PandoraPartyProject

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インス島攻略作戦・開始

 無数の艦船が、今、ダガヌ海域へと向けて解き放たれた。
 人の欲望を叶えると甘言を吐き、破滅へと導く悪神、ダガン=ダガヌ。彼の悪神を討伐するための大規模作戦が、ローレット・シレンツィオ・竜宮の協力の下、今まさに展開されんとしていた。
「――インス島を捉えたか」
 シレンツィオ提督、エルネスト・アトラクトスが、その乗船上で静かに呟いた。
「ああ、いつでも攻撃が可能だ、総督殿」
 ファクル・シャルラハがそう言うのへ、エルネストは頷いた。
「ああ……。
 これで、終わりか。そして人は、南洋の楽園で欲望を貪り続けるのかもしれんな……」
「どうした? センチメンタルな気分に浸るには、まだ早いぞ」
 ファクルは言う。エルネストが苦笑した。
「いや……少しばかり、ちらついて、な。欲望、か。或いは……シレンツィオもまた、欲望によって生まれた都市なのかもしれん。
 より良い暮らしを。より良い思いを……それは、ああ、確かに。装飾するまでもなく、欲望だろうさ」
「だが、人はそういう思いを抱かずにはいられないだろう」
 ゼニガタ・D・デルモンテがそういう。
「結局は、どう付き合うか、だ。ひとまずそれで、その考えを引っ込めろ。戦場では、いらんことを考えた奴から死ぬぞ」
「は――そうだな。全く、ここ最近は悩ましい事ばかりだ。
 なにせ、竜宮がああいう風土だろう? には、「お父様、仕事にかこつけて遊びに行ってないよね?」と疑わしい目をされたもんだ」
「いける暇など全くなかったな! ま、それ以前に、ああいう場所は、お互い柄でもないが。
 子供を持つと、子供からの目が大変だな、皆」
 ファクルが笑う。
「ふっ……では、ここからは、かっこいいお父さんを見せてやれ、エルネスト提督」
 ゼニガタがそういうのへ、エルネストは頷いた。
「総員、攻撃準備! これより――」
 エルネストがそう宣言しかけた刹那、その声をを遮る様に、伝令係が悲鳴を上げた。
「た、大変です! 竜宮より緊急連絡! 竜宮全域が、深怪魔の攻撃を受けた模様!」
「なんだと!?」
 ファクルが叫んだ。
「被害は!?」
「現在は残存部隊が防衛を行っているようですが、このままでは崩壊は時間の問題かと……」
「どうする、総督殿」
 ゼニガタが言った。
「俺としては、ローレット部隊を、三つに分けることを提案するが」
「三つ……現在、ローレット・チームはインス攻略、天浮の里からの依頼で、2部隊に分かれている……ここから、さらに竜宮へ増援を送るという訳か」
「彼らには三正面作戦を強いることになる。負担は大きいが、すべての事態をひっくり返せるとしたら、彼らしかいないか……」
 ファクルが頷いた。
「私もそれを提案しよう。ローレットへの通達は私が行う。エルネスト、貴殿はこのまま指揮をとってくれ」
「すまん、頼む、ファクル」
 エルネストがそういうのへ、ファクルは頷いた。ファクル、ゼニガタは、それぞれの持ち場に戻っていくのを見ながら、エルネストは嘆息した。
「……妙だ。此方の動きに呼応するように、敵が動き出している。
 ……まるで、内部情報が漏れているかのように……」
 そう、呟く。敵の動きは、まるでそうとしか思えぬほどに、此方に見事に対応してみせている。そして、隙をついての竜宮強襲。これは偶然では片づけられない……!
「だが、ここでインス島攻略を停止するわけにはいかない。後がないのはこちらも同じだ……頼むぞ、ローレット・イレギュラーズ……!」
 エルネストが呟き、息を吸い込んだ。
「インス島攻略作戦は続行! 敵も必死のようだ。ここで息の根を止めてやれ!」
 号令の下、シレンツィオにて一大作戦の幕開けを告げる喇叭が、高らかと鳴り響いていた――。

 シレンツィオにて、大規模作戦が発令されました!
 大量の依頼が舞い込んでいます。現地へ急いで下さい!

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