PandoraPartyProject

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『お嬢様』

 親は無くとも子は育つとは言うが、この事例は全く適当だとそう思う――
 リーゼロッテ・アーベントロートがこのような状況に置かれる等とは神も予想しなかったに違いない。
 それは『政治的に追い込まれる事』もそうだが、それ以上に『誰かが本気で彼女を心配して救援しようとする等という状況』は尚更である。
 所変われば品変わる――しかし、この状況の落差はあんまりと言えばあんまりだった。
「そんな物好きが居るとするなら、精々が幼馴染(クリスチアン)君位だと思っていたのですケド。
 全く――禍福は糾える縄の如し、だ。『彼女』については、僕が一番詳しい心算で居たのですがネ」
『アーベントロートの家令たるパウル』はいよいよ騒がしさを増した状況に小さく肩を竦めていた。
 ヨアヒム・フォン・アーベントロートの登壇から生じた幻想の政変は一つの区切りを迎えようとしている。
 現在のアーベントロート主流派――即ちヨアヒム一党に捕縛されたリーゼロッテは間もなく処刑される事が伝えられていた。代行不適格の烙印を押されたとはいえ、実の娘に対しての処断としては随分苛烈な話だが、そのショッキングなニュースは市井を騒がせながらも既に既定路線として伝わっている。
 何せアーベントロートは幻想きっての武闘派である。彼等がそうすると取り仕切って横槍を入れられるような勢力は幻想には無い。
 或いはフィッツバルディ辺りならば不可能では無いのだろうが、『現場を取り仕切る長男が表舞台から退場したのは最悪の偶然だ』。
「……故に、まぁ『お嬢様』は処刑されるのでしょうネ。普通なら」
 パウルは然して面白くもなさそうにそう言った。
 掴み所の無い男は何時だって不気味に胡乱である。
 自分でそのように言いながら、自分の言葉を信用していないように見受けられた。
 それもその筈、『彼は市井の民がそうと知る以上の情報を持っている』。
「不倶戴天のサリューの助けに入る位だ。『彼等』はきっと黙っていないでしょうからネ。
 それが組織としてのローレットなのか、個人としてのイレギュラーズなのかは存じかねますケド」
 暫く前にサリューの危機をローレットに伝えたのはパウル自身である。
『あの時点ではローレットの動き方を見定める程度の話だったが、絶望的な状況に彼等が下した決断は覚悟のあるものだった』。
 そして何より、この間の状況は決定的だった。
 罠と理解しつつ、活路を求めて『お嬢様』を助けに行く等、確信的な『信頼』を寄せるに十分過ぎる献身的行動だったではないか――
(まぁ、ですカラ? 彼等には期待せざるを得ない訳だ――)
 全身を浸す毒の味わいを誰よりも知っている。
 生きながらにして腐り落ちる絶望を理解している。
『望み通りに』誰かの期待する残酷なショウはつつがなく遂行される事は無いだろう。
 そんなものは画竜点睛を欠く。そんな通りに終わる位ならばパウルは『お嬢様』は自身が救ってしまった方がマシだとさえ思う。
 御馳走を広げたテーブルを引っ繰り返されるのは御免だが、引っ繰り返さんとする連中は好ましい。
 準備万端で手ぐすねを引く『ヨアヒム』は全くそれにばかり期待しているのだ。間違いなく。
「さァて、どうなる事やら……」
 長い時間を経た収穫の時は間もなくである。
 悲劇も喜劇も――全ては退屈凌ぎなら。
 ヨアヒムはどんな結末にもきっと高笑いばかりを上げるのだろう――

※リーゼロッテ・アーベントロートの処刑の日が近付いています……



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