PandoraPartyProject
ホコロビ
「……正気か!?」
アベルト・フィッツバルディは自身にもたらされた情報に思わず目を見開いていた。
薔薇十字政変を父に代わり監視する彼は十分な注意を払ってアーベントロートの動向に気を配っていた。
メフ・メフィートにおける彼は父の名代であり、父が完璧な仕事を求めているのは明白だったから、水をも漏らさぬ覚悟で、だ。
「……リーゼロッテ・アーベントロートの処刑だと!?」
「はい。情報は間違いないようです。
実施は間もなくとの事ですが……まだ詳細は不明です」
密偵の言葉にアベルトは爪を噛んだ。
血族意識の強いフィッツバルディにとって青天の霹靂のような話は強い衝撃を帯びている。
古今東西、幻想の歴史を紐解いても平時においてこれだけ苛烈な話になる事は滅多にない。
フィッツバルディやアーベントロートが『手討ち』にした事例こそあれど、三大貴族の一角を成すアーベントロートが内紛で跡継ぎを処刑する等とは……
これは同様に跡継ぎ(の一人)であると自認するアベルトにとってもぞっとする話に違いなかった。
(……いや、小娘の生死は大きな問題ではない。もっと重要なのは……)
公開処刑とやらが幻想に――ひいてはフィッツバルディにどんな影響をもたらすか、の方である。
アーベントロートは政敵だが、仲間割れを歓迎して眺めていられるかどうかは予断を許すまい。
『父の名代である自身はフィッツバルディの利益を最大化するように動く事が求められているのだ』。
内紛の結末から生じる大混乱が自家に悪影響を齎す可能性があるとするならば、それを看過する事はアベルトの痛手になる。
『それは他の兄弟に付け込まれる隙になるのだから、アベルトにとっては最大の問題である』。
……敬愛する父の後を継ぐ事は彼にとって何よりも優先される重大事。
今回の大仕事を請け負った以上は、必ず得点を挙げる必要があるのだ。
「如何なさいますか、アベルト様」
「……様子を見るが、総ゆる状況に対しての備えは必要不可欠だ」
「と、申しますと……」
「あの小娘は野良犬(ローレット)連中とも親しいと聞く。
例えば、連中が暴発したとして……形式上、完全に小娘についた場合、どうなると思う」
「……レイガルテ様は良い顔をなされないでしょうね」
「『アーベントロートの内紛自体はどうでも良いが、ローレットがついた上で小娘が勝つのは最悪だ』。
……父のオーダーが『良きに計らえ』である以上、着地点を考える事は必須になる。
最悪の場合、我々が介入して話を仕切り直す事も――」
やや早口で呟いたアベルトに密偵は頷いたように見えた。
しかし――
「――!?」
――アベルトがその『間違い』に気付いたのは次の瞬間の出来事だった。
「……な……!?」
鮮血を噴いた彼の首が絨毯の上にごろんと転がり落ちていた。
密偵は頷いたのではない。頷いたように見えたのは支えを失い、ずるりと滑っただけに過ぎない――
「何者だ……!?」
腰の剣に手を掛けたアベルトの顔が恐怖の色に引き攣った。
――メフ・メフィートは伏魔殿。
中でも今回相手にする『ヨアヒム』は最悪だ。
ゆめ、忘れるな。アベルトよ――
父の言葉が脳裏に蘇り、アベルトの右胸を熱い衝撃が貫いた。
(ばかな――この、私が――)
事これに到り、彼は自身が今何処に居るのかを理解せざるを得なかった。
それは少し――いや、大分遅い『気付き』に違いなかったのだけれども。
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