シナリオ詳細
<悠久残夢>始原の先達
オープニング
●
混沌世界。『ある人物』はこの世界を、旅人にとっての『牢獄』と定義した。
あぁ別に、鉄の檻が目に見える形で存在している訳ではないが。
勝手に召喚された挙句に帰れない――それが牢獄でなくて何だというのだ?
――元の世界に帰ろう。
『ある人物』はずっと前にそう考えた。
ずっと前に考えて歩み続けてきた。
ずっとずっとずっとずっと――そして――
●
「時は来た。なんて自信をもって言えたらよかったんだけどねぇ……♪」
『ある人物』は告げる。大仰に、両の腕を広げながら。
その人物はゼロ・グレイグヤードの『管理人』を名乗っていた者。
しかしその正体はプーレルジールの住人ではない。
――彼の名はナイトハルト・セフィロト。
始原の旅人を名乗るウォーカー。
そしてプーレルジールの滅びを望む――アークの使徒が一人。
ウォーカーと言う事は彼もイレギュラーズだ。世界を救う可能性を秘めた者。
されど彼は滅びの存在と共に在る。
死。消滅。終焉……
形容しがたい『終わり』の気配と共に、だ。
「世界のシステムを破壊する為にも此処を救わせる訳にはいかないんだ……♪
――という訳でね。来るなら全員纏めて死んでもらおうか。
誰一人として近寄らせちゃダメだよ。いいね……♪」
「承知しました。お任せください」
「――う、うぅ。ぼ、僕は……」
彼に世界を救う気など一切ない。
故にこそ彼は守らんとする。プーレルジールに繋がる、もう一つの入り口……
『終焉への扉』を。
イレギュラーズ達が果ての迷宮を攻略し見つけたプーレルジールへの入り口を『表口』とするならば此処は『裏口』と言った所だろうか。ナイトハルトは此方より至っていたのだ――その扉の先が終焉のどこぞに繋がっているかは知れぬが、混沌世界に通じているもう一つの扉であるには違いない。
その地を守護するはナイトハルトに付き従うように控える者達――
一体を『獣王』ル=アディン。
女性型のゼロ・クールにして、しかしその人格は魔王直下の四天王が一角『獣王』に支配されている個体だ。彼女は魔王に忠実なる者――なのだが、ナイトハルトが彼女を『弄っている』事によって、今は魔王よりもナイトハルトの命令を優先している。
先日、街を襲った時にはまだ感情豊かに見えたのだが。
支配されているからだろうか――真に『人形』のようにも見えようか。
……そしてもう一体はゼロ・クールが一体、リプリルなる者。
リプリルもナイトハルトの干渉によって、今は意志や元来のプログラムを捻じ曲げられ尖兵――否。肉の壁として運用されようとしている。
そして、ゼロ・クール達に寄生する終焉獣の多くもまた、此方より至っていた。
――彼らが至る度にプーレルジールの滅びは加速する。
この扉を閉じぬ限り、この地には滅びが蓄積され続ける。そして――
「いつかは混沌世界に呑み込まれる、って?」
「あぁそうさ。楽しみだねぇ♪ 混沌世界を壊すには、内側から侵食するのが一番だって考えたのさ♪ 生物だってそうだろう? 外に堅牢な外殻を持っている個体でも……内側は存外に脆いってのはよくある事♪」
「楽しそうな所申し訳ないけれど――僕達は自由に動いてもいいのかな?」
「あぁまぁいいけれど、前にも言った様に君達は出来ればエイドスを破壊してくれ。
アレは些か面倒でね……終焉獣が祓われてしまう。クソが♪」
「構わないが、配下は借りるよ?」
どうぞお好きに♪ と告げた先にいるのは。
黒髪の女性、イラス・カリスチーノ。そしてヴィッター・ハルトマンなる男だ。
二人はナイトハルトの協力者たちにして、両名ともウォーカー。
――されど。二人もそれぞれ己が事情によって『狙うべき者』がいた。
その為に力が必要だった。
力が借りられるのならば世界の危機だろうがアークの使徒だろうが関係ない。
「この世界を救わせやしないよ」
刹那。ナイトハルトは言葉を零そうか。
「プーレルジールは滅びるべきなんだ。
元から世界から切り離されたゴミ箱みたいなものなんだ――
僕が再利用してあげているだけでも感謝してほしいね。
価値もない。放っておいてもいつかは消える世界。
そんな世界にも『出来る事』があると、僕が見出してあげたんだ」
ずっと準備していた。あぁいつから此処に来たのだったか……
プーレルジールを発見した時は、意味のない世界だと思っていた。
しかし混沌世界によく似た世界であれば何か出来る事があるかもしれないと考え、研究と調査を進めたのだ。どこか違うけれど、概ねの流れは似ている世界――照らし合わせればどこかに己が『望み』を達成しうる隙があるのでは、と。
不幸な事に時間なんて腐る程あった事だし。
その結果で見つけた。この世界はいつか混沌世界に呑み込まれると。
混沌世界は万象の上に座す上位世界だ。下位の世界を飲み喰らう程に強い――つまり混沌世界に限りなく近いプーレルジールはいつか混沌世界に呑み込まれるのだ。それがプーレルジールの避けられぬ滅びの一つ。
――その瞬間に方針を閃いたのだ。
プーレルジールに滅びのアークを蔓延させておいたら、どうなる?
夥しい滅びの結晶が――混沌世界を内側から侵食していくのではないか?
地上で魔種が一人二人活動するのとは訳が違う。
世界のシステムに直接攻撃を仕掛ける事が出来る。
――この世界の牢獄を、破壊できるのでは?
その為に全ての準備を整えた。
あのお優しい魔王イルドゼキア君が作るゼロ・クールに終焉獣を寄生させ。
そしてその魔王君自身にも終焉獣を蔓延らせた。
彼の苦悩。彼の苦悶。彼の嘆きが世界を滅ぼす糧となる。
全ては順調だった。魔王君が望みを果たし、混沌世界に渡航できるかはどっちでも良かったが。どっちにしろプーレルジールには順調に滅びが侵食し続けていた――
なのに。
「君達は来るんだね。混沌世界を護るために? それとも僕が気に入らないから?」
ナイトハルトは気付こう。
この地へと至るイレギュラーズがいる――その気配を。
あぁ鬱陶しい。あぁ可愛らしい。二つの相反する感情が胸で爆発せんとしている。
……ナイトハルトは己を始原の旅人と名乗る。
故に現存するイレギュラーズは全て己が『後輩』で。
だからこそ愛おしいし。それでも己の邪魔をせんとすれば煩わしくも思うのだ。
「イイヨォ、皆。僕も久々に体を動かそう――ちょっと遊んであげようじゃないか……♪
でも覚悟する事だね。僕は強いぞ……♪
この世界は皆『レベル1』の混沌世界の敷いたゴミ法則に縛られてる。だから……」
あぁ。だから――
単純にイレギュラーズは全員がスタート地点が一緒なのだ。
ならばどれだけ己を鍛え上げる事が出来たかが重要となる。
それは質もそうだが……『時間』もまた重要だろう。
始原の旅人たる己の積み重ねた『時間』を――ご覧にいれようじゃないか♪
●
「――プーレルジール。混沌世界に限りなく近い異世界とは聞いていたが……
この世界の事情は、どうやら混沌世界にも多大な影響を与える事になりそうだ」
サハイェル城。
魔王が住まう居城とされる地へ、イレギュラーズ達は足を踏み入れていた。
その中でもギルオス・ホリス(p3n000016)らが目指すのは――地下の方だ。
……この先に『終焉』の気配が満ちているが故に。
何故プーレルジールに終焉獣達が多くいるのか疑問があったのだが、その答えが此処に在ると確信している。恐らくこの先に彼らの道があるのだ――果ての迷宮を踏破した先に見つけた、プーレルジールの入り口のように。
閉じねばならない。
そうでなければプーレルジールの滅びはこれからも蓄積されていく事だろう。
その果てには混沌世界への影響も――待ち受けている。
「嘘か真か『始原の旅人』を名乗る輩もいるらしいね。
……ハリエットから聞いたけれど、以前僕を襲って来た者達もいるかもしれない。
僕も行くよ。少しでも手伝いたいし――やりたい事もある」
勿論、この先には『敵』も存在している事だろう。
プーレルジール各地で目撃されていた寄生終焉獣を始めとして、更にはゼロ・クール達の姿もありそうだ。ゼロ・グレイグヤード……廃棄されたゼロ・クール達が集う場より支配された個体達も確認されている。
――とは言っても。ジェック・アーロン(p3p004755)やメイメイ・ルー(p3p004460)が、かの地でゼロ・クールを救わんとする奇跡を『エイドス』をもってして行使したが故か、その数はあまり多くないのが幸いだ。寄生終焉獣達にとって可能性の光は嫌うべきものだから、だろうか?
何にせよ、ゼロ・クールの数が少数なら戦力のほとんどは終焉獣であろう。
滅びを齎す獣達。何も気にすることなく、ぶちのめしてやれば宜しい。
ただ。
「やはり『始原の旅人』……ナイトハルトとか言う奴が未知、か」
「――奴は少なくとも『外』の住人であるのは間違いないよ。
僕のようにこの世界の住人ではない……
だからプーレルジールを滅ぼす因子を蔓延らせようとしているんだ――」
戦力として未知たる存在がいるのが気になる所だ、と。
先日のゼロ・グレイグヤードの調査の折に発見、救助した――パンタデュラスという兎の者も告げようか。パンタデュラスはプーレルジールの住民だ。ゼロ・クールなのか、それとも現地の住民たるカオスネイバー(隣界種)なのかは本人も語らぬ、が。
ともあれ彼はプーレルジールの異変の根源を調べんとしナイトハルトに襲撃された。
辛うじて生き延びて潜伏し機会を待っていれば、グレイグヤードに至ったイレギュラーズ達と合流出来たのだが……この先に奴が待ち構えているのは間違いない。恐らく、最深部にて、イレギュラーズ達を。
「傷は負っているけれど、見過ごせない。僕も協力しよう」
「大丈夫かい? 協力はありがたい事だけど無理はしない方が」
「なぁに――此処で負ければ結局プーレルジールの滅びが加速するだけ。無茶のしどころだ」
ギルオスと言を交わせながらパンタデュラスは視線を一瞬だけ――ンクルス・クー(p3p007660)の方へと向けようか。まるで、遥か以前より知る古馴染に向けるように優しき瞳を……
しかし……ナイトハルト・セフィロトと言う名前も気になる所だ。
セフィロト。練達の首都の名前――
偶然だろうか?
練達は元々混沌世界には存在しない国家であり、旅人らが寄り集って形成された地だ。
首都の名前の由来を気にした事はなかったが……調べた所の一説によると。
「当時の旅人たちに集まるよう道を指し示した者――の名から取ったという説もある」
「ふむ。それが事実ならば相当な先達と言う事になるな。
しかし、まぁ関係あるまい――先達が名の知れた者であろうが、逆に愚か者であろうが。
お前達の歩んできた道のりと強さは、お前達だけのモノなのだから!」
「…………あの。ところで君は誰? そう言えば平然と僕に付いてきてたけど」
「気にするな。私もウォーカーにしてイレギュラーズ……お前達の味方だ!」
と、その時だ。状況を説明するギルオスの背後にいた、のは。
ディリヒ・フォン・ゲルストラー。
彼は霞帝より以前、豊穣で『古き帝』の一人であった者である――まぁ尤も、仔細は長くなるが故省くが元はローレットのイレギュラーズ達と敵対状態であったのだが……死闘の果てに命だけは残り、以降は豊穣より放逐されて混沌大陸へと至っていた。
各地を旅する内にプーレルジールの存在を知り。
そして『面白そうだから』とこっそりギルオスらの跡を付けてプーレルジールまで付いてきたのである――何してるんだお前は、と思うが。
「ハハハまぁ気にするな。此度、私はお前達の側に立つ。露払いは任せよ。機があらば始原の旅人……私よりも先達なる者には挑んでみたい所ではあるがな。私も随分長く生きたが、私よりも長命なる者がいたとは」
しかし今回の彼は完全にイレギュラーズ達の味方として立つようだ。
好戦的にして武芸者であるディリヒ。まぁ役に経たぬという事はないだろう……
それよりも。
「始まりの者だからと恐れる事は何一つあるまい。
――そもそも時間が全てだというのなら、私は豊穣での戦いで負けてなどいない」
ディリヒは旅人ながら不老長寿のギフトを持つ、長命なる者だ。
闘争狂いの業と共に長年戦いに明け暮れていた面も持つ――
だがそんな者でも敗北した。かつて行われた豊穣での戦いの折に……
己よりも長命な者に負けたのか? 否。
そんなモノは関係ない。彼は現代に、今に生きる者に負けたのだから。
「さぁ。お前達の道は私が作ろう――お前達は成したい事を成しに行くがいい!」
相手が誰であろうと構うものか。
滅びに抗えイレギュラーズ。可能性の救済者。
紡ぎたい未来を――紡ぐのだ!
- <悠久残夢>始原の先達Lv:50以上完了
- GM名茶零四
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年12月07日 20時50分
- 参加人数62/62人
- 相談6日
- 参加費50RC
参加者 : 62 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(62人)
サポートNPC一覧(2人)
リプレイ
●
扉。扉が、ある。
聞く所によるとアレこそが『終焉』に繋がる扉なのだとか――
成程。確かに尋常ならざる気配を感じ得る、が。
「それがどうしたと言うのか。
あぁ私にとっては心地よい子守歌に等しい――
未知たれば知るがいい、我が名は這い寄る混沌――!」
ロジャーズはむしろ高笑うばかりだ。宇宙的恐怖の概念を冠する彼女が何を恐れようか。
最前線にて彼女は出でる敵の目を惹かんと立ち回ろう。
貴様らが滅びを宿す怪物であるならば証明してみせよ。ただし。
――易々とは倒せないと思え。
あらゆる撃を遮断する術を張り巡らせつつ彼女は笑みの色を口端に張り付けようか。
「あっちもこっちも大変そうね……
聞いた所によるとプーレルジールはおろか混沌の方にも影響が出るという話だし。
私もやれる限りの事をやってみましょうか!」
「さぁて雑魚処理と洒落込もうではないか!
まーったく最近はどこもかしこも慌ただしくて仕方ない……ブチ抜かせてもらうぞ!」
ロジャーズが引き付けた個体達へと撃を放つはイナリや天狐だ。
押し寄せてくる終焉獣。其処へイナリは異界の神事を疑似再現。瞬間的な移動と共に繰り出される呪術の一種が――叩き込まれようか。然らば反応速度を超越させし天狐の絶好たる一撃、ミニペリオンの群れが追撃とばかりに吹き飛ばしていく――
「……あの扉さえ何とかしちまえば、向こうはどうにもならねぇって事か」
同時。葵は軽く吐息零しながら戦場を見据えよう。
面倒な事態はどこだろうとやって来るようだ。しかし――いつも通りの『踏ん張り所』であるのなら。
「初っ端から勝ちは奪い取らせてもらうっスよ!
最後の最後まで抗わせてもらうっス! いつも通り、立ってる限り!!」
彼は往くのみだ。敵の動きが本格化する前に潰してしまおう、と。
敵陣一掃するが如き掃射を此処に。
一体たりとも通すものか。むしろ壊し尽くしてしまおう。
「終焉、即ち『おしまい』。千切れた運命の糸の片端。
世界がそこへ至るのは。この世界が幕を閉じるには――未だ早すぎるだろうさ」
「――そうだな。例えいつか、何事に終わりがくるのだとしても。
それは今日ではないし、奴らによるものでもない」
行こう、アーマデル。と言葉を続けたのは弾正か。
運命の糸を紡ぐヒトはまだ大勢いる。連中に途絶えさせはしない――
背中合わせで敵と渡り合う。常に二人はその傍に在り続けよう。
――糸があり続ける限り。
至らんとする敵を片っ端から打ち倒そうか。
(……天義の鳥籠が恋しくなるな。アイツは今……
いや、集中しろ。此処は戦場だ。
それに――終末さえ退ければいくらでもアイツに会えるようになる)
然らば傍にいるベルナルドは二人の様子を見てそんな事を思うものだ。
斯様な程の関係性。己にとっては――と思えばこそ。
瞼の裏に、その背姿が映ろうか。
しかし頭を振る。未来よりも、今を見ねばと。
今を掴まねば如何なる未来にも届かぬのだから。
「終焉に屈してたまるか、こちとらまだ何も踏み出せてねーんだよ!
滅び? 終わり? 上等だ。やれるもんならやってみろ……!」
――穿つ。神秘の泥を顕現させ、終焉獣共を押し流さんとするのだ。
『カ、カ、カ――ッ』
「さーてと。またまた右を見ても左を見ても敵ばかり……
まぁいいっすよ、こなす仕事はいつも通り、邪魔物はしっかり排除してやるっすよ!
行くぞオラァ! どっからでもかかってこいっす!!」
「ったく、こんな数が入り込んでたとはな……一体一体片付けていくしかねぇか!」
それでも終焉獣の数も大したもの。この世に滅びを齎さんと臆さずに進んで来ようか。
故に、リサやジェラルドはその先陣の鼻っ面へと叩き込んでやった。
ジェラルドは炎纏いし一撃を此処に。連中の注意を引き付けながら、味方の射撃の援護としよう。意識が逸れた所へと至る撃程恐ろしい効果はないのだから……銃身が灼けつこうともリサは銃撃を止めぬ。咆哮が如き声と共に、引き金を絞り上げ続けよう――!
あぁクソ、それにしてもしぶとい連中だなぁ!
「とっととくたばりやがれってんだい!! お天道様に顔向けできない怪物めら――!」
「あちらも……感じているのでしょう。戦いは遂に伝承に伝え聞く『滅び』の段階に至っていると――いよいよ世界を揺るがしかねない『運命』が到来しようとしている……という所ですね」
次いでヴァイオレットの姿も見えようか。イレギュラーズの攻勢によって疲弊している寄生終焉獣へと紡ぐは速力による撃。見えぬ、捉えられぬ。彼女の影すら連中は踏む事なく散って行く――
同時に彼女は直感していた。この戦いは、きっと混沌の世にも通ずる戦いだと。
……混沌の未来。占ってみるのもよいかと思考し。
指先へと捉えられたタロットは――
『月』の正位置。
吉兆ならざる不穏の影。その根源はやはり『扉』と、そして扉を護る『男』から――
「始原の旅人、とかいう輩でござーますか……けったいなものがおりんすね。
嘘か真か……さて正体を存じ上げる所にはありませんが。
邪魔立てするものの相手をいたしんしょう」
「一刻も早く『扉』を閉じないと……ここを止めない限り終焉獣がいくらでも出てくる……! 長期戦になればどうなるか分からない……急がないと、ね」
視線の彼方。恐らくそちらに首魁がいるのだろうとエマは思考しながら、仲間の後を付いていく。道中において操られたゼロ・クールなどが現れれば――やむを得まい。不吉の術を紡ぎて相対しようか。更に幽我も気配を押し殺しながら敵陣を見据える。
絶好の一撃を叩き込める場所はどこかと。俯瞰する視点と共に冷静に状況を見据え。
そして穿つ。何もかもを焼き尽くす業火をもってして。
――これ以上の数に一気に攻め込まれたら、間違いなくひとたまりもない。
だからこそ確実に進まんと、少しでも役に立たんと決意露わに幽我は進むのだ。
「なんつー鉄火場だ……どこ見てもヤベェな。正直逃げ出したいのは山々だが。
出稼ぎに来た以上、仕方ねぇなァ。世界が終わると金儲けもできねェ。
――せーぜー飯のタネになってくれや」
更にことほぎも至ろうか。零す吐息、されど脳裏に撤退の二文字は浮かばぬ。
敵の塊あらば無慈悲なる一撃を。疲弊した敵あらば魂捕える牢獄の魔術を。やむなき戦闘であれば精々明日の『金』になってもらおう、と。彼女は彼女なりの未来を見据え、この場にて奮戦果たそうか。
「……さて。これほどまでに現実に影響を与える様では、見過ごす事は出来かねますね」
ヘイゼルはこれまでR.O.Oやプーレルジールには関わらなかった――
それは彼女自身のスタンスが故。
現実こそ彼女が真に在りうる場所なのだから。
されど、斯様な事態へと至るのなら。
もはや『虚ろ』なるものとして済ます事は出来ぬ。
「ゆるりと参りませうか」
全周を警戒。そして終焉獣があらば連中の目を引き付けようか。
ギルオスも前線に出ていると聞く。そちらの負担も少なくなるように――と。
「まさか異世界でも仕事とは……まぁいい。これも仕事……いや私情だな。
考えようによってはこの大勝負を乗り切るのも、良いことだ」
同時。シェンリーは周囲の味方へと知恵を巡らせて行こうか。
戦場に穴がないか。どこかに負担が過剰に掛かっていないか。
彼は見据え。必要と在らば指示を飛ばしていくのだ。
「……敵にはゼロ・クールも存在しているわね。もう、手遅れなのは仕方ないかしら。
眠りなさい。せめて、安らかに」
「こんな使われる姿を見ていると……見ていると悲しくなりますね」
だが敵は終焉獣だけではない。操られしゼロ・クール達の姿もいくらか見えようか。
吐息零しつつもヴァイスにジョシュアは相対する。
手を緩めれば寄生されぬとも限らぬのだ。ヴァイスは手を翳し、杭を紡ごうか。
魔空間にて全身を圧縮し串刺しとする――
そしてジョシュアも敵を払いのけながら、しかし救える個体がいないか模索するものだ。
こんな風に使われて。こんな最後を迎えるだなんて。
――そんなのは、嫌だ。
「どうか自分を取り戻してください。操られたままであるのは、本意ではないでしょう」
語り掛けるように。必要とあらば奇跡の光をも、願いながら。
「ふむ。敵は多いな、されど難敵と言う程ではない――見据えるべくは陣の穴か!
無知なる魔に応変なる動きなど出来まい。私と共に突破する者はいるか?」
「……御意。先帝陛下の御命、と。そう仰るんでありゃ、そうさせて頂きます。
神威神楽より援軍に来た次第――ならば敵陣食い破る事こそ誉れ」
瞬間。戦場の一角にて、終焉獣達を薙ぎ払わんとする動きがあった――
ディリヒだ。そのすぐ傍には支佐手も在ろうか。お供させて頂きます、と。
「宜しい。では後れるなかれ。戦いの趨勢をつかみ取りに行くぞ!」
「うそぉん。干戈帝? マジです? なんでこんな所にいるんですかね?」
「さぁねぇ、ま、正直この世界の事情は細かくは呑み込めてないんだけど……
分かるわ。連中を放ってはおけない、ってね! なら私も行くだけだわ!」
「……そうっすね、味方ってんなら是非もなし。
盾役として支援しますよ、鬼の丈夫さ見せてやるっすわ」
「竜の血脈に鬼の者か。うむ、その闘志や良し!」
その姿を見て慧は二度見、三度見。されど今回は味方として振舞うのならば……疑問よりも共闘の方へと即座に思考を切り替える。朱華もまた終焉獣や――ひいては連中は率いるクルエラの方を見据えるものだ。
指揮を執っている奴を潰せばこの辺りのバランスは崩れよう。
故に往く。ディリヒが斬り込み、朱華も剣に焔纏いて敵戦線を一閃。
薙ぎ払う、まるで掃射の如き斬撃が終焉の獣達へと。
であれば支佐手も間髪入れずに火明の剣を振るおうか。雷を纏った蛇神の力が、局所的な雷嵐を顕現せしめ、邪魔立てせんとしていた魔共を押しのけん。そして慧が乱れた敵共の注意を惹く様に立ち回り、敵陣に刻まれた跡をより深くかき乱せば。
「ディリヒさん、お久しぶりです。息災でしたか?」
「ははははは! 生まれてこの方、病には掛からぬ。沙月よ、そちらも息災そうだな!」
「えぇ――それではお互いの邂逅を祝して。
せっかくですし、一緒に踊って頂いてもよろしいでしょうか?」
「無論。そうであるべきだ、我々は!」
武の舞を。そう言の葉を紡ぐのは沙月である。
思ってもみない所での再会――あぁ少し高揚してきた。心の臓が再びの武を求めて。
だから、この心の儘に踊ろう。
終焉の獣達を払うのだ。有象無象が集まった所で脅威ではなし!
ディリヒと沙月の阿吽の呼吸が連中を叩き伏せて、さすれば。
「わーびっくりした。当たり前のように居るんだもの。
豊穣での戦いからどこブラブラしてたのよ。
ていうか、べ、別にあなたと和解したつもりはないからね!」
「おぉタイムか、あの時は世話になったな。
あそこで命果てると思っていたが、いやはやなんとも……これも縁よ。
今宵は共に闘争の中で踊り狂おうぞ!」
「だめだこのディリヒ相変わらずだわ! も~! たっぷり働いてもらうからね~!」
「……タイムさんなんか揉めてます? そちらの方と。揉めてらっしゃったんですね?
まぁ……色々あったのかとお察ししますが、とりあえず敵の方に行くみたいですし。
露払いはさせてもらいましょうか。前に出ていくのであれば止める程でもありません」
次いで治癒の術を張り巡らせるタイムが『いーっ!』とやや威嚇しながらディリヒへと声を掛けようか。彼とは豊穣での戦いで色々……うむ命のやり取りてきな意味で『色々』あったものだ……思い出深い。良い意味かはかなり微妙だが。
そんなタイムの様子を正純は見据えれば、なんとなく事情を察す。
ともあれ味方であるならば存分に使おうかと。
ディリヒらの行く末を援護するかのように――彼女は始原の泥を進行先へと。
「今の私でどこまでやれるかは分かりませんが手は抜きませんよ」
「ほう。なんと的確な一撃か……面白い。この機、逃さんぞ」
「ふ、は。まさかディリヒと共闘する機会が訪れるとはな!
となれば、競い方を変えるか。ただ終焉獣らを倒していくだけでは味気ない」
「錬、お前も来たか。私と戦いの分野で競うなど――容易く勝てると思うなよ?」
「それでこそディリヒだ。さぁどちらがより多くを終焉獣を撃ち取れるかな!」
着弾、炸裂。撃に合わせるように至るは錬であり、ディリヒと共に戦おうか。
魔鏡が力を彼方へ。暗黒の雫が獣らを襲い喰らっていく――
あぁイレギュラーズ達は凄まじい勢いで進撃していく。
その速度たるや、中枢にいたはずのクルエラの姿を遂に捉える程で。
『――――無為。無価値。無謀。人の子よ、死すがよい』
それでもクルエラは指揮官級個体だ。
只で一蹴される事なき存在。周囲の終焉獣も導かれてか、動きが洗練とされている。
更に魔術による雷撃がイレギュラーズ達に抗するように降り注ぎ、て。
「此処はわしが。どうか先へお進み下さい。この程度でありゃ、御手を煩わせるまでもありません」
「あ、でも寄生終焉獣には気を付けるっすよ。油断してると何が起こるか」
だが。そこへと即座に対応したのが支佐手や慧だ。
突入する者らを雷撃より庇い、終焉獣達の動きにも警戒していれば万全に。
そして慧はタイムと協力して左右よりクルエラの注意を引き付けんとする。
「ディリヒ、さぁ働きなさい! 休む暇なんてないわよ!
あ。あと寄生ゼロ・クールはスライムだけ狙ってちょうだいね!」
「戦の最中になんと注文の多い者だ。まぁオーダーとあらば仕方あるまい!」
「今よ――! クルエラの周囲から敵が離れた、このタイミングを逃さないで!」
然らばディリヒはタイムらの作った間隙を朱華と共に衝こうか。
全霊たる一閃。ここで決めんとする超越の斬撃――深く抉り込み、動きを縛りて。
「さて、キルシェちゃん。いつものように、しっかり皆の回復につとめましょ」
「えぇ、蜻蛉ママ! いっぱい回復頑張るわ!
プーレルジールに裏口があったなんてビックリだけど……
こんな危ない裏口は、ないないしちゃわないと!」
「ふふ。そやねぇ、皆を助けて、皆と一緒にしっかり帰りましょ」
クルエラの身動きが止まった刹那――蜻蛉とキルシェの援護が舞い込もうか。
それは治癒の力。クルエラに立ち向かう者達を満たす、暖かなる流れ。
皆が全力で戦えるように。
そして二人で支え合っていけるように――力を振るうのだ。であれば。
「終焉に屈してたまるか。終わり? こちとらまだ何も踏み出せてねーんだよ!」
「俺達は――奇跡を掴む! 滅びなんざに……邪魔はさせない!」
『――――無知なる人の子らめが』
身体が万全となったベルナルドと弾正が追撃とばかりにクルエラへ撃を叩き込もうか。
ここぞが終わりに抗う時であると。その指先に奇跡の光を込めながら……
であれば。先のディリヒや朱華達を含め、クルエラに想像を絶する傷が刻まれる。
割れる。その身が、その存在が。
執念なのか、クルエラは最後の最後に炸裂する魔術の爆破を敢行する……が。
それはイレギュラーズ達の身を傷付けど、命を奪う程ではなかった。
――同時。終焉獣達が指揮者を失いて統制を欠く。
「今っスよ! 一気に押し込んでやるっス! 絶対勝つっスよ!!」
「正念場だね……行こう……!」
機を見た葵や幽我らが攻勢を仕掛けようか。
クルエラを失った防衛線はやがて崩壊するだろう。
あとは――要たる『扉』の方の戦況が――どうなっている事か。
●
同じ頃。終焉の『扉』へと迫るイレギュラーズの姿があった。
だが、ソレを阻まんとする者も当然いる。
「さぁ来なよ♪ 少し遊んであげるからさ――♪」
それこそが『始原の旅人』を名乗るナイトハルト。相も変わらず余裕の笑みを見せている。
それは此方をからかわんとする意図があるのか。それとも見下しが故か?
ただ――フランは確実に、一個だけ分かる事があった。
「……その喋り方、気持ち悪い! もっと普通に喋れないのー!?」
「ごめんねぇこれ、癖になってるんだ……♪ 慣れてほしいなぁ、かわいい子には特に♪」
「うわー! 気持ち悪さが増してるよ――! こ、こここ来ないでー!」
人の神経を逆撫でしようとしてるのは間違いないと。びええやだ! フランにとって真の先輩達を先輩と呼ぶことはあるが、こんなのの後輩になった覚えなど一ミリもない。
同時。フランの支援が満ちるものだ。
皆、がんばろ! というエールが皆の背中を押し力とならん――
「何をなして、何に絶望し、何を恨んでいるのかはわからないですが……
可能性を諦めた人に先輩ヅラされたくないですね。
同じイレギュラーズで争わなければならないのは残念ですが、戦いますよ」
「そうか……僕も残念だなぁ♪ 手加減してあげようか?」
「舐めないで結構です」
同時。リスェンも治癒による支援を周囲へと行おうか。
ナイトハルトの思惑は分からない。分からないが、彼の望みは果たさせてはいけないものだと確信している。故に思い通りにはさせまい、と。
「獣王……元は感情溢れる者だったとも聞くが、今はもう操り人形と変わらんか。
ああなっては全く以て不幸でしかないな。獣の王が鎖に繋がれるなどと、なんの冗談か」
「……操られているらしいのは可哀想ですが。世界を壊す横暴を前には譲れませんね。
あちらも相当な膂力をもっているようですし――半端に加減も出来ません。
なら……さぁ、私達の相手をして貰います!」
「あら。まずは私から、なんて……舐められたものね」
然らば、まずはナイトハルトを孤立させる形を作らんと、その周囲に展開している護衛戦力……特に獣王ル=アディンを仕留めんと考え動いた影があった。それが一晃や朝顔、だ。獣王は口端を釣り上げながら二人に抗せんと動こうか。
振るう腕の一閃は、鋭く強い。
下手に当たればそれだけで身を削る一撃――しかし一晃は恐れず懐へと跳躍。
「黒一閃、黒星一晃! 一筋の光と成りて、獣の王と相対せん!」
拳と刀。あぁ単純な話だ。
どちらが先に力を失うか――その競い合いと言うだけの事!
同時に朝顔も往く。拳を掻い潜らんとしつつ目指すは獣王の防を貫く事。
「大丈夫……私自身が覚えてなくても、躯が覚えている……!」
呟くように言の葉を零しながら、朝顔は丁寧に一撃を通さんとしようか。
然らば獣王を援護する為に終焉獣らが動き出す。しかし、それと同時に。
「ハハ! ったく、手が足りないって聞いて飛んできたが、とんでもねぇな!
俺だ! 美女には花を、野郎にはねぎらいを! オラン・ジェットだ! 覚えとけ!」
跳び込んだのはオランだ。
研ぎ澄まされた感覚の儘に、彼は名乗り上げるが如く声を張り上げ。
そして――注意を惹けた個体共を一閃する。ヘルプの声があったのならば、放っておけぬから!
「いやさっきさぁ、アンタの主人? みたいなのチラっと見かけたけどキモすぎない?
いいの? あんなんがアンタの主人でさ。後悔ない? 洗脳されてない?
――まぁ人の趣味に口出す気はないけれどね。
単純に殴り合いをしようっていうアンタの方針は……嫌いじゃないし!」
「私の主人は至高よ――気持ち悪いのは否定しないけれど」
更に当然としてまだ終わらない。鈴花も獣王へと相対しようか。
ナイトハルトの気持ち悪さは相互理解できそうだが、それでも立場は相容れぬのであれば、お互い後は敵を殴り飛ばすだけ。どっちが最後まで立っているか――
「シンプルでしょ、ル=アディン!」
五指に力を。固めた拳でそれぞれを打ち抜く。
口の中に鉄――否、血の滾りが迸るが。
それでももう一発。譲れぬ想いは決して折れぬ――!
「本当にいいのかい? 突破は出来るが、しかし」
「構わねぇからやってくれ! ――よぉ『獣王』! ちょいと遊ぼうや!」
「援護は任せて……誰にも邪魔なんてさせたりしない……!」
刹那。獣王の付近で激闘が繰り広げられている最中に動いたのはゴリョウである。傍にはパンタデュラスの力の邪魔はさせまいと、ンクルスの姿もあろうか。
ゴリョウはパンタデュラスの力を借り周囲に備えていた敵の配置を全て無視して乗り越え――獣王ル=アディンの下へと直行するのである。意志を込めた眼差しが彼女を即座に捉え、て。
「くす。本当にいいのかしら? ――ミンチにしちゃうかも」
「ぶははは、やってみな自信があるならな!」
挑発にあえて乗る。獣王の膂力がゴリョウに襲い掛かりて。
しかし。
ぶち抜かせる事すらゴリョウの狙い。
「その膂力、信じてたぜぇッ!」
ゴリョウが目を見開く。続け様にはぶち抜かせた鎧の下に隠していたエイドスを――起動。願う目的は相手の機能不全。獣王としての人格機能に障害でも起これば、十二分には戦えまいよ!
「ぐっ――!!? こ、れは……!」
「……本来の主と違う者に繋がれるとは闘争の精神もまた正常とは思えぬ。
これほどつまらぬものはない――せめて正気に戻る事だ。
管理人に一泡吹かせたくはないか」
更には一晃もダメ押しとばかりに願おうか。
お前が真に殴りつけたいはイレギュラーズか、と。
揺らぐ。獣王の心が――そして。
「この機。逃すべからず――
殿勇者、一条夢心地……見参。往くぞ……いざ尋常に、勝負じゃ」
「なぁに? 随分と光ってるのも来たわね……!」
獣王の身に揺らぎが見えたと同時に、夢心地が戦場を切り裂きながら現れようか。だが身に纏うのは……なんだ?
アレは……黄金の闘気か? 星々の煌めきが剣にも宿りて、彼の存在を昇華している。
――これぞ奇跡×奇跡のコラボレーション
そう、これこそが、この状態こそが──
「超(スーパー)夢心地じゃ。勇者の“覚醒”、見せてやろうぞ」
彼の道理。勇者への道筋。この段に至って求めるのはただ純粋な強敵。至高の闘争。
操り人形如きで超(スーパー)夢心地に勝てると思うてか。
抜刀、斬撃。夢心地の眩い光が動きに追随して、獣王と交差する――
「上手く行ったみたいだね、パンタデュラスさん……!」
「あぁ、そうだね、ンクルス。なんとか……良かったよ。うっ……」
「傷が……! あまり無茶は、しないでね……!」
「……ンクルス。随分と、感情豊かになったものだね」
然らばその結果を見据えてンクルスはパンタデュラスと言を交わそうか。
パンタデュラス。やはり己と知り合いなのだろう。
優しき瞳から察するに……もしかしたら友達だったのかもしれない、なんて。
今は戦場の最中であるが故に語り合う暇がないが。
もしもこの戦いの後があれば――その時はパンタデュラスともゆっくり話したいものだ。
「うーん、やっぱり面倒くさいなぁ、あのエイドス……♪
みーんな軽く奇跡を頼まんとしてくるんだから♪ だから頼むよ、二人共」
直後。その光景を見たナイトハルトは……言の葉を紡ぐものだ。
エイドス。彼にとっての計算外の一つ。
ゼロ・クール達を救う事の出来る糸の結び目――
しかし、だからこそエイドスの発動自体をそもそも妨害せんとする動きもある。
その一人がヴィッターだ。
「やれやれ。こんな戦場であんな小さなモノを狙えとは……面倒な事を」
独り言ちる。とはいえナイトハルトには借りを作っている以上仕方ない。
今回は使われてやるとしよう、と。あぁそれにどうせきっと。
『彼女』もどこかに来ているだろうから――
エイドスを抱く者達を彼は狙わんとする。必要と在らば破壊してでも。
「――相も変わらずストーカーですか? Mr.ヴィッター・ハルトマン」
が。その動きを寛治は見逃さない。
ギルオスが『イラスがいる』と言っていた以上、彼もいるだろうとアタリは付けていたのだ。故に……研ぎ澄まされた感覚を常に一個人にだけ向けていた。終焉の獣とは異なる人間の動きがどこかに潜んでいないかと。
そして。彼の意識がハリエットに向いた瞬間を狙って、ノールックでの抜き打ち。
疾く抜き、疾く撃つ。針の穴程であろうと視えた隙があるのならば。
その身に――銃弾のプレゼントだ。
「逃しませんよ。
幾度も商談を重ねるつもりはありません……今回でクロージングとしましょう」
「――しつこい男だね、君は」
「いた! もーこっちは終焉への扉の対処で忙しいんだから……邪魔はさせないよ!」
「ギルオス、警戒しておけ! 奴がいるという事は、近くにイラスもいる筈だ……!」
「あぁ! プリン達も気を付けてくれ、此処は敵だらけだ!」
直後。ヴィッターの位置が露見すれば花丸が拳を打ち抜くものだ。
固めた拳の一閃は正に神速が如し。ヴィッターの胸を貫くかの様な一撃が襲う。
同時にプリンはギルオスに声を掛けながら、もう一人の敵……
イラスの存在に警戒の色を迸らせようか。敵意を感知する術を巡らせ探る。
ギルオスも、皆も。誰も護って。欲しいものも貰っていく。
――邪魔はさせない!
跳躍。速度を武器とし、プリンは邪魔する敵を穿とう。
「ほーんとギルオスさんってば、熱烈に愛された罪な男ねぇ」
「……ア、アーリア。今はそんな冗談は」
「その辺の話はいずれバーでしっかり聞かせてもらいましょうかぁ。それより……ねぇ。どうなの? 貴方は、戻れるといったら元の世界に戻りたい?」
「――それは、どうだろうか。僕は。昔の世界に左程の未練は、ない」
「ふふ。なら、今を選ぶ為にも戦いましょうか」
笑みを浮かべながらアーリアもギルオスへ言を。
旅人にいつか待ち受ける定め――その想いはきっとそれぞれだろうけど。
だからこそ余人に邪魔なんてさせないために、アーリアはヴィッターを排そう。
――ヴィッターの反撃は激しい。終焉獣の影から銃弾を幾重にも撃ち込んでくる。
が。だめだ。好き勝手になんてさせてあげない。
戦化粧に紅差しを一つ。崩れぬメイクこそ自らの余裕の証で、更に赤い花弁をプレゼント。
さすれば。
「ヴィッターさん。どうして私を狙うの?」
「――やぁハリエット。やっぱり君は、何も覚えてないし、何も知らないんだね」
その時だった。ヴィッターへと、ハリエットが至る。
「君は罪を背負っている。みなし子の時に、君はやってはいけない事をやったんだ」
「――――」
「理由が分からないだろう? 覚えていないだろう?
だから、いいんだ。君も理由が分からないまま苦しんでくれ」
語るはかつての世界での因縁。ハリエットには罪があるのだと。
……ハリエット自身、そう言われると心当たりも多いのだ。
彼女は。元々裕福などとは無縁の世界にいたのだから。
その時の、一端なのか。
自分のした事が帰ってきているのか?
――だけど。
「ごめんね。知り合いだからと情が揺らぐような性格してないんだ」
それに、私は。
「――生きていたい理由があるから」
刹那。彼女は視線を、ギルオスへと向けようか。
まっすぐに視線が交差する。彼の為に、私は――
だからヴィッターさんの思い通りにはいかない。
例え。自分がかつて、何かしてしまったのだとしても。
――引き金を絞り上げる。
宣言通りに躊躇はない。命ある限り、私は生きると決めたから!
「無様ねヴィッター。……でも、誰かに執着するのは、私も同じか」
瞬間。ヴィッターへの攻勢が苛烈へと至る中、聞こえた声は。
「出たわねペチャパイ! ギルオスさんに近付けると思ったら、大間違いよ!」
「誰がペチャパイよ、デカ胸が」
イラスだ。ヴィッターと異なり彼女は徒手空拳の使い手。
意識がヴィッターに向いたのを利用して一気にギルオスへ接近せんと――
すれば、立ち塞がったのは京であった。
拳と拳が交差する。必ず護らんとする意志。必ず殺さんとする意志が、ぶつかりあって。
「イラスさんだっけ。好きな相手を戦って倒したい気持ちはちょっとわかるよ。私もね、目標としてる人が――ん? ちょっと違うんだっけ? 苦しみを解放する為ってのはよくわかんないかも……ちょっと怖くない?
ギルオスさん、お付き合いする人は選んだ方が良いと思うよ……?」
「サクラ、君の方も人の事を大概言えないと思うけどね?」
そうだっけ、まぁ、梅泉センセーも割りと……この話やめよっか!
京に次いでサクラもイラスの方へ応戦を。
イラスの目的はあくまでギルオスの殺害にあるという――ならば京をなんとか振り切って接近せんとする動きがあってもおかしくないだろう。故に、数による圧力をかけてでも彼女の自由を許さない。
「多勢に無勢で申し訳ないんだけど、これもお仕事だから!」
「謝らなくていいわよ。ええ。私も――謝らないから」
剣撃。抜刀より抜き穿つサクラの剣閃がイラスを捉えんとしようか。そして。
「えとえと。ここには守らなきゃいけない人がいるですね?
ならばメイ、お役に立てると思うですよ! 皆さんを護るのです!
深手を負ったら下がってくださいなの! メイが治すですから!」
「愛するひとの幸せを願う、貴女は優しい方ですね。けれど。
――幸せになることは義務ではないんですよ。
どのような想いも、押し付ける事だけは許されません」
メイも物理を遮断しうる術を張り巡らせながらギルオスの傍にいれば、尚万全の状況と至ろうか。その上でイラスやヴィッターへ対処する面々へ治癒の力を巡らせる――更に其処へ、イラスの敵意を感知した鹿ノ子も駆けつけようか。
彼女の手刀を防ぎ、そのまま不殺の意志と攻撃をもってして相対しよう。
こういう時の為に常にギルオスの傍にいたのだ――
その甲斐もあってかヴィッターにしろイラスの襲撃にしろイレギュラーズは防げていた。
此処は戦場。終焉獣の存在もあってか、まだ油断はできない、が。
「大切な人なら、ちゃんとお話、するですよ?
話せるうちに話さないと……きっと、心残りに、なっちゃうのです」
「あぁ――ありがとう。メイ」
それでも。ギルオスが即座に命の危機に繋がるような事はないだろう、と。
メイは語り掛け。ギルオスもまた頷こう。彼は一歩前に出ながら……
……イラス。
「イラス。君の望みを叶える訳にはいかない。僕は――僕はこの世界で、僕の灯を見つけた」
「だから?」
「だから……僕は、生きていく。ほんの少しでも前を向いて」
「――ギルオスさん」
それはギルオスにとっての紛れもない本心だ。
だからイラスの事は受け入れられない。絶対に。
死は望まない。僕は、生きていきたい。
「舐めないで。貴方はそうやって、また苦しむだけよ!」
「僕の道を君が決めるな。もう終わった事なんだ、元の世界の出来事は、全て」
「私の事もそうだって言うの!」
「――イラス。彼が辛くて苦しくて、仮に死を望んでいたとしても関係ないのよ。『だから殺して死んであげる』なんて後ろ向きな事を考えてるから、アンタは堂々巡りなの」
生きたくなるように慰めるのが、良い女ってもんでしょ。
激昂するイラス。だが京が許さない。ギルオスを殺そうとするのは。
肘打ち一閃。さすればイラスの手刀は京の首元へ叩き込まれる、が。知った事か。
「言葉で伝わるなら、苦労はないわよね」
「ぉ。ぉ、お!」
「京! 待て、無理をするな!」
「大丈夫よ。私だって――一緒に生きたいから」
これは死ぬまで止まらないだろうと京は確信。
なんとなく。ほんの少しだけだが――その強い想いは分かるから。
だからさ。アタシの心(愛)を伝えてあげる。
――奇跡に掛けてでも。
「やめなさい、止めろ。私は――!」
隙を作るだけでも結構。目的はイラスを張り倒してやる事なんだから。
殺意の波の中に紛れる針の穴を機を掴みて。
イラスの意識を刈り取る一撃を――京は全力でぶち抜いてやった。
「大切な物ぶっ壊すな、奇跡が起こる可能性を壊すな!
それは皆の望みなんだ! 救いたいって思う心なんだ! ばか――!!」
「好きにさせてあげる訳にはいかないね。君の事は知らないけれど……
うん。友人の分までね、殴っておいてあげないといけないから」
然らば、残ったヴィッターへとは圧力が強まる。ナイアルカナンやみけるが撃を叩き込むのだ。こっちに来れなかった『同類の友人』の分まで、想いを込めた一撃を、此処に。
ぶん殴る。誰の奇跡を邪魔させたりなんてするもんか!
「……どいつもこいつも。どうして他者の事情にそこまで首を突っ込む?」
「信用の問題、かしらねぇ? 大体貴方、貴方自身がどうこう以前に――その表情胡散臭いのよ」
いつも穏やかな殿方は嫌いじゃないけど……
それ、本性じゃないでしょ?
アーリアは大体分かるのだ。分かってしまうのだ。信用できない笑顔というものは。
故に容赦はしない。
イラスは鎮圧した。ヴィッターもこのまま……圧し潰す!
「何故だ? どうしてだ? ハリエット。君にはどうして――これほどの――」
「……ごめんね、ヴィッターさん。でも。さっきも言った通りなんだ」
であればヴィッターは押されるものだ。彼は射撃に優れているようだが、しかし魔種などではない。旅人なのだから……その力はあくまで一介のイレギュラーズの範疇にあった。であれば数の有利を取られている以上、奇襲も潰されればどうしようもない。
故に。言の葉を自然と零したものだ。
どうしてだ。ハリエット。なぜ君はこんなにも暖かな者達に包まれている。
僕にはもう誰もいないのに。
ある種の感情を抱いている中、それでも。終わらせるためにハリエットは銃を構えて。
が。その時――
「やぁれやれ。世話の焼ける子達だなぁ……♪」
ナイトハルトの嘲り笑うような声が響いたと同時。
――戦場を両断するような、超越の閃光が刻まれた。
●
それはナイトハルトの行使した『術』であったのだろう。
尋常ならざる魔力の収束。直後に放たれた光の一閃は、まるで空間諸共切り裂くが如く。
サハイェル城地下が――衝撃に揺らぐ。
「うおーすげーー!!? 魔法使い先輩おいすー! まずはうぇいうぇーい! なんかめっちゃ盛り上がってんじゃん。どしたん? そういうお年頃? 分かる。分かるよ、その気持ち! 悪い事したくなるってヤツだよね。バイブス挙げてかんとなー!?」
「秋奈ちゃんは相変わらず元気だなぁ……♪ 今日も今日とて遊ぼうか♪」
だが臆さぬ一人は秋奈か。フレンドリーなままに語り掛け、ナイトハルトの下へと一直線。
その傍には親しき紫電の存在もあろうか。
紫電の側からはナイトハルトに対し、抑え気味の敵意をその身の内に迸らせている。
「……世界にはいつか寿命が来る。それはオレが旅してきた世界群でも同様だ。
永遠なんてどこにも存在しない――だが。
混沌のシステムを壊す為だけに全てを捻じ曲げるつもりか?
その果ては、時空を歪め、因果を曲げ、混沌はおろか全時空を破壊する行為だぞ」
「だから? それは君の見地だろう? そうとは『限らない』。だからやる。それだけさ♪」
「……身勝手だな。ならば最早問答など不要」
今は流浪の刀ではなく。時空の守人として。
――貴様を処断する。
往く。秋奈と共にナイトハルトを打ち倒さんと左右より剣撃を仕掛けるのだ。
しかし、その瞬間――なんだ? 体が……重くなる……!?
ナイトハルトによる妨害魔術か何かだろうか?
――見た。ナイトハルトが身に着けている指輪の一つが、妖しく光り輝いている。
アレが何か悪さをしているのか?
「秋奈、指を切り飛ばせ! アレが」
声を張り上げようとした紫電。を、ナイトハルトは弾き飛ばそうか。
指を鳴らせば衝撃波が衝き走る。
壁に弾き飛ばされんばかりの圧力が皆に襲い掛かりて。
「――成程。流石にそう甘くはないみたいだね。
だけど悪いね。皆の邪魔はさせない。君の能力は……その指輪が根源なのかな?
よく分からないが、その能力自体使えなくさせれば問題あるまい」
「ふふ。面白いことを言うね――そんな事が出来るのなら、是非やってみておくれよ♪」
「言われずとも!
魔法使いを名乗っているそうだけど、なら魔力の貯蔵を全て削りとばしてみせる!」
それでも数多の戦いを経験してきたイレギュラーズの歩みに淀みは生まれない。
マリアはナイトハルトへ向かわんとする人員を援護しようと赴こうか。ナイトハルトの力がどれほどあるか、まだ測り切れてはいないが――しかし無限ではあるまい。ならば奇跡や異能を行使するその力の源を……削り殺す!
紅き閃光となりて彼女はナイトハルトへ蹴りを紡ごうか。
目論見通り削れれば良し。そうでなくとも意識をこちらへ向けさせれば――
「一発ぐらいは通るだろ! 原初のパイセン、オレたちの強さ見てくれよな!」
「あぁいいよぉ♪ さぁ魅せてみてくれ。ガッカリしたら潰しちゃうよ……♪」
他の者の一撃が通る可能性もある、と。
すかさず続いたのは鈴音だ。矢面に立つように彼女は跳躍し、守りを固めながら隙を窺う。
ナイトハルトが再び強烈なる閃光を放って来ようとも倒れるものか。
てかその名前。もしかして練達の創始者っぽい?
「まだ帰り道は見つかりませんかねえ。留年何年目?
ワタシらが卒業させてやるからまず第二ボタン寄越せ」
「例え帰る方法が今の行動なのだとしても……
混沌世界もプーレルジールも壊さずに帰れる方法を見つける為にも……勝ちますにゃ!」
直後にはみーおもナイトハルトへ射撃を敢行。
狙いすました一撃が彼を襲う――あぁ、みーおも旅人ですにゃけど。
それでも。幾つもの世界を犠牲にしてまで帰ろうとは思わない。
「皆の為……世界の為にも、撃ち抜きますにゃ! お覚悟を、ですにゃ――!」
「――プーレルジールの吸収。滅びのアークを内部から蓄積する事によるシステム破壊。
その根源はなんだ? それほどまでに元の世界に帰りたいのか? それとも――
もっと他に、混沌の世界を憎む何かがあるのか?」
「憎む、か。いいセンいくねぇ、君は……♪
僕にあるのは望郷の念だけじゃないのは、まぁそれはその通りだ……♪」
紡ぐのはゲオルグだ。イレギュラーズ達の攻勢は続いているが、ナイトハルトへ対応に赴く数……いくらいても多すぎるという事はあるまい。実際、ナイトハルトの表情は未だ焦りすら見えぬのだから。
二挺のオートマチックピストルの引き金を絞り上げる。
圧力を強め続けていくのだ――然らば。
「初めまして、先輩」
ユーフォニーも戦場へと駆けつけようか。
……違う世界で私は存在できるのかなって。怖くて境界に来れなかった。
だけど戦い続けている仲間がいる。
皆前を向いている。皆未来を見ている。
なら――ためらいには勇気を。
心に勇気の灯を。今井さんからの学びを、此処に。
仲間の想いが届く様に――自らも戦うだけだと、彼女の一撃も襲来しようか。
「先輩の望みを果たさせる訳には行きません……皆の為にも、私は戦います……!」
「いいよぉ、でもまだだ。その程度じゃ僕の『年月』には勝てない♪」
ナイトハルトの指輪の『二つ目』に光が灯る――
同時にナイトハルトの力が増した。彼が行使する術に変化も訪れようか。
――重力だ。
ナイトハルトの周囲の重力が急激に増していく。歩みが、その動きが淀まされるのだ。
空間を断つような閃光。重力を変化させ圧し潰さんとする能力。
ナイトハルトの操る力は――まるで森羅万象を操るが如く。
「大したもんだな、その力も、やってることも。世界を丸ごと一つ使い捨てる実験ってわけだ。まるで神のようだと思わないか? 混沌の神様が大概理不尽なのは何となく分かったけどよ、お前のやってることも変わりないぜ」
その時だ。体が重くなる事も厭わず往くは――シラスだ。
あぁ。ナイトハルトの凶行が理解できない訳ではない。
どうしても成し遂げたい事があるのだろう。だが、許す事は出来ない。
「なぁ『センパイ』……アンタもしかして『神』になりたかったのか?」
「――僕が神になりたかったか、だって? ゴミみたいな意見だね。
神なんてクソに僕がなりたい訳がないだろう。
これらの力は全て神をぶち殺すために身に着けた一端さ!」
刹那。ナイトハルトが珍しくも――感情を揺らした。
シラスの言に。『神』という単語に余程思う所があったのだろうか?
力を収束させ一気にシラスへと魔力の奔流を襲い掛からせる。
――警戒していたが故にこそシラスは跳躍した。元より粘り強く戦う心算だったのだ。
致命傷を躱し、あわよくば一撃ぶち込む。
あぁ一秒でも長く留まり、奴を探る為にも……!
「混沌を破壊? そんな事はさせません。だってその後に何が残るんですか」
「何も残らないさ。残す価値もない。神の作ったこんな世界など」
「――それでは少なくとも、わたしの友達が生きた痕跡は残らないでしょう?」
そんなの、絶対認めない。
強い決意と共に涼花も対抗の魔力を放とうか。精神を力に撃と成す――
全ての火力を総動員。越えなければならない大先輩に、どこまで通用するか。
「挑戦させてもらいましょう」
攻勢一点。ナイトハルトはまだまだ実力を隠していそうだ。
攻めなければ勝てない。無論、本来の己は皆の支援型であり役割を疎かにするつもりはないが。
「ナイトハルト・セフィロト……貴方、練達の創始者と何かご関係でも。もしやご本人ですか?」
同時。疑問を口にしたのは――リースリットか。
「練達か。懐かしいねぇ……♪ 旅人を集める地に誘導した事はあるよ。
どこの国にも属していない土地を探すのは大変だったなぁ♪」
「――練達は貴方にとっての『真っ当』な側のアプローチだという事ですか。
しかしそんな貴方が今推し進めているこの理論には……致命的な穴がある」
リースリットは言を続ける。
混沌が他の世界を取り込む力関係にあるのなら、それは混沌からの影響が他の世界にも波及し得る事を意味するのではないか? では。混沌が消滅した時に他の世界が無事で済むのか、という検証は。
「していないのでしょう?」
「あぁ勿論♪」
「では他の世界に帰れるとも限らない訳です。溢れ出した終焉が、貴方の世界も満たすかもしれない」
「百歩譲って『そう』なったとしても構いはしないよ。困るには困るが。まぁ……
僕にとっての至上最大の目的は、元の世界の『帰還』ではなくなってるんだ♪」
「――では」
貴方の目的は練達を作り上げんとした当初とは異なり。
世界の破壊事態が『そう』だというのか――?
刹那。ナイトハルトがリースリットへと魔力を紡ごうか。空間を断つ一閃が彼女を襲わんとする。故にリースリットは反射的に跳びて躱しつつ精霊術を振るおうか。どうするにせよナイトハルトを放置してはおけぬのだから。
「ナイトハルトさま、あんみつをご馳走になりにきました、よ」
「おやおや君か♪ だけど残念だね、今日はあんみつは無い……♪」
「でしょう、ね。仕方ありま、せん。世界を滅ぼさせは……しませんよ」
次いでメイメイも決意を瞳に込めながら、ナイトハルトの妨害を試みよう。
『壁』となっているゼロ・クール達を狙い穿つように。
ただしそれは不殺の意志を込めた光――無力を狙いしものだ。
ナイトハルト先輩……わたし達は、これまでも先輩の敷いた道を、歩いてきたのでしょう。
だけど。それとこれとは話が別だ。
この世界を、滅ぼさせやしません……!
「抗います……!」
「こいつらはただの人形じゃない! 意思をもって……生きているんだ!
それを自分の都合だけで好き勝手に弄りやがって……! ふざけんな!」
同時。ゼロ・クールの救出に挑まんとするのは、ファニーもだ。
ゼロ・クール達による攻撃なんぞ気にしない。広き視点を持ちながら彼は往く。
彼らを無力化して助ける為に。傷の具合をしかと確認しながら。
助ける。必ず助けるのだと。
強い意志を抱いて――リプリルへと接触を果たそうか。
「――帰って来い! リプリル! また一緒に……いろんな所を見ようぜ!」
「う、うぅぅ、フ、ファニー……!」
リプリルは操られる儘にファニーを傷付けんとする。
が。そのファニーを――暖かな光が包んだ。
奇跡の一端か。ナイトハルトの張り巡らせていた支配が、紐解かれていく。
それだけではない。リプリルが解放されたのを起点として、他のゼロ・クール達にも影響が波及したようだ。次々と連鎖するようにナイトハルトの支配から逃れていく個体が現れようか――
これではナイトハルト周囲の護衛戦力は減っていくばかりだろう。
「身を挺してそこまでするだなんて、全く……君達は馬鹿だなぁ……♪」
嫌いじゃないけどね、と。
ナイトハルトは困った様な、上機嫌の様な複雑な笑みを見せて。
「そこの始原先輩! この世界を毒餌に、混沌世界も滅ぼそうとか!!
そんな人も世界も、心が雨空になる行為!!
青空の精霊種、魔法(砲)戦士マリオンさんは、断じて許しません!!
これ以上敵対行為を続けられるというのなら……お覚悟を!!」
「わぁ元気な子だ♪」
故。その一瞬をマリオンは見逃さなかった。
皆の態勢を立て直すべく治癒の力を張り巡らせる――
しかし始原先輩、幻想の陰謀鴉と同類っぽい気もする! ばつ!!
「だけどねぇ……奇跡を願えばなんでも掴めると思うのは困るね♪
――これ以上は流石にやらせはしないよ♪」
刹那。ナイトハルトの攻勢が、やや真面目に振るわれようか。
どこか。イレギュラーズがナイトハルトの力を探らんとする様に、ナイトハルトもイレギュラーズの力量を探らんとする傾向があったのだが、しかし『止め』だ。扉や己に近付かんとする者達を中心に薙ぎ払わんとする。
特に彼が注意しているのは『奇跡』を願う者達だ。
エイドス。あのくだらない代物を持っていそうな者達を中心に――と。
「先日振りですね。ナイトハルトさん」
現れたのはグリーフだ。彼女はナイトハルトと……終焉の扉自体を見据えようか。
滅びを混沌に導かせる訳にはいかない。『方舟』の役割もまた同様に――
ならば。
「奇跡よ。どうか私を――」
私を、私のままで。
ラトラナジュが眠る世界を守る、守護者でいさせて。
グリーフが願うのは終焉獣を引き寄せた上で正気を保つ事。
そして最終的には――入り口を破壊せんとする事だ。
この世界が混沌に飲まれないように。この世界が維持されるように――
「それは一人の願いじゃとても無理だねぇ……健気なものだ♪
そんなにこの世界が好きかい?」
「ええ。想いとして、残る程には」
「そうかい」
ナイトハルトは見逃さない。
グリーフの奇跡が成されるか以前に阻止すべくエイドスを狙い穿たんとする――
だが。奇跡を望まんとするのはグリーフだけではないものだ。
彼女が引き付けた注意の最中に……未だ別の動きも存在する。
「――ナイトハルトちゃん」
その一人がメリーノだ。
ナイトハルトが先輩だという事。あぁそれが嘘でも構わないけど。
長いこと一人で監獄を壊す方法を考えてたのね――
馬鹿ねぇ。
「わたし混沌世界が壊れるのは困るの」
「何故だい?」
「妹がいるから。どこにいるかは分からないんだけどね」
でもねそれ以外はどうだっていいの。
だから。だから――
メリーノはナイトハルトに接近せんとしようか。その胸倉を、掴み上げる為に。
――貴方の事を教えて。
「世界を壊すのは手段であって目的じゃないでしょ」
わたし妹を探してる。貴方ならわたしのことも救えるでしょ。
ねぇ。だからお願いよ。
手を伸ばすから掴んで。貴方の存在ごと、全部肯定するから。
一人ぼっちで割る者になんてならなくていいから――
もう、ひとりじゃないよ。
「――止めてくれ。君の妄執に僕を巻き込むのは。
『妹』の事も、しっかりと――目を向けたらどうなんだい?」
だが。ナイトハルトは拒絶する。
僕は一人だ。一人でいい。他の誰も、もういらない。
あぁ。だが僕の事を教えてほしいだって? ――いいだろう。
「僕の目的は『神』を殺すことさ――或いはそのシステムを全て破壊する、でもいい。
こんなクソみたいな世界に連れてこられて延々と生きるのは御免だ。
勿論、死んでやるのだって御免だね。
だから僕は神を殺す。混沌世界の住民全て死のうと知った事じゃないんだ。
いやむしろ……神直轄の混沌世界の住民なんて死んでくれた方がありがたい」
ナイトハルトの顔から笑みが消える――
冗談めかした口調ではない。冷徹な、鉄仮面のような表情が其処にはあった。
彼は。神を憎んでいる。神の築き上げた全てを。
旅人がこの世界に縛られているシステムを破壊したいのも本心だが。
同時に憎悪のような――感情も其処に――
と、その時。
「――見せたね、隙を」
絶好の機だと判断したジェックが動いた。
彼女は戦闘当初から己の気配を伏せ続けていた。
己という存在が、一切合切目に映らなくなるまで。
何の為に? ――このために、だ。
奇跡を邪魔する暇すらないように。ジェックは願う。あぁ――
「扉よ。その存在よ、固定せよ」
「何。チッ――」
侵入も撤退も自由な扉なんてたまったものじゃない。
しかし折角の終焉への手がかりならば有効に活用せねばと。
扉自体に何も出来ない様に、神の奇跡を願って……
ね。最高の嫌がらせでしょ?
確信した。勝利した、と――しかし。
「そうはさせるか。
最悪でも後始末はしておかないと僕が彼に――
イノリに怒られるんだ」
だが。ナイトハルトは動く。
瞬間的に五つの指輪全てが光り輝いたのだ。
――その時に感じた感覚は一体なんだったか。
まるで世界自体が揺らぐような……妙な感覚。
「僕だってイレギュラーズだ。世界への奇跡を知ってる。
永く生きてきて対策してないと思ったかい――?
正直、コレを使う羽目になるとは思ってなかったが……」
ナイトハルトは神へ抗する手段を模索していた。
ずっとずっと。長く永く。たった一瞬でも神の目から逃れる事は叶わぬかと。
――ルールを破壊しうる術がないかと。
世界への奇跡を不発にする秘儀。
『インバーテッドクロス』
どのような理屈と術をもってして、かは分からぬが。勿論それはなんの代償も無しに行えるものではない。
たった一瞬だけであったがナイトハルトから大量の余裕と力が掻き消えた。
それから恐らくタイミングもあるだろう。一度確定した事象に対する後付けのカウンターは――恐らくだが出来ない筈だ。今のは全ての余裕をかなぐり捨ててジェックの妨害に及んだからこそ。
彼女が斯様に潜んだ上での行動でなければ、この秘儀を引き摺り出す事は叶わなかったろう。
「なんて人だよ……ずーっと他人の邪魔を研究し続けてきたの?」
「ははは。それでも終わりだ。君達じゃ僕には勝てな――」
何はともあれ。ナイトハルトは終焉への扉を護った。
遊びは終わりだとばかりに息を整えんとして……しかし。
「マスター――お覚悟、を」
「なに? 君は……こんな所で来るのか」
その時だった。ナイトハルトの眼前に現れたのは。
なんと獣王ル=アディンであった。
だが瞳の中に狂気は――ナイトハルトの従者として操られていた様子は、ない。それはゴリョウや一晃が願い。そしてファニーが支配を解放する奇跡を願った事で繋がった事象。今そこにいるのは獣王ル=アディンではなく。
ナイトハルトの支配から逃れたゼロ・クール。
リーンファルとしての一撃が、ナイトハルトに叩き込まれた。
膂力だけは残っている。敵対者へと降り注がせてきた、その一撃が。
「ほう見つけたぞ。貴様が『始原の旅人』か――一合、相手をしてもらおうか!」
「ディリヒさん、お気を付けを。尋常ならざる気配を感じえます……」
「斬り込むってなら私も手を貸すわ! でも斬り込み手伝って死ぬのは後味悪いから、死なないでよね!」
「沙月、朱華よ――『だからこそ』であろう! 斯様な相手だからこそ往くのだ!」
「――煩い奴も来たなぁ。流石にこの状況じゃ僕も忙しいんだが」
更にそれだけでは留まらぬ。現れたのはディリヒか!
クルエラ側の戦場で暴れ続けていた筈だが、せめて一目と駆けつけてきたのか。傍には沙月や朱華の姿もある。強者との滾る戦いを求める彼が突撃するのなんて分かり切っていたから。その道筋の手伝いをしよう、と。リーンファルの一撃に次いで、ディリヒらもナイトハルトへと襲来。
終焉獣が妨害にと駆けつけてもくる、が。
クルエラがイレギュラーズに撃破され統制を欠いていてはとても止められなかった。
苛つく様子を見せるナイトハルト。リーンファルに返しの一撃を叩き込み、その半身を瓦解させようか。だがリーンファルやディリヒに抗する手を割いた――その刹那。
「一回でダメなら、二回でも……! こんな扉は、不要、なんです……!」
動いたのはメイメイであった。
ジェックの奇跡妨害の為に動き、そしてその余波の疲労がある内ならば。
もう一度阻害する事は出来ぬだろうと。
すかさずに動く。扉を強めにノックする様な形で。
終焉への扉を――閉ざさんとするのだ!
二度と、使えないよう……星の願いを力に変えて!
――然らば。終焉への扉に、亀裂が走った。
止まらない。止まらない。止まらない――
壊れていく。プーレルジールに通じていた、扉が。
「あーあ。なんてことだ……まさか僕が出し抜かれるとは、ねぇ……♪」
ナイトハルトは自嘲気味に笑おうか。
彼は自らを始原の旅人と名乗っていた。長い時を生きてきた、と。
つまりソレは事実であれば、自らを鍛え上げる時間が一番長いイレギュラーズだったという事だ。全員が混沌肯定の法則に縛られ『レベル1』なる事象からスタートする関係上――年月こそ、力に直結するといっても過言ではない。
だから負ける筈はないと思っていた。
後輩達に――後から来た者達に出し抜かれるなど――
しかし。現実はこう、か。
「やっぱり君達は神に選ばれた可能性の化身だねぇ……♪
僕の計画をよくも潰してくれたもんだ……チッ。ま、維持されている内に帰ろうか。
――また会おう、後輩達。なぁにそんなに遠くない頃に……再会出来る筈さ♪
あ。ヴィッター聞こえてるかい? 君も選べ、こっちに来るか、表から帰るか――」
ともあれ。此処に残っていれば孤立するだけだ。
ナイトハルトが終焉への扉の先へと往く。イレギュラーズ達へと、手を振りながら。
同時。他戦場に展開していたクルエラ達も幾つかは終焉への扉へ撤退していく。
――直後。扉が完全に、破壊された。
滅びの気配が散っていく。もうそこから何かが至る事は、ないだろう。
「終わった、のか? ……いやあのセンパイとは近い内に、だな」
「んやー悪い事やめてくれればいーんだけどなーありゃ無理か? 胡散臭すぎだもんな!」
シラスや秋奈は周囲に残敵がいないか警戒しながら、言の葉を紡ごうか。
始原の旅人。ナイトハルト。
――彼とはまた別の形で決着を付ける事になるのだろうと、確信しながら。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
お待たせしました、お疲れさまでしたイレギュラーズ。
ナイトハルトの意志と思惑。プーレルジールで張り巡らされていたものは、皆様のご活躍により潰されました。
しかし彼は諦めていない事でしょう。またいつか、皆様の前に現れるかと思われます。
ありがとうございました。
GMコメント
OPで色々要素が多いですが、簡単に述べますと終焉獣達がやってきている『終焉への扉』をぶち壊す事が主な目的となります。
邪魔してくる終焉獣達、そして『始原の旅人』を名乗るウォーカーを退け――滅びのアークの意志を跳ね除けましょう。
よろしくお願いします。
●排他制限
こちらのRAIDに参加した場合、他のRAIDには参加出来ません。
※複数のRAIDに優先がある方は、特別に両RAIDに参加可能です。
※片方のRAIDに参加した後、運営にお問い合わせから連絡いただければ、両方に参加できる処置を行います。恐れ入りますがご連絡いただけますと幸いです。
●依頼達成条件
・『終焉への扉』の破壊。
・『ナイトハルト・セフィロト』の撃破、並びに『終焉への扉』の確保。(※難易度上昇)
いずれかを達成してください。
●フィールド
サハイェル城地下。『終焉への扉』の前です。
『終焉への扉』とは皆さんが果ての迷宮より辿り着いた側を『表口』とするならば『裏口』とも言うべき場所であり……圧倒的な滅びの気配が零れ出でています。ナイトハルトや寄生終焉獣は果ての迷宮側からではなく、此方より来ていたのでしょう。
ただ理由はハッキリとしませんが、あまり大きな『道』ではありません。
『表口』と異なり一度に大人数が移動するのに適していない雰囲気が感じられます。
その為、攻撃を重ねれば破壊し道を閉ざす事も可能でしょう。終焉への扉が失われると終焉勢力の退路が断たれる事を意味する為、終焉勢力は失われる前に撤退する事も考えられます。
///////////////
●敵勢力
●『始原の旅人』ナイトハルト・セフィロト
ゼロ・グレイグヤードの『管理人』、『魔法使い』を名乗っていた人物です。
――その正体は皆さんと同じくイレギュラーズ。
『始原の旅人』を名乗るウォーカーの一人……との事です。
しかし言動全てが冗談めかしたような声色で満ちていて、どこまでが本気なのかよく分かりません。ただ皆さんの事を全て『僕の後輩』と呼び、ここまで至った皆さんを鬱陶しいような愛しいような目で見てきます――
戦闘能力は完全に不明です。
見た限り武器は有していないように見えますが、彼の指先にある『指輪』から強大な神秘を感じえます。もしかすると魔法使いのようなタイプかもしれませんが、100%断言はできません。
今回、彼の撃破を目指すか、撃退を目指すかで難易度は変わります。
――ご注意を。
●『獣王』ル=アディン
魔王配下、四天王が一柱。『獣王』の名を冠する存在です。下半身が蛇のような、いわゆるラミアの様な外見を宿しています。戦闘能力としては非常に強力な膂力を宿しており最前線で敵対者を薙ぎ払わんと動く事でしょう。
魔王に対して忠実なのですがナイトハルトに『弄られている』ようで、なによりもナイトハルトの命令に優先して従います。
●LA-N-09(リプリル)
街で働いていたゼロ・クールでした。
戦闘用個体ではない……のですが、ナイトハルトに無理やりに操られ最前線に繰り出されています。戦闘能力自体は左程ありませんが、文字通り『壁』として運用されてきます。
またリプリルの他、ナイトハルトによって弄られた正気を微かに保ちながらも『壁』として運用されてるゼロ・クールが複数体存在している様です。
これらは寄生終焉獣に寄生されている訳ではないので、無力化する事さえ出来れば救出出来るかと思われます。
●クルエラ×1体
『終焉への扉』より現れた指揮官レベル終焉獣個体です。
特に強い滅びのアークの気配を纏っており、クルエラの周囲に存在する寄生終焉獣(並びに寄生されているゼロ・クール達)は戦闘力が強化されます。ただしクルエラを撃破する事によって寄生終焉獣たちの戦闘力は明らかに低下します。
なおクルエラ自身の戦闘力は高めです。
終焉獣達を前線に送り出しながら自身は中~遠距離へと魔術攻撃を仕掛けてきます。
●寄生終焉獣×40体~
寄生終焉獣と称される個体達です。一見するとスライムの様に見えます。
直接的な戦闘能力自体は並程度ですが、敵性存在に対して『寄生』を試みてきます。これは特殊な攻撃で、低確率でそのターン行動不能状態(待機以外、選択不可)にする場合があります。ただし防技や抵抗、回避が高いと確率はより低くなるようです。
『終焉への扉』が破壊されない限り、戦場に敵増援として時折出現します。
●ゼロ・クール(寄生体)×10体~
寄生終焉獣に取りつかれているゼロ・クール達です。
自身が破壊されるまで戦闘行動を続行しようとします。
ゼロ・グレイグヤードで廃棄されていた個体達が中心で、時間が経過するごとに適増援として到来……してきますが、前回ゼロ・グレイグヤードでの行動で奇跡が行使された影響か、その増加スピードは非常に緩やかです。
///////////////
●イラス・カリスチーノ
ギルオスの知古たる女性です。曰く『元カノ』との事ですが、ギルオスは否定してます。
ある事情によって戦場に乗してギルオスを殺そうとしてきます。
CT型の近接戦闘タイプで、ギルオスを発見するまではナイトハルトからのお願いによって『エイドス』の破壊を目論んできます(イラスが戦場にいる限り、死せる星のエイドスを所持し奇跡を願った際に妨害される可能性があります)
なお終焉獣などは彼女を味方と認識しているのか、彼女を攻撃はしません。
●ヴィッター・ハルトマン
柔和な笑顔を浮かべている男性です。ハリエットさんの知古たる人物です。
銃を所持しています。主に中~遠距離戦闘が主体の様です。ハリエットさんの身柄を狙っている様で、特に彼女を狙ってきますが、それまではナイトハルトからのお願いによって『エイドス』の破壊を目論んできます(ヴィッターが戦場にいる限り、死せる星のエイドスを所持し奇跡を願った際に妨害される可能性があります)
なお終焉獣などは彼を味方と認識しているのか、彼を攻撃はしません。
///////////////
●味方NPC
●ギルオス・ホリス
この場に知古がいる可能性があると見て皆さんの手伝いに来ました。
情報屋ですが身を護る程度の戦闘力はあり、周囲は常に警戒しています。
イラスを探しているようです。皆さんと共に行動します。
●ディリヒ・フォン・ゲルストラー
かつて豊穣で『古き帝』の一人に数えられていた人物です。
プーレルジールの存在や『始原の旅人』なる存在を聞いて興味を抱き参戦してきました。近接戦闘を主体とし戦闘能力はかなり高いです。主に終焉獣やクルエラを狙わんとしますが隙が在ればナイトハルトも狙うつもりの様です。
皆さんと共に戦いますし、何か指示があれば従う事でしょう。
●パンタデュラス
ンクルス・ルーさんの関係者で、兎型の謎の人(?)物です。
ゼロ・クール……もしくはプーレルジールの住民『カオスネイバー(隣界種)』の類かと思われますが本人は濁しています。ここ最近のプーレルジールの異変を感じ取り原因を調査していた所、ナイトハルトに襲撃され重傷を負っていました。
ゼロ・グレイグヤードの調査の折に救助され、ナイトハルトの危険性をイレギュラーズに伝えて以降、プーレルジールの滅びを回避する為に皆さんと行動を共にします。
直接的な戦闘力は(負傷もあって)自衛程度ですが、反応と機動力に優れ更に下記の能力によって援護を行うようです。
・『Rabbit jump』:プーレルジール限定でパンタデュラスはブロック、マークを無視して自在に移動する事が可能です。更にパンタデュラスに触れている人物も、触れている間は同様の効果を得る事が出来ます。3回まで連続使用出来ますが、その後はややクールタイムを挟む必要があります。
///////////////
●サハイェル城攻略度
フィールドが『サハイェル城』のシナリオにおいては城内の攻略度が全体成功度に寄与します。
シナリオが『成功』時にこの攻略度が上昇し、全体勝利となり、プーレルジールにおける『滅びのアーク』が減少します。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
行動場所
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】『終焉への扉』対応
『終焉への扉』に対する攻撃や周辺制圧を主とします。
ナイトハルト・セフィロト、『獣王』ル=アディンからの妨害が予想されます。
またリプリルなどの操られたゼロ・クールによる『壁』も存在している事でしょう。
【2】ゼロ・クール、終焉獣対応
最前線に繰り出される敵勢力への対応を主とします。
大量の終焉獣やクルエラが存在しています。
【3】支援・補佐活動
戦況全体への支援や補佐を主とします。
治癒や支援などを行うと、全体の戦況に良い影響が与えられます。
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