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異世界歴史学研究調査事務所

応接室の日常2

 外面ばかり整えている異世界歴史学研究調査事務所だが、その実その取り繕った立派さを発揮する事は滅多にない。何故ならそれを利用する立場にある男が非常に面倒臭がりであり投げ遣りだからだ。
 例えば、己の伝記を書かせるのに大枚をはたきそうな金持ちの上客であれば、男は部屋を改めて整え、不精髭を剃り、髪の毛をキッチリ撫でつけて出迎えるだろう。
 だがそう言った上物の依頼客は事前の予約が必須としている。『忙しい≒凄い繁盛してますよ』アピールをする為にもそこは徹底しているし、そもそもそう言う類の客は普通事前に連絡か人を寄越すのでどの道飛び込みはほぼあり得ない。

 よって、平時の応接室はつまり、男や男に近しい者にとってはのんべんだらりだらけるための休憩スペースに他ならないのである。

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まあ、事情は様々あれど、状況が幾ら変れど、完成させなくてはそもそも何にもならないと言う事実だけは覆らないからなあ。
(少し遠い目をして笑う)
腕は……まあ充分だと思いたい所だ。
多分に、客と運に恵まれた物だと思うようにもしているけれども。

旅人専門にしている理由か……(少し中空を見て思案)

……そうだな、一つは。それを専門にしている専門家だと言うと、旅人の警戒が少し緩む。と言う実利がある。人は体調が悪い時、近所の知人には腹も見せないが、医者相手なら初対面でも全裸にだってなる。

もう一つは……まあ、そうだな。何だろうな。
ちょっとした意地みたいなものかな。

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