PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

『ツァディク』の奔流

 ――時が合流する。

 ティーカップに注いだミルクティを僅かにだけ口に含んでからカロル・ルゥーロルゥー (p3n000336)は視線を泳がせる。
 その指先の僅かな震えが伝わったようにティーカップが揺らいだ様子を夢見 ルル家(p3p000016)は見逃さなかった。
「熱かった?」
「こういう時ジョークを混ぜててくれるのだもの、私ってね案外おまえのことが好きよ、大名」
「キャロちゃんこそ、ずっと大名って呼んでるじゃない」
「……おまえのこと、名前で呼んでしまったら本当におまえの命を奪った気がするでしょう」
 季節感など何処にも感じられない朗らかな陽気と咲き綻んだ薔薇の海。庭園のガゼボでティータイムを過ごすのも二人にとっては日常になりつつあった。
 片や天義建国の折りに、民を先導した罪に問われて処刑した『元』聖女の記憶を有する聖遺物『頌歌の冠』より顕現した遂行者。
 片や科学の発達した異世界出身よりやってきた旅人であり、豊穣郷カムイグラの大名家天香の現当主の傍付きであった特異運命座標。
 共に相容れぬ存在だとしりながらも今は友人関係が構築されている――されてしまっている。
「……良いんだよ、キャロちゃん。私のこと、何処へだって連れていっても」
「でも」
「良いんだよ。覚悟して、決意して、私はキャロちゃんの幸せをただ、祈って願って此処に来たんだから」
 おまえの幸せなんて、ここにはどこにもないでしょう――?
 泥船に乗り込んで、死の際まで友人の傍に居たいだなんておまえにとっての緩やかな自殺じゃない。
 カロルは目を伏せてから「時が流れ込んだら、おまえに一つだけ頼みたいことがあるの。あのね――」

「お兄様」
 駆け寄る星穹(p3p008330)の体をセナ・アリアライトは勢い良く抱き締めた。
「セラ、セラ……」
「お、お兄様……?」
 再会して数ヶ月。空白を埋めるように互いで手探りであったというのに。手篤い歓待と肩口の濡れた感覚に星穹はぴたりと動きを止めた。
 両親は反転し、兄は魔種より己を護る為に尽力した。記憶を失っても妹の面影を探し天義の騎士として立ってきたその人は脆く弱い。
「お兄様……大丈夫、せらは……セラスチュームは此処に居ります」
 その背中を撫でる星穹は兄の酷い取り乱し方で『時』を把握していた。それはこの場の誰もが同じであっただろう。
「……そろそろ、か」
 エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)の問い掛けに赤く腫らした目であれどイレギュラーズに向き合う事を決めたセナが頷いた。
「……皆が『聖竜』の心臓の汚れを払っている最中に『神託の乙女』より砂時計を賜った。
 この砂は決まった方向にしか落ちず、本来の定められた時への合流を果たすときに全てが落ちきるのだ、と」
「それは……俺達が庭園から出てくる前のことか」
「ああ。だが、これは来るべき時が来るまでは他言は無用であると。その時が来たならば知らせを送るとも言われていた」
 故に、その『時』が近付いた断崖になってからセナはベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)達を集めたのだ。
 セナが知らない空白の時間。切り離された庭園での『選択』がある。
 刻の流れさえもあやふやで、濁流のように過ぎ去るティータイムを俯瞰し眺めるように存在した選択の刻は切り離されて揺蕩っているらしい。
『神託の乙女』――カロル曰くは「猶予」であり「与えられた穏やかな時」である。
 いつかはその時は合流する。カロルの傍に居る聖竜が選択を受け入れ、その結末がイレギュラーズに与えられるように。
「他に乙女は何か?」
「……いいや」
 そうか、とマルク・シリング(p3p001309)は呟いた。『選択』は庭園で9人のイレギュラーズによって与えられたのだ。
「選んだのだもの。そして、『今の私はまだ知らないけれど』、『その時の私は選択の試練を受けた』のだから。
 ね、少しだけ手を繋いで居ましょうよ。ふふ、願掛けよ。天義の小さな子供がやるものなのだけれど」
 アーリア・スピリッツ(p3p004400)はそっとマルクとタイム(p3p007854)の手を握り締めた。タイムがおずおずとリュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)の手を握れば、彼女は何かを思い出したように「あ!」と声を上げる。
「アドラステイアの子ども達がやっていたのをみたことある!」
「ああ……そういえば、あの子達もそんなことをしていたでしょうか」
 小金井・正純(p3p008000)が思い出すように頷けば、アーリアは「そうなの、皆でしましょう」と微笑んだ。
 聖女の与えた砂時計。その砂が落ちきれば『選択の時が合流する』――つまり、聖核の穢れが如何様になったかが分かるのだ。マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は緊張したようにごくりと唾を飲み込んだ。
「……その作法は?」
「ええとね、手を繋いで輪になるわ。中央に神様が降りてくる。……なんてね、そう思って居て頂戴ね」
 言の葉を一つだけ添える。災いが遠離りますように、我らの父よ、救いの光よ、あたたかく照らしてくださいますように。
 たったのそれだけの事。それでも皆で手を繋いで居た。そうしているのが正解のように思えたからだ。
 砂が落ちていく。
 重力に引付けられるように、大地に打ち付けられるように、砂時計の中は澱みも無くさあさあと降る霧雨の如き静けさで。

 ――『選択の刻よ』

 映像が勢い良く頭の中に流れ込んでいく。その時が降り注ぐ、天を裂いて光に包み込むように。地を揺るがす恐れもなければ、悍ましき気配もない。
 ただ温かな空間だとマルクは思った。繋いでいた手に力がこもる。ああ、ああ、怖れてはならない。リュコスの唇が擦れ合わされる。
「ルル……」
 救済など、目にも見えず定義もされていないけれど。
 それでもと我武者羅で追い求めたあの『刻』の果てが―――

合流したか

 その声に、のろのろとセナが顔を上げた。一人分、空白になってしまった輪にカロルが立っている。
「神託の乙女……」
 無言の儘、『彼女と思わしき者』が差し出したのは粉々になった水晶だった。
 8つ。それは浄く強い力を帯びている『聖核』か。
「どうぞ、貰って頂戴。使い方は、また―――」
 解けた光と共に、『一人分の空席』に誰も残らなかった。

 ※イレギュラーズの『選択の刻』が合流したようです―――
 ※選択したイレギュラーズに『聖核の欠片』が手渡されました。


 双竜宝冠事件が一定の結末を迎えたようです!
 クリスマスピンナップ2023の募集が始まりました!


 ※プーレルジールで合流したマナセとアイオンの前に魔王イルドゼギアが現れました――!
 双竜宝冠事件が劇的に進展しています!


 ※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM