、村の人たちに勝利を伝えましょう」

 シズカが、レディーナに肩を貸してやった。
 村人たちの前に立ち、剣を天に掲げて叫んだ。

「……勝った! わたしたちは勝ったんだっ!!」

 村人たちから、勝利を祝う歓声の声が沸く。
 ともに戦った若者も、隠れていた女や子供たちも、老人たちも喜びに咽び泣いた。
 こうして、ガシャイヒ村は300匹のゴブリンの襲撃を守りきったのだった――。



                    壮絶! ゴブリン300匹大攻勢!! ガシャイヒ村を守れ
                                       ――完――

成否

成功

状態異常
ミンティ・セレーニア(p3p007959)[重傷]
特異運命座標

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