PandoraPartyProject

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天蓋を覆う影

ファルカウを燃やす!?
 身を乗り出し頭を抱えたのは『砂漠の幻想種』として知られる長耳乙女の傭兵団『レナヴィスカ』の長、イルナス・フィンナ(p3n000169)であった。
 アルティオ=エルムの良き隣人であるラサ傭兵商会連合は此度の一件にも救援隊を編成していた。
 イレギュラーズの拠点となったアンテローゼ大聖堂への路を開き幻想種達の保護を率先して行うラサの面々もイレギュラーズが解析した『リオラウテ禁書』の内容には驚愕を禁じられなかった。
「……深緑って、火は御法度じゃ?」
 首を傾げたのは『願望器以上、奇跡未満』の力を内在していたファルベライズ遺跡の元・守護者、イヴ・ファルベ(p3n000206)で。
 情報屋としての新たな人生を歩み始めた彼女は各地についての様々な伝承やしきたりを学んでいた。
 例えば――だ。現在のファルカウを覆う吹雪の檻は古の勇者アイオンが旅した時代の伝承にも残されている。世界各地を転戦し、ついには妖精郷に逃げ込んだ『冬の王』はその地に封じられてたという。その詳細を紐解くに至ったのが禁書である。迷宮森林では『焔王(フェニックス)』の力を持って冬を焼き払った。
「でも、そう。うん、雪は熱で溶かされるから……合ってるのかな。
 太陽は別名は金烏と言うし、火の鳥が冬を雪解けに導いたのは、合理的なのかも」
「合理的、と言われてもだな……幻想種達の気持ちになると居た堪れない。
 大霊樹ファルカウは彼女達の信仰の象徴であり、木々は家族……いや血肉同然だ。故に、焔が禁忌にされていたのだろう」
 苦々しげに呟くラダ・ジグリ(p3p000271)でにウテナ・ナナ・ナイン(p3p010033)では「ううーん」と呻いた。
「いやあ……そうですよね。ドラゴンよ、焼き払え! みたいな簡単で単純な問題じゃないですもんねー」
「私も、うん。思った。焼き払えー! って叫んで火の海にすれば問題は無いんじゃって。
 森林火事って恐ろしいのでしょうっ? オジサマが言ってたわ。森に火を放ったら中の生き物全て飛び出してきて生態系が混乱するから火遊びはしちゃ駄目って」
 ウテナの傍らで彼女の友人『ロスカ』と遊んでいた珱・琉珂 (p3n000246)では「焔は瞬く間に広まって――」と両手を持ち上げた。そうして惨状を想像してはそのかんばせに蒼褪めた色が落ちる。
「少なくとも、霊樹など逃げ果せることの出来ないものは燃えるでしょう。
 妖精郷など何らかの障壁を挟んだ存在であれば害は及ばないでしょうが、霊樹はそうはいかないでしょうから……」
 小金井・正純(p3p008000)でが憂う理由に真っ先に気付いた新道 風牙(p3p005012)では「いやいやいや!」と身を乗り出した。
「霊樹が燃えて『死んでしまう』ってなると、あの人は――」
「……霊樹レテート……クエルさんは、」
 重く息を呑んだシフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)でに風牙は頷いた。
 霊樹レテートは大樹ファルカウから強く力を汲んだとされる存在である。故に、リュミエの補佐として巫女が側仕えをしていたそうだが、今代の巫女は事情が大きく違うらしい。
 正純に言わせれば「不運か、それとも幸運か。運命の悪戯でしかない」状況だ。
 今代巫女クエル・チア・レテートは『霊樹レテート』と命運を共にする。まだ幻想種としては年若い筈の彼女は老女の容貌をしている。霊樹レテートの衰えを身体に一身に反映した彼女はレテートと共に朽ちる運命にあるそうだ。
「……クエルさんは母代わりであったリュミエ様を悲しませてでも、彼女の愛する森を護りたいと仰っていました。
 火を放つ際に霊樹に働きかけ、私達の『禁忌』が森を救う為には必要不可欠であったと伝えて貰い、自衛して頂きましょう」
「そうだね。クエルさんは霊樹の力を集めて奇跡の一端となる位は出来ると言って居た。
 それはあの人がイレギュラーズを信頼したから言ってくれた言葉だ。こちらも行動理由をちゃんと伝えて、信に応えよう」
 頷いたマルク・シリング(p3p001309)でに風牙は「クエルさん驚くだろうなあ」と頬を掻いた。
 話は一度、決着したかと思われた――だが。

「ちょっちょっちょ――――! 琉珂さん! 見えますか!?」
「見えてなかったら私の目玉抉り取ってワームに食べさせて欲しい位よ!?」
 叫ぶウテナと琉珂だけではない。突如として落ちた影にラダは息を呑む。深き森と砂漠の境、咎の茨に苛まれぬ中間の地。
 旅人の憩いの場にして、祈りの地アンテローゼにもこの『絶望』の影は落ちたことだろう。
「ッ……」
 その姿を、風牙は知っていた。イレギュラーズは冬の寒々しい時期に類似した光景を目の当たりにしているからだ。
「竜種……」
 天を覆う巨大な影。竜の吐息が地を揺るがした。竜種。それは『絶望』の塊だ。其れ等が飛来して征く姿を地より目の当たりにしたのである。
「一体何が……ッ、竜……?」
 ラサとしての救援方針を決める会議に同席していたエルス・ティーネ(p3p007325)では会議室を飛び出してから息を呑む。
「こりゃあ……また」
 ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)の呻く声に恋屍・愛無(p3p007296)は「大忙しでは無いか」とぼやいた。
「片や、魔種に転じた存在が多く潜んだ森。片や、天を覆った竜の影。その何方もが一点を目指して集結している」
「……竜種まで……」
 琉珂は恐怖の慄くように息を潜めた。覇竜領域で生きてきた彼女だからこそ、両親を『殺された』彼女だからこそ、その恐怖は身を沁みて理解しているのだろう。
 地響きにも似たあの声に。羽ばたき一つで木々を薙ぎ倒し草木をも愚弄する姿に。
 同じ生物であるとは認識できぬ強大すぎるその姿に――
 亜竜姫は恐れ戦いてから、ふと、息を呑んだ。
「……オジサマ……?」
 竜の傍に、誰かが佇んでいる。巨大すぎる竜の傍に立っている男。竜と比較すればあまりにちっぽけであれど、琉珂には見覚えがあった。早くに両親をなくした彼女の父代わりであり里長代行達の良き指導者であった男。
「どうして、オジサマが――?」

 ※ラサ上空で『竜種の影』が目撃されました。
 ※鉄帝国の方では祝賀会が開催されることとなりました。


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