PandoraPartyProject

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The Return of the King

 イレギュラーズは遂に竜達を撃退し、大霊樹ファルカウの巨大な根元まで進軍していた。
 本来そこは、伝承における世界樹そのものであり、幻想種(ハーモニア)達の魂の拠り所であり、広大な迷宮森林に抱かれた深緑(アルティオ=エルム)における事実上の首都――故郷でもある。
 そんな場所が今は、冠位怠惰カロンの支配下にあった。否、恐らくずっとずっと前から。
 怠惰の化身であるカロンは、面倒事をこの上なく厭う。故に殆ど何もしていなかっただけなのだ。
 ――だが今は違う。
 配下や協力者達に権能を割り振ったカロン自身は未だファルカウのどこかで寝ているのだろうが、その恐るべき権能『夢檻』は、大樹へ迫らんとする者達へ牙をむき始めていた。
 つまり『怠惰』へ立ち向かうに、休息の時はない。
 ある種、至極当然とも思える結論には嫌気も感じるが、それはさておき。

「……して、我に何用か」
 一行の眼前で腰を下ろし、観念したように目を閉じたのは『金嶺竜』アウラスカルトという竜である。たった今、イレギュラーズが打ち破った相手だ。人、厳密には亜竜種(ドラコニア)の形を真似ているが、その実体は二十メートル程の――竜としては若く小柄な――正真正銘のドラゴンだった。
 イレギュラーズというものは、冠位怠惰などと違って忙しく、こんな時にはのべつまくなしに「情報をよこせ」とか「手を貸せ」などと言いがちな生き方をしている者が多い。
「竜よ、いと猛き者よ。まずはここに感謝を――」
 けれどクレマァダ=コン=モスカ(p3p008547)やしにゃこ(p3p008456)は、ずいぶん違っていた。
「ふおー! やっぱり可愛いじゃないですか!」
「なぁ、アウラ。俺はお前と仲良くなりたい。だってお前のこと、好きだからな」
 熾煇(p3p010425)もまた続ける。
「……ぬ、ぬかせ。何事か、我は汝等の怨敵であったのだぞ」
 しにゃこは頬をつつき、アウラスカルトの頭の近くでくんくんと鼻を鳴らした。アウラスカルトは狼狽え、わずらわしげに腕を振って避けようとするが、けれど答えは『過去形』であった。
 つい今しがたまで敵であった亜竜の群れは、そんなイレギュラーズを守るように円陣を組んで背を向けている。そして時折現れる『大樹の嘆き』を追い払ってくれている。
「怪獣大戦争の次は、これは!」
 赤羽 旭日(p3p008879)が、どこか呆然とした様子で天を仰ぐ。
「へえ、意外とね」
「人の『可能性』を、底力を叩き込んでやったんだ」
「……ま、そういうこった」
 タツミ・ロック・ストレージ(p3p007185)と咲々宮 幻介(p3p001387)、それから秋月 誠吾(p3p007127)はそんな光景を遠目に、感心して見せる。
 思いの外に良好となった関係とはいえ、わだかまりがない訳ではない。
 油断なく見守るグレイル・テンペスタ(p3p001964)や、黎明院・ゼフィラ(p3p002101)にとって、アウラスカルトは破壊者であり暴威であった。それでも竜という存在に一縷の好奇心を抱かざるを得ない性分のゼフィラにとって、尚更に複雑な心境でもあるが。
 いずれにせよ、全ては今後へと委ねられるのだろう。
「ボク達は、もう友達なんだから、ね」
「そうそう花丸ちゃんだって」
「……それも良かろう」
 セララ(p3p000273)と笹木 花丸(p3p008689)が、アウラスカルトのあまりに小さな手を取った。
 真の勇者なら、一度ならず竜の背に乗り天空を駆けるものだから――
「魔道の最奥に触れんとする竜――か。既に動けるまで回復しているとは驚いた」
 レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)が小さく唸る。操る魔術――古竜語魔術ドラゴン・ロア、より厳密にはエルダー、あるいはエンシェントを冠するであろうドラゴン・ロアと呼ぶべきものは、しかとその目に焼き付けている。楊枝 茄子子(p3p008356)もまたそれを真似たら、あるいは新開発などしたら驚くだろうか、などと笑う。どのみち嘘であるけれど。

「汝等は、友やその家族、戦うすべを持たぬものを失わせないために戦うと言ったな」
「うん、そうだね。ベン」
 ジェック・アーロン(p3p004755)が振り返り、相性で呼ばれたベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)が頷いた。二人を見たアウラスカルトがふるふると身震いしたのは見なかった事にして。
「俺達はそのために戦っている」
「我と同じようなものなのだな……だがそれだけではなかろう」
「そうだね、それだけじゃない」
 フェルディン・T・レオンハート(p3p000215)は言った。イレギュラーズは世界を破滅から救うのだと。
「神託はまことであったか。なるほど、汝等こそ真の勇者にふさわしい」
 そしてしばし黙り込む。
「形あるものは、いずれ滅ぶ。人も獣も――竜さえも」
 立ち上がったアウラスカルトは上目遣いに、周囲の一同を眺めた。
「ならば世界とて例外ではあるまい。父祖はその滅びをこそ願っているのだと考えていた」
 そして落胆したように、俯いた。
「だが、そうではないかもしれんということか。冠位怠惰に手を差し伸べたということは」
「そうよ、許してはおけないわ。絶対にね」
 レイリー=シュタイン(p3p007270)が騎兵槍を地に突き立てる。
「そうだ。あたしたちは、それをぶち破るもんだ!」
 エレンシア=ウォルハリア=レスティーユ(p3p004881)が拳で自身の胸を叩いた。
「その剣で切り拓くというわけか――痛かったぞ」
「だろ?」
「まあ、後はお前次第だ」
 白い鞘入りの大太刀を掲げてエレンシアが笑い、ルーキス・ファウン(p3p008870)がそう結んだ。
「よかろう、我は父祖を問いただす。汝等もゆけ、もはやいくばくの時間もなかろう」
 そう言うと、アウラスカルトは舞い上がり極大の魔方陣を展開した。
「我を――金嶺竜を覇せし者共よ……汝等の武運を祈る」
 一瞬、張り詰めた空気が広がるが、魔力が膨れ上がる中で、それは驚愕へと変わる。
「あんな代物(げてもの)を行使しますか――竜という存在(もの)は」
 こくりと喉を鳴らしたリースリットが見守る中、竜身へと変化したアウラスカルトの巨体が掻き消える。
 ひどく粗雑な瞬間転移。あのような術式は、人が真似れば亜空間で即座に身体がバラバラに引き裂かれてしまうようなものだった。ならば竜――それも魔術に卓越した――にしか操れまいに。
 燦火=炯=フェネクス(p3p010488)が溜息一つ。
「ほんとまったく、インチキなんだから」

 アウラスカルトが消え失せると同時に、亜竜達は一斉に舞い上がり、南へと飛び去っていく。
「興味深いものでしたが、急がなければなりません。さァさァ、やることも残っていますしねェ」
 手を叩いた煌・彩嘉(p3p010396)に、一同が頷く。禁書から得た情報が、全て解析出来ている訳ではない。
 それに竜気が失せた途端、「ちとこれはまずいの……」物部 支佐手(p3p009422)の足元がふらついた。
「大丈夫か!? よもや、これは……」
 助け起こした神倉 五十琴姫(p3p009466)が戦慄する。一行に夢檻の魔手が迫っていた。
 戦略的撤退を開始した一行だが、一人、また一人と崩れ落ちていく。
 ――嫌だ。こんな所で、意識を手放すのは。まだ何も聞けていないのに。
 ジョゼッフォに支えられたココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が、消えそうになる意識を掴み――
「私は――私は父だ! 父として、ココロ、君を守ると誓う! そして全てを話す、だから!」
「……それ、ずるくないです……か」
 ――微かな反感を覚え、けれど魔の眠りはあらがえなかった。
 今の言葉を、まだ何一つかみ砕けていないが――どうも己が父は、ずるい人らしい。
「ちょっとこれは、まずいかも、思ったよりずっと」
「早く、撤退を。急ぎま……しょ……う」
 物部・ねねこ(p3p007217)と橋場・ステラ(p3p008617)がよろめいた。
「……参ったな。どうも、俺もダメらしい。なんとかしてみせるが、悪い、頼ん……だ」
「倉庫ガジェット、を、夢の監獄へ、も……」
 バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)と倉庫マン(p3p009901)も膝を付く。
「拙者は、こんな、ところで、立ち止まる訳には」
「だがなルル家ちゃん! まずはその監獄を打ち破って参れ!」
 眠りに堕ちた夢見 ルル家(p3p000016)を睥睨し、冬の王オリオンが拳を突き上げる。
「冬……というか、夏っぽいんじゃない、それか嵐」
「ちょうど僕もそう思っていた所だ」
「おいおい、とかいいながらこっちを見るのはよしてくれよ……って、困ったな」
 イーリン・ジョーンズ(p3p000854)にアト・サイン(p3p001394)が同意し、途方にくれるライエル・クライサー(p3n000156)の目の前で意識を手放す。
「その時こそ、名を問おう――司書ちゃん! 親愛なる我が友よ!」
「アトさん!」
 駆け寄ったフラーゴラ・トラモント(p3p008825)だが、そこには例のすぅすぅ王がいるではないか。
「よもや! 貴様フラーゴラちゃんか! これなるぬいぐるみの主ではないか!?」
 待ってほしい、それどころではないのだ。もうどんな顔をしたらいいかも分からない。
 てかこの王、ぬいぐるみまだ小脇に抱えてるし。『~ちゃん』とか言いだした件、どうするのルル家。
「……大層お気に入りのようである」
 炎 練倒(p3p010353)が絶句する。
「ではしばしの別れだな、友等よ! 貴様等が下らぬ監獄より舞い戻ったならば全軍をもって迎えよう!」
 冬の王はそう述べると、獰猛な笑みを浮かべて踵を返した。
「――盟約もあれど、貴様等とは一度剣を交えてみたかったのでな! いざ、さらば!」

 アンテローゼ大聖堂まで撤退したイレギュラーズは、寝ている仲間の身を礼拝堂のベンチへと横たえた。
「女王様、来てて!? なんで、女王様が、消えちゃったの!?」
 柄にもなく悲鳴をあげたストレリチア(p3n000129)が、大慌てで飛んでいく。
 つい先程、妖精女王が現れ『夜』を払ったという話があった。そして消えてしまったと。
「これはいけないよ。こんな時に寝てしまうだなんて、ゲツクに連なる者ならばこれ以上の不幸はない。それに月英(ユグズ=オルム)を燃やす訳にはいかないからね。夢の監獄に興味はあるけど、それは週末にでも、たっぷり読ませてもらうからさ。だから――さあ、起きるんだ」
「これは……とんだ失態を」
 ドラマ・ゲツク(p3p000172)が目を覚ます。だめな父替わりに、けれど珍しくやる気な父に助けられた。アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)が全てを賭けた奇跡の末に勝ち取った、ライアム・レッドモンドの導きによって、今も仲間達の多くが、夢の監獄の中で戦っているはずだ。急がなければならない。

 ――そんな時だった。

「ファルカウ方面に、火の手があがりました!」

「――なん……じゃと……ッ!?」
 ドラマの親類であるアカツキ・アマギ(p3p008034)が勢い良く立ち上がる。
「それは、つまり……」
「コャー……大変なの」
 エルシア・クレンオータ(p3p008209)と胡桃・ツァンフオ(p3p008299)が続けた。
 冬の王が全力で出撃準備を整えるということは、ファルカウを覆う冬のヴェールが剥がれるということ。
 深緑の魔術師達はイレギュラーズの手を借り、冬のヴェールをフェニックス召喚によって相殺していた。
 だがフェニックスは、深緑の魔術師達の手でコントロールされているはずだった。
 冬のヴェールが消えたなら、共に消滅する術式を組み込んでいたが――
「何者かに、制御を奪われ……おそらく、冠位魔種の手先による仕業と思われます!」
「……ヴィヴィ」
「皆まで言わずとも、分かるよクロバっ子。だがあればかりは厳しいね。感じられるだろう、既に膨大な魔力が注がれていると考えるべきだろうね」
 クロバ・フユツキ(p3p000145)に水の大精霊ヴィヴィ=アクアマナが答える。
 礼拝堂を騒然とした空気が包み込んだ。
 それから冷え切った沈黙が訪れる。
「……だから、あのような蛮行を、なすべきではなかったのだ」
「火など、まさか、よりにもよって」
「かの大樹に、神聖な、我等が拠り所に!」
「……もう、終わりだ」
 最後に、誰かがそう言った。
 それは絶望だった。否、絶望と呼ぶにも重すぎた。
 もしもファルカウが失われてしまったなら、何に縋れば良い。
 嗚咽が聞こえる。泣き崩れる者が居る。すぐにでも出撃せねばならないが。ただ一つの希望である、多くのイレギュラーズさえ、今は夢の監獄で戦っているというのに。

「――静まりなさい!」

 かつんと、杖が床を鳴らす。
 現れたのはリュミエ・フル・フォーレ(p3n000092)、そしてルドラ・ヘス(p3n000085)だった。
「……リュミエ様」
「希望が潰えた訳ではありません、イレギュラーズの背に頼るだけでなく、私達も成すべきを成すのです。現状の全てが、誰の責でもありません。冠位魔種と、そこへ連なる者の仕業です。違いますか?」
「……」
「私達はイレギュラーズと共に、冠位魔種カロン・アンテノーラを打ち破らねばならないのです!」
「無論、私もイレギュラーズを信じ、戦い抜く。異論はあるか!」
 リュミエが凛と声を張り上げ、ルドラが続けた。
 異を唱えるものは、誰も居ない。

「リュミエ様、こちらの書物をご覧下さい」
 現れたのはドラマと彩嘉だった。彩嘉がページを指し示した。「ああ、そいつは」と発見者ルカ・ガンビーノ(p3p007268)が述べる。それは古の『魔種』についての書籍だった。
 示されていたのは、魔種の権能が精霊を操る時に、そのパスを断ち切る方法だ。
 現状に対する、僅か一縷の希望ではないか。

「私達は、まだ何も出来ていません……何も終えられていません。だから、かならず!」
「私も主人と共に、戦い抜く所存です」
「ォ……なんたる悲痛か、止めねばなるまい。オオオォォッ!!!!」
 リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)とリュティス・ベルンシュタイン(p3p007926)が、ゆっくりと立ち上がり、ビジュ(p3p007497)が吠える。
「リュミエ……様……」
「イレギュラーズ……そう、ですね」
 うな垂れた幻想種達が、立ち上がり始めた。
「そうだ、ここは我等が森。ならば守るべき、立ち上がるべきは我等ではないか」
「冠位魔種を、滅ぼさねばならない」
「悪かった、イレギュラーズ!」
「イレギュラーズに責を求めるなど、気高き幻想種の名折れと知れ」

「私達だって、決して諦めません!」
「ええ、当然です。ここまで来て、そんなことをするものですか」
「ワシとて、そう簡単に折れてなるものか……じゃよ」
 蘭 彩華(p3p006927)が、ガヴィ コレット(p3p006928)が立ち上がる。
 オウェード=ランドマスター(p3p009184)が拳を握り、遠い誰かを想う。
「許せないじゃない、こんなのって」
「そうだよね、ぼく達がなんとかしなくっちゃ」
「だったら亡霊卿の真髄、何度だって見せてあげるよ」
「こうなったら勢いあるのみだ! かっ飛ばし続けた奴が勝ちなんだろ!」
 ミルヴィ=カーソン(p3p005047)に、リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)、それから玖・瑞希(p3p010409)に夢野 幸潮(p3p010573)も続けた。
「はぁー……ほんと仕方ないですねえ」
「Nyahahahahahahahaha!!!」
 ベーク・シー・ドリーム(p3p000209)に、オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)も、また。
「フハハ! 亜竜さえ打ち破ったこのダリル様に任せておけい!」
「スケさんも、この通り、付いておりますよ!」
 ダリル(p3p009658)とヴェルミリオ=スケルトン=ファロ(p3p010147)が胸を張る。
「みーおも負けませんにゃー!」
「レーさんも負けないっきゅ!!」
 もこねこ みーお(p3p009481)やレーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)の気持ちも同じだ。
「さぁさ、お次はどんな血の味がするのやら」
 クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)がちろりと牙を見せる。
「フェニックスだって、きっと鳥さんよ」
「ああ――問題ない、もう一度やるだけだ」
「死地は承知の上よ! 俄然、腕が鳴るわ!」
「私の陣術を、もう一度お見せするよ……!」
「だいじょーぶだいじょーぶ、なんとかなるよ」
 メルランヌ・ヴィーライ(p3p009063)が不敵に呟き、マカライト・ヴェンデッタ・カロメロス(p3p002007)は早速ティンダロスの世話をはじめる。
 蔀・蓮華(p3p008732)に霞・美透(p3p010360)、秋霖・水愛(p3p010393)も戦いの準備を始め――
「夢の監獄を打ち破り、ファルカウへ参りましょう」
 最後にそう結んだ彼者誰(p3p004449)へ、一同が頷いた。

 返す刃で、再進撃の準備を急がねばならない。
 まずは夢檻の世界(理不尽)を、ねじ伏せてやれ!
 大樹を燃やす炎を振り払い、冠位怠惰の喉元に切っ先を突きつけてやるために。

 ※『金嶺竜』アウラスカルトが撤退しました。
 ※なぜか一時的に味方だった冬の王が、急に敵陣営へ帰還しました。
 ※冬の王が戦闘準備に入り、ファルカウを覆う『吹雪の檻』が消失しました。
 ※解放されたフェニックスが敵陣営に奪われました……。
 ※幻想種の故郷――ファルカウが燃え始めています……。
 ※夢の中に囚われた者達は『夢檻の世界』にいるようです……
 【夢檻】から抜け出す特殊ラリーシナリオと、冠位魔種の権能効果を減少させる特殊ラリーシナリオが公開されています。

これまでの覇竜編深緑編

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