PandoraPartyProject
bye-bye
空が憤怒に染まったみたいだった。
数え切れない魔方陣が空を埋め、次々に召喚されたグロース師団の天衝種たちが大地へと降り立つ。
その中央には、自らと古代兵器を融合させたグロース・フォン・マントイフェル将軍が兵器の四脚によって立ち上がる。
次々に打ち出される砲弾は空に破壊的な弧を描き、各派閥の部隊に爆発を起こした。撤退を叫ぶ声があちこちにあがる。
グロースは、その有様を小さく笑って見つめていた。
「これまでの暴力も、破壊も。悪意はなかった。
強者が生き残るための世界を、ただ実行したにすぎない。
だが今から貴様等イレギュラーズを潰すことに関しては……
悪いが、楽しませて貰う」
兵力さは圧倒的。
一個師団規模に対して、しかしこちらの兵数はわずかだ。
いや。
わずかだったというべきだ。
『皆さん、聞こえますか』
アミナの声が、ファミリアーを通じてテレパスされる。
連絡を受けた革命派の僧兵の一人が、頭から血を流しながらも起き上がる。
「難民部隊が到着したのか」
グロース師団の施設を襲い武器を手に入れ、志願した大人たちによって構成された革命派の難民部隊。通称人民軍。
彼らが駆けつけたのだろうが……しかし、今眼前に広がる一個師団規模の兵力を前にはまだ足りない。
「すまないが、大隊規模が加わった程度ではこの戦況は……」
『いいえ』
穏やかに。
そして、微笑むように、アミナは言った。
「難民部隊……『一個師団』規模が、到着しました」
大地を埋めたのではと思えるほどの軍勢が進む。
革命派の難民たちや、その蜂起を聞いて加わった新たな難民たち。そんな彼らが一丸となって、師団規模の軍勢ができあがったのである。
突き進む。恐怖はない。
怖れを知らないからではない。
失うことを恐れないからでもない。
「死ぬのは怖いです。沢山失って、沢山奪われてきましたから。これ以上失うなんて考えたくもない。怖いのですよ、とても。今だって震えてる」
進む足は、止まらない。
アミナは――そう、『ただのアミナ』は、なお進む。
「けれど、決めたのです。
弱くても。怖くても。たとえ私がひとりぼっちだったとしても」
手にしたのは、強大な力じゃない。
手をとったのは、魅惑的な魔法じゃない。
薄汚れた小銃を一丁だけ持って、彼女は進む。
ごめんなさい、『おばあちゃん』……私は、あなたと一緒に行かなかった。頑張らなくていいと言ってくれて、嬉しかったけれど。
ううん。嬉しかったから。
バイバイ、おばあちゃん。
もう理想を追わない。
足跡のない道を進みます。
たとえ、今よりもっとひとりぼっちになったとしても。
「私達は、戦います!」
ジェームス・ハンソンは農夫だった。
朝起きて、畑を耕して、昼飯を食ってまた耕して、夜は子供と遊んで眠る日々だった。
胸ポケットから、僅かに焦げ付いた白黒写真を取り出す。映っている自分のムスッとした顔と、その腕に抱きついて微笑む妻と、二人の間に立って笑う息子。
妻と息子の顔をそっと指で撫でてから、ジェームスは微笑んだ。
「お前たちの所に行くのは、もう少し先になりそうだ。今は……生きて、戦いたい」
そして進むのだ。怖くても、寂しくても、ジェームスは戦う。
自分が戦災孤児になるなんて、フランクリン・チェンバーズは想いもしなかった。
今日みたいな不機嫌な水曜日には、お菓子が食べられないことをぼやきながらママがニシンの缶詰をあけるのを眺めていたはずだった。木組みのパスルをいじりながら、明日も雪が降るのだろうかと想像するだけの日だったはずだ。
そんな雨漏りのする家はもうない。ぼやく自分を叱ってくれた母はもういない。
フランクリンはひとりぼっちだ。けれど、今は違うと分かっていた。
共に進む仲間がいる。共に戦う仲間が居る。
もう、フランクリンはひとりぼっちじゃなくなった。
「ママ……帰ったら、お墓を建てるよ」
憤怒の力で立ち上がるパワードスーツたちの群れを前に、ヘルベルト・メルツは深呼吸をした。
鉱山に入って一日中働くときは、外の空気を吸っておくのが彼のルーティーンだったからだ。
吸い込んだ空気は妙にけむたくて、どこか灰の味がした。
けれどこれまで吸った空気の中で一番うまい気さえする。
「なあ将軍。見下してたやつらが笑いながら行進するさまはどうだい? 俺たちが笑うのを止めてみろよ」
村で一番強い女と評判のヴィクトリア・ヴォルフに右腕はない。残った左腕でライフルを担ぎ、頭巾を被って背を丸めて歩くのだ。
失った栄光と腕は、実はもう惜しくない。
自分の掲げた腕をぽうっと眺めた村一番の美男子のことも、もうどうでもいい。
全部失ったから? いいや、そんなんじゃない。
「アタシよりちっちゃい子がさ、戦うっていうんだ。なんにも持ってないくせに。だったら、アタシも黙っちゃいられないよ」
エミリー・ハフマンの恋は戦火に消えた。十数年連れ添った幼なじみに『好き』の一言もいえぬまま彼は炎の中に残された。自分をかばって、自分だけを逃がして。
何度も同じ場所に行こうとした。今からでもあの炎に飛び込めば、伝えたい気持ちを届けられるかもって。
けれど、もういいんだ。
バイバイ、フランツ。あなたにフラれたってことにしてあげる。
「次の恋をするにも、戦って、生き残らなくっちゃね」
誰しも普通だ。普通の日々と、普通の暮らしがあった。
そんな『普通』を守るために、彼らは銃を手に取った。
「グロースへの道は、私達が切り開きます! この戦いを、終わらせてください!」
アミナは笑顔で、革命の狼煙を見上げた。
※最後の切り札『人民軍』が発動しました。グロース将軍との戦いは最終フェーズへと突入します!
※『フローズヴィトニル』の対応について魔種ブリギットから取引が齎されました。
※リッテラム攻略戦が進展しました。グラーフ・アイゼンブルートが参戦しました!
※イレギュラーズの手に入れている切り札が大いなる力を纏っています!
※スチールグラード帝都決戦が始まりました!!
※リミテッドクエスト『帝都決戦:Battle of Stahl Grad』が始まりました!!
※領地RAIDイベント『アグニの息吹』が始まりました!!
※帝政派、ザーバ派は連合軍を結成している為、勢力アイテムが『帝国軍徽章』へと変更されました!
※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!
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