PandoraPartyProject

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兄弟愛/姉妹愛

(――ああ、全く! きりがねぇ!)
 防衛線は後退し、屋根の上には複数の影が降り立った。
 第十三騎士団と違う趣の装備に身を包んだ暗殺者の中には金髪の男が居た。
 暗殺者だというのに素顔を晒している辺りは絶対に仕留め損なわないという自信の表れか、それともそういう流儀だからなのか――
「悪いが、手早く済まさせて貰うぜ。お嬢さん」
「お嬢さん扱いされたのは――『久々』だな」
 屋根を蹴ったフウガが時雨の繰り出した蛇剣を掻い潜る。
 強烈に間合いを詰めた彼の繰り出した直刀による変則的な一撃を魔眼を開いた時雨は辛うじて避け切るも。
 この場の『フェアプレー』は麾下に彼女の隙を狙わせて当然だ。
「悪いな」
 息を呑んだ時雨は死角に回り込んだ凶手に目を見開いたが――
「いいえ。その詫びは『まだ』要りませんよ」
 ――彼女に迫った二つの刃は結局その役割を果たす事は出来なかった。
「暗殺組織の多勢相手では平時の私では敵いませんから、性能を改変しました。
 因縁がある訳ではなし、貴方達には拍子抜けなのかも知れませんが」
 淡々と言ったグリーフ・ロス(p3p008615)は凶刃と時雨の間に割って入り、これを受け止めたに関わらず平然としたものであった。
「アンタ……!?」
「平気です。助けに来た――と言えば烏滸がましいのでしょうが、助けに来ました」
『避け』前提の時雨と『受け』前提のグリーフの防御構成はまるで異なる。
 元より剣である時雨を最大限に活かすには確かに盾が必要だった。
 グリーフは「拍子抜け」と謙遜(?)したが、実際の所――彼女にとって必要だったのは『本気で攻められる環境』だ。対多数なら尚の事。
「ああ、素直に恩に着るぜ。あと……すずなも」
「……本当ですよ。こんな厄介な所に入り浸っているからこうなるんです」
 時雨が次に視線を向けたのは予期せぬ新手――グリーフに止められ、一瞬の困惑を見せた凶手を仕留めたすずな(p3p005307)だった。
「今日はお説教は聞きませんよ。子供扱いも結構ですから。後、帰れと言っても帰りません」
「……しねえよ、そんなの。立派になったじゃねーか」
「姉様……」
おかしなビデオを見た時にはどうなっちまったかと心配してたが安心したぜ。
 ……あの、ほら。ヤバそうな女。梅泉の彼女? お前の彼氏? 彼女? も一緒なんだろ。
 こっちに来てくれるなんて、あたしも案外捨てたもんじゃねーってな」
「姉様!!!!!」
 戦場に似合わない顔をしたすずなに「はいよ、姉様だ」と時雨は笑った。
 同時にすずなの頭上に蛇が躍る。多方向から彼女を狙った封魔忍軍の精鋭がそれで後ろに飛び退いた。
「素敵なお兄さんの救援に、姉妹の再会。貴重なイベントに水を差すんじゃねーよ」
「生憎とこっちも仕事でね。兄弟愛に一家言あるのは事実なんだが」
 肩を竦めたフウガはこの後を考える。
(確実に予定は押すな。恩の一つも売っておきたい所だが、容易くはない。ヨアヒムだけで十分か?)
 封魔忍軍は彼の手足。彼の武力。
 第十三騎士団は使い捨てで十分やも知れぬが、故国を追われたフウガはそうはいかない。
「姉様はそのまま雑兵減らしを! 『彼』は私達が!」
「すずな――」
「心配しないで下さい――一人前、って言ってくれましたよね?」
「お姉さん、なんですよね。ならなおのこと、お二人とも守らないといけませんから」
 新手――すずなもグリーフもやる気十分だ。
 更には先程より時雨のやる気も高まっている。見るからに――
「……貧乏籤だな」
 フウガは嘆息した。
 いや、この夜に当たり籤なんて無かったのだろう。
 強いて言うなら一人高笑いするのはあのヨアヒムだけだ。
「誰が相手でも私にやれることは変わりません。倒れない、それだけです。
 彼が令嬢に向ける気持ちが一縷の愛に起因するものならば、少なくとも、侯爵よりもまっすぐな愛ならば。
 その気持ちに、サリューを守るという意思に、私は賛同せずには居られないのです」
 本当に、骨が折れそうだった。

サリューを舞台にした『暗闘』は静かに進行しています……!

※リミテッドクエスト『<太陽と月の祝福>Recurring Nightmare』が公開されています!

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