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ギルドスレッド

異世界歴史学研究調査事務所

応接室の日常2

 外面ばかり整えている異世界歴史学研究調査事務所だが、その実その取り繕った立派さを発揮する事は滅多にない。何故ならそれを利用する立場にある男が非常に面倒臭がりであり投げ遣りだからだ。
 例えば、己の伝記を書かせるのに大枚をはたきそうな金持ちの上客であれば、男は部屋を改めて整え、不精髭を剃り、髪の毛をキッチリ撫でつけて出迎えるだろう。
 だがそう言った上物の依頼客は事前の予約が必須としている。『忙しい≒凄い繁盛してますよ』アピールをする為にもそこは徹底しているし、そもそもそう言う類の客は普通事前に連絡か人を寄越すのでどの道飛び込みはほぼあり得ない。

 よって、平時の応接室はつまり、男や男に近しい者にとってはのんべんだらりだらけるための休憩スペースに他ならないのである。

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(ミルクたっぷりのカフェオレを飲み飲み、シケモクを吸い吸い、大変味覚と健康に悪そうな真似をしながら合間にふいーとだらけた息を漏らす)
うーむ、至福……とまではいかんがそれなりに安楽でありかつ平和だな。
この時間が恙なく続けば今日は良い日と言って差し支えあるまい。
(理屈っぽく言っているが要するにサボっているだけである)
(室内が平穏な静寂に満ちているなら、こつこつとヒールの踵を鳴らす足音が近づき、やがて扉の前で止まるのが聞こえるかも知れない)

(こんこんこん、と跳ねる様なノックの音。)
……ん?(足音に気づき、シケモクを灰皿に押し付ける)
客か……この高い音はご婦人かね(申し訳程度に手ぐしで髪の毛を撫でつけながら扉を向く)
いや、そう言えばこの間はそう思ってたら二足歩行蜘蛛の旅人が来たな。判断は早計か。

(そんな事を言っている間にノックが響き、椅子から立ち上がりつつ声を上げる)

はい、どうぞ。
(がちゃり。開いた扉の隙間からするりと入り込む蜂蜜色の猫の耳、薄手のシャツとタイトスカートに包まれたしなやかな肢体、ぴょこんと猫の尻尾。片手にはいい香りのする小包を抱えて)
ハァイ、調子はどう?(海色の猫の目を細めて、出迎えた男に大変気安く手を振った)
ローレットの依頼ぶりかしらね、ミスタ・J。近くまで来たから寄らせて貰ったわ。
(入室して来た来客に少し笑って)
なるほど、俺の耳も今日はちゃんとした仕事をしていたらしい。

やあ、いらっしゃい。
調子かね? 御蔭さまで今はもうすっかり良好だとも。
何せ麗しのご婦人の来訪だ。流石の俺も、それで調子を上げずにいられるほど未だ枯れ切っちゃちゃいない(冗談めかして笑い、芝居がかった仕草で肩を竦める)

そちらこそ元気そうで何よりだミズ・カタリヤ。
大したお構いも出来ないが、歓迎するよ。
耳?(頭の上の三角耳がひょこりと跳ねる)

ふふ、ドレスでも着てくればもっと元気になってくださったかしら。その舌が羽のように軽くなるくらい、ね?
(役者のような仕草と台詞回しに、ぱちりと片目を瞑って応えて、)
お蔭さまで、ね。それとローレット様様だわ。動き回る口実が出来たもの。

(こつこつ、と更に部屋に足を踏み入れれば、室内はコーヒーと煙草の匂いに満ちているようで。)
……ところで、お茶の時間だったのかしら?
(手の中の包みを男に差し出せば、バターとミルクの薫りがふわりとそれらに加わる。)
今同行してるキャラバンの商品……クッキーだけれど、良かったらいかがかしら。甘いものはお嫌い?
いや何、さぞ洗練された貴婦人が歩んでいるのだろう上品な足音だと思っていただけだとも(事実に色を付けて嘯きつつ棚に歩み寄り、来客用の珈琲粉を出す)
……実際、足音と言うのはあれで可也人柄が出る物だ。
(袋を小さく開け中の状態を確認した上で閉じ直す)

ドレス…! それは怖いな。うっかり国家機密や世界の謎だって滑り落としそうな位に舌が軽くなりそうだ(大げさに首を竦めて見せる)

おや、口実なんか無くたって。君はそう易々と動きを縛られるほど甘くはないように思うがね。しかし君の手に良いネタが手に入ったと言うのなら、ローレットも良い仕事をしたと褒めざる得んね。
(軽口を叩きながら準備をしている)

いやいや、ティータイムではなくコーヒータイムだ。
まあ、尤も、うちは年中無休でコーヒータイムなんだが……
(差し出された包みに軽口を止め)
……おや。手土産とはすまないな。有難う。
(受け取り、一旦盆の上に置いてから丁寧に珈琲を淹れる)
何を隠そう甘いものは好物でね。珈琲に合いそうな品なら尚の事だ。
(片眉だけを器用に下げて見せつつ)
『似合わない』とは言われてしまうが、自分の舌には嘘は吐けない。

まあ、美人と見れば直ぐに軽くなる軟派な奴だが……何せ生まれてからずっとの付き合いだ。なるべく誠実に付き合って行きたい(笑って肩を竦める)

さてご婦人、宜しければそちらにどうぞ。
(上座のソファを指し示しつつ、珈琲を配膳する)
ふふ、身に余る文句で飾られると、女の舌はかえって重くなるかも知れないわよ?
なんて、ね。
(悪戯っぽく微笑みながら)
ああいうお祭り騒ぎだと、インタビュー相手のノリが違うのよ。それこそ、舌が軽くなったりね。
その分浮ついた話にもなるのだけれど……そこを見定めるのは私たちの仕事でしょ?

(年中コーヒータイム。それを裏付けるだけの十分な設備がこの部屋にはあるのだ。
慣れた手さばきを興味深げに眺めながら、)
喜んで貰えたなら嬉しいわ。ほら、男性への手土産って結構悩んじゃうのよね。
(似合わないとの自己申告にはつい、くすりと笑ってしまう)
正直者の素敵な舌さんのために、今後もコーヒーに合いそうなお菓子の調査は続けてくことにするわね。
(勧められた席に掛けて、目の前の珈琲のいい薫りに目を細めて)
下手したら娘くらいの年でしょう、私。カタリヤでいいわ、ミスタ。
なるほど、それは肝に銘じよう。今の所は未だ未だ大丈夫だろうがね。
(悪戯っぽい笑顔に軽く笑い返し)

ああ、それは確かに……熱心に参加している者ほど、酒の席とはまた違う方向にガードが下がるし、ああ言う場でこそ得れる情報は確かに多いか。
そして言う通り取捨選択はある意味本分だな。是非や正誤もそうだが、文面にする以上尺の限界も考えねばならない……(少し遠い目をした)

男性への手土産、君から贈られるなら大抵の男はそれが例え木の葉でも喜びそうな物だが……まあ、俺相手に限らず、こう言う消え物がセオリーにして妥当なのだろう。
しかしその調査は俺と俺の口の中の相棒殿には重要だな。調査料は奮発しなければ。
(笑って自分も席に着き)

娘くらい、か。
(頭を掻いて)
いい歳して独り身の男には中々過ぎた気遣いだが、有難く頂戴しよう。
改めてよろしく、カタリヤ。
(遠い目に何だか察するところがあった)
ネタが豊富なのは素敵なことよね。大規模召喚からこっち、幻想は旅人で溢れてるもの。
彼らってとっても刺激的じゃない?

(頭を掻く姿に)……ふふ、気を悪くしたなら御免なさいね。
私の方から見たら、父と……あまり変わらないようだったの。
こちらこそよろしく、ミスタ……なんて呼べば?

(熱いカップに手を伸ばして、)いい香りね。頂くわ。
そうだな。大衆の求める刺激的な英雄譚や一代記が言葉を備えてそこら中を歩いている。
まったく文字通り夢のような話だ。
……ただ供給が潤沢になる以上、大衆が次に求めるのは質だろう。より珍しく、より新しく、より面白い刺激を……と。そう思うと遣り甲斐と一緒にプレッシャーも一入だ。
(少し苦笑して見せてから珈琲を一口)

い、いいや? 気を悪くなんかしたりはしないさ。
もちろん動揺もしていない。していないとも。
(平然とした(つもりなんだろうなあ目思いっきり泳いでるけど。な)態度で)
寧ろ君の様なレディを育んだ父君と比較されたなら、それは寧ろ光栄の至りだ。
一応未だ不惑には一歩届かず38なんだが、もう38とも言える。

呼び方は、そうだな。Jでも、ジャンクでも、呼びやすい方で。
料理人の腕の見せ所、ね。
イレギュラーズとしてその特等席に居られるのは、本当に幸運だったわ。
(こちらもカップを傾け)

(……危うく噴き出しかける)
(語調に視線、凡そ全てが彼の動揺を物語る)(何故)(意外にも、意外にも純粋なのか)
(――――などとつらつら考え、それをふんわりと笑顔でカバーして)
……伝記作家さんは嘘が苦手、ってことなのかしら、ね。
気になさってないなら私も嬉しいわ。
レディと言われてしまうと面映ゆいのだけれど……記者なんて仕事、淑女からは程遠くなくて?

(育んだ父、との言葉には、ほんの少し、目を伏せた)

ジャンク?(眉を顰める)……変わったペンネームね?(まさか本気の名乗りではあるまい、と言外に含めて)
イレギュラーズか(コトンとカップを置き)
自分がそうなった時は戸惑ったりもしたものだが……今となってはなるほど、なんと得難い立場を引き当てれた物だと思わずにはいられないな。
恵まれた立場だと考えれば尚の事、『新作料理』にはいよいよ心血を注がねば罰が当たってしまうかな。
(笑いながら、おどけた仕草で両手を広げた)

……うぉっほん(咳払い)
ま、まあ、伝記は偏向的であってはいけないからね。嘘があってはいけない。と言う意味では、その言葉は的を射ていると言えなくも……その、なんだ?
(目を逸らしつつ組み立てた屁理屈がゴニョゴニョと尻すぼみになって行った)
(肩を竦めて)
記者がアクティブな仕事であると言う事には無論同意するとも。
旧時代的な意味での『淑やかさ』との相性が決して良くないと言う事にもね。

だが……そうして動き回るからこそ、交渉に、会談に、聞き取りに……人と触れ合う場面の多さは貴族の御婦人方のそれに引けを取る物ではないだろう。その全てを熟し遣り遂げ、実地で磨かれた立ち振る舞いに気品と美が宿らない道理は無いだろう?
(こっちは一変スラスラ流れる様にまあ…)

……ふむ。
(目を伏せたのを見て取って口を噤み、己の顎を軽く抓る)


そう、ジャンク。中々スパイスが効いた通り名だろう?
(言いつつも、相手の言葉の響きに少し後ろめたそうに苦笑して)
此処に来る前に、まあ、少々、色々あってね。一応名前を変えておいた方が良いだろうとなったんだが……で、まあ、どうせなら思い切った名前に、とね…
私は……興奮が勝ったかしらね。あの空中庭園に召喚された時。
(くるくるとカップを揺らせば、濃い褐色の水面に細波が立つ)
旅人は皆イレギュラーズ。遠い異世界から来た彼らとこの混沌に生まれ育った私達、唯一の共通点よ。
仲間、というのはきっと孤独な彼らの口を柔らかくしてくれるわよね?
(人懐こそうな微笑みには、しかしほんの少しの鋭利さが潜む)
どう?面白いネタはあった?

……オーケー、貴方ってその……親しみやすいってよく言われない?
(または、「誤魔化しが下手」……とは、流石に目上の男性にぶつける言葉ではないだろう。)
(かと思えば流れるように浴びせられる賞賛に、落ち着きなく猫の尻尾をふらふら揺らして)
……女誑しって言われたこともない?
(わざとらしく肩を竦めて見せる)
でも、そうね……どこに行くか、入り込むか、解らない仕事だもの。努力はしているわ。
取材相手に恥ずかしい思いをさせちゃいけないものね。
仕事ぶりへの賛辞として受け取っておくわ。ありがとう。

(ここに来る前に。つまり、召喚前に何かが?)(海色の瞳がぎらりと閃く)
……そう。
(しかし声音はごく軽く。)
Jって呼ばせていただくわ。流石にちょっと気がひけるもの。
……でも、少し残念ね。
興奮が勝った、か……
良くも悪くも状況と環境が一変する状況でそれは、なるほど、君は生粋の記者なんだな。揺らがぬその精神とスタイルは見習いたい所だ。

仲間意識。立場を同じくする事による共感と軟化か。
(顎元の不精髭を親指の腹で掻きつつ、少し考える様に虚空を見ながら)
俺はイレギュラーズになってからこの仕事を始めた身だ。だから比較は出来ないのだが、それでも言われてみれば確かにそう言う傾向はある様に思う。
(微笑みを前に軽く両手を挙げて)
それはまあ、勿論それなりに、ね。
実際、伝記にはなりそうに無かったりそもそも本人がしたがらなかったりするが、逆に記事には向いていそうな旅人もチラホラいる。物々交換と言う形でなら、多少のお役には立てますよレディ(ちょっとお道化た芝居がかった仕草)
女誑しか……
此処で『そう言う言葉は言われ慣れている』と決めれたら様になるのだろうが……残念乍ら、女性関係は何とも慎ましやかな身だよ。
ま、自分としてはただ自分に正直に思うがまま讃えるべきを讃えているだけなんで、さもありなんとは思うのだが。……ただ、『積極的に口に出せ』と言うアドバイスは受けた事があるし、概ね従ってもいるから、そこは多少あるのかもしれないな。

(『親しみやすい』は流そうとして)

……その、親しみやすい、に関しては。誠に遺憾ながらこちらはそこそこ言われ慣れている……(流し切れずに結局白状した)


職業意識の高さと向上心は、男女以前に人間として賛辞されるべき事柄だ。
故に、そう受け取って貰う事に全く異論はない。
(言ってまた珈琲を一口)

……残念?(カップを口から離し、片眉だけを器用に上げる)
(生粋の記者、と呼ばれるのは心地よい。機嫌良さそうに猫耳を揺らして、)
召喚されてから……意外だわ。もともとそういう職に就いていたのだと。
それとも、イレギュラーズ歴が相当に長いのかしら?
(芝居がかった仕草にはくすりと微笑む)
情報交換、やはり持つべきものは同業の伝手ね。是非お受けしたいわ。
とはいえ……貴方が欲しい情報、となると何かしら。

……親しみやすさはインタビュアーの才能のひとつだと思っているわ。
(本当に誤魔化しが下手なようだった。フォローの言葉をかけながらも心の中の彼のプロファイルに特記事項として記しておく)
でも、そうね、積極的に口に出すのは私も同感。
言葉をかけなければ、引き出せないもの。

ん……(こちらもコーヒーカップを軽く傾けて。)
名前を伏せる必要がある人に、おいそれと取材はしにくいでしょう? だから残念。
私としては、J。貴方自身にとっても興味があるのだけれど、ね。
ああ、そうだな。歴が長い方が正解だ。
未だ若い頃に……まあ、若気の至りと言う奴で『やらかして』しまったもので。名前を変えて、召喚を受けた事で結果的に河岸も変わって。だが、だからと言ってしゃあしゃあと同じ仕事を出来るほど神経が太くも無くてね。
それで……(カップに残った珈琲の水面を見つめ、僅かに優しい笑顔を浮かべて)……少し、縁の合った仕事をして見ようと。

(ハッと顔を上げて)
あ、いや、今だってそれなりに未だ若い心算ではあるよ? あるとも。
ただその比較的今以上に更に若い頃の時分の話だと言う事で。
……分かるだろう?(何が分かると言うのかが先ずいまいち不明瞭)


欲しい情報は……(不精髭の浮く顎をザリザリと撫で)
何かしら目立つ、目につく要素があるにも関わらず『いまいち記事になる様な事をしない』旅人の情報かな。
単純に現在進行形で活躍している人物の伝記の方がそりゃあ需要は高いが、そう言う類は情報を集めなくても勝手に目に付く。そう言うのとは違って、今は息を潜めている者の中で、しかし世に示したい物が無い訳ではない個人。
そこに上手く合致すれば、良い客になる。


(コメカミを指先で叩きながら)
一切仕事のみの関係と決めた相手になら、もう少しは器用に立ち回れるんだがね……まあ、仕事の足しになる才能と言って貰えるなら、少しは救われるよ。

声に出さない言葉は伝わらず、文章にしない情報は広まらない。
道理ではあるが、中々弁えるのが難しい事柄ではあると思う。

(カップを口元に寄せる途中で思わず手を止めて)
……興味がある、か。それは光栄至極な言葉だが……
残念だが、俺自身は記事になるほどの実にも外連味にも溢れた人物では無いよ。
分かるわ。「子供の」頃の話、ってことでしょう?
若気の至り、ね……耳に痛いわ。(苦笑いを浮かべて耳をぺたりと倒す)

……もとは、何の仕事を?
(カップをことりと置いて、海色の瞳を向ける)
(答えて貰えるとまでは思っていないけれど、好奇心には抗えない)

良い客、ね。なるほど。
わかったわ。「宣伝」し甲斐のありそうな旅人、見かけたら教えるわね。
(少しだけ、声を落として)
……言葉にしてしまえば、カタチにしてしまえば、広まるのはすぐよ。
炎みたいにね。

(記事にならない、という言葉にふふ、と含み笑いを返して)
今まで出会った旅人で、「これは無理」って客はいた?
(まるで矛先の違う問いを口にする)
子供、子供ね。なるほど、そうだな、確かにガキだった。
(少し痛快げに右の口の端を大きく上げて笑う)
もう少し年を経ていれば、もう少し良い結果を出せたのかも知れない。
……だが、そうはならなかった。その事実は覆らない。
全く、世の中は実に、中々に、ろくでもないな。
(ペタリと倒れた耳を見て少し苦く笑い掛け、カップをソーサーに戻す)

元の仕事か……
(少し考える様に天井を仰いで、戻した顔には少し悪戯な笑み)
……そうだな、『遍歴の騎士様』さ。そう言われたよ。


ああ、是非頼むよ。君の情報は質に期待できそうだ。
……炎か。なら、さしずめ君は火を運び広げる風かな?

(含み笑いと言葉に少しだけキョトンとして、少し考え)
………(顎を抓り抓り少し眉根を寄せて更に考え)
なるほど……そう言えば、『向いていない』と思った客はいても……『無理』と思った客は、いない、な。なるほど……
(その言葉には過去を想う柔らかさと、少しの苦み。)
……。
(珈琲のような声音を、伏せた耳で静かに聞いて)
……む。
(何故か笑われた気がしたので、苦笑いを返しながらそっと耳を立てる)
ろくでもない、ね。……生憎、否定できないわ。

『遍歴の騎士様』……だなんて、
(騎士。)(ちらりと走らせた視線で彼の腕、身体の肉付きを観察しようとする。)
正直、ちょっと予想外だったわ。貴方、結構腕も立つの?
(探る視線はやがて、悪戯っぽい笑みにぶつかり)(ほんの少しばつが悪そうに目を細めた。)

ふふ、期待されてしまうと頑張らなきゃね。
……風、ね。
そうね、それは……素敵だわ。
(風は燃えたりしないもの、と、小さく呟いた。)

居なかったの、やっぱり。
(思案顔ににやり、と微笑んで)
良い腕をお持ちのようだわ。
(耳を立てたのを見ておっとと小さく呟いて口元を指で隠し)

(頭を掻き)
まあ、白状すると騎士様と言うのは……正直過大広告だがね。
しかし荒事を熟していたのは一応事実ではある。
尤ももうすっかり昔の話だし、当時だって別に大層なものだった訳でもない。
(服を通してすら見て取れるほどの物ではない。が、観察眼に優れる物が首元の肉付きを見れば、なるほど『昔は鍛えていました』と言うに充分な程度の精悼さが見て取れるだろう)

まあ、今でも最低限の護身と、後は御婦人を守る為位になら働ける身体ではあると自負しているがね?(気障っぽくウィンクをする)

風も時にはかさ……(小さな呟きが零れ聞こえて口を噤む)
……いや、そうだな。風は風だ。
冬場は少し痛いが、夏場にはこれほど有難い物もない。
ついでに春には爽やかで、秋には風情がある。……良い物だ。

いや、腕はどうだろうな。
完品に出来ると言うだけで、売れるかどうかは保障できないのだし……
(首元……ふぅん。なるほど)
でも、そう呼んだ人がいたんでしょ。ふふ、当時の写真とか残ってないの?
(気障なウィンクにはにぃ、と悪戯な笑みを返して)
あら、頼もしい。守るべきものを背にすると気合が入るなんて、やっぱり騎士的ね。
私は荒事が得意ではないから……何かあったら、お願いね?

何か、言いかけた?
……そうね。風って、色々なものを運ぶもの。
風聞、なんてよく言ったものね?

完成させられるのがプロ、なんて私の師はよく言っていたわ。
この仕事で長く食べているなら、腕は十分ってことでしょう?
……でも、旅人専門って少し……特殊よね。珍しくてウケそうなのはわかるけれど。
何か、彼らに拘りがあったりするの?
……まあ、ね。そう考えれば無碍にも出来ないのも確かにそうではある。
写真はどうだろうな、召喚される前の住処には数枚程度はあった気がするが……
もう随分昔の話で、しかも一度も戻っていない。
普通に考えて既に処分されているだろうな。
(両手を軽く上げて)
いやいや、別にそれは騎士に限らないさ。いやしくも男の端くれならば、誰かを守ろうと言う時に気が抜けているだなんて、そちらの方が情けな過ぎて問題だろう。

…ブランクも長い、それこそナイトとばかりに華麗にはいかないだろうが。しかしその時こそは渾身の働きを見せて見せましょうとも。……事実、俺みたいなのには寧ろ身に余る誉れだしね。


(首の後ろを掻きながら)
いや、何、下らん蘊蓄さ。下らな過ぎて忘れてしまった。
風聞、風に聞く、か。本当に、考えた奴は大した物だ。
まあ、事情は様々あれど、状況が幾ら変れど、完成させなくてはそもそも何にもならないと言う事実だけは覆らないからなあ。
(少し遠い目をして笑う)
腕は……まあ充分だと思いたい所だ。
多分に、客と運に恵まれた物だと思うようにもしているけれども。

旅人専門にしている理由か……(少し中空を見て思案)

……そうだな、一つは。それを専門にしている専門家だと言うと、旅人の警戒が少し緩む。と言う実利がある。人は体調が悪い時、近所の知人には腹も見せないが、医者相手なら初対面でも全裸にだってなる。

もう一つは……まあ、そうだな。何だろうな。
ちょっとした意地みたいなものかな。
ああ、有無を言わせず、だったものね。
私は旅の途中だったからあまり影響は無かったけれど……
(諸手を掲げての仕草にふふ、と笑って)
貴方の勇姿を拝むのもとても楽しみ……なんて、あまり言うべきでは無いのかも知れないわね。
ローレットはどんな仕事を私たちに持ち掛けてくるのかしら。
……今のところは平穏なものだけれど。

なぁに、かえって気になるじゃない
(軽く身を乗り出して)
……忘れちゃったなら、残念。

(旅人専門、の看板が齎すメリットを頷きながら聞いて、)
ふふ、学者みたいな手口ね。
もしかしてこの事務所の大層な名前も、そういうことなの?
……意地、って?
旅の途中か、それは確かに一番面倒のないパターンだな。まあ、俺も当時は抱えてる仕事なく既に血縁もなしだったから、そう言う意味では面倒が無い方だったとは思う。
実際旅人に聞き込みをすると、召喚当時や残して来た事柄に関する愚痴が多いからな。無理からぬことだが…
(肩を竦める)

勇姿、か。
今後どうあれ動乱の時代になりそうではある。
そう考えれば……恐らく、嫌でも機会は来るのだろう。

(口の端を親指の腹でほぐす様に掻き)
まあまあ、風は移り気な物だ。
俺も風ほどでは無いにせよ、結構意識が直ぐ次に移る物で、すまないね。
……いや、物忘れが激しい訳ではないよ? 未だそんな年ではないからな?
(強調)


あ、ああ、そうだな。多少大げさな方が印象が良いだろうとね。
どうせなら本格的な方が良い。と言うのは顧客からすれば当然の発想だろうし……
(流石に金持ち相手には阿漕にやっているとは言えず言葉を濁す)
(数秒思案する様に目を閉じて)
……旅人の話は、面白いとね。素敵だと、そう言った人がいた。
逆に、下らないと。余計な物だと言う奴もいた。

俺は、まあ、どちらかと言えば前者の方と仲が良くてね。
(悪戯をコッソリ白状する様に声を潜めて)
……そして後者はぶっちゃけ嫌いだった(破顔して見せる)

そんな、子供っぽい、下らない理由さ……
どうも俺はポケットが小さい男らしくてね、そんなちっぽけなものしか入りやしない。
(情けなそうな言葉とは裏腹に、浮かべた苦笑は存外に愉快げ)
混沌生まれなら戻ることも出来るでしょうけど、旅人は確かにそうよね……
ふふ、そういう愚痴に貴方のような「専門家」の聞き手がいる、というのは……救われる人もいるわね、きっと。
(そこが主軸じゃないにしても、と付け足して、カップを傾ける)
……幻想の内情は結構キナ臭いって評判だもの、ね。
(嫌でも。……そう零す顔をじっと見つめて)
ま、お互い上手いコト立ち回りましょ?

言ってないわよモノワスレなんて。
(苦笑いしながらひらりと片手を振り)
ご自身で思ってらっしゃるほど老齢には見えないわよ、J。安心して?
(……その原因は時折見せるこういう落ち着きの無さなのだが、それは言うまい)
自分の半生を預けるのだもの、ね……
(彼に「旅人」を語った、二人の人物)
(声を潜めて、秘密を打ち明けるような声音)
……ふぅん?
(子供のような笑顔につられて、こちらもくすりと笑う)
どちらも、貴方のすぐそばにいた人たちなのかしら。
……嫌いだったと言う割に、貴方、嬉しそうだもの。
(腕組みをして少し悩む様に呻いて)
……いや、救いと言うほどのものでも無いとは思うが……しかし、文字通り愚痴の吐き出し口に位はなれているのかも知れないな。報酬の一部として受け取って貰えているなら其れは其れで良い事、か。

そうだな、上手く立ち回れば何とでもなる筈だ。
(空になったカップを持ち上げ底の珈琲跡の円を眺めながら)
幸い、器用に賢く立ち回る事には多少の馴れがある。……ある筈だ。あったよな?
……(何か思い出す事でもあったのか段々自信なさげに眉根を寄せ)
ま、ちょっと覚悟はして置こう……

そ、そうだろうか?
未だ若いか。ピチピチだろうか。それなら良いのだが……
(若い人はピチピチとか言わないがそこに自覚はない)

嬉しそう?(思わずちょっと心外だと言う顔をして)
…………まあ、その、別に悪人では無かったと思うが(渋々と言う風に呻く)
彼らの気持ちが分かるなんてとても言えないけれど……そうね。
ただ聞いてくれる相手、って、割と得難いものだから。

……何でそこで自信無くなってっちゃうのよ……
(すっかり砕けた口調で渋面を作って見せる)
今思い出せなくてもイヤでも思い出すことになるわよ、きっと。大丈夫。
……(ぴちぴち。)(ううむ)
……若さの確認に、ダンスパーティーにでも行ってみたら?
ほら、国王様直々の「ご招待」来てたでしょ。

(心外そうな表情に、苦笑いを返し)
……嫌いなものは嫌いだった訳ね。反抗心で旅人研究するくらい。
一体、どんな関係の人だったの? その「悪人ではない奴」と。
(傾けたカップは……綺麗に空になった。ことり、とテーブルに置く。)
……そう、か。
確かに、ただ聞いてくれる相手が欲しい時と言うのは、俺にも覚えがある。
(少し考え込む様に腕組みをする)

いや……我ながら恥ずかしい話だが、後先考えずに動いてしまう事も極稀にあるのでね。極稀だ。極稀なのだが……どうにも、狙いすました様に肝心な時に限ってその極稀が来そうで僅かに不安ではある訳で……(ゴニョゴニョ)

フォルデルマン三世主催の王宮舞踏会か……華やかなパーティが似合う身とは言えないが、しかし賑やかし位にはなれるかね。
どんな参加者が集まるか、興味が無いと言えば全くの嘘になるし……ふうむ。

(少し考えて)
……まあ、強いて言うなら同僚か。雇い主が同じだったのでね。
理屈屋で頑固で視野が狭い。当時未だ若……今以上に若かった俺と合わないのは、ある種当然の帰結ではあったとも思うね。

(空のカップを指し示し)
っと、お代わりは如何かな?
後先考えない、瞬発力が必要な時だってあるでしょ?
ふふ、貴方って記者も向いているのかもね。

(どんな参加者が集まるか、という言葉に唇の端を吊り上げる)
ね、気になるでしょう。ご臨席の面々が。
一介の記者なら到底お目通り出来ない相手よ。特異運命座標、なんて御大層な肩書はきちんと使わないとね?
……お仕事だけじゃなくて、ちゃんと楽しむつもりではいるけれど。

同僚、ね。それはまぁ……一存では離れ難いわね。
(理屈屋。頑固。視野が狭い。並べられる評価はまるで)……おじいちゃんみたいな人?
確かに一緒に仕事するには、堅苦しい感じだけれど。

(空のカップと、腕時計を見比べて)
とっても魅力的だけれど……随分長くお邪魔したもの。これくらいでお暇するわ。
記者か。光栄な言葉ではある、が……しかし正直自信はないな。
俺は君達程しなやかに現場を渡り歩くには少し鈍すぎるのでね。
寧ろ、どちらかと言えば無粋なガードマン側かもしれないな。
(肩を竦めて少し大げさに苦笑)

ああ言う公の場で人付き合いをするのは気力と体力をすこぶる使うが……
しかし見に回るならそうでもないだろう。確かに良い機会だろうな。
……ああ(少し目を見開いてから笑って)
そうか、そうだな。確かに先ず楽しむのが大事か。
余り他事ばかり見るような野暮をしてもマナーに反する。
そう言う事、忘れてはいけないな。


おじいちゃん……と言うほどではなかったが、まあ当時の俺よりずっと年かさではあったな。正に堅苦しさの権化の様な男だったとも。今はどうしているやら……落ちぶれていたりしなければいいが(ほんの少しの苦みと一緒に小さな呟きを漏らす)
(相手の仕草に自分も壁時計を見やって)
ああ、楽しい時間はなんとやらだ。いつの間にかこんな時間か。
名残惜しいが引き留めるのも無粋だな。

いや、何のおかまいも持たせる土産も無くてすまないね。
次の宿題とさせて貰うとするよ。
(肩を竦める姿に、)
そこは慣れよ、私だって最初は酷いものだったわ。
……でも、そうね。貴方が後ろにいてくれたらとっても箔が付きそうね?
(冗談めかして微笑んで)

ふふ、きっとこの上なく「幻想」的、なんでしょうね。
……私もダンスパーティーなんて随分久しぶりだから……
きちんとドレスアップするのは楽しみではあるのよね。
ばったり会場で会っちゃったら宜しくね?

(思い出を語る口は、少し苦く結ばれる。それを静かに聞いて、)
……なぁるほど、反抗心?
また出会うこともあるかも知れないわね。意外と、混沌って狭いから。
コーヒー、とっても美味しかったわ。貴方のお話も。
次は貴方好みの情報も仕入れてこられると良いのだけれど。
(すっと立ち上がり、ウィンクひとつ。)
じゃ、また寄らせて貰うわね。
お互いいい風が吹きますように、J。

(長い尾を揺らしながら、扉をくぐり)
(こつ、こつ、とヒールの音が遠ざかっていった)
箔か。では、その時は黒服にサングラスでも着けるとしようかな。
上手くいけば如何にもと言う絵面になるかも知れない。
(笑って席から立ち上がる)

ほお、それは良い事を聞いたな。
君のドレス姿が見れるかもしれないのなら、それだけでも宴に参加する価値があると言う物だ。俺の口の中の相棒も羽根を生やして喜ぶだろうしね。
ばったり会えた時、宜しく所か他人の振りをされない程度の身嗜みは整えておくとしよう。

あの男と再会は……正直気まずいばかりで心が二の足を踏むが……
まあ、その時は飛び切りの珈琲の一杯位は奢ってやるさ。
(何故か少しニヒルに笑う)

珈琲も、御婦人を退屈させない話題も、実の所なんとか不興を買うまいと必死になって取り繕っているだけだったりするがね?(大げさに首を竦めて見せておどける)
だからこそ、気に入って貰えたなら望外の喜びだ。
その言葉だけで報酬としては充分だとも。
(立ち上がった相手に向けて芝居がかった一礼)
(扉の横に歩み、カタリヤの歩に合わせて戸を開けて)
ああ、何時でも歓迎しよう。
どうか君に変わらぬ健勝と幸運を、カタリヤ。ではまた。
(そうして去るカタリヤを少し見送ってから、音をたてぬ様に柔らかく扉を閉めた)

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