PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

古き諸侯等の庭で

 イレギュラーズが、プーレルジールと呼ばれる異世界へ足を踏み入れてから、しばしの時が過ぎた。
 ここは古代の幻想王国レガド・イルシオン一帯に酷似している。
 この時代について歴史書では、諸部族が群雄割拠する状態にあったという。
 しのぎを削る多くの諍いの中で、頭角を現していったのがクラウディウス氏族である。
 対立するのはやはり大勢力を誇ったイミル氏族。
 血で血を洗う戦禍と悲劇の果てに、この一帯は勇者アイオンによって見事に統一されたのだ。
 だがここプーレルジールではどうだろうか。

「では十人長。その『ギャラル・ド・プリエの客人達』、イレギュラーズといったか」
 イミル氏族の長、フレイス・ミーミルの前に、マクシムスはひざまずいた。
「ハっ! 必ずや、魔王イルドゼギア打倒の鍵になると愚考しまする次第」
 ここは後の時代にアルテア・フォートと呼ばれる事になる古城跡だ。
 この時代には数ある城砦の一つであり、そこに諸部族の戦士達が集っていた。
 そして中央の広場に立つのは、いずれも有力氏族の長達である。
「ならば我等も結束を高め、協調しようではないか」
「賛成する。これ以上魔族の好きにさせてはおけん。彼奴等は終焉をもたらす者だ。なあルシウス」
 諸部族の長達は、一様に賛同の意思を示している。
 そこに険悪な様子は一欠片もない。
 共通の課題に対して、真摯に手を取り合っているのだ。
「しからば我等クラウディウスも、旗下の軍団(レギオン)へ至急通達しようぞ」
 ルシウスと呼ばれた青年が、力強く宣言した。
 無辜なる混沌の史実では卑劣漢とされた彼ではあるが、ここプーレルジールにおいては威風堂々としたまっとうな指導者にしか見えない。

 ――おそらく歴史は、大きく変わっている
 フレイスとルシウスの間には、時折緊張のようなものこそ走れど、敵対しているほどの様子はない。
 おそらく長年の抗争こそあれど、現在はすでに講和し、それどころか手を結んでいるのだ。
 史実では講和は失敗した上に、勇者アイオンも絡む話だったはずだが。
「とにかく。そんなことが、プーレルジールではあったみたい」
 ローレットのテーブルに肘をついて述べたのは、アルテナ・フォルテ(p3n000007)だった。
「じゃあ氏族間の争いは終結しているか、そこに向かっているってことなのかな」
「たぶん、そうなんだとおもう」
 勇者アイオンの手を経ずに、だ。
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)に、アルテナが答えた。
「そもそも魔王がいるのが変じゃない?」
「確かにこの時代じゃ、アイオンに倒されてるはずだよな」
 アルテナはこめかみに指を添え、サンディ・カルタ(p3p000438)も唸る。
「歴史の差異も気になる所です。たしかこの時代のクラウディウスの長はルシウスだったかと
 そう言ったのはリースリット・エウリア・ファーレル(p3p001984)だった。
 そしてその父にあたる人物は、ユリウスという名だったことが幻想の文献に残されている。さらには、ユリウスはルシウスによって殺害されているとも。
「それがね。ユリウス・マクシミリアヌス・クラウディウスという人物がどこにも見つからないの」
 どうもプーレルジールでは、ルシウスの父は、ユリウスではないらしい。
 歴史書とて万全ではないが、おそらくこの場合は人物が『居ない場合がある』ということだ。
「アルテア・フォートとは、たしか……」
 ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)がローレットのイレギュラーズになりたての頃、砂蠍の軍勢イーグルハートと戦った古城跡だ。
「私の偽名アルテナ・フォルテの元ネタなんだけど」
「偽名でしたのね」
「うん。うちって没落貴族だったから、色々面倒で」
 近くで神妙な表情をしていたシフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は、アルテナの名がリーラ・クラウディア・ディストラーディ。つまりクラウディウスの一門であることを知っている。
「そういえば地形も変わっていたんだよね」
「異界から受ける影響の差異と見えるか」
 セララ(p3p000273)に、恋屍・愛無(p3p007296)が続ける。
落ちているはずの浮遊島があったり、未知の種族が居たりね」
 ジェック・アーロン(p3p004755)もぽつりとこぼす。  そしてブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)が、氷狼の子を撫でた。
 プーレルジールは、もしかしたらブランシュ達のような秘宝種の故郷かもしれず――

「もー、このすっとこどっこい! わたくしまどろっこしくなって仕方在りませんわ!」
 突然両手をばたつかせたのは、ディアナ・K・リリエンルージュ (p3n000238)だった。
「一体全体、何がどうなって、何の話をしておりますの!?」
「それではプリンセス。私が錯綜する情報をまとめましょう」
 新田 寛治(p3p005073)が切り出した。

 一つ。プーレルジールは、この世界『無辜なる混沌』の過去のように見える。
 二つ。だが実際には地形や歴史などに、不思議な差異が散見される。
 三つ。最も大きな差は『魔王イルドゼギアの存命』である。
 四つ。そして『勇者アイオン』が、勇者ではなく『ただの冒険者』であること。

 ならばおそらくイルドゼギアとアイオンの存在が、なんらかの鍵になるのだろう。
 そして気になるのは――
「――終焉」
 どこかで耳にした単語を呟いて、メイ(p3p010703)は視線をあげた。

 ※プーレルジールにおいて、『終焉』の気配が蠢いているようです――
 ※その『終焉』へ抵抗する動きがあるようです。
 ※プーレルジールと無辜なる混沌の差異が、徐々に明らかになってきているようです。
 ハロウィン2023の受付が開始しました!

これまでのシビュラの託宣(天義編)プーレルジール(境界編)

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM