シナリオ詳細
<夏祭り2018>この日は遊ぶ日
オープニング
●海洋(ネオ・フロンティア)の夏祭り
「夏祭り、行かない?」
無表情で淡々と告げた『Blue Rose』シャルル(p3n000032)は、言いきってから1つ目を瞬かせた。
「……あ。ボクとじゃなくていいよ。ボクはただ集客を頼まれただけだから。まあ、ボクと回りたいって言うなら少しくらいは付き合うけど」
集客を頼まれただけ、と言う割には行く気満々である。
「海洋にある町のお祭りなんだけどさ」
『日が暮れても遊び倒せ!』と大きく書かれた祭りのチラシを見せながら、シャルルが口を開く。
場所は海洋の小さな島。海岸から島の中心へ向けて通る道沿いに屋台が並ぶ。
夕方、日が落ちるくらいの時刻から屋台が営業開始。道の両側に並ぶ屋台はまるで縁日を思わせるらしい。
道の途中にはベンチが用意されていたり、休憩用に小さい広場も用意されているようだ。
そして日が暮れて、人の喧騒より大きな音を響かせる花火が打ちあがる。屋台で遊びながら見るのは勿論、休憩用の広場で見る者もいれば海岸沿いまで降りていく者もちらほらいるとか。
花火が終わっても日付が変わるくらいまでは賑やかで、皆が疲れて睡魔が襲ってくると流れ解散。
屋台の片づけは次の日にしてしまうらしい。
ならまあ、適度に遊んで食べて、花火を見て解散するか。なんて頭の中で思い描くイレギュラーズもいる中、シャルルの言葉はまだ続く。
「もしちゃんとしたご飯が食べたかったら自分達で持って行って。あ、飲み物もかな。こっそり食べてよ」
そうか、それなら弁当の用意をして見つからぬよう──ん??
目を瞬かせた者、首を傾げた者。はた目から見たら聞き逃したか無反応の者もいて、それでも周りにつられてその視線はシャルルへ集中する。
祭りじゃん? 屋台じゃん? 食べ物あるっしょ?? 食べていいよね???
そんな意図が含められた視線。しかし──。
「……何? 揃いも揃って」
全く伝わっていない。
首を傾げるシャルルに説明するイレギュラーズ達。
祭りというものは大抵食べ物や飲み物が売っているもので、わざわざ弁当や飲み物を持参する必要はない。さらに言えば隠れて食べる必要だってどこにもない。遊んだあとに飲み食いして喉を潤し腹を満たし、再び遊ぶのだと。
イレギュラーズ達の説明を受けたシャルルは変わらぬ無表情で、けれど納得したように頷いた。
「成程。遊ぶとお腹が空いたり喉が渇くから、それを満たすのか」
そうそうわかってくれて何より、とイレギュラーズ達が頷く。シャルルはそんな彼らを見ながら口を開いた。
「……でも、やっぱり長居するなら持ってきてもらわないと。だってこのお祭り、遊ぶものしかないしさ。島の人曰く『この日は遊ぶ日だ!!』……だって」
- <夏祭り2018>この日は遊ぶ日完了
- GM名愁
- 種別イベント
- 難易度VERYEASY
- 冒険終了日時2018年08月04日 21時48分
- 参加人数50/50人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 50 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(50人)
サポートNPC一覧(1人)
リプレイ
●賑わう屋台
「あ、ミディーさんいたいた!」
人込みを抜け出てきた『こそどろ』エマ(p3p000257)に、『灰かぶりのカヴン』ミディーセラ・ドナム・ゾーンブルク(p3p003593)はふわりと微笑んだ。
「その浴衣、とてもお似合いですわ」
人に紛れていても、その姿は一際綺麗で。例えるなら、煌めく星々の中でもはっと目を引く光のような。
「えひひひ、ありがとうございます、ありがとうございます!」
褒められたエマは嬉しそうに笑い、ミディーセラを屋台へ誘った。
ミディーセラの浴衣はエマと対照的な色合いで、夜空に溶け込んでしまいそうだ。
しかと手を繋いだ2人は歩きながら屋台を見て回る。
「なんだか一風変わった屋台だらけですね。まともな食べ物がないっていうか……」
行きつけの某酒場のようである。
「それもまたお祭り。日常の中の非日常、興味深いもの。そう、このろしあんマシュマロなんて……」
「お、いいですね。やってみ、」
「全部一気に食べてしまえばいいのでは」
被さるように発せられた声に、エマがひくりと顔を引き攣らせた。
全部? え? マジで??
そんなエマを余所にミディーセラはろしあんマシュマロを購入する。そして──エマの方へ向き直った。
「さあ、おひとつ、ぐいっと」
「ちょっとミディさ」
開いた口にマシュマロが詰め込まれた。……口の中が混沌(カオス)になったのは想像に難くない。
手招きされていることに気づいた 『彼は誰時』猫屋敷 音子(p3p005264)は人込みを縫って『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)の元へ。
「ども、お待たせしました。あなたの背がデカくて見つけやすいので助かりました。……おや、浴衣お似合いですね」
「そりゃどうも。んまぁ、エスコートと言ってもまず何処を見たもんかなぁ……」
「まさかのノープラン……」
なんて話しながら屋台を見て回って、着いたのは金魚すくい。
猫に似てるし取るの上手だろ、というアランの言葉に少し呆れながらも音子は並んで水槽の前にしゃがんだ。
ポイを渡され、財布を出そうとするとアランに止められる。ごちです、と小さく礼を言って音子はもらったポイを握った。
「オラァァ!」
勢いよく金魚を掬おうとするアラン。まあ当然金魚は掬えず、ポイは破れるもので。
ちらっと音子の方を見ると、彼女のお椀には4匹の金魚が入っていた。
「ふふん、コツがあるんですよ」
「くっ……絶対掬ってやる!!」
視線に気づいた音子のドヤ顔に、アランは対抗意識を燃やして新たなポイを握り締める。
「盛り上がってるね! すっごい人!」
驚きながらも楽しげに屋台を見て回る『特異運命座標』サクラ(p3p005004)。その後ろをはぐれないように 『業に染まる哭刃』クロバ=ザ=ホロウメア(p3p000145)がついていく。
一見すると保護者枠かと思われたクロバだが──。
「あ、クロバくん! あれやろ! あれ!」
「おう、アレだな。行こうぜ!」
──実の所、かなりノリノリである。
2人が向かったのは射的屋台だ。サクラが銃を構え、狙い撃つ。
その弾は景品を掠めることなく、サクラは肩を落とした。
「むぅー。はい、じゃあ次クロバくんね!」
そういえばできるの? なんて聞かれながら銃を渡されるクロバ。にやりと笑って銃を構える。
「なに、なるようになるさ──死神に祈りな」
ちなみに、銃を扱ったことはない。
狙って、狙って。引き金が引かれて弾が飛び出し、それは景品棚の柱を跳ね返ってクロバの額に直撃した。
「いっってぇぇ……」
「ク、クロバくん大丈夫!?」
幸い怪我はなかったが、格好がつかなかったので彼の心に傷はついたかもしれない。
その後も屋台を練り歩いていると、ふとサクラが疲れてないかとクロバを伺った。
「楽しいなら良い。オレはそういうところがみれりゃ、一緒に行かせてもらった甲斐はあったというもんだからな」
そう笑みを浮かべて告げれば、サクラはきょとんとクロバを見て。
「……ふふっ、格好つけすぎだよ!」
彼女の笑みは満更でもないようだった。
食べて笑う者、泣く者。様々な反応を見ながら『暴牛』Morgux(p3p004514)は人の間を縫って進む。
ふと視線が留まったのは『たこ焼き』と書かれた屋台だ。
「普通……じゃないな」
よく見るロシアンではないようだが、紙皿の上に人の顔程もあるたこ焼きが1つだけ乗っているのだ。
「あぁコレ? タコ丸ごと入ってんだ。兄ちゃん買ってくかい?」
店主がニカッと笑いながら告げ、Morguxは思わず呆れた表情を浮かべた。
「切り身じゃねぇのかよ。どんな食いモンだこれ……」
(食べるのに骨は折れそうだが、変な味の食いモンよりはマシか?)
購入した大きなたこ焼きを見下ろして、一先ず食べやすい場所へ、とMorguxは移動したのであった。
「あれは何かしら……? 早速行ってみましょ!」
人込みへ突撃しそうな『夢見る少女』ミルフィ モノフォニー(p3p005102)を慌てて『ドゥース&デセール』ミラーカ・マギノ(p3p005124)が止める。
「ちょっとはぐれるわよ!?」
「はわっ、危ないわね。ミラーカちゃん、私と手を繋いでくれる?」
差し出された手にミラーカは目を瞬かせ、小さく頬を染めながら自らのそれを重ねる。
「ミルフィ、そっちは危ないわ」
なんて人込みから抱き寄せて守るミラーカ。守られたミルフィはにこにこと笑顔だ。
人込みから逃げるように閑散とした休憩所へ向かった2人。空いているベンチに座り、購入した飲み物を飲む。
「……っ! 何これまっずい!?」
思わず口元を押さえるミラーカ。するとそれを見たミルフィが何やらソワソワと辺りを伺い、隠すようにあるものをミラーカへ手渡した。
「もしよかったら、これ」
ハンカチ。……と、それに隠された水筒だ。
ありがと、とこそこそ飲んでミルフィへ返し、ミラーカは溜息をつく。
「折角ちょっとはお姉さんらしく振舞えたと思ったのに……」
「ふふ、でもこのほうがいつものミラーカちゃんだわ!」
ミルフィは安心したように告げ、ミラーカを射的に誘った。
「のっけから、まともなヤツは1個だけか」
手元の逆ロシアンたこ焼きを見下ろしイーディス=フィニー(p3p005419)はにやりと笑う。
(いいぜ、俺の幸運を見せつけてや──)
ぱくり。
「ふぎゃーーーーす!?」
イーディスの悲鳴にも、周りは意に介すことがない。どうやらよく見られる光景らしい。
「の、飲み物で何とかしねぇと……」
別の屋台で飲み物を購入するイーディス。青いジュースは涼し気だ。
ごくり。
「ふぎゃーーーーーーす!?」
強烈ミントが辛さにやられた口内に追い打ちをかける。
「くっ……だが負けねぇ、俺の屋台巡りは、まだ始まったばかりだ……!」
始まったばかりで満身創痍に近いのだが、挫けることなくイーディスは次の屋台へ突撃していった。
ふらふらと徘徊する『瞑目する修道女』メリンダ・ビーチャム(p3p001496)は射的屋台に足を止め、遊んでみることにした。
銃を構えて撃ってみると、飛び出した弾は的外れな場所へ向かった挙句跳ね返って──。
「ンギャー!!」
──ああ、不幸にも通りかかった『きらめけ!ぼくらの』御天道・タント(p3p006204)に、しかも目に直撃してしまった!
「ななな何ですの! このタント様の煌瞳を狙うだなんてひどいですわ!」
「あら? ごめんなさい。お詫びにこれどうぞ」
狙ってはいないが、当たってしまったことは事実である。
メリンダがいかにもヤベー感じなロシアンたこ焼きを差し出すが、『お詫び』の言葉にタントはころっと機嫌を直してしまった。
「そ、そういう気持ちがおありならばわたくしもそう強くは……」
モザイクが掛かりそうなそれを気にした風もなく口にするタント。
「ンギャー!!」
かじりついたそれから具材が逃げ出す。何が逃げ出したかって? 聞いてはいけない。
「ひ、酷いですわ! 残虐ですわ! 大体あなたっ、目を閉じたまま射的とかできるわけありませんでしょう!」
まともな事を言うタント。もっと目を見開きなさいという言葉にメリンダは首を傾げ、まあ要望なのだからと顔を近づける。
「なんですの目を開いてと言っただけで顔を近づけなさいなどとは……、ンギャー!!!!!」
兇相の瞳に見下ろされ、弾かれたように逃げ出すタント。
人にぶつかりながら逃げていく姿に、メリンダはニタニタと楽しげに笑った。
「今宵はまともじゃない屋台しかないんだって? 素晴らしいじゃないか!」
この島の住民は良く分かっている、と言う『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)は空の上。
屋台の灯りと往く人々が良く見える。
ふと興味が惹かれる屋台があったのか、マルベートは邪魔にならない場所へ降り立って列へ並ぶ。
「溶けるまで何が入っているかわからない……ふふ、もう少し待つ必要がありそうだね」
闇氷製かき氷を購入したマルベートは上機嫌で次の屋台へとはしごしていく。
数ある屋台の中に、彼女の欲求を満たす『1番馬鹿げた品を出す店』はあるのだろうか。
(お祭り……楽しみ、ですね……)
そわそわと屋台を見て回る『さまようこひつじ』メイメイ・ルー(p3p004460)。
まともなものはほとんどない、というか皆無。けれど周りの雰囲気に呑まれてメイメイも色々と買い込んでしまう。
「……ぅ、」
口の中に広がる辛さにぎゅっと目を瞑る。確か、1つ激辛の入っているたこ焼きだ。
「う~っ、辛い! けど負けない!」
隣から聞いたことのある声がしてメイメイが目を開ける。ぱち、と蒼玉の瞳と視線がかちあった。
「あれっ、こんなところで会うなんて偶然! 浴衣可愛いね!」
同じようにロシアンたこ焼きを食べていた 『駆け出し冒険者』シャルレィス・スクァリオ(p3p000332)はメイメイの姿にぱっと表情を綻ばせた。
「ねえねえ、何か面白そうな屋台とかあった?」
「面白そう、な……屋台……ですか……」
メイメイは少し考えて、周りを見渡して。つい、と元来た方を指差した。
「え、と……射的……向こうの、ほうに……あって。わたしは、やらなかったけれど……すごく、人……多かったです……」
「射的! 普段銃とか使わないから楽しそう!」
ありがとう、とシャルレィス手を振ると、メイメイも小さく手を振り返してくれた。
示された方へ進むと確かに人だかりがある。どうやら観客も何人かいるようだ。
シャルレィスは景品棚に置かれた大きな猫のぬいぐるみに目を付ける。
「よし、やるからには大物狙っちゃうよ! おじさーん! 次やらせてー!」
ここが終わったら向かいの輪投げ。そのあとは闇まんじゅうを買って、その次は。
シャルレィスの屋台全制覇が先か、時間が過ぎ去ってしまうのが先か、果たして。
「アンタ、普段の軽い喋りはどーしたの……」
『寄り添う風』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)に小さく呆れられてしまうくらい、『ボクサー崩れ』郷田 貴道(p3p000401)は緊張していた。
恋人とのデートで。しかもはぐれないようにと腕にくっついてくるのである。
勿論嫌なわけはないが平静でもいられない。
「あ、林檎飴いーな!」
屋台をきょろきょろと見るミルヴィのリクエストにより、林檎飴の屋台へ。他の果物も飴でコーティングされているようだが、普通の林檎飴がいいとどうにかこうにか入手。
「ほら、あーんしなー」
「ああ、もらおうか……って食べかけじゃないか!?」
顔を赤くする貴道に、ミルヴィは「間接キスってヤツかな?」と悪戯っぽく笑ってみせて。
色々な屋台を回る合間に頬へキスされ、再び赤面する貴道を見たというイレギュラーズがいたとかいないとか。
「突然お誘いしてしまってすみません、シャルルさん」
「いや……こういうの慣れないから、助かる」
『Blue Rose』シャルル(p3n000032)の言葉に『昏き森の』ノエル(p3p006243)はほっと表情を綻ばせた。
(折角のお祭り、遊ぶ日ですしね)
1人で回るより誰かと回った方が楽しいはずだ。
「気になる屋台はありますか?」
ノエルが問うとシャルルはきょろきょろと辺りを見回し、首を傾げる。
「……沢山ありすぎて、わからない」
「うーん……それでは、先ずは飲み物を買いに行きましょう」
暑いですし、と2人が向かった屋台は『まぜまぜ☆ジュース』。
「……飲み、物……?」
「みたいですよ? 飲んでみましょうか」
声音に怪訝な色を含ませるシャルルに苦笑し、ノエルは購入した自分のカップに口を付けた。
ミルクティー色に赤い何かが浮いた液体は美味しそうとは言い難い。……だが。
「……あ、あれ? 普通?」
意外と飲める味にノエルは目を丸くした。その隣で咳き込む声に慌てて振り向く。
「シャ、シャルルさん? 大丈夫ですか?」
「……ぅ、すっぱい」
どうやら何も考えずにたくさん飲んでしまったらしい。
「シャルル、大丈夫か……?」
噎せるシャルルに声をかけたのは偶々隣にいた『魔剣殺しの』ヨルムンガンド(p3p002370)だ。
シャルルが落ち着いたのを見て、ヨルムンガンドは辺りを見回す。
屋台巡りをしていて感じるが、ここにはへんてこで面白い屋台がいっぱいだ。
「そうだ、2人も一緒に回って遊ばないか?」
そう誘ったヨルムンガンドはあれが気になる、と2人を金魚すくいの屋台へ連れて行く。
「ぽい?」
「不思議な名前ですね」
「魚釣りとは違うんだな」
魚を掬って『遊ぶ』という行為も新鮮だ。
3人はポイを興味深げに眺めた後、金魚へ視線を移した。
「あらま……ん~、なかなか難しいものね~……」
割れてしまった型抜きをぽりぽりと食べ、『夢色観光旅行』レスト・リゾート(p3p003959)はもう1度型抜きに挑戦する。
傍には召喚したリスが一緒だ。
「ここが難しそうなのよね~」
ふわふわとした口調で、しかし手元は真剣に針を動かしていく。
「……できたわ~! 景品ゲットね!」
綺麗に抜けた形にはしゃいだ声をあげ、店員に景品と交換してもらうレスト。ほら、とリスへ見せるとかくりと首を傾げられた。
「んふふ、そっくりでしょ~?」
もらった景品はリスのぬいぐるみ。召喚したリスに少し似ている様な気がして、取ってみたくなったのだ。
机に置かれたそれをリスは不思議そうに眺め、近付いてふんふんと匂いを嗅ぐ。
「気に入ってくれたら嬉しいわ~」
その様子をニコニコと眺めながら、レストは先ほど残った型の破片を口の中に放り込んだ。
「フフ、変わった食べ物の屋台が沢山あるね!」
「沢山。……食べてみたい!!」
いつもはぼうっとした様子の『狼少女』神埼 衣(p3p004263)も、食べ物を見てキラキラと瞳を輝かせている。
「衣君はどれを食べたいかな?」
『麗しの王子』クリスティアン=リクセト=エードルンド(p3p005082)の問いに衣は屋台を指で差す。
「あそこに出てる分、全部」
「そんなに食べるのかい!?」
驚きつつも、クリスティアンは店主に頼んで金を支払う。
あっちも、こっちもと屋台を回ってはおごってもらう衣だが、クリスティアンが買ってくれると言ったのだ。遠慮は必要あるまい。
2人は空いているベンチに腰かけ、買い上げた食べ物を食べ始める。
美味しいものも不味いものもあるが、よほどでなければどれも食べられる。
「美味しいかい?」
「ん。これ、クリスにあげる」
「いいのかい? ありがとう!」
差し出された菓子を笑顔で受け取り、食べるクリスティアン。しかし唐突にウッと顔を歪めた。
「不味い! うぇっ! これは何だい!?」
「ロシアンマシュマロ」
「ロシアンマシュマロ!?」
思わず言葉を反芻する。しかし淡々と告げた衣は「はい」と次の食べ物をクリスティアンへ。
「……全く、いたずらっ子だな君は」
苦笑しながら衣の頭を撫でると、衣はかくりと小さく首を傾げたのだった。
「うーん、お腹に溜まりそうなものがいいですよね……」
『砂漠の光』アグライア=O=フォーティス(p3p002314)は困った表情で屋台を見て回っていた。
まともに食べられそうなものが見つからないのだ。持参していたものもうっかり見つかり、取り上げられてしまっている。
そんなアグライアの鼻が、良い匂いを嗅ぎつけた。
「ここは……お好み焼きですか」
見た目も普通そうだ。唯一心配なのは『闇お好み焼き』という名前だが。
並んで買ったアグライアは店主に何の材料を使っているのか聞いてみる。
「え? 秘密だよ! 知っちゃ面白くないだろ?」
「えぇっ……間違ってもクラーケンとか使ってないですか?」
「食ってからのお楽しみさ!」
そんな会話をしていれば、心配にもなってくるもので。
(本当に食べられるのでしょうか……)
恐る恐る、口に運ぶと──。
「……すっぱい!?」
──食べられなくはない。けれど、見た目とのギャップが激しい。
一先ずゆっくり食べるべく、アグライアは開いているベンチへ向かった。
「わぁ……! まさにお祭り、って感じですね……!」
ね! と『Life is fragile』鴉羽・九鬼(p3p006158)が同意を求めたのは刀──そこに宿る『イン』という霊だ。
「射的や金魚すくい……どれもコツがあると聞きますが、上手くできるかなぁ……」
『さぁな。ほら、丁度そこに金魚の屋台があるんだからやってみればいいじゃないか』
インの言葉に視線を巡らせると、確かに金魚の水槽がある。
「が、頑張ります!」
ポイを握り締める九鬼。しかし何回試しても破れたポイは増えるが、お椀の中に金魚は増えない。
「うぅ……すぐに破れちゃいます……金魚さん、金魚さんはうちに来たくないですか……?」
涙目で金魚に話しかけ始めた九鬼。同情のような生暖かい視線が注がれる。
『おい、注目浴びてるぞ。一旦射的に行ってみたらどうだ?』
「射的……うぅ、金魚さん……」
名残惜し気にその場を立ち去る九鬼。射的を遊び終えたら、きっと金魚を家に向かえるべくまた来るのだろう。
「おぅ、リゲル! 俺もご同行させてもらって構わんかな!?」
「ああ。勿論」
『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)の言葉に『死力の聖剣』リゲル=アークライト(p3p000442)が頷く。
あれに行こう、と指差したのは『ロシアンたこ焼き』だ。
「1つは地獄の辛さらしいぜ」
「へぇ? 誰かと1個ずつ食ったら面白そうだな」
容器に入ったたこ焼きは6個。となると6人必要だ。
「あ、2人はどんなの買ったんだ?」
『魔動機仕掛けの好奇心』チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)が人込みから抜け出してきて2人に気づく。その両手には何やら買ったものの袋がたんまりと引っさげられていた。
「ロシアンたこ焼きだ。今1個ずつ食べて遊ぼうって話になっているんだが、人数が……あ!」
リゲルの視線が歩いて来たシャルルとヨルムンガンド、ノエルに向けられる。軽く手を振ると3人が顔を見合わせ、リゲル達の方へ近づいて来た。
シャルルがリゲルへ首を傾げる。
「どうしたの?」
「今、これを1個ずつ食べて遊ぼうって話になっていたんだ。一緒に食べないか?」
「ロシアンたこ焼きか……! 私はいいぞぉ」
ヨルムンガンドが目を輝かせて頷き、シャルルとノエルも頷く。
「おい。このタコ焼きイカゲソがはみ出してんだが」
「オイラなんて真っ黒だよ!?」
「よし、皆取ったな? それじゃあ、せーのっ」
リゲルの掛け声でたこ焼きを口に含む。
「甘いな……」
「私のはピリ辛、でしょうか?」
「ボクのは苦い……何の苦さだろ」
様々反応の中、シャルルは口を押さえて黙り込むリゲルへ視線を留めた。
赤い。顔も赤いけど耳まで真っ赤だ。
「お、リゲルが当たったか?」
ゴリョウがにやにやと告げる横で飲み物を勧めるノエル。形容しがたい色のジュースを見て、リゲルは勢いよく首を横へ振った。
その後も屋台制覇するぞ! と言わんばかりにあちこち巡る6人。
「夏季に嬉しい氷のジュース、略して夏季氷? ちょっと上手いこと言ったつもりか!?」
「ひえぇ、昆虫の佃煮だー!?」
純度の高いブロックアイスとシロップの出されるカキ(夏季)氷。中身はお楽しみ、な闇まんじゅう。
果てには『何でも飴をコーティングしちゃいました!』と言うようなくじ引き飴。
「ドリアンが入ってるのはどういうことだ!?」
「俺なんてスイカだぞ!? どうやって食べるんだよこれは!」
飴のコーティングを壊さないように持とうと苦戦していたリゲルは、小さな笑い声を聞いた気がして視線を巡らせた。
「シャルルさん、今笑ってた?」
「……、……いや。気のせいじゃないの?」
淡々と無表情に答えるシャルル。
答えるまでの間は、きっとツッコんではいけないものなのだ。
(笑ってくれたってことは、楽しめてるってことかな)
リゲルは小さく笑い、次の屋台を皆へ指し示した。
「……シャルル、何か名前は思いついたか?」
次の屋台へ向かっていく仲間達を後ろから追いかけながら、ヨルムンガンドはシャルルの手にした袋を見下ろす。
先ほどの金魚すくいでヨルムンガンドが取ってあげた金魚だ。ヨルムンガンドの手にも金魚の入った袋が下げられており、すでに『パックン』と名付けている。
「んー……うん。決まった」
「本当か……! どんな名前にしたんだ?」
シャルルは視線の高さへ金魚の袋を持ち上げ、その袋越しにリゲルの背中を見る。
「たこやき」
人を真っ赤にしてしまう食べ物の名を──本来なら真っ赤にならない食べ物だが──シャルルは金魚の名前として淡々と口にしたのだった。
「そういえば、おねーさんの名前は、なんて呼んだらいい?」
『夢棺』ミーシャ(p3p004225)の問いに『大罪七柱』ルクスリア・アスモデウス(p3p000518)は視線を向ける。
「魔王様でも良いし、呼びたければリアでもルクスでもよいぞ」
「じゃあ、リアさん。だね」
ミーシャはルクスリアの言葉に頷くと、あれに行きたいと射的を指差した。
勿論食べ物もあるけれど、お祭りだからできる事もしたい。
「ふふん、余に射的とな」
使わぬから下手だぞ、というルクスリアはその言葉通りというべきか、1発も当てることなく弾を使い切る。けれど、そのことに対して大した気落ちはない。
(支援特化だからな。相性が悪いのも当然と言えば当然)
「よし、ミーシャよ。頑張るがよいぞ」
銃を渡されたミーシャはクマのぬいぐるみを狙い、ルクスリアの声援を受けて引き金を引く。
「当たった……!」
ぽとり、と落ちた景品の札。目的の景品を貰い、ミーシャはルクスリアへ差し出した。
「リアさんの方が、似合いそうだから、プレゼント?」
「うむ、熊とな……」
ぬいぐるみと一緒にがおーっとポーズを取るルクスリア。それにふふっと笑ったミーシャはぬいぐるみでルクスリアの頬にキスをした。
また遊んでもらえたら嬉しいから、よろしくの挨拶だ。
「感謝の印だ」
ルクスリアはミーシャの頬に、優しくキスをし返した。
●空に咲く花
花火を見ようとする人込みに流されたシャルルは、先ほどまで共にいたイレギュラーズ達とはぐれたことに気づいた。
これが迷子か、と大した危機感もなくふらふら歩いていると、その後ろに影。
「わっ!!」
「わっ……!?」
耳元で発せられた声に目を丸くすると、『不死鳥の娘』アリソン・アーデント・ミッドフォード(p3p002351)はしてやったりと笑みを浮かべた。
「ふふ、楽しめてるかしら? お姉さんはお祭り楽しんでるわよ!」
「楽しめてるなら何より。ボクもまあ、楽しんでいる……のかな」
少しふわふわするような気持ち。戸惑いはするけど悪くはない。
「シャルルは花火って見たことあるかしら? 色とりどりの炎が空に咲く花みたいなの」
この炎の花も気にいるんじゃないかしら、とアリソンは近くの広場へシャルルを誘った。
やや人は多いが、ここでも花火は見えるはずだ。
「あ、シャルルさん達も花火を見に来たんですね!」
花火が上がるのを待っていた『闘技場サンドバッグ』ヨハン=レーム(p3p001117)が2人に手を振る。
シャルルはヨハンを見て首を傾げた。
「……屋台、回ってないの?」
「遊びの屋台は回りましたよ! 運がなくて絶対変なもの食べさせられると思ったので飲食は禁欲です!」
食べ物の袋を持ってない身軽な姿のヨハン。ちょろちょろと歩き回って人のリアクションを主に楽しんでいたのである。
「シャルルさんはどーでした? 楽しかったですか!」
「変なものも沢山飲み食いしたし、すごい顔してる人とかも見かけて……」
言葉の途中で、大きな音が腹に響いた。
「すごーい! 見て、あれが花火よ!」
目を輝かせて空を指し示すアリソン。シャルルは目を丸くして花火を見上げた。
浴衣を纏った『青混じる白狼』グレイル・テンペスタ(p3p001964)は花火に目を丸くした後、そっと視線を周りへ移した。
ちらほらといる人々は皆上を向いていて、周りを見るグレイルに気づいた様子はない。
(こういうの……海洋では……よくある、光景……なんだよね……?)
着慣れぬ浴衣、歩き慣れぬ祭り。文化の違いか。
けれど、この手元にあるものはよくある光景に含まれないと、グレイルは思う。
(…………飲みきれるかな……? まだ結構あるけど……)
『まぜまぜ☆ジュース』という屋台でドリンクを買ったものの、非常に形容し難い味である。
なぜ買ってしまったのか。なぜもっと小さいサイズがないか聞かなかったのか。
それは、祭りの雰囲気というやつかもしれない。
「怪しいたこ焼きですね……」
「そうかしら? ねぇ、折角だからどちらが当たりを引くか勝負しましょうよ?」
『レジーナ・カームバンクル』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)の言葉に『自称天使』ティアブラス(p3p004950)はいいでしょうと頷いた。
……結果、先にたこ焼きを食べたレジーナが顔を顰めたことで勝敗が決したわけだが、ティアブラスの千里眼(?)が働いたのかどうかは本人のみぞ知る。
そんなことをしている間に花火は次々と上がり、ティアブラスはほうと夜空を見上げた。
「案外美しいモノなのでございますね?」
「ふふ、そうね。花火を見るのはいつぶりかしら」
たーまやーと掛け声を上げるレジーナを、ティアブラスが不思議そうに見つめる。
「地球に伝わる花火の掛け声よ。ティアもどう?」
そうでございましたか、とティアブラスは頷いて同じように掛け声を上げた。
(美しい……けれど、同時に儚さを感じてしまいますね)
それはまるで、これからの物語を語る時と同じようだとティアブラスは思う。
「ねーリヴ、今の見た!? すげー!」
「ん……見てる……」
打ちあがる花火に声を上げながら、マリネ(p3p000221)とオリヴァー(p3p000222)は屋台で買い込んだ食べ物を口に運ぶ。
「まっず! ウケる、誰だしこんなん買ってきたの!」
あーしか! なんてケラケラ笑いながらゼリーの揚げ物を食べるマリネ。その隣でオリヴァーが小さく眉をひそめる。美味しくなかったらしい。
最も、美味しい食べ物なんてここにあるか疑問だが。
「リネ……何で、こんなの買ってきたの……」
「んー? だって楽しいじゃん!」
心なしか非難のこもった視線にマリネはからりと笑う。
久々の祭り、変な食べ物しか売ってない遊びばかりの祭り。幼馴染であるオリヴァーと一緒に食べて過ごせば楽しい思い出に変わるのだ。
「やべ、舌バカんなりそ」
闇氷製かき氷を食べてそんなことを呟くマリネ。オリヴァーは非難から一転、心配そうな視線を向けた。
(お腹、壊さないかな……)
自分も勿論だが、マリネも。祭りの終わった後が心配だ。
「けけ、こんなでも花火は綺麗なんだなーって思うと笑えてくるね」
マリネの言葉にオリヴァーは花火へ視線を向ける。
「ん……綺麗……でも、花火も……変なの、混じってるような」
変なお祭りに、変な花火。変なことばかりだけど楽しいし、綺麗だ。
「海、お祭り、花火は夏の風物詩だから、ちゃんとあって安心したよー」
『魔法少女』アリス・フィン・アーデルハイド(p3p005015)の言葉に桜咲 珠緒(p3p004426)は小さく首を傾げた。
「知識としては存じ上げておりますが、その……知る限り、冬の方が空が澄んで見やすいのではないでしょうか」
「あ、確かに! 何で夏なんだろうね?」
冬に花火って聞いたことないね、と『希望の蒼穹』アレクシア・アトリー・アバークロンビー(p3p004630)も首を傾げる。
「細かいことはいいんじゃね? こうやって集まって見れるんだしさ」
「そうだ、皆はどんな物を買ってくるんだろうって気になってたんだ!」
『鳶指』シラス(p3p004421)の言葉にアリスが思い出したというように手を合わせる。
「桜咲は、これを。あと、ぶらっどおれんじじゅーすという飲み物も買ってきました」
珠緒が出したのは(見た目)たこ焼きと赤いジュースだ。
「私はりんご飴! 途中で見つけたのは結構大きくて、他に探したら逆に小さくなっちゃった」
アレクシアが出したのは棒……ではなく、よくよく見れば棒の先端に赤子の握りこぶし程度の飴が絡まっている菓子。
「これ、りんご飴っていうか……その形を模したただの飴?」
「あはは、そーかも!」
シラスの指摘にアレクシアが笑って頷く。
「今回のお祭りって、遊び要素が多いよね」
それは遊び心だけでなく、パーティの罰ゲーム的な要素としても。
「アリス君は何を買ってきたの?」
「私? えっとねー、ロシアンたこ焼きに、ロシアンマシュマロでしょ? 後……」
アレクシアの言葉に買ってきたものを取りだすアリス。その言葉がはっと止まった。
「ロシアンばっかりだ!?」
「多いもんなー。あっ、そうだこれ見て! 俺がやったんだぜ!」
懐からシラスが出したのは型抜きの成功品。おお、と視線を集めるそれのどこが難しかっただとかを自慢して、最後にぱくりと口の中へ。
「みんなもやってみる? これが桜で、これが鳥、それと猫──」
──ドドォンッ!!
一際大きく上がった花火に4人は目を丸くして空を見上げた。
綺麗に花開いたそれは夜空へ溶けていき、また違う花が咲く。
「わぁっ……! 花火花火っ!」
「ねえ、凄くない? いまズンッって来たよ、お腹のとこ!」
「……はっ。気づくと転びそうなので、掴まっていてもよいでしょうか」
「うん、いいよー。何だっけ? 何か掛け声とかあるんだっけ?」
はしゃぐ者、ぽかんと空を見上げる者、掛け声を上げる者。
様々な反応の中、食べ歩きながら4人は花火を見上げたのだった。
「お、ここもなかなかよく見えるじゃん!」
瓜二つの顔をした2人の少年──『二重旋律』星影 霧玄(p3p004883)は坂を登りながら花火を見上げていた。
「確か、波の形してる花火もあったよねー!」
「さっき、海で遊んでた時に見えたのも綺麗だったよなぁ。お、上がった…ってなんだあのカタチは!?」
一瞬大きく赤く輝いた花火。すぐに形は崩れて言ったが、それはタコに見えたような。
はしゃぐ零夜に霧玄が微笑を浮かべた。
「この世界には面白い花火があるんだねー」
これならいくら見たって飽きない。祭りの屋台と同じだ。
「ああ、確かに変わった形ですね……」
『偽りの攻略者』エリーナ(p3p005250)は今しがた上がったタコ花火に目を丸くする。
変わった形の花火があると聞いていたが、成る程。
「何をどうすればあんな形になるのでしょう……?」
エリーナは肩に腰掛けていた小型の妖精と視線を交わし、同時にこてりと首を傾げた。
蝙蝠の翼をばさりと羽ばたかせ、『遍歴の騎士たるヴァンパイア』シャルロット・D・アヴァローナ(p3p002897)は手頃な木の枝へ舞い降りた。
人々の中に紛れて花火を見るのも悪くないが、こうして人より高い場所で見るのも悪くない。
(たーまやーというのがマナーだったかしら?)
なんて思いながら、時折打ちあがる変な形の花火にくすりと笑って。
「綺麗ね……」
人の営みが生んだ芸術。終わりがあるのは勿体ない気もするけれど、だからこそより一層綺麗なのだろうか。
花火が打ちあがり終わって、ぞろぞろと広場から人が引いていく。
「終わっちゃいましたねー」
「あっという間だったわね。……私も色とりどりの炎を出せたらなぁ」
アリソンの言葉に未だ空を見上げていたシャルルは視線を向ける。
その視線に気づいたアリソンは指先に炎を灯してみせた。
「混沌肯定で力は抑えられちゃってるけど……不死鳥の炎を持っているの。真っ赤な炎でも綺麗に見えるかしらねぇ」
親から受け継いだ力。この世界ではギフトとして発現した力。それを小さな花火のように操る指先に、シャルルは思わず口を開いた。
「……色づいた薔薇みたい。暖かくて、綺麗な色」
その言葉にアリソンがぱっと振り向くと、同時にシャルルが視線を逸らす。頬を指で掻く姿に、アリソンは小さく笑った。
●余韻も、また
ベンチでぼーっと座り込んだ『ぱん帝』セティア・レイス(p3p002263)。
(きょうはいろんなひとと、いっぱい遊んだ)
前は1人で家の中にいる方が絶対良かったし、それで満足だった。
けれど、今は少し違う。家の中で1人なのも好きだけれど、皆で遊ぶのも楽しくて。
「……ふしぎ」
心の声が無意識に口をついて出る。
この1年は本当に沢山の事があって、去年までそれは想像もできないことだった。
修行は今でも嫌いだけど、偶にはしないと──。
つらつらとそんなことを思いながら購入したジュースを飲んだセティア。目をはっと見開いた。
「たこやきをミキサーにかけてひやした味する」
どんな味だと思うかもしれないがそんな味なのだ。
(これ、だれかに飲んでほしい)
すっくと立ち上がったセティアは、この味を誰かとシェアすべく駆け出していった。
その先には──。
「……ひ、ひと……ぉぉい……」
『寂れてたら、招待なんざするわけないだろうよ?』
今にも消えそうな声と、揶揄うような声。『宿主』カウダ・インヴィディア(p3p001332)だ。
『そろそろ人も減ったんだ。見て回ったらどうだ?』
「……ほ……んと……?」
カウダの言葉にインヴィディアが改めて周りを見渡すと、確かに人はまばらとなってきている。
少なくとも、奥の方は皆が引き返してきているはずだろう。
「誘っ……導……は、お願……い……」
『りょ~かいだ、我が契約者殿……お?』
カウダの声と同時にインヴィディアも気付く。
「みつけた、シェア、できそうな人」
セティアが怪し気なドリンクを持って、彼女へ近づいていることに。
彼女らよりもう少し海岸に近い場所で。
「さて、ここからは……あれだ! 小銭を拾おう!」
『脳内お花畑犬』ロク(p3p005176)は帰る人々の邪魔にならないよう端に寄りながら、道に落ちたお金を拾っていた。
けれど、思ったよりお金は落ちていない。ロクは思わず舌打ちした。
「渋いなァ! もっと落としてよ、特にイレギュラーズ! そんな困ってないでしょー!!」
なんてぷりぷり怒りながら歩いていたロクは、ふと何か踏んづけた事に気づいた。闇に紛れて気づかなかったようだ。
「……ってお財布だ、大金だ! どどどどうしよう!! 落とし主さん困ってないの? ねえ!!」
しかもそれは金持ちが落としたらしく、入っているのは小銭だけではない。
見つかることのない落とし主にロクは決断した。
そうだ、ないないしよう。
こうして財布はないないされ、金銭不足に困る人々へお金を配って回るコヨーテの姿が見られたという。
「これが海洋のグルメってやつなのかな」
『面白いのばかりだったわね』
『人形使われ』レオン・カルラ(p3p000250)は──人形たちは子供に連れられながらそんな会話を。
連れられてるのは子供の方かもしれないが、それは些末な事だ。
本当に火を噴いてしまいそうなほど辛い『どらごん★たこやき』やひたすらマトモでない味の変化がある『かいぞくジュース』。闇まんじゅうなんて干された小魚の煮つけが入っていた。
ある人影に気づいた子供が立ち止まる。それを見て人形たちが声を上げた。
「あれってシャルルさん?」
『本当。今日のお礼、言わないとね』
たたたっと駆け寄る子供にシャルルも気付いて立ち止まる。ふわり、と薔薇の香りが漂った。
「どうしたの」
あのね、と子供が発音せずに口を動かして。
「『素敵な1日をありがとう!』」
2人の人形の言葉に目を丸くしたシャルル。お礼に、と渡された袋を見れば『ロシアンマシュマロ』と書かれていた。
指で1つ摘まんでしげしげと眺め、口の中に頬り込む。
人形達が美味しかったよ、と言っていたマシュマロはとても──甘すぎるくらいに──甘かった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。夏の良き思い出になりましたら幸いです。
ご参加頂き有難うございました。白紙を除いて全員描写しております。
尚、描写の関係で複数箇所に登場している場合がございます。ご確認ください。
シャルルも誘って頂き有難うございました。
それではまた、ご縁がございましたらよろしくお願い致します。
GMコメント
●祭り詳細
海洋の小さな島で行われる遊びオンリーなお祭りです。海沿いから島の中心にかけては緩い上り坂です。
輪投げや射的など縁日要素は勿論の事、遊びの要素としてまともでない飲食の屋台なら出ています。
※まともな飲食の屋台はありません。
例:ロシアンマシュマロ(まともな味は1つのみ)
まぜまぜ☆ジュース(数種類のドリンクをランダムで混ぜたもの)
……etc.
また、飲食物を持ち込むのは可能ですが見つからないように食べてください。
もし海洋国民(島の人)に見つかった場合、問答無用で取り上げられます。
●行き先タグ・概要
【屋台】
夕方~花火が始まるより少し前の時刻です。
1番屋台が盛り上がってます。どこも賑やかで、誰かと一緒なら手を繋ぐなどしないとはぐれてしまうでしょう。
思い切り遊びたい方はこちら。
【花火】
花火打ち上げ前~花火打ち上げ後の時刻です。
人の喧騒より大きな音を響かせ沢山の花火が上がります。偶にユニークなものもあるようです。
花火見るならここです。
【余韻】
花火終了~流れ解散(日付変更頃)の時刻です。
まだ屋台に向かっていく客もいますが、ちらほら帰り始めます。
屋台巡りラストスパート! な方や祭りの余韻に浸りたい方はどうぞ。
●シャルル
同行可能です。とはいえ複数人希望される方がいらっしゃる場合は、まとめて複数人で行動する場合もあります。
特に何もなければ適当に何かしてます。浴衣ではありません。
●プレイング注意事項
本シナリオはイベントシナリオです。軽めの描写となりますこと、全員の描写をお約束できない事をご了承ください。
アドリブの可否に関して、プレイングにアドリブ不可と明記がなければアドリブが入るものと思ってください。
同行者、あるいはグループタグは忘れずに。
●ご挨拶
愁と申します。
行き先タグに関しては前回イベシナ(蛍見の夜)同様、義務ではありません。
ちょっと予定が詰まっているので人数に迷ったのですが、30人でカップルさんとか一緒に入れなかったら悲しいな……ということで50人です。多少余裕あると思います(思いたいです)が、万が一もあるのでなるべく同タイミングでのご参加申請が良いと思います。
それではご縁がございましたら、よろしくお願い致します。
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