PandoraPartyProject

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福音よ、福音よ

 罪びとよ、あなた達は幸福である。
 あなた達は世に落ちて穢れうち、
 本当に、主の愛を知ることができるのだから。
       ――ネメシスの名もなき聖職者。

 戦に落ちて日が落ちる。
 空を覆いつくしていた雷はない。
 水は清さを取り戻し、
 焔は地を焼くことはない。
 正しきは執行されなかった。
 厳密に言えば、それは正しき人たちによって、妨げられた、といえる。

「状況を」
 そういったのは、天義の聖騎士――セレスタン・オリオールである。その表情には暗い影を落とし、たまらぬほどの疲労の色をにじませていた。
 聖都、フォン・ルーベルグ大聖堂。臨時の危機対応事務所と化したそこでは、多くの騎士たち、文官たち、聖職者たち、そしてローレット・イレギュラーズたちの足音と声が響いている。
「状況を、確認したい。ひとまず、危機は去ったのか、という事だ」
「各地より報告を伺いますれば」
 聖騎士の一人が言う。
「まずハウエル・シティ――グランヴィル小隊の窮地との連絡のあった地ですが」
「僭越だけど、私から」
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が手を上げた。
「まず、グランヴィル小隊生存者の確認は完了したよ。
 それから、戦死者も。
 ついでみたいに言って申し訳ないけど、敵ワールドイーターの殲滅も同時に成功」
「どうも、旅人(ウォーカー)を意図的に狙っているものがいるみたいだ」
 マルク・シリング(p3p001309)が言葉をつづけた。
「詳細は不明だけれど……敵の意図を紐解く一因になるかもしれない」
ヴェルフィオーラ領の方は?」
 騎士の一人がそう尋ねるのへ、答えたのは紅花 牡丹(p3p010983)だ。
「ひとまず騒動は鎮圧した。が、グラキエスの影響力はだいぶデカい」
 嘆息するように言う。
「まるで、雑草みたいだ。気づけばあちこちに根付いて、しかもちょっとやそっとじゃ抜けない……。
 今回の件は何とかなったが、根本的な対策をとらないとまずいだろう。
 星灯聖典か。ふん、あんなきなくせえもん、良く信じる気になるもんだ」
「それも仕方ないかもしれない」
 ベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が言葉を続ける。
「我々が相対した遂行者――マスティマ。彼は『聖遺物・ロンギヌス』そのものだった」
「ロンギヌスって、槍か?」
 牡丹の言葉に、ベネディクトが頷く。
「聖遺物が、滅びのアークに汚染を?」
 マルクが尋ねるのへ、再度ベネディクトが頷いた。
「間違いない。あの力は……。
 汚染されたとはいえ、聖遺物がその力の源だというのならば……。
 いや、聖遺物そのものが力だというのならば、いろいろなものにも納得がいくというものだ。
 それに、異常な遂行者という事であれば、『サマエル』も同等と聞く」
 ベネディクトの言葉に、頷いたのはサクラ(p3p005004)だ。
「間違いない。『サマエル』は、彼――セレスタン・オリオール卿だった。
 もちろん、本人ではないけどね。私や、スティアちゃんと同様に――なんていえば適切なのかな。
 まだ情報が確約してないから――『もうひとりの』って言うけれど。
 とにかく、『もうひとりのセレスタン・オリオール』。それが、『サマエル』の正体。
 ……彼らがどうやって誕生したのかは、わからないのだけれど」
「なるほど……こちらに現れた『リスティア』も、似たような存在なのか?」
 唸ったものは、仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)である。
「聖女ルル……カロル、か。彼女の撃退には成功したが。
 だが、なるほど。リスティア……『セレスタン』もそうだが、どうにもそういった存在がいるらしい。
 原理は不明だが、しかし頭を抱えることはないだろう」
 ふ、と汰磨羈は笑った。
「言い方を変えれば、徐々に奴らの化けの皮がはがれてきた、ともいえる。
 本質が、見えてきたわけだ。
 聖遺物であったり、IFのそれであったり……これは、着実な一歩といえるぞ」
「それに、あのみょうちきりんな戦車どもも気になるでありますね」
 口元に手をやり、悩む素振りでエッダ・フロールリジ(p3p006270)が言う。
綜結教会、でありましたか。どうにも一枚噛んでいる――というよりも、遂行者と直接やり取りをしている様子」
「いずれにしても」
 ぱん、と、セレスタンは手を叩いて注目を集めて見せた。それから、すまない、と苦しげに笑った。
「……確かなのは、此度の災いは、何とか除かれたという事だ……。
 そこに関しては、一聖騎士の身、なれど、天義の一員として、ローレット・イレギュラーズの皆に感謝を」
 そういって、深々と頭を下げる。
「……考えることは山ほどあるが……どうか、今はひとまず、休息を。
 すぐに、新たな事件の対応に追われることにはなると思う」
 セレスタンの言葉に、皆はうなづいた。

 預言は下され、しかし叶わず……。
 されど、世界はぐるりと、回り続ける――。

 ※《アンゲリオンの跫音》事件が、ひとまずの決着を迎えました。

これまでのシビュラの託宣(天義編)プーレルジール(境界編)

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