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草カフェバー『ダンデリオン』
(深く、浅く、まどろみながら、夢を見ていた。
滝のような雨の中、泥沼と化した地を歩む。雨にけぶるその先に遠く、見慣れたマントの背が見えて。追いつこうと早めた足を取られて転ぶ。絡みつく、水を吸って重くなったマントの裾をなんとか捌いて起き上がると、その姿はもう見えなかった。
置き去られたのだ。追いつけないから。足手まといだから。分かっていても、こうして行動でそれを思い知るのは重かった。
廃屋に身を寄せ、マントを絞る。冷え切った身体は強張って重く、降り続ける豪雨を見上げ、青ざめた唇を噛み締めた。
…その後の記憶は曖昧で、夢もまた切れぎれで。
その地では、ヒトは、ヒトのみが、『運命の糸』を紡ぐ。そうして紡いだ糸は死後、箱庭に刻まれた理により、《死》に満ちたその地において生命を紡ぐ奇跡を織りなす。
生前においては紡いだ糸を差し出し、相手もまたそうすることで糸は撚り合わされ、《縁》となる。それは生と死を共にする絆であり──死者が生者を連れ去る呼び声でもある。
そうとは知らず、浅くはあるが撚り合わされた糸を振り払い、断ち切って──)
……っ
(弾かれたように顔を上げた。そうだ、ここは故郷ではなく、あの時ではない。
気配を感じて隣を見ると、自分が絞め落として転がした男の顔が見えた)
……おはよう?
(窓から差し込むのは変わらず月の光。何がおはようだ、そんな時間じゃないだろう。しかし、他にかける言葉も見つからず。常通り、表情筋が仕事をしていないこの顔では、さぞかし間抜けに見えることだろう)
…怪我は?…それと、すまない、止めをさしてしまった。
(粉砕された、いや、自分がそうした平蜘蛛が目に入る。平蜘蛛も短刀も壊してしまった。替えの装備はあるのだろうか。そう思って、替えの武器があればまた戦うことになるのだろうかと視線を伏せる)
滝のような雨の中、泥沼と化した地を歩む。雨にけぶるその先に遠く、見慣れたマントの背が見えて。追いつこうと早めた足を取られて転ぶ。絡みつく、水を吸って重くなったマントの裾をなんとか捌いて起き上がると、その姿はもう見えなかった。
置き去られたのだ。追いつけないから。足手まといだから。分かっていても、こうして行動でそれを思い知るのは重かった。
廃屋に身を寄せ、マントを絞る。冷え切った身体は強張って重く、降り続ける豪雨を見上げ、青ざめた唇を噛み締めた。
…その後の記憶は曖昧で、夢もまた切れぎれで。
その地では、ヒトは、ヒトのみが、『運命の糸』を紡ぐ。そうして紡いだ糸は死後、箱庭に刻まれた理により、《死》に満ちたその地において生命を紡ぐ奇跡を織りなす。
生前においては紡いだ糸を差し出し、相手もまたそうすることで糸は撚り合わされ、《縁》となる。それは生と死を共にする絆であり──死者が生者を連れ去る呼び声でもある。
そうとは知らず、浅くはあるが撚り合わされた糸を振り払い、断ち切って──)
……っ
(弾かれたように顔を上げた。そうだ、ここは故郷ではなく、あの時ではない。
気配を感じて隣を見ると、自分が絞め落として転がした男の顔が見えた)
……おはよう?
(窓から差し込むのは変わらず月の光。何がおはようだ、そんな時間じゃないだろう。しかし、他にかける言葉も見つからず。常通り、表情筋が仕事をしていないこの顔では、さぞかし間抜けに見えることだろう)
…怪我は?…それと、すまない、止めをさしてしまった。
(粉砕された、いや、自分がそうした平蜘蛛が目に入る。平蜘蛛も短刀も壊してしまった。替えの装備はあるのだろうか。そう思って、替えの武器があればまた戦うことになるのだろうかと視線を伏せる)
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天井近くの小さな明かり取りの窓から差し込むほそい月の光にこまかな埃が踊って見える。
普段は施錠されている。
が、がちゃりと音を立てて鍵は外れ。
軋む音が、して。
扉は開かれた。
※RPスレッドです。