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シナリオ詳細

Flying Sheep
Flying Sheep

完了

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●麗らかな春の日に
 暖かな陽気に優しい風。さわ、と草花が靡く。

「メェ~」
「メェ~」

 伸びやかな鳴き声を上げ、ふわりふわりと空から降りたつそれは──羊。
 ふわふわな毛を携えてやってくるそれは『Flying Sheep』と呼ばれる生き物である。
 1匹。また1匹と草原に降り立ち、のんびりと日向ぼっこをする羊たち。
 その長閑な光景は癒されるように見えて、しかし別の問題を浮上させる。

「……困ったなぁ」
 馬車に乗っていた御者が頭を掻く。
「メェ~」
「メェ~」
 ふわふわもこもこが、そこかしこに集まっている。
 そう、羊たちはどこにだって降りてしまう。それが道であっても。
 そして降り立つと再び飛ばない限り、テコでも動かないのであった。

●退かすために
「一面に広がるクリーム・イエロー。けれど、人によってはナイル・ブルーの心地だわ」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラーは多く集まったイレギュラーズ達に見えるよう、大きな地図を掲示した。
「場所はここ。スプリング・グリーンの絨毯が広がっているわ」
 街道と思しき場所の途中を大きく丸つける。
「例年ならここまでの規模じゃないのだけれど、今年は多いみたい」

 テコでも動かない羊たちを退かせという事か。

「無理やり退かす必要はないわ」
 ではどうするのだろうと首を傾げるイレギュラーズ達に、プルーは口を開く。
「彼らは日向ぼっこをしているの。体を温めて、また違う場所へ移動するのよ。けれど今の時期だと日差しが弱くて、温まるのに時間がかかってしまう」
 プルーの説明に、ちらほらと納得の色が広がり始める。
「だから、あなた達がすることは簡単。羊たちにくっついてのんびりしてきて頂戴」

GMコメント

●依頼内容
 Flying Sheepとぬくぬくする

●Flying Sheep
 もこもこの羊。妖精の一種。近隣住民には『しーちゃん』だとか『羊さん』と呼ばれている。
 温もりを一定時間貯めると移動し、また別の場所で温もりを求めて降り立つ。移動中は風が冷たいらしい。
 飛ぶときは魔法的な2対の羽を出してふんわり飛んでいく。
 重さを変えられるのか、それとも飛ぶ力が強いのかは不明だが、降り立つとどれだけ屈強な男が持ち上げようとしても持ち上がらない。
 倒そうと攻撃をしても不思議なことに、ふわふわの毛が完全ガード。妖精の不思議な力なのかもしれない。
 大きさは大小様々だが、小さいと30cm程度のぬいぐるみサイズ。大きいと1m位。
 5~6匹を平均に集まって降りたつ習性があり、その姿はカーペットのようにも見える。

 性格は温厚。……というよりは、鈍感。例え熱いお茶を零したとしても気づきはしないだろう。
 何人乗っても怒らないし潰れたりはしないが、ふわふわなので乗る人間のバランス力が試される。

●地形
 ひたすらに広い草原。今はFlying Sheepに埋め尽くされている。
 人が1人避けながら取る事は可能だが、とても時間がかかる。馬車は通れない。
 日差しは出ているものの、空気はあまり暖かくない。

●プレイング注意事項
 最初の行にタグ、もしくは同行者様のお名前を明記ください。他者との絡みNGでしたら【絡みNG】と記載をお願い致します。(同行者様がいらっしゃらない場合は不必要です)
 プレイングは2行目からお願い致します。
 本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。

●ご挨拶
 初めまして、或いは再びお目にかかれまして幸いです。愁です。
 のんびり日向ぼっこをする、友達とピクニック、本当に持ち上がらないのかと力比べをしてみる。なんでもOKです。
 どれだけ乗れるか試してみよーぜ! も止めはしませんが、恐らく落ちるでしょう。ええ、きっと。
 それではご縁がございましたら、よろしくお願い致します。

  • Flying Sheep完了
  • GM名
  • 種別イベントシナリオ
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2018年04月02日 22時35分
  • 参加人数 50/50人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(50人)

ジュア(p3p000024)
砂の仔
十夜 縁(p3p000099)
黄昏き蒼の底
クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)
クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)
祈る者
エマ(p3p000257)
こそどろ
ルアミィ・フアネーレ(p3p000321)
神秘を恋う波
シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)
疾風蒼嵐
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
銀城 黒羽(p3p000505)
ド根性ヒューマン
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
アレフ(p3p000794)
堕ちた光
夜乃 幻(p3p000824)
『幻狼』夢幻の奇術師
清水 洸汰(p3p000845)
雲水不住
シャロン=セルシウス(p3p000876)
白い嘘
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
リインカーネーション
シキ(p3p001037)
藍玉雫の守り刀
ジェイク・太刀川(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ミスティカ(p3p001111)
赫き深淵の魔女
雨宮 利香(p3p001254)
雨宿りの
マルク・シリング(p3p001309)
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
最強砲台
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
舞蝶刃
リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)
もふもふハンター
獅子吼 かるら(p3p001918)
多重次元渡航忍者
ティミ・リリナール(p3p002042)
フェアリーミード
セティア・レイス(p3p002263)
妖精騎士
セレネ(p3p002267)
blue Moon
アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)
不死鳥の娘
ヨルムンガンド(p3p002370)
暴食の守護竜
アニー・メルヴィル(p3p002602)
お花屋さん
弓削 鶫(p3p002685)
Tender Hound
ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)
烈破の紫閃
Blood・D・Killer(p3p002785)
夕闇散歩
仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)
五行絶影
ライセル(p3p002845)
Dáinsleif
コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)
朝比奈 愛莉(p3p003480)
砂糖菓子の冠
ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)
キールで乾杯
エルメス・クロロティカ・エレフセリア(p3p004255)
幸せの提案者
桜坂 結乃(p3p004256)
ふんわりラプンツェル
メイメイ・ルー(p3p004460)
さまようこひつじ
アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)
さいわいの魔法
風巻・威降(p3p004719)
悲劇を断つ冴え
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
レオンハルト(p3p004744)
解放する者
エデ・ミアン(p3p004860)
灰塵の聖女
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
モルテ・カロン・アンフェール(p3p004870)
冥灯
シビュレ=レヴィナ=トリリハウル(p3p004922)
宙界渡り

リプレイ

●もこもこ
 草原に綿毛のような塊がいくつも、いくつも存在していた。それは綿毛でなく『Flying Sheep』──羊である。

「まぁまぁ……草原に現れるカーペットだなんて、不思議な景色ね?」
  『頽廃世界より』エルメス・クロロティカ・エレフセリア(p3p004255)はその光景にくすりと笑みを漏らした。そして羊の群れの1つにお邪魔して、自分と羊に持ってきたブランケットをかける。
 景色を見ながらの昼寝も悪くない。周りに他の参加者もいるし、元の世界のように退屈することはなさそうだ。
「ねぇ、あなた達は何処からきたの? 次はどこへ行くのかしら」
 そう声をかければ、つぶらな瞳がエルメスを見つめた。次に空を。
「あら、目的地は定まっていないの? 気ままな旅なのね」
「まあ、まあ……エルさんもこちらに」
 動物疎通で伝わってきた内容に笑みを漏らしたエルメスは、声をかけられて顔を上げた。そこに立っていたのは眠たげな『灰かぶりのカヴン』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)。
「ミディも参加していたのね!」
 嬉しそうに顔を綻ばせるエルメス。ミディーセラは小さく頷くと、同じ群れの羊にもふんと寄りかかった。
「最近あまり寝れていなかったですし、くっついてゆっくりさせてもらう予定ですわ」
 どちらも暖かくて嬉しい、Win-Winの関係である。
「いつかの空飛ぶもこもこ綿雲のような……魅力的な触り心地。なのに、不思議にがんじょーで……おおらか……」
 ミディーセラは既に半分夢の中。だいぶ眠かったようだ。
 エルメスは小さく笑うと、余っていたブランケットをそっとミディーセラにかけたのだった。
 同じように睡魔に誘われた者が2人。
「もこもこさん、気持ちいい……ふぁ……」
「抱きついてたら私も温かくなって何だか眠くなってきてしまいましたね……」
 『お花屋さん』アニー・メルヴィル(p3p002602)は大きな羊にくっつきながら、小さく欠伸をした。
 『砂糖菓子の冠』朝比奈 愛莉(p3p003480)も欠伸をして目元をこする。
 偶々隣同士だった2人は顔を見合わせ、くすりと笑い合った。
 一面に広がるもふもふ、心地よい日差し。羊達は妖精だというから、もしかしたら眠くなる成分を出しているかもしれない。
 理由はともあれ、眠たくならないわけがなかった。
(お天気もいいし、日向ぼっこしながらこのまま……少し眠らせてもらいましょう……)
 アニーはそのまま目を瞑る。小さい羊を抱く事は叶わなかったが、大きな羊に体を密着させるのも、それはそれで気持ち良いもの。
 寝息が聞こえるようになるまで、対した時間はかからない。それは愛莉も同様。
「私達で、もこもこを……もふもふして………むにゃむにゃ……」
 ふわふわする前にむにゃむにゃの時間である。
 更に1人。
「んぁー。このふわもこ、徹夜明けの体にはめっっっちゃくちゃ効くよぅ」
 コリーヌ=P=カーペンター(p3p003445)は羊の上に寝転がり、ふにゃりと笑みを浮かべた。その周りを相棒の『正宗くん』がふわふわと漂う。
「デスマーチアケ デスカラネ……」
「えへへ。三日三晩ぶっとおしは、流石につらかったヨ」
 確かに隈が見えなくもない。
「シュウチュウリョクガ アルノハ イイコトナノデスガ」
「やり過ぎ良くない、心にブレーキを持とうって話だねー」
 正宗くんの言葉に返し、コリーヌは欠伸を1つ。
「……んあー、疲れが溶け出して蒸発していくぅ」
「モウ ネタホウガ イイノデハ?」
「ん、そうすグゥ」
 早い。
「イッシュンデ ネマシタネ」
 徹夜疲れとふわもこ羊布団は最強の組み合わせであった。
(この子達、ふわっふわで気持ちいいなぁ)
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)は羊にくっつき、ご満悦であった。
 羊を早く暖めて空に離すのであればギフトを使った方が早いだろう。けれど、見た目は燃やしているようにしか見えないからびっくりしてしまうかもしれないと思ったのだ。
(それに、こっちの方が長く一緒にいられるしね。それにしても、くっついてじっとしてたら……なんだか……眠た……く……)
 いくつもの寝息が、この周辺では聞こえるようだった。

 さて、少し離れた群れは打って変わって賑やかである。
「もふもふだーーーーー!」
 歓声を上げるのは 『特異運命座標』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)。
「こんにちはー、ちょっとお邪魔していいですかー?」
「めぇ」
 群れの羊に挨拶をし、嫌がられないことを確認して傍に座る。
 アレクシアの瞳は好奇心と目の前のもふもふに輝いていた。
「君たちは次はどこへ行くのかな? これまでどんなところに行ってきたの?」
 つぶらな瞳を見つめながら動物疎通で会話を試みるアレクシア。その群れの上では『楽花光雲』清水 洸汰(p3p000845)がごろんごろんと転がっているが、羊は気にした風もない。
「うっはー! もっこもこのふっかふか! マジで雲の上にいるみてーだなー!」
 さては此処こそが天国(ヘブン)か。いやどう考えても天国だろ、誰が何と言おうとここは天国だ!
 もふもふに幸せいっぱいの洸太、ザックからいそいそとスナック菓子やジュースを取り出す。
「あ、そこのお前も一緒に食べねー?」
「おや、俺も一緒にいいのかい?」
 声をかけられた『Dáinsleif』ライセル(p3p002845)は目を瞬かせ、にこりと笑いかける。軽く自己紹介をし合った2人はそれぞれの持ち寄った菓子を出した。
「その箱は何が入ってんだ?」
「これはお土産のドーナツだよ。洸太も一緒に食べよう」
「ドーナツ! やったー!」
 喜ぶ洸太の傍に来たのはライセルの愛犬。後ろから体を擦りつけられ、洸太が目を丸くする。
「うわっ!? い、犬!?」
「ジョニーだよ。もふもふで暖かいから、寒い時は貸してあげる」
 器用に羊の上へ乗り上げたジョニーは、やはり器用にその上で丸くなる。
 もふもふとぬくぬくが増えたのであった。
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)はうまい具合に羊の上でバランスをとった。
 ふわふわの羊は乗る者によってはとても乗りづらいだろう。だが、うまく乗れさえすれば良いベッドだ。
(モコモコした羊毛の上で寝転がれば、天然の羊毛ベッドになったりしてな)
 共に寝るのならば、勿論恋人であり今も腕の中にいる『『幻狼』夢幻の奇術師』夜乃 幻(p3p000824)と。
「柔らかくて気持ちいいよな」
 ジェイクはそう呟き、幻をしっかりと抱きしめ直すと目を閉じた。
「わ……なかなか難しいねえ」
 『砂の仔』ジュア(p3p000024)もまた、その四つ足で羊の群れに乗ろうとしていた。
 ……乗ろうとしていたが、バランスが難しかった。既に何度か試しているが、毎回落ちてしまっている。
(無理せず、群れの中に突撃しようか)
 そう思い至ったジュアは羊の間にお邪魔して人心地。羊同士もぎゅむっと寄り合ってぬくぬくである。
 やがて睡魔に身を任せたジュア。その近くではこの状況において珍しく、寝ようとして寝られない者が1人。『暇人』銀城 黒羽(p3p000505)であった。
(やっぱ眠れねぇ……)
 随分と気持ちの良さそうな羊だと思った。気持ちよかった。煎餅布団とは違いすぎて目から汗が出た。しょっぱかった。
 今回はゆっくりと昼寝を楽しむつもりの黒羽。しかし、羊布団は心地が良すぎたのである。
 この陽気と、そよ風と、ふわふわと。此処まで昼寝の好条件が揃っていながら眠れないというのは悔しさしかないだろう。
 眠ることを諦め、黒羽は空を流れる羊のような雲を眺めるのだった。
「はい、どうぞ」
 ばさ、とブランケットをかけてあげると羊が「メェー」と鳴いた。それはなんとなく喜んでいるように聞こえて『サイネリア』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)は笑顔を浮かべる。
 もふりと抱きつけばまるでクッションか、はたまた毛布か。ふかふかの感触が心地よい。
 そうしてひとしきり堪能したスティアは羊の上で仰向けになり、空を見上げる。
(いい天気だな……あ、あれリボンみたい)
 流れる雲の形から連想するのも楽しいことだ。
 もしかしたら既に温もりを貯めた羊が空を飛んでいるかもしれない、なんて思いながら、スティアもまた空を眺めていた。

 また別の群れでは。
「飛んでいると冷えるから、か」
 ほんの少し、親近感がわく。『宙界渡り』シビュレ=レヴィナ=トリリハウル(p3p004922)はくい、と酒を煽った。
 どんな原因にせよ、休息は必要だ。シビュレが銀河を旅して星に降り立つことと、羊が空を旅して地上に降り立つことは同じことなのだろう。
「こぼしたりはせんさ。安心して暖まるのじゃ」
 酒を片手にぽふぽふと羊を撫でると、「メェ」と答えるように鳴き声で返された。
「やあ、アンナさんも昼寝? 気持ちよさそうだよね」
 マルク・シリング(p3p001309)に声をかけられた『断罪の呪縛』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)はビクッと肩を震わせ、慌てて振り向いた。
「マ、マルクさんっ? いたの……?」
「うん。……周りの目が気になる?」
 マルクに迷っていたことをズバリと当てられ、アンナは困ったように目を伏せた。
 少し肌寒くて、大きな羊はふわふわもこもこ暖かそうで。けれど淑女ともあろう者が他人の目があるところで……と悩んでいたところだったのだ。
 アンナの反応にマルクはにこりと微笑みかける。
「大丈夫だって。皆寝てるし、誰も見ていないよ」
(僕以外は……なんてね)
 マルクは心の中でそう呟いて、目の前の羊の群れに乗り上げた。
「僕もこの辺で寝ようかな。それじゃ、おやすみ、アンナさん」
「……お休みなさい」
 すぐに寝入ってしまったマルクを見て、大丈夫そうかしらとアンナも羊の上へ。
 暖かいふわふわに包まれ、眠気も共にやってくる。
(少し、幸せな気分……かも……)
 マルクが寝顔を盗み見たことを彼女が知らなかったのは、幸か不幸か。

 泣き声が、聞こえた。
 『刃に似た花』シキ(p3p001037)は飛び起きると反射的に自らの半身──妖刀に手をかける。
 素早く視線を辺りに向け、敵襲でないことを判断すると警戒を弱める。
「リリーさん」
「……シキ、さん」
 『儚き雫』ティミ・リリナール(p3p002042)は目を開け、シキの姿を認めるとますます涙を零してしまう。
「夢を……見てしまって。お屋敷に戻ってしまったと思いました」
 それが良い夢だったら、どんなに良かっただろうか。
「……大丈夫、ですよ。僕達がいます」
 ハンカチで涙を拭うティミの頭を、シキがゆっくりと撫でる。
 さらに2人の頭をぽふぽふと撫でたのは『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)。
「ほら、深呼吸して、今日くらいは頭ん中空っぽにしろ。そうすりゃぁ怖い夢も見ねぇよ、な?」
 ティミは小さく頷き、目を閉じる。シキも寄り添うように、まるでティミを守るかのように傍で目を瞑った。
 十夜はそんな2人に羽織をかけた。太陽の匂いと海の匂いに、シキの口元が微かに、小さく綻ぶ。
「ありがとうございます……」
 かけられた感触にティミが薄目を開け、礼を述べる。
 暖かくて、包み込まれる様な。安心できる気がする。
(お父さんってこんな感じなのでしょうか)
 そう思いながら、泣いて疲れてしまったティミは睡魔に身を任せる。
 2人分の寝息が聞こえ始めて、十夜は羊たちに目を向けた。
「……なぁ、お前さん」
 ティミだけではない。もしかしたら他にも嫌な夢を見てしまった者がいるかもしれない。
 もしも、叶うなら。温もりと共に悪夢を持って行ってくれないか。
(お門違いだとわかっちゃぁいるが……な)
 どこからか香る匂いは甘く、心の固くなってしまった部分を溶かすようで。
 もう1人分の寝息が増えるまでにそう時間はかからなかった。
(それにしても、本当に寝るだけでお金が出るんでしょーか……)
 『この後滅茶苦茶たい焼き食べた』雨宮 利香(p3p001254)はダラッと、実に情けない姿で羊に乗りかかっていた。
 むにゃむにゃと口が動くが、明確な言葉は発されない。ついでにヨダレも垂れている。
 利香から香る甘い匂いに羊もウトウトと微睡んでいた。
 もふもふの羊を見て『千法万狩雪宗』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)は思う。
 日向ぼっこの気持ちよさは良く知っている。猫だから。
 ふわもこした生き物をモフる事が、どれだけ気持ちの良い事かも知っている。人だから。
 つまり。
「私は、この目の前に広がる誘惑に耐えきる事が出来ないし、耐える気も無い!」
 もふもふ堪能し尽くしてくれる! と勢いよく言いながら、実に優しく優しくもふもふへダイブ。
「……たまらん☆」
 真っ白な猫の尻尾はご機嫌に揺れる。先ほどまでの気概はもふもふに消え去った。
(天国過ぎる……干したてのふかふか布団でも、ここまでの極楽は生み出せ……ぬ……)
 すぐに寝息を立て始めた汰磨羈。その顔は幸せそうながらも、警戒心を完全に捨て去った表情であった。

 テコでも動かない、という話を聞き、色々やってみたくなった者も多かった。というか、やろうとした。
「やはりのぅ。ふわもこぬっくりとした空間で寝るのはな、究極の娯楽……即ち、極楽なのじゃよ」
 それは経験則。ルア=フォス=ニア(p3p004868)はもこもこと羊の群れに埋もれ、実に幸せそうな表情であった。
 ふと、目を開ける。きょろ、と周りのもこもこを見渡し。
「ぬーん……1匹持ち帰りたいのぅ。持ち帰りたいのぅ」
 こんなにもいるのだ。1匹くらいいいじゃないか。
 けれどもテコで動かない妖精である。当然ながら持ち上がらない。
「ぬぐぐ。超能力を以前と同じように扱えれば、ちょちょいのちょいなのじゃが! 汝等、何でそんなに重いのじゃー」
 これはもう、可能な限りここで堪能するしかないのである。
 さあ、次の挑戦者はといえば。
「ふふーん、テコでも動かないなんて中々気合の入った羊じゃない!」
 『白銀の大狼』ルーミニス・アルトリウス(p3p002760)は草原に居座る羊を見下ろした。その金色の瞳に対し、羊はつぶらな瞳できょとんと見つめる。
「誰も動かせない羊を動かす……アタシの冒険譚の伝説の一つにしてあげるわ!」
「そりゃ確かに、持ちあげられない羊を持ちあげられれば相当なもんだがな……」
 果たして、そんなにうまくいくものか。
 『紫電修羅・黒羽の死神』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)は内心苦笑しながらルーミニスの行動を見守る。
 ルーミニスの作戦はこうだ。
 マッスルパワーを使って全力で持ち上げる。
「うぐ、ぐぐぐ……」
 しがみついて足に力を入れる。ありったけの力を込め──ても、動く様子はなく。
「そんなに動かないのか……ん?」
「どうしたのよ」
「切れないな」
 羊の元でしゃがんでいたクロバが手元を見る。
 羊の毛をトリミングして素材にしたかったのだが、ハサミで切ることができない。これも妖精の力だろうか。ふわふわなのにハサミに負けない強靭さを持つ毛、恐るべし。
「こりゃ、どう頑張っても持ち上げるのは……」
「諦めないわよ!」
 ルーミニスがぐっと強くしがみつく。
 羊は一連のことに全く無関心な様子で、うとうとと微睡んでいた。
「あれあれ?むっちゃん殿何しようとしてるのであるかな?」
 大きな羊の群れでぬくぬくしようとしていた『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)は隣を見て首を傾げる。羊を何やら熱心に見つめ、懐へ手を突っ込んでいたからだ。
 その『輝煌枝』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)はといえば。
「……刈らなきゃ! 羊は! 大切な資源なんだよ!? 有効利用しなきゃ!」
 どこからかすちゃ、と剥ぎ取りナイフを持ち出し、羊の毛を刈り取りにかかる。だが、刈り取る動きを見せていたその動きは唐突に止まった。
「……むっちゃん殿?」
「やだ、このモフ毛歯が立たない……刈れない……」
 がく、と膝をついて落ち込むムスティスラーフ。
 他の者同様、やはりトリミングは不可能のようだ。
「むむ、残念である。代わりに、一緒に抱き合って上からぬくぬくするであるよ!」
「そうだね……せめて、モフ毛に包まれて寝よう……」
 ボルカノと羊の温もりが、毛刈りを果たせなかったムスティスラーフの身に染みる。
(すんごいほわほわにつつまれて暖かくて、しあーわせー……)
 ボルカノも感じる温もりに顔を綻ばせ。
 のどかな風景と温もりに包まれながら、2人は睡魔に身を任せたのだった。
 やっぱり動かない、何故だ毛が刈れないぞと賑やかな面々を見ながら『緋鞘の剣士』レオンハルト(p3p004744)は目を細める。
「長閑だ」
 シートを草の上に敷き、日向ぼっこをして、軽食をつまむ。
 周りにはこの世界に召喚された者達が騒いで、笑って。
「こんな日々が続けばいいのだがな……」
 何とも平和で、少し不思議な日常。

 もふもふ。
(こうすれば、もっと温かいです……?)
 『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)は羊にふわりと乗っかる。ぬくぬくでぽかぽかだ。
「うわぁ……! 本当にもこもこの羊さんに埋め尽くされてる!! 乗っちゃってもいいんだよね……?」
「はい……その方が……羊さん、達も……暖かい……みたいです」
 『駆け出し冒険者』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)の歓声にメイメイは小さく頷く。
「わーい、やっほー!!」
 大きな羊の上にジャンピングダイブ!
 もふもふと触る手はだんだん遠慮なく。しかしもふられている羊たちは気にしている風もない。
「なんか眠くなってきちゃったかも……ふわぁあぁ」
 幸せな触り心地に欠伸を1つ。瞼も重くなってくる。
 すぅすぅと寝入ってしまったシャルティスを見て、メイメイは小さく笑った。
 羊たちが飛び立つ時は一緒に飛んでしまわないよう、シャルレィスを起こしてあげなければ。
(それはそれで、少し、楽しそう……なんて)
「飛んでるー……すごいすごーい……」
 もにゃもにゃと寝言を漏らすシャルレィス。どうやら夢の中では飛んでいるらしかった。
 同じようにジャンピングダイブを果たした『灰塵の聖女』エデ・ミアン(p3p004860)は持ってきた敷物を羊のそばにいそいそと敷いた。
 ぽかぽかいい天気だからピクニック! と茶菓子を持ってきたのである。
「しーちゃんも食べるかな?」
 カップケーキを口元に持っていってみる。塩漬けの桜がアクセント。
 くんくんと匂いを嗅ぎ、パクリと食べる羊にエデは顔を綻ばせた。
 ゆったりと傍を通る羊の頭を撫で、その背に乗ったのは『ねこだまりシスター』クラリーチェ・カヴァッツァ(p3p000236)。
「セレネさんの傍へ移動して頂けますか?」
 指差しながらそう聞くと、気が向いたのか進路を変えてのんびりと移動していく。『blue Moon』セレネ(p3p002267)の傍へ来たクラリーチェは羊の頭を優しく撫でた。
「ぽかぽか陽気に、ふかふかの羊さん。今日はのんびり過ごせそうですね」
「ええ。今日は、お天気も良くて気持ち良いです」
 お昼寝だけでは勿体ない、と羊の上でピクニックを始める2人。
「「お口に合うと良いのですが」」
 言いだしが異口同音なのは偶然か。顔を見合わせて小さく笑うと、2人はそれぞれの作ってきた食べ物を交換した。
 セレネはクラリーチェの作ってきたサンドイッチを。クラリーチェはセレネの作ったミートパイを。
「セレネさんのミートパイ、とても美味しい。今度教えて頂こうかな……?」
「ふふ、クラリーチェさんの作ったサンドイッチも、美味しいです♪」
 ふわふわの上で微睡むのは、もう少し後のこと。
 寝るだけでは勿体ない精神の持ち主は他にも。
「という事で、飲み物や軽食を用意してみました」
 『Tender Hound』弓削 鶫(p3p002685)はザックから軽食と小さな樽に入れた水を取り出す。
「日向ぼっこし続けると、なんだかんだで水分が足りなくなってきますから。水は適度に飲んで下さいね」
 周りで羊を堪能するイレギュラーズと、羊にも配る。
 休憩にと羊へ腰かけた鶫は小さく溜息を零した。
「ああ、これは……人をダメにする事で有名になった、あのクッションを思い出すような……」
 そう、負けたら立ち上がれなくなってしまう。果てには何もする気力が起きなくなってしまうような、あの。
「んっ、ダメです。休み過ぎると戻れなくなりますねっ」
 戻らなくったっていいんですよ、というようなもふもふの誘惑を断ち切り、鶫は立ち上がったのだった。

 もふもふ、もふもふ。
 『冥灯』モルテ・カロン・アンフェール(p3p004870)にとって、羊は骨だけの姿であった。こんなにもふもふの姿は見たことがない。
「羊の毛ハとても柔らカイ。暖かイ。ワタシはこのようナ暖かさハ知らナイ」
 けれど、悪い気はしない。
「……骨ジャナイ人間。骨ジャナイ生物。魂じゃナイ人間、魂ジャない生物。すべて、初めて見るモノだ」
 召喚され、初めてのものばかりを見る。けれど、それらはとても心地いものだと、モルテは思い始めていた。
「私の世界では失われし伝説のもこもこひつじ……まさか存分にもふもふ出来る機会が訪れるなんて」
 感動を噛みしめる『金銀異瞳』リカナ=ブラッドヴァイン(p3p001804)の瞳は輝いている。
「いざ、もふる……!」
 両手でもふりに行くリカナ。しかもただもふっているわけではない。ギフト《毛並みトリートメント》により一定時間ごとに綺麗になった羊が増えていくのだ。
 ふわふわ増量である。
 『赫き深淵の魔女』ミスティカ(p3p001111)は柔らかな日差しに目を細めた。
 今寝転がっている羊は毛並みが気持ちよくて暖かく、日差しの弱さはさして気にならない。
 さぁ、と風が吹き、草花の騒めく声がする。
(あれは羊……?いいえ、雲だわ)
 羊が空を飛ぶというのは不思議なものだ。けれど見ていると雲のようにも見えてきて、今のように空の雲を羊に見間違えてしまう。
 空の向こうには何があるんだろう。羊達はどんな世界へ向かっていくのだろう。
(こうして羊に癒やされながら、穏やかに時を過ごすというのも悪くはないわ)
 流れる時間はゆったり、ゆっくり。
 温もりを貯めて、空へ飛び立つ羊達。傍で焚火をすれば飛んで行ってしまいそうな気もするが。
(こんな楽な仕事ですもん、そんなもったいない事しませんよー!)
 えひひひひ、と笑う『こそどろ』エマ(p3p000257)。手ごろな群れを見ていそいそと近づく。
「ぬいぐるみみたいなのがいいかな……抱え込んでも大丈夫ですかね。いっそ群れに飛び込んでふかふかー! みたいな。ひひっ」
 想像するだけで楽しそうである。
 だが鈍感でも蹴っ飛ばされやしないだろうか。流石にもふもふでも蹴られたら痛そう。いや鈍感と言うからには何をしても気づかないか?
「ええい、ままよー!」
 もふん、もふもふ。どうやら蹴とばされなかったようです。
 『金色の王』アレフ(p3p000794)は目の前のもふもふを見て小さく首を傾げる。
「……これが、どの様な者が持ち上げようとも持ち上げられん程の質量があるとは思えんな」
「存在そのものが所謂魔法的な概念という事なのではないでしょうか。小さな翼で重い体を飛ばすことはできないでしょうから」
 呟いたアレフに『黒のミスティリオン』アリシス・シーアルジア(p3p000397)が柔らかく微笑んだ。
「やはりこういった動物は愛らしい物だな、アリシスは動物を飼ったりした事はあったのか?」
「残念ながら、動物を飼った事は元の世界では終ぞありませんでしたね。興味が無かった訳ではないのですが」
 理由は立場だとか生活上でだとか、色々とあったのだ。
「私もそういった経験はこれまで一度も無かったな。飼おうと思えば飼えたのかも知れんが……立場上、情が移ると色々問題もあった」
 どうやらアレフにも似た理由があったらしい。
「お前達は次は何処に行くのだろうね。また出会う事があったらその旅路を教えておくれ」
 アレフの手が羊を撫でる。それを見て、アリシスも別の羊をひと撫でしながら口を開いた。
「流石にこの子達を連れ帰る訳には行きませんが……気になるのなら、あの教会で何がしかを飼ってみたらいかがですか。この世界に来て、もはや縛る戒めも無いでしょう」
 調和を保つために律されていた強すぎる力。律する、アレフを縛るそれはアリシスの言う通りもう存在しないのだ。
「……そうだな」
 小さく呟き、アレフは考える素振りを見せた。

 羊の群れの上にいた『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)、にこにこしながら大きな羊の上に乗っていた小さな羊をもふもふと。残念ながら抱きかかえることはできなかったようだ。
「ふふ、クッションみたいでいいね? 何となくシャロン君に似てる気がするよ」
「んん……似てるかい?」
 似ていると言われた『白い嘘』シャロン=セルシウス(p3p000876)は欠伸を噛み殺しつつ問う。
「今の眠たげなところとか。それに同じくらい暖かそうだしね」
 確かに小さな羊もうとうとと微睡んでいる。
「僕はきっと、夜更かししたのがいけなかったと思うんだ」
 読み始めた本が面白くて一夜明かしてしまう、というのはままあること。
 似ているだろうか、と睨めっこをしていたシャロンは「っくしゅん!」とくしゃみを1つ。くしゃみのおかげか少し眠気が醒め、シャロンは鼎へ視線を向ける。
「僕よりも、普段キミのほうが忙しいんだから。たまにはゆっくり寝ていいんだよ? 僕は起きて見張ってるから」
 一応保護者だし、というシャロン。鼎は頤に手を当てる。
「おや、そう言ってくれるのは嬉しいけど、眠そうな所に無理はさせられないよ。……なら、こうするかな?」
「わっ」
 すっぽりとシャロンの腕の中へ入る鼎。逃げないようにと腕を掴む事も忘れない。
「逃げようとしても無駄だよ? しっかり休むまではね」
「逃げないから大丈夫。おやすみ、眠り姫」
 苦笑するシャロンが鼎の頭を撫で、羊の数を数え始める。
「……寝顔は本当、お姫様なんだけどねぇ」
 いつしかあどけない寝顔を浮かべた鼎を見て、シャロンはそう呟いた。にこにことそれを見る様は、まるで保護者のようである。
「もこ、もこ……」
 羊の毛に触れた『血が滴る死神の鎌を持つ殺人鬼』Blood・D・Killer(p3p002785)は目を丸くした。
 ふわふわもこもこである。野にいて尚ふわふわなのは妖精ゆえか。
「よ、い…しょ…」
 大きな羊の上へ乗ったBlood。その羊の頭上に居座る小さな羊に目を瞬かせると、手を伸ばしてぎゅむっと抱きつく。
 動かないながらも抱きしめられたことに、腕の中の羊が「めぇ?」と小さく鳴いた。
(ほわ、ほわ……もこ……もこ……)
 真白な羊の群れ。その中にふにゃっとした笑みを浮かべる寝顔と、小さな寝息が1つ。

「……おじゃまします」
 桜坂 結乃(p3p004256)は地面に寝そべった羊へ声をかけ、寄り添うようにそっと身を預けた。
(ふわぁ……あったかいなぁ……)
 もふもふふわふわ。このまま眠ったらいい夢が見られそうだ。
「そうだ。羊さん、これ食べないかなぁ」
 町民に羊が食べるものを聞いてきたのだ。
 顔の前に置かれた餌に羊は「メェ?」と首を傾げ、はむとそれを口にする。
「あっ。食べてくれた!嬉しいなぁ」
 喜ぶ結乃と、少し離れた場所でもまた。
「お菓子持ってきたのですけど、羊さんも食べますかー? 草の方がいいでしょうか?」
 持参の菓子を差し出す『神秘を恋う波』ルアミィ・フアネーレ(p3p000321)。はぐはぐと食べるその様子に微笑みを浮かべる。
(ふわあぁ、本当にふわふわもこもこなのです……ぬくぬくで気持ちいいのですぅ)
 食べている羊はルアミィにもふられていることに気づいていないのか、それとも気にしていないのか。
 そしてルアミィも羊を暖めるという目的よりもふもふするという欲が出ている気もするが、それはこの場にいる多くのイレギュラーズも同じこと。
(あたたかいしぬくふわもこだしで眠くなってくるのです……)
 暖かな陽気とぬくもふな羊。睡魔に勝てるわけがなかった。

●ふわふわ
 温もりを得た羊がふるふると体を揺らし始める。上に乗っていた参加者はそろそろかと降りる者もいれば──。
「わ……」
 ころん、と下ろされた者もいる。
「え。どこに、いくの」
 『妖精騎士』セティア・レイス(p3p002263)は目を丸くして、先ほどまで乗っていた羊を見上げた。
「まって……おこた」
 羊の名前である。先ほど名付けた。
 羊の群れは非常に快適だった。ぬくもりてぃの激しい高まりをセティアは感じていたのだ。
(きめた。一生ここで暮らす)
 寝られるし暖かい。新しい生活には必要なものは恐らくもうない。途中でパジャマを忘れたことに気づいたが、取りに戻る気力すらわかなかった。
 なのに。
「もうふ、おふとん、だんろ……はちみつジンジャーレモン」
 どの羊を呼んでも帰ってはこない。彼らはセティアを残し、新たな旅に出たのである。
「ひゅー!壮観だね!」
 『多重次元渡航忍者』獅子吼 かるら(p3p001918)はごろんと道端の草原に寝転がった。
(この子達はどこから来てどこへ行くんだろう? 風に乗って飛べるなら、きっと何処までもいけるんだろうなあ)
 めえめえと鳴き声を上げながら空へ浮かんでいく様は壮観だ。
「めぇ~、風の向くまま楽しそうだねえ。良いねえ」
 羊が1匹、羊が2匹。そうやって数えていけばかるらに睡魔が寄ってくる。
(もうすぐ、春だ……)
 雲のような白いふわふわも、そよぐ風も、重たくなる瞼すらも、心地よい。

「おぉ……いい景色だな」
 歓声を上げる『瞬風駘蕩』風巻・威降(p3p004719)。彼は今、空飛ぶ羊の上にいた。
 ギフト《軽身功》で身を軽くしているからか、羊は全く気付いた様子もない。もしかしたら気にしていないだけかもしれないが。
 可愛いひつじ達ともふもふ日向ぼっこするだけの素敵なお仕事。しかも最後に空からの素敵な景色を見せてもらった。
(さて、そろそろギフトの効果時間が切れるかな)
 ありがとう、と小さく呟いて威降は羊から手を離す。
 羽毛のごとき軽さとなった体はふわふわと空を降下していった。
「わぁ……!」
 感嘆の声を上げたのは『聡慧のラピスラズリ』ヨルムンガンド(p3p002370)。彼女もまた、羊に乗り空の上にいた。
『ヨルは空飛んでみたいのだっけ。だったら、私が暖めるからしっかり羊につかまって一緒に飛んでみるのはどう?』
 どこかに行ってしまう前に飛び降りてしまえばいい、と悪戯っぽく笑った友人は地上からこちらを見上げている。
 その友人──『不死鳥の娘』アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)の表情が慌てているように見えて、ヨルムンガンドはじっとアリソンを見た。
「たか、す……ぎ?」
 アリソンの口の動きから言葉を推察する。そういえばちょっと、アリソンの姿が小さいかもしれない。
 ヨルムンガンドは慌てて羊から手を離した。
 地上でそれを見ていたアリソンは落ちてくる彼女に目を見開く。
「わわっ、ごめんなさい通してー!」
 墜落地点まで他の参加者を避け、全力ダッシュ。アリソンは飛び込むようにヨルムンガンドを受け止め、まだ地上にいた羊の群れへ飛び込んだ。
「あ、っぶな……」
「流石に、少し怖かったなぁ……」
 走る心臓の鼓動をなだめ、2人は顔を見合って笑いだす。並んで寝転がると、先ほどまで全く動かなかった羊たちが飛んでいく光景が見えた。
「ヨル、あとで飛んだ感想聞かせてね」

 ふわふわ、ふわふわ。
 羊たちはあてどなく。その行く先は自由気ままに。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

ふわふわ。

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