PandoraPartyProject

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七つ星の導きに

 ――この世界の深淵。
 人類が初めてこの終焉(ラスト・ラスト)へ足を踏み入れてから、さほどの時間は経過していなかった。

 理由は単純極まる。
 この地に人は滞在出来ないのだ。
 居るだけで反転狂化しかねない領域は、人を人でなくしてしまう。
 だから、ここに人類の連合軍が進撃していることは、奇跡の産物だった。
 ローレットのイレギュラーズが蓄積してきた莫大なパンドラが、その有限な備蓄が人と魔の最終決戦を実現している。
 それでも渦巻く瘴気は、人の身を蝕んでいた。
 終焉獣は陣を包囲し、今も刻一刻と波状攻撃を仕掛けてきている。
 イレギュラーズは懸命に奮闘している。
 だがイレギュラーズならぬ持たぬ者にとっての過酷さはどうか。
 それは筆舌に尽くしがたいものだろう。

 幻想王国の勇猛な騎士隊長ガーラル・ディストは、岩陰にへたり込んだ。
 革袋の温い水を口に含み、兜の面頬を上げたまま、ひとかぶりする。
 剣の柄を杖代わりに立ち上がろうとするが、極度の疲労に腕が振えた。
 限界だ。

 ――あの時は、魔種から守られるだけだった。

 イレギュラーズが束になって挑んだ敵が居たのを思い出す。
 その魔種へ、大空の瞳に、自由な鷲のような心だったはずの少女へ、ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)が祈りを捧げていたことも。
 けれど今は違う。
 ガーラルは立ち上がり、数名の騎士へ腕を貸して起き上がらせた。
 そして兜の面頬を力強く降ろし、叫んだ。
 戦場に今一度、鬨の声があがる。
 海洋から助太刀に来た武装商船員マルティンも、額の脂汗を拭った。

 ――あの海を貫き通したのでしょう。

 ふと何か聞こえた気がした。
 声の主は知れない。
 本当に聞こえた声かも分からない。
 しかしこの耐え難きは、果たして廃滅の病に冒されながらも、海洋王国無敵艦隊アルマデウスを打ち破った時ほどの困難と言えるだろうか。
 自分が今、何を成すべきか。
 ただ我武者羅に挑んでいる時、それは忘れ去られてしまう。
 帝国兵達の陣が乱れ、兵士達が孤立していた。

 ――全く、帝国の脳筋どもめ。君も私のように頭というものを使いたまえ。

 ルッツ一等兵は、何かを思い出す。
 そして崩れきった隊列を整えるために声を張り上げる。

 ――ふうん。そんな風にも戦えるんだね。べつに、どっちでもいいけど。

 ルッツが唇を引き結ぶ。
 ひ弱な少女が戦いへ挑む時、こんな気持ちなのだろうか。
 だが。機銃の残弾を確かめ、再び構えた。

 ――ひいふうみいと、つづりそそぎて、よやいむな。

 鬼人種の浪人剣士、煉示郎もまた、双子巫女の健気な様子を思い出す。
 脈々と紡がれてきた歴史を、文化を、人類を。
 ここで途絶えさせてはならないと。

 ――それでも貴様はノルダインの戦士であるか!

 満身創痍のスヴェア・ルーシが、目を見開いて立ち上がる。
 美しいブロンドの巻き毛をなびかせ、終焉獣へと斧を掲げた。

 ――妖精ちゃん達、がぁんばってるねぇー! かわいいねぇ!

あなたは、ちょっといらないかも!?」
 意識を失っていた妖精兵の一人が、何事かを叫んで飛び起きた。

 過去が、その背を押している。
 あたかも散っていった者達の激励のように。
 嘆きと、無力と、絶望を振り払ってくれている。
 イレギュラーズが紡ぎ上げてきた奇跡の連続が、連合軍を奮い立たせていた。
 それでも特異点ならざる凡百非才に、何が出来ようか。
 運命を塗り替える力など、ありはしないのだ。
 天義司祭ステファノが、赤黒く澱んだ天を仰いだ時だった。

「我等イミル氏族団、義によってはせ参じる!」
 凛と美しい声は、戦場を照らすかのように。
 フレイス・ミーミル(p3n000223)は、古代幻想において歴史の闇に消えた者達だ。
 数年前にイレギュラーズは、その亡霊を撃破していた。
 だが彼女は――
「異界の者故、粗忽は赦されたい。だが尽力は約束しよう」
 ――隣世界プーレルジールにおける、良く似た存在だった。
「我等クラウディウス氏族団も忘れて貰っては困る」
 それはまるで古代の民のように、ロリカに身を包んだ精悍な男だった。
「者共、我に続け!」
「まあ、ええと、そんな訳でお助けに参上致しました」
「フィナリィさん」
 シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)の正面に現われたのは、同じく異界より現われたフィナリィだ。

 ――産まれてくるべきでない生き物でも。藻掻くなら藻掻き抜いて頂戴な。

 アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は胸中に「そんなこと、二度と言わせる訳ないじゃない」と呟き。アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)も、ふと視線を上げる。
 荒廃した大地に優しい風が吹いた。
 そんな気がして。

 ――大丈夫なのよ、お姉さん達。風が吹いているから。

「……翠璃君の声?」
 アレクシアは清風の栞を握りしめる。
「背中を押してくれるの?」
 シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)に応えるように、風がふわりと舞う。
「これもまた思い出か」
 恋屍・愛無(p3p007296)は小さく笑って終焉獣を薙ぎ払う。
「最後まで一緒に行こう、翠璃ちゃん!」
 朗らかに笑った炎堂 焔(p3p004727)に応えるように優しい風が吹いた。
 優しかった風が烈風に変わって終焉獣を薙ぎ払う。
 朗らかな風に押されながら後ろを見ても、その姿は見えなかったけれど。

 代わりに見えたものは、不正義の象徴だった。
「汝等には世話になっておる」
 サンディ・カルタ(p3p000438)ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)が、互いに顔を合わせて、両目を見開いた。
 そして彼女は「来ちゃったのじゃ」とウィンク一つ、すいと横にピースを引く。

「左様、妾こそが枢機卿アストリア。
 されどこの身は無力非才の極みよな。
 R.O.Oがネクストより参じた魂を、からくりの器へと移した仮初の命よ。
 世界法則に縛られし『レベル1』にすぎぬ。
 術式の制御も、聖遺物の力ひとつ借りられぬ出来損ないじゃ。
 しかしてされど。
 天義ならざる正義にて。
 磨き抜いた、この他ならぬ枢機卿としての知恵を遣わす!」

 秘宝種のアストリアが杖を掲げた。
 もたらされるのは魔種アストリアが秘匿、隠蔽、独占した叡智。
 明かずの扉が開かれる。

「これよりこの陣は妾が預かる。
 天義なる聖教国の司祭等よ、良いな。
 術式を展開せよ! 星の光束ねて見せん!」



 ※連合軍の兵達が奮戦しています。
 ※戦場に援軍が到着しはじめました!

 ※最終決戦が進行中です!
 ※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(終焉編)

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