PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<Phantom Night2021>プローテウスの街角で

完了

参加者 : 48 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


『竜の領域』――険しい山岳に覆われたその場所へと繋がっている隠れ里クスィラスィア。
 現実世界では覇竜領域デザストルへと至るための竜骨の道の使用権利をフリアノンの亜竜種達へと許諾を得る段階にまで進んだこの道の前に一人の少女が立っている。

「今日はアナタたちを招きたいの」
 竜骨の道の入り口でそう微笑んだのは琉珂。亜竜種の少女である。
 その種族特徴である翼と角、そして体には竜鱗を散らした亜竜種の姫君はイレギュラーズに対して好意的な存在であった。
 何せ彼女にとっては想像もしていなかった外から無理矢理やってきた『トモダチ』なのだから。

 ――イベントデータをダウンロードします。

 Download:残り78%.
 イベントムービーを閲覧しますか? Yes/No.

「あのね、今日はハロウィンパーティーを開こうって話になったのよ!
 ファントムナイトって知っている? 可笑しな魔女のおかしな魔法。
 フリアノンではね、何時もは大きなドラゴンに化けて鱗の綺麗さを競い合っているだけだったの。
 けれど、そんなのって詰まらないでしょう? だから、皆を招いてパーティーをしてみたかったのよ」
 琉珂は嬉しそうににんまりと微笑んだ。彼女にとってはクスィラスィアの民は自身等を信奉するものでしかない。
 やっと出来た対等なる『トモダチ』を得たのだ。『外の文化』盛り沢山のパーティーを開きたいのだろう。
 飾り付けなどは余り得意ではないのだという彼女は適当に落ちていたモンスターの骨の上に蝋燭を立てていた。
 ……成程、愛らしいハロウィンの飾りからは大きくかけ離れている。
「可愛いのが良いのに」と頬を膨らませる琉珂は南瓜をイメージして掘ったのだという木彫りの玩具をイレギュラーズへと差し出した。
「わたし、今日はドラゴンに化けて鱗の綺麗さを競い合うイベントなんかやってる場合じゃないと思ったわ。
 あ……勿論、アナタたちがしたいならしてもいいけど。わたし、ドレスが着てみたいの。可愛い仮装がいいなって。
 ねえねえ、仮装をしてダンスパーティーにする? お外の食事を持ち込んでくれる? ケーキを食べてみたいの!
 あとねえ……ううん、何だって大歓迎よ。あ、でも、合い言葉は知ってるわよね? じゃあ、せーの!
 ――Trick or Treat!」

 ネクストでも行われるファントムナイト。そのイベントスペースに選ばれたのが『竜の領域』に存在するフリアノンだったのだろう。
 琉珂にとってはまたとないイレギュラーズとの逢瀬だ。
 道の使用権利を得たとは言え危険地帯である事には変わりなく、中々踏み入ることの難しい『竜の領域』だ。
 折角のイベントに乗じて、フリアノンでの一時を楽しんでみてはいかがだろうか?

GMコメント

 夏あかねです。R.O.Oでもファントムナイト!
 竜の領域『フリアノン』からお送りします。

※一行目:行動は冒頭に【1】【2】【3】【4】でお知らせください。
※二行目:ご同行者がいらっしゃる場合はお名前とIDではぐれないようにご指定ください。グループの場合は【タグ】でOKです。
※三行目:仮装の指定はSD参照でもOKです。

●ハロウィンナイト
 ファントムナイト(混沌世界&ネクストのハロウィン)は10/31-11/3まで続く不思議なお祭りです。
 フェアリーテイルと同じく住民達は11/4 0:00まで不思議な魔法に掛けられてその姿を『なりたいもの』に変貌させることが出来るのです!
 元からアバターで誰が誰か分らないって? なら、特別な衣装に身に纏って竜の領域で遊びましょう。
 『フリアノン』についてもっと詳しく! という方は夏あかねのラリーシナリオ『竜域踏破』の4章をご覧下さい。

【1】フリアノンの飾り付け&料理の準備
 竜の領域フリアノンは外界とはあまり交流のない場所です。
 安全ルートである『竜骨の道』を辿って到着した場所は巨大な竜の骨で作られた集落です。
 琉珂が適当に拾ってきたワイバーンやモンスターの頭蓋骨に蝋燭を立てて飾り付けをしていますがホラーチックで可愛さとはほど遠いようです。一緒にパーティーの飾り付けや料理の準備をしてあげるととっても喜ぶでしょう。
 外の食事の用意なども竜骨の道から運んでくることも可能です。ゲーム内ですので、色々と融通が利くようです。

【2】フリアノンのダンスパーティー&食事会
 琉珂がやってみたかったこと。フリアノンの中にある王座の間でダンスパーティーを楽しみましょう。
 琉珂はBGMのご準備が出来ていないため骨を叩いてドラムにするか!?と考えていますので楽器隊も大募集です。
 またはフリアノンでのお食事を堪能しましょう。皆で準備した食事でも良いですし、現地の食事を楽しむのも良いでしょう。
 亜竜種達も食事に集まっているようですね。もしかするとこの中にいる亜竜種が現実世界にも居たりして……?
 現実世界とは違ったダンスパーティーを楽しんでみませんか?

【3】フリアノンの探索
 ハロウィンイベントに乗じて普段とはちょっと様子の違うフリアノンを探索してみませんか。
 集落内は安全ですので、ワイバーンの卵やオルドネウム達との交流が可能です。
 また、ハロウィンイベントとして『竜に変身して鱗の美しさを競う』イベントも行われているようです……。

【4】その他
 当てはまらないけど此れがやりたいという方へ……。
 ご希望にお応えできなかった場合は申し訳ありません。

●お召し物について
 仮装イラストを有しており参考にして欲しい場合はイラストのご指定を行って下さい。
 例:ファーリの場合 『仮装/かんが揶揄IL』

●備考
 当シナリオでは参加者全員にファントムナイトイベントをクリアしたものとして記念品アイテム『???』が配布されます。
 クエストクリアで何が手に入るかはあとのお楽しみです。

●NPC
 竜の領域に存在するNPC
 ・『竜王』ベルゼー(ネクストでは冠位魔種ではありません。情報も引き出せません)
 ・『亜竜の姫』琉珂
 ・『微睡竜』オルドネウム(おねむくん)
 とは交流することが可能です。

 フリアノンへの道は安全が確立されておりますので、ご安心下さい。
 このシナリオは『イベント時空』ですのでR.O.Oの現状は一端置いといてお楽しみ下さい。

 ・夏あかねのNPCはMiss (p3y000214)、ファーリ (p3y000006)、紅宵満月 (p3y000155)あたりはいます。
 ・無制限イベントシナリオであるために【R.O.Oのステータスシートを有するNPC】をお誘い頂くことも可能です。お手紙などでお誘いしてあげて下さいね!

  • <Phantom Night2021>プローテウスの街角で完了
  • GM名夏あかね
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年11月18日 22時35分
  • 参加人数48/∞人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 48 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(48人)

ヴァリフィルド(p3x000072)
悪食竜
グレイシア(p3x000111)
世界の意思の代行者
Siki(p3x000229)
また、いつか
すあま(p3x000271)
きうりキラー
ルチアナ(p3x000291)
聖女
梨尾(p3x000561)
不転の境界
リュート(p3x000684)
竜は誓約を違えず
ロード(p3x000788)
ホシガリ
ナハトスター・ウィッシュ・ねこ(p3x000916)
叫ぶ流星
スティア(p3x001034)
天真爛漫
ルルリ(p3x001317)
闇のしらべ
Teth=Steiner(p3x002831)
Lightning-Magus
エイル・サカヅキ(p3x004400)
???のアバター
シラス(p3x004421)
竜空
アレクシア(p3x004630)
蒼を穿つ
吹雪(p3x004727)
氷神
ジェック(p3x004755)
花冠の約束
アウラ(p3x005065)
Reisender
花楓院萌火(p3x006098)
アルコ空団“風纏いの踊り子”
タント(p3x006204)
きらめくおねえさん
九重ツルギ(p3x007105)
殉教者
リュカ・ファブニル(p3x007268)
運命砕
真読・流雨(p3x007296)
飢餓する
にゃこらす(p3x007576)
怪異狩り
リュティス(p3x007926)
黒狼の従者
陽炎(p3x007949)
影絵舞台
ベネディクト・ファブニル(p3x008160)
災禍の竜血
カノン(p3x008357)
仮想世界の冒険者
三月うさぎてゃん(p3x008551)
友に捧げた護曲
スイッチ(p3x008566)
機翼疾駆
ルイン(p3x008578)
世界終焉機構最終番
イズル(p3x008599)
夜告鳥の幻影
Λ(p3x008609)
希望の穿光
現場・ネイコ(p3x008689)
ご安全に!プリンセス
ビャクダン(p3x008813)
複羽金剛
アイシス(p3x008820)
アイス・ローズ
指差・ヨシカ(p3x009033)
プリンセスセレナーデ
ウーティス(p3x009093)
無名騎士
アマト(p3x009185)
うさぎははねる
エーミール(p3x009344)
夕焼けを穿つヒト
ファトゥ(p3x009345)
見えない光
ねこ・もふもふ・ぎふと(p3x009413)
しろねこぎふと
アズハ(p3x009471)
青き調和
ろおもこね・こみお(p3x009481)
ねこ小隊
ルージュ(p3x009532)
絶対妹黙示録
天狐(p3x009798)
うどんの神
フィノア・ミラ(p3x010036)
幻想謳歌
みけるん(p3x010041)
彷徨 みけるのアバター

サポートNPC一覧(3人)

ファーリ(p3y000006)
紅宵満月(p3y000155)
Miss(p3y000214)
Doughnut!

リプレイ


「フリアノンでハロウィン、ダンスパーティー……良いわね! 素敵だわ!」
 瞳をキラリと輝かせたのはフィノア・ミラ。琉珂が「そうでしょう!?」と喜びを滲ませてイレギュラーズをパーティーホール(と、言いながらも飾り付けは悲惨なものだ)に招き入れる。
「頭蓋骨とは、おどろおどろしいですね。まあ、でも、意匠としてはあってますよ。竜のおひいさん」
 語りかけるビャクダンは「せっかくの祭り、そりゃぁ楽しまねぇと損でしょう」と頷いた。彼女にとっても良い思い出になれば良い。今まで領域に引きこもることが多かったのだ。外に憧れる気持ちは悪いものではない筈だ。
「飾り付けてあった頭蓋骨もせっかくだし活かしたいですね。
 いっそ頭蓋骨はカボチャみたいなオレンジ色に塗っちまえばいいんでは?
 そんで魔女帽子被せたりすれば、だいぶファントムナイトらしくねぇですかい?」
「成程ぉ……ま、まさか、貴方、飾り付けのプロなのかしら!?」
 瞳を輝かせた琉珂に其処まで喜ばれるとは思わなかったとビャクタンは小さく笑う。
「あとは紐に飾り付けて吊り下げるやつ、なんて言いましたっけね……ああそうだガーランド、あれなら壁でもいいし、天井や柱の間、どんな場所でも飾れて華やかになりやすよ」
「ふんふん。ならば食材に物資! パーティーを華やかにするために準備をスルものを運ばねばならぬのじゃな!
 最高の舞台には最高の食事、そして良き交流となるように気合を入れて接していこうぞ」
 胸を張った天狐。美食家魂を輝かせ、荷を運ぶ彼女に「ありがとう~」と微笑んだのはナハトスター・ウィッシュ・ねこ。
 星の魔法少年、ナハトスター☆
 煌めく笑顔と共に今日はハロウィンらしい魔法使い風にゃんこ――ではあるものの、何時もと変わらないからこそハロウィン風に飾り付けをして……。
 いざ、フリアノン!
「フリアノン、久しぶりだなぁ。ハロウィンも楽しみ……って、こわーい!?」
 頭蓋骨が飾られていた。天狐と共に荷を運んできたナハトスターの目の前にはおどろおどろしい空間が広がっている。
「飾り付けはホラーって感じだから、イレギュラーズの皆も受け入れやすいかわいらしさを足そうかな☆
 ハロウィン風な可愛い猫にお星さま、カボチャやコウモリ等、色んな飾りを作って壁等に飾るよ☆
 ハロウィン風な可愛い竜の飾り……は亜竜種さん達的に大丈夫かな?」
「竜の飾り! ええ、ええ、見てみたい!」
 うきうきとナハトスターの手許を覗き込む琉珂は「桃色のものはある? それ、琉珂って描いて」と心を躍らせている。
 また来年も一緒に過したいから。ハロウィンが楽しいものであると彼女にも知って欲しいのだ。
 ぴょんぴょこぴょんぴょん。黒ウサギの魔法使いであるルインは『自分』が何を思ってこの姿になったかは分らないが可愛いだろうと跳ね上がる。
「料理の方はこの姿じゃ毛が混ざっちゃうかもだしね! ……あと食材に間違えられそう」
「確かに……」
「と、とにかくこの姿みたいにカワイイ飾り付けだよね! じゃあ高い所から星の飾りを吊るそうよ!
 単純だけどそれだけでもすっごく可愛くなるはずだよね!
 あとは琉珂ちゃんが持ってきた頭蓋骨にピンク色とかを塗りって小物として使うとかいいよね!
 あるものは楽しく使うが吉だよね! さあ、じゃんじゃん飾るよ!」
 琉可がウサギって美味しいわよね、と呟いたのはルインは知らないふりをした――
「ねえ、琉可さん。ドレスが着てみたいのよね?
 良いわよね! 不思議な魔法に掛けられて…ができるみたいだからわたしも素敵で可愛らしいドレス姿に変身したの!」
 微笑んだフィノアに琉珂は「いいなあ」とぱちりと瞬いた。
 そんな彼女の肩を掴んだのはスティア。亜竜種の仮装でツノや翼を生やした彼女は「リュカさん、今日はお誘いありがとー!」と微笑んだ。
 悪魔的な仮装、とエイル・サカヅキは自身の仮装を例えた。皆でドラゴンなのだと云えばシラスは「ドラゴン」と呟いた。
「ってことでリュカるんトリトリ~! これナウなヤングにバカウケな白いたい焼き」
 いつメンの4人がこっちを見ているのは――気にしない。気にしちゃいけないのだ。中の人バレは危険なのだから。
 天使の仮装に角を添えて。欲張りスタイルのアレクシアは視線を逸らしたエイルを見つめてくすりと笑う。
「お久しぶりね、遊びに来たわよリュカさん。あぁ、今日の挨拶はこれだったわね、Trick or Treat!
 今回はちゃんと外のお菓子も持ってきているわよ、どうぞ。海の向こうのヒイズルのお饅頭なのだけれど、お口に合うかしら?」
 微笑む吹雪も亜竜種をイメージして。彼女から菓子を受け取って微笑む琉珂へと観測隊からは別のプレゼント――そう。
「あぁ、それと素敵な着物も見つけたから一緒に持ってきたのよ。ドレスではないけれど、1度着てみる気はないかしら?」
「そうそう。お礼というわけじゃないけれど、今日は色々と衣装を持ってきたよ!
 パーティーに合わせて少し綺羅びやかなドレスがいいかな?それとも、ちょっと淑やかな感じがいいかなあ?」
 アレクシアはフィノアにウィンクを。魔法ならば、観測隊がかけてあげるのだと云うように彼女はスティアを呼んだ。
「ドレスを着てみたいってことだったから何着か持ってきたよ。
 髪の色に近い色に合わせるか、目の色に合わせるかで迷っちゃったから。気に入るのがあればいいけど……。
 せっかくだし、お着替えタイムってことで試着してみたいかな? 吹雪さんの持ってきてくれた着物も素敵だし、色々試してみようよ!」
 皆も、とスティアが呼べば琉珂が「いいのかしら」と頬を赤く染めて緊張したように五人を見遣る。
「女性陣に任せて俺は飾り付けをするよ。デコるのはそこのギャルが……いや、一体何者なんだろう。エイルは化粧が得意なんだよな?」
「もち! めかしこんだ皆には、ギャルが思いっきりパーリナイなメイクを!
 シャドウはラメ強めでつけまも乗せて、目の下にアタシとおそろなハートを書いて、っと――スティるん。動いちゃダメだかんね、はい!」
「ががーん」
 あのデコっている彼女。酒が好きで……「あ!」とシラスが叫んだのはエイルは知らんぷりをして。
 可愛らしく、若葉のような色彩のドレスを選んだ琉珂はエイルの手によってデコられていく。
 その様子を眺めるだけで楽しいと吹雪はくすりと微笑んでから立ち上がった。
「それと、パーティーを開催するんだったわね。外から食材は持ってきたのだけれど、調理場を貸して貰えるかしら?
 せっかくだから一緒にお料理に挑戦してみるのはどうかしら。ここの人達の好みに合いそうな味付けも教えてちょうだい」
「あ! 料理するなら私も混ぜて貰おうかな。皆でわいわいやった方が楽しそうだしね。
 それにせっかくのパーティーだから色んな種類の量があった方が喜ぶよね? 少なくても私は嬉しいー!」
 ね、ね、と飛び込んでいこうとするスティアにアレクシアは慌てたように手を伸した。
「……スティア君はちょっと待って待って! せめてパワー半分で! ああーだ、だめかも……」
「ス、スティるん……いやこの賑わいならイケるか!? 止めるべきか止めないべきかうわー!」
 アレクシアとエイルの前をのしのしと歩いたシラスは鍛えぬかた竜の胃袋を示したのだった。
「かかってきな」
 ――負けない!
 シラスとスティアの戦いを眺めながら琉珂がけらけらと笑い続ける。山盛りの料理をつまみ食いしてフィノアは「琉珂さん」と手招いた。
「音楽に合わせて? ハロウィン風に? 楽しく踊りましょ! 他の亜竜種さん達とも楽しくダンスできると嬉しいわ!
 さあ、トリックオアトリート――トリックは本当にささやかな害無きいたずらだけであるように」
 手を取り合ってホールへと飛び出せば、それだけで心が躍る。そのダンスはちょっぴり不思議なものだけど。
 楽しいと笑いながら、隅へと戻る琉珂へとリュカ・ファブニルは「琉珂」と声を掛けた。
「よぉ、元気してたか? ちと色々あってこっちに長居する羽目になったから遊びに来たぜ」
「ええ。元気よ。リュカさんは?」
 同じ名前。それだけで彼女は呼ぶだけで面白いのだと腹を抱える。瞬いた若葉の色にリュカは「元気だ」と返して手を差し伸べた。
「折角だし踊ってみるか? そんな上手い訳じゃねえが多少はやれるぜ。
 竜になって鱗を見せ合うのもめっちゃ気になるんだが、女性のエスコートがあるならそっち優先ってな」
 謙遜でも無くダンスは得手でも不得手でも無い。そんなリュカがリードをしようと誘えば琉珂は「どうしようかしら?」と囁いて。
「それでも俺みたいな男前と踊れるんだからな。多少の不出来は勘弁してくれ」
「ええ。色男と踊れるなら、儲けものよね」
 手を取って、踊り出す。次は、穏やかなリズムに乗せて――
「あぁそうだ。俺達のニセモンが出てるみたいだから気をつけろよ」
 リュカの囁きに琉珂は不思議そうに瞬いた。偽物。其れと相対する日が来たら、何と言おうか。取りあえず顔面を『一発殴る』と彼女は笑った。


「みー……こみお、フリアノンにまた来れるの嬉しいですにゃ」
 そう呟いたのはろおもこね・こみお。こみおはパン屋さんである。竜骨の道を辿って運ばれてきた材料をこの場で調理するのが目的だ。
「おいしいパンを色々沢山用意しますにゃ他にも料理がいるならシチューとか作りますにゃ。
 ハロウィンらしいかぼちゃなパンや、いちごジャムを使ったパン……
 ハロウィンはお菓子が要るから。クッキーやチョコ、キャンディなども用意しますにゃ」
 不思議な魔法に掛けられてこみおは尾を揺らがせながらハロウィンパン屋さんのコスチュームへと身を包んだ。その体を包む『コックさん』コスチュームには可愛らしいコウモリのアクセサリーなどが飾られている。
「パーティー中でも足りなくなったら何か作りますにゃ。
 皆楽しめてたら嬉しいですにゃ。亜竜種さん達とまた一緒にお祭り楽しめたら嬉しいですにゃー!」
「はい。アマトもそうおもいます!」
 がおーと狼さんの格好をしたアマトは琉珂達に何ガス気化の聞き込みを。折角ならば好きなものを目の前で『ぽんっ』と出して「おいしくなあれ」のおまじないを添えてあげたいのである。
 ハロウィンらしくパンプキンプリンタルトを作るという梨尾。そのレシピに耳を傾けるのは料理好きだという亜竜種か。
「では。まずビスケットを袋に入れて細かく砕き、バターを入れてもみ込み、タルトの型にしき、少し放置」
「放置して?」
「そう、それから。170度のオーブンで15分焼く。冷蔵庫――はないか。なら、どこか暗所に。
 南瓜の種とワタを取り除き、一口大に切って皮を切り落とす。レンジは無いので蒸し器などで柔らかくなるまで蒸して」
「レンジって?」
「練達にあるんだ。で、それを熱いうちに裏ごし。ボウルに移し、生クリームを少しずつ加えてなめらかになるまで混ぜ合わす。
 別のボウルに卵と砂糖を入れ、泡立て器でよくすり混ぜ、裏ごしした南瓜を少しずつ加えてよく混ぜ合わせる。
 鍋に牛乳を入れて弱火で沸騰直前まで温めたら……」
 メモをとり亜竜種に梨尾は小さく笑った。
「先程混ぜ合わせたものを少しずつ加えて混ぜ合わせ、全体がなじんだら裏ごし。焼けたタルト生地に流し入れ、160℃のオーブンで40〜50分間焼く。
 中心に竹串を刺して生地がついてこなければ、オーブンから取り出して粗熱を取る。
 口を開けたお化け型の紙を置き、口の部分にココアパウダーをかけてハロウィンらしく」
「ほうほう!」
 大きく頷く彼女に梨尾は血曰く笑った。タルトならフリアノンで作りやすいはずだと云う彼に亜竜種は感謝するように微笑んだ。
「さて……ハロウィンのせいか、以前訪れた時と比べて賑やかに感じるな」
 呟いたグレイシアに「祭りで浮かれる『魔王』ってどうなのよ」とルチアナは呟いた。今日は『大人』の彼女なのだろう。
 魔王らしからぬグレイシアに慣れ来た勇者はそれでも違和感は拭えないと言った様子だろうか。
「『魔王』という存在に偏見を感じるが……統治者であれば、賑やかに過ごす人々の姿は好ましいものだろう。何も、人間を襲うだけが魔王の仕事でもない」
「……統治者? ……ああ、そう……ね。アナタはアナタなりに国を治めていたのよね」
 魔物を統べる長の立場を失念していたとルチアナは呟いた。ルチアナは彼を斃す為に生まれた。故に、その立場以外はどうでも良かったのだ。
「もっとも、此方ではただの喫茶店のマスターに過ぎんがな。気楽に好きな事を出来ると言う点では、今の方が……」
「……アナタは、還りたいの?王として住まっていた世界へ」
「此方に来てすぐは、当然のように戻る事を考えていたが……」
 歩き出した少女の背中を追いかける。グレイシアとルチアナは同じ事を考えた――あの世界は勇者と魔王を争わせる。それが世界の法則だからだ。
 ならば、二人が無き場所に新たな勇者と魔王が存在していたら?
 喧噪の中、二人は己の立ち位置を見失ったとでも言うように立ち竦む。
 その前を走り抜けていく亜竜種の笑い声など、遠く――

「いやしかし。まさか、竜の領域ン中でハロウィンを楽しめるとはな。こいつはイイ機会だ。
 リアルでは味わう機会が全くない、竜域ならではの料理ってモンを堪能させて貰おうじゃねーか!」
 並んだ料理を眺めながらTeth=Steinerは小さく笑った。流石に初見だと味わいすら分らない。適当な亜竜種を捕まえて教えて貰ったのは良く分からないモンスターのホホ肉煮込み、だそうだ。
「ん? ああ、折角だから、噂の琉珂嬢にも絡みにいくとすっか!」
 そう笑ったTethに「お呼び?」と彼女は微笑んだ。
「勿論、やっぱ、美少女と食う飯は美味いしな」
「ええ。ここよりお外の料理の方が美味しいでしょう?」
「ぁん、外の世界の料理? 一応持ってきてるぜ。ただ、こいつは俺様の大好物『激辛チリドッグ』だ。無理して食うなよ? 火ぃ吹くぞ?」
「ッ―――――――!!!!」
 ――Tethの言葉むなしく琉珂は何も聞いていないのであった。
 そんな様子を眺めていたタントはくすくすと笑ってからジェックの手を取った。
「あれが美味しいらしいわねぇ。わたくしのなりたいものは……たぁくさんお酒を飲んで、だらーっとしたおねえさん!
 今日は大人の楽しみをいーっぱい味わっちゃうわよぉ! とーっても楽しいわよぉ」
「ん。姉様、可愛い。すてき。アタシのなりたいものは……思い浮かばなかったから、お店の人にお任せしちゃった。
 姉様の言うことを聞く、姉様だけのオートマン。ふふ、似合う?」
「きゃーん! オートマトン! 可愛いわぁ! 背中のネジを巻くのかしら? 可愛いわねぇ。
 それじゃ、フリアノンの珍しいお酒とおつまみを持ってきて下さる? はぁー可愛い……」
 うっとりと微笑んだタントに頷いて、オートマン・ジェックは近くの亜竜種に「ねぇねぇ、お酒が好きな人が喜ぶお酒ってある?」と問いかけた。
 料理やお酒を教えて貰って、おつかいを行うジェックを亜竜種ははらはらとした様子で見守っている。
 タントは彼に大丈夫だと手を振った。ジェックには気付かれないように合図をすれば亜竜種はこくりと頷いて。
「ありがとうジェックちゃん!」
「ん……これとか良い匂い。美味しそうだった」
「いい子のご褒美に、はい、あーん! 美味しいものは半分こしましょ!」
「……アタシにもくれるの? ……嬉しい。美味しい」
 それじゃあ、あとは大人の楽しみ――そう酒を喉へと落とした彼女の目がぐるりと回る。
 視界が暗転した。それとも、ああ。これが酩酊。いや、そんなことを言っている場合では――
「おき、られ、にゃい……ジェックちゃん、こんどはわたくしをはこんでくれりゅとうれしぃわぁ……」
「あ、あれ? 姉様? ど、どうしたの? お酒強すぎた!? わ、わわ……い、今休憩室に連れて行くから……!」
 慌てるジェックの許へと先程まで二人を眺めていた亜竜種が走ってきたのは――ある意味で幸運だったのかもしれないのだ。
「おやおや?」
「ああ、みゃーちゃん。今の体は猫だから踊れねぇしなあ。なんでまぁ裏方で場を盛り上げてやるさ」
 にゃこらすが手を上げればMissはハイタッチでもする勢いでぴょんと跳ねた。一緒に楽器隊を手伝おうという誘いに彼女は「いいですよぉ~~!」と微笑んでいる。
「つーわけで楽器隊で俺はフィドルでも弾いてやるさ。なんでフィドルかって? そりゃ猫が奏でる楽器っつったらフィドルだろ」
「そんなもんですかねぇ?」
「弾き方はえーっと。爪に引っ掛けてポロロンとだな……。まぁなんとかなる!!
 出来そうにねぇなら人の姿に化ける!! だからBGMは任せときな。ポロロンポロロンニャーニャーってね。
 あ、みゃーちゃんも踊りたかったりしたかね。それなら申し訳ねぇなぁ」
「いーえ、踊るときはにゃこらすさんとニャーニャー踊りますからねぇ!」
 良いでしょうと横に腰掛けたMissをちらっと見てからにゃこらすは「なんでカスタネット」と呟いたのだった。


「この格好であれば社交の場でも問題ない。二足歩行でダンスも可能である。そもそも琉珂は踊り方は知っているのか?」
「あなたは?」
「我は仕事柄心得があるというのもあるが、どこぞの令嬢の練習に付き合わされたりもしたので手解きも出来なくはない。
 基本は男側がリードするものであるし、それに合わせれば形にはなるであろう」
「お相手がいるの? それって、恋人?」
「――ではないが」
 ヴァリフィルドがそっと手を取れば琉珂は興味深そうに彼を見遣ってけらけらと笑う。色恋のはなしにも飢えているお年頃か。
 ダンスの作法を教えることは出来るというヴァリフィルドに手を取られ琉珂は慣れないドレスでホールへともう一度歩を進める。
「……その代わりと言ってはなんだが、フリアノンでの亜竜種の作法だとか振る舞いを教えて貰えぬだろうか。
 このなりで下手なことをすると、その……勘違いする者もいるであろうしな。
 今も何やら視線が刺さっている気がするが。きっと気のせいであろう、うむ」
「大丈夫よ。此処では特別な作法なんて無いわ。それに、貴方が旅人か、それとも同胞か、確かめているだけよ」
 可笑しそうに笑った琉珂がターンを一つ、その手を取ったのは男装姿のSiki。ふざけて猫の仮面を着けて見せた琉珂は宛ら仮面舞踏会。
 男装姿の彼女に「お嬢さん、よければ私と踊ってみませんか?」とSikiは微笑んだ。
「ええ、よろこんで」
 手を取って。めくるめくダンスパーティへ。琉珂のお願いは華やかな音楽と美味しい料理、それからダンスで果たされる。
 彼女の手を取ってSikiはにまりと微笑んで。
「琉珂はどんなダンスが好き? 私はダンスの経験が多くはないけれど、君と一緒ならきっと楽しいから、だから一緒に踊ってよ、琉珂」
「ええ、勿論」
「琉珂はこの後、今日はやってみたいことはある? 私はー……ふふ、踊り終わったら一緒にご飯が食べたいな!」
「私もそうかも。皆が料理をしてくれるから、おなかが空いちゃうものね」
 目を合わせれば、可笑しくなって笑い合う。
 ふと視線を送ればダンスパーティーを楽しみにしていたのだと花楓院萌火が踊り出す。折角ダンサーなのだから、ダンスで皆を盛り上げたい。
 皆と合わせて踊るだけで萌火は楽しくなって踊り出す。ホールの中心で、彼女が舞う音楽はアズハの演奏によるもの。
「ああ、久しぶり、琉珂さん! また招いてもらえるなんて嬉しいよ。
 ……その、ドラゴンに化けて鱗を競うってのも気になるけど……今日の俺は楽器隊だ。楽器の演奏でパーティーを盛り上げるよ!」
 だから、聞いていっておくれとアズハは猫の仮装姿で竜の骨で楽器を作る。フリアノンの音の響きは不思議で新鮮だ。
 其処に会う、余った骨で作った楽器は顎の骨を叩いてみたり、肋骨を打ち鳴らしたりと奇想天外だ。
「頑張れば骨で笛も作れるらしい。それは、また今度――リズムキープはお任せあれ。奏でて踊って、楽しもう!」
 素敵な音色を聞きながら三月うさぎてゃんは微笑んだ。竜種の歌い手としての仮装をした三月うさぎてゃんは胸を張って「曲を用意したんです」と琉珂へと告げる。
「メインはクラシカルに。まぜこぜなダンスパーティーっていうのならば、明るいようなものも入れてよさそうならポップスとかも入れて、"ストリートダンス"を促してもいいかも……? フリアノンを讃えるような歌詞も入れたいですね」
「ほう」
 ベルゼーが不思議そうに眺めれば、それだけで三月うさぎてゃんは心が躍った。
「琉珂さん、ベルゼーさま。曲のリクエストはありますか……? どんなものでも歌いこなして見せますよ! だって私はフリアノンの歌い手ですもの!」
 歌うたいとして認められたのならば。この声を響かせたい。そう願う彼女の提案する曲を楽器隊へと指示をして。
 カノンはこくりと頷いた。可愛らしいヴァンパイアの仮装に身を包んだ彼女は「まさかフリアノンでパーティーが出来るなんて!」と心を躍らせる。
 この機会を逃していては冒険者の名が廃る。手伝えるところから参加をしようと竜の『うろコン』は後で観戦に行くことを決めて楽器を奏でた。
 レリックインベントリーから取り出したリュートを奏でる。冒険譚を語る技能を活かせばテンポが上がるようなBGMだってお手の物。
 暫く弾いたら次の誰かに。そうして響き渡る音楽がフリアノンを彩り盛り上げ続けた。
 狼男の姿になって、ベネディクト・ファブニルはリュティスを誘った。常通りの彼女は不思議そうに周囲を見回している。
「今年のファントムナイトはR.O.Oの中で祝う事になろうとは。去年は展望台で夜景を眺めたのだったか、もう一年と経つのだな」
「はい。まだ状況は変わっていないとはいえ、一緒にお祝いすることができて良かったです。
 しかしフリアノンで行うことになるとは思ってもみませんでした……頑張った私達へのご褒美なのかもしれません」
 そんなリュティスへとベネディクトは大きく頷いた。状況は特殊でも共に過ごせるのならば喜ばしい。
「実はリュティスには協力して欲しい事がある。亜竜種達と仲良くなりたいんだが、そこで君の料理の腕前を借りたい。
 現実側に彼らも居るかも知れない、少しでも彼らを知っておきたいんだ。……それに、俺の自慢の従者を彼らに紹介も出来るだろう?」
「……ふむ、そのように仰られずとも御主人様の役に立てるのであればなんなりと申し付けて頂ければ」
 リュティスの手料理をバスケットに詰め込んでダンスホールで踊る人々への挨拶へと巡る。
「リュティスと申します。皆様、よろしくお願い致します。」
「俺はベネディクトだ」
 声を掛ければ亜竜種は緊張したように背筋を伸した。様々な鱗を持つ彼らは眺めているだけでも仮装を見ているようで何処か可笑しな気持ちになる。
「ふっふっふ、私が今日の日の為に色んなトコで集めてた食事アイテムを解禁する時が来たみたいだねっ!」
 胸を張った現場・ネイコは可愛らしいキョンシーの格好に身を包む。
「琉珂さんが外の食事に興味があるって言ってたからさ。
 今回のパーティーに合わせて私が今までの冒険で美味しいって感じたお店の料理とか、お菓子とかを色々と買い集めて来てみたんだっ!」
 じゃーん、どさどさ。
 勢いよくお菓子や料理の入った弁当箱を取り出したネイコに踊りの休憩中の琉珂はぱちりと瞬いた。
「あ、アハハ……その、ちょっと張り切って買いすぎちゃったかな?
 でも、他の亜竜種の人達も呼んで皆で食べれば大丈夫だよね。食事って言うのは皆で食べればもっと美味しくなるものだしさっ!」
「ふふ。でもね、こんなこと言うと驚くかしら? これ、おじさまの前菜より少ない」
 ネイコは「おじさますごいね」と可笑しそうに笑って見せた。噂をされたベルゼーがくしゃみをして三月うさぎてゃんに心配されたのは、また別の話である。
「ご機嫌はいかがでしょうか? マドモアゼル。よろしければボクと一曲、踊ってくれませんか?」
 貴族青年っぽく振る舞って、爪をわきわきさせたΛはハーフマスクをつけた貴族青年兼切り裂き魔。
 そんなΛに琉珂は「ええ、よろこんで」と微笑んだ。友好のしるしなのだと、ダンスに誘えば彼女は慣れてきたのかΛと共に軽やかに踊り出す。
「楽しい素敵な一時を提供してくれてありがとうボクの力で良ければいつでも力になるよ」
 Λへと琉珂は嬉しいと微笑んだ。けれど、屹度――「私が力になりに行くから。そのときは歓迎してね?」
 微笑んだ琉珂を見付けてアイシスは近寄って行く。ダンスパーティーの音楽がイレギュラーズによって良き者に変わって言っていることは確かだがアイドルが黙っていられる訳ではない。
「所で琉珂さん、アイドルに興味がありませんか? 貴方からアイドルの素養が感じられますのですがよければ一緒に歌いませんか?」
「わ、私がアイドル……?」
 出来るのかしらと不安げな琉珂にアイシスは勿論と微笑んだ。アイドルであるアイシスの歌を聴いていたいと答えた琉珂へとそっと手を差し伸べたのはウーティス。
 幻想風の流行に合わせた上流階級の衣装に白い仮面を。そんな彼はまじまじと琉珂を見つめる。
(現実での彼らとは剣を交える羽目になるだろう。故に、せめてこちらの世界では幸せな夢を――)
 どうなるかは分らない。拒絶される可能性さえある。ならば、とせっせと運んできた仮面を使っての仮面舞踏会はどうだろうか。
 甲冑を脱ぎ、剣を収めたただの客人、いや、友たるウーティスはそっと手を差し伸べて。
「さあ、ご婦人。ワルツは如何ですか。知らなくとも大丈夫です、エスコートをします故」
 亜竜種達はダンスには不慣れ。そんな様子を眺めていたエーミールに小さな亜竜種が「ダンスを教えてくれませんか」と問いかけた。
「ああ。勿論。ですが……ダンスに関しては、まあ下手。リズムは完璧、でもそれ以外が致命的なんですよね……手の取り方とか……相手に合わせるのが……いいですか?」
「勿論。わたしも、おどったことないので」
 緊張する彼女とちぐはぐとした踊りを踊ってエーミールは――吸血鬼は小さく笑う。二人とも可笑しければ、どこか狂ったダンスの始まりだ。
「トリックオアトリート、みゃー」
 お気に入りの魔法使いの衣装でやってきたねこ・もふもふ・ぎふと。猫の手でぷにぷにと触れば亜竜種達はくすくすと笑う。
「ハロウィンのお菓子やおいしいものを食べて、楽しく一緒に踊ろうよ。
 知らない亜竜種さんなら、お名前聞きたい。仲良くなれると嬉しいな、みゃー」
「お名前――はい、もちろん」
 緊張していた少年はぴんと背を伸した。そうして過ごす和やかな時間は幸せばかり。
(僕の姿も、皆の姿も、フリアノンの皆も……ROOの全て。悪い奴等に悪用されたり想いや行動等を嘲笑われませんように)
 そう願わずには居られない――この世界に平穏が訪れて楽しく笑い合える日をねこはいつまでも待っているのだ。
 青い触手をだらんと垂らしていた陽炎は皆が踊っている様子をまじまじと眺めている。
「某は舞台の上で踊る役者より幕の内側に潜む黒衣の方が性にあっておりますゆえ……」
「踊らないの?」
 じい、とその様子を眺める琉珂に問われれば陽炎は驚いたように背筋をぴんと伸した。
「えっ、某も踊れと? まあ、ええ……これでも戦闘アンドロイドでございますし。
 マスターのダンスの御相手を務めたこともございますから多少は嗜んでおりますが……。
 今のこの格好でも宜しいので?某触手生やしまくっておりますが。黄衣の王になってますが。他の方にSANC発生しませんか? 大丈夫ですか?
 ……大丈夫ということでしたら、久々に踊ってみましようか。はあ、ここにマスターがいらっしゃればよかったのですが」
「なら、今度はマスターさんを連れてきてね!」


「出来ればまたワイバーンの卵の様子を見に行きたいかな。可能ならお世話の手伝いとかヒナの見学なんかもさせてほしい。
 何というか……人の手がかかったものが好きなんだよね。人に大切にされている様子やその気持ちを知るととても心が温かくなるんだ」
 スイッチの提案に「どうぞどうぞ」と世話係をしている亜竜種は頷いた。それぞれに名前が付いているのかと聞けば「花の名前や外から来た者の名前を付けています」と彼は答えた。
「この子は?」
「なべしきです」
「なべ――……」
 なべしきが外からやってきたのだろうか。小さく笑ってからスイッチはその頭を撫でた。育ったワイバーン達は移動するために使われることも多いらしい。
「この地域だと空を飛ぶだけで一苦労だもんね。ワイバーンならその辺り気にせず飛べたりするのかな」
「いいえ。どちらかといえば偵察用にワイバーンに行ってきて貰ったりもおおいので……本当に生きてくれるだけで幸せですね」
 肩を竦めた世話係にスイッチはなべしきの頭をそっと撫でた。……次に何か持ち込むならもっと素敵な名前のものにしよう。
「未知の探索なのですぅ。……じゃなくて、探索だね。
 姿を変えるだけじゃなく、その姿に応じた人格を演じて遊ぶだなんて面白いこと考える人もいるものですねぇ」
 くすくすと笑ったファトゥ。魔女風味の衣装に身を纏いながらこの世界にもこの趣向にもなれないと観光へとしゃれ込んだ。
「竜といえば神にも等しい絶対的強者であり、理不尽や暴力の化身だと思い込んでいたけれど……。
 こうして文化があり、余興を楽しむだけの心があり、卵やヒナは可愛いとくれば偏見を持っていた自分を恥じ入るばかりだな。
 フリアノンならではの食べ物などあるんだろうか。謎肉、謎魚、謎果物、謎草……どんなものがあるか探しに歩き回ってみようか」
「教えましょうか」
 そう微笑んだ亜竜種は竜と『亜竜種』はモンスターの人の差があること。自身等は法師種族として生まれたことをファトゥへと語ったのだった。
「ハロウィンパーティーいいなぁー!」
 瞳を煌めかせたみけるんは折角の機会だからとこの地――『竜の領域』に存在する亜竜種の集落『フリアノン』へと踏み入れた。
 ドラゴンをその身に其の儘宿したような竜人や、琉珂のように角や翼、尾を有する存在。その姿は平時であれど宛らハロウィンそのものだ。
「こんにちは」
 そう挨拶一つ。それだけでも彼らと仲良くなれる気がする。亜竜種の青年は「鱗コンテストに出ないか!」と微笑んだ。
「惜しい。混沌でならラダがうろコン出られたのにね」
 むう、と唇を尖らせたすあまはラダと共に『寝坊助君』に会いに行くと決めていた。うろコンは今回は不参加なのだ。
 紫苑の鱗を持つ美しい竜人となったtリュートは「うろコンか……」と呟いた。本来は幼い竜であることは彼を知っている者ならば知っている。大人びて、格好良い様子を演出するのは微笑ましいのだろう。
「どうしてッス! リュートは強くてかっこいいドラゴンになるッスよ!
 ――こほん。
『鱗の美しさ』、優勝したら、竜のご飯が沢山食べられる? ふむ、何事も挑戦だ。やってみるのも悪くない」
 そう頷いたリュートの背後でみけるんはぱちりと瞬いた。
「……って、えっ……『竜に変身して鱗の美しさを競う』イベント?」
 困惑したのは仕方が無い。今まで文化も隔絶されていた亜竜種達にとっての『美しい鱗』の基準がわからないのだ。審査項目は分らないけれど、人間基準で美しそうな竜に――と其処まで考えてからカボチャ衣装に黒猫ぬいぐるみを抱えて、ハロウィン竜人に大変身!
「ど、どうかな? 変じゃない?」
「いいッス――ああ、いや。とても可愛らしいと思う。鱗の基準は分らないが……そうだな、アピールポイントを告げるのはどうだろうか。
 自分の鱗はどうだろうか。よく寝てよく遊んでよく食べているから健康優良児で。
 肌艶鱗が自然な感じで良いとは思うが……流石に化粧水とかは使ってないな。手ぬぐいで鱗を磨いてみるとか」
 準備を行うリュートは勢いよく飛び込んできた九重ツルギと其れに付き従うイズルに気付く。
「美しいといえばやはり俺達の出番でしょう。ねぇイズルさん!」
「……ところで、ツルギさんは蛇と竜の境界はどこにあると思う?
 実際、定義はそれぞれだよね。私の守神の有翼蛇は私達には『蛇』だけれど、敵対者には『竜』であったようだし」
 ――スルー!
 イズルにそうスルーされてもツルギは微笑みを崩さない。美しい竜に関して蛇との違いを定義するイズルは自身の思い浮かべる竜に変化する。
 黒曜石のような深みのある黒。胴部の鱗にはぱらぱらと遊色が散っている。背の一枚翼をしゅっと伸して、イズルは「どうだろう」と問うた。
「守神『一翼の蛇』の絵姿のもの。鱗の遊色は死者から回収した未練の欠片……どうだろうか」
「え?美しくはあるけれど、竜じゃなくてどう見ても蛇だって?そんなの、イズルさんの美しさの前では些細な問題ではありませんか!
 イズルさん。そのスベスベの肌に触れてみても?
 蛇に化けたら、やはり体温が無くなってしまうものなのでしょうか。もしもそうなら、俺の温もりを分けて差し上げましょう
 いつも傍で支えてくれる貴方に、感謝の気持ちととびきりの愛を!」
 うっとりとしたツルギにイズルは「愛は手広いから」とぺしぺしと叩いた。暖めてくれるならそれはそれで喜ばしいことではあるけれど。
 アウラは「鱗の美しさを競うコンテスト?」と呟いた。売りさばいたら高値で売れそう――な気がする。そんなことをしてはフリアノンとの国交が断絶しそうなので取りあえずは何も無いと首を振った。
「ワイバーンの卵は食べ……」
「れる」
 頷いたのは亜竜種の誰かだったか。「ええ……」と呟いたアウラに「無精卵なら食べれる。自然の恵み」と彼らは力強く云うのだった。
「ああ、それよりほら、他に何か出し物とかないのかな。いろんな竜に会うことは出来る?」
「この集落だとあまり、多くはないが、例えばオルドネウムとか――」

「ひさしぶりー! 寝てる? 起きて起きて!」
「む……」
 瞼を押し上げたオルドネウムは未だに眠たげにあくびをかみ殺す。楽しげな声音を弾ませるすあまの後ろではルージュが手を振っていた。
「ハロウィンパーティ、一緒行こ! それともここで食べるならご馳走いっぱい運び込むよ。試練の時、一緒にご飯しようって言ってたもんね!」
 尾をぐいぐいと引っ張るすあまに習って肩(?)をぱちりと叩いたのはロード。
「久しぶりの竜域! また来たぞ! オルドネウムあそぼー!! あ、前は勝手に残念がってごめんなぁ。俺はロード。よろしくー!」
「……」
 瞼を押し上げたオルドネウムはまだまだ眠たげだ。竜のトリックはただでは済まなさそうだと見せる菓子にオルドネウムは「ふむ」と呟いた。
「それは……」
「え? これ? これはー……何故か入ってる自爆スイッチ! まあ、いいや。俺に合わせてるから甘いの多いけどどれ食べるよ?
 こんぺいとうが良いと思う。そう! こんぺいとうが良い!! 君の鱗みたいに美しい!!! そして甘くておいしい!!!! 沢山あるからたぁんとお食べ!!!!!」
「こんぺいとう」
 寝ぼけながらももごもごと小さなそれを食べようと口を動かしているオルドネウムをまじまじと見遣ってから真読・流雨はそっとその体を撫でる。
「ふむ。リアルでのおねむも見てきたが。やはりおねむは此方の世界のが可愛らしいな。素直さに勝る愛らしさは無いという事だな。
 よしよし。今日はお菓子をやろう。本来はいたずらかお菓子かを選べるのだが。おねむの場合、悪戯は難しいだろうからな。
 良い子はお菓子にしておきたまえ。今日のお菓子はどーなつだ。ビーバー印の安心安全などーなつだぞ」
「どーなつとは? こんぺいとうとは?」
 彼は何も知らないのかと流雨は可愛らしいと微笑んだ。外の世界には疎いのは亜竜種も竜種も変わりなく。赤子の頃からフリアノンの民に育てられたオルドネウムによってイレギュラーズは新しい事を教えてくれる素晴らしい友人だ。
「ちょこれいとという甘い物をかけたカラフルな奴だぞ。たくさんあるから食べると良い。
 おねむには、何色のが良いかな。このピンク色をしたのにするか。うむ。すとろべりーちょこのやつだな。
 これを食べれば鱗も輝きを増して、鱗大会も優勝間違いなしだろう。おねむの魅力に皆めろめろだ」
「鱗コンテストは我は出ぬ」
「えっ」
 驚いた顔をした指差・ヨシカは「綺麗なのに、残念ね」と肩を竦めた。オードブルをとってきたというヨシカにオルドネウムはのそのそと起き上がる。
 すあまがはっとした顔で「とってくるね!」と叫んだ。
「竜種ってどれくらい食べるんだろ。わたしよりたくさん食べる? お肉好きかな、お野菜食べられるかな。南瓜のパイも美味しいよね。わたしは全部好き!」
「ならば其れを欲する」
 すあまが好きなものにチャレンジしたいオルドネウムへとヨシカはくすくすと笑う。
「ごきげんよう、オルドネウム。傷はもう良いのかしら? 流石竜種ね。食べ物には余りこだわりは無いのかしら?」
「与えられたものばかりを食してきた。琉珂に好き嫌いをすると叱られるものでな」
「ふふ、まるで子供ね。ねえ、あなたのこと、おねむくんって呼んでもいいかしら?」
 普段と違う姿なら話しやすいのだと笑ったヨシカにオルドネウムはゆるゆると頷いた。
「オルにー、友達が一杯出来たのか? なあなあ、せっかくのパーティーなんだから遊んでくれよなー」
 竜の着ぐるみにオルドネウム人形を用意したのだというルージュはその頭に乗ってゆさゆさと揺らがせた。
 滅多に会えないからこそ構って欲しい妹心。食事が終わればフリアノンを練り歩いてくれるだろうか?
「そういえば、オルにーって成長したらどのくらい大きくなるんだ? たしか、まだオルにーって若い竜だったよな」
「竜としては生まれて間もないと琉珂に教わっている」
 首を揺らせばルージュは転がり落ちないようにオルドネウムの首にぎゅうと抱きついた。
 もしかして、混沌側ではもっと大きいかも知れない。この様に幼く、可愛い竜ではないかもしれない。だからこそ、その前に予習しておきたいとルージュはその体をまじまじと見遣った。
「大きさ、か。我は今、象と呼ばれる生物程度なのだろう。だが、成長すればフリアノンには入ることは許されなくなるだろうな」
「どーして?」
「『大きすぎて』と琉珂より聞いている」
 本来の竜はあの滅海竜等のように巨大なのだろう。天をも覆う黒き影。そう呟いたオルドネウムへとすあまが走り寄ってくる。
「はい、ご飯! おなかが満ちたらゆっくりしよう。
 ここの外、どこも大事件で大忙しなんだ。だからちょっとわたしも休憩。ひと眠りしたいんだ。
 秋の少し陰った日差しが気持ちいい、今の時期の楽しみだね。その後は、中に見に行こうよ!」

 ――お昼寝の後、
「というわけでオルドネウム、どう思う?」
 すあま達に連れられてきたオルドネウムにリュートはそう問いかけた。ふむ、と呟いて眠たげな彼は「亜竜種の様な姿だな」と呟いた。
「成程。なら、四足竜のほうがそれっぽい感じか? オルドネウムは何かなりたい姿はある?」
「それが我らの思う竜種だな。……ふむ……この『妹』やらに外に誘われた故、外に遊びに行く姿、などはどうか」
 呟いたオルドネウムにルージュは感極まって「おるにー!」と飛び付いた。

 そんな穏やかで幸福な日常に。ちょっぴり不思議なファントムナイトの魔法を添えて。
 魔法が解けても、楽しければいいのにと、オルドネウムは小さく呟いたのだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 素敵なハロウィンをお楽しみいただけたのなら幸いです!
 それではまたフリアノンでお会いしましょう!

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