PandoraPartyProject

ギルドスレッド

ギャザリング・キャッスル

【PPP3周年】Twitter投稿作品投下スレ【おめでとう】

ここはPPP3周年をお祝いするSS作品を投下していくメタスレッドです。

投稿可能文字数上限が1000文字であることを生かして、1000字で完結するSSを投下していきましょう。
投下出来たら、右上の日付ボタンを押して発言を抽出してください。
そしてそのページのURLをTwitterにハッシュタグを付けてツイートすればOKです。
なお、SSの内容は問わない模様です。
公序良俗に引っ掛からない範囲とはなりますが、好きに書き連ねればそれがあなたの愛です。誇りましょう。

参考:https://rev1.reversion.jp/page/3rdContribution

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(7/23追記)
ギルド外の方のSS投下も大歓迎です! どんどん書いて運営を幸せにしましょう!!!
【安価】無辜なる混沌雑談スレ17【雑談】

1:スレ主
ここはスレ主がギフトと《情報網》で作成している雑談スレだよ
主にイレギュラーズ向け
スレタイには安価ってあるけどここでは多分安価はしないよ!
本スレはこっち↓
ttps://■■■……






725:名無しの混沌
3!

726:スレ主
にーい!

727:名無しの混沌
2!

728:名無しの混沌
いーち!

729:スレ主
ぜろ!

730:名無しの混沌
0!

731:スレ主
祝! 三周年!

732:名無しの混沌
いえーい!!

733:名無しの混沌
やったぜ

734:名無しの混沌
めでてぇ
祝え! 更なるパンドラの高まりを!

735:スレ主
で、レオンさんとかみんなに言われるがままにこの日を祝うことになったけど結局何の三周年なの?
私はまだ召喚されて三ヵ月も経ってないんだよ!

736:名無しの混沌
ズコー

737:名無しの混沌
しゃーないしゃーない

738:スレ主
イレギュラーズが生まれた記念日とかじゃないでしょ
練達もちらっと挨拶だけ行ったけど、流石に三年であの施設はないだろうしー

739:名無しの混沌
うむ、召喚自体はもっと前から行われていた
三年前の七月二十九日、それは空中庭園に大量召喚が起こった記念日だ

740:名無しの混沌
純種も旅人も本当一斉に大量に召喚されておおわらわだったねぇ
あの時の殆どをローレットに加盟させられたのはレオンのとざんげちゃんの功績だよねぇ

741:名無しの混沌
正直もう少し練達に流れると思ってたところはある

742:スレ主
なるほどねー
私の時は一人だったんだけど、そんな大人数だったらゴレームも楽勝だったろうに……

743:名無しの混沌
ゴレーム?

744:名無しの混沌
スレ主、最初期の人たちは案内とかで手一杯だったからそこら辺をやってない人もいるんだ……

745:名無しの混沌
>>741
とはいっても結局どうにかパンドラを集めなきゃ元の世界に帰っても世界が滅ぶじゃないか

746:スレ主
なん……だと……?

747:名無しの混沌
そもそもあのゴーレムに苦戦する人いるの??
『レベル1』を考えればそれこそ戦闘放棄するレベルの振り方じゃなきゃ負けようがないだろ……

748:名無しの混沌
ハンマーゴーレムの体力は一般的な『レベル1』の旅人と同程度
病弱ならその限りではないが、見かけによらずその物理攻撃力は低く余程の不運がなければ棒立ちでも二分は耐えることが出来る

749:名無しの混沌
あれ絶対ピコハンだよピコハン
750:スレ主
なーるほど
それはそれとしてレオンさんがトレーニングやるって!

751:名無しの混沌
ガタッ

752:名無しの混沌
ロレトレの時間だぁぁぁぁぁ

753:名無しの混沌
三周年だよ! 全員集合!

754:名無しの混沌
この盛り上がりようである

755:名無しの混沌
レオンさんが稀に開催する大規模トレーニングは大人気
絶望の青も無事突破しカムイグラにも着いたから三周年の節目にやるとは思っていたが

756:名無しの混沌
さーて今回は何人参加するかな……
前回は900ぐらいだっけ

757:スレ主
なにそれこわい

758:名無しの混沌
四桁行きそう

759:名無しの混沌
はえーローレットの隆盛もすごいなぁ

760:名無しの混沌
レオンの人気もあるけどな!
悪い男だよレオンは……

761:名無しの混沌
旅人由来で広まった同人誌でもよく出るよな
夢でも腐でも……
あなおそろしや

762:スレ主
非戦スキルの使い方それでいいの???

763:名無しの混沌
>>762
スレ主がそれ言う?






◇◇◇




 □■練達・VR研究室

 無辜なる混沌でも特殊な背景を持つ国家、練達。
 その都市国家の一角、精密機器が所狭しと詰まれている研究室で一人の研究員がタブレット端末を操作していた。

「ローレットギルドパンクしそう……っと」

 もとい、スレに書き込みをしていた。

「何をしてるんだ、お前は」
「あいたっ。暴力反対ですよ教授ー」

 そんな彼に背後から紙束ではたくのは研究室で進行中の実験を指揮している教授だ。
 研究員は振り返って非難の眼差しを送るが教授はどこ吹く風だ。

「実験中に遊んでいる者には優しいだろう。VRバグ取り(物理)するか? ん?」
「え、遠慮しておきます……」

 領土こそ小さいものの、練達は他の大国と比べてもその技術水準は桁違いだ。
 旅人(ウォーカー)が集まったこの国では異世界の技術によりまさしく近未来的な光景が随所に見ることが出来る。

「それにこれは遊んでる訳じゃなくてアップロードの時間を利用して情報収集をしていたんですよ教授」
「お前、そう言って以前はPanTube見てただろう」
「と、ともかく! 今日ってあの大量召喚から三年目の記念日なんですよ、知ってました?」
「ん? あぁ……もうそんなに経ったか」
 話の流れを変えるために先程の掲示板の内容を話す研究員だが、意外にも教授はこれに乗って来た。
 練達は旅人の国──言い換えれば、それだけ召喚には縁が深いのである。
 とはいえ、彼らの目的はパンドラの収集……ではなく、「元の世界への帰還」だ。
 彼らも召喚された特異点運命座標である以上存在するだけでパンドラの収集は行われるが、それはレオンが主導するように組織だったものではない。
 イレギュラーズであってもギルドによってまとまった「ローレット・イレギュラーズ」ではなく、言うなれば「アデプト・イレギュラーズ」である彼らは己が目的のために実験を続けている。

「俺たちの目的を考えれば、天空神殿の大召喚を解き明かすことは重要だ。どうして急に召喚頻度が増したのか、神託の巫女以外の原因……「無辜なる混沌」と他世界の概念的距離が近づき召喚の箍が外れているのかもしれないとなれば、『不在証明』を出し抜くまたとない好機だ」
「なるほど?」

 混沌肯定『不在証明』に阻まれその試みは失敗に終わってはいるが、それでもその技術力は他の追随を許さず、小島に居を構えたこの国を各勢力は中立国家として認めている。
 その技術力を以てしても既に行われている異世界からの召喚──既に実在している行動の反対を行う事は許されていない。
 信託の巫女ざんげが特別なのか、それとも世界間の上下関係によるものか、その理由は諸説あるが今は重要でないため割愛する。

「逆にタイムリミット──<D>が近づいたことによる「無辜なる混沌」の防衛本能によるものかもしれない。その場合この世界からの脱出は絶望的だがな」
「えぇ……」
「どちらにせよ、同じイレギュラーズとして決定的な違いはあれど無視は出来んということだろう」
 
 練達に住む技術者や研究者にとってローレット・イレギュラーズたちは「ていのいい被験者」または「物理的デバッガー」と言ったところだ。
 彼らは研究が主目的で解決(物理)能力に乏しい傾向にあるのであった。

「ギルド条約がある以上ローレットが発展して俺たちに損はない、もしかしたら三塔の塔首からは蒼剣に祝電が届いているかもしれないな」
「複雑なんすねー」
「お前は逆に給料減額だけどな。ほれ、そろそろアップロード終わるぞ」
「えぇぇ!?」

 研究員が悲鳴が研究室に響くも、大召喚から三年が経過しようも、練達の日々は何事もなく過ぎていく。

 To be continued
(7/27再度追記)
1000文字で完結しなくとも問題はありません。
ただしそうなる場合は連投で完結させて頂ければ良いなと思います!
⚫︎2020.05.07『召喚前夜』
 ーーがらんと音を立てて、主無き剣が石畳の床へと転がる。
 そしてそれは即ち、私がその剣を振るっていた男を殺したからに他ならない。
 鉄と石が鳴り響かせる音色は乱雑で空虚だ。
 ……この音を聴くのも何度目だろうか。
 名も知らぬ男に突き刺した刀を引き抜くと同時に、刀身へとこびり付いた血が刃紋を曇らせる。
 これは直ぐにでも綺麗にしてやりたい所だが、そうもいかない。
 気付かれればすぐに誰かが来るだろう。
 だからこそ、急いで走ってその場を離れる事にした。
 返り血の付いた貌と服を見窄らしい外套とフードで隠しながら、曲がりくねった裏路地を通り抜ける。
 道中、同類(雇われもの)や孤児らしき姿を何度か目にするもののーー無視する。
 この国(鉄帝)では日常風景の一部とさえ思える彼らの姿は、この三年で何十何百と目にして来た。
 ……とは言え流石に移動要塞なんてものは一度しか見た事は無いけれど。
 そこまで思考すると、二ヶ月前に此処ーースチールグラードへ向けて侵攻していたあの威容を思い出す。
 名前は知らず、ただ巨大要塞とのみ知るそれ。大聖堂のように聳えていたモノ。
 私は、それを見ている事しか出来なかった。
 ただ逃げて怖れていた。
 自分の生命と約束だけが持ち物で、それだけが生きる理由でしかないから。
 ーーそして思考を止めて前を向けば、いつの間にか行き止まりに当たっていた。
 しかし背後から付いてくる気配はない。これなら一安心と言った所だろうか。
 徐に路地の壁に寄り掛かり、座り込む。
 次いでフードを外して息を吐きーー空を見上げた。
 今の時刻は夜で、空は晴れ。
 星々の瞬く夜空を観ながら、ぼんやりとした思考が渦巻く。
 今日の夕飯のアテはどうしよう。
 今日の寝床は何処で取ろう。
 明日の天気はなんだろう。
 次の依頼人は誰だろう。
 ーーこの日々が終わるのは、いつだろう。
 そう考えると、薄らと眠気が襲い来る。
 ……駄目だ。「寒い所で毛布も無しに寝てはいけない、風邪を引くじゃないか」
 昔、母にそう言われた言葉を反芻する。
 寂しくて悲しくて……けれど複雑に想う母の姿。
 次いで浮かび上がるのは、恩人の懐かしい顔と交わした約束。
 ……そうだ。約束した。
 約束して、決意した。
 私は、あの人との決着が付くその日まで生きるのだと。
 そう決めたんだ。
 ーーだからこそ私は、生きる為に剣を取った。
【某日、希望ヶ浜学園の某所にて】

 ここにいると、思い出す。
 ルイン・ルイナでは無かった頃の俺にも、学園生活というものはあったのだということを。
 学問があった。朋友があった。日常があった。
 しかし、今となってはその懐かしい記憶も、日に焼けて色褪せた書物のようにおぼろげでしかない。
 そのおぼろげな過去は、きっとその時を生きていた頃の俺には大事なものだったのだろう。そして人は、過去を積み重ねて今の自分を作る。そのように過去というものは、人にとって重要な物である筈だ。
 だが、俺の過去は断絶してしまった。かつて××××であった俺は、もはや同じ存在ではありえない。おぼろげな記憶は、俺にとってはすがるべきものにはなりえない。

 それでも、記憶を追想しながら思う時がある。この世界に召喚されなかったとしたら、俺はどんな今を生きていたのだろうと。
 幸せに生きていたのだろうか。楽しく生きていたのだろうか。それとも、そうではなかっただろうか。
 無駄なIFだ。今の俺は、そうならなかった自分とのつながりを持たない。断絶してしまった俺の未来を想う事は、今の俺にとって何の寄与も果たしはしない。
 それでも時として空想に浸ることがあるのは、自分の中に無駄を楽しむ余裕があるという事なのだろう。
 その余裕が自分の中にあることに……自分が破滅を憎むだけの存在では無い事に、俺は安堵するべきなのか、それとも無駄であると冷酷に切り捨てるべきなのか。
 今の俺には答えが出ない。俺が何者であるべきなのか、俺の理性と感情は何も語ってくれない。心臓の奥底に籠められた魂だけが、今はまだこのままでいいと、静かな脈動と共に告げるのみだ。

 ふと、懐に入れていたaPhoneが鳴動する。
 “夜妖<ヨル>発生”
 学園を脅かす破滅が、再現性東京のどこかに現出した……その事実をaPhoneの画面は静かに、しかし雄弁に俺に告げていた。

 行かなくては。
 今の俺はルイン・ルイナ、破滅を滅ぼすイレギュラーズであるから。
〇とあるギルドの始まりの日


 □天空神殿

「……なんだ、ここは?」

 2020年5月8日。
 和装を身に纏った青年、天目 錬は突如として──そう、何の脈絡もなく、自身の居場所が空高き神殿に飛ばされた事に思わず困惑の声を漏らした。

(今日は工房で都の■■■■■に納品する刀の仕上げを徹夜で終わらせ、都に刀を運ぶ馬車の中でひと眠りして、それで……)

 目が覚めたら、これである。
 傍に置いてあった刀は勿論、常に肌身離さず持ち歩いていた鍛冶道具もない。
 あるのは着物と履物、愛用の呪式が描かれた手拭と護身用の術符だけだ。

「誘拐、という感じではなさそうだが……?」

 見る限りの景色は悪党の隠れ家というよりも遺跡か神殿とでも言った方が正しいであろう。
 周囲に誰もいないことで警戒しつつも歩を進める錬だが、その耳に誰かの話し声が聞こえた。

「本当に私が──」
「誓って嘘は申してねーです」

 柱の陰から話を聞く限り、どうやら女性二人のようだ。
 何にせよここはまさに天の孤島。自身がここにいる理由を知っていると判断した錬は二人の前に顔を出した。
 話していた二人、カソック姿の女性と少し草臥れた服の左腕が義手となっている女性は錬の姿を見て驚いたようだが、すぐに事情を話してくれた。



 ◇



「──と、いうわけで貴方は特異運命座標(イレギュラーズ)として召喚されたという事でごぜーます」
「なるほど、分かった」
「……随分と、あっさりと了承するんだな?」

 「無辜なる混沌」、<D>、滅びのアークと空繰パンドラ、そして混沌肯定。
 まさか異世界に救世主の一人として召喚されるとは、と感慨深く思った錬に義手の女性、夜式・十七号と名乗った彼女は訝し気に問いかけた。
 とはいえ錬としても己の身体の変調……『レベル1』の影響は自覚出来たし、数値としてその能力を確認する『RPG』で見れば信じる他ない。
 それに。

「異世界の技術とやらも気になるし、レベルが上がれば強くなれるなら……諦めなければいつかは最高の職人になれるということじゃないか?」

 その活動として最も依頼が舞い込むのがローレットというギルドならばそれに従うののも吝かではない。
「何にせよありがたいことでごぜーます。最近は落ち着いてて説明で迎えに行けなかったことは申し訳ねーと思ってるのです」
「ほう。聞いた限りでは既にかなりの数のイレギュラーズがいるようだが増加のペース自体は普通なのか?」
「三年ほど前の大召喚以前と比べればじゅーにぶんに多いのですが──」

 ざんげの話の途中、まるでその内容を否定するかのように空中神殿の一角に光が発生する。
 三人が目を見開く中、光の中から現れたのは──頭部をモニターに置換されている半裸の巨漢。

「……これもまたどっかの異世界から来たということか。すごいな混沌」
「人型を保ってるだけ大分ふつーなのですよ?」
「そもそも私と同じ鉄騎種でも似たような人はいる」
「いや本当すごいな混沌」

 立て続けの召喚よりもインパクトのある召喚者に感想を述べあう三人だが、その中でも巨漢は身動ぎもしない。
 しかし少しするとプツン、と音がしたと思うと頭部のモニターに光が点いていた。
 何も写されていないが少し明るくなったモニターからは、声が漏れる。

「自然魔力の蒐集機構の稼働を確認しました、これより起動します。──あなた様達は何者でしょうか?」

 合成音声のような男の声。
 誰何の前に発せられた言葉の意味を理解した錬は、慣れたものと巨漢と応対しているざんげをよそに小声で十七号に問いかけた。

「……さっき同じ種でも似たような人がいるって言ってたけど、十七号の種族って人造って訳ではないだろ?」
「あ、当たり前だろう。鉄騎種は人間種と同じように増えるれっきとした純種だ」
「となるとやっぱり俺と同じ旅人か」

 ざんげの言葉からこの世界の事を、当たり前のことも含めて学習している男を見て、ついで十七号を見る。
 刀を佩いてはいるが少し血で汚れている。
 この世界の住人とは聞いているが戦闘の最中に召喚されたのか、それともその余裕もなかったのか。
 少しの間目を閉じ、考えを纏めた錬はよし、と小さく呟いた。

「どうした?」
「こうして同時期に召喚されたのも袖振り合うも多生の縁だ。ギルドでも組もうじゃないか」
「何?」
「あぁ、どんな些細な事も因縁だから大切しなさいという意味でだな」
「諺の意味は『崩れないバベル』で分かる。どうしてそうなる」

 オッドアイのジト目に苦笑で返す。
 初対面でいきなりギルド勧誘……どころではなくギルド結成ともなればさもあらん。
「まるで神の賽子が良い出目を出し続けたように続け様にイレギュラーズが増えてるんだ。どうせなら同じ『レベル1』同士組んだ方が依頼も動きやすいだろう」
「それはそうだが……」
「それにこちとら召喚されたばかりの旅人で金も身寄りもないんだ。現地人も入れたギルドでも作った方が部屋も借りやすいだろ」
「これまでも旅人は多くいるから召喚者だからと困ることはない、はずだぞ」
「というわけで、頼んだぞギルドマスター」
「何!?」

 突然の振りにがばっと向き直り大声を上げる十七号にざんげから話を聞いていた巨漢……ボディも不思議そうにモニターを向ける。
 その画面には心象を分かりやすく『?』が写されていた。

「どうかしましたか?」
「あぁ、俺たちでギルドを組もうという話になってな」
「ギルド?」
「パーティ、一党。同時期に召喚されたメンバーでお互い助け合って行こうってことだ」
「それは素晴らしいです。友好の証として、笑顔をモニターに表示します」

 合成音声と同時にモニターには[〇▽〇]と顔文字が表示される。
 中々芸が細かい。ざんげとの会話の中で学べたのだろうか?

「待て、ギルドを組むのはまだいいとしてなんで私がギルドマスターなんだ。言い出しっぺの錬でいいだろう」

 しかし流されずに反論する十七号であるが、錬は気質的にも向いてないと自覚していたので完全に押し付ける気でいた。
 そしてざんげはその様子をどこか楽しそうに見ていた。
 旅人だから。職人だから。混沌の事について不慣れだから。
 手を変え理由を変え十七号がギルドマスターに相応しい訳を述べていく。

「──ここまで言ってもギルドマスターになってくれないのか」
「私は、そういうのは合わない!」
「そんなことはないと思うが……そこまで言うならば仕方ない。賭けをしよう」
「賭け?」

 早くこの不毛な会話を終わらせたい、そう思っていた十七号がその言葉に飛びつく。

「一日。今日一日、日付が変わるまでに召喚されてギルドに入る人を募集する。人数が十人以上なら十七号がギルドマスターをする」
「十、人」
「そう、十人だ。逆に十人未満なら俺がギルドマスターを引き受けるしなんならすぐ脱退してもいい」

 十七号は縋るような目をざんげに向ける。

「最近は一日に十人ぐれーの召喚ペースですよ」

 イレギュラーズの増加ペースが一日十人ぐらい。それが多いのか少ないのか、その日暮らしをしていた十七号には分からない
 しかし、今は日が昇り切った昼の時間帯。単純に「今日」という時間はもう半分が過ぎている。
 自分の後に来た二人を見れば、もう今日はこれ以上あまりイレギュラーズが来ないのではないか?
 だが。

「……なんでお前は人が多い方に賭けるんだ」

 単純に考えれば十七号が有利な賭け。三人の召喚時間の偏りはただの偶然かもしれないのに。
 そう問われた錬はしかし、眼を閉じ不敵な笑みを返した。

「先入観の違いだろうな」
「先入観?」
「折角特異運命座標とやらになったんだ。それならば運命ってやつも信じてみようって気になるだろ?」

 なんだそれは、と十七号は思った。
 確かにイレギュラーズはすごいのはよく知っている。鉄帝でも、ラド・バウでもその名は鳴り響いている。
 だが、決してその運命の可能性を手繰る行為は決して簡単でもないし、多大なリスクを負うことも純種である彼女はよく知っていた。

「そういうことなら、受けてもいい」
「本当ですか。よろしくお願いします、ギルドマスター」
「ギルドマスターじゃない!」

 笑顔の顔文字を浮かべて手を差し出して来るボディに応じつつもその役職は認められないと反論する。
 そこにざんげが背後に石造りの人型を従えてやって来た。

「それでは話も纏まったところで、現状を確認してみるでごぜーますか?」

 訓練用のハンマーゴーレム、それを前に『レベル1』で能力が均一化した三人は構える。

「二人とも油断するな」
「始めての戦闘実習。学習させていただきます」

 刀を構える十七号に拳を振り上げるボディ、その二人に対して錬も術符を構える。
 しかしそこで後衛に位置していた錬は気付いた。

「勿論油断はしないが……声を掛けるべきは二人ではないかもしれんな?」

 その言葉に振り返った二人が見たのは、面白そうなものを見た顔をする錬の視線の先にある更なる光。

「さて、後六人になるか?」

 唖然とした表情をした十七号と何処か楽しそうに光を観察するボディをよそに、光は晴れる。
 その中にいた者は──



 ◇◇◇



 その後、同時期に召喚されたイレギュラーズで結成されたギルド<ギャザリング・キャッスル>はタイミングも良く海洋の大決戦に参加する。
 召喚されて間もない大戦にもギルドメンバーは奮闘し、幾らかの活躍も果たしてその戦闘を通じて大きく成長する者もいた。
 賭けの結果ギルドのオーナーになった者は……君の眼でギルドに赴き確かめた方が早いだろう。
PPP三周年お祝いSS
「ようこそ!  ここはサンシューネン村だ!」(1/3)

「ここが件のサンシューネン村なのです!」

豪華な飾り付け。大きく描かれた『3』の字。イルミネーションましまし。そんな門が目の前にある。
……なんだ、この村?
それが自称ローレットの腕利き情報屋、ユリーカ嬢に案内されてきたイレギュラーズの極めて素直な感想であろう。

「俺、明日で筋トレを始めてから三周年なんだぜ!  スゲェだろ!」
「私なんて毎日500円貯金を始めて三周年よ!  もうちょっとした鈍器よ鈍器!」

そのたくましき筋肉を晒してモスト・マスキュラーのポーズをとる者が噴水の上に立ち、かなりの美形と言える女性がパンパンの貯金箱を振りまして道ゆく人を次々と殴り倒している。
せめて女性の方は止めるべきかとも思ったイレギュラーズの思考は「イェース!  サンシューネーン!」と殴り倒されながらも女性に笑顔で叫び返す人々の姿を見てそりゃあもう見事に止まった。本当になんなんだこの村。

「どうやら、どこかの世界で『三周年の何かを祝う』動きがあったようなのです!」

ユリーカ嬢曰く、そこから生じた「三周年を祝う気持ち」が膨れ上がったものが世界の壁を越えて混沌世界まで漏れ出し、いい感じに混沌肯定の法則と混じり合った。結果としてこの「サンシューネン村」が具現化したのだと言う。どんだけ祝い尽くしてんだその三周年。

そも、いくら割と何でも起きるリアルパ○プンテな混沌世界でもそこまでいい感じに混ざる事があるのか、という疑問もあったが……

「どうやら祝いの内容がこの世界と決して無関係ではないようなのです!具体的には具現化したものの中にローレット関係者の姿を模した物が多いのです!」
特にぼくなんて村中にポスターが貼ってあるしぼくの顔のケーキまであるのです!  えっへん!──との事らしい。本当に何を祝ってんだそこの世界では。

いや、この際村のカオスっぷりはどうでも良いのだ。イレギュラーズにとってそれは定期的に起きるパンツ騒ぎによってもう慣れた(くはなかったが慣れた)物だしこの程度まだ序の口である。
PPP三周年お祝いSS
「ようこそ!  ここはサンシューネン村だ!」(2/3)

問題は、イレギュラーズは依頼を受けたからこのサンシューネン村を訪れたのであり、依頼内容はこの村の調査だという事だ。

「調査内容は簡単に言えば『この村が危険を及ぼさないか』なのですが、ぶっちゃけ練達の頭脳陣達の会見によってこの村は三周年騒ぎが過ぎれば自然と消える事がわかっているので、ほとんど年のためでしかないのです!
  消える前に爆発する爆弾みたいなものがないかを確認できればいいのです!」

それは割と重要なのではないか?  と思うイレギュラーズだったが、「明日で私がうっかり皿を落としてわっちゃった日から三周年ですー!」と叫びながら豪華なお神輿でわっしょいわっしょい運ばれていくメイドさんを見て考えるのをやめた。丁寧に『祝彡三周年!』と描かれたそれは54人くらいで担がれていた。よくそんなに詰め込めたな。

「もう説明するまでもないと思いますが、このサンシューネン村はありとあらゆる三周年を祝い尽くすのです!」

もう知ってます。そう口に出したい想いを堪えて、イレギュラーズはユリーカ嬢の説明に耳を傾ける。

「例えばあそこにいる子供とお母さんの二人組ですが……」
「きゃあー!明日で我が子が生まれて三周年なのよー!」
「と子供が生まれて三周年目を祝っているのです!」

普通に誕生日として祝ってやれよ。イレギュラーズは子供の微妙な境遇に涙を禁じ得なかった。

「うふふふ♡ あなた……」
「あははは♡ なんだい……?」
「反対側でカフェでイチャイチャしている男女なんかは……」

どうせ付き合い始めて三周年、或いは結婚記念日なのだろう。ここまでくればもはやイレギュラーズとてオチは読めた。

「明日で私たちが別れて三周年ね♡」
「そうだね、僕たちがお互いの浮気に愛想を尽かしあってから三周年だね♡」
「割とヤベー修羅場起こした三周年を祝っているのです!」

全然読めてなかった。なんでイチャイチャできてんだよ、三周年程度に超えられる愛だったのか。もうイレギュラーズは疲れ果ててきた。

「と、このように。あちらこちらでカオスな光景が広がっているので、とりあえずの危険はなさそうだけど万が一のための調査はして置いて欲しいという訳です!」

それらしい理由つけて面倒ごとを押し付けたんじゃなかろうか。割と本気でイレギュラーズはそう思った。
PPP三周年お祝いSS
「ようこそ!  ここはサンシューネン村だ!」(3/3)

そして、なぜそもそも自分を指名したのか……と。
そこまで考えた所で──瞬間、イレギュラーズの背筋が凍る。
──イレギュラーズは質う。ユリーカ嬢に。

「急にどうしたのです?」

──お前は『何者』だ、と。

ユリーカ嬢は一瞬、惚けたような顔をして……すぐに、その口を怪しく歪める。

「……どうして気づいた?  ユリーカ・ユリカとしての振る舞いにそう違和感は無かった筈だが」

──この村の存在自体が答えだ。例えどんな事でも、『三周年なら祝わずにはいられない』のだろう?

──そうだ。誰でも良さそうな依頼だったのに、自分にだけ指定で出された時点で疑うべきだった。

──なにせ、自分が召喚された日は7月29日。三年前……『明日で三年目』だ!

──いかにもこの村に祝われそうな、この上ない『ターゲット』。そんな自分をわざわざ呼び出す人物。すなわち……

「お察しの通りだ。ワシこそが……このサンシューネン村の村長じゃよ」

バリバリバリッ!と、ユリーカ嬢の姿をした肉片を引きちぎって『3頭』の白髪老人が姿を現した。いや変装の解き方気持ち悪いな。

「そこまでわかったのなら……もうこの後に待ち受ける事も察しておるじゃろう?  ──者共、祝ぇえええええええ!サンシューネンじゃああああああああ!」
「「「「イェース!  サンシューネーン!」」」」


──イレギュラーズは逃げた。必死に逃げた。
モスト・マスキュラーの筋肉から。
超絶美女の貯金箱から。
お神輿に担がれたメイドから。
ユリーカ嬢のポスターから。
三歳児のお母さんになる母から。
修羅場の男女から。
七色にひかるギル♂パンツから。
まだ微妙に肉片が付着している存在から。
逃げて逃げて、必死に逃げた。
必死に逃げたが……結局捕まって、祝われ尽くされたそうな。
『新たなるプロローグ』


 ――先ず身体の感覚が戻り、次いで七感が急速に明白となってくる。

 ――若干の脱力感と酔う程に強い浮遊感。そして……着地。

 ――感じられる空気は兎も角、魔力は若干ながらも確実に異なる未知なる物。

 されど、未知なる感覚でありながら、彼にとっては既知の経験だった。
 即ち


「はろーざにゅーわーるど! 狭間の世界より運命の糸に手繰られてやって来た冒険者のカインだよ、コンゴトモヨロシク!」

「……今回の特異運命座標は随分と自覚がある奴が召喚されたでごぜーますね――」

 そう。彼は、稀有ながらも既知の体験としてその感覚を理解していたカインは、またもや新たなる異世界に『召喚』される事となったのだ――!



◇◆



「なるほど。つまり僕はこの『無垢なる混沌』において運命逆転力――パンドラを獲得できる稀有(多分)なる存在として、色々したりしなかったりして滅びの運命を回避せん、という事だね、混沌の炎ー!」

「概ねそういう事でごぜーますね。ああ、主に特異運命座標の方が多く集っているギルド・ローレットは中二病の人にも優しーですから安心してくだせー」

「いや、僕はそういうのじゃないんだけど……まぁいいんだけ、どっ!」

 そう会話しながら、カインは掌から魔力で編まれた幾条もの薄く光る縄、《マジックロープ》を生成し即前方に――訓練用のゴーレムの足を狙って投射する。
 人型のゴーレムの足を絡めて動きを封殺し、悠々と戦闘を行う……お手本のようなありきたりな戦術を行使していた。

 勿論、この訓練用のゴーレムとの戦闘はただ彼の力の示威という訳ではなく。
 彼を召喚した信託の少女による慣例として、洗礼として行われている実力試しであり、それは召喚された物に掛かった非常に大きな力――“混沌肯定”の影響下における戦闘訓練として正しく機能している儀礼なのであった。
 確かに対峙するゴーレムの強さは最下級の魔物並みで、多少でも戦闘の心得があれば容易く勝利できるものではある。

 が、それはこの空中庭園に召喚された直後の特異運命座標には容易い事だが、容易くない事でもあるのだ。

 特に彼の様な旅人……異世界より召喚された人々にとって混沌肯定、特に、『レベル1』と『不在証明』によって受ける混乱は大きくなりがちであり、そのままの状態で放り出しても良い様になる事は多くない。
 その為、まずはここで訓練を通じて体感してもらう物なのだが――
 カインは下がっている筈の自分の力に混乱する様子もなく、変調している筈の魔力を練り、危なげなく訓練戦闘を繰り広げていた。
 勿論、旅人でも落ち着いて戦えた者は覚え切れない程居たが……

「慣れているのでごぜーますね? 旅人は結構慌てる方も多いのでごぜーますが」

「混沌証明についてはさっき説明して貰ったしね? むしろ分かりやすく教えて貰えたし、法則が理解できないより万倍は良いよね、っと!」

「普通は積み重ねた人こそ、先ずは体感して貰わないと狼狽するのでごぜーますけどねぇ」
 
 次撃にゴーレムの胸部に魔弾が叩き込まれ、大きく仰け反る。……まず三発目は受け切れず倒れる事だろう。

「そういう特異運命座標も居るって事で――これでラスト!」

 その予想に、言葉に違わず間髪入れずに放たれた魔弾が連続して命中しゴーレムは倒れ伏し……訓練課程は修了する。

「ぱちぱちぱち。お見事でごぜーます。正直訓練いらなかったのではないかと思って貴重な時間を無駄にした気がするでごぜーますが。これでも私は忙しいのでごぜーますよ」

「野良特異運命座標に冷たいっ! という事で、それじゃ噂のギルドに行って野良じゃなくなって来ようかな?」

「そうでごぜーますね。現状の把握も良という事で、幻想へ向かってくだせー。貴方が冒険者だと言うのなら先に言ったギルド・ローレットを頼るのが一番でしょう、貴方の力になってくれる筈でごぜーますから」

 そう言い、指差されるのは幻想へ繋がるワープポータル。
 この世界で大きく世話になるであろうギルドへの直通切符であり、“この世界”での真なる第一歩。つまり――

「つまり僕の冒険は此処からだ――なんてね。何から何までありがとうね!」

「礼には及ばねーでごぜーます。大変なのはこれからなのでごぜーますから」


 そんな言葉を背に受けて、カインは訓練と同様に気負う事もなくワープポータルに足を踏み入れる。
 その先は旅人達が持つ今までの常識が通用しない異世界。確定した破滅に抗うその道に、安穏は遠い物となる事だろう。
 ざんげの言う通り、万難待ち受ける茨の道なのであろう。


 だが

「……楽しみ、だね!」

 不安ではなく、期待を。この異世界での新たなる冒険の始まりの予感に、きっとあるであろう数多の出会いの予感に、そして自身にとっての未知に足を踏み入れたその一歩先に胸を高鳴らして。

 『数多居世界の冒険者』カイン・レジストの冒険が始まる――!
「ふぅ、ああいう特異運命座標の方を見るのは少し珍しかったでごぜーますね」

 カインを見送った後、一人残されたざんげはそう独り言ちて思い耽る。
 しかし、その内心の中にはもうカインの事は薄れていっている。
 長い間一人で神託を聞き、特異運命座標達の案内を行ってきた彼女には少し珍しかった程度というのは然程珍しくないという事と同義なのだ。
 それが変人奇人の多い特異運命座標であるならば尚更だ。いや、以前は特異運命座標もそんな変人が多かったという訳ではないのだが。

 あの『大召喚の日』の前までは。

「そういえばそろそろ三年でしたか。祝いの席が設けられるとか。素晴らしい事でごぜーますね」

 そうと意識し、振り返るのは特異運命座標を案内する彼女にとっても大きな意味を持つ時の事。

 運命逆転力、パンドラが激増した事が原因でか世界中で頻発する様になった騒動も感慨の原因の一つではあるし、分母の増加以上に増えた変人奇人の特異運命座標達の事もその最たる物だが、それはともかく!
 ……本当に色々あった三年だった、と苦笑して。

「尤も、今は目の前の騒動……大騒動をなんとかしないとその前に大変な事になるのでごぜーますが――」
 















 そして、混沌肯定でも訓練課程でも狼狽した様子のなかったカインは……その第一歩で盛大に驚く事になった。


「船、船持ちはもう居ない!? 出し惜しみできる局面じゃないぞこらぁ!」

「大魔種・冠位嫉妬アルバニアを斃さんとする者はこの旗に集え! 今が一番の機会だぞー!」

「頭数が足りねえ、何処かに新鮮な特異運命座標は居ないのか!?」

「居たよ! 新鮮な特異運命座標が!」

「「でかした!」」


「なるほど……つまり、カオスだね!」

 カインは知らない。現在、海洋の大望と特異運命座標達の命運、それらを掛けて世界の大敵たる大魔種、そして『絶望の青』の一大攻略作戦が実施中だという事を。
 勿論、その主力は混沌肯定を受け運命逆転力を持つ特異運命座標の精鋭、カイン達よりも先に召喚され混沌肯定『RPG』によって非常に高い実力を持つ先達だという事も。

 ――その先達も大海にて藁を掴むが如く、召喚されたばかりの新人の戦力すらも欲している程切迫した状況だという事も。

 結局、この後に同時期に召喚された特異運命座標の者らのギルドに加入する事となり、件の大作戦にその身を投じる事となるのだが……
 それはまた別の話。

 End

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