シナリオ詳細
<無意式怪談>無名祭と新しい契約
オープニング
●無名祭と新しい契約
それはある契約の終わりを意味していた。
悪魔メフィストフェレス。ローレットが接触するより前の希望ヶ浜を守るため、校長黄泉崎ミコトが手に入れた力の名前だ。
彼は悪魔との契約の代償として名を失い、その他多くのものを失った。
時として望まぬこともやらされた。
そうでもしなければ、守れないと思っていた。
けれど今は違う。
ローレットが特待生として、あるいは教師として希望ヶ浜で過ごすことで、多くの災厄を払い魔を滅することができた。
もう悪魔はいらない。希望ヶ浜は、変わっていくのだ。
だが悪魔はそれを許さなかった。日常の維持という契約故か、それとも悪魔の傲慢か。古き希望ヶ浜を維持するために、新しい力の排除を始めたのだった。
故に、戦った。
悪魔メフィストフェレスの仕掛けた網は広く、複雑で、そして奇妙奇天烈であった。
しかし己の意志によって散ったローレット・イレギュラーズたちはその網を自ら見つけ、たぐり寄せ、そして解明していった。
最後には悪魔をこの世界に顕現させ、倒し、消滅させるに至る。
つまりは、新しい力の勝利である。
「俺の名は黄泉崎ミコト――無名偲無意識と名乗っていた、ただの校長、だ。今度こそ、犬に噛まれただけでも死ぬぞ」
力を失い、ただの人間となった校長は、新しき力をそうして歓迎したのだった。
――というのが、これまでの粗筋である。
只今希望ヶ浜では、有志によって新たなイベント『無名祭』が開かれようとしている。
これは竜の災厄を受けた際の恐怖や漠然とした神への祈りが集まり生まれた『名も無き神』の力を維持するための祭りであり、つまりは人々が災いを忘れぬためのイベントだ。
故にコンサートなどが開かれる一方でハザードマップアプリの配布や防災に関する展示ブースが開かれている。一般の目からは、これはひとつの防災キャンペーンの一環に見えていることだろう。
「俺は無名祭の様子を見ておくが……卯没瀬地区にも顔を出しておかないと、な」
黄泉崎校長は苦笑し、火のついた煙草を咥えたままそう言った。
未だ設営中の無名祭会場にて、である。
ここは希望ヶ浜学園を中心として都市である程度力を持つ者たちから少しずつ力を借りて行われている。その根回しを行ったのもラダや弾正そしてイグナートといったイレギュラーズたちなのだが。
「卯没瀬地区か……」
あの場所はいまどうなっているのだろう。
悪魔によって1999年終末論の世界を延々とループし続けていたという街は、悪魔からの束縛を失いループから脱したという。だが終末論を信じ、あるいは縋って生きていた者たちは身を持ち崩しているかもしれない。
そんな彼らの様子を見に行くのもいいだろう。実際、『再現性廃都』や『卯没瀬自衛隊駐屯地』にの人々も移住し復興の中心となって動いているらしいというし……。
校長は煙草を口から離し、煙のたつそれを宙に翳す。
そしてあなたをちらりと見た。
「お前達も、好きなところへ行っておくと良い。気にしていることや遣り残しもあるだろうし、な」
無名祭が始まる。
- <無意式怪談>無名祭と新しい契約完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2023年05月25日 22時05分
- 参加人数37/∞人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 37 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(37人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●卯没瀬地区
おわっちゃったんだ。
『砂下の歯車』リュカシス・ドーグドーグ・サリーシュガー(p3p000371)がドスコイマンモスのドスコイさんやFLASH-DOSUKOI02たちと一緒に卯没瀬地区を歩いて感じたのは、その一言だった。
崩れた街の様子は独特で、呆然と座り込む人もいれば、黙々と片付けにかかる人もいる。
世界の滅びは結局訪れず。自分達は生きていて、だから結局生きるしかない。そんな2000年頭の漠然とした空気がそこにはあった。だからきっと、ここはもう1999年の世界ではなくなってしまったのだろう。
「ねえ」
ついてきていたネジレモノに振り返る。
「13って数字どう思う?」
何を言われたのか分からないという様子で小首をかしげるネジレモノ。だよね、とリュカシスは呟いて、しかし表情は少し笑っていた。
あの冒険は、あの出会いは、ちゃんと覚えているから。
そんな街に、再び訪れた者たちがいる。
『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)や『闇之雲』武器商人(p3p001107)、『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)たちだ。
「何がありそうでも最後の最後は結局普通の日々に戻っちゃうんスねー……。
ま、長い夏休みみたいなものだったってことでしょうかね。
卯没瀬地区の人には明日から頑張ってもらいましょうか」
「終焉世界の崩壊、ね。破滅の揺籠は享楽的で刺激的で現実逃避にはうってつけだったのだろう。さて、このヴェールを剥がされた世界でも前を向ける人間はいるかな?」
武器商人は早速コネクション作りなど初めて見るつもりらしい。そこは商人らしさといったところだろう。
「あーあ…私にも夏休みこないかなー。どーせ仕事溜まってるんだろうけど!」
背伸びをする美咲。
「復興は進んでいってるみたいで安心だが……まだ受け止めきれない奴もいるよな。心のケアってのも大事だ。ちょっと話を聞いてみる。一緒に来るか?」
ライが歩き出すが、美咲や武器商人は首を横に振った。
それをうけて、ライは『じゃ、あとでな』と歩いて行く。
向かったのは診療所……というか何でも屋のような場所だ。漠然と訪れたこの新時代に、人が集まってとにかく乗り越えようとする場所である。
そこでは『結切』古木・文(p3p001262)が復興活動を行っていた。
部屋というかスペースを借りて、新時代に対応できるような知識を教える講義会を開いているようだ。
他にも困りごとがあるたび聞いて回っているせいで、最近はこのあたりじゃ文は『先生』と呼ばれている。
実際希望ヶ浜で古典教師を務めたので違和感がないわけではないが、なんだか意味合いが違うようですこしだけこそばゆい。
一方で『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)もそのような講義を行っていたらしく、彼女も同じように『先生』と呼ばれていた。
「迫る終わりを前にして、残った時間を謳歌しようという考えは責められるものじゃないさ」
講義机の前に立って、ゼフィラはそう語っている。
「ま、それはそれとして未来が繋がったのなら、また歩きだすことはできるさ。私はそれを少しでも手伝おう」
『陽の宝物』星影 昼顔(p3p009259)はカメラを手にハッピーエンドの街を歩いていた。
十四番と喋る猫は、もういない。寂しいわけじゃない。だって、思い出はちゃんとあって、きっとまた会えると信じているから。
遠い国から絵はがきが届くみたいな、そんな暖かい気持ちを胸に抱えたまま、彼は崩れた街をファインダーにおさめる。
「”友人”達に再会した時に今の事を伝える為に写真を撮りたいんだ。出来れば明るい方に繋がったよって伝えられると良いんだけど」
そう呟いたのは、後ろに『白き寓話』ヴァイス・ブルメホフナ・ストランド(p3p000921)が立った気配を察したからだ。
「大丈夫……じゃないかしら」
何か役に立つことがあればと歩いているヴァイス。だが彼女は、あらゆるものと疎通し漠然と『街の声』を聞いているうち、なんとなくだがわかっていた。
この街は悪魔との取引によってもたらされた生産性のないループから解放され、真の意味で『明日へ進む』ことができたのだと。
そりゃあ、嫌なことだってあるだろうけれど、なにもない無限のループを生きるよりずっといいのだと。
「やあ、シキさん! アルハさん! お久しぶり……ってほどじゃないですかね」
苦笑する自衛隊員。今更だが、彼の名はカマトリというらしい。
顔が見えなかった彼も今ではすっかりただのヒト。一応夜妖に属する何かに変わってしまってはいるものの、生きている人とさほど変わらない生き方をしている。
特に、街の復興という点に置いて彼らは重要で、かつ精力的だった。
「うん、まあ、そうだね。復興作業の途中でしょ、手伝うよ」
『優しき咆哮』シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)がそう言うと、彼女の背をトンと誰かが叩いた。振り返ると『名高きアルハットの裔』アルハ・オーグ・アルハット(p3p010355)だった。
「陣中見舞に来たぞ♡」
「アルハ」
「わらわは瓦礫の撤去にのみ働くゆえ、再建の土台作りはじえーたいの仕事だぞー?」
などと行ってみるが、シキはにっこりと笑いかけている。
「ありがとう。君がいたから、わたしは強くなれた」
そう言い切るシキ。アルハはめをぱちくりとさせて、そして独特の笑顔で笑った。
この後は、アルハなりの応援(?)をしたりシキが一緒に荷物運びをしたりと、復興作業は進んでいった。
「よう」
『雨夜の映し身』カイト(p3p007128)が声をかけたのは、『メシアちゃん』と呼ばれる少女だった。
あのとき消えてしまったはずだけれど、同じ顔の少女が街で発見されたと話題になったのだ。
「あ、あの……カイトさん? ですよね?」
疑問符の多い彼女の問いかけに頷くと、メシアちゃんは苦笑した。
「すみません、私どうも、生まれたばっかりみたいで、記憶? は、あるっぽいんですけど漠然としてて……」
あはは、と笑うメシアちゃん。この名前でいいのか若干疑問だが、カイトはもう一度頷いた。
どうやらかの救世主は、自分達との思い出だけは残していきたかったらしい。
彼女も夜妖……という扱いになるのだろうが、仲良くやっていくのは難しくなさそうだ。
「ああ、これからもよろしくな。何かあれば、手を貸してやるよ」
●無名祭
ひとつのテーブルに三人の男女。
『奪うは人心までも』結月 沙耶(p3p009126)と『持ち帰る狼』ウルズ・ウィムフォクシー(p3p009291)、『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)が向かい合っている。
謎の宗教施設に潜入しデータを持ち出し、最後には悪魔殺しの計画の鍵となった三人である。
短くも長い冒険を思い返し、ジェイクは目を閉じた。
(……引退はもうちっと後になりそうだ)
最初はただの夜妖退治のつもりだった。予想外のことに首を突っ込んで、引っ込めれば済む話がそうもいかなくて、変な話だが……楽しかった。
「俺が暴れるのに相応しい舞台を用意してくれたあの校長には、乾杯だな」
「ん? そこはよくわからないっすけど、乾杯は乾杯っすね!」
カップを掲げてみせるウルズ。
「振り返ってみると長いようで短かったっすねぇ……AIBOと派手に暴れたり、怪盗と施設をめちゃくちゃにしたり……うーん楽しかったっす」
「思えば君達2人が駆けつけてきてくれなかったらここまで潜入が成功するとは思えなかったな。校長はもしかしたらそれも見越したうえで私にCOREへの潜入を依頼したのか――いや、そんなことはなさそうだな。ならこれも運命、か……」
沙耶が椅子にもたれかかる。
「どうだウルズ、その機動力と頭の回転力があれば怪盗にでも――いや、やめとこう。君には君の考えがあるだろうしな」
「楽しそうっす! でもそうっすね。あたしは自由にやりたいっすねぇ、良いことも悪いことも今その時の気分で決めたいっす」
ともかく今は、この三人の出会いと冒険に。
「「乾杯!」」
「やれ。大団円といった所か」
『アラミサキ』荒御鋒・陵鳴(p3p010418)は祭の空気を離れ、資料室のゲートを使ってスピリットフラワーの庭へとやってきていた。
彼らが出会い、彼らが守った景色を見に。
「あっ」
そこには、『うそつき』リュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)と『メイド・オブ・オールワークス』シルフィナ(p3p007508)の姿、そしてヤスヒラ博士の姿もあった。
「おお。二人も博士とスピリットフラワーに?」
「はい。こういう機会でもないと……と思いまして」
シルフィナはそう言いながらも、すこし困った顔をしていた。会いたかったけれど、会ってどうしようかは考えていなかったという様子だ。
一方でリュコスがパッと手を当てた。
「こんかいの無名祭も、卯没瀬地区でのたたかいもぜんぶスピリットフラワーに残るのかな?」
「ええ、残る……というより、残す処理をします。情報は選別されますし、エンコードには時間がかかるので一部だけですが。皆さんのことは必ず。それに、警備ももっと厳重にしなくてはいけませんね」
ヤスヒラ博士の言葉に、リュコスたちは顔を見合わせる。
「この先、街はまた変わっていくでしょう。皆さんは、『最初の願い』をそのまま持っていますか?」
またも顔を見合わせるリュコスとシルフィナ。
「オレは……そうさな、本来、オレ自身が変わらぬモノであるからか、ヒトの世が移り行く側で何とは無しに見ている方を好むが」
陵鳴はポケットに手を入れ、そう呟いた。
「こうしてヒトの器を得たからにはもっと直に触れ、識らねばならんのだろうなと最近は思う様になったな」
一方で、学園の敷地内ではすっかりお祭りムードができあがっていた。
(お祭りで飲む酒は格別という気持ちは分かるが。
コンビニとかでお酒買って人目のない個室なんかで飲めばいいと思うんだがな……。
まあパンドラが削れてる俺に羽を伸ばす機会を与える為の建前と思っておこう。
同行を断わろうとした時のしわしわ顔は良心が痛んだからな……)
『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)はそう心の中で呟きながら『希うアザラシ』レーゲン・グリュック・フルフトバー(p3p001744)を見た。
「お祭りっきゅ―!!
レーさん頑張ったっきゅ……つまりお酒を飲む権利があるっきゅ!!
頑張った後のお酒は格別っきゅ……えっ、外見年齢的に無理っきゅ……?!」
そんなー! としわしわ顔にもっかいなりながら、ストローでちゅーちゅーお望みのものを飲んでいる。
守った景色と進んだ未来。それをさかなにお酒で盛り上がろうというわけだ。
そのまた一方、祭りの場には尻尾の多い猫がいた。
「おい、ねこじゃないやつ」
「ねこだが???」
向かいには『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)と『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)。
「まあ……いいか。猫神様には世話になったからな。捧げ物でもどうだ。鰹節とかか?」
「ちゅーるが良いな」
「今風だな」
その横で、レイリーは猫神様に問いかける。
「貴方に頼まれました件、これで解決となりましたでしょうか?」
「うむ。『本当の日常』は守られ、『あくま人間』のやつも役目を終えた。あとは寝るだけ、食べるだけ」
切り口はちょっと独特だったが、どうやらオーダーは達成したらしい。
「また、何かあれば何でも言ってください。助けに行きますから」
「うむうむ」
猫神様は満足そうだ。
そこへ、猫の神様がいると聞いて『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)と『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)がやってきた。
周りにいる沢山の猫たちを見て撫でたりごはんをあげたりしている。
「可愛くて素敵な猫さん…日常の監視って事は、僕も見られてたのかな?
猫さんに見られるの、嬉しい…。
他にも猫さんいるなら撫でたいな、心が癒される…!
それに校長先生、戻ってこれて良かった…みゃー。
あっそうだ、僕も校長先生に挨拶に行かないと…」
「手土産に猫おやつやにゅ~る持ってきたけど足りるかな…?
『名も無き神』様もお祭りのどこかにいるのかな。会って話せたら嬉しいな、お祭り楽しんでたら嬉しいし」
どうやらこの無名祭をいち参加者として楽しんでいるようだ。
かつての災害を忘れないように、名も無き神へ祈った平和への願いを忘れないように、と開かれたこの祭は、どうやらヨゾラたちの様子を見るに成功しているのかもしれない。
『失った名を再び得られたこと、心から祝福させてもらおう』
『おじさまの作ったケーキ!すっごくおいしいんだから!』
そんなことを言って、校長に挨拶を終えた『知識の蒐集者』グレイシア=オルトバーン(p3p000111)と『絶望を砕く者』ルアナ・テルフォード(p3p000291)。。
「ルアナには、また後でケーキを用意しよう…それはさておき、今回は依頼を十全にこなせず、申し訳なかった」
頭を下げようとするグレイシアに先んじて、ルアナがぺこりと頭をさげる。
結果オーライだったが、そうもいかないのが真面目なこのひとなのだからと。
二人が立ち去ろうとすると、黄泉崎ミコト校長は煙草を取り出して言った。
「実は、お前たち二人への依頼内容はなんでもよかった」
「「?」」
足を止める二人。
「お前達は、『二人でいること』に意味があった。悪魔を倒すための戦力として、お前達にはそのままでいてもらう必要があった。夜妖遣いを追わせたのは、まあ、理由付けにすぎん。お前達は充分過ぎるほど働いてくれたよ」
ルアナは笑い、グレイシアは苦笑する。理由は、ルアナが評価した通りだ。
「カミ様見てるかな? 気軽に実体を持つワケにはいかないだろうけれど、このお祭り騒ぎを楽しんでくれてるとイイな!」
実行委員として祭のイベントをあちこち見て回っていた『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)が、借りていたバイクから降りる。
それを受け、『黄泉路の楔』冬越 弾正(p3p007105)はステージへと上るところだった。
『運命の糸は繰り逢いて』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)によって設営されたステージは万全で、前説の盛り上げ方も充分だ。
「準備はできた。行こう、弾正」
後方支援も任せろとばかりに親指を立てるアーマデル。
弾正は頷き、そしてマイクを手にステージへと駆け上がった。
(年の離れたカップルの恋。先生と生徒。練達では秘密の関係でいなければいけない…そう思っていた
けど俺は今回の戦いで学んだよ。たとえ世界が変わっても、自分の気持ちは偽れない。アーマデル、君を愛してる! 神へ届け、俺達の爆熱な恋!)
ステージでぶちまけてやる。そう心の中で叫んで、弾正は声援のなかへと――。
「マジみんな盛り上がってきてんね!ノッてんね!うんうんよきよき!アゲてこーぜ!うぇーい!
んじゃ、今日はラストまで私ちゃんらでカマしていこーぜっ!
最強で最高なライブ、スタートでよろー!!
弾正っちトップバッターよろよろー!」
ステージの上でテンションを上げるMCの『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)。
『星読み』セス・サーム(p3p010326)はステージ脇から祭の様子を記録している。記録機器は借り物だが、最終的に文章に起こすのはセスの役目だ。
これらがいずれ、スピリットフラワーにも記録されるのだろうから。
(この記録が後世へと伝えられるように……)
「次は紫こーちょーだぜ!!!!!!!!!!! あっ、紫こーちょーなんか一言どうぞ」
「特には……」
若干塩な校長、かと思いきや『嘘つきな少女』楊枝 茄子子(p3p008356)が内輪を振ってテンションを爆上げした。
「校長こっち見てぇ!!」
「む」
「いま目あった! 目あったよね!! ファンサだ! すごい!!」
仕方ない……とばかりに黄泉崎ミコト校長はステージ上でムーンウォークを披露し始めた。そこから流れ始めるどこか懐かしいダンスミュージック。
茄子子は『三年待った甲斐があったー!』とテンションを爆上げにアゲたのだった。
「こんにちわ、ミコト先生! 一緒に何か遊ぼうよ。射的とか金魚すくいとか輪投げとか。ミコト先生が負けたらコレつけてね」
『魔法騎士』セララ(p3p000273)が祭を完全武装で堪能していた。設け話を嗅ぎつけたテキヤの連中が祭り屋台を出しまくり、セララがそれを回りまくったのである。
一方で『せんせー』ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)は災害をテーマにした芸術作品を展示したらしく、それに関するコメントを記者のセスに残している。
「名も無き神の『力』も重要だが。
私――我が身にも『それ』は不可欠。
つまり『こっそり』『私への信仰』も『無意識』にさせると謂うワケだ。勿論、冗談だがな。
何せ神とは『意外と嫉妬深い』存在故。
無意識! 素敵な響きだと思わないか、黄泉崎ミコト校長!」
急に意見を振られ、セララもまた黄泉崎校長を見る。
黄泉崎校長は煙草をくわえ、『かもな』と曖昧に、しかし彼らしく答えるのだった。
『カチコミリーダー』鵜来巣 冥夜(p3p008218)が無限ライダー二号のサイン&握手会を開いている。
なんかネットを中心にコアな人気が出たらしく、彼のイベントに子供や女性が列を作っている。
首なしライダーの噂を上書きするに当たって、どうやら彼の存在がうまく使われたっぽい。
(やはり私は、仕事に忙殺されるのが楽しくて仕方ない。出来れば争いではなく、こういう平和な仕事で…ですけど)
フッとヘルメットの下で笑う冥夜。
その前を通り過ぎ、黄泉崎校長は学園近くの飲み屋へと入っていった。
がらりと引き戸を開けば、数少ない席。カウンター席には『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)と『お裁縫マジック』夕凪 恭介(p3p000803)の二人がいた。
ちょいちょいと手招きするアーリア。
黄泉崎校長は表情を変えず、二人の間に座って焼酎を注文した。
「イベントは成功してた?」
「らしいな」
アーリアがあちこち出歩いてつまんだり飲んだりしていたのを恭介は知っていたので、くすりと校長の一言に笑う。
「ミコト先生、ってイマイチしっくり来ないし……ま、引き続き校長センセってことは変わりないわね。
これからプール開きに、ああ夏は朝のラジオ体操も!
頑張ってね、センセ」
「正直、やりたくはないんだが」
「頑張ってね?」
相変わらず仕事をサボるつもりだろうか。
アーリアが小突くと、黄泉崎校長は出された焼酎に口をつけた。
恭介がコップを置く。
「ね。偽物を選んでたのはあなた自身の趣味? それとも悪魔との契約?」
質問に、黄泉崎校長は暫く黙ってからカウンターの向こう、店内に並ぶ酒のラベルを指さした。
「あれは、日本にあった酒の銘柄だ。酒好きがこの街に酒造所を作って再現したものだな。本物そっくりだが、本物じゃあない。つまり、偽物だ」
コップに再びめを落とす。
「俺は偽物が好きだ。本物になろうとあがき、時に本物を越え、それすらも拒もうとする。俺が黄泉崎ミコトの偽物であった時のように、な」
『黄泉崎ミコトの偽物』が何を指すのかをすこしだけ考え、恭介は小さく笑った。
「貴方となら、大親友になれる気がする」
「そうか? 奇遇だな、俺もそう思ったところだ」
思わず素直な反応を返され、恭介はカップを掲げた。
「無名祭と、日常に」
「「無名祭と、日常に」」
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
――そして日常に帰す
GMコメント
<無意式怪談>のアフターストーリーにあたるイベントシナリオです。
全ての事件はメフィストフェレスという一つの悪魔に繋がり、事件を追っていたそれぞれのイレギュラーズたちは悪魔との戦いに勝利しました。
その後、別々となったイレギュラーズたちは――あなたはどのように動くのでしょうか。
予定通り開かれた無名祭をきっかけに、それを見ていくことにしましょう。
■■■グループタグ■■■
一緒に行動するPCがひとりでもいる場合はプレイング冒頭行に【コンビ名】といったようにグループタグをつけて共有してください。
大きなグループの中で更に小グループを作りたい時は【チーム名】【コンビ名】といった具合に二つタグを作って並べて記載ください。
参加パート
参加するパートを選択してください
【1】無名祭に参加する
『名も無き神』がその存在を維持するために開かれるというこの祭には、関係者たちが参加しています。
例えば日常の監視をしていた猫の神様や、夜妖遣いを追っていた裏社会の人間、スピリットフラワーの維持管理をするヤスヒラ博士などです。
勿論黄泉崎校長も顔を出し、あちこちに挨拶をして回ることでしょう。
【2】卯没瀬地区の様子を見に行く
今は復興の最中となった卯没瀬地区に顔を出してみます。
ここには再現性廃都の住民や卯没瀬自衛隊の人間達が移住し復興を行っています。
実際街はズタボロにぶっ壊れているので、建物の再建作業が着々と進んでいる様子です。
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