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シナリオ詳細

<霊喰集落アルティマ>反乱の狼煙、我こそは火種なり

完了

参加者 : 50 人

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オープニング

●魂喰集落アルティマ
 『アルティマ』とは七つの集落群の総称である。
 魂喰晶竜クリスタラードによって支配されたこの集落群にはそれぞれ強力な『管理者』となる存在があり、彼らにはクリスタラードによって命令を受けていた。
 それが、定期的に生贄を捧げることである。
 管理者たちはそれぞれのやり方で生贄を確保あるいは生産しクリスタラードに捧げていたが、先だって外へ出撃したクリスタラードが空腹をおぼえたためか求める生贄の数が急増。各集落に混乱が生じ……それはペイトやフリアノンという大集落にも影響を及ぼした。
 ローレット・イレギュラーズに託された使命はひとつ。
 各集落を管理者たちによる支配から解放し、クリスタラードを追い詰めることだ。

 霊喰集落アルティマと呼ばれるエリアは七つに分かれている。
 全ての支配者であるドラゴン、霊喰晶竜クリスタラードのもつ力の水晶が七つであることを起源にしてか、それぞれのエリアは色の名で呼ばれている。
 ――高い塔が並ぶブラックブライア
 ――地下空洞ホワイトホメリア
 ――死都ヴァイオレットウェデリア
 ――溶岩地帯レッドレナ
 ――海底遺跡オーシャンオキザリス
 ――密林イエローイキシア
 ――楽園グリーンクフィア
 どのエリアから手を付けるかは、あなたが選ぶのだ。
 そしてこの先どのような未来が訪れるかも、あなたにかかっている。

●ホワイトホメリア:兵糧攻め
「よっしゃ、一発ぶちかますよ!」
 竜骨でできた巨大な剣を手に、特徴的なスタイルのドラゴニア女性が地面を削る勢いで剣を振り上げて見せた。
 アダマス・パイロン。ペイトの坑道警備隊長であり、先だっておこった強大な亜竜ホワイトライアーによる襲撃は多くの坑道作業員と警備員が犠牲となった。そんな事件を二度と起こさぬためには、こちらから打って出るほかない。いや、そうするべきだと血気盛んな警備隊員(主にアダマス)は考えていた。
 伊達 千尋(p3p007569)をはじめとするホワイトホメリア担当イレギュラーズたちもまた、その考えには同意したようだ。
「兵糧攻め祭りはローレット通せやァ……」
 鉱石を運ぶための荷車にわざとのっかり、謎のパワーワード(深い意味はもはやない)を言いながら現れる千尋。
 ドッドパッ――という印象的なイントロミュージックと共に現れるのは、彼の仲間達と坑道警備隊で構成された迎撃チームである。
「今回はおねーさんも一緒に戦ってやるよ。あの蛇野郎を泣くまでハラペコにしてやろうじゃないか」
 隣に並び歩き、ニッと笑うアダマス。
 後ろに並ぶ警備隊員たちが報告をあげてくる。
「次に狙われる地域は亜竜集落ジョナサンです。情報を手に入れたのがギリギリだったので避難は間に合っていませんが、我々の手でホワイトライアーの眷属たちを迎撃できれば……」
「そういうことね。怠けモンのホワイトライアーにとっちゃ酷えストレスになるはずだぜ」

●レッドレナ:襲撃作戦
 溶岩の川が流れるその中心に、集落レッドレナは存在している。
 ドラゴニア住民達は亜竜に支配され、奴隷として酷使され続けていた。彼らに反乱を起こすだけの力はなく、時折おきた散発的な犯行は見せしめのように溶岩へたたき落とされる結果を招くのみであった。
「だがな、そいつは今日までの話だ」
 バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が義手をカチンとはめ直して呟く。低く、そして渋みの深い声だ。
 彼のそばにはトルハという少女がいる。紫髪にピンク色の目をしたドラゴニアで、レッドレナで生まれ育った少女であるという。彼女が小さく『おうちにかえりたい』と呟いた時のことを、バクルドは胸の痛みと共に思い出す。
「レッドレナの住民は心から亜竜に服従してるわけじゃあない。誰かがかませば、それが引き金になる」
 それができるのが俺たちだ。バクルドはそう締めながら、『自分らしくないアツい台詞だ』と心の中でぼやいた。
 けれど、言わなければならない。自らの袖をひく少女の故郷を、本当の居場所を、取り戻すためには。
 そして彼女だけではない。
 今も尚あの集落で奴隷として働かされ、生贄として捧げられ続けているドラゴニアたちを解放するためには。
「襲撃だ。真正面から、突っ込むぞ!」

●ブラックブライア:最上階への挑戦
 無数の石の塔がならぶ集落ブラックブライアには明確なルールがある。
 強い者が最上階へ行けること。
 最上階に行けたもののみが管理者の亜竜ブラックアイズと対面できること。
 管理者に勝負を挑み、そして倒すことができればこの集落は解放され、生贄として捧げられることはなくなるだろう。
 実力を示し猛者と戦う者。
 あえて味方を増やし広大なる出来レースによって塔を支配してしまおうとする者。
 彼らがそれぞれの塔を攻略することはできるのか。無論、その未来は彼ら自身の腕にかかっている。

 だがその一方……。
「こちらです、『黄金の王』」
 ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)は塔とは異なる神殿めいた石作りの施設へと連れてこられ、集まる猛者たちに囲まれた部屋の中央へと案内されていた。
 『ビクトリア』を名乗る女はヴィクトールが完全に忘却したという過去を知る者だと話し、彼にすべてを教える代わりに『わたくしの王』となることを求めた。
 ヴィクトールは彼女を信じることにして、彼女に全ての主導権を預けた。
 いや、預けてしまったというべきかもしれない。
 思えば美味しすぎる話だった。全てを取り戻し、なおかつ王に頂かれるなど。
 石の玉座を指し示し、求められるままそこに座ったヴィクトールは……びくりと胸の張り裂けるような感覚に瞠目した。
 いや、比喩表現ではない。胸が実際に裂け、内側から心臓にも似た形の黄金が飛び出したのだ。
「これ、は……一体……?」
 目を見開き、浅い呼吸を繰り返すヴィクトール。
 手を出したビクトリアは黄金の心臓をつかみ取ると、それを自らの胸へと押し当てた。ずぶずぶと沈み、彼女の中へと入っていく黄金の心臓。
「お望み通り――教えてあげるわ、『黄金の王』。いいえ、その抜け殻。
 あなたは私からヴィクトールを奪い、その名前すら奪った。だから、あなたからも奪うことにしたのよ。あなたが捨てたはずのものを」
 全身から力が抜けたかのような感覚に、膝をつく。
 胸から流れ続ける血。
「最後に、『同じように』奪ってあげるわ。あなたの命をもって」
 パチンとビクトリアが指を鳴らすと、周囲の男女がゆっくりと歩み出た。
 塔の最上階で見た者たちだ。よほど腕の立つドラゴニアなのだろう。
 ヴィクトールは苦笑し、そして胸に手を当てた。温かい。血が流れている。痛い。生きている。
「ボクは……誰だったのですか……?」
「そんなことは知ったことではないし、どうでもいいわ」
 ビクトリアは手をかざし、あざ笑って見せた。
「ボクは……私は……」
 己の定義とは、何か。
 それを保証してくれる人間が必要なのだろうか。
 仮に必要であるとして、それは……誰だろうか?
「ぼくの騎士さま(ヴィクトール)!」
 ドン、と扉が蹴破られた。
 現れたのは――あろうことか、散々・未散(p3p008200)であった。

●オーシャンオキザリス:海の宝玉を盗み出せ
 サンディ・カルタ(p3p000438)たちイレギュラーズに化せられた使命は、亜竜に支配されたこの海底集落オーシャンオキザリスを解放することである。
「けど、正攻法でいっても亜竜の数と強さが確実に上だ。だから管理亜竜アリアベルの弱点となる『海の宝玉』を盗み出す。最小限の人員で、最高の成果を出すんだ!」
 オーシャンオキザリスは海底に作られた集落であり、水中呼吸を可能とするドラゴニアだけが住んでいる。が、彼らはアリアベルという強大な亜竜やその眷属となるモンスターたちによって暴力支配を受けており、彼らのエサとなることで生きる以外の選択ができていない。
 そんな集落の中心地、神殿とおぼしき石作りの建物には『海の宝玉』が収められており、これを用いることでアリアベルと正面切って戦うことができるようになるのだ。
 サンディは前回の偵察で作ったマップを広げ、神殿の概略図をしめす。
「盗み出す手順は簡単だ。表で騒ぎ(陽動)を起こし、亜竜たちを引きつけるチーム。
 そして裏からこっそりと侵入して宝を盗み出すチームだ。
 侵入するチームに戦闘は厳禁だ。もし戦いになれば確実に囲まれて負けることになる。
 表の陽動チームも、積極的には戦わず、適度に刺激しながら逃げることで兵力を神殿から遠ざけるのが役割になるだろう。どちらも危険だけど……成功すれば大勢の人生を解放することができる近道になるはずだ!」

●ヴァイオレットウェデリア:屍竜討伐
 集落ヴァイオレットウェデリアは死した都である。
 アンデッド兵が闊歩し、ドラゴニア住民は全てキューブ状の檻に入れられ家畜のように管理されている。時が来れば『出荷』される運命だ。
 旧管理者でありアンデッド系亜竜であったバザーナグナルは生贄制度こそあれど今より良好な関係を住民達と築いていたらしい。それがなくなったのは超越者ヴァイオレットなる存在がバザーナグナルを滅ぼしてからだ。
 バザーナグナルの死体はそのままリデッド・バザーナグナルとして使役され、留守がちな超越者ヴァイオレットのかわりに家畜たちの監視役となっている。
 だがこれを倒す事が出来れば……。
「ヴァイオレットウェデリアの住民は抑圧されきっている。
 閉じ込められてる連中を助け出せばそれだけで仲間となるであろう!」
 炎 練倒(p3p010353)は原住民以上に囚人めいた格好で吠えた。
「共にゆこう。再度死して望まぬ支配をうけた悲しき亜竜を、まずは解放するのである!」

●イエローイキシア:部族を守り、仲間を増やせ
「パルパ族を救うのです!」
 リディア・T・レオンハート(p3p008325)は剣を掲げて吠えた。
 密林の中に築かれた集落群イエローイキシアは、無数の少数民族たちが暮らす広大な森だ。
 各部族はそれぞれ独立した文化をもっており、一族の者を大事にしている。その一方、互いに深く干渉し合わないことを暗黙の了解としていた。
 だがそんな各部族は、イエローイキシアを管理する亜竜ヘラクレスによって定期的な『刈り取り』を受けていた。
 ヘラクレスにとって密林に暮らすドラゴニアたちは放っておけば勝手に増える生贄程度の存在であったのだ。
 だが逆に言えば、その刈り取りに失敗すれば生贄の大量確保ができなくなる。
「刈り取りを行う亜竜たちを倒し、力を示すことでパルパ族を味方に付けることができるでしょう。それだけでなく、友好的でない部族に心変わりを起こさせたり他の中立部族を味方に引き入れることも可能なはず!」
 そうだ! と同意を示し叫んだのは最初に味方となることを約束してくれた『クヌェ族』の戦士達だ。彼らも武器をとり、リディアたちと共に戦うという。
「全ての部族……いいえ、半分でも味方にした時点で、実質的に私達の勝利です。ヘラクレスは容易な刈り取りができなくなり、強硬策をとらざるを得なくなる。そうなればこれまでのような支配などできません。集落を、解放できるのです!」
 槍や石斧が掲げられる。
 そしてリディアと仲間達は集落を飛び出し、一路クヌェ族の集落へと向かったのであった。

●グリーンクフィア:欲求なき世界の破壊
 ドレイク型亜竜『ベルガモット』はグリーンクフィア集落の管理者である。
 だが、管理者としてやるべきことはただ待つことのみ。
 タイム(p3p007854)は前回の探索で目にした恐るべき管理を思い出す。
「グリーンクフィアには緑色の花が咲いていたの。この花からでる成分はひとから欲求を失わせてくれる。理性的に暮らすにはいい効果かもしれないけど……食欲や睡眠欲、生きようっていう気持ちまで失われることになるのは、とても怖かった……」
 生きる欲求自体を失ったグリーンクフィア住民たちは管理者から定められた『規則』に従って自ら生贄となり続けている。
「けど、だからこそ解放する方法はシンプルなの」
 そうだよね? と顔を向けるとルブラット・メルクライン(p3p009557)がスッと手頃な大きさの瓶を掲げた。
 中に入っているのは……可燃性の液体だ。口の部分から布を詰めて吸わせ、火を付ければ中まで伝わるようになっている。つまりは『火炎瓶』である。
「花が欲求を殺すなら、花ごと燃やし尽くせばよい。全てを燃やすことはできないにしても、住民達が我に返るだけの隙を作ることは可能だろう」
 次にルブラットが取り出したのはハーブを調合して作ったカプセル剤だった。
「花を燃やしきった状態でこのカプセルを飲ませれば、花による薬学的効果を薄めることができる。つまりは……解毒剤のようなものだな」
 無論、そんな行いを現地の亜竜たちが許すはずがない。彼らと戦いながら火炎瓶を投げまくり、美しい花園を燃やし尽くすというのが今回の目的となるだろう。
「美しいことは良いことだ。だが、美しいだけの人生ははたして是だろうか?」
 花園を燃やす火炎瓶と、本能を呼び覚ます薬物。その二つを掲げ、ルブラットは仮面の下で笑って見せた。

GMコメント

 <霊喰集落アルティマ>を巡る長編シナリオ第二回です。
 内容的には続きモノとなっていますが、OPに示した部分は途中参加がしやすいパートとなっていますのでお好きなパートを選択して参加してください。

※このシナリオは『霊喰集落アルティマ』にまつわるものです。
必ずしも過去の内容を参照する必要はありませんが、過去のシリーズやTOPログを見ることで解決する謎や疑問もあるかもしれません。
また、途中参加や「前までの内容を忘れてしまった」という方も特設ページを使うとわかりやすいでしょう。
 https://rev1.reversion.jp/page/ultima

・プレイングのかけ方、選び方
 『パートタグ』の説明のなかで、誰でも参加が可能なパートについて説明しています。
 ですが中には、前回のなかで特別な役割や使命を与えられた方もいるかもしれません。
 そういった方はそれに対応したパートタグを選択しつつ、自分なりの行動をとってください。
 迷ったら相談掲示板などで周りに尋ねてみてもいいかもしれません。
 第一回はこちらのリンクからご参照ください。
 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/7413

■■■プレイング書式■■■
 迷子防止のため、プレイングには以下の書式を守るようにしてください。
・一行目:パートタグ
・二行目:グループタグ(または空白行)
 大きなグループの中で更に小グループを作りたいなら二つタグを作ってください。
・三行目:実際のプレイング内容

 書式が守られていない場合はお友達とはぐれたり、やろうとしたことをやり損ねたりすることがあります。くれぐれもご注意ください。

■■■パートタグ■■■
 以下のいずれかのパートタグを一つだけ【】ごとコピペし、プレイング冒頭一行目に記載してください。
 ここで紹介しているものは途中参加OKなものです。
 また、専用のミッションを与えられているPCが直接新規参加者に協力を求めることもOKとします。

【黒】ブラックブライア
 特徴:高い塔|飛行必須|鳥系亜竜
 それぞれのメンバーが己の肉体を頼りに高みを目指すなかで、皆さんの助けを必要としているパートがあります。
 ビクトリアという女性ドラゴニアによって言葉巧みに神殿めいた場所へ連れ込まれたヴィクトール(p3p007791)は、今まさに命を奪われようというピンチにあります。
 あなたはこの現場に駆けつけ、ヴィクトールを助け出すことができます。
 また、ビクトリアに関して調査した記録を偶然あるいは意図して見たことがあってもよいものとします。
『ビクトリア調査記録(https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/3114)』

【白】ホワイトホメリア
 特徴:地下空洞|暗視必須|蛇系亜竜
 亜竜集落ジョナサンへ、ホワイトホメリアの亜竜たちが攻め込んできます。
 しかし情報の先周りができたローレットとペイト坑道警備隊はこれを迎撃する準備を整えていました。
 ジョナサン住民を守りながら蛇系亜竜たちと戦い、撃退しましょう。
 蛇系亜竜たちの狙いは主に住民達です。彼らをぱくんと飲み込んで連れ去り、クリスタラードの生贄や坑道奴隷とする目的のようです。

【紫】ヴァイオレットウェデリア
 特徴:廃都|霊魂多数|屍系亜竜
 リデッド・バザーナグナルを倒すべく集落を襲撃します。
 この集落の兵力は少なく、リデッド・バザーナグナルを除いては『たべかす』と呼ばれる弱い幽霊型アンデッドモンスターが多数いるばかりです。
 なので、リデッド・バザーナグナルを倒せるかどうかが全てとなるでしょう。
 リデッド・バザーナグナルは巨大な竜の骨からできたアンデッド系亜竜です。しかもアンデッドとして一回滅ぼされた上で再利用されており、人格は消え去り主人の命令を遂行するだけの暴力マシンと化しています。
 戦闘能力は未知数ですが、調査内容から察するに呪殺系の能力を持ち、同時にBSを付与することにも長けていそうです。

【赤】レッドレナ
 特徴:溶岩地帯|過酷耐性&火炎耐性有効|炎系亜竜
 溶岩地帯のレッドレナです。
 正面から襲撃をしかけ、炎系亜竜たちと戦いましょう。
 人型の亜竜バルバジスが管理しており、これを倒せても倒せなくても『派手に襲撃し生き残ってみせる』ことで住民達の意識を決定的に変えることが出来る筈です。
 なのでここでの成功条件は『派手に襲撃し生き残ってみせること』になるでしょう。

【青】オーシャンオキザリス
 特徴:海底&海辺|水中行動必須|両生類系亜竜
 神殿に収められた『海の宝玉』を盗み出します。
 詳しくはOPで説明されているので省きますが、陽動と侵入の二つのチームに分かれるとよさそうです。

【黄】イエローイキシア
 特徴:密林|毒耐性有効|虫系亜竜
 パルパ族への『刈り取り』を防ぎ戦います。
 虫系亜竜(巨大な虫を彷彿とさせる亜竜のこと)が次々と襲いかかってきますが、これを迎撃します。より力強く、あるいはパルパ族に見せつけるようにして守ってみせると彼らの信頼度があがり味方になってくれやすくなります。
 端的に言うと、英雄になれば成功です。

【緑】グリーンクフィア
 特徴:高原|不気味|植物&獣系亜竜
 この集落は花によって薬物洗脳されています。なので火炎瓶で花畑を燃やしまくりヤベー薬を無理矢理飲ませることで洗脳を解きましょう。バケモンにバケモンをぶつけるかのごとき所業ですが、ある意味一番の解決法のようです。
 亜竜たちと現地住民が抵抗するでしょうが、これを押しのけながら火炎瓶を投げまくる必要があります。
 亜竜はともかく現地住民はできるだけ殺さないようにしましょう。(不殺スキルがあるととても便利です)

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <霊喰集落アルティマ>反乱の狼煙、我こそは火種なり完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別長編
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年06月25日 22時05分
  • 参加人数50/50人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 50 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(50人)

セララ(p3p000273)
魔法騎士
零・K・メルヴィル(p3p000277)
恋揺れる天華
オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)
木漏れ日の優しさ
レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
郷田 貴道(p3p000401)
喰鋭の拳
サンディ・カルタ(p3p000438)
抗う者
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
カイト・シャルラハ(p3p000684)
太陽の翼
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
ヨハン=レーム(p3p001117)
帝国軽騎兵隊客員軍医将校
バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)
老いぼれ
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
迷い猫
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
ティスル ティル(p3p006151)
幻耀双撃
冬越 弾正(p3p007105)
黄泉路の楔
彼岸会 空観(p3p007169)
伊達 千尋(p3p007569)
Go To HeLL!
ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)
毀金
タイム(p3p007854)
揺れずの聖域
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
散々・未散(p3p008200)
魔女の騎士
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
天目 錬(p3p008364)
陰陽鍛冶師
シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)
ノブレス・オブリージュ
ラムダ・アイリス(p3p008609)
咎人狩り
笹木 花丸(p3p008689)
竜交
金枝 繁茂(p3p008917)
善悪の彼岸
ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)
陽気な歌が世界を回す
トスト・クェント(p3p009132)
星灯る水面へ
ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)
復讐の炎
澄恋(p3p009412)
花嫁キャノン
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
耀 英司(p3p009524)
怪人暗黒騎士
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
佐藤 美咲(p3p009818)
合理的じゃない
ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
後光の乙女
襲・九郎(p3p010307)
フレジェ
炎 練倒(p3p010353)
ノットプリズン
ユウェル・ベルク(p3p010361)
宝食姫
鯤・玲姫(p3p010395)
特異運命座標
樹龍(p3p010398)
熾煇(p3p010425)
紲家のペット枠
紲 月色(p3p010447)
紲家
紲 六合(p3p010461)
桜龍

リプレイ

●イエローイキシア:パルパ族と『刈り取り』
「儂じゃ!」
 密林の奥深く、細い細い道によって繋がる少数部族たちの集落がある。
 ここパルパ族は祖霊を信仰し平和を求め、周囲の争いに対して常に中立の立場をとり続けてきた部族であった。
 そんな集落に突如として現れたのは、なんと樹龍(p3p010398)だった。しかも両腕を掲げたY字のポーズで。
 湿気が多く暑い気候なのか、半ズボンひとつで上半身裸の少年や男たちが生活の手をとめ、『誰?』という顔で見ている。
 ここで重要なのは『知らない人だから無視しよう』とならず『分からない相手だから警戒しなくては』と素早く女子供を家の中に入れ、男達が武装こそしないものの村にすぐには入れないような位置に立って並ぶという対応をとったことである。
「なんじゃ、歓迎されとらんのう」
「まず聞いてくれ」
 『陰陽鍛冶師』天目 錬(p3p008364)が後ろから現れ、両手を翳し害意がないことを示しながら適度なディスタンスを保った位置で話を始めた。
「この村は今から亜竜の『刈り取り』の対象になるんだ。俺たちは亜竜を追い払うために来た。今すぐにこの場所に迎撃陣地を構築したい。協力してもらえないか」
 錬の提案はきわめて合理的なものだったが、しかしパルパ族の反応は芳しくなかった。
 第一段階として、錬たちが信用できるかどうかの保証がとれていないためだろうか。あるいは、亜竜の脅威を一度はねのけたくらいで先の安全が確約されないことや、かえってより大きな被害を被ることを危惧しているのか。
 少なくとも、こちらからの要求を通すには間に一段階挟む必要があるということだ。
「名乗り遅れてすまない。俺たちはギルドローレットから派遣されてきた。レイチェルというだ」
 手をかざし、そして緑色の綺麗な石を翳してみせる『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)。
 その石がどういうものか知っているのか、パルパ族の中でも年の深い男がオオと声をあげた。
 レイチェルの登場によって反応が変わった。レイチェルは後は任せてくれとばかりに錬たちに手を振る。
「俺たちの目的はイエローイキシア全域の解放だ。協力者兼依頼者としてクヌェ族の約束も取り付けている。そしてこの森で力を持っている『泉の精霊』とも交渉をしたばかりだ。
 俺たちは協力の対価として、パルパ族の身柄と生活、そしてこの森の自然体系の保護を約束する」
 密林の奥で暮らすパルパ族にとって、精霊は生活の一部であり神に等しいものであるらしい。ゆえに『泉の精霊』という名で呼ぶのだ。固有名をつけず、存在を受け入れるために。
「保護結界は任せて。森や家々に被害は出させない」
 付け加えるように『木漏れ日の優しさ』オデット・ソレーユ・クリスタリア(p3p000282)が歩み出ると、両手をふわっと宙に翳した。太陽のプリズムめいた光が湧き上がり、周囲の森や家々に微光をもってはりついていく。
 パルパ族の男達の中から、族長を名乗る男が現れた。
「よかろう。協力しよう」
「ほう、やるのう」
 一部始終を(最初のポーズのまま)見ていた樹龍がニッと笑った。
「この辺の木々と対話してみたが、素材に丁度良い木が何本かあったぞ。生える密度の濃い部分は残して、間を埋めるようにバリケードを用意しておけば効率がよかろう」
「アンタ、そんなこと考えてたのか……」
 自然や植物に対する知識の深い錬だが、疎通能力者ほど個体ごとの状態を調べきれない。そこは持ちつ持たれつだろう。
「作り方は俺に任せてくれ。こういうのは得意分野だ」

 巨大なダンゴムシ状の虫型亜竜たちが大挙して押し寄せる。
 そのさまは地獄のようではあったが、しかし錬の心に焦りはなかった。なぜなら、集落を囲むように設置した木造バリケードに激突したためである。
「よし……!」
 グッと小さくガッツポーズをとる錬。
 が、防衛陣地が『完璧』であることはない。それが一昼夜すらかけられない即席モノであればなおのこと。虫型亜竜が激突したバリケードは構造的に強度を増していたとはいえ歪みが目に見える。幾度も体当たりを受ければ崩壊するだろう。
 だが一番の狙いは、バリケードを『仕掛けていない』エリアをあえて作ったことだ。
「西側の入り口を押さえるぞ。みんなかかれ!」
 クヌェ族から選出された僅かな弓使いたちが矢を放つなか、錬もまた『式符・樹槍』の術式を起動させる。
「最強たる儂の出番じゃな!」
 横ピースしながらザッと現れた樹龍が、開けっぱなしの入り口へ阻むように立つと炎の術を展開した。
 ダンゴムシのような虫型亜竜たちを焼き払うと、その中を突き抜けてきた蜘蛛型亜竜の前脚が樹龍へと刺さる。
「血を流させ毒を流し込んだとて、儂には通用せんぞ!」
 至近距離で放つ炎が蜘蛛型亜竜を包み込み、オデットがぴょんと飛び上がる。
 蜘蛛型亜竜の頭上へととびのり、人差し指を突きつけた。
 キュンッと甲高い音がしたかと思うと光が集まり光線となって蜘蛛型亜竜の頭を貫いていく。
「日の光って集めると痛いのよ、どう?」
「村に手出しはさせねぇ」
 竜鱗片を翳し、こっちへこいとばかりに挑発するレイチェル。
 狙い通りに襲いかかってきた巨大な蝶。まいた鱗粉が妖しい光を放ちレイチェルを苦しめるが、腕の紋様をなぞるようにして呼び出した血色の炎が矢となって蝶型亜竜へと刺さる。
 クヌェ族とパルパ族の戦士も合わさり、戦力的にはこれで拮抗……といった所だが、イレギュラーズ側はこれで打ち止めというわけではない。
「リディ氏、つかまってて下さい!」
 上空よりワイバーン『バーベ』を用い急降下をかけてきた『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)。蝶型亜竜めがけて拳銃を撃ちまくる。
 対抗しようとこちらへキッと視線をむけたのが分かったが、ひるむことなどない。
「パルパ族の皆さん、私達が必ず貴方達をお護りします!」
 『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)はワイバーンの背から立ち上がると、あろうことか蝶型亜竜めがけてダイブした。
「我こそはリディア・レオンハート! 管理者ヘラクレスから、この地を開放する者なり!」
 輝く剣が力となり、必殺のレオンハートストライクが蝶型亜竜の頭部へと突き刺さる。
 墜落した蝶型亜竜から立ち上がると、リディアは剣を天に振りかざした。
「皆が力を合わせれば、望まぬ支配を受け続ける必要など無いのです!」
 剣を両手でしっかりと握り、前方から迫るクワガタ型の亜竜へと構える。
 リディアの身体を挟み込もうと角状の突起を光らせ突進してくるクワガタ亜竜。
 しかしリディアは退くどころかあえて突き進み、相手の角が繰り出される寸前のところでスライディングをかけ真下を通過。
 相手の側面をとると、剣をおもむろに突き立てた。装甲の隙間を縫うように、そしててこの原理でひっぺがすように力を込める。
 そうはさせまいと反転しようとするクワガタ亜竜に対して、上空でワイバーンに上下反転騎乗をした美咲が拳銃を乱射。
 衝撃に動きを阻害されたクワガタ亜竜。リディアはここぞとばかりに力を込め相手の装甲をべきんと引っぺがして見せた。
「皆さん! 今です!」
 リディアの叫びに『応』と応えたパルパ族の戦士達が槍を構え突進。むき出しの肉体へと槍を突き込んでいく。亜竜は激しい叫びをあげて暴れ、リディアと戦士たちがそれを力ずくで押さえ込む。
「望まぬ支配を受け入れる必要など無い……それは、ヘラクレス。あなたも同じ事なのですよ……」
 やがて力尽き、地面へと沈むように脚の力をぬいたクワガタ亜竜に息をつきつつ、リディアは小さく呟いた。

 一方。
「キミたちは"餌"じゃない、この地に生きる"人"だ。故に戦うべきだよ。解放された時、他部族から『おこぼれを貰った』と謗られぬためにもね」
 交渉の際に言ったことと同じ事をその場の戦士たちに告げ、『闇之雲』武器商人(p3p001107)は虫型亜竜たちの前へ出た。
 バリケードは破壊され、一点集中かつ各個撃破作戦が使えなくなってきた頃のことである。
 武器商人はちらりと後ろを振り返る。槍を構えたパルパ族の戦士達が数名。そのずっと後ろには大きな建物があるが、とてもではないが頑丈とは言いがたい建物だった。その中には彼らの家族が避難しているのだが、もし建物を破壊されたらどうなるだろう。きっとクマが蜂の巣から蜜を持ち出すかのように、強引に連れ去ってしまうだろう。
 ならばこちらの最終的な勝利条件は、亜竜達を追い払うことに加えて村への被害の軽減と浚われる民の軽減にあると言えるだろう。
「ヒヒ……」
 不気味に笑い、亜竜たちを引きつける。
 大量の牙が、角が、あるいは脚が武器商人を滅茶苦茶に破壊する……が、武器商人は死ななかった。どころか足元から湧き上がる名状しがたい何かがまとわりつき、亜竜を一体また一体と滅ぼしていくではないか。
 こうして引きつけている間に、パルパ族の戦士達が槍で亜竜を突き殺していく。
 竜とヒトとでは圧倒的な戦力差があるものの、亜竜とヒトでならこうして対抗することは可能だ。武器商人たちのような手練れがいればの話ではあるのだが……。
(戦術が戦力差を覆す。今まで何度も見た光景だけれど……)
 武器商人は思った。『上手くいきすぎている』と。
 作戦に何の問題も起きていないとき、三つのケースに至っている可能性がある。
 ひとつは自分達があまりに天才的かつ完璧な作戦を立てそれに成功してしまったというケース。
 もうひとつは、穴を見落としたまま進行してしまっている(そしてその穴を今まさに疲れようとしている)ケース。
 そしてもう一つは、相手がこちらの作戦をひっくりかえす準備を既にしているケースだ。
「――ッ!?」
 パルパ族の誰かが叫んだ。いや、あるいは武器商人本人の叫びだったのかもしれない。突如として武器商人の視界が霞み、歪み、激しく回転する。
 それが、痛みすら感じないほど唐突に吹き飛ばされたのだと気付いた時には武器商人は建物の壁を破壊し、屋内へと転がり込んでいた。
 悲鳴があがる。子供の泣き声もだ。
「まずい、皆が!」
 パルパ族の戦士の声がそれに重なり、駆け寄ってくるのが見える。
 武器商人はなんとか起き上がり、そして見た。巨大なカマキリのような、あるいはバッタのような、無数の虫が混ざり合ったような奇怪な亜竜を。
 亜竜は、歯茎をむきだしにした人間の口めいた器官を露出させ『声』を発した。
「我が名ハ、ゲゼルキドン。ヘラクレス様第一の槍ニシテ、収奪の槍デアル」
 吠えるゲゼルキドン。それによって、周囲の亜竜たちは一斉に戦闘をやめ、身を退いた。
「ヘラクレス様に抵抗する意志、確かに受け取ッタ。抵抗は許されナイ。
 この一族の一切を滅ぼすことを、ここに宣言スル。我れらに忠誠を誓う、三つの部族が我等と共にこの地を攻めるダロウ。
 平伏し、待つがヨイ」
 すると羽を広げ、天へとのぼっていく。
「待ちなさい!」
 リディアが叫ぶが、亜竜たちは制止をきかず空の彼方森の彼方へと消えていった。

 そして、襲撃があけた翌日。
 美咲はワイバーンを羽ばたかせゆっくりとパルパ族の集落へと降り立った。
「ビラ配りは終わったっス」
 そういって翳したのはリディアたちの勇姿を撮影した写真と檄文であった。
 『パルパ族の勇者は意志を示した!』
 『我々は心無き石屑ではない!自由の心を持つ魂である!』
 『心持つ者は反抗を叫べ!意志持つ者は異部族の友の手を握れ!そして、命であると自覚するものは獅子の剣撃に続け!』
 そうした文言の書かれたビラを周辺集落へと空からまき散らしてきたのである。
 当然亜竜にも空の監視があるのでサッといってサッと帰ってきたわけだが。
「にしても……機能ゲゼルキドンが言ってた『忠誠を誓う三つの部族』て何でス?」
「デデ族、トイタ族、ペンセゴフイナ族だろう」
 美咲を出迎えたイレギュラーズに交じり、パルパ族とクヌェ族の族長が応えてくれた。
「彼らはヘラクレス様に忠誠を誓っておる。このような時、反抗した部族を襲うよう取り決めをしていたのかもしれぬ……」
 ゲゼルキドンが加わった亜竜たちの戦闘力はかなりのものだ。イレギュラーズと二部族が協力してやっと抵抗できるというのに、三部族も加わってしまったら確実に押し切られるだろう。
「彼らをなんとか味方につけるか……あるいは、未だ中立のハディ族とカッマ族を味方に引き入れるほかあるまい」
 族長たちの言葉に、美咲たちは既に『次の戦い』が始まっていることを実感したのだった。

●ブラックブライアA:旋風のバルマ
 塔の並ぶ亜竜の集落、ブラックブライア。
 かつてここが如何なる場所であったのかはわからない。少なくとも、一歩外へ出れば怪鴉の群れにたちまち生きたまま鳥葬されるのは間違いないということであった。
 この土地において『上にあがる』という言葉はそのままの意味で用いられ、最上位に管理者ブラックアイズという強力な亜竜が存在している。
 上へ行くための手段はシンプル。戦って勝ち、勝ち、勝ち進むことだ。
「あんたか。一気に塔を駆け上りやがって……たまんねえな」
 見事最上階行きのチケットを手に入れた『魔法騎士』セララ(p3p000273)に、槍使いのドラゴニア男性はしかめっ面をした。
 前回戦った相手であり、セララの攻守隙の無い『タイマンなら誰にも負けない』スタイルに敗北した相手である。
 むけられる感情は皮肉のそれだったが……こういうとき上から話しかけたり皮肉を帰したりしないのがセララの美点であった。
「ねえ、バルマさんのこと知ってるんでしょ? どういう風に戦うのか教えて欲しいな」
 セララは塔を登るなかである『法則』を見つけていた。『勝った者が偉い』『負けた者が降りる』という図式は必然的に、最上階の人物と戦った者たちの情報を一方的に吸い上げられることを意味している。
 槍使いはチッと舌打ちをすると、セララの求める通りの情報を話して聞かせた。
「バルマの二つ名は『旋風』だ。出会った時点で殺される。最初の10秒間を耐えきれるかどうかに全てがかかっていると言っていい」
「ふぅーん……」
 セララはそれを聞いただけで、やるべきことが全て頭のなかで組み立った。
 更に言えば……『最上階の相手にはほぼ無限に挑み続けることができる』という法則にも、実は気付いているのだ。
「じゃ、行ってくるね!」

 そしてセララは、旋風のバルマを相手におよそ三度の挑戦を行い、その三度目にして完璧な攻略法を見いだし、そして勝利したのだった。
「楽しいね、バルマさん!」
 倒した相手に手を振り、最上階の屋上へと出る。そこには……。

●ブラックブライアB:防弾ボンズ
 階段をあがる。『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)は今、チャレンジャーだ。
「あんたがボンズか」
 変装こそしているものの、ラフなシャツ姿で立つ貴道にドレッドヘアに黒肌のドラゴニア男性が沈黙でこたえた。
 円形の部屋の中にいるのは彼だけ。灯りで照らされたフィールドに、余計なものは一切ない。
 ボンズはゆっくりと椅子から立ち上がると、分厚い唇を引き結んでファイティングポーズをとった。
「ゴングはいらねえ、か?」
 OK! 貴道はそう叫ぶと凄まじいフットワークで距離を詰め、その速度と重心移動をもって相手の顔面の拳を繰り出した。
 狙いは確実。必中の速度と間合い――を、ボンズはあろうことか自らの額で受けた。
「――ッ」
 かつては相手の顔面を爆発させたことすらある貴道の拳を正面から受け、そして表情をまるで変えなかった。燃えるような瞳が貴道をとらえ、そして貴道の腹にえぐり込むような拳が打ち込まれる。
 衝撃が貴道の肉体を貫通し、背から抜けて弾ける。文字通りの『弾け』だ。彼のシャツの背部が破れて飛び、ダメージを殺そうとした貴道の脚がわずかにぐらつく。
「ボンズ、てめえ……」
 貴道の口に笑みが浮かび、目が血走る。
 ボクサーとしてのスイッチが入ったのである。こうなった人間に常識は通じない。
 一息にシャツを破いて脱ぎ捨てると、貴道はボンズに凄まじいラッシュを叩き込んだ。
 その全てを『そのまま』受けてラッシュで帰すボンズ。
 貴道の口から血が溢れ――溢れさせながら笑う。
「HAHAHA!」
 笑顔で繰り出したパンチは、今度こそボンズの顔面にめり込みそのまま吹き飛ばす。
 壁に叩きつけられたボンズは、ずるずると崩れ落ち地面へ大の字に転がった。
「ハ――」
「HAHAHA――」
「「HAHAHAHAHA!」」
 二人は笑い、スッと出した貴道の手をボンズは掴んだのだった。

●ブラックブライアC:the R&B
 被支配者たちのブラックブライアに、新しい風が吹こうとしていた。
 それを感じたのは、確かあの足音が始まりだった。

 おほそ中程の階層で互いを蹴落とし合うべく生きていた者たちは、粗末な大部屋で互いに距離を取り合いながらピリピリとした空気をまとい続けている。
 小瓶をひとつ置いただけでその音はよく響き、皆の神経を苛立たせる。
 年中が一触即発の塔内に……足音がした。
 階下からくる足音だ。
 『ドッドパッ』と一糸乱れぬリズムで踏みならされる足音と手拍子。
 階下のおよそ9割以上の人間たちが、そのリズムを維持したまま階段を上ってくるのだ。
 これまでにない状況に、フロアの人間達が動揺し立ち上がる。
 集団の先頭には、二人の男。
 『残秋』冬越 弾正(p3p007105)と『紲家』紲 月色(p3p010447)。
 塔の決まりとして、そして副次的に産まれた暗黙のルールとして、戦いが始まるまでは誰も手出しをできない。
 誰にも邪魔されることなくフロアへとやってきた階下の住人たちは、脚を踏みならしたままその場を動かない。
 月色が指を鳴らしリズムを加えると、弾正がマイクを手に歩み出た。
 彼の腕には『黒響族』と書かれた布が巻かれている。いや、彼を含む全員にだ。
「俺達は『黒響族』、共に自由をつかみ取るため、結ばれた家族だ。搾取されるばかりの理不尽を許すな、自由の為に立ち上がれ!」
 パスされるマイク。今度は月色がそれをキャッチすると横に並ぶ。
「必ずやブラックアイズを打ち倒し、下らない制度をぶち壊してやろう。
 そのためには多くの仲間が必要だが……いま、吾輩の仲間のひとりが神殿に捕らえられているらしい。
 誰一人として見捨てぬと約束しよう。どうか、吾輩と吾輩の仲間を信じ、協力してくれ」
 これまでに見たことのない、結託した人々。誰もが一人きりで、自分しか信じられなかった世界で、彼らの足踏みは過去のしがらみを踏み潰してくれた。
 やるべきことは多くない。
 ただ『勝った負けた』という事実さえあれば皆上に登れるのだ。ただそれだけのルールなのだ。
 フロアの男達はラップのリズムで歌い出す弾正を先頭にして長い行列を作り、そしてピッタリと揃った足踏みで加わっていく。
 彼らの行進は、やがて塔を飲み込んで行った……。

●ブラックブライアD:さよならクオーレ・ド・オーロ
 『朽金の座』ヴィクトール=エルステッド=アラステア(p3p007791)は己の定義を持たなかった。自分が自分であることを定義できなかった。
 それゆえに相対的な他者を定義できず、まるで不自然に生成されてしまった人間のように、他者と奇妙な距離感をもったまま生きてしまわざるを得ない。
 だから『自分』を求め、その定義を欲した。
(けれど、本当は)
 納得さえさせてもらえるなら、未知の答えが何だってよかったのかもしれない。あるいは、それが嘘であっても。あるいは、答えなど最初からなかったのだとしても。
 今は少なくとも、胸から溢れる熱が、痛みが、本能的に生にしがみつく己こそが答えだ。
 黄金の心臓を手に入れたビクトリアは、勝ち誇った笑みでこちらを見下ろしている。椅子から崩れ落ちた、こちらを。
「そうか……君がボクの『特別』か」
 低く重い、そして冷たい声。近づく戦士達は、彼のつぶやきを無視していた。
 聞いていたのは、きっと『彼女』だけだろう。
「ぼくの騎士さま(ヴィクトール)!」
 扉を蹴り破り現れた『L'Oiseau bleu』散々・未散(p3p008200)に、戦士達の視線が、ヴィクトールの、ビクトリアの視線が集まる。
 傾けた鞘と滑りでた刀、その柄を掴みくるくると回す未散は、嵐のように戦士達へと斬りかかった。

 『ヴィクトール=エルステッド=アラステア』は確かに此の人その者である。
 未散は、少なからずそう信じていた。
 ――此の混沌に生まれ落ちて初めて聲を掛けて下さった
 投げられた短剣を翳した剣で弾き、至近距離でなで切りにする。
 ――中途半端に優しくて、淹れる紅茶は何時も適当で、だけれど其れが美味しい、ハーブティと存外珈琲もお好きな寝坊助さん
 戦士達の間に割り込み、強引に振り回した剣が彼らを払いのけ、その踏み込みそのものが加速となってヴィクトールのすぐそばへと至った。
「其れ以上も此れ以下も御座いません、逆に問いますが……必要ですか?」
 地中海にかかる虹のような瞳と、ヴィクトールの視線が重なった。
 伏しかけていた顎に手を伸ばし、顔を上げさせる。
「知らない人についていっちゃいけないと彼れ程申しましたのに。無様ですね」
「心臓……が……」
「ひとつやふたつ、なくしてもいいじゃあありませんか。それよりも……」
 顎にそえた手をゆっくりとおろし、未だ血の流れる胸にあてられた。
「痛いですか」
「はい」
「それは、結構」
 未散は微笑み、立ち上がり、ビクトリアへと振り返る。
「ありがとうございます、チル様」
 ヴィクトールはたちあがった。いつの間にか胸の傷は癒えていたようだ。
「ラブロマンスでしたらばここで叱咤激励をしてくれた貴方様こそが唯一とでもいうでしょう」
「ええ、此の後はふたり仲良く手を繋いで空を飛ぶ筈ですのに」
 ふたりはまるで泥のようだ。水でも土でもなく、泥と泥だ。
 なんで無様で、なんて空虚で、そしてなんて――
「なんて素晴らしき、生温さでしょうね」

「おしおきの時間なのですよ!」
 扉を丁寧に閉めてからもう一度蹴破ってみせる『航空猟兵』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)。
 ブランシュの後ろにはそれなりの数のブラックブライア市民の姿があった。
 その中には月色の姿もある。
「立てヴィクトール! 貴様が必要なものはなんだ! 過去の記憶か! 今を生きる理由か!
 そんなもの、誰かに教えてもらおうなどと思うな! 自分自身で、死に物狂いで掴み取れ!」
「……その人達は?」
 頷きつつも帰したヴィクトールの言葉に、月色が苦笑まじりに見回した。
 代表するように、ブランシュが己の胸を親指で指し示す。
「『強者への反逆』――その続きなのですよ!」
 一斉に走り出すブラックブライアの戦士達。下層域でくすぶっていたとはいえその数は大きく、先陣を切るブランシュはなおのこと強靱であった。
「――『エルフレーム:スパイラル』」
 滑腔砲から放つ砲撃が、衝撃波を伴って戦士の一人に命中。吹き飛ばすその勢いに目を奪われている間にブランシュは飛行ユニットからエネルギーを噴射し急加速。
「アンド、『ストームブラスト』なのですよ!」
 接近したブランシュのメイスが叩き込まれ、相手は背中から地面にめり込んだ。
「強者への反逆は弱者が出来る栄光の一歩ですよ。
 さあ、掴み取りましょう。
 栄光と名誉、そして搾取される時代への終わりを!」
 塔の中でも語ったことを、もう一度民衆へと呼びかける。
 戦士達が挑みかかり、戦力は拮抗を始めた。
 勿論それだけではない。
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が『神気閃光』をばらまきながら混戦状態にある戦士達の中を飛行し駆け抜けていく。
「弾正君に月色君にブランシュ君、みんなが塔をひとつにしてるんだ。この人達はその半分だよ!」
 翼でホバリングをかけながら、味方の戦士達にむけたバイオリン演奏を始めるアクセル。『大天使の祝福』が音色となって染み込み、ダウンしかかった仲間が立ち上がる。
 これまで一対一の戦いばかりを続け、仲間という考えを持たなかった彼ら。
 強者を複数集めれば実権を握れるというビクトリアの考えは、この『過半数の弱者』によって覆されたのだ。
 そしてこれは、おそらくこれまで起きなかった塔と塔の間での争いでもあった。
「大変だったね、ヴィクトール」
 彼のそばまで降下し、そして他の戦士達からの攻撃を受けないよう立ちはだかる。
 アクセルはそれ以上何かを言おうとして、開いたくちばしを閉じた。
 そして代わりに、聞くべき事を聞くことにした。
「ねえヴィクトール。『あの調査記録』に書かれたことは本当なのかな。もしそうなら、ビクトリアの憎しみや執着は当然のことかもしれない」
「そうかもしれませんね……」
 曖昧な答えに、アクセルは質問を変える。
「あの心臓、取り返したい?」
「いいえ」
 今度は、はっきりとした答えだ。
「私の唯一はあいにく、ここにはない。それさえも棄てたのです。おかげで、思い出せました」
 ヴィクトールと未散が並び、前を……ビクトリアをまっすぐに見る。
「ビクトリア。あなたはボクの罪なのでしょう。忘れた罪への罰なのでしょう。特別な、罰なのです。けれど、だから――」
 走り出すヴィクトール。ビクトリアが黄金の壁を生成するも、それをアクセルの魔法とブランシュの砲撃が破壊した。
 崩れる壁を飛び越え、ヴィクトールの拳がビクトリアの顔面を豪快なほどに殴り飛ばす。
「――ッ!?」
「あなや」
 口元に手をやる未散。
「あなたさまが誰かを真剣に殴ったのは初めて見ました」
「たまには、私もこうしたい時があるんです」
 翳した手。それが何を求めているのか未散はすぐに分かった。
 己の刀をパスし、それを掴んだヴィクトールは倒れることなく踏みとどまったビクトリアへと斬りかかった。
 両目を見開き、笑顔すら浮かべて。
 目には、破壊への渇望だけがあった。
 対してビクトリアの反応は……極端であった。
「イ、イヤ! アアアアアアアッ!!!!」
 悲鳴である。幼子のように悲鳴をあげ、黄金の剣を大量に生み出し放出すると、ヴィクトールを牽制しながら一目散に逃げ出した。
 そのさまにぎょっとした部下の戦士たちも同じよううに撤退をはじめる。
 残されたヴィクトールたちはきょとんとしたまま、逃げ出すさまを見送るだけであった。

●ヴァイオレッドウェデリア:VSリデッドバザーナグナル
 両手をスーツのポケットに入れ、『桜焔朋友』金枝 繁茂(p3p008917)は荒廃した都を歩く。
 大通りらしき道は、かつて舗装されたであろ煉瓦敷きの殆どが崩れ去り両脇の建物はほぼ原形を留めていない。
 住民はどうなったのかと言えば……。
『オオオ……』
 呻きとも苦悶ともとれるような声をあげ、半透明な人型のアストラル体となって建物の壁をすりぬけるように現れる。
 足を止め繁茂は彼らの様に顔をしかめた。成仏することも許されず、この地に縛り付けられた魂のたべかすたち。
「成仏させるのは後回しです。まずは、リデッドバザーナグナルを」
「そういうこった! けど、こいつらにも注意しとけよ。前回それでやられた」
 『太陽の翼』カイト・シャルラハ(p3p000684)がさまようように道へ姿を見せて『たべかす』たちめがけ『炎狩』の術を放った。
 羽ばたく翼が炎を纏い、羽ばたきと共に駆け抜ければ炎の竜巻となって『たべかす』たちを燃やし尽くしていく。
 向かう先は一路。大通りをまっすぐに抜けた廃都中央の巨大神殿跡。そこに聳えるように存在するリデッドバザーナグナルである。
 一直線に飛行しながら、カイトはここへ来る前のことを思い出していた。
 彼はバザーナグナルに仕えていたというドラゴニアたちに会い、バザーナグナルの魂を必ず解放すると約束していたのだった。
 そして余裕があれば戻ってきて檻から皆を解放するとも。
「死してなお慕われるバザーナグル殿は生前はさぞ素晴らしい竜であったのだろう一度話してみたかったが既に理性無きアンデットである以上しかたあるまい」
 両腕を鎖で繋いだ『ノットプリズン』炎 練倒(p3p010353)が、地面に手をついたスピンキックによって『たべかす』たちを退けると、ぴょんと飛び上がり再び走り出す。
「油断はするな。管理者である超越者ヴァイオレットが不在であるとはいえ、いつまで不在であるかは知れていない。悠長に時間をかければ不幸な遭遇を果たすことになるぞ」
「ゆっくりと成仏させる暇もなし……ですか」
 繁茂は名残惜しそうに解放された霊魂たちを振り返った。感じた限りでは、彼らを成仏させるにはそれなりの時間がかかりそうだ。それだけ酷い扱いをうけてきたということなのだろうか。それともこの地特有のしがらみなのだろうか。
「ヒューッ! なんてリアルなお化け屋敷なんでしょ。ワクワクするねぇ。
 ただま、どんな美女でもお宅がたべかすまみれじゃ仲良くなれそうにねぇなァ。食べ方は綺麗な女の方が好みなんだ」
 両手をぶらりとさげたまま走る『怪人暗黒騎士』耀 英司(p3p009524)。
 襲いかかる『たべかす』の腕をすり抜けるように上半身を屈ませ、くるりと回し蹴りを放ち『たべかす』を蹴飛ばすと流れるように双怪刃『煌月・輝影』を抜いた。
「グンナイベイビー。あんたももう、休め」
 その横を、青白い稲妻が駆け抜けていく。
 軌跡をなぞるように紫の蝶が舞うように見えたが、それらは全て幻だった。
 『たべかす』たちを食いちぎるように動き、ぺろりと唇を舐める『花嫁キャノン』澄恋(p3p009412)。
「これらはヴァイオレット様の食べ残しなのですか。
 食べねば生きていけないのはわかるのですが、こんなに沢山残すなんて……。
 骨の髄までは勿論、魂の余燼まで。
 全部食べなきゃ、もったいないでしょう?」
 全ての命に感謝を込めて! と手を合わせる澄恋の一方、『チャンスを活かして』シューヴェルト・シェヴァリエ(p3p008387)が厄刀『魔応』を抜いて『たべかす』たちを次々に切り払っていった。
「その姿勢は感心だが、『たべかす』に構っている時間はないぞ。ここは俺が引き受けよう」
 シューヴェルトは再び刀を鞘に収めると、迫る『たべかす』たちの間を器用にすり抜けながら風の如く走り抜ける。
 気付けば刀は抜かれており、気付けば『たべかす』たちは切り裂かれうずまくようにその半透明な姿を消していく。
 ぼろぼろと粘土かすのように散る姿を振り返り、シューヴェルトは目を細めた。
「超越者に従いし怨霊たちよ、この貴族騎士に向かってこい!」

 大きく羽ばたき、神殿跡へと接近するカイト。
 薄紫色の煙をあげて、ゆっくりと骨の竜が頭を起こすのが見えた。
 超越者ヴァイオレットによって使役されたリデッドバザーナグナルだ。既にこちらの接近には気付いているのだろう。それでも先手を譲るかのようにこちらに顔を向け、眼窩に紫の光をこうこうと光らせた。
「竜? 純粋な竜種の骨か?」
「まさか。いかに超越者ヴァイオレットが強力な魔種といえど、竜種にはかなうまい。あれは亜竜の骨だよ」
「ふうむ」
 練倒と繁茂は走る速度をあげながら語り合い、そして同時に別々の方向へと跳躍した。
 折れた柱を蹴って三角跳びをかけると、練倒は炎のブレスを放射する。
 それをかわすように空へと舞い上がるリデッドバザーナグナル。
「飛行するのか。あの翼で」
「世は不思議ばかりなり、ですな」
 別の柱の上に飛び乗っていた繁茂は鎌に魔力を纏わせると、豪快に振り抜くことでリデッドバザーナグナルへと命中。それを追うようにして胸をそらした練倒のブレスも命中し、リデッドバザーナグナルは彼らをにらみ付けた。
 ガパリと巨大な顎が開く。攻撃の気配を察した二人は飛び退こうとするが、それよりも早く紫色の炎が広範囲にわたって放射される。
「こっちを見ろ! 鳥は食べたことが無いか? 食えるもんなら食ってみな! 骨だけドラゴン!」
 そんなリデッドバザーナグナルを挑発するように周囲を旋回しはじめるカイト。
 時折翼でかするように『緋天歪星』の術を打ち込んでいくが、リデッドバザーナグナルの抵抗力を突破して効果を及ぼすには何度か繰り返す必要がありそうだ。全く通用しないとは……あまり考えたくない。
「なんとか引きつけてみる。その間にどんどん畳みかけろ!」
「任せました」
 澄恋は柱の並ぶ円形のフィールドを回り込むように走りながら、取り出した出刃包丁を握り込む。
 攻撃のタイミングは今か――と踏み込もうとした時、澄恋の肌があわだつような感覚が走った。ぐるりと振り返るリデッドバザーナグナル。その巨体からは想像もできないような速さで繰り出された突進。澄恋は咄嗟に飛び退き顎による食らいつきを回避するも、次いで繰り出された腕に掴まれ宙へと浚われた。
 大きく空を舞い、暴風に煽られている間に廃都の建物が並ぶエリアへとリデッドバザーナグナルが突っ込んでいく。
 建物のひとつに思い切り突っ込まれ、そのまま並ぶ数軒をまとめてなぎ払うように破壊していく。
 放り出された澄恋はカハッと血を吐いたが、すぐに反転し地面に包丁を突き立てるようにしてブレーキ。
 顔をあげると、すぐさまリデッドバザーナグナルへと走った。
「こっちを見ろよ」
 不意に、リデッドバザーナグナルの後ろで声がした。
 空を飛び、はるか上空から急降下をはかる英司である。
 振り上げた剣が怪しく光り、稲妻を纏う黒いエネルギーが四肢や刀身を走り始める。
「グンナイベイビー。もう、休め」
 強烈に叩きつけられた剣が、リデッドバザーナグナルの骨を砕く。
 と同時に、顔面へと飛びついた澄恋の包丁がリデッドバザーナグナルの眼窩へと突っ込まれた。
 『魂を斬る』手応えを感じ、剣と包丁を引き抜く二人。その両方から紫色のしぶきが上がった。
「トドメだ!」
「死してなお苦痛の中にいる亡者共よ、今楽にしてやろう」
 大きくカーブを描き突っ込んでくるカイト。その脚につかまっていた練倒も飛び込み、二人によるダイレクトなタックルが浴びせられる。
「私はあなたの事を知りません。
 しかしあなたを知っている人は、あなたの事を慕っていました。だったら最期まで彼らを守ってみせなさい」
 集中攻撃を受けて苦しむリデッドバザーナグナル。
 それを見上げ、繁茂は鎌を振り上げる。
 だがそれ以上は……どうやら必要なかったようだ。
 ズズンと地面に崩れたリデッドバザーナグナルはその魂の動きを止めていた。
「もはやもう、あなたを縛るものはありません」
 成仏させようと祈りを捧げる繁茂。しかし、バザーナグナルはその祈りに抵抗していた。
 まだやり残したことがあるとでも言わんばかりにだ。
 小首をかしげる澄恋。
「繁茂さん?」
「死奉石だ。バザーナグナルの骨に内包されたそれを奪い、支配権を奪うんだ」
 そこへ現れたのはシューヴェルトだった。周囲の『たべかす』の掃討を終えたらしい。
 シューヴェルトの主張に対して、繁茂は少しだけ渋い顔をした。
「死してなお支配された存在を、これ以上支配するのは……魂を成仏させ屍へと戻し、弔うという道もあります」
「うーん……」
 二人の意見はどちらももっともだ、といううなりをカイトがあげた。
「じゃあ間をとって、死奉石は奪っておこうぜ。そうすれば再び利用されることはない。俺たちがバザーナグナルの力をまた借りるかどうかは、もう一度俺たちの間でちゃんと話し合えば良い」
「賛成です。それとカイトさん……」
 澄恋は鍵を開けるジェスチャーをしながら言った。
「バザーナグナル様に仕えていたという方々を、ここにお呼びしても良いでしょうか。せめて花を手向けたいのです」
 持ってきた花束をケースから取り出してみせる澄恋。英司もそれに賛同するように頷いた。
「けど、彼らには一応警戒しておけよ。檻に入れられてる連中は少なからず助けを求めるはずだが、そうでない奴がいたら警戒対象だ。超越者ヴァイオレットのスパイって線もある」
 元から敵だったパターンもあれば、飼い慣らされるうちにスパイに転じたパターンもあるだろう。警戒するに越したことはない。
 拘束された腕で器用に腕組みしていた練倒は『決まりだな』と言って人々が集められている広場へと歩きだそう……として、ぴたりと足を止めた。
 空にギエエという声がした。練倒が仕掛けておいた式神の放つ小枝。
「まずい、超越者ヴァイオレットだ。戻ってきたぞ!」
「「――!」」
 全員が顔を見合わせる。
 そこからの動きは素早かった。シューヴェルトがバザーナグナルの死体から髑髏型の紫水晶でできた『死奉石』を抜き取り、全員一斉に走り出す。
 カイトは手の中に鍵を握りしめながらも……クッとなにかをかみ殺すように前を見た。
 下を走る練倒が呼びかけてくる。
「カイト殿、良いのか? バザーナグナルたちが倒されたのを見れば、我輩らの侵入は発覚する。飼育しているドラゴニアたちが危険にさらされはしまいか」
「おそらくは、大丈夫でしょう。あの方たちはクリスタラードへ捧げる供物。減らせば管理者自身の害になります。今は未だ――」
 『今は未だ』という言葉が重い。
 超越者ヴァイオレットが自暴自棄になれば飼っている人間達を貪り尽くしてしまうとも限らない。
「すぐに戻ってきて助けるさ。必ずな」
 英司は走りながら、仮面をした顔を僅かにうつむけた。

●オーシャンオキザリスA:事実を動かすたからもの
「ほんとはこういう荒事は痛いし疲れるしやりたくないんだけどねー」
 海中へともぐり、オーシャンオキザリス集落を目指す『特異運命座標』鯤・玲姫(p3p010395)。
 長い水竜のごとき尾をゆらりとやって、鞘に収めた剣にてをかける。
「それでもお宝一つで戦況が丸ごと変わるのなら簡単な方だと思うし、やれる分だけはやってみようか」
 放ったファミリアーが安全確保のために戻ってくる。それを手のひらにのせ、玲姫はむーんと唸った。
「こうして探ってみて思うんだけど……ひとんちオープンすぎない? 海底暮らしをしてる部族ってみんなこうなの? プライバシーなさすぎじゃない?」
 玲姫が見た限り、オーシャンオキザリスの住民は扉すらない海底の洞穴や、家とは名ばかりの囲いの内側で生活をしているようだった。
 玲姫とてそこまで見聞が広いとは自負していないが、だからってこんな暮らし方はまるで見たことがない。
「あー……たぶん、そうしないと生きていけないからだろうな」
 『ゴミ山の英雄』サンディ・カルタ(p3p000438)はこれと同じような暮らし方を見たことがある。海の中ではなく、ゴミ溜めの中でだが。
「海中には強力な亜竜が山ほど居る。だから外敵が寄りつく危険はゼロなんだ。
 そのかわり隠れて何かこそこそやってたら家ごとぶっ壊されて食われる。
 自分達が何も隠していないことを明らかにすることで、ここの連中は共生関係を築けてるんだ」
 ……などと説明してみたが、共生というのは語弊があったかもしれない。クマノミとイソギンチャクのそれとは、あまりにも違いすぎる。どちらかというと、『よく見える水槽で飼ってやっている』という状態なのだろう。
「『海の宝玉』を奪えれば、この状態からも解放できるのかな……」
「それがアリアベルの弱点なんだろ?」
 魔法少女スタイルのまま海中へ潜った『フレジェ』襲・九郎(p3p010307)は、借りてきた魔方式の水中行動装備をつついた。貝殻のネックレスの形をしたものだ。
「つうか、強力な亜竜だらけで正面突破がムリなんだろ? だったらアリアベルひとりを倒したところで状況変わるか?」
 九郎のいうことももっともだ。
 『桜龍』紲 六合(p3p010461)は翼を器用に動かして海中を泳ぐと、『そうだね』と呟いた。
「けど、もしかしたらアリアベルひとりを倒すためだけの『弱点』じゃないかもしれないよ。詳しい内容はまだ知らないんでしょ?」
 六合の問いかけに、サンディが曖昧にだが頷いた。
「海底のお宝ってロマンを感じるけど、外の集落にはこんなところもあるんだ……」
 未だ見ぬお宝に期待をふくらませながら、六合は額に手をかざす。
「見えてきたよ。みんな、準備はいい?」
 自らも魔術を放てる準備を整え、六合は泳ぐ脚に加速をかけた。

 オーシャンオキザリスに存在する亜竜種が強力であると言わしめる最大の所以はその数である。
 六合が姿を見せた途端、銀色の巨大な光がギラリと動いたように見えた。それはすぐに黒い雲となり、六合めがけ突っ込んでくる。
 いや、雲でも光でもない。それは直径にして30センチ程度の魚型亜竜の群れであり、住民でない存在を発見して興味を示したのだ。勿論、敵対的な興味である。
「早速だな。ていうか……あんなにいたか!? 前に来たときはこんなにうようよ居なかっただろ!」
 カードをひいて戦闘態勢をとるサンディ。こう言っては居るが、なんとなく想像はついた。
 これだけの軍勢を動かし続けるにはかなりのコストがかかるはずだ。
 イレギュラーズの侵入を感知した管理者アリアベルがそのコストをかけてでも集落の警備能力を強化したということだろう。
「敵を引き付けて逃げればいいんだよね?」
「ただ逃げるだけだとそのうちおいつかれる。サンドブロックでもされたら最悪各個撃破で全滅だ。引き撃ちで数を減らしながら逃げろ!」
「うん、それなら俺にもできそう!」
 サンディは六合を庇うような位置取りを維持しつつ集落の中を逃げ回るルートをとりはじめた。
 六合はといえば、魔力を溜め込みながらバタ足で距離を取り、一度くるりと反転すると魔力砲撃を放った。
 低く鈍いノイズのような音と光。大量の魚群亜竜をまとめて焼きつくし、群れに穴を空けた。が、その穴もすぐに埋まってしまう。
「弱いけど多い!」
「だから言ったろ!」
 サンディは『こっちだ』と叫びながらドルフィンキックで集落の海底。つまりは地面付近へと近づくと、粗末な小屋を豪快なショットで破壊しながら突っ切った。
 舞い上がる砂が煙幕がわりとなり、九郎と玲姫が合流。
 玲姫は魚群戦闘集団めがけて剣を構えると、思い切り振り込むことで精神感応波を放った。
「なんか凄いお宝があるらしいから頂きにきたよー」
 こいこいと手招きすると、サンディたちを追いかけていた魚群が今度は玲姫へと狙いをシフト。後続の集団もそれにつられる形で玲姫を標的にした。
「わー、すごい勢いで来た」
 大量のピラニアが羊を瞬く間にホネだけにしていくさまを頭の中で想像し、そのホネをコミカルな玲姫スケルトンに変換してみた。丁寧なことに頭のお花やリボンやツノまで残っている。
「あー、だめだめ」
 首をふり、こんなの無理だよ帰る! といって逃走を開始した。
 とはいえ真上にすいすい泳いでいったら、前回の調査中に見かけた強くて巨大な亜竜たちに見つかりよりヤバい状態になるのは必死。玲姫は一度ファミリアーで調べていた洞窟へと飛び込み、細い通路をクロールフォームで泳ぎ切って反対側の穴から飛び出した。
 群れである以上、細い通路に飛び込むとぎゅうぎゅうになってしまう。その渋滞を利用したのだ。
 とはいってもしのげるのは一時のみ。
 左右からがばっと取り囲むように魚群が迫ってくる。
「そのまま走れ!」
 九郎がメルヘンカラーのライフルを構え、発砲。特殊な魔術弾頭がピンク色のハートと星を拡散させ、魚群をたちまち血煙にかえる。
「泳げじゃなくてー?」
「どっちでもいいから行け行け! 潜水艇をとめてある。そいつで離脱だ!」
 手でぱたぱたとやって玲姫を先にいかせると、ついに動き出した巨大な亜竜たちに目を向ける。
 白く巨大な鯨型亜竜。全長が10mはあろうかというウツボ型亜竜。前進から毒々しい色の電撃を散らすエチゼンクラゲ。それに首が三つあるサメ。
 一人で戦ったら絶対に死ぬと、見るからに分かる強敵たちだ。
(つっても……タイマン程度ならなんとかなりそうなんだよな)
 九郎は一旦彼らにギラついた目でガンをとばすと、腰からピンク色の刀を抜き放った。
 かかってこいよ。いつでも殺せるぜ。ただし最初の一人は俺が殺す。
 そういう目だ。
 対する亜竜たちはすぐには動かない。九郎たちをしっかり脅威と見なしているのだ。たとえ全員でかかれば倒せると確信できたとしても、『最初の一人の犠牲者』にはなりたくないのが感情というものである。
 逆に言えば、あの魚群亜竜は感情を抜きにして動物的本能だけで襲いかかってきているわけだが……。
(集落の連中は諦めムードだが……こいつらがやる気になって一斉蜂起すれば、案外この里落とせるんじゃねえか?)
 などと思っていると、後ろから可愛い装飾の施された鯨型潜水艇が突っ込んできた。
「よしきた!」
 九郎はライフルで滅茶苦茶に牽制射撃をしながら潜水艇に飛びつき、側面のバーにつかまると上昇の合図を出した。
 スクリューが回転し、それまでとは比べものにならない速度で海面へと上昇していく。
 亜竜達は己の失敗を察したのか、どこか慌てた様子で九郎たちを追跡しはじめる。
「やれるだけのことはやったぜ。あとは……お前ら次第だ」

●オーシャンオキザリスC:鈴家、呉覇
 仲間達の活動の一方で、『微睡む水底』トスト・クェント(p3p009132)はまた別の役目を負っていた。
 というのも、オーシャンオキザリスの住民達に依頼人である呉覇と同様の、鈴家にみられる身体的特徴を多く見つけたからだ。
 その後の調査を行ったところ、オーシャンオキザリスの『神殿』と鈴家が中心となって治めている水中小集落『玲玲』の建築様式までもが一致し、この二つが繋がっているという疑いがあがったためだ。
 集落を訪れ、鈴家の屋敷へと通されたトスト。大きな貝殻のような椅子にサンショウオボディを伏せる形で腰掛ける彼に対して、当主呉覇は長いウーパールーパー的尾を丸めるようにしてこれまた大きな貝殻型の椅子に座っている。
「きゃは、私に質問? へんなの」
 鈴を転がしたような声で笑う呉覇。幼く無邪気に見えるが、立ち居振る舞いや言葉の端々に彼女の油断ならぬ妖艶さが見え隠れした。
「けど、いいよ。依頼したのは私だもんね。『ひとつだけ』質問にちゃんと答えてあげる。ウソはなし。ごまかしもナシでいいよ」
「……」
 トストはこの問いかけに対して、大きく分けて二つの行動をとることができた。
 ハッキリ言うなら、今言われた言葉自体を信じるか、信じないかだ。
 『嘘をつかない』という言葉自体が嘘である可能性はゼロではないし、たとえばそうすることで自分や家族の命がかかればトストだって嘘をつくかもしれない。
 しかし、だったら『何でも聞いていい』なんて回りくどいことはしないだろう。
 少なくとも、トストが自分の有利に進めたい時、相手に主導権を渡さない。
「信じるよ。少なくとも、信じたいと思う。だから質問するね」
 トストは呼吸を深くして、ぽこりと空気の泡をはいた。
「『オーシャンオキザリス集落で飼育されている彼らについて、どう思ってる?』」
「どう――思ってるかを、聞きたいのね?」
 呉覇の目が細くなる。
 トストはその確認の意味をはかりかねたが、しかし、頷いた。
 それに応えるように、呉覇は声のトーンをおとす。
「私は、救いたいと思っているわ」
「……わかった。それだけ聞ければ充分だよ」
 トストは立ち上がり、部屋を出るべく歩き出す。
「質問はそれだけでいいの?」
 問いかける彼女に、トストは振り返らずに答えた。
「正直に答えるのは『ひとつだけ』なんでしょ? それが最善の方法だと、君が判断したんだ」
「……きゃはは。おにーさん、ちょっと好きかも」
 唇に指をあて、呉覇は子供のように笑った。
 小さくだけ振り返るトスト。
「必ず助けるよ。あの集落の人々も……君もね」
 トストはこの時点で確信できた。

 『呉覇は敵じゃない』
 『呉覇はわけあって敵に内通している』
 『呉覇は助けを求めている』

 この、声に出来ない悲鳴を聞いて、トストは――。

●オーシャンオキザリスD:『海の宝玉』
 神殿の柱に身を隠し、大型の亜竜たちが通り過ぎていったことを確認した『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は深くため息をついた。
 陽動作戦が失敗したら、撤退のために加勢しなければならないところだ。当然宝玉を盗み出す作戦も失敗となる。
 なので……。
「第一段階はひとまずクリア、というところかな?」
 同じく身を潜めていた『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)が神殿の奥へ視線を向けている。
 宝玉の位置を透視しようという考えだろう。
 大型の亜竜や大量の魚群亜竜は出て行ったものの、神殿の警備がゼロになったわけではない。
「ふふっ、こんな時に我ながら度し難いけれど、冒険とはいつだって心躍るものだね」
「確かに、淡々とやるよか楽しそうだ」
 ジェイクは懐のホルスターに手を伸ばすと、拳銃を一丁引き抜いた。
「それで、どうする? 警備が巡回する隙をついてすり抜けるか?」
「丸一日張っていられるならそれでもいいが、今は時間がない。多少無理矢理にでも突破しねえと」
 もう一丁の銃を抜いて動き出そうとするジェイクの肩を、ゼフィラがポンと叩いて止めた。
「それなら、私の方が向いている。私が合図を出すので、タイミングを合わせて回り込め」
 ゼフィラはそこまで言うと、義肢より羽衣めいた魔法の翼を展開。凄まじいスピードで宝玉の位置めがけて突っ込んでいった。
「うおおっ!?」
 半魚人めいた亜竜(たぶん亜竜だとおもう)が驚いた様子で三叉槍を構えて集まってくる。
 そのうち三人を強引にスルーしたあと、両手を突き出しグリーンカラーの治癒魔術を展開。自らを包み込むと、振り返って魔法の弾を乱射してくる敵の集中砲火を耐えながら更に突破。
 最後の扉に拳を叩きつけドカン――と、半分ほどへこませた。
「残念だがここまでだ!」
 焦りながらも飛びかかる半魚人たち。
 ゼフィラに無数の槍が突き刺さる――が。
「ここまで? 確かにその通り。見たまえ」
 ついっとゼフィラが前方を指さすと、手投げ式の爆弾が歪んだ扉のスキマへと差し込まれていた。
 爆発。
 ゼフィラもろとも吹き飛んだ――が、そうしてあがった煙幕のなかをジェイクは素早く駆け抜けていく。
「お、お前――!」
 なんとかそれに気付いた半魚人が頭をおこすが、その額をジェイクの銃弾が抜けていく。
(猶予はもって三秒。駆け抜けるにゃ充分のタイムだぜ)
 台座の上に置かれた宝玉。ケースを二丁拳銃の連射で破壊すると、青く微光を放つ球体をがしりと掴んできた道を引き返した。
 こんどこそ起き上がる半魚人達。
 ジェイクたちを殺そうと襲いかかるが、それこそ『ここまで』だ。
 ゼフィラは治癒術を停止させると、走り抜けるジェイクの間に割り込んで半魚人たちの攻撃を全てその身で受けてしまった。
 ボンッと嫌な音を立てて義肢が壊れるが、魔法の翼だけを使って離脱。
「宝玉はいただいていく。さあて、どんな力があるやらだ」

●オーシャンオキザリスE:逆転の目
 宝玉を持って逃げ出したジェイクたちが見たのは、意外な光景だった。
「俺たちはこんなところ何をしてたんだ!?」
「うちの子がいないの! 一体どうして……」
「あ、ああ、思い出してきた……ボクはなんてことを……」
 オーシャンオキザリスの住民達は混乱し、それまでやっていた全ての手を止めて集落を見回している。
 怪訝な顔をするジェイクだが、ゼフィラはもうピンときたようだ。流石、この手のことには強い。
「『海の宝玉』だよ。発動条件までは分からないが、住民達の記憶や感情を一括操作していたんだろう。条件が崩れ、今この有様というわけだ」
 顔を見合わせる二人。
「だったらやることは一つだな」
「ああ――ドラゴニアたち、ここから逃げるぞ!」
「お前らは自由だ。ここで死にたくなかったら走れ! いや、泳げ!」
 ゼフィラに小突かれ、ジェイクは宝玉を掲げてみせる。
 オーシャンオキザリス民が、一斉に集落を逃げ出した。

●レッドレナ:猛火激震
 炎を纏い悠然と歩む亜竜モルガンティス。トリケラトプスの鱗を全て炎にかえたようなその姿に、レッドレナの住民達はみな平伏し、道の端へと寄っていく。
 この土地で亜竜に逆らう者などいなかった。仮に居たとして、それが翌日まで生きていることなどない。
 モルガンティスは愉悦を感じながら、平伏する少年のひとりを文字通り『つまみ食い』しようと近寄っていく。
 それを止める者はいない。自分が食われる立場にならなかったことを幸運に思うだけだ。
 だが、今日だけは違った。
 ゴウ――と燃え上がるような漆黒のオーラを纏い一匹の人狼が飛び上がる。
 人の皮を捨て方向をあげた振り向くモルガンティス。その体表に突き立った爪は狩りへの渇望と『赤ずきん』への飢えに満ち、モルガンティスの通常刃すら通さないその装甲を用意に貫いた。
「さぁ、戦闘開始だ──!」
 再び吠えると亜竜エルゥドリンが駆けつけ、その背に飛び乗った『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)はレッドレナの街道を突き進む。
 街道を滑走路代わりにして大きく飛び上がったロック及びエルゥドリンを撃墜すべく、炎を纏うフレイムワイバーンが突進をしかける――が、それを側面からの激突によって阻む『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)の姿があった。
「この作戦……相応に力が必要だが、方針としては分かりやすくて良い。
 さぁ派手に戦ってやろうじゃないか!
 倒せない敵ではないのだと示し、亜竜種達を奮い立たせるんだ」
 ワイバーンに跨がったイズマはそのボディを激突させると即座に飛び移り、フレイムワイバーンの首へとつかみかかった。
 暴れるフレイムワイバーンを押さえつけるように、鋼の拳を幾度となく叩きつける。やがて飛行する力を失ったフレイムワイバーンが墜落。街道の真ん中へと激突し、周囲の亜竜種たちが悲鳴をあげて逃げ出した。
「何にしてもこの溶岩の中に居る亜竜に叛逆の意志を示せってことだね! バルバジスだっけ? ソイツをぶっ飛ばせばイイんだよね!」
 ニッと笑った『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。
 フレイムワイバーンが炎を吐き出し周囲を焼き付くさんと暴れ回るが、イグナートは鋭いスライディングで炎の下を掻い潜り急接近。
 フレイムワイバーンの顔面に強烈なパンチを叩き込む。
 ついには力尽きたフレイムワイバーンの上に飛び乗ってみせると、イグナートは恐る恐るこちらを覗き見る亜竜種たちを見回した。
「立ち上がるんだ、皆! 今日じゃなくてもイイ。明日か、そのまたずっと先でもイイ!
 でも、戦えるんだって思ったら立ち上がって欲しいな! ヒトは自分が望んだ生き方が出来るんだ! それを最初からアキラメないで欲しい!」

 レッドレナ攻略のために集まった六人のイレギュラーズ。彼らの猛攻は、今まで反撃らしい反撃にあってこなかったレッドレナの亜竜たちの不意を突くのに充分であった。
 ろくな警戒態勢もとっていない集落の街道ど真ん中を突き進み、慌てた様子で集まる亜竜達を払いのける。
 いや、楽勝であったかといえば勿論そうではない。本当に里じゅうの亜竜が集まってしまえば敗北は確実。どころか、生きて帰れないおそれだってあるだろう。
「バルバジス? 人の姿してるのに亜竜なのかあれ! かっこいいな、強そうだな! 俺達、今からあれと戦うのかー。全力でやって良いんだろ? 楽しそうだなー!
 バルバジスは倒さなくても良いんだろうけど、深傷を負わせられればより一層反乱の炎は燃え上がるだろうな。そうでなくても、良い兆しにはなるだろう」
 そんな状況においてさえ、『紲家のペット枠』熾煇(p3p010425)はどこか明るく振る舞っていた。
 人型をとり、腕を骨の剣に変えてフレイムドレイクを切り払う。
 それでもなお食らいつこうとするフレイムドレイクを激しい炎が包み込んだ。
 いかに炎のBSダメージをカットできる身体であっても、炎そのものの破壊と衝撃を無視できるわけではない。
 激しい衝撃にって上空に放り投げられたフレイムドレイクを、跳躍した『めいど・あ・ふぁいあ』クーア・ミューゼル(p3p003529)が遅う。紅蓮の雷を纏った手刀が剣を成し、フレイムドレイクを真っ二つに切断する。
「派手に襲撃して奮戦してみせる。なるほど、分かりやすいのは良き事哉、なのです」
 どちゃりと落ちた残骸とともに着地するクーア。
「相手は炎の亜竜、我が紅蓮の通りが悪そうなのは厄介。
 尤も、律儀に焔色の理想的な末路をここで求める理由も、あいつらを焔色で終わらせてやる義理もないのです。
 溶岩風呂は私の趣味でないのですし、贄を攫って甚振る連中の悪趣味は猶の事嫌いなのです。
 あらゆる手を使って穿ち抜いて差し上げましょうか!」
 瞳の中に燃え上がる闘志を宿し、クーアは走り出す。目指すはそう……バルバジスのすまう中央宮殿。

 半壊した柱が円形に囲む、そこは舞台のような場所だった。
 屋根はなく、壁らしい壁もない。
 かつては柱から柱へうつるようにこそこそと移動していた『帰ってきた放浪者』バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)だが……いまは、正面の階段をゆっくりと、あえて目立つように上っている。
 胸の奥が熱い。これは義憤だろうか? それとも後悔だろうか? いや、ちがう。
「テメェは奪いすぎた。あの子の、トルハの帰る場所を、待つ人々を。帰る場所を失ったヤツがどうなるか、知ってるか……バルバジス」
 舞台の中央。人型亜竜バルバジスは大きな斧を手に振り返る。
「見たことがあるな。クズ餌を持ち逃げした、外の男か。貴様もローレットだったな」
 バクルド一度閉じた目を、バクルドは強く見開いた。
「アイツを、俺みたいなヤツにはしねえ。そのためには……テメェの首が要るんだよ、バルバジス!」
 マントを脱ぎ捨て、手首をパカンと解放する。肘からのびた紐をひき、大砲を発射した。
 そして、力の限り叫んだ。
「出る勇気がないならよく聞け、見る勇気があるならその眼に刻みつけろ!
 自由こそ生きる糧だ! 不屈こそお前たちの明日だ! 歩みこそ目指すべき希望だ!
 お前達が立って掴め! 昨日耐えた者たちのために! 明日を願う者のために!」
 砲撃はバルバジスの斧によって破壊されたが、バクルドはすぐさま腕のボウガン装置を展開。反撃にと繰り出された炎の斬撃を横っ飛びに回避した。
「俺はバクルド、バルバジスをぶっ飛ばすただの放浪者だ!」
 クランクを回しボウガンの矢を乱射。
 その一本が見事にバルバジスの胸に刺さる。
「人間風情が、調子にのるな」
 骨の顔面から表情は読み取れないが、燃え上がる炎が怒気を孕んでいるのは嫌でも分かる。
 水平に払った斧が周囲の『風景』をまるごと切り払った。柱も、そしてバクルドもだ。
「亜竜とはいえ、誇り高い竜種の端くれのくせに竜に従うなんて、ちっちぇーな。俺だったら、自由になるためならぶっ潰してるぞ? 一人は無理でも仲間を作ってな」
 腕を剣に変えた熾煇がバルバジスへと斬りかかる。
 幾度も繰り出された剣とバルバジスの斧がぶつかり合い、赤い火花を散らし続けた。
 この巨躯とこれだけ重そうな武器を振り回しているにもかかわらずこの動き。正面から押し切るには力が強すぎるだろうか?
 だが、構わない。倒せなくていい。
 崩壊した宮殿の外から、恐る恐るこちらを覗き込む亜竜種(ドラゴニア)たちの姿が見える。彼らに、見せつけるのだ。
「今回だけでは解決しないだろう。亜竜種達には雌伏の時を耐えてもらう必要がある。
 だがチャンスは必ず来る。信じて立ち上がれ!」
 イズマがまっすぐに突進し、鋼の拳に力を込める。
 イグナートもだ。イズマと並んで突進し、タイミングを完全に合わせたダブルパンチが――熾煇に気を取られたバルバジスの顔面へと炸裂する。
「当たった!」
「バルバジス……貴様は恐怖したことがあるか……?」
 ロックが襲いかかり、バルバジスの背へと爪の一撃を叩き込む。
「奴は今日知るのだろうな、虐げた者たちの怒りを、苦しみを、恐怖を、痛みは力だ貴様を喰らう凶刃なる恐怖だ。
 そして聞け虐げられた者たちよ、我を見よ!
 怒りはため込むものではなく爆発させるものなのだ……っ」
 ダメージによろめくバルバジス。
 このまま押し切れるか? そう感じた、瞬間のことであった。
「この我輩に、本気を出させるとはな。褒めてやろうローレット」
 ぐるりと向き直ってきたバルバジスがロックの顔面を掴み、まるでボールでも投げるかのように放り投げた。
 ほぼ抵抗できずに宙を舞うロック。
 が、駆けつけたエルゥドリンとイズマのワイバーンがキャッチ。すんでの所で溶岩へと転落することを避けられた。
 危機を察し、咄嗟に防御の姿勢をとったイグナートとイズマ。二人をバルバジスの斧が打つ。ベースボールのごとく吹き飛ばされた二人は半壊した柱を破壊しながら尚も飛び、宮殿の外を転がる。
「なんてパワーだ!」
「これがバルバジス……」
 例えるならHARDクラスの強敵である。それも、彼一人と戦うだけでだ。ローレットの精鋭を充分な数集め、その上で敗北の可能性が充分にある強敵だ。
「――!」
 それでも戦おうと息巻く熾煇を、クーアががしりと止める。
「……先ほどああは言いましたが、流石に亜竜相手に無茶な深入りは無謀なのです」
「でも!」
「大丈夫」
 クーアはそう言うと、ついっと後方を指し示す。
 褐色肌の少年が、「こっちだ」と叫んでいた。クーアが以前この場所へ訪れた時、彼女を案内してくれた少年だった。
「抜け道があるんだ。今は逃げろよ外の人!」
 『今は』という言葉に、確かな希望がある。
 バクルドは戻ってきたロックと共に立ち上がり、頷いた。
 見れば、レッドレナの住民達が次々に石を投げ、集まる亜竜達を牽制していた。
「俺たちの先祖が使ってた古い集落跡がある。そこへ行くぞ! 俺たちは……あんたたちと共に戦う!」
 やけくそ気味にではあるが、痩せ細った男が叫んだ。
 ロックは笑い、そして熾煇たちと顔を見合わせた。
「どうやら、火はついたようだ」
「あとは皆を連れて脱出するのみ、なのです」
 クーアはらんらんと目を輝かせ、立ち塞がる亜竜を炎によってなぎ払った。
「今日この日、この場所、この炎が――反撃の狼煙となるのです!」

●ホワイトホメリア:the White lane
 ドッドパッ――という印象的なイントロミュージックと共に、なんでか斜めに傾いた荷車の上にのって現れる『Go To HeLL!』伊達 千尋(p3p007569)。
 黒い制服に身を包んだ坑道警備隊が後ろに続き、連なる足音がリズムを刻んでいる。
「状態異常に範囲攻撃、火力に優れたメンツも集まった……ゴールデンチームじゃね? ローレット同盟じゃね? 俺何もしなくても勝てるんじゃね!?」
 両手を広げおどけたように首をかしげる千尋に対して、両サイドから『嵐の牙』新道 風牙(p3p005012)と『キールで乾杯』アーリア・スピリッツ(p3p004400)が同時に小突いた。
「いや働けよMr.go to hell」
「冠位魔種にgo to hellしたんでしょ」
「ねえその噂二年半で尾ひれつきまくってない? 俺一人でやったことにしてない?」
 頭をうしろからぺちんとされてよろめく千尋。
「何言ってるんだか。これから兵隊をいじめて兵糧攻めにしようっていうんだから、がんばりましょ?」
「そういうこと。ホワイトメリア解放にまた一歩近づくんだ。ここで連中の『狩り』が失敗すれば途端に干上がっちまう」
「そう、買い出しに行かず二週間くらいした家ん中の冷蔵庫みてえにな」
「そのたとえ全然わかんないけど多分そうだぜ!」
「おー! れーぞーこにしてやるんだから!」
 意味全然わかんないまま『宝食姫』ユウェル・ベルク(p3p010361)が手にしたハルバートを高く掲げる。
「仲良く出来る蛇さんならよかったけど、前のアリさんみたいに仲良く出来ないなら容赦しないわ!」
 うおー! ともう一度気合いを入れるユウェル。今更だが六人全員が横並びになって、なんかスローモーションになりながら歩いていた。あの変な乗り方をした千尋を中心にして。
「なあ、これ、いつもやってんのかい?」
「わからん……私は初めてだが。なぜかなじむ」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は羽織っていたジャケットの襟をつかみ全体をばさりとやると、隣でフランスパンをペン回しみたいにしてくるくるやっていた『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)を横目で見た。
「いつもじゃないが……なくはないかな。定番だろ? これ」
 正式名称とか知らないけど、とパンをぱしりと止めて言う零。
「ま、任せとけ。クリスタラードに詰め寄るためにも、アルティマの管理亜竜たちは倒さなきゃならないんだ。段階がキツいのは、やっぱ竜ならではって感じだよな」
 零はかつて戦ったクリスタラードの強さを思い出していた。ローレットの最精鋭が10人がかりで敗北し、最終的なダメージといえば胸にひっかき傷を残せた程度だ。しかもあのときは彼単身で乗り込んできたから直接対決が叶ったにすぎない。
 住処へと引きこもった今、乗り込んでいこうとすれば配下の亜竜達によって全滅するのは間違いないだろう。こればっかりは、気持ちでどうにかできるものではない。ましてや、それで死人が大勢でるだろうとわかっているなら。
「しかし……愚かだな、ホワイトライアー。
 ろくに管理もできないくせに、人をさらって維持しようなどと。そんなもの、思惑がバレた時点で阻止するに決まってるだろう」
「ほんと、彼女の雑な性格が治ってなくて助かったわ。今からでもなんとかできるもの」
 『銀雀』ティスル ティル(p3p006151)は両腕を顔の前に翳すようにすると、両手首の腕輪をカチカチと撃ち合わせた。腕輪が液状化したかと思うと、黒い刀身をもち鍔のない日本刀へと変化する。
「よっし! 気合い入れていくよー!!」
「っし」
 千尋はぴょんと荷車からおりると、両手をポケットに入れて叫んだ。
「行くぞテメーーーーーーーらァ!!!」
 オオ、という地鳴りのごとき声と共に、アダマス率いるペイト坑道警備隊が走り出す。
 戦場は亜竜集落ジョナサン。
 目的はホワイトホメリアから放たれた蛇型モンスターの迎撃。
 極めてシンプルで、そして彼らの得意分野だ。

 地竜の異名をもつ亜竜種が開拓したペイトと異なり、ジョナサン集落は比較的温和な亜竜種の多い。
 亜竜に狙われないように穴蔵に隠れ住み、洞窟内で栽培可能な野菜と家畜によってひっそりと生きている亜竜種たちだ。
 そんな彼らを、おそらくはホワイトホメリアの魔物たちは目を付けていたのだろう。
「くそっ、また蛇か。最近多いな」
 一匹だけで現れた白い蛇の魔物を叩き潰したジョナサン集落の亜竜種(ドラゴニア)。彼はハンマーを持ち上げ汗を拭った。何回か振り下ろしただけでもう汗だくだ。戦闘慣れしていない証拠である。
 ふと見るともう一匹の蛇がいる。なんだよと悪態をついてハンマーを握り直し、視界の端にもう一匹がうつる。
 顔をしかめ……そして、表情が恐怖によって大きく引きつった。
 視界に映る限り大量に目についた蛇が一斉に動き、そしてドラゴニア男性めがけ飛びかか――。
「そこ!」
 ティスルの刀がドラゴニア男性と蛇たちの間をザンッと区切るよううに走ったかとおもうと、次の瞬間には三度の黒い閃きがはしり蛇たちが輪切りにされて落ちていった。
「あ、あんた……」
「ここは危険よ、逃げて」
 翼を広げブレーキをかけたティスルは顎で後ろを示し、ドラゴニア男性は慌てた様子で二度頷くとハンマーを捨てて逃げ出した。
 今度こそ蛇たちに向き直るティスル。
 群れで現れる蛇だが、手数の多さはこちらにもある。
 剣を交差させ、ジャリッと鳴らすとティスルは更に増える蛇たちへと斬りかかった。
 常人にとっては恐怖で悲鳴をあげるような存在かもしれないが、ティスルほど戦い慣れた人間にとって蛇の魔物は怖くない。
 が、『これだけ』しか出ないのであればの話だ。
「どうやら、襲撃計画はバレていたようじゃのう」
 ぬるり――とティスルの背後に姿を見せるトカゲ型の巨大な怪物。透明化の能力でもあったのだろうか。白いカメレオンとでもいうべき姿をした亜竜が目をぎょろぎょろとさせ半透明なナイフを無数に生成、発射。
 だがティスルは小さくだけ振り返り、笑った。
「悪いけど」
「それもバレてんだよ!」
 動きを読んでいたかのように、凄まじい反応速度で割り込んだ風牙が槍を扇風機のごとく回転。飛来する魔法のナイフを払い落とした。
 地面に落ちてはねたナイフはすぐにどろりと溶け、半透明な粘液となった。
「こっちのブロックに攻め込んでくるのが小さい雑魚ばっかだったからな。そんなヤツじゃ住民を気絶させてもろくに運べねえ。デカいやつが隠れてるって誰でも思うよな」
「フゥム、賢いのう。捕まえて持ち帰ればさぞ日持ちもしよう。元気な人間のメス……オス……? どっちだ?」
「どっちでもいいんだよンなことは!」
 更に生成される粘液ナイフを生成し発射しまくってくるカメレオン亜竜。先ほどにもました連射のうえ、回り込んできた蛇の魔物たちも襲いかかっていく。
「しかしその元気もいつまでももつかのう」
「せいぜい30秒ってとこじゃねえの?」
「むう?」
 素直に、しかし不敵に笑いながら言う風牙にカメレオン亜竜は目をぎょろりとさせた。
 その瞬間、岩面向きだしの壁――に偽装していたユウェルがドリームシアターを解いてカメレオン亜竜の背後から現れた。
「なっ――!?」
「絶好のタイミングあっりがとーぅ!」
 振り返る暇など与えない。
 ユウェルは大上段に振り上げたハルバートでもってカメレオン亜竜の尾を思い切り切断してやった。
 グギャアと叫ぶカメレオン亜竜。
 こうなればと後ろに目を向け、粘液ナイフの狙いをユウェルへと放とうとする――が、無意識にナイフは風牙へと引き寄せられる。
「カッコいいせんぱい達と一緒なんだもん。負けるわけないよ!」
 しまった! そうカメレオン亜竜が叫ぶがもう遅い。ユウェルはニッと歯を見せて笑うと、ぐるぐると回転させたハルバートの斧部分を思い切りカメレオン亜竜へと叩きつけた。
 吹き飛び、カメレオン亜竜が岩の壁へと叩きつけられる。

 ジョナサン集落に魔物が入り込んだことは集落じゅうに知れ渡り、中央の役所兼集会場へと住民達は避難していった。
 迎撃のために血気盛んな坑道警備隊が周囲へ展開。
 タワーディフェンスの様相を呈してきたなかで、アーリアと零は強敵に苦戦していた。
 中で蜂蜜色の酒がゆれる大瓶に口をつけ、胸元にたれた滴を指でぬぐうアーリア。
 それを唇につけると、投げキスのモーションで放った魔法は大量の妖精を召喚。彼女たちは酒精の香りを漂わせながら敵へと突撃していく。
 一方、零は投影術式を発動。虚空から出現した愛刀『天星』をキャッチすると妖精達と共に突撃。そして一斉に攻撃をしかけた――が。
「フフーフー、かゆいかゆい……」
 堅い甲羅を纏った亀亜竜は彼らの攻撃を全てその甲羅で受け止めてしまった。
 次に手足と頭を甲羅の内側に引っ込めると、魔力を噴射しながら急回転。妖精たちを跳ね飛ばし零までもを撥ねていく。
 周囲を乱暴な蛇行によって走り抜ける亀亜竜。集会場のまわりを固めていた坑道警備隊の面々も次々に撥ねられ、地面へと転がる。
「くそっ、なんだアイツ! 見た目通りの性能しやがって!」
 変なところに怒る零。
 が、諦めたという様子はない
「こちとら竜を殺そうってんだぞ。亀がぶつかってきたくらいで諦めてられるか! アーリアさん、アイツを足止めできるか! できれば弱体化!」
「んー」
 アーリアは酒の残量を見つめると、いいわよぉと言って手を振った。
「妖精ちゃんたち、もうちょっと頑張りましょっか?」
「えー」「やだー」「仕事は一日10秒って決めてるもん」
「はいヴォードリエワイン今年の新作」
「わーい!」「やるー!」「延長料金入りましたー!」
 きゃいきゃいいいながら起き上がった妖精達に頷き、ワインの瓶をことんと地面におくアーリア。
「ちなみに亀さんにワインが轢かれたらナシよぉ」
「「そんなー!」」
 必死の形相で亀亜竜へと襲いかかる妖精達。アーリアは後方に振り返ることなく、不安そうにこちらを見守るであろう住民達によびかけた。
「大丈夫、私達がみんな助けるから」
 シュッと指をふると『月の裏側』への裂け目が口を開く。
「おっ!?」
 吸い込まれそうになって、両手両足を出してふんばる亀亜竜。
 そこへ妖精達が張り付き、何かをぺたぺた貼り付けた。
 なんだろうと思っていると――。
 零のフードワゴンが物凄い勢いで突っ込んできた。
「くらえーーーーーーー!」
「この人間正気か!?」
 逃げようとするも妖精の塗ったワックスに滑り、ドウッという音と共に轢かれる亀亜竜。

「ぬん!」
 坑道警備隊が構えた機関銃の一斉射撃をでっぷりとした腹で全てうけとめた亜竜がそれを全てはじき返してきた。
 腹ばかりででかい巨漢のシルエットをした白いトカゲ亜竜だ。顎髭のような棘がはえ、手にしたひょうたん型のボトルを開いてぐびぐびと飲んでいる。匂いからして酒のようだ。
「こいつ滅茶苦茶やべえな……なんの亜竜だろ。狸の置物にめっちゃ似てるけど」
「流石に狸ではないだろう」
 反撃によって瓦解しかけた坑道警備隊と入れ替わる形で前に出たモカと千尋。そしてアダマス。
 アダマスは竜骨めいた剣をチェーンモードに展開すると、こきりと首をならした。
「フトアゴヒゲトカゲだな。暑いと穴を掘ってもぐる習性がある」
「やだアダマス先輩博識」
「ただコイツは初めてみるけどな。腹の硬い鱗と肉で攻撃を無効化するって感じか?」
「かもな……」
 モカはあえて両手をポケットに入れると、ぐっと姿勢を低めに構えた。
「オメエの攻撃は通じねえど。大人しくニンゲンをだしな。まだころしゃあしねえど」
 デブトカゲ亜竜はそう言うとげふーと酒臭い息を吐いた。
「それをわざわざ口に出すということは、『通じる方法がる』んだろな」
 モカは言うが早いか地面を蹴って宙返りをかけると、デブトカゲ亜竜の腹めがけてあて跳び蹴りを繰り出した。
 流星破撃。青い閃光すら纏って繰り出されたモカの蹴りはデブトカゲ亜竜の腹に突き刺さり、そしてポンッと栓が抜けるような音がした。
「ぁっ」
 途端、デブトカゲ亜竜のボディがヒュンッと細くなる。
「仕事が終わったら私の店で打ち上げ会やるぞ!
 もちろん私のおごりで料理は食べ放題、酒は飲み放題だ! 一斉攻撃!」
「あっ!」
 モカの叫びに応じて坑道警備隊たちが射撃を開始。
 千尋とアダマスは共に突っ込むと、慌てて酒を飲み干そうとするデブあらためトカゲ亜竜めがけて殴りかかった。
 アダマスの伸びた蛇腹剣がトカゲ亜竜へぐるぐると巻き付き、千尋はその顔面を思い切り殴り倒す。
 防御もできずに殴り飛ばされたトカゲ亜竜。
 あえて追撃を仕掛けることなく、千尋は両手をポケットに入れてすごんで見せた。
「今度よその集落からヒトをパクろうとしてみな。テメーらの鱗を一個一個剥がしてお子様にばかうけのランドセルにしてやっからな」

 見事、としか言いようがないだろう。
 ジョナサン集落を襲った亜竜たちの『狩り』に対して、住民のひとりたりとも持ちさらせないという結果をローレットは残して見せたのだから。
 当然、大きく労働コストを割いたにもかかわらずエサはおろか供物となるべき人間も手に入れることが出来なかったホワイトホメリアは追い詰められることとなる。
 より過激で極端な行動に出るほかなくなるだろう。

●グリーンクフィア:もえろよもえろ
「はぁ、欲求を失うだなんて程度がどうあれ愚かとしか思えないね」
 ワインでも入りそうなガラスのボトルを、ぽーんと高く放り投げる。
 ゆるやかに回転したそれは、清々しく青い空のなかでゆっくりと落ち、そして『悠青のキャロル』ヨハン=レーム(p3p001117)の手へと再び収まる。
「欲求には何かしらの理由があるものさ。それを無視して強制的に喪失させればこうもなるよね。それじゃ――」
 瓶をキャッチしたヨハンはそれを大きく振りかぶると、笑顔で投擲した。
「放火を始めよう」
 爽やかな野原。緑色の花が咲くその場所には、白い服を着た男女が楽しく歌って踊っていた。
 現れたヨハンに振り返る者はあったし、気付いてもいた。瓶をなげたことにすら気付いたが、なにもしなかった。
 回転しながら放られたそれが地面にぶつかり、炎を周囲にまき散らすまでは。
「はあ……!?」
 驚きの声を上げるグリーンクフィアの住民たち。
 彼らにとって花を燃やすことは重大な『規則違反』なのだろう。
「あなた、なにをするんだ! 今すぐやめなさい!」
 第二の瓶を取り出したヨハンへ駆け寄る男性。
 が、ヨハンは取り出した聖銃アンティキアで男性の頭部を撃ち抜いてしまった。
 どさりと崩れ落ちる男。凄いところに当たったが、死んではいないようだ。。
「自分の手を汚さないこのやり口はなかなかに悪党だね。気に入ったよ。
 僕は全部自分の手のひらで事が進んでいると思いこんでいる奴に噛みつくのが大好きなんだ。
 ベルガモット、貴様には銀弾をぶちこんでやるからな。待っててくれよな」

 ヨハンと同じように、グリーンクフィアのあちこちでこの放火活動は始まっていた。
「もえろもえろー! どうしよう皆、大変だよ。
 なんだか燃やすのが楽しくなってきちゃった! ひゃっはー!」
 『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が目をぐるぐるさせながら火炎瓶を投げまくる。
 それを止めようとグリーンクフィアの住人が駆け寄ってくるが、ピッと抜いた炎縛札を投げるとできあがった炎の縄が住人たちを拘束しその場に転倒させる。
「こんな風に人の気持ちを奪って、生きたいって思いすらなくさせちゃうなんて。
 そんな酷いこと続けさせるわけにはいかないよ!
 もうそんなことが出来ないようにここのお花を徹底的に焼き尽くして、住民さん達の心を取り戻させて助け出そう!」
「……はっ!」
 先ほどとは別の、拘束され倒れた老人が目を開き大きく息を吸う。花が燃えたことででた煙を吸ったせいか、激しくむせて起き上がった。
 自らの服に火が燃え移っていたことに気づき、慌ててそれを地面に叩きつけて消火する。
「は、あ、へ? わたしは、なにを……」
 生への欲求が蘇ったのだろう。あるいは、それまで麻痺させていただけなのか。
 未だこらじゅうの花を燃やして回る焔を見て、呆然とした顔になる。
「ここにいたらダメだよ。安全なところに逃げて」
 焔の言葉に、老人はただ『はあ』とこたえ言われるまま、指さす方向へと走っていった。

「何度と無く放火の経験あるけど 気兼ねなくヤレんのは助かるよ 火は尊いねぇ~」
 老人が向かった先は、既に放火活動がすんだいわゆる『焼け野原』というやつだった。
「ていうか人間を管理して食うって、畜産って要するにこういう事なんか? そういう意味じゃ我々と近い存在……ってなりゃしねーよな~」
 その場を守っていた『イケるか?イケるな!イクぞぉーッ!』コラバポス 夏子(p3p000808)が、武器すらもたず掴みかかってくる住民たちを『闇を劈く爆裂音』の能力によってあげた光とそれをブーストさせたで吹き飛ばす。
「理屈じゃ分かる分かるんだけどさ。感情で理解する訳にいかんのよ。
 人によっちゃ救いの場合もあるのかもな。
 とは言え我々にしてみりゃコレ悪趣味。徹頭徹尾キッチリお邪魔しますよ」
 こうして倒した人々は、花の効果を受けなくなってかぶるぶると首を振っている。
 夏子はそんな人々のもとへ近づくと、ポケットから取り出したカプセルを口に放り込んでいく。水なしでよく飲めるなーなどと考えながら見ていると、彼らは身体を起こし、呆然とした顔でまわりを見回していた。
「おはよ」
 小さく手をかざし、腰を下ろして視線をあわせる夏子。
 その顔をじっと見てくる女性住民に、夏子は『わかるよー』と言って翳した手を振って見せた。
「いきなり感覚が変わってびっくりするよね。けどマジでリアルなんだ。今まで欲求を消されてただけ。生きたいって欲求。寝たり食べたりしたいって欲求。いい感じに生きていきたいって欲求とかね」
 そこでじっとしててと言って立ち上がると、夏子は槍を両手で握るように構えた。
 遠くから、大きな亜竜が接近するのが見えたのだ。

「自らの餌とする為に徹底した管理を行う。
 成程効率的ではあります……愉快かと問われれば、そうではありませんがね」
 彼岸会 空観(p3p007169)は冗談みたいに言うと、錫杖によってグリーンクフィア住人たちを次々に殴り倒していった。
 何人もの男性が空観をとめようと掴みかかるが、常人からすれば凄まじい力で彼らを振り回し、まるで小さな子供のように放り出されていく。
「これだけ活力があるのならば、目を醒ませても生きて行けそうですね。安心しました」
 杖の先で殴りつけ端から気絶させていく空観。
 あまりの手さばきに住民達に勝ち目はないように見えた。
 火炎瓶を取り出し火を付ける。そしてこれ見よがしに花園へと放り投げると、炎はみるみる広がっていった。
「偽りの楽園を灰燼へと帰しましょう。パーティータイムですよ、タイムさん」
「なんのパーティー!?」
 『揺れずの聖域』タイム(p3p007854)は火炎瓶をぺいって放り投げると、燃え広が去るさまをよく観察していた。
「風上から風下に、だったよね。なんか効率的に畑を燃やすのって変な気分」
 人の住む街を燃やしてまわるなど、それこそクリスタラードたちがやったことのようにすら思える。けれど、その前提は全くの別だ。
「クリスタラードの餌にする為だけに薬物漬けにして飼育、なんて……うう~、趣味が悪すぎるよ。あの竜にまた会う時は絶対文句の一つや二ついってやるんだから」
 こんなことを許すのだ。よほど人間を矮小に見ているとみえる。
 タイムはクリスタラードと直接ぶつかった時に感じた威圧感や、こちらを『人間ごとき』と見ている価値観を思い出していた。今でこそ竜にも色々な考え方があるとわかったが、どうやらクリスタラードは悪い方に対して個性的らしい。
 と、そこへ。
「ローレットが入り込んだと聞いたからなにかと思えば……気でも触れたか人間ども!」
 大きなクマのような亜竜だ。それもヒグマにツノが生えたような力強く威圧的な存在である。
「早速来た……ヤツェクさん、花丸さん!」
「任せな」
 『陽気な歌が世界を回す』ヤツェク・ブルーフラワー(p3p009093)はリボルバー光線銃をホルスターから抜くと、その銃口で帽子のつばをついっと上げてタイムの斜め後ろへと現れた。
「ベルガモット印の食肉工場は今日で倒産だ。
 アンタらは人を二度も殺す。一度は心を。二度目は命を。許しちゃおけんなあ。
 人生は苦いが、自ら選ぶ道に生の喜びがある。違わんか?」
 低く、そしてよく通る声でいうヤツェク。
 対してヒグマ亜竜はフンッと鼻息を荒くして立ち上がった。
「我々に食われる意外に能のない家畜が、一丁前なことをいうんじゃあない!」
「だったら黙らせてみな。俺は吠えるし歌うぜ? この、生命と知恵の象徴をぶっぱなしながらな。楽園から脱獄するために、鎖は全力でぶち壊す!」
 火炎瓶を放り投げ、それを空中で撃ち抜く。
 広がった炎にヒグマ亜竜が『その程度』と踏み込んだ……瞬間、周囲に設置していた瓶が一斉に炸裂。
 想像をはるかに超える炎と爆発にヒグマ亜竜は本能的に怯んだ。
「失敬。これが人間流の『反乱の狼煙』って奴でね。これから精々毎晩火の悪夢にうなされるんだな、亜竜(くそとかげ)ども!」
 怯んだヒグマ亜竜めがけて光線銃を撃ちまくるヤツェク。
 ヒグマ亜竜が次々に炸裂する光線によろめくなか、『可能性を連れたなら』笹木 花丸(p3p008689)が弾丸の如く飛び込んでいった。
「それはそれとしてこれじゃどっちが悪者かちょっとわかんないね? けど――」
 ジャンプからの豪快なパンチ。ヒグマ亜竜は咄嗟に翳した手でそれを受け止めるも、花丸は空中で拳のラッシュを繰り出した。
「小癪なことを――どけ!」
 ヒグマ亜竜が花丸を強引に掴み放り投げるが、走ってスライディングしたタイムがそれをキャッチ。衝撃はタイムチャンクションが全部受け止めてくれたようだ。
「花丸さん、大丈夫!?」
「平気、ありがとっ」
「無理はしないでね!」
 タイムは治癒の魔法を唱えると、花丸と一緒に走り出す。
「何度来ても同じだ。三人程度返り討ちに――」
「三人程度?」
 声がした。背後からだ。
 ヒグマ亜竜は急いで180ターンし、両腕をクロスして防御。
 空観が杖から抜刀し繰り出した斬撃が、ヒグマ亜竜を通り抜けてうしろの焦げた草花を吹き飛ばしていく。
「四人ならばどうですか? まだ、『四人程度返り討ちに』と言う余裕があるでしょうか」
 空観はどこまでも平淡な口調で刀の連撃を繰り出してく。
 ヒグマ亜竜はそれを受けるので精一杯のようだ。
 そこへ花丸たちが迫っていく。余裕などあるはずがない。
「く、うう……!」
 ヒグマ亜竜が歯を食いしばって唸った……その時。
 周囲を緑色の雷撃が走った。
 亜竜を圧倒しつつあった空観はおろか。花丸たちもまとめて吹き飛ばされる。
「一体……なにが……?」
 花丸が痺れる身体を起こすと、ゆれる視界の向こうに巨大な四足獣の姿が見えた。
 額には第三の目。それがキラリと光ったかと思うと、頭の中に直接女性的な声が響いた。
「やめるのです。ローレット。これ以上続けるのなら、あなたがたを殺さなくてはなりません」
「ベルガ……モット……」
 花丸は共有した情報の中で知っていた。
 管理者ベルガモット。
 グリーンクフィアを管理する強大な亜竜だ。
 もし、過去に仲間達が戦ったブラックアイズ、ホワイトライアー、ウルトラ・ヴァイオレットたちと同格だとするなら、この四人で太刀打ちできる相手ではない。
 が、足止めくらいはしなければならないだろう。
 立ち上がり、ふらつく身体で構えをとる花丸。
 タイムによる治癒魔法を受け気分はよくなったが、身体にはしる脱力感は激しい。このまま横になって眠ってしまいたい気分だ。
「あくまで、続けるというのですね」
 ベルガモットはグルルと獣のような声をあげ、牙を剥きだしにする。頭の中で囁く優しい声が、言った。
「なら、死になさい」
「タイム、七晶石だ! 投げろ!」
 運命が変わるような声がした。
 ヤツェクのものだ。
 タイムは何故と問うこともなく、思考を一旦放棄してポケットから取り出した七晶石をベルガモットめがけて投げつけた。
 緑の雷撃が再び走る。
 が、雷撃はどういうわけか七晶石にだけ集中し、バチンッという音をたてて七晶石が地面に落ちる。
 そのタイミングを、花丸は逃さない。
 再び弾丸の如く走るとベルガモットめがけて跳躍。間に割り込んだヒグマ亜竜がガード姿勢をとるも――
「それは見た!」
 ガードの内側にスッと滑り込んでボディに拳を叩きつける。
「蒼天――!」
 叩きつけた拳から螺旋状の衝撃が走り、ヒグマ亜竜を貫通したかと思うとその後方のベルガモットへと炸裂した。
 グッと呻いて後退するベルガモット。
「……なるほどな、こういう意味だったのか」
 ヤツェクはフウと息をつき、額の汗を拭った。
 この地へ出かける前、彼はプルネイラから不思議な話を聞かされていた。緑の雷とか七色の石だとか、わかるようでわからない、すごく曖昧な予言めいた内容である。
 それが、今この瞬間になって脳内でピタリとつながり、叫ばせたのだ。
 今度こそタイムが問いかけてくる。
「ヤツェクさん、これどういうこと!?」
 攻撃を防がれた理由を察したのだろうか。ベルガモットはジッと後ろに後じさりをしている。
「緑雷は魂を喰らう……要するに、ベルガモットの雷は魂あるものを捕捉して追尾する性質があるんだろう。その七晶石には僅かながら誰かの魂が宿ってる。一番近い魂……つまりそいつに雷が吸われたのさ」
 タイムは石をひろいあげ、じっとみつめる。
 もしここにタイムがいなければ。あるいはヤツェクが叫ばなければどうなっていただろうと考えて身震いした。
「ここまでのようですね……」
 ベルガモットはゆっくりと後退し、そしてどこからか生まれた霧のなかへと消えていった。ヒグマ亜竜も腹をおさえつつも後退し、同じく消えていった。
「勝った……の?」
 花丸が振り返ると、仲間達がどこか曖昧に首を振る。
 その意味するところを察し、花丸はぷはあと息をついてその場に座り込んだ。
 ベルガモット。確かに強敵だったが……自分の拳もまた、確かに届いた。
「次は、倒せる」
 確信が、つぶやきとなって漏れた。

 焼け野原となった元花畑の上に立ち、『からくり憂戯』ラムダ・アイリス(p3p008609)は大型のアタッシュケースを地面に置いた。
 遠くから白い服をきた集団が集まってくるのが見える。
「ねえ、あの人達は正気だと思う?」
「花の効果が残っているほうに500リラ」
 『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)がそう呟くと、ラムダが『はぁ?』という顔で振り返る。
「リラってなんだ」
「価値の名だ」
 そこまで言うと、ルブラットは手にしていた杖をカチリとひねって仕込み刀を抜いた。
 黒い刀身に不思議なつやが走っている。
 よもや斬り殺すつもりじゃないだろうなとラムダが刀身を見つめていると、ルブラットはそれをもってグリーンクフィア住人たちを指し示した。集団の中にはツノが複雑に分岐したシカのような亜竜が混ざっており、こちらをじっと見つめている。
「もしかして確証を得てから賭けなかった?」
「安心しろ。賭けは無効だ」
 それならいいけど、とラムダはつぶやき両腕を広げた姿勢をとる。
「可変式魔導装甲『応龍』」
 音声コマンド式なのかそれとも念受信式なのか、アタッシュケースが複雑にバカッと分解したかと思うと全てのパーツが展開しラムダの身体のあちこちへと装着。最後に小さな翼のようなユニットが接続されると、青白い光を噴射し空へと飛び上がった。
「薬物洗脳とか。まぁ、統治する側からすれば効果的かもしれないけどかなりいただけないなぁ……極力痛くはしないつもりだけど。ゴメンね?」
 ラムダがそう呟くや否や、こちらへ近づく集団めがけて一気に自ら距離を詰めた。
 思わず身構えた住人達をすり抜け、ツノから雷撃を放つシカ亜竜の攻撃をまるで無視したように斬りかかる。
 鞘に収めたままの魔導機刃『無明世界』を握り、鞘部分に念を入力。磁力魔法によって急激に反発した刀を抜刀すると、その速度をまるごと乗せてシカ亜竜の首を一瞬のうちに切断してしまった。
 刀に彼らの放った電撃がそのまま乗っていたことに、あるいは気付いただろうか?
 ワッと驚きの声をあげる住人たちだが、そんな彼らの間をルブラットが駆け抜けた。
 剣と鞘(仕込み杖)を振り回し、ザッと脚をとめると大きく靡いたコートの裾が地へとつき、その後ろで人々がばたばたと倒れていく。
「え、ちょ」
「安心しろ。峰打ちだ」
 とか言いながら地に濡れた刀を水平に翳して見せつける。
「それ↑は峰打ち↓じゃな↑い!」
 思わずトーンの狂ったツッコミを入れてしまうラムダ。普段のクールな印象が急に崩れた瞬間だった。
 ハッとして首を振り、いつものトーンに戻したラムダは……倒れた人々の顔色が妙にいいことに気がついた。
「峰打ち兼瀉血だ」
「そんなことってある?」
 が、どうやらルブラットの狙い通りになったようで、人々は意識を失っているだけだ。
 ルブラットは彼らを仰向けにしていくと、その口に不安な色のカプセル薬を放り込んでいく。
 と、そこへ。
「……む」
 何かの気配を感じ、振り返るルブラット。
 いつのまにか濃い霧がかかっており、そのずっと向こうに赤い三つの目が光ったような気がした。
「ベルガモット、か」
 襲ってくる気配は、どうやらない。
「ずっと、貴方と言葉を交わしたいと思っていたよ。
 何を目的に此処の体制を築いていた?
 もしも。もしも、死の恐怖から彼らを救うために、あの花を利用していたのなら――」
 そこまで言ってから、ルブラットは首を振った。
「いや。所詮、貴方は生贄を安定的に得るためだけに彼らを洗脳したのだ。そうだろう?
 次に会う時、この炎に消えゆくのは、貴方か私だ。
 せいぜい心待ちにするがいい」
 ルブラットの言葉に対して、返答は一つだけだった。
 頭の中に直接響く優しい囁き声で。
「その時は、あなたを殺します」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

●各エリアの活動
 今回の調査の成否のみを共通公開します。
 成功したエリアは『理解度』が上昇し、管理者との戦いを有利にします。
 【白】ホワイトホメリア:成功
 【紫】ヴァイオレットウェデリア:成功
 【赤】レッドレナ:成功
 【青】オーシャンオキザリス:成功
 【黄】イエローイキシア:成功
 【緑】グリーンクフィア:成功

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