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シナリオ詳細

<Scheinen Nacht2020>冷たい手はあなたが暖めて

完了

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●賑やかな夜の為に
「輝かんばかりの、この夜に!」
 それがシャイネン・ナハトでの謳い文句。誰も彼もが口にするその言葉。
 お国柄によるが、あちらこちらでシャイネン・ナハトを祝う装飾が施されている。
 辺りはすっかり雪化粧。空気の冷たさに、手も思わず擦りたくなる。
 その手を暖めるのは、誰の手だろうか。
 これは、シャイネン・ナハトの日でのデートの話。
 愛する人の手を、心を、暖めるお話。

●煌びやかな中で、あなたと
 海洋領にある街。
 イルミネーションで彩られているその街路の両端では、露天商が店を構えていた。この日限定の出店である。
 いくつもの店が立ち並んでおり、その種類も様々だ。
 射的、運試し(くじ引き)、装飾店、衣服店、飲食店……細かいものを上げるとキリが無いが、大雑把に分けるとそんな感じであった。
 射的は玩具の鉄砲に軽い弾を込めて並んだ景品を撃つというもので、それは小物の物が多く、大きい物では魚を咥えた熊のぬいぐるみがあった。
 運試しは運勢などが多い。くじ引きの他には占いもあるようだ。今日の運勢、相手との相性、これからの未来、などを取り扱っているらしい。ただし、看板にはどれも「確かなものではないからご注意を!」という注意書きが書かれている。くじ引きは、当たり外れがあるようだ。当たればちょっと美味しいお菓子が当たるとか、そんな感じである。
 衣服や装飾は、主に小物を扱っている。首に巻く布とか、手袋とか、ネックレスとか、そういった物だ。プレゼントをここで買って渡すのも良いかもしれない。
 飲食店は、狂王種や普通の魚類などを加工して作られたものが並んでいる。香ばしい匂い、お菓子のように作られた匂い、魚の一部を入れて衣で包んだ丸い料理もある。なお、この料理、店によってはルーレット料理として出している事もある。外れは何かはお楽しみ、だそうだが、罰ゲームに近い味だろう事は想像に難くなかった。
 飲み物は酒類やソフトドリンクも出ているので、好みによってとる事が出来るだろう。酒類は年齢の注意が必要であるが。
 出店を出している店主のよく通る声、カップルに見えるお客さん達の笑い声、酒が入ってるのか陽気に歌い出す客の声。
 広場の方からも人の声がする。
 小さな広場は二、三個ほどあり、座れるようにベンチや椅子が、飲み食い出来るようにテーブルが置かれている。休憩の場としても、待ち合わせの場としても使えそうな場所であった。
 また、大道芸をする人の姿もあった。客を魅了する動きへの賞賛の拍手は止まない。
 見渡せば見渡すほど、相手と何をして過ごすのか、興味をそそられるものばかりだ。
 両手に息を吹きかけて、手を温めようとする。
 『あなた』の手を、誰かが取った。
 さぁ、この夜を楽しもう。

GMコメント

 シャイネン・ナハトに初参加させていただきます。
 去年は出来ませんでしたからね……。
 このシナリオは、デート系シナリオとなります。
 関係性、プレイング内容によっては砂糖盛りの内容でお返しする事があります。

●対象
・友情以上恋人未満
・友人同士二人でデート(友達デートというやつですね)
・恋人同士
・ご夫婦
・ちょっと特殊なご関係(二人でお出かけする程の仲である)

●出店
・飲食店……ソフトドリンクや酒類、魚類や狂王種を扱った料理やお菓子がある。外れありのルーレット料理もある(いわゆるロシアンルーレット)
・射的……玩具の銃で景品を撃ち抜く。目玉は魚を咥えた熊のぬいぐるみ。
・くじ引き(運試し)……小物が当たったりする。運試しは運勢を占うようなものである(吉、大吉、みたいな)
・占い……相手との運勢や相性、未来のことなどが聞ける。ただし、「確かなものではないからご注意を!」
・装飾店……ネックレスや指輪、髪留めなど、アクセサリー類が多い。キラキラしているものから地味だが模様が綺麗な物まで様々。
・衣服店……首に巻く布(マフラーやストール)や手袋などが主。服の生地のみを売っている店もあったりする。

●広場
・大道芸人の姿もある
・ベンチとテーブル、椅子がある
・主に休憩用、もしくは待ち合わせ用に使われているようだ

●プレイングの記載について
一行目:相手の名前orタグ
二行目:相手との関係性
三行目~:心情や行動

例)
【星組】
恋人
出店を回ります。籤を引いてみようかな?大当たり出るかしら?

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • <Scheinen Nacht2020>冷たい手はあなたが暖めて完了
  • GM名古里兎 握
  • 種別イベント
  • 難易度VERYEASY
  • 冒険終了日時2021年01月12日 22時10分
  • 参加人数30/30人
  • 相談7日
  • 参加費50RC

参加者 : 30 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(30人)

クロバ・フユツキ(p3p000145)
深緑の守護者
シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
レッド(p3p000395)
赤々靴
アリシス・シーアルジア(p3p000397)
黒のミスティリオン
リュグナー(p3p000614)
虚言の境界
ソフィラ=シェランテーレ(p3p000645)
盲目の花少女
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
アレフ(p3p000794)
純なる気配
伏見 行人(p3p000858)
北辰の道標
リリー・シャルラハ(p3p000955)
自在の名手
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
ルルリア・ルルフェルルーク(p3p001317)
光の槍
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
ウォリア(p3p001789)
生命に焦がれて
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
花に願いを
秋月 誠吾(p3p007127)
虹を心にかけて
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
アルヴィ=ド=ラフス(p3p007360)
航空指揮
ソフィリア・ラングレイ(p3p007527)
地上に虹をかけて
リサ・ディーラング(p3p008016)
蒸気迫撃
Binah(p3p008677)
守護双璧
ラクロス・サン・アントワーヌ(p3p009067)
ワルツと共に
グリジオ・V・ヴェール(p3p009240)
灰色の残火
アセナ・グリ(p3p009351)
灰色狼

リプレイ

●欲に限りなく、想いは果てなく
 カイトが一生懸命に物を見ている横顔を、リトルは興味津々で見つめていた。
(カイトさん、何見てるのかな)
 並んでいる品々は小物ばかりだ。
 次の店に、と向かった先はマフラーなどが展示されていた。
 見ていく者は多いようで、二人も、展示されているマフラーを眺めていく。
「んー、カイトさんならこれとか似合うと思うよっ」
 突然、彼女が手に取ったのは、リトルの瞳のような赤と青が交互に組み込まれたマフラー。
 自分の瞳と同じ毛色のそれに、カイトは驚いたようだったが、嬉しいと顔を綻ばせる。
「お、この色、俺そっくりだな!」
 彼の目にとまったのは、赤色のマフラー。
 そのマフラーを購入し、リトルの首にぐるぐると巻いていく。
「良いの? やったー♪ えへへ、温かいねっ」
 満面の笑みの彼女を見て、自身もつられて笑うカイト。
 代金を支払い、店を離れる二人。
 ちょっと人混みから外れた所で、彼女の方から彼へと一つおねだりが。
「カイトさん、ちゅーしよっ♪」
 可愛い恋人の願いを拒む理由は無く。
 交わされる軽いキスは幸せを二人の胸に運ぶ。
 リトルを肩に乗せて、カイトは道を進んでいく。
 少し高いところから見える景色にはしゃぐ彼女は、彼の意図に気付いていない。
 マフラーをぐるぐると巻いてさらに見えにくくしている彼女の顔を、他の誰にも見せたくないという彼の独占欲だと。

●乙女心はへそ曲がり
 ソフィリアと誠吾の二人は出店をいくつか回っていた。主に飲食店であったが。
「疲れてないか? 少し休憩しような」
「うん、座ってゆっくり食べるのです!」
 誠吾の申し出もあり、お互いに買った物を広場のベンチにて食べる事にした。
 周りを見れば、自分達と同じように食べている者も多い。
 誠吾が購入したのはコーヒーとドーナツ。
 ソフィリアに渡そうとして、彼女が購入した物に目を丸くする。
 狂王種の唐揚げに驚く彼を見て、小首を傾げる。
「普通のお魚と違うのかなぁって……美味しそうなのですよ?」
 「食べてみます?」と差し出してみるが、やんわりと辞退された。
 仕方ないので自分で食べる事にしたソフィリア。
 一口食べる。サクサクの表面とふわふわの中身に、目も覚めるようなスパイシーな味付け。
 目を輝かせる彼女を見て、誠吾は苦笑しながらドーナツを口にする。
「沢山食べて大きくなればいいさ。まだまだ身長低いしな」
「むー……大きくなって、誠吾さんをびっくりさせるのです!」
 自分のコンプレックスを刺激されて、ちょっとだけかぶりつき方が乱暴になる彼女。
 その様子を見て、誠吾は困惑する。
(微妙に膨れてるような気がするけど、何か悪いこと言ったか?)
 青年よ、君はもう少し女心を考えた方が良さそうだ。
 妹のように思っている彼女を宥めるにはどのような言葉をかければいいのか苦心する誠吾。
 少しばかり膨れたまま唐揚げを頬張るソフィリア。
 彼女の機嫌が直るまでにはまだ時間がかかりそうだ。

●巻いた距離は二人らしさ
 お出かけという事で、待ち合わせ場所に到着した二人。
 当然という顔で、アントワーヌが手を差し出す。エスコートする側の手つきで。
「お手をどうぞ、プリンセス」
「仕方がないなぁ」
 笑う行人の手をアントワーヌが引いてエスコートする。
 彼女の手は小さく、対して彼の手は硬くて荒れ気味。
 行人としてはその差に少しだけ気後れしてしまうが、今はこのシャイネン・ナハトを楽しもうと気持ちを切り替える。
 二人が巡っているのはシャイネン・ナハトのマーケット。
 周囲の店を見ていく中で、アントワーヌが青色のストールを指差した。
「あ、あのストールなんか行人君に似合いそうじゃないか?」
「ん? ストールか?」
 頷いた後、彼女はすぐに店主へと試着を願い出る。
 行人の首にふわりと巻かれる柔らかな手触りの布。
「うん、君にとてもよく似合ってる。可愛いよ、行人君」
 即決で購入を決めて店主に支払いをしていくアントワーヌ。
 貰った物に否やは無い。
 お返しは何がいいかと考えるもすぐには思いつかず、代わりに彼は一つの物を自分の髪から外した。
 振り向いた彼女へ、出来るだけ綺麗にした髪紐をたたんで差し出す。
 自分と髪紐を見比べる彼女へ、彼は言葉をかける。
「後でしっかりお礼はするから、とりあえずは俺の髪紐で我慢してくれないか? 王子様」
 その髪紐が彼女の髪をいつ結んだかは、内緒の話。

●久しぶりのあなたと、占う未来
 最近帰ってきたというアレフは、アリシスと共に出店を回る事にした。
 暫く離れていた二人には積もる話も多く、それは途切れる事が無い。
 話題もある程度落ち着いたところで、アレフが出店の一つを見て提案を出した。
「……運試しでもしてみようか。良い結果が出るとは限らないが」
「くじ引きですか」
 彼の視線の先にあったのは、小物などを扱うくじ引きのお店。
 運勢が書かれた区分での景品を渡すシステムのようだ。
 お金を渡したアレフへと差し出された木箱は中が見えないようになっている。手を入れ、折りたたまれた一枚の紙を取り出す。
 開けば、中には「中吉」の文字。
「おっ、じゃあ、こいつだな。別嬪さんへのプレゼントにもいいと思うぜ」
 店主が差し出した箱に書かれた「中吉」の文字。こちらに積まれていたのは、イヤリングや腕輪などのアクセサリー類だ。
 その中からアレフはシンプルな布製のバングルを取ると、アリシスへと差し出した。
「よろしいのですか」
「ああ。是非つけてほしい」
「ありがとうございます」
 受け取って装着してくれた彼女へ、アレフは心からの言葉を贈る。
「こうしてまた、何気ない日々をまた君と過ごせる事を幸福に思うよ。アリシス」
「それはようございました。――無事の復帰を嬉しく思います、アレフ様」
 この世界に来て立場も何もかも全てリセットされた二人。
 だからなのか、どこか新鮮な気持ちを感じるのだった。

●貴女に捧ぐぬいぐるみ
「まま、射的へ、行く」
 エクスマリアに手を引かれ、華蓮は射的の出店へと向かう。
 華蓮が愛娘として可愛がっている彼女は、張り切った様子で目的の出店に到着すると、店主に挑戦すると告げた。
 彼女が狙っているのはこの店の目玉景品である魚を咥えた熊のぬいぐるみである。玩具の銃が構えた先にある物に気付いて、店主がニヤリと笑う。
「こいつはデカいぜ、嬢ちゃんに落とせるかな?」
 挑戦者を馬鹿にする事もなく、むしろやってみろと店主も挑戦的な顔である。
 エクスマリアの後ろでは華蓮が笑顔で背中を見ていた。
 弾は五発。まずは一発、頭を狙う。ぐらりと揺れるが、倒れる程では無い。
 揺れが収まる前に、手早く弾を込めてもう一発。今度は大きく揺れる。
「頑張って、マリアちゃん!」
 華蓮の応援が、彼女に力をくれた。
 三発目。四発目。
 最後の一発を頭に当てた。熊は大きく揺れて――――その巨躯が棚から落ちた。
 店主が拾い上げ、賛辞の言葉と共に彼女へと贈られる。
 そして、彼女はそのままそのぬいぐるみを華蓮へと差し出した。
「頑張った。日頃の礼も兼ねて、大切にしてくれると、嬉しい」
「マリアちゃん……ありがとう、とってもとっても大切にするのだわ!」
 自分の為に頑張った姿が愛おしくてぬいぐるみごと抱きしめる。
 その後、二人は手を繋いで他の店も見て回っていく。
 エクスマリアの髪が、はしゃぐように揺れていた。

●暗い中で輝く光は目に見えずとも
 盲目であるソフィラの手を引き、出店のある場所へ連れてきたリュグナー。
 ソフィラが楽しそうに笑う。
「ふふ、リュグナーさんからのお誘いなんて珍しいわね!」
「最近寒くなったが故、何か温かく、かつ目立たぬ服でも……とな」
「そうね、落ち着いた色合いで厚地の服がいいかしら」
「一つ一つ説明しよう。それで見繕ってもらえぬか」
「ええ!」
 彼の提案に元気よく返し、衣服を扱う店を回り始める。
 色合いや特徴、形を彼女に伝え、希望を聞いていく。
 出店ではなく違う店で後日購入するつもりでいる彼は、店を離れてから彼女にその旨を伝えた。嫌な顔などせず、「最後はリュグナーさん次第ね」と笑うソフィラ。
「色々と参考になった。感謝する」
「どういたしまして! いいものが見つかったなら良かった」
「しかし、貴様も何も買っていないが……よかったのか? 此度の礼に、行きたい店があれば連れて行っても構わぬが……」
「あら。ふふ、一緒に回れただけでとても楽しかったわよ?」
 偽りなく笑顔で話す彼女の言葉に、リュグナーは「そうか」とだけ返す。
 彼の胸に広がるあたたかいもの。
(……悪くない)
 けれど、その言葉は胸の内にしまう事にして。
 他の出店も回ろうと、彼は再びソフィラの手を引いていく。

●異なる世界の異なる言葉を贈り合おう
 出店で二人それぞれで食べ物を購入する事にしたシフォリィとクロバ。
 広場のベンチで合流し、二人は互いに購入した飲食物を披露する。
 シフォリィはフライや魚料理の他、小さめサイズの白ワインを調達していた。出店で使い捨てコップも売られていたので、一緒に購入した。
 クロバはスープ系の物と、度数の弱い酒だ。
「今年も色々ありましたけど、こうして二人で過ごせること本当に嬉しいです。こうやって二人だけで御馳走をいただくということもできましたからね! 来年もきっと、いいことがありますよ!」
 笑顔でコップにワインを注いでいくシフォリィ。
 二人分を注ぎ終えた彼女は、「あ、そういえば」と呟く。
 怪訝そうな顔をする彼に、思い出した事を話しだす。
「そっちの世界だとこういう日にふさわしい言葉があるんですよね? なら、それに倣ってこちらも乾杯しましょう!
 貴方と過ごすこの聖なる夜に、メリー・クリスマス!」
「輝かんばかりの、この夜に」
 彼女がそう言うならばこちらはこうだ。
 互いの世界の言葉を言い合って、乾杯とコップを合わせる。
 一口流し込み、それから料理へ手をつけていく。
(去年恋人になって今年は酒を飲みかわして――さて、来年は何があるのやら。来年の話をしたら鬼が笑うというけど)
 どうなるのか、来年の事に想いを馳せながら舌鼓を打つ。
 笑顔の恋人につられて、自身も笑う。
 二人の夜は、まだこれからだ。

●あなたと紡ぐ言葉と共に
 ネーヴェとクラリウスは久しぶりに共に出かける事を大層喜んでいた。
 冬の装いの新調を、という事で、彼らが主に見て回るのは衣服店。
 互いが互いに似合いそうなものを。
 今日のお出かけの目的を確認し、二人は一つ一つ見て回る。
 ネーヴェは相手に似合いそうな色を吟味した上で、一つの店を指し示した。
「クラリウス様! あれは、どうですか?」
 深い青で染め上げられたマフラーを示し、それを意気揚々と彼に試着してみるネーヴェ。
 クラリウスによく似合う色に、彼女の顔が綻ぶ。
 彼も満更では無さそうと表情から判断し、即決で購入する。
「ありがとう」
「次は、クラリウス様の番、ですわね」
 楽しみだと言外に告げる彼女に贈るべく、クラリウスは並んだ品々を見ていく。
(となると、印象的なこの色かな?)
 彼が選んだのは、少しくすんだ赤色のマフラー。あまり派手すぎない色のそれを彼女の首に巻いてみて、「うん」と一つ頷く。
「ネーヴェさん、髪も肌も白くて綺麗だから、髪飾りや瞳の赤がすごく印象的に見えるんだよね」
 似合う、と一言付け足して、購入を決める。
「ありがとう、ございます」
 照れて笑う彼女から、もう一つ言葉が紡がれる。
「輝かんばかりの、この夜に!」
「……輝かんばかりの、この夜に!」
 二人の友は、互いに贈ったマフラーを身につけたまま、次の出店を回っていくのだった。

●ありのままを受け入れるあなただから
 ヴァレーリヤとマリアは出店を楽しんでいた。
 その中でヴァレーリヤの目にとまる、虎のぬいぐるみ。その出店は射的のようだ。
「ねえマリィ、あれ可愛くありませんこと?」
「本当だ! 可愛い! あのぬいぐるみ素敵だね!」
 笑顔の彼女を見て、ヴァレーリヤはもっと笑顔を見たくて、挑戦の言葉を口に出した。
「見ていて頂戴、こう見えても射的は結構得意ですの! すぐに撃ち落として、貴女にプレゼントしてあげるからねっ!」
「ふふ! 取ってくれるのかい? なら私は応援するよ!」
 射的の店に入り、玩具の銃を構える彼女に、マリアが後ろから応援の言葉を投げかける。
「ヴァリューシャ頑張って♪」
 一発、二発、三発……。
 五発全ては当たったものの、当たり所が悪かったのか、あまり動かなかった。
 落胆する彼女に、マリアは慌ててその手を取って励ましの言葉をかける。
「あのね!  あの! 私は……君のその気持ちがとっても嬉しい! もう胸がいっぱいさ!
 一緒にいるこの時間が、私にとって何ものにも代えがたい大事な物なんだよ?」
 笑う彼女の笑顔は幸せ一杯そのもので。
 それだけで、救われた気持ちになる。
「ありがとうマリィ。貴女のその気持ちが、私にとって一番の宝物ですの
 貴女のそういうところ、とっても素敵だと思いますわ……」
「ふふ!
 どこかでお揃いの虎ぬいぐるみを買って帰ろう!」
「ええ!」
 そのまま手を繋いで、二人は歩いて行く。
 二人の絆をまた一つ強くして。

●あなたと過ごす時を、ただ穏やかに過ごしたい
 今日はグリジオの誘いだ。
 アセナと彼は二十年ほど離れて暮らしていた。積もる話をしながら、出店を回っていく。
 話も一段落したところで、広場にあるベンチでの休憩を、彼より提案される。
 ベンチに腰掛けた彼女の肩に、グリジオは先程買った薄い緑色のストールを広げて、肩へかけてやった。
「……寒くないですか、師匠」
「あら、気が利くのね。ありがとう。これで寒くはないけれど……グリジオは寒くない? 昔みたいに手を握って暖めてあげましょうか」
「……あっ、はい……」
 どこか照れくささを覚えながらも受け入れるグリジオ。
 彼の手に優しく触れ、包むように握る。
 二十年近くぶりに触れた彼の手は、記憶よりも大きくなった手と太くなった指をしていた。
 握った手から彼の成長が伝わり、彼女の心がざわめく。
(身長も、肩幅も。筋肉も……だいぶ変わって。これが大人になってるってことかしら?)
 友の死後に引き取った子供。その頃の記憶と異なる現在の彼。
 かなりの年月がお互いに流れている筈なのに、心の内に灯る火は変わらない。
 握られている彼の方も同じだった。
 彼女の体は変わったかもしれないが、浮かぶ微笑みはあの頃と変わらずな事に、心が穏やかになる。
 いつもなら煙草を吸うような自分だが、彼女と過ごす時間だけはそれをせずにいる。
 大切なこの時間を、心に刻みつけておきたいから。
 穏やかな時。二人は静かにそれぞれの過ごした日々の話を再開するのだった。

●奇妙な縁にはいつか名がつくだろう
 リサに連れられて、ウォリアは不可思議な心持ちで出店を回っていた。
「ウォリアさんもこういう所は興味があったんすね。ちょっと意外っすけどしっかり楽しもうっすよー!」
 二メートル半程の身長がある彼とはかなりの身長差がある。彼女が彼と手を握るには指ぐらいが丁度良く。
 指から伝わる温もりに、ウォリアはどこか不思議な気持ちだった。「暖かい」と笑う彼女に、心が揺れる。
「ウォリアさん、射的とかどうっす?」
 彼の気持ちを知らないまま、リサは射的の店を提案する。
「……ふむ、的当てか……」
 良いだろう、と快諾し、二人で射的に向かう。撃つのはリサだ。
 狙う目玉はぬいぐるみ。魚を咥えたそれに狙いを定め、乾いた音を立てて撃つ。
 なかなか落ちないそれに焦りを覚えるリサへ、彼は助言をする。
「……少し銃口が下がり気味だ」
 彼の手が彼女の腕を支え、銃口を向ける。
 撃って動かしてずらしていき、最終的には棚から落とす事に成功しいた。
「ウォリアさんナイスサポート!」
 振り返った彼女に、良かったと返してから、彼は自分のしている事に気付いてすぐに離した。
「支えてくれてありがとうっすー!」
「……あ、ああ……」
 軽快に笑う彼女。
 その笑顔を見て、またも心が揺れ動く。
(……気安くする事ではなかったな……やはり、浮かれているようだ……)
 反省するのだが、心という火は何かに動かされるように燃えていた。
 その心の意味もわからぬまま、彼は彼女に次の場所へと連れて行かれていく。

●二人で揃う、靴と騎士
 アルヴァの誘いに応じて、レッドは共に衣服店を見て回る事にした。
 体を冷やさぬようにお洒落と機能性を考慮した装いを考えて吟味し、購入するレッド。アルヴァはそんな彼女の購入した物を持ち運んでいる。
「レッドさん、次はどこに行きます?」
「次はアッチ、あそこに行こうっす!」
 指差して笑う彼女の笑顔に、アルヴァの心は満たされる。誘って良かったと、心から思う。
 道中、視界に入ったマフラー。それは靴の刺繍がされた、色違いの二本。
 彼の視線に気付いたレッドもまた、そのマフラーに気付く。
「気に入ったっすか?」
「はい、良ければ僕の分と君の分でプレゼントしたいな、と」
 その返答に、レッドはアルヴァから財布を借りると代わりに購入して品物を受け取った。
「えへへ……マフラー、付けてもらってもいいですか」
 差し出されたそれに対し、アルヴァは彼女に巻く事をお願いする。
 確かに両手が塞がっている彼では無理だと判断し、彼女は彼の首にマフラーを巻く。
「コレでヨシっす。うんうん、似合ってるっす」
 それから、自分も同じようにマフラーを巻いて。
「ふふふ、同じマフラー仲間っすね」
 ニカッと笑った彼女に、アルヴァの頬が知らず赤くなる。
 「大丈夫っすか」と心配する声に、「大丈夫だ」と返しながら、密かに彼は決意する。
 この先も共に居て彼女を護ろう、と。
 それは青い騎士の密やかなる決意。

●今宵はあなたと二人、幸福の時間を紡いで
 恋人である利香とクーアは手を繋いで出店を回っていた。
 二人が回るのは飲食店。花より団子な二人は、目当てのものを購入していく。
 魚類のムニエル、クラッカーやドライフルーツ。それからアルコールに白ワイン。
「それじゃあ聖夜を祈って、乾杯と行きましょうか♪」
「輝かんばかりのこの夜に、乾杯なのです!」
 ねこではあるが、ウワバミなクーアの一杯の量は多い。彼女の方でもアルコールは購入していたから、酒に困る事は無さそうだが。
「また来年もここで一緒に食べましょうね、クーア。
 私を惚れさせたからには、ずっと手放すつもりなんてないんですから♪」
 ふふ、と笑う利香。その言葉を受けて、クーアも笑う。
「ええ、私こそリカを手放すつもりはないのです。
 ……勝手に手の届かない場所に行ったら承知しないのですよ?」
 顎に手をやり、唇をなぞる。
 途端に頬を赤く染める利香に、クーアは楽しそうに笑ってみせた。
「時間はあり余っているのですし、呑気に行きましょう」
「え、ええ! どうせだしゆっくり過ごしましょう、時間はたっぷりあるんですから」
 動揺を隠しきれない彼女の頬の赤みがなかなか引かないのはアルコールの摂取のせいだろうか。
 恋人の可愛らしい姿に、クーアは幸せという想いを胸の内でゆっくりと噛みしめるのだった。

●共に隣に在る未来の為に
 様々な出店が他にもある中で、ルルリアは傍らのアンナに一つの店を指先で示した。
「アンナ、アンナ! 占いですよっ、占い! 一緒にしましょうっ」
「そんなに信じてはないけれど、折角だから占ってもらいましょうか」
 顔を輝かせたルルリアを見て、笑うアンナ。
 依頼すると、広げた紙に描かれた魔方陣のようなものに、三つの小石を投げて、石の位置で未来を読み取る占いをすると言われる。
 目の前で三つの小石が魔方陣の上で転がっていく。上に一つ、左下に一つ、中央からやや逸れた右へと一つ。
「上の方にある石が示すのは転機。二人に何かしらの進展が見られる。
 左下の石の位置は困難。未来に何かしらの困難が立ちはだかる。
 中央からやや逸れた右ですが、これは喪失。何を失うのかまでは分からない。
 ……運命は変えられる事も出来る。どうか、二人の未来に幸が多くあらん事を」
 ありがとう、とお礼を言ってその場を去る二人。
「厳しい結果のようだったけど、はね除けられるように頑張りましょう」
「うん! 今以上に二人で仲良く過ごせてると良いなぁ……やっぱりちょっとドキドキしちゃいますね!」
 未来の事を考える事も、あの結果も、鼓動を速く打つ事に変わりはない。
 どんな未来だろうが、二人ならきっと乗り越えられるかも、なんて。
 顔を見合わせて、二人で笑うのだった。

●君と過ごす時を来年も
 アリアとビナーは待ち合わせ場所にて合流すると、すぐに出店を回る事にした。
 最初はどこに行こうかという話になった時、アリアの方から話を切り出された。
「おみくじひーきーたーいー!」
「ん、良い運勢が出ると良いね」
 アリアの駄々っ子のような口調にも嫌な顔をせず、ビナーは運試しの店へと共に行く。
 それぞれ、木箱から一枚引いた。
「大吉だ! ビナー君の運勢は何かな?」
「小吉だね。良い方だから嬉しいね」
 笑い合って、おみくじを持ち帰り、次の店へと歩く。
 二人が向かったのは装飾店。ここでお互いへのプレゼントを購入しようという話であった。
 小物の多いラインナップをそれぞれ吟味していく中で、アリアの方が先に見つける。
 それをラッピングしてもらい、ビナーの買い物を待つ。
 お互いにラッピングされた物をどうぞと差し出す。
 アリアからはレプリカの植物で編んだブレスレット。
 ビナーからは髪飾り。琥珀色をベースに、星や月を散りばめたものだ。
 互いに贈り物を身につけて、幸せだと笑い合う。
「あ、そうだビナー君。
 来年もよろしくお願いします!」
「アリア君、来年もどうかよろしくね。
 またこうやって一緒に出掛けたり出来たら嬉しいよ」
 来年の約束は、来年どうなるかわからないけれど。
 それでも、また二人で出かけたい。
 君と過ごすこの時間が大好きだから。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

楽しい気持ち一杯のプレイングをありがとうございました!
皆様の思い出の一つとなりましたら幸いです。

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