PandoraPartyProject

ギルドスレッド

草カフェバー『ダンデリオン』

【一幕】うらぶれた倉庫

草カフェからは少し離れた、今は使われていない倉庫。
天井近くの小さな明かり取りの窓から差し込むほそい月の光にこまかな埃が踊って見える。

普段は施錠されている。
が、がちゃりと音を立てて鍵は外れ。

軋む音が、して。

扉は開かれた。

※RPスレッドです。

→詳細検索
キーワード
キャラクターID
(年に数回、風を通す程度だと、店長は言っていた。
くれぐれも、修復不能な破損はしないように。そう店長に念を押されたことを思い出す。
あのヒトもよくわからない御仁だ…そう思い、今はそれどころではなかったな、と軽く頭を振る。)

(わざわざこんな場所を用意したのは、またやりあうことになる可能性を考えてのこと。
そのようなこと、無いに越したことはないが…それが譲れないものであれば、或いはまた。)
(安堵したばかりだった。
互いの神を主張する必要がなければ、殺す理由もない――なんて、どんなに浅はかな考えだった事か。
答えも出ていないのに、足は自然と相手が居るであろう場所へと向かった。

カフェで落ち合えば被害も増える。とすれば自ずと行き先は絞られる。平蜘蛛を起動し、ゆっくりと入口の扉の方へと歩み)
……そこに、居るのか。
(一見、無防備に振り返る。視線が一瞬に満たないごく僅かな時間、埃の舞う空間を捉えたあと、姿を見せた男へと固定される)

…来たか、弾正。

(来るだろうと、思っていた。律儀な男だ。だが、それ故に、どちらも選べない。ねじ伏せて力づくで引き離せば『こちら』へ転ぶのだろうか…
迷う心に蓋をして、向き直る)
このまま後を負わずに逃げ出したら、俺はどちら側でも居られない。
イーゼラー教の信徒としても、アーマデルのパートナーとしても。

(硬い機械音が薄く響く。平蜘蛛のディスプレイは何も映さぬ代わり、ぼんやりと赤く光っていた。
少し距離を置いたところで立ち止まり、向き直った相手の上着へ視線を逸らす)

……優先すべきは、あの子供の殺害だというのに。
(マントの片側を少し持ち上げる。覗いた脇腹の傷から流れた血は既に乾いて固まり、傷そのものも再生能力により、ほぼ塞がりかけている。)

追ってきたということは。
…何を選ぶか、答えが出たということか?
(『どちらを選ぶか』ではなく、『何を選ぶか』と言った。
対極に位置するどちらも選べないなら、別の何かを選ぶしか無い、だろう。それが見つかるかはさておいて)

(依頼上必要でない殺しはなるべくしない、ことに相手が子供である場合は。それは自分の我儘であり、芽生え始めた信念の若芽でもある。そう教わったからではなく、必要だから選んだことではなく、自分自身が感じ、考え、選んだこと。
それ故、例え友であっても、そう簡単に譲るわけにはいかないのだ。ここで譲れば…また、ヒトを殺す為の刃、ただの道具でしかなかった自分に戻ってしまうであろうから。)
(安堵の気持ちが一握り。治りかけている傷口を見て肩の力が緩みかける)

生き方はそう簡単に変えられない。落ちこぼれでも俺はイーゼラー様の信徒だ。
アーマデル……君を倒した上で、今度こそあの子供を仕留める。確実に。

(懐から抜き出したUSBを平蜘蛛のスロットへ、流れるような動作で差し込む。
0と1の光の羅列が液晶を巡り、読み込むと同時距離を取ろうと後ろへ跳躍した)

この手はイーゼラー様の手、この牙はイーゼラー様の牙。
立ち止まる訳にはいかない。救いに素直でいなければならない。
ならば……こうするしかッ!

(『SUCCESS』の表示と共に弾正の周囲の気温が急激に下がる。アブソリュートゼロ――虚空に現れた電子の陣からせり出す氷の礫が、相手を氷像たらしめんと流星の如く降り注ぐ!)
(そうなるか、と目を眇める。迫りくる冷気と氷の礫の前に無防備に立ち尽くす、と見えた刹那、纏わりつく霜を振り払いもせず、踏み込みながら抜刀。収納モードより解き放たれた蛇鞭剣が威嚇するような音を立てながら、生きた蛇の如き動きでにじり寄る)

(倒すと言った。殺すとは言わなかった。…都合の良い解釈だ。結果はどちらでも変わりはしない。
迷いが最速での反撃の機会を奪った。蛇鞭剣がまるで不満の声を上げるように軋る)

(赤みを足した金眼が弾正を見据える──)

…結局、お前「も」そうなのだな。
(呟くと同時、更に踏み込んで蛇鞭剣を繰る。刻を刻むような、規則正しいが故に焦燥を誘う音色を奏でながら、身をうねらせた蛇の如き刃を、弾正の足元へと滑り込ませる)
(いつもは頼りにしていた音だ。解き放たれた蛇腹の鱗に表情を一層険しくする。
刃の動きは予測不能だ。狙いが足元と気づくには少しばかり遅すぎた。地を蹴ると同時、左足に痛みが弾けた。ざっくりと破けたズボンから血を滴らせつつ、詰められた距離を取り戻そうと間合いを広げるように動き)

どうしたアーマデル。殺すつもりで来い! 貴様の刃も惑いの色に泣いているぞ!

(睨み返す瞳は仄暗い赤。そこに普段のぬくもりは無く、殺意に殺意をうわ塗るように咆えた)

――何もかも、冬に抱かれてしまえばッ!!

(負傷した足を庇うどころか体重をかける。身を削る事を厭わず刃を奮う姿はやはり"危うい"のだろう。平蜘蛛のUSBを差し替える動きは秒の世界。プログラムが武装の新たな殺意を組み上げていく

そのアクセルカレイドは森閑爆波。投げ放たれた蜘蛛型の子機が相手へと迫り、音もなく爆発する無響の一手)
(殺意を向けられるほどに冷めてゆく。それはある意味職業病であり、ヒトとして生きる上での齟齬でもある。金眼に混じる赤みもまた引いて。冷め切った頭で次の一手二手を図りながら、ステップを踏む。よく覚えているその技の、直撃を避けようと)

(部屋の中、かき回された空気。どこかで微かに柘榴酒の香りがする。空気も読まず、酒に浮かれた霊魂がふらふらしているのかもしれない)

(語りかける言葉を組み立てる余力までもを演算に回しつつ、暗がりを駆け抜ける。マントの留め金を外し、被せるように投げつける。それに身を隠すように這い寄る蛇腹鞭剣。手から離れた柄が床を叩く前に、最後の一歩を踏み込んだ。その首に組み付こうと狙って。)
(そこまで開くもない倉庫内。外に相手を誘導するならまだしも、背に壁が迫る。
漂う酒の香りに毒を警戒し、身構えようとした瞬間――)

……ッ!?

(闇が降って来た。それがマントだと気づく前に、反射で右手を後ろにまわす。引き抜いた短刀は先の戦いで折れており、もはや使い物にはならない。
どこから鈍色の蛇に食い破られるか――考える間もなく、布越しに手が触れて目を見開いた。組み付かれるがまま、バランスを崩し後ろへ倒れ込む)
か、は……ッ! ……っ、……。
(彼の頭を庇い、床に叩きつけられる。痛みを堪えて身体を回し、脚も使ってよりきつく、強く締め付ける。)

(…これは、使って見せた事は…無かった、筈)

(明かしていない手の内を更に晒すことを一瞬だけ迷いつつ、ここで手加減をしても納得できないだろうと思い直す。ギリギリまで…もはや計算を回す余裕も無く。経験と感覚を標に、ナイトメアミラージュを叩き込む。刹那の悪夢と、続く虚脱の一撃。立ち直る隙を与えずそのまま落そうと締め付けを続ける、蛇の如くに。)

(…落ちてくれ)
(願いは、自分の為。祈りは、他人の為。それは願いか、祈りか。)
(締め付けから抜け出そうともがくが、抜け出す前に違和感に気づく。
視界は暗闇に閉ざされたまま。ならばと目を閉じ耳を澄ます。欠けた短剣を勢いよく振り上げ、相手がナイトメアミラージュを放つとほぼ同時)

――ッ!!!

(アーマデルへ迫る平蜘蛛に力いっぱい振り落とした。耳障りな機械音を立て煙を上げる兵装をよそに、その主たる男は虚脱の一撃をまともに喰らう。声にならない悲鳴があがり、反射で身が反り返った)

……ァ……ル………。

(削れた精神はやがて切れ、意識を手放す。腕がだらりと力を失い、手から短剣が滑り落ちた)
(…慎重に、極めを解き、呼吸を確認する。思わず安堵の息が盛れるが、まだ油断は抜く事は出来ないと気を引き締め)

(確か…あの辺に…)

(拘束を解く為でなく、別の何かへ、手を上げた。あの状況で、目の前の『敵』を無視してまで手を上げるもの。
それはすぐに見つかった。煙を上げ、不規則に機械音を漏らしながらも這いずるようにじりじりと移動する、蜘蛛型兵装。)

(鞘を探る。そこにあるべき蛇腹鞭剣は平蜘蛛の向こう、力尽きたように床に転がっている。代わりに隠しから引き出したのは錆びついたナックルナイフ。ナックルに指をかける刹那の時間すら厭い、鈍器としてただ叩きつける。放つは崩滅呪王、魔性の一撃に己の流した血への幾ばくかの復讐を乗せ。完全に動かなくなるまで、何度も。)

(使い手の意に沿わぬ動作をする、彼の兵装が信頼できないと思った。彼の様子がおかしいとも、思いはした。だが、彼がその兵装を随分と気に入っていたのを知っていたから、いきなり壊すのは躊躇われた…話せば通じると、思い込んでいたのだ。結果、その判断の甘さが、争いを招き寄せた。)

(開いた脇腹の傷を押さえながら、蛇腹鞭剣を招き寄せる。横たわる弾正にマントをかけ、中空へ言葉を投げる。)

「酒蔵の聖女、見張りを頼む。誰か来たら起こしてくれ。報酬は…後でな」

(ゆらりと空気が揺れるのを見届け、片膝を抱えると、目を閉じた)
(軋む音を立て、扉が開く。白く長い髪、黒い布で目元を覆った、男とも女ともつかぬ麗人が、救急箱を手に入室する。)

…おやおや。随分派手に暴れたようだね。…店長が怒らないと良いのだけれど。

(アーマデルと、その傍らに横たわる男を見る。床に残る血痕に首を傾げると、床に置いた救急箱を開く)

(けだるげに顔を上げたアーマデルに微笑みを向けると、弾正の怪我の手当を行う。消毒薬を染ませた布で脚の傷を拭い、回復術を施して止血を行うと、包帯を巻いた)

(自分に手当は必要ない、と言うアーマデルの頭を軽く撫で。どろりとした緑の液体を満たしたボトルを渡し、救急箱を抱えて立ち上がる)

…話をするのなら、カフェの方でするといい。もっとも、二人共、その格好をどうにかしないと表からは入れられないけれど、ね。

(手当の為だけに来たのだろう。言葉の足りない子達だね、そう言って微かに笑うと、静かに立ち去った)
…誰か来たら起こしてくれと、言ったじゃないか。

(はあ、と大きく息を吐く。擦過傷、凍傷、切り傷、打撲。脇腹の傷は再び閉じ始めているが、全身が鈍く痛む。これは忘れてはいけない痛み、友を信じきれずに刃を交えた、その罰で、簡単に癒やしてはいけないものだと思った。それを汲んでくれたのであろう保護者に感謝しつつ…無理に手当をしなかったという事は、命に関わる傷ではないということだろう。
彼が目を覚ましたとき、どんな顔を向ければいいか…分からず、再び顔を伏せ、目を閉じた)
(手当をされている間も意識はまだ手放したまま。
己への疑念と悔悟だけがぐるぐると渦巻いて、悪夢の中に囚われていた。

教えを破る事はできない。少年を殺すことは絶対だ。
それを出来なくするには極論――己が死んでしまえばいい。
ただし自殺は許されない。それもまたイーゼラー様の教えのうちだ。

『だから戦友(とも)を利用したのか? 彼が傷つく事も知らんぷりで』

何処からか雪道の声がした気がした。こんな汚れた己にも酷く優しい声だ。それが一層罪悪感を引き立てる。辺りが闇に染まって、自分自身が見えなくなる。
これはイーゼラー様のお恵みだ。死を司るあの御方が、罪ある身体を解体(バラ)し尽くして――)

地獄の天井って、案外現実じみてるな……。

(目を覚ますなり零れた冗談はひと笑いにもならなかった。痛みは引いたが熱を帯びる足。身体の節々が痛い。……間違いなく、生きている)

……。

(ただ起き上がる気力もなく、ごろんと寝返りひとつ)

……!?~~ッツ??

(すぐ横に相手の顔があってぎょっとした。声を出しかけて、起こさないようにと慌てて口を閉ざす)
(そんな事を思っている場合ではない事はわかってる。
わかってるが――寝顔が可愛い。そして綺麗。間近で見れば睫毛が長いなとか、唇が柔らかそうだとか、前々から思っていたが顔が整っているなとか――そんな雑念ばかりで一気に体温が上がる)
(深く、浅く、まどろみながら、夢を見ていた。
滝のような雨の中、泥沼と化した地を歩む。雨にけぶるその先に遠く、見慣れたマントの背が見えて。追いつこうと早めた足を取られて転ぶ。絡みつく、水を吸って重くなったマントの裾をなんとか捌いて起き上がると、その姿はもう見えなかった。
置き去られたのだ。追いつけないから。足手まといだから。分かっていても、こうして行動でそれを思い知るのは重かった。
廃屋に身を寄せ、マントを絞る。冷え切った身体は強張って重く、降り続ける豪雨を見上げ、青ざめた唇を噛み締めた。
…その後の記憶は曖昧で、夢もまた切れぎれで。

その地では、ヒトは、ヒトのみが、『運命の糸』を紡ぐ。そうして紡いだ糸は死後、箱庭に刻まれた理により、《死》に満ちたその地において生命を紡ぐ奇跡を織りなす。
生前においては紡いだ糸を差し出し、相手もまたそうすることで糸は撚り合わされ、《縁》となる。それは生と死を共にする絆であり──死者が生者を連れ去る呼び声でもある。

そうとは知らず、浅くはあるが撚り合わされた糸を振り払い、断ち切って──)

……っ

(弾かれたように顔を上げた。そうだ、ここは故郷ではなく、あの時ではない。
気配を感じて隣を見ると、自分が絞め落として転がした男の顔が見えた)

……おはよう?

(窓から差し込むのは変わらず月の光。何がおはようだ、そんな時間じゃないだろう。しかし、他にかける言葉も見つからず。常通り、表情筋が仕事をしていないこの顔では、さぞかし間抜けに見えることだろう)

…怪我は?…それと、すまない、止めをさしてしまった。
(粉砕された、いや、自分がそうした平蜘蛛が目に入る。平蜘蛛も短刀も壊してしまった。替えの装備はあるのだろうか。そう思って、替えの武器があればまた戦うことになるのだろうかと視線を伏せる)
(よく見れば前髪が瞼に少しかかっている事に気づく。退けてあげた方がよいだろうか……そんな事を考えて指を伸ばそうとした瞬間、
唐突に顔を上げたものだから、ビクッと驚いて固まった)

お、おはよう。

(つられて返事をかえし、時間帯に気づくのはその少し後だった。全くのボケ殺しである)

トドメも何も、生かしておいてくれたんだろう?
……あ。

(視線の先をたどって、ようやく"死体"を目にした。完全に沈黙した平蜘蛛に目を細める。
教団に入る前からの相棒だ。思い入れが無いと言えば嘘になる。しかし、それ以上に気になった方へ視線を戻した)

気にするな。アレのエンジニアは凄腕だ。俺の怪我もそこまで大した事はない。
少し貧血気味なのと……硬い床で随分長く寝ていたようだな。死後硬直したみたいにあちこち軋む。
それより、アーマデルの方こそ大丈夫なのか? 俺の方は手厚く手当してくれているのに、キミはボロボロのままじゃないか。

謝罪するべきは俺の方だ。教義とキミと、どちらを選ぶ事も出来ず……エゴにまみれた選択をキミに強いてしまった。
殺されればそれでいい。少年の命を救えるし、キミと離れたまま生きていく気力もない。
キミを倒す事が出来たなら、教義を全うすればいい。言い訳は後で考えよう――なんて。
迷惑にならないように心がけると言っておきながら、深く傷つけてしまった。
きっと平蜘蛛も、中途半端な俺の心に反応したんだろう。あれは俺の心象で姿を変える武器だと聞いている。
…………すまない。
(あんなやり取りのあとだ、やはり気まずいのだろう。若干挙動不審に見えたのを、そう好意的に解釈した)

(武装の再生は可能なようだと知り、若干の安堵と、それよりも色濃く複雑な思いが渦を巻く。意図しない動作をするということは、いざという時に制御できないということ。それを切り捨てる事を強要は出来ない。だが…)

…弾正。俺は最後に、蛇鞭剣を手放したな? それは、ギリギリの状況で、完全に制御し切る自信がなかったからだ。
(彼の脚に巻かれた包帯へ視線を向ける。蛇腹の刃を寝かせ、腹で叩くつもりが、結果はこうだ。これで絞め落そうとして制御を誤れば、最悪、首が落ちていただろう)
故に、それを囮にして、捨てた。俺にとって最終的に、最も練度が高く、誤動作する危険の少ない武器が自分の肉体だからだ。
…………せめて、もっと精度を高めた方がいいと思うぞ。いざという時に思わぬ動作をする、それはとても…危険な事だ。

(捨てた方がいいとは、言えなかった。ただの機械だ。胸中のもやっとした感情は総合すれば『気に食わない』に収束する。その原因はきっと、弾正がその作者を随分と買っている様子であるせいなのだろう。
…そう気づいて(或いは誤認して)しまえば、そんな嫉妬じみた事を言えるはずもない)

いや、俺も、やりあってる時はあんたを疑っていた部分があるしな。偉そうにあれこれは言えない。

俺の怪我は…まあ、慣れてるからな、気にするな。
手当をしたのは俺の…保護者みたいなものでな、放置できないような怪我なら問答無用で簀巻きにされてるところだ、包帯で。

今回の件は、お互いの認識が甘かったということだろう。
必要になったら話し合えばいい、それ自体は間違ってないと思うが、譲れないラインくらいは先に確認しておくべきだったな。
ことに宗教絡みの認識はぶつかるとお互いに譲れず拗れやすい。

やり合った事、それ自体は別に謝る事じゃないだろう。譲れないものがある、話し合いでは解決しない。なら、こうなるのはある意味、必然だ。
だが、『決闘』と『殺し合い』は違うものだ。決着をつけるなら『決闘』であるべきだった。
…違うか?
……。
(手放していたのか……。混乱の中で視界も奪われた事で、気づく暇が無かった。敗者が語る事はないがそれ以前に、まるで心配してくれているかの様な忠告が心に染みる)

そうだな。もっと平蜘蛛と向き合うべきだった。都合の良い武器だと思っていたが、心象を感じ取れるほど繊細なら、主人の半端な覚悟にどれ程の不安をかかえていた事だろう。

もっと対話をして、連携を取れる様にするとしよう。
(制御よりも対話に方向がズレてしまったのは、自然現象から生まれた存在故に、無機物もまた同じ命という感覚があるからで)

アーマデルが気にしなくても、怪我を負わせた俺が気にする。
怪我が治り切るまで、身の回りの世話くらいはさせてくれ。
キミが許してくれるならだが。
(本当に異常はないのか。確か頭を自分の代わりに打っていた様な。心配し、撫でてみようと手を伸ばす)

『決闘』……そうか。そういう線引きが出来るものなんだな。
俺の教団での役割は死を与える事。生かしたまま互いの力をぶつけあう、というのは考えも及ばなかった。ただ……殺しに来い、とは言えても、アーマデルを殺すとは言えなかった。
争いたくない。傷つけたくない。……キミの命を大切にしたい。
そういう気持ちと闘争心が混ざり合って、余計に訳が分からなくなっていた気がする。

……次に譲れない何かがあったら、決闘を申し込むと約束しよう。だならこれからも、そばに居させて欲しい。
(対話。そう聞いて、モノに愛着を持ち、名をつけて愛用するタイプなのだな、と解釈した。剣に個体名をつけて使い込んでいるとおり、自分自身に思い当たる部分のあることであるが故の理解(誤解)であろう)

…そうだな、仲良くするといいさ。
(そう言いつつ、微妙に面白くなさそうなのは、さておいて)

(伸びてきた手をちらりと見、今更危害を加える意図ではなかろうと、おとなしくそれを受け入れ)

それを言うなら、俺も弾正を傷つけた。そういう意味ではお互い様だろう?
だが、そうだな…あんたの怪我も心配だし、幸いなことに医者もいる。差し支えなければ、弾正の傷が癒えるまで、傍にいてくれると俺も安心できる。

(さりげなく、彼の怪我に話をすり替えている。心配なのは偽りではない。気にかかるのが肉体の怪我だけではないだけで。
ただの偶然であればいい。状況、兵装の意図せぬ挙動、彼自身の心の動き、その全てが彼を追い詰める方向に転げ落ちていったのが。
意識と無意識の境界でちりちりと鳴るのは何に対する警告なのか…傍にいればわかるかもしれないし、保護者に診せればなにか気づく事があるかもしれない、と)

俺も弾正と命の獲り合いはしたくない。先刻のことも、何と言われようが、殺すつもりはなかった。
…説得する前にとりあえず絞め落として簀巻きにしよう、みたいになるのは、まあ…うん。悪かった。
こんなことはこれきりにしてくれ。精神衛生的によくない。
あんたが傍で笑っててくれるなら、俺にとってはそれが一番いい。
(少し筋くれた大きな手がわしゃわしゃと頭を撫でる。凹んだところやコブになってしまった所が無いかの確認だが、ついつい可愛さ余って大型犬にするようにオーバーになってしまう。
あったかい。そして当然のように柔らかい)

アーマデルの髪はサラサラしてるな。いったいどんなシャンプーを使ったらこんなに……いや、それは関係のない話だった。

(そういえば、先程から何か不機嫌そうに見えるのは気の所為だろうか。
やはり怪我の痛みが残っているんじゃないか? それとも何か遺恨が――
考えるほど迷走し、結果として暫く一緒にいれば分かるかもしれないとも考えた)

わかった。ご厄介になる代わりに家事については任せてくれ。
とりあえず平蜘蛛の修理を道雪に出して、荷物を家からまとめるか。姉ヶ崎には――いや、言わない方がいいな。アレは療養中も押しかけてきそうだ。

(相手の真意はいざ知らず、共に居れるきっかけが出来た事に内心浮かれていたりする。
一瞬絶望的なほどに悪夢を見せられたりもしたが、その程度は些細なことだ。彼の寝顔が見れればお釣りが来る)

俺は猪突猛進なところがあるから、簀巻きで済むならいくらでも。
……。

(相手の言葉を聞いた後、目を見開く事しばし。ぼっ! と耳まで赤くなった後、慌ててそれを隠すようにうつむく)
すまない、真面目な話なのはわかっている。わかってはいるんだ。
ただ、なんだ…アーマデル。キミ…天然タラシだとか、言われた事はないか?
(おとなしくわしゃられている。揺れる手を追うように視線だけ上に向けている顔がちょっと犬っぽいかもしれない。なかなか強かに打ち付けたのは背中だが、特に言うべきことでもないなと思って何も言わなかった。)

…?(髪の話には、よくわからないという顔をして。身なりにはそれほど気を使わない方なのかもしれない)
弾正の髪の方が手触り良さそうに見えるが…?(さっきまで犬だったのに、今度は猫じゃらしを追いかける猫みたいな顔になっている)

荷物を取りに…ああ、着替えとか必要だよな、そういえば。
とりあえず今日は休んで、その服を洗って繕って…昼日中の方がいいんじゃないか?最近は何かと物騒だし、こんな夜更けにそんな格好で…見咎められると、ちょっと面倒なことになりそうだ。
(表情筋はあいも変わらず仕事をしていないが、微妙に寂しそうな風情ではある。見慣れれば意外と感情を読みやすい方かもしれない…?)

猪突猛進ということは、定めた方向へ注力できるという事。
弾正のそういうところは長所でもあると思うぞ。
俺は…こうだからな。若造が偉そうな事ばかり、と不快な思いをさせてはいないか?

(大柄な弾正と、小柄なアーマデル。うつむかれると逆に距離が縮んで)
天然タラシ…? そういうのはむしろ、弾正のような者の事を言うのでは?
俺はただ、髪が伸びやすいだけだ。整えるのも面倒になってこうしている。
(毛艶のヒミツが当人でも分からないとくれば、やはりこれも保護者の努力の賜物なのだろうと考える。
まさかR.O.Oの姿そのままだなんて気づく訳もなく、アーマデルに似た褐色肌の爽やかお兄さんを脳裏に浮かべた)
こ、これは強敵だ……。
(保護者とはいえ恋敵にならないとは限らない。意外なところからの強敵にうーんと頭を悩ませた)

しかし、修理には早めに…いや、そうだな。この歳になるとどうにも戦いの後の疲労感が拭いきれない。
休みを入れなければ、いざという時に対応しきれなそうだ。武器のメンテナンスは明日持っていこう。
(と、言葉を途中でのみ込んだ。いつも通りのすまし顔にも見えるが雰囲気でなんとなく感じたようで、
頭を撫できった後さまよいかけた手で肩を抱き寄せた)

少なくとも俺自身も充電が必要だ。……アーマデル分、不足している。

(そんな事を口走ってから更に恥ずかしいと耳の赤みが強まる。気づけば間近に顔があった。驚いてからバッ! と顔を上に逸らし)

そ、そんな筈はない。そもそもこの歳でたらしこむも何もないだろう。気にかけてくれるのはアーマデルくらいだ。
(強敵?と首を傾げる。「とも」と呼ぶ類のヤツだろうかと思いつつ、考えてもわからないものはそっとしまい込むことにしたようだ)

そういえば、先刻、保護者が来て手当をしていった時、弾正は意識がなかったのだったな。
その…な…?(言い難そうに視線を彷徨わせ)…実を言うと、R.O.Oの俺のアバターは、保護者の外見を参考にしていてな…。
見た目がちょっと似てると思うが、その…あいつには内緒にしておいて貰えないだろうか。無断で作ったから、知られると…ちょっと、気まずい。
(『参考にして』『ちょっと似てる』どころかほぼそのままだし、細部までやけに拘ってるのが透けて見える。これは『ちょっと気まずい』どころでなさそうな気配を濃厚に漂わせている…)

まだまだそんな年じゃないだろう?とはいえ、休息は大事だ。年齢に関係なく、な。
ああ、そうしてくれ、今そのまま帰られると、帰る途中で行き倒れてるんじゃないかとか、…気が変わって戻ってこないんじゃないかとか。変な心配しそうだからな。

…っ(腕を回されて表情が動きかけた。表情筋は頑張った。何故か神妙な顔になってしまった。解せぬ)
そうか…俺も補充が必要だ、奇遇だな。(背中に腕を回し、軽くぽんぽんする。保護者にやられると秒で寝るやつである。)
…そもそも、俺の名をを呼んだのは弾正だぞ。

…と、歩けそうか?
いつまでもここで転がってると、誰か様子を見に来るかもしれない。
保護者ならいいが、無関係の他人だと言い訳が面倒だ。(すっかり荒れた様子の倉庫内を見回して)
なにっ、来ていたのか?
……くっ。ご挨拶をしそびれた! 今度、菓子折りをもってお礼しに向かわなければ。
(ファーストインプレッション、大事である。ボロ雑巾みたいで汚い男などと思われなかっただろうか。眉間の中央に人差し指を当てて考え込む)
なるほどあのアバターの……。つまりアーマデルの理想の姿は保護者殿という訳か?
(ますます強敵の気配を感じて溜息をついた)

アーマデル、後学の為によく覚えておけ。
人間、30を過ぎると疲れは取れなくなるぞ。本当だ。お前もあと13年後には分かる様になる。
(一瞬見えた表情に嫌かと思ったが、抱き返されればほっとする。意外とスキンシップが大丈夫、というのが分かった。これは大きな収穫だ)

う、うるさい。これは自爆というやつだ。……俺は爆破が好きだからな!
(真っ赤になったのは自分のせい。それはわかっている。一度抱擁を解いて起き上がると、おもむろに相手を抱き上げようと手を伸ばし)
首に腕をまわしてくれ、アーマデル。
ああ、救急箱抱えて来てたぞ。俺は手当とかは全くわからないから、ありがたいと言えばありがたいんだが…(そう言いつつ、少々バツが悪そうではある。これから暫くは顔を合わせる度、いつお説教タイムになるか、顔色を伺う日々になりそうだからかもしれない)

挨拶しに行かなくても、割りとすぐ顔を合わせることになると思うぞ、俺達が患者としてだが。さっきはざっと診て応急手当しただけみたいだしな。

理想?…(かなり真剣に考え込み)…違うと、思う。顔がいいなとは思うけど。性格はだいぶアレだけど。顔はいいのにな…。でも言動がアレだから台無しなんだよな。顔はいいのに。(言ってることがかなり支離滅裂である。これは所謂『情緒がバグった』というやつではなかろうか)

(よく覚えておけ、と言われて弾正に視線だけでなく、顔を向ける)
30、か…それ、人間じゃない場合はどうなるんだろうな?(というか弾正も…と思ったが口にはせずに飲み込んだ)

いや、自爆と爆破は別物だろう、ベクトルからして(真顔で突っ込んだ)
(離れる腕の熱は名残惜しく。いつまでもここにはいられないと言ったのは自分。気怠げに立ち上がろうとして)

…?(また絞めるのか?と言いかけて意図に気づき)
店まで歩いて帰れない程、弱ってはいないぞ?(大丈夫であると見せようと、ゆらりと立ち上がるが、そのままふらついて)
性格はさておき顔がいいという事はよく分かった。そうか、アーマデルの好む外見はああいうスマートそうな御仁か。……夏に向けて少しビルドアップしようと思ったが、スリ筋を維持した方がいいだろうか……。
(記憶の中のイズルを脳内で観察してまわる。目元が隠れているので肝心な印象が掴みづらく、体系のイメージが残った。
少なくとも自分のようにギザ歯ではなかった筈だ。実は密かなコンプレックスで、ツルギになった時は細部まで白い綺麗な歯にこだわったという裏話もある)
もしかしたら、手当のために店で待っていてくれているかもしれないな。やはり急いだ方がよさそうだ。

(いつも「そういうものか」と受け止めがちなあのアーマデルにツッコまれてしまった…。一瞬あまりの衝撃に目を見開き固まった)
ローレットのレオンだって腰痛がどうのとずっと言いっぱなしだろう。旅人だからとて油断はしておくな。……おっと。
(ふらついた相手を支えようと腰に腕をまわそうか。叶うならそのままお姫様抱っこで抱き上げようとして)
アーマデルが弱っていようが、そうでなかろうが関係ない。
俺が今、抱き上げたいからそうするんだ。大人しく運ばれてくれ。…でないと、怪我が治るまで面倒を見るといったのに意味がないだろう?
ああ、顔はいいんだ。顔は。(はあ、と無防備にため息を吐き、頭を振る)
…俺が『あの顔が好み』なのは否定出来ない。だが、『あの手の顔が好き』な訳ではないぞ?幼い頃からの長い付き合いだから、その補正も込みだと思うしな。
それに、あんたに同じものを求めようとは思わないぞ?…あいつじゃなくて、弾正だから、いいんだ。

年齢に関わらず、さぼって間が開くと駄目なんじゃないか?そういう話は聞いたことあるぞ。俺も休みが長くなると体が鈍って、調子を戻すのに時間がかかるし、やけに疲れたりするしな。…そういうのとはまた別なんだろうか。

…っと、(ふらついたところを支えられ。めまいを止めようと、目を、ぎゅっと閉じ。…開いて)すまない、ありがとう。思ったより回復していないな…。
だってあんたも怪我人じゃないか、手当受けたとは言え、下手すると俺より重傷なんじゃないのか?それに、俺は普通のヒトより密度が高いから、見た目より重いと思うぞ。
(そう言いはするものの、再び目を閉じ、身を任せて)
…わかった。あんたが大丈夫なら、運んでもらえると…助かる。だが、無理はしないでくれよ?
求められてもきっと難しいだろうな。
何せ俺はとことんがさつだ。ああいう繊細な姿には、ROOでなければなれないだろうな。
(だからあのツルギのアバターなのである。理想を求めすぎてしまったがゆえに時々ギャップに苦労をしているが)
俺は俺らしくアーマデルを惚れさせてみせる。……と言っても、今の所何か手段がある訳でも無いがな。

(喉奥に何かが引っかかるような違和感。己を表現する方法を弾正は知っている。
しかしそれは"捨ててきた"ものだ。もう随分と歌を歌っていない。あんなに好きだったのに。今でさえ好きであるのに。
仮にやり直そうとしても、彼が言う様に調子を取り戻すには暫く時間がかかるだろう)
そうだな。せめて鍛錬くらいは欠かさず続けるとしよう。身体は資本だ。

これでも多少は鍛えている。アーマデル一人くらい……ふッ!
(そういえば暗器とかの重量を考えていなかった。持ち上げた瞬間いやな汗が頬を伝ったが、歩けない程ではなさそうだ。
相手が身を委ねてくれると、頑張ろうと意気込んで前へ進む)
無理も無茶も俺達の中では日常茶飯事だろ。ゆっくり安め、アーマデル。

(ある程度慣れてきたら、そのまま倉庫を後にしようと出入口の方へ歩き出し――)
…俺も大概、大雑把な方だ。それと比べなくとも、弾正は気遣いの上手い方だと思うぞ。依頼の相談の時は頼りにさせてもらった。

(とっくに、とは言わなかった。簡潔に、誤解の余地なく伝えられるほど言葉巧みでない自覚がある故に。誤解させてしまえばきっと…取り戻すのは、更に難しい)

ああ。戦い方だけではなく…
先日、楽器に触れる機会があってな。
俺は芸術の素養はあまりないと言われたが、嗜みとして、基礎だけ習った。普段は使う機会も無いし、こちらへ来てからはそれこそ、弾けることすら忘れていたくらいだがな。
…案の定、調弦のやり方すら忘れていた。やらなければ忘れるし、衰えるんだ。それを実感した。

確かに、俺も無理もすれば無茶もするが…腰をやると癖になると言うから、本当に、無理はするなよ…?
(心配そうに見上げるも、すぐに眠気が勝り、まぶたを閉じて)

(抱えられたまま、外──帰宅の途へ)

キャラクターを選択してください。


PAGETOPPAGEBOTTOM