PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

まだ星は見えているか

 ――愚かなものどもだ。
 ステラと呼ばれた『端末』から世界を眺めていた凶星、最強の星界獣。滅びの代名詞。それは地上へと降り立ち、咆哮をあげながら思った。
 その存在に名はなく、ただ『大いなるもの』と呼ばれている。
 なぜならば、その存在を呼ぶ必要などないからだ。地上に降りたその時こそが滅びの時であり、止められるものなど存在しない。そう、定められたから。
 ――愚かなものどもだ。
 再び、そう思う。
 聞くに、全剣王が死んだという。
 端末を通して見ていた彼は、いつも荒々しく何かに対して乱暴であった。所詮人の身。大いなるものからすれば、矮小な存在のひとつに過ぎない。
 どうやらファルカウの魔女はその死を嘆いたというが、大いなるものにはその気持ちが分からなかった。
 地上にあるすべてのものは、大いなるものにとって矮小で、そして脆弱だ。
 踏み潰せば死に、吠えかかれば砕け、天に声をかけるだけで燃え尽きる。
 王座についた紫苑の男も、憤怒の炎で海を焼く女も、始原の旅人も、封じられし悪逆と咎の壺も、かの黒聖女ですら、大いなるものにとって矮小な存在に見えていた。
 故に、かのイレギュラーズなる存在が目の前に現れた時も、目もくれずに過ぎ去るつもりであった。
 矮小な存在たちになど、構う必要などないと考えて。
 世界をただただ食らいつくし、蹂躙すれば、纏めて潰える命だと考えて。
 だが、だが、どうだ。
 矮小なるものどもは、天を焼き地を揺らし、不可思議な加護によって大いなるものの行く手を阻んで見せた。
 その足を止められるものなど、この世にないと考えていたはずなのにだ。
 ならば、思い知らせねばならない。
 ならば、潰しきらねばならない。
 すべてのイレギュラーズなるものどもを殺しきり、この世界を今度こそ――滅ぼさねばならない。

 戦況は激しく流れ、各地のワームホールとその周辺、そして影の領域での戦いは激化している。
 影の領域にあるという蠱竜領域から帰還したシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)
(p3p000229)
がローレットの扉を開いた。
 レオンに代わりギルド・ローレットを預かっていたユリーカ・ユリカが安堵の表情を浮かべたその一方で、シキがこくりと頷いて報告を始める。
「――ということで、こっちの依頼は成功したよ。けど、まだ状況は余談を許さない」
「そうだね……Bat End 8のひとり、全剣王は倒せたけど、強大な世界の脅威はまだ残ってる」
 そう続けたのはレイリー=シュタイン(p3p007270)だ。  つい先ほど長らく各地で暗躍していたクルエラとチアウェイの討伐に成功し帰ってきた所である。
 そんな彼女をはじめ、あちこちの戦いから一時帰還したイレギュラーズたちの表情にも安堵と疲労、そして不安の色が浮かんでいる。
 先にローレットへ帰還していたゴリョウ・クートン(p3p002081)もその一人だ。
 オルカ=オーシナスを始めとする魔種の部隊との戦いを終え、傷を負いながらも戻ってきたばかりなのである。
「まあ、まだ俺たちにも出撃する気力は残ってる。だから――」
「皆」
 それまで話を聞いていたショウがカウンター越しに手をかざす。
 その表情から、シキたちはその心中を察した。
「激しい戦いだったと思う。ここで『お疲れ様』といって宿に案内したいところだけど……」
「ああ、分かってるさ」
 この世界に、滅びはいまだ跋扈している。これらを止めねば、間違い無く世界が滅びるのだ。
「行ってくるぜ。Bat End 8との戦いによ」
「ああ、頼むよ。影の領域の向こう側へ。くれぐれも、気をつけて」
 手を振るショウ。そして頭を下げるユリーカ。
 シキたちは頷き、そしてローレットの扉を開けて飛び出していった。

 ――一方、覇竜領域はアスタ上空、ワームホールの向こう側。影の領域にて。

 空中へと投げ出された赤い光の球体は、まるでガラス細工のように砕けてちった。
 中に捕らわれていたステラは重力にひかれるように落下を始め……ようとしたところで、アルム・カンフローレル(p3p007874)によって受け止められる。
 仲間の支援を受けて空を飛んだ彼は、パンドラの加護の力を一度解除し、目を細めた。
「わたし……」
「いいんだ。もう、大丈夫だよ」
 アルムには、そして仲間たちには既に感じ取れていた。
 ステラの纏う気配が、滅びを齎す端末のそれから、パンドラを喰らい反転したそれへと変化していることを。
 『プーレルジールのステラ』と同じ存在に、変わっていることを。
 ゆっくりと地上へと降り立つアルム。その腕の中でステラは呟いた。
「わたし、沢山壊してしまったわ。沢山傷つけてしまった。
 けれど、光を知ってしまったの。
 美しい思い出を、温かい記憶を、輝かしい物語を、知ってしまった。
 わたしも、この世界を旅して――あなたたちの、『旅の仲間』になりたいと、思ってしまったの」
 だから、受け入れてしまったのね。
 ステラはどこか寂しそうに、目をそらした。
 その視線は『大いなるもの』へと向けられている。
「あなたは、まだ世界を滅ぼしたい? そう、よね。そのように産まれ、そのように落ちたのだもの。それこそが、あなただものね」
 悲しげに微笑むステラ。大して、大いなるものは潰れた右目から血を流しながら吠えた。
 その咆哮は、聞くものたちの心へ響き、声として脳裏に呼びかける。
『愚かなり――!』
 次に、頭のなかに響く声は荒々しい憤怒に満ちていた。
『滅びよ、イレギュラーズどもよ!』
 それまでただ通り過ぎるだけ、邪魔者を払いのける程度にだけ使われていた殺気が、直接叩きつけられる。
 常人であれば卒倒しそうなそのプレッシャーを前に、しかし彼らは引き下がらない。
 シャラン――と錫杖を鳴らして、イーリン・ジョーンズ(p3p000854)が馬上より声を上げる。
「いいえ、滅びるのは貴方のほうよ。私たちが――ここにいるすべてのものが貴方を滅ぼす」
「ああ、そうだ」
 声に応えるように、戦闘用トランペットを握りしめて立つフーガ・リリオ(p3p010595)
「おいらたちは立ち向かう。そして、『滅び』を滅ぼして――平和な明日を手に入れるんだ!」
 相手は凶星。大いなるもの。
 その巨大な存在に、イレギュラーズたちは立ちはだかった。

 ――いや、それだけではない。
「どうやら、間に合ったようですね!」
 ワームホールを抜け、声をあげるものがあった。
 それは白き太陽の翼、『神翼獣』ハイペリオン
 巨大化したその背に乗っているのは、大勢の人々だ。
「なんといっても覇竜の果て、ヘスペリデスの奥地だ。駆けつけるのに随分かかったぞ」
 もはや通じない折りたたみ式携帯を手て弄ぶのは希望ヶ浜学園の校長黄泉崎・ミコト(p3n000170)
「俺は戦わんが……希望ヶ浜からも戦えるヤツらを連れてきた。例の星界獣とやらはこっちで引き受けよう」
「ウホッホ!」
 ハイペリオンの背から跳躍し、待ちきれないとばかりに大地に降り立つコンバルグ・コング(p3n000122)
 着地と同時に両腕を大地に叩きつけ、その衝撃で周囲の星界獣たちを吹き飛ばした。
 そうして開いたエリアにハイペリオンが降り立ち、そこから次々に援軍が展開する。
「希望の戦士の皆さん、共に戦いましょう――希望合体(パンドラフュージョン)!」
 召喚したクルーザーと変形合体したグッドクルーザー(p3n000117)が、群がる人型星界獣たちを巨大な剣でなぎ払う。
「助けて貰った、救って貰ったこの命だもの。世界を護るために使ったっていいよね」
 更にエイス(p3n000239)が手をかざすと、人工コアから電撃が走り星界獣たちへと浴びせかけられる。同時にイデアが虹色に光る剣をとり、星界獣を斬り付けた。
「こっちも大変そうだし、あっちはハウザーに任せて抜けてきたよ」
 パドラ(p3n000322)は銃を構え、後続の星界獣たちを撃ちまくる。
「私たちだって、護られてばかりじゃないのだ! 総員、攻撃開始!」
 キャピテーヌ・P・ピラータ(p3n000279)が号令をかければ、連れてこられた兵士たちが一斉にマスケット銃をぶっ放す。
 そこにはカルネ(p3n000010)たちも加わり、射撃を行っていた。
「みんな、イレギュラーズに助けられた人達さ。勿論、僕もね。恩返しをするなら今だよね」
「みんな……」
 イレギュラーズたちが唖然とするその中で、ハッとしてアルムたちが声をあげる。
 ハイペリオンの背から、見覚えのある……けれど見たこともない少女が降りてきたのだ。
「みんな、わたしも一緒に戦うわ」
 それは、紛れもなくプーレルジールのステラ(p3n000355)であった。
 だがその姿は幼い少女のものではない。成長した女性のそれだ。
「この姿? 影の領域へ来たら、不思議とこうなっていたの。みんなのパンドラを喰らったからかしら……私の姿にも影響が出ているのね。それに、ほら!」
 手をかざすと光が漏れ、星の瞬きにも似たそれは星界獣たちをなぎ払う光となった。
 そうして、『白きステラ』は『黒きステラ』へと振り返った。
「わたし……」
「大丈夫、なにも言わないで。わかっているわ」
 近づき、頬へと触れる。黒きステラの頬に涙が流れ、それを白きステラは指で拭った。
「一緒に、『旅の仲間』になりましょう。大いなるものを、滅ぼして!」


 大いなるものとの戦いに変化がありました――!
 ※最終決戦の戦況報告が続々と届いています!


 ※最終決戦が進行中です!
 ※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!
 ※Bad end 8首魁と見られるマリアベルとの戦いの報告が上がっています……!
 ※世界各国にて発生した戦いの、結果報告があがっています……!


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(終焉編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM