シナリオ詳細
<終焉のクロニクル>終焉を受け入れよ
オープニング
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続くBad end8の猛攻。
『バグ・ホール』に続き、影の領域に接続された『ワーム・ホール』が各地に出現。
各国は現れる終焉勢力に対応を余儀なくされ、死力を尽くす。
Bad End 8は混沌各地でイレギュラーズと激突。
戦いは熾烈を極め、状況は『神託の日』に向け刻一刻と悪化を続けている。
その中で、様々な思惑が入り混じる。
――マリアベルにアナタシア。
――レオンに華蓮、ドラマ。
数多の思惑を飲み込んで、物語は最終局面へ。
ざんげを縛る神託、イノリの望む魔種の成就の時はもうすぐそこまで……。
●
『遂に、その時が来るでごぜーます』。
これまで幾度となく示唆されていた『神託』。
それが最悪の凶報となり、空中神殿のざんげ本人から告げられる。
Case-Dと称された滅びの概念がこの世界に完全顕現すれば、混沌は勿論の事、混沌に連なる全ての世界も破壊されてしまうという。
「顕現先が『影の領域』と確定しているとざんげさんは告げたそうです」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は神妙な表情で現状を告げる。
幸い、これまで溜めてきた空繰パンドラで顕現までの時間は稼げているようだが、終焉勢力の『滅びのアーク』が顕現先を引き寄せたのかもしれないと、ざんげは話したそうだ。
「結論から言えば、Case-Dの顕現先は魔種の勢力圏の中央……ということです」
顕現したそれをどうすべきかなど、イレギュラーズにも明確な答えは出ない。
とはいえ、その中央を目指すべきだろうし、途中多大な妨害があるのは確実だ。
それでも、『ワーム・ホール』が複数生きているのは、僥倖というべきだろう。
マリアベル・スノウが生じさせたというワーム・ホールは影の領域へと直結している。
「つまり、こちらから攻め込むことも可能です」
無策で飛び込めば、たどり着く前に発狂しかねないが、通路の安全はざんげがパンドラで確保してくれるそうだ。
後は出たとこ勝負。
やるべきことはシンプルに乾坤一擲の大勝負、決戦である。
影の領域、影の城のイノリ達を倒し、Case-Dの顕現を回避してほしいとざんげはイレギュラーズへと依頼したのだそうだ。
「無茶はざんげさんも承知。ですが、このまま黙っているわけにはいきません」
世界存亡の危機とあっては、何があっても動かねばならないのがローレットの……イレギュラーズの実情なのだ。
問題の依頼は幻想のワーム・ホールから突入を願うこととなる。
進軍した先は影の領域(ラスト・ラスト)だ。
敵の……魔種達の本拠地であり、多数の敵が生息している。
今は状況もあって、ワーム・ホール周囲、もしくはその内部でイレギュラーズの突入を待っている。
「各地のワーム・ホールから一気に仕掛けることのできる好機を逃すわけにはいきません」
アクアベルより突入の日時が告げられ、メンバー達にも気合が入る。
どうやら、各地にもそれは伝達され、この作戦の救援をと駆け付けてくれる者もいるらしい。
どれだけの敵が待ち受けているのかわからない。
できる限り、万全を期して作戦に臨んでほしいとアクアベルは告げる。
「不確定要素が大きすぎて、私の未来視では何が起こるか、もう見ることが叶いません」
だが、これまで数々の難局を打開してきたイレギュラーズなら……。
アクアベルはそうメンバーへと願ってやまないのだった。
●
幻想、王都メフ・メフィート近辺。
この国で活動している『アークロード』ヴェラムデリクトは、地下に広がる巨大渓谷に、ワームホールを開く。
幻想では、地下遺跡が多く発見され、財宝が発見されているとも言われていたが、この地下渓谷もまたそうした遺跡を思わせるダンジョンだった。
遺跡の探索にも興味はそそられるものの、今はワームホールから突入して影の領域の攻略に臨むことになる。
さて、予め、突入の日時が知らされていたこともあり、この場にはイレギュラーズだけでなく、他国からも参戦した者達の姿が。
「幻想の危機とあらば、馳せ参じるしかあるまい」
『灰雪の騎士』と呼ばれる獣種男性、スノウ・ダイン・スロウス。
彼は幻想軍人や力ある傭兵らを多く引き連れて参戦していた。
「スノウに誘われれば、黙ってはいられないよ」
こちらは鉄帝の令嬢、『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラース。
鉄帝にもワームホールが存在することから、彼女は少数を率いるに留まっていた。
「少しでも、これまでの恩を返すことができれば……」
幾度か天義の事件で共闘した天義聖騎士団の部隊。
部隊長ルーシーを始め、天義でのルスト戦を潜り抜けた者達のうち、戦意の高い者、ローレットに恩義を感じる者、何より体力面などで問題ないものを選りすぐってこの場へと遠征していたようだ。
「世界が消えるなんて考えられないから……」
そして、かつてはアドラステイアで過ごした子供達。
成長したニコラを中心とした聖騎士手伝いはローレットに対する複雑な想いを抱きながらも、世界を守る為の戦いへと身を投じることに決めたようだった。
ナア。
そして、どこからともなく歩いてきたふとましい猫。
ふんすと息をつく全長1mもあるメインクーン、たこやきは我も混ぜよと言わんばかりにワームホールの前に鎮座する。
猫の集う街道の街セイケトルにおいて、有名なボス猫だ。
遠くから、そんなたこやきを猫達が見守っていたが、さすがに死地へとその猫達を飛び込ませまいと、ボス猫は優しげな眼差しを向けた。
ナアアアアオ……!
そして、今度は眼光鋭く、たこやきはワームホールを睨みつける。
救援者達による助力を喜びながらも、メンバーはパンドラの加護を受けつつ内部へと突入する。
影の領域に至ったローレットを始めとする混成隊は、やがて西洋城を思わせる影の城へとたどり着く。
そこへ攻め込んでいく一行は突入してしばらくし、場内とは思えぬ広大な空間へと迷い込む。
「滅びに抗う愚か者ども……」
一行の前へと進み出てきたのは、真っ黒な体躯を持つクルエラ……終焉獣の指揮官。
その名は、チアウェイといった。
そいつの後ろには、チアウェイを模したような人体型の終焉獣に、蒼白い人型をした変容する獣。
さらに、人の部位を思わせる歪な姿をした終焉獣が多く並んでいた。
「終焉獣……」
「さすが敵の本拠地ね」
スノウ、アッシュが身構える後ろ、ニコラがごくりと唾を飲む。
そんな彼女の頭を、ルーシーが優しく撫でていた。
フーーーーーッ。
たこやきも毛を逆なで、威嚇する。
ワームホールの外で待つ猫達の為にも、負けられないと感じていたのかもしれない。
そんな協力者達の強い気概を感じながらも、イレギュラーズもまたそれぞれ身構える。
やはりかと、チアウェイは小さく頭を振り、これまで以上の力を放出する。
この時の為に、そいつは生み出された終焉獣を直接取り込むなどして、力を高めていたのだろう。
「終焉はすぐそこまで。……受け入れよ」
小さく告げたそいつは、部下達を一斉にけしかけ、最後の戦いを仕掛けてきたのだった。
- <終焉のクロニクル>終焉を受け入れよ完了
- GM名なちゅい
- 種別EX
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2024年04月04日 22時05分
- 参加人数10/10人
- 相談7日
- 参加費150RC
参加者 : 10 人
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参加者一覧(10人)
リプレイ
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幻想王都メフ・メフィート近辺。
地下に広がる巨大地下渓谷に現状、ワームホールが開かれている。
これを開いたのは、長らく幻想にて活動していた『アークロード』ヴェラムデリクト。
彼は多数の終焉獣を幻想へと呼び寄せていたという。
その中には、各地で暗躍を続けていたクルエラなる指揮官、全身が漆黒の人型をしたチアウェイがいた。
「チアウェイ、特殊な終焉獣との決戦だね……しかも、戦う場所は影の領域の中なんて」
鷹の飛行種、見た目も鳥の姿をした『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)はワームホームの向こうを見やる。
こちら側からではかなり視認が難しいが、その向こう側はかなり暗い上、異様な気配が漂っており、生物が棲める場所でないことが感じ取れる。
「流石に何度も逃げ回ってきたチアウェイも、ここまでだね」
死地へと飛び込む直前でもハイテンションな黒髪ポニーテール、『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)は間近に迫ったチアウェイとの再開ですらうきうきしているようにも見えた。
とはいえ、駆けつけた友軍の姿に、笑顔を浮かべるメンバーも少なくない。
「ニコラ? 久しぶり、ごめんね。最近忙しくて会いに行けなかった」
「いえ、こうしてまた出会えて嬉しいです」
アドラステイアでマザーの指導を受けていた白銀の鎧を着用した少女ニコラ・フォーリーンはかつて、イレギュラーズと敵対もしていた。
今は天義にて独立部隊として活動しているが、実質、戦力的に厳しい天義聖騎士団代行としての活動が多く、終焉獣などを相手に戦っていたそうだ。
立派に戦い続ける彼女が駆け付けてくれたことに、『不倒』を信条とする『ヴァイス☆ドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は本当ありがとうと心からの感謝を告げる。
彼女達の姿を見ただけでも、凄く元気もらえたレイリーだが、それだけにこれだけの状況を考えて、こう願う。
「絶対生きて帰る、約束してよ」
「……はい」
それが何より大事。
レイリーはそう念押しし、ニコラと指切りした。
アクセルもまた、顔見知りへと挨拶を交わす。
「スノウ、アッシュも、ここまで来てくれてありがとね」
「君も壮健で何よりだ」
先に応えたのは、アクセルにとって命の恩人、幻想の獣種騎士スノウ・ダイン・スロウス。
鉄帝との国境付近で、鉄帝の動きを監視することなどが主な任務であったが、昨今は終焉獣の対応に追われていた様子。
今回は、世話になったローレットを救援すべく、駆けつけてくれたようだ。
「こんな状況で鉄帝も幻想もないからね」
そういうのは、スノウの友人、金髪に赤青のオッドアイが特徴的な鉄帝の貴族令嬢アッシュ・クラウ・ラース。
華奢な見た目に見えて、鉄騎種の彼女は機械化した腕部から高威力の打撃を繰り出すパワータイプだ。
無辜なる混沌がなくなるかもしれないこの決戦で、2人と一緒に戦えることをアクセルも嬉しいようで。
「……勝って、生きて帰ろうね! それは他の国のヒトたち……イレギュラーズと関係が深いヒトたちも!」
「貴公らの働きで、我が国は事なきを得ました」
応じるのは、天義聖騎士団所属のルーシーだ。
彼女はイレギュラーズと共闘した依頼で剣技や神聖術はもちろん、精神も大きく成長し、いまや部隊を率いるまでになっている。
ニコラ小隊と連携して駆けつけられたのも、彼女の立場あってこそなのだろう。
そして、ふとましい猫が一匹。
「にゃふん」
猫が多く棲まう幻想の街道沿いにある街セイケトル。
そこのボス猫であるのが、全長1mもあるオスのメインクーン、たこやきだ。
イレギュラーズとも単身交戦して引けを取らず、終焉獣にも向かっていく彼は他の猫達に見送られながら、今回は単身この戦いに加わるつもりのようだ。
「友軍の皆もよろしくね」
頼もしい味方に可愛い猫……一緒に戦えて嬉しいと中性的な青年……を操るタトゥー風の『魔術紋』を本体とする『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)も奮起する。
(正直、イレギュラーズだけでワームホールに突入すると思ってた)
作戦を聞いた時、そう考えていたレイリーだったが、こうして縁ある人達が駆け付けてきたことが、彼女にとってこの上なく嬉しいのだ。
●
意を決してワーム・ホールへと飛び込んでいくイレギュラーズとその友軍。
幻想から35人、天義より70人、鉄帝15人と総数は100名を超える。
唯一動物である猫、たこやきも戦力としては全く見劣りしない実力者だ。
一行は影の領域に存在するイノリの居城へと突入。
やがて至った異空間の如き空間で銘々が足を止める。
そこで待ち受けていたのは、終焉獣の一団。
これまでの依頼で確認できた絶望の瞳、飽食の口、拒絶の指、蹂躙の足、醜聞の耳、苦悩の髪、傲慢の腕、怠惰の胴体、強欲の鼻、激高の頭蓋、憤怒の筋肉、愉悦の顔面、混迷の手、傀儡の骸骨……。
漆黒の体躯を持つ数多くの部位型終焉獣が一行の前で不気味に蠢く。
「……普段、見慣れた人体のパーツが単体で浮かんでいると気色悪くなるものだな」
軽装姿で大柄な旅人男性、『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)は、目の前の不気味な集団に気色悪さを感じてしまう。
それらの敵について、白と銀が混じった色のロングヘア、トランジスタグラマーな『100点満点』Lily Aileen Lane(p3p002187)がとりわけ友軍らメインに人体部位型終焉獣についてできる限りの情報を語る。
「今話した事を頭に入れて、立ち回って生き延びて下さい、です」
この場では雑兵といった印象ではあるが、その1体1体が空間を侵食する力を持つ程の強敵。
Lilyは友軍に孤立せぬよう忠告し、必ず数名で行動するよう促す。
同じく、咲良も敵を見回して敵戦力の把握とその分析に努める。
咲良もまた、各種敵の弱点、行動パターンを皆と共有するよう心掛けていた。
でも、危ないの分かってて手伝ってくれる天義の人達がいる。
「そんな人たちのためにも、今まで逃げおおせてきた奴に、負けるわけにはいかないよね!」
同意するルーシー以下、天義聖騎士団。
黒い肌、黒髪に豚の獣種かと思わせるような風貌をした『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は彼女らへと、部位型終焉獣の特性について新たに分かっていたことを伝達する。
先日の依頼にて、部位型と別に存在する人型の敵のうち、全身真っ黒な虚偽の人体こそ優先撃破すべきだと促す。
「そうすれば、頭からの指揮が一度寸断する」
チアウェイが部隊長なら、虚偽の人体はいわば小隊長といったところか。
「その隙にイレギュラーズはチアウェイ、友軍は他の終焉獣に向かえば指揮系統は完全に壊れ、敵勢は烏合の衆と化すだろう」
だが、蒼白く光る人型、変容する獣は進化する可能性もあり、できるだけ潰しておいた方が良いともゴリョウは伝達する。
「了解した」
短く返すルーシーら天義聖騎士団と、ゴリョウはしばし共闘する構えだ。
近場のレイリーもまた、ニコラ小隊と合わせ、集団で終焉獣と対するよう望む。
深追い厳禁、陣形を崩さず、皆と協力して。
特に、ある程度敵を攻め崩した後は、変容する獣がいたら私に知らせ、部位型を皆で抑え込んでほしいとレイリーは続ける。
「大丈夫よ、私と皆がいれば生きて帰れるわよ!」
「「はい!」」
返事するニコラ小隊の面々。
アドラステイアで出会った時から考えれば、素直に対してくれるようになったと感慨深さすら感じてしまいそうになる。
「lilyです。宜しお願いします」
傍では、Lilyがアッシュ率いる少数の鉄帝の猛者達へと挨拶する。
Lilyは自身のパイルバンカー……『執行兵器・薊』が鉄帝の武器を改造した縁もあり、同行を決めていたようだ。
「誇りある鉄帝軍人たちよ!」
続けて、エーレンも呼びかける。
「皆がどれほど強壮にして精強か、ザーバ将軍と共に戦った俺はよく知っている!」
鉄帝という厳しい地で生き抜く鉄騎種らは、エーレンの呼びかけに大声を上げる。
「敵の数も味方の数も多い。長期戦は必至。ヒーラーの頑張りどころだね!」
別世界では勇者と共に魔王を討伐したという金髪赤目の『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)は、ここぞと己の役割を果たそうとやる気を見せる。
早くもパンドラの加護を使うヴェルーリアは、漆黒の鱗を持つ亜竜種を思わせるような姿へと変貌する。
「ふふ、強くてカッコいいでしょ?」
少し竜っぽくなっても、ばっちり正気だから安心してとヴェルーリアはカリスマも働かせて仲間達……主に共闘するスノウら幻想勢へと伝達する。
「たこやきさんも無理しないでね……!」
近場にいたたこやきを優しく撫でるヨゾラもまた、全身をイクリプスの逸れへと変える。
彼自身である魔術『魔術紋』が体の外にまで広がり、その背からまるで翼のように広がっている。
笑顔を浮かべるヨゾラは、仲間に活気づけられる友軍の面々を見やる。
「友軍の皆も気を付けてね……!」
直前になって態勢を万全にするイレギュラーズ陣営に対し、この場にいる終焉獣の指揮官クルエラ、チアウェイも万全の状態とすべく、部隊にあれこれ指示出しをしていたらしい。
「終焉はすぐそこまで」
「終焉、終焉……煩いですね……」
「あいにく、終焉を受け入れろと言われてはいそうですかと受け入れるわけにもいかないのでね」
即座に、Lilyが苛立ちげな態度をとると、浅葱色の長髪が目を引く華奢な体躯の少女、『少女融解』結月 沙耶(p3p009126)も口を開き、その姿を変える。
沙耶の背から流れるように飛び出したオーロラは翼にも思える。
か弱い見た目の少女は、凛とした姿へと変わって。
「多少は抵抗――いや。思いっきり抵抗して終焉なんか受け入れなくてもいい状況にさせてあげる!」
これだけ多くの仲間が、友軍が信頼して駆けつけてくれている。
みっともない屈辱的なところを見せるわけにはいかない。
沙耶は可憐なその顔で敵を凝視する。
その横では、アクセルもまた『パンドラ』の加護を発動させ、光の翼を広げて。
(少しでも皆を照らせるように!)
強い想いを抱き、アクセルはその翼で自軍メンバーを優しく照らし出す。
イレギュラーズ陣営の態度に、チアウェイが溜息をついたようにも聞こえて。
「神託に逆らうとは、愚かな……受け入れよ」
「ぶはははッ、随分と感情が出るようになったじゃねぇか、チアウェイ!」
呆れにも似たチアウェイの言葉に、ゴリョウが思わず爆笑して返す。
「終焉を? 受け入れろ?」
白藍の長髪を靡かせる長身女性……の姿をした意思生命体、『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)が一度問い返してから続ける。
「確かに終わりとは美しい。美しい、けれども……其は我が筆が記すものに限る」
幸潮が操るは、ギフトによって具現化した万年筆。
元々いた世界で力持つ言葉を行使していた彼女は、少しずつ取り戻していたその力の一端を駆使すべく告げる。
「我はこの終わりを否定する」
皆、これまで各地で暗躍してきたチアウェイへと思い思いに言葉を投げかける。
「神託だか何だか知らんが、勝手に終焉だなんだとうるさいんだよ! この世界で生き続ける奴らがいるんだ!」
「強いから逃げおおせたとか言わせない。未来のために、絶対に倒すんだから!」
声を荒げるエーレン、咲良。
この世界の未来の為にも、神託、終焉獣の存在を受け入れるわけにはいかない。
「チアウェイ……貴様との因縁もここまでだ。何としてもここで倒す……!」
ヨゾラの言葉に、レイリーは頷いて。
「絶対に勝って『神託』を終わらせる」
小さく首肯したニコラへ、レイリーは「ありがとう」と頭を撫でてから前に出る。
「私の名はヴァイスドラッヘ! 神託こそ終焉させる者よ!」
その声が勝鬨の声を呼び起こし、一斉に両陣営がぶつかりだす。
●
さながらそこは、異空間。
終焉を望むチアウェイが虚無を思い描いたせいなのか……。
オオオオオォオォオォォ……。
オオオォオオオオォオオ……。
滅びのアークより生みだされた終焉獣の群れは気味の悪い声を上げていたが、下位である部位型が前に出てイレギュラーズへと応戦を始める。
「にしても、まぁこっちから見たら悪者なんだから当たり前だけど、部位のやつもいやらしい攻撃をしてくるし!」
悪態づく咲良は真っ先に自軍から飛び出す。
瞳を赤く光らせた彼女は胸元や大胆に露出した衣装へと変わり、軽やかに戦場を舞う。
早速、邪魔な部位型……眼前にいた瞳を空中へと跳ね上げる。
大きな手錠を手にしてはいるが、咲良は拳や蹴りをそいつへと叩き込んでいく。
「俺達は勝利する。俺達は生き残る! あの気色悪い連中にゼシュテル鉄帝国の強さを見せつけてやろうじゃないか! ……行くぞ!!」
エーレンは強化した統率力で鉄帝勢を鼓舞し、敵集団へと踏み出す。
作戦としては、虚偽の人体と変容する獣を優先して潰し、首魁であるチアウェイの首を獲りにいくというもの。
先に飛び込んだ仲間がいたが、エーレンは彼女を外して終焉獣複数を捉える。
そして、パンドラの加護によって、彼は色彩をなくした姿となる。
過去から絡みつく鎖に在り方を縛られたエーレン。
ただ民のために為すべきを為すことでしか自分は生きる価値を得られない。己の人生に色彩などあってはならない。
そうした心境が反映された姿をとった結果、色をなくしたのだろう。
さながら影の如き姿をとったエーレンはすれ違う獣へと斬りかかっていく。
エーレンの刀はそれほどの価値のない安物。
だが、彼の鳴神抜刀流はそれを補って余りある技。
持前の眼力で敵の隙を見定め、一気に部位型終焉獣を切り裂く。
Lilyもまた鉄帝勢と同行して終焉獣と対する。
虚偽の人体、変容する獣の打倒を目標としながらも、Lilyは倒すべき敵を素早く見定めて手前の邪魔な敵が鉄帝以外の勢力へと襲い掛かろうとするのを、鉛の掃射で阻止する。
「行かせないのです!」
Lilyが食い止める間に、アッシュらも果敢に部位型へと攻撃を仕掛ける。
不気味な相手だが、鉄帝勢も幾度か交戦経験があるようで、息の掛け合いで部位型へと殴打を食らわせていた。
まだ戦いは始まったばかり。
両陣営が固まっている状態であり、アクセルも皆と立ち位置を共にしながらも、道を切り開くべく、部位型の蹴散らしにかかる。
まずは、魔法杖でもあり指揮杖でもある『雲海鯨の歌』で広範囲に神秘の一撃を叩き込む。
やはり、アクセルも人体、変容の2種の能力に恐ろしさも感じて。
(部位型終焉獣の多彩さも怖いけど、指揮能力や変身する可能性があるのはもっと怖いしね)
それらの討伐を優先としつつも、両陣営がかなりの数とあって遊撃に動くアクセルだ。
「大丈夫。皆をできる限り生かして帰すからね!」
竜の力を発揮するヴェルーリアは有り余る素早さで立ち回る。
部位型が発してくる様々な異常攻撃に警戒し、声を上げて皆が万全に戦えるように励起する。
回復補給を優先しつつも、ヴェルーリアは敵陣に向けて自身を三頭身としたような姿の軍勢を召喚し、一斉にけしかけていく。
ヴェルーリアが同伴しているのは、スノウを筆頭とする幻想勢力。
こちらもやはり戦い慣れしており、部位型をあしらう様に複数人で相手する。
戦場を俯瞰して全体把握に努める沙耶もそれに混じりつつ、天衣無縫のスタイルで攻撃に出る。
幻想騎士に混じり、沙耶は強い想いの力を若草色の輝きとして放ち、昏く気味の悪い敵へと叩き込みつつ、それらへと近づく。
その周囲を立ち回るヨゾラは友軍が敵集団を抑えているところを捉える。
ふとましいメインクーン、たこやきもヨゾラの付近で猫キックを繰り出していたのはさておき。
敵集団の中には、前に出ようとしてくる人体、変容もおり、ヨゾラとしては格好の的。
「楽園追放……虚偽の人体も、変容する獣もぶちのめす!」
ヨゾラの展開するパラダイスロストは敵陣に広がっていく。
混沌において、世界を滅ぼす存在である終焉獣など邪であり悪。
激しい光が終焉獣を混沌より滅さんと漆黒の体を灼き払わんとする。
「万国三千世界の英雄譚には、勧善懲悪のハッピーエンドが相応しい」
それらを目にしながら、幸潮が友軍らへと呼びかける。
――だって、英雄が主人公なんだぜ?
――主人公が勝たんで何とする。
――此処に集いし者らは皆が己が物語の主人公!
幸潮は万年筆を握り、言葉を紡ぎながらこの戦いの舞台を掌握しようとする。
そうして力を高めつつ、彼女はさらに語る。
「後の事など気にするな。ただひたすらに、汝らは前へと突き進むがいい!」
――何故ならば、これこそが、最終決戦なのだから──ッ!
うおおおおおおおおおおおおおおっ!!
周囲の仲間、友軍を後押しする彼女はなおも力を高め、帳の王と名乗る。
後は、描画編纂を繰り返し、皆を助けるべく幸潮は動く。
その幸潮の援護を、天義の聖騎士団も受けていて。
「狙うは虚偽の人体。チームで連携をとって攻め込むのです」
「「了解!」」
その少し前方で、ゴリョウが最前線に立っていて。
アムド・フォートレスによって、肉体硬度を絶対の領域にまで高め、彼は絶対の存在感を示して多くの終焉獣の攻撃を引き受ける。
指に骸骨、胴体と筋肉。
あちらも壁となりそうな個体から前に出して攻めてきている印象。
やはり、人体が指示を出しているのだろう。
そうして、彼はダメージを引き受けることで友軍の損耗を減らす。
「今です!」
ルーシーの合図で、騎士達が部位型へと切り込む。
ただ、ゴリョウが抑えている正面でなく、敵部隊の横っ腹から突いていく形だ。
これもゴリョウの提案によるもの。
しかも、彼が構えていたのは、冠位傲慢から『取り返した』とも言える聖盾。
それらに守られつつ、攻めるという状況が聖騎士団の士気を高める要因ともなっていた。
少し遅れる形でレイリーはニコラ小隊と連携をとりつつ敵陣へと踏み込む。
「私が先頭にいるわ、貴女達は援護をよろしく」
「「はい!」」
白亜城塞を展開するレイリーは主に部位型を抑える形だが、徐々に前に出ていた人体や変容の気も引く。
狙いは、ニコラ達の統率。
まずは、この場での戦い方に慣れることから始めるレイリーだ。
果敢に攻めるニコラ達や、自身の援護してくれる小隊員へと刹那微笑ましげな視線を向けてから、レイリーは歯を食いしばって眼前の腕の殴り掛かりや手が繰り出すビンタに耐えるのである。
●
交戦からしばらく、イレギュラーズ陣営は部位型終焉獣を中心に相手していた。
敵陣を少しずつ切り開いたこと、そして虚偽の人体、変容する獣が前に出てきたこともあり、メンバーは程なく人体を優先して叩くこととなる。
依然、前線で盾となって耐えるゴリョウ。
頭上からは鼻や足、耳らが彼を潰さんとしてくるが、それらを彼はじっと堪える。
オオオオォオォオオオ……。
その間にも、続々と前へと上がってくる人体、変容。
それらもまたかなりの力を持っている相手だが、イレギュラーズは視認するやいなや攻撃を集中させる。
敵もこれだけの集団で攻めていたこともあり、簡単には倒れぬと考えていたことだろう。
だが、こと作戦においては、イレギュラーズ陣営の方が勝っていた。
反応速度の高い咲良は爆裂の一打で多くの終焉獣を牽制しつつ、仲間の攻撃の合間を縫って見定めた人体目掛けて加速したスピードを加えた一撃を叩き込む。
それで倒れないのはさすがチアウェイの下位存在というべきか。
咲良はなおも速力でそいつを攻め立て、侵略する。
そいつが上げようとしていた怨嗟の声が止まり、最初の人体が爆ぜるように姿を消した。
すでに乱戦模様となっていたその空間。
そんな中でも、イレギュラーズは倒すべき敵をしかと見つめ、最善手を曽そいつへと撃ち込む。
変容する獣数体へ、鉄帝勢が一気に切り込んでいるのを見たLily。
アッシュが令嬢とは思えぬ苛烈な一打を見舞ったところで、Lilyの掃射が1体の頭を穿って消し飛ばす。
それで終わらず、Lilyは鉄帝の猛者へと向かっていた敵へと蒼き彗星で攻め立てる。
敵が消し飛んだのを肌で感じた彼女は、次なる敵へと向き直っていた。
もう1体この場にいた変容には、エーレンが対していて。
Lilyの相手していた変容へと鉄帝勢の意識が向いていたこともあり、エーレンはしばらくそいつへと居合で斬りかかる。
変容する獣は大樹の怒りを思わせる攻撃を得意とし、根のように伸ばして絡めてくる足で相手を止め、槍の如き腕で相手を仕留めるのを得意としている。
それらの攻撃を見極めつつ、エーレンは抜刀斬りを繰り返すが、そこへ飛び込んできたアッシュの機械腕がクリーンヒットしたことで、大きく怯む。
そこをエーレンが胴を寸断し、見事に仕留めてみせた。
アッシュの活躍を横目で見ていたスノウも負けじと終焉獣に鮮やかな剣術で攻め、自由にはさせない。
とはいえ、数もあって傷は徐々に深まる。
ヴェルーリアは仲間、友軍問わず、希望の喊声を響かせることで癒しをもたらす。
「今が攻め時だよ!」
相手は多勢だが、回復する手段に乏しいという致命的な欠点もある。
ヴェルーリアの声を聴き、幻想勢が活気づく傍で沙耶も飛び込んでくる。
伸びた腕や脚ごと、変容を切り捨てた沙耶。
そこに部位型の髪が彼女の体を絡めとろうとしてくるが、スノウがそいつを切り裂いたところで沙耶が人体へとなおも速力を持って切り裂く。
人体が大きく裂けてその姿がなくなるのを見届けることなく、沙耶はさらなる敵へと挑む。
人体、変容はまだ残っているが、部位型が行く手を阻む。
頭蓋や顔面が気味の悪い笑いを浮かべるのが印象的だが、それらを叩き潰さんと交戦を続ける仲間を、幸潮はなおも物語を紡ぐ。
――絶望も飽食も拒絶蹂躙も醜聞も苦悩も強欲も怠惰も傲慢も激昂も憤怒も愉悦も混迷も傀儡も、『何もなかった』と記せば全て同じ事。
「英雄共の活躍の舞台と成り下がる」
いくら、空間浸食の脅威が有れど、部位型終焉獣など所詮この場の盛り上げ役。
幸潮のそんな言葉がイレギュラーズ陣営の力を高めて。
ニコラ小隊も奮起する状況の中、レイリーは深く息を吐いて白い波紋を広げて彼女達の記事を癒す。
安心間を与えながらもレイリーは眼前の敵の猛攻を食い止める。
盾となっていたレイリーはこちらにきた人体も合わせて部位型を相手していたが、ニコラ小隊が部位型をさばきつつ、人体へと確実に攻撃を加えて。
ここぞとレイリーが発する竜声。
その咆哮に、ニコラは仲間と連携して人体を攻め続けて。
「やっ!!」
ニコラの刃が人体の胸部を深く切り裂く。
空中をもがくように両手を仰いでいたそいつはすぐ、消し飛んでいった。
その周囲でも討伐は少しずつ加速する。
「飲み込め、泥よ。混沌揺蕩う星空の海よ」
ヨゾラが発する星空の泥は終焉獣のみを捉えて呑み込む。
天義勢が相手にしていた人体も呑み込み、水面から顔を出してもがくそいつを、ルーシーが薙ぎ払った件が仕留める。
あちらこちらへと遊撃に出ていたアクセルは天義勢の相手にしている別の人体を追い込んでいるのを見て、神秘の一撃を叩き込んでその存在を滅する。
翼を羽ばたかせ、彼はさらにたこやきが相手する人体へ。
にゃふん。
尊大な態度を崩さぬまま、鳴き声を上げるたこやきは強者の貫録を見せる。
人体も口を巨大化させて食らいつこうとするが、アクセルが素早く飛び込み、第五元素・ただ語る天の歌を響かせて周囲の部位型も牽制する。
ただ、人体が硬直したことで、たこやきが目を光らせて鋭い爪を薙ぎ払う。
なふん。
人体を見事に爆ぜ飛ばし、たこやきは鼻息を鳴らすのだった。
●
ここまで、チアウェイは大きな動きを見せていない。
敵陣営の奥で、人体などに指示を与えることに注力していたようだ。
オオオオォオォオオオ……!
部位型はなおも勢いを増すように現れ、イレギュラーズ陣営を徐々に苦しめる。
しかし、敵の小隊長格である虚偽の人体、変容する獣はすぐに数が増やせる存在ではなく、この場の数は確実に減っている。
「まだ倒れる時間じゃないよ!」
回復役として立ち回るヴェルーリアは疲弊が大きくなってきていた友軍を癒し、継戦が厳しい状態なら後方へと下がらせる。
そうした状況の中でも、ヴェルーリアは回復の必要なしと判断したタイミングでは攻撃のタイミングをはかって。
「少し刻むよ! SoB!」
ヴェルーリアはまたも、三頭身の自身を思わせる軍勢を呼ぶ。
しばし戦場で終焉獣を攻め立てる一団は、気づけば人体1体を切り刻んでいた。
「勢いに乗ってどんどん倒しちゃおう!」
さらに、ヴェルーリアは攻撃のタイミングを見つつ、仲間を癒す。
アクセルは逆に攻撃の合間を縫うように、母なる混沌との調和で傷つく仲間を癒す。
最前線に立つゴリョウやレイリーの負担はかなりのもの。
アクセルの癒しが仲間へと届く傍らで、彼の知人らの奮戦が目立つ。
「ハアッ!!」
スノウの剣が変容の体を斜めに切り裂き、さらに、幻想騎士らが維持を見せ、別の変容1体を切り伏せる。
負けじと鉄帝勢も少ない戦力で人体を追い込み、アッシュが渾身の打撃を見舞って粉砕してみせた。
順調に攻めるイレギュラーズ……と思いきや、いつの間にか、チアウェイが前線に上がっており、エネミーサーチを働かせる咲良が部位型の動きを鈍らせつつそちらとの接触をはかる。
その間も、アクセルが翼を羽ばたかせ、杖を使って展開した結界へと部位型共々巻き込んだ変容を消し飛ばす。
また、レイリーが終焉獣を抑えるサイドからニコラ小隊が奮戦を続け、迫りくる変容へと一気に斬りかかり、蒼白い光を完全に消し去った。
ニコラ自身もまた変容の首を斬り飛ばす。
まだ部位型に囲まれる状況ではあったが、レイリーの笑顔にニコラは気をよくしていたようだ。
勢いに乗り、ヴェルーリアが再度展開するSoBで変容を切り刻んでしまい、ヨゾラが繰り出す煌めく星の破撃が人体を打ち砕く。
「…………」
が、不穏な状況を感じ取ったヨゾラはすぐさまそちらへと動き出す。
さて、チアウェイへと真っ先に接敵していた咲良。
「ここで会ったが100年目だね!」
テンションの高ぶるままに咲良は速力で攻め立てていたが、敵も彼女の動きを見定めて攻撃を重ねて。
部位型の攻撃を使い分けるチアウェイは黒い瘴気を発して咲良の力を奪い、巨大化させた掌を叩きつけてくる。
しばらくはタイマン勝負となっていたことで、彼女はすぐに回復メインでの立ち回りに追い込まれてしまう。
仲間はまだ、人体、変容の攻略が完了できていない。
重戦車を思わせる猛攻で幾分立て直しながらもチアウェイを粉砕すべく拳を突き出す。
だが、チアウェイはこの日の為に多数の部位型の力を取り入れて自らを強化したのだろう。
逆に膂力による強力な一打をまともに受け、咲良は倒れかけてしまう。
パンドラを砕いて咲良が堪える傍、ヨゾラがすぐに駆け付けて。
「ここが正念場だ。誰も倒れさせないよ……!」
強い意気込みで戦いに、皆の癒しに臨むヨゾラは咲良に無穢のアガペーを与え、体力を取り戻させる。
これ以上戦いが長引けば危険な状況ではあったが、友軍を救うべくエーレンが抜刀した一太刀が最後の人体を切り裂いたことで、戦況は大きく動く。
一息ついたゴリョウは、部位型の中、仲間と交戦するチアウェイを見つけて。
「じゃあ行ってくらぁ。ルーシーも騎士達も、武運を祈るぜ!」
「はい、ご武運を……」
祈りを捧げるルーシーらと合わせ、メンバー数人もこの場に……部位型の抑えに留まる様子。
騎士らと合わせ、近場には鉄帝、幻想の手練れ達やたこやきの姿も。
「ここは私達に任せて! 全力でやってきなさい」
「私の……ううんチアウェイに向かわない私達の分も、ぶん殴ってきて、です!」
そんな彼らとこの場に残るのはレイリーにLily、幸潮だ。
ゴリョウだけでなく、それまで近場で交戦していたメンバーがチアウェイとの交戦に向かって。
「さてと……やりますか……」
Lilyが並び立ったのに頷くレイリーは後方を見やって。
「幸潮、回復、頼りにしてるわよ」
こちらも、後は英雄らの決着を待つのみと同意を示す幸潮。
──歌え、レイリー。『描写強調』で輝かせる。
ここぞと幸潮はパンドラの加護をインクとして。
――回せ、回れ、『万年筆』。我が本質を此処に記せ。
Ne-World存在定義概念拾伍項『悪魔』、即ち『悪縮魔羅』。
肌にやや暗色が混じり、頭上に円環、背にオーラを発する幸潮の姿は皆がイクリプスと呼ぶそれだ。
「死にたい奴だけかかってこい、なのです!」
オオオオオォオオオオオォオ……!!
数で攻め来る部位型はなおもおぞましい叫びをあげて彼女達へと群がっていた。
●
部位型を指揮する虚偽の人体、進化の可能性を残す変容する獣を攻め崩すも、部位型はまだ奥から湧いて出ていたようで、友軍にも倒れる者が出始める。
全員を助けると告げるヨゾラも友軍の数が多すぎることもあって、助け出すことは難しいが、駆けつける聖騎士団やニコラ小隊が他友軍の癒しにも動いてくれている。
そうして、メンバー、友軍が踏ん張ってくれる間に、メンバーが次々にチアウェイの前に進み出て。
「そういえば、直接顔を合わせるのは初めてか? ――鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。多分これでさよならだな」
最初にエーレンが挨拶を交わすと、戦いの手を止めたチアウェイが駆けつけてきたイレギュラーズを見つめる。
「よぉチアウェイ、長い腐れ縁だったがようやく大詰めだ」
その終焉獣が学んだ戦術をここまで駆使してきたことを、ゴリョウは素直に大したもんだと賞賛すらする。
「暗躍よりそっち優先してたらこの戦況は逆だったかもしれねぇが……学び始めが一手遅かったな」
互いに手の内は把握済み。
だからこそ、ゴリョウもまたここで切り札、イクリプスを切る。
浸食は前期を超え、後期まで進行する。
内より発する炎が彼の纏う鎧の外にまで溢れて。
「さぁ、仕舞いにしようぜ!」
チアウェイとの幾度目かの戦い。
これが最後の決戦となるはずだ。
チアウェイとの戦いから少し離れ、友軍らが部位型と戦い続ける。
雑兵の扱いだが、敵は滅びのアークより生みだされし脅威。
空間浸食を使いこなすそれらとの交戦も長引き、自軍にも少しずつ被害が広がる。
Lilyは部位型の知識をフル稼働させ、それらの相手をする。
とはいえ、こちらの疲弊が大きくなってきた中で、相手せねばならない敵の数も増えてきていた。
魔術格闘の合わせ技で攻めたて、致命の剣を振り下ろし、刹那の破壊の一打で部位型を1体消し去る。
しかしながら、対処が間に合わず、Lilyは部位型からの攻撃を絶え間なく受け続け、崩れ落ちる。
とはいえ、Lilyはパンドラの加護を受けたまま。
倒れることを是とせず、彼女はなおも部位型に『執行兵器・薊』を打ち込む。
幻想、鉄帝勢も動けぬものが出始めていた。
スノウやアッシュが檄を飛ばすが、戦線離脱もやむない者も出ており、戦力は厳しくなる一方だ。
「あ、う……」
子供ながらに、数々の戦いを潜り抜けてきたニコラ小隊も苦しい。
小隊員も傷が増え、癒しに当たる者も増えてきた。
ニコラ本人もレイリーの援護を受けつつ抗戦を続けるが、激しく息ついて膝をついてしまう。
「私が倒れない限り、誰も死なせないわ!」
彼女達を護るようにレイリーは大楯を構える。
白亜の城塞は何人たりとも通さない。
その意気込みでレイリーは戦いに臨むが、群がる部位型は彼女の想定を超えていた。
混迷の手が2体で襲い掛かり、彼女の体を引き裂かんとしてくる。
さらに大きく口を開いた飽食の口がレイリーを喰らわんと噛みつく。
パンドラが砕ける音を聞いたレイリーだが、同時に彼女はその加護を使って。
――この先は誰も通さない。
天から降りた天使、天罰を下す制裁者となり果てたレイリー。
頑張れ、負けるな……。
いけ、奴らに我らの力を見せてやれ……!
友軍の応援の声を力に変えて、レイリーは。
「皆が応援してくれるから私は戦えるし、そんな皆を私は応援して護るんだ!」
「…………」
互いの癒しに当たっていたルーシーら天義聖騎士団らも、まだ倒れられぬと奮起して。
「ローレットに負けてはいられません……!」
彼らもイレギュラーズでこそないが、終焉に立ち向かう英雄の一人。
幸潮はなおも『描写編纂』で書き記すは、全員生存の、大団円。
此なる描写こそ、真だと、幸潮は確信する。
「美しく愛しきヒトと共に、物語を邪魔せし不埒者を堰き止めるんだ」
一度は膝をつきかけたレイリーだが、その身を奮い立たせる。
チアウェイを討つ仲間達の為に。
幸潮に戦場全体の生命線を託し、レイリーはニコラ達を中心に協力し、陣形を組んで孤立する者がいないよう集団で終焉獣を抑える。
そのチアウェイと戦うメンバーは最初に接敵した咲良にヨゾラ、そして駆けつけたゴリョウ、アクセル、沙耶、ヴェルーリア、エーレンの7人。
これまで幾度か戦闘経験のあるチアウェイだが、相手の敗走ばかりしている状況もあってか、今回は相当に力を高めていた。
正面からゴリョウが渾身の力で殴り掛かっていくが、チアウェイも簡単には崩れず、むしろ一層力を高めていたようだ。
繰り出される膂力の一撃は常識の外にある。
機動力を生かして一閃を浴びせていたエーレンだったが、思わぬチアウェイの一打を受けて意識が飛びかけた。
沙耶もまた態勢を立て直し、怪盗リンネとして予告状を送り付ける。
「終焉は受け入れられない。むしろ、君の野望の終焉を受け入れるべきなのは君の方だ!」
有利に戦えるゴリョウの元へとチアウェイを誘導せんと沙耶は敵のヘイトを買おうとする。
チアウェイにとって、向かい来るイレギュラーズは煩わしい相手でしかない。
黒い瘴気を発する相手は、巨大化させた足で踏みつけてくる。
かなり傷ついていた沙耶ではあったが、想像以上の力を発揮してくるチアウェイになすすべなく、パンドラの欠片を掴みとる。
仲間の傍で沙耶はしばしAURORAを輝かせ、再起の一撃を見舞うタイミングを待つ。
「負けはしないさ。負けられない。俺達がしくじれば混沌の民はどうなる」
終焉を及ぼす存在を混沌にのさばらせるわけにはいかない。
その想いで、エーレンもまた踏みとどまる。
チアウェイの強力な攻撃にさらされる仲間を救うべく、ヴェルーリアも希望を与えていく。
この場のメンバーは少数ではあるが、態勢を立て直す時間は稼いでくれるはずと、ヴェルーリアは一旦下がるよう促す。
それでも、一歩も退かぬメンバー達の姿に、チアウェイは疑問を抱く。
「なぜ、来たるべき終焉を受け入れぬ……」
滅びのアークより生まれしチアウェイに、向かい来るイレギュラーズが理解できない。
「私達特異運命座標(イレギュラーズ)は、滅びに抗うから私達(イレギュラーズ)なんだから!」
持ち直した咲良も仲間の攻める間隙を縫って、爆裂の一撃を叩き込む。
燃え上がるチアウェイの体。
敵はすぐに消火するが、少しでもできた隙をアクセルが逃さず、精神力の弾丸を撃ち込んで仲間を援護する。
「そんなに終わりたければ――自分達だけで勝手に終焉を迎えるがいい!」
こちらも態勢を立て直したエーレンが流星の如き速さでチアウェイへと切りかかり、煌めく一閃をその漆黒の体へと刻み込む。
突出は厳禁。相手はやすやすとこちらを潰してくる力量の持ち主だ。
この空間もあって、最大限力を発揮できるよう準備していたようだったが、度重なるイレギュラーズの攻撃がチアウェイを追い込む。
「貴様との因縁、とても長かったけど……これで終わりだ!」
敵の懐へと潜り込んだヨゾラが零距離からありったけの力を籠めた星空の極撃を叩き込んだ。
それでも、チアウェイは倒れない。
「終焉の到来は避けられぬというのに……!」
己こそが終焉、世界の意志と言わんばかりに、チアウェイはさらなる力を呼び起こす。
ここまで、そいつを押さえつけていたゴリョウが砕けぬ意思を抱いて殴り掛かる。
「終焉は受け入れねぇ! 在るのは先への道のみだ!」
仲間達の攻撃は数え切れぬほど受けているはずのチアウェイ。
その漆黒の体躯へ、ゴリョウは何者をも貫く一撃でその胸部を穿つ。
「……こ、こんナ、ハズハ……」
ありえないと首を振るチアウェイ。
だが、これが当然とばかりにその場のメンバーも、周囲で部位型との交戦を続ける仲間も、友軍もそいつを見て。
「……チアウェイ、ゆっくり眠りなよ」
「さよならチアウェイ……此処が貴方の終焉でしたね……」
ヨゾラ、Lilyの呼びかけを耳にしながら、チアウェイの体が薄らいでいく。
「次はこの混沌でただの人として生まれてきな、チアウェイ!」
ゴリョウが発した力強い一言を聞き届けた後、各地で暗躍を続けた終焉獣の指揮官は完全に消滅したのだった。
まだ、しばらくは部位型終焉獣との交戦は続く。
しかしながら、指揮官を失ったそれらはもはや纏まることは叶わず、友軍らによって滅していくのみ。
友軍の被害もゼロとはいかなかったが、イレギュラーズは力を振り絞り、彼らと協力してこの場の部位型を完全に叩くまで戦い抜くのである。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは悩みましたが、友軍を激励し、その盾となった貴方へ。
チアウェイを撃破した貴方にも称号を付与させていただきました。
終焉獣の指揮官との交戦も今回で決着です。
ご参加ありがとうございました!
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<終焉のクロニクル>のシナリオをお届けします。
ついに最終決戦です。幻想へと集まった協力者と共に、長らく各地で暗躍していたクルエラ、チアウェイの討伐を願います……!
●概要
幻想にあるワームホールから突入します。
影の領域の中の本拠地、イノリの居城内部にて、クルエラの指揮官チアウェイがイレギュラーズの来訪を待ちます。
異空間の如く広い空間で繰り広げられる総力戦です。
存分に戦うことのできる戦場を用意し、100人オーバーが交戦できる環境があります。
●敵:終焉獣
〇クルエラ:チアウェイ
指揮官型終焉獣。全長2mほどの黒い人型。
これまで出会った人の部位を象った終焉獣の内から幾つからの技を使う、指揮官に相応しき能力を持ちます。
これまで幾度か交戦をし、退けてもいますが、この戦いの為に部下の力を取り込むなど、パワーアップしているようです。
〇終焉獣:虚偽の人体×8体
全長2mほどの黒い人型。
チアウェイの下位互換ではあるのですが、指揮能力を持つことも分かっており、侮れません。
部位型の能力をそれぞれランダムに3つほど所持しています。
〇変容する獣×10体
人型をしていますが、大樹の姿をした大樹の怒りの能力を宿しており、腕を槍の如く突き出し、足を根の如く伸ばして絡める力を持ちます。
〇部位型終焉獣×?体
これまでの依頼で現れた人の部位型終焉獣が多数現れます。
いずれも黒い体躯で、下記能力とは別に空間浸食が可能な為、危険な相手です。
・絶望の瞳
全長2m。薄紫の皮に包まれた大きな瞳。浮遊して移動。
怪光線、睨みによる足止め。
・飽食の口
全長3m。噛みつき、歯ぎしりや怨嗟の声。
・拒絶の指
全長1~1.5m。盾役。
地面揺らし、叩きつけ、ひっかき。
・蹂躙の足
全長2.5m。足首から下のみ。左右は別個体、同能力、連携あり。
跳躍踏みつぶし、物品蹴り飛ばし。
・醜聞の耳
全長3m。左右は別個体、同能力、連携あり。
押し潰し、耳鳴り。
・苦悩の髪
全長5m。長髪が束なって浮遊。
体躯を叩きつけ、激しい風。
・傲慢の腕
全長3m超。左右は別個体、同能力、連携あり。
二の腕から手までが地面をホバリング。
殴りつけ、叩き潰し、握り潰し、エルボー。
・怠惰の胴体
全長5~6m。頭と四肢がぼやけ、地面をホバリング。動きは鈍い。
黒い瘴気(気力、エネルギー奪取、状態異常)。
・強欲の鼻
全長3mほど。
自重プレス、強風、荒波。
・激高の頭蓋
全長4mほど。頭蓋骨を模したような姿。
噛みつき、歯ぎしりや怨嗟の声、叩き潰し、奇怪な笑い。
・憤怒の筋肉
全長3m程度で人型。
膂力による強力な一撃。
・愉悦の顔面
全長4mほど。仮面のような形に人の顔面らしきもの。
気色悪い笑い、異言を紡ぎ。
・混迷の手
全長2m弱。左右は別個体、同能力、連携あり。
掌を叩きつけ、指弾き、ビンタ。
・傀儡の骸骨
全長2m。黒いスケルトン。
殴り掛かり、蹴りかかり、眼光、奇怪な笑い。
●NPC
関係者他、天義から救援が駆け付けてくれています。
〇関係者
・『灰雪の騎士』スノウ・ダイン・スロウス
・『白雷の貴人』アッシュ・クラウ・ラース
危機を察知して駆けつけてくれたアクセル・ソート・エクシル(p3p000649)さんの関係者。
それぞれ、幻想、鉄帝から友人や手練れの猛者を引き連れて参戦してくれます。
(関係者含め幻想35人、鉄帝15人と幻想多め。鉄帝は別の戦場がある為、アッシュさんが少数を引きつれ参戦してくれています)
〇天義勢力
以下、天義からの救援。
いずれも天義関連、アドラステイア関連で登場した者達です。
・天義聖騎士団……50人、いずれも人間種。
聖騎士団部隊長ルーシーを始めとした騎士達。
通常は白銀の鎧を纏っての参戦です。
ルーシーは騎士剣を使い、小隊員は片手剣、片手槍を中心に武装し、聖なる力を纏わせた近距離戦、回復支援を中心とした神聖術などを使ったサポートなどができます。
・ニコラ小隊×20人
かつてアドラステイアで過ごした子供達。
困っている人々の為にと影の集団と戦っています。
騎士団の手伝いをしている為、白銀の鎧を纏って長剣、長槍など比較的軽い武器を扱います。
〇たこやき(猫)
「にゃふん」
セイケトル在住のボス猫。全長1m。灰色の毛並みをした赤い瞳のメインクーン。
ふらっとやってきたこの猫は、我も憂さ晴らしさせろと言わんばかりに毒ひっかきに猫キック。不気味な鳴き声と応戦します。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
それでは、よろしくお願いします。
●『パンドラ』の加護
このフィールドでは『イクリプス全身』の姿にキャラクターが変化することが可能です。
影の領域内部に存在するだけでPC当人の『パンドラ』は消費されていきますが、敵に対抗するための非常に強力な力を得ることが可能です。
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