PandoraPartyProject

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Die Tür in den Sommer I

「月英(ユグズ=オルム)の禁書は、偉かったね、ドラマ。ここからは僕も手を貸そう。故国の難ならば、ほらほら、僕だって立ち上がろうじゃないか」
 反転出来なかった男『叡智の記録者』ニュース・ゲツクは――冠位とのやり取りについてなどおくびにも出さず――しれっと述べた。そしてドラマ・ゲツク(p3p000172)の頭にそっと手のひらを置く。
「……無事で。無事でよかった」
 ドラマの唇が震え、ひとしずくがはらりと頬を濡らした。
 周囲は木々の燃える音と、ハーモニアの悲嘆に溢れている。ハーモニア達は水の魔術を使い、それ以上の延焼を食い止めていた。けれど残念だが手伝ってやる時間はない。
 タレイアの心臓が咎の呪いを払い、フェニックスが冬の檻を穿ったということは、ようやくファルカウに眠っていたハーモニア達を救出する目が見えたということ。ニュースのように自力で脱出出来る者ばかりではないのだから、イレギュラーズはファルカウへの進撃せねばならないのだが――

 突如悲鳴が聞こえた。
 腰を抜かしたハーモニアの魔術師が指さす先、冬のヴェールの向こうに見えたのは亜竜の群れであった。
「また性懲りもなく、ね」
「デザストルへ帰っていただきましょうねェ」
 溜息一つ、黎明院・ゼフィラ(p3p002101)に、煌・彩嘉(p3p010396)が頷く。
 遠くで亜竜達を率いているのは、小さな少女に見えるが――
「私には分かるよ――嫌な気配だね」
「まさか、『金嶺竜』アウラスカルト」
 会長ではなく、楊枝 茄子子(p3p008356)は確かに『私』と言った。
 続けたジェック・アーロン(p3p004755)にも確信があった。
 間違いなく、あの時――練達の滅亡を回避した戦いで出会ったものと同じ存在だ。
「はい! それじゃしにゃはこのへんで」
 しにゃこ(p3p008456)が元気よく手を挙げた。
「帰っていいですか!?」
「落ち着くんだ」
 しにゃこの背をぽんと叩いたベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)もまた、戦慄を禁じ得ない。なぜならば確信はもう一つあったのだ。
「一度破れている以上、二度と慢心はないだろう」
「出会い頭の開幕メテオぐらい、覚悟しておいたほうがいいかもしれないね」
 茄子子もそう言って頷いた。あのときアウラスカルトは人類を完全に舐めており、得手とされる魔術を中々使ってこなかった。竜としての身体能力に拘っていたのだ。けれど今はきっと違う。イレギュラーズは撃退にまで追い込んだのだ。生命さえ危ぶまれるほどの激戦は、竜にとっても同じであったのだ。
 それに今度は、亜竜の群れまで居ると来たものだ。あの時はそちらは練達が国家を挙げて対処してくれたから竜に集中できたが、こうなれば、せめて味方に五十名は見ておきたい。
 大樹の嘆きへの対処は、まだ出来ていなかった。周囲を見境なく襲うそれらが、今回も敵となるだろう。だから五十程度では全く足りないはずだ。けれどそれ以上のイレギュラーズを割く訳にはいかない。
 新たな自体に際して、ようやく情報が飛び交い始める。周辺もまた、大変な状況になっていた。
 何より『冠位魔種』暴食のベルゼ―の存在が確認されたというではないか。
 竜を率いていた魔種の影は、やはり冠位であったか。

 ※進撃の準備が進められています。
 ※吹雪の檻が穿たれたことにより、一部ハーモニアの無事が確認されました。
 ※鉄帝国の方では祝賀会が開催されることとなりました。


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