PandoraPartyProject

シナリオ詳細

キャンプ・ローレット

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●シティ・ボーイじゃなかったの?
「キャンプしたい」
 特に夏場は外に出る事を嫌う『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)がそんな事を言い出したのは文字通り蒼天の霹靂の如く、突然の出来事だった。
「……インドア派じゃなかったっけ?」
 訝しくイレギュラーズが問うのも無理からぬ事だった。このレオンは筋金入りの怠け者なのである。少なくともイレギュラーズの知る近年の彼は積極的に外を出歩くようなタイプではなく、公私の分け隔てなく怠惰なのだからこの反応は当然の事である。
「いやー、何となくやりたくなって。最近割と涼しくなってきたし」
「確かに。びっくりする位秋の気配はハッキリしてきましたけどね」
「森とか湖とかいけばもっと涼しいかなって。
 練達製のエアコンにどっぷりだったもんだから、最近体力落ちてるしさぁ」
「……一応、伝説的な冒険者としての体面を保っていただきたいんですけどね」
 身も蓋も無い現実を告げるレオンにイレギュラーズは苦笑した。その辺りは何処まで本気か分からないが、レオンが珍しくアウトドア活動をしたいのは本気であるらしい。
「そんな訳で――めんどくせーからあんまり遠くはいかないけど。
 幻想近隣の森? なんか適当な所でキャンプをしようと思いまして。
 諸君等もそれに付き合いませんか、というお話です」
「……なんで俺達が?」
「交流を深め、明日の戦いに一致団結して挑む為かな」
 心にもなさそうな発言ではあるが、愉快そうなレオンは続ける。
「いいじゃん、たまには。非日常を愉しみ、綺麗所と一杯飲んで。
 嬉し恥ずかし何かイベントもあるかも知れないし――何より」
「何より」
「オマエ等、そう断らんでしょ」
「なんでそう思う」
「俺、今日が誕生日だしね――」

 ……成る程、大した自信家だ。

GMコメント

 YAMIDEITEIっす。
 そういう訳でレオンの誕生日シナリオ。
 今年は何故かゆるキャンです。
 以下詳細。

●任務達成条件
・何となくいい感じに終わる事

●森
 幻想近郊の風光明媚な森。
 かなり開けた場所がありそこにキャンプを張ります。
 近くには湖と川のせせらぎがあり、夏は終わりましたがちょっとした水遊びも。
 大雑把にキャンプするには問題の無いロケーションです。

●パート
 朝、昼、晩の三パートを予定しています。
 最初のパートは朝です。出発、道中到着から設営、準備なんかに触れていきます。
 アウトドアに強い人はちょっと差をつけたり、弱い人は困ったりしましょう。
 その辺で現地調達を考えてもいいし、おひるごはんの支度をしてもよい。
 お友達同士で協力したり、その辺を散歩したり下見したりなんかいい感じに遊んで下さい。水遊びは昼のパート、夜のパートは何かお楽しみをやったりすると思います。
 別に複数のパートに参加しても構いません。

●レオン・ドナーツ・バルトロメイ
 ローレットのギルドマスター。
 不良中年。39歳になったそうな。
 お祝いしてもよいし、普通に遊んでいても良い。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 そんな訳で宜しければご参加下さいませませ。

  • キャンプ・ローレット完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年11月21日 18時03分
  • 章数3章
  • 総採用数84人
  • 参加費50RC

第1章

第1章 第1節

生方・創(p3p000068)
アートなフォックス
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
古木・文(p3p001262)
文具屋
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
アーリア・スピリッツ(p3p004400)
キールで乾杯
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで
小金井・正純(p3p008000)
ただの女
アカツキ・アマギ(p3p008034)
焔雀護

●行楽日和
 九月二十四日。
 何の変哲もない一日だが、意外な事にそうはならなかったとも言える。
「はぁい不良中年、どういう風の吹き回し?」
 アーリアは享楽的で色っぽい声色は何時ものままに、からかう調子で笑っていた。
 一言で言い表すなら『珍しい事もあったもんだ』。ローレットのギルドマスターであるレオン・ドナーツ・バルトロメイがイレギュラーズを秋の行楽に誘ったのは彼の誕生日の出来事だった。変な所で行動力に溢れた彼が自分の誕生日を自分で祝うのは別におかしな話ではないのだが――
「よりにもよって、お外でなんて!
 レオンくんが外に出ようとするなんて、明日は黒い太陽でも出るかしらぁ、こわいこわい!」
「オマエなあ」
 と肩を竦めてアーリアを見るレオンの目もそれでいて笑っていた。
 そう、秋風吹き抜けるこの晴天に雹が降りそうな理由はたった一つだ。
「レオンさんお誕生日!? めでたいなぁ、おめでとう!
 で、キャンプか……キャンプ……うん、まあ、屋外で飲むお酒ってのもオツなもんだよね!」
「涼しくなって来て……いい季節になったから、ちょうど良いと思って参加しましたが。
 けど、確か…レオンさんって腰痛を患っているんですよね? 大丈夫なんでしょうか?」
 口々に『もっともな事』を指摘する創やエルが言う通り。
「なるほど、誕生日ならしょうがねぇな! 同年代として祝わなきゃ嘘ってもんだ!」
「キャンプ、森……つまり炎の幻想種の出番じゃな!?」
 或いはアーリアがからかい、「飯の方は任せとけ。期待してもいいぞ!」と腕をぶすゴリョウが豪放磊落に笑い、横合いからニョッキリと顔を出したアカツキが存在感を見せたその通りに。
 本日にお誘い(キャンプ)が彼のイメージから恐ろしくズレていた事に起因する。
「初めましてではないがお久しぶり、アカツキ・アマギじゃ!
 レオン殿がインドア派だったのを今日知った小悪魔系シティーガールじゃよ。
 あ、お誕生日おめでとうなのじゃ、後ドラマちゃんがいつもお世話になっております」
「いえいえ、こちらこそ」
 パタパタと元気よく動くアカツキは舌の方も滑らかだった。

<●><●>

 何処からか「うぉっほん!」という些かわざとらしい咳払いが聞こえればペロリと舌を出した彼女は『ぐりぐり』される前に「また後程!」と退散する。
「オマエ、本当に面白いよね」
「何の事ですかね!?
 コホン……いつも何かと腰が痛い腰が痛いと。
 運動全般を断りがちなレオン君がキャンプだなんて、珍しいコトもあるモノですね?」
「ギャップに惚れ直したりしないかなって」
「しませんよ」
 如何にも余計な事を言いそうな同居人(アカツキ)を散らしたドラマは小走りにレオンに並んだ。
 息を吐くように余計な事を言う彼をすげなくあしらい、
「必要ありませんから」
 ……冷静でかしこいドラマさん、あしらったかと思えばそう言えば絶賛はしか中なのだった。
「オマエやっぱ最近凄いね」
「いえ、それほどでも」
 涼しい顔で動揺を見せないドラマの耳は赤くなり上下にピクピクと揺れていた。
 つまる所、レオンはそういった彼女の様を指摘せずに『悪趣味に楽しんでいる』訳ではあるが――
「依頼での野営経験は無くはないとは言え、私はこう云ったコトは門外漢なのですが……」
「幻想種って如何にも得意そうなのに」
「知識はありますけど……私、元々はレオン君以上のインドア派ですからね?」
 そりゃあ、そうだ。
 風光明媚な森の中を行く一行はやはりちょっとしたバカンスの雰囲気に華やいでいた。
 そして当然と言うべきか、道中ではお約束のやり取りも数多い――
「誕生日かー。おめでとうレオンー!
 いくつになっても、この年齢まで生きられたことはおめでたいことだよー。
 特にここ数年は国ごとの危機とかあったしね……ローレットも大変だっただろうし!」
「ええ、お誕生日おめでとう。
 危険ばっかりの仕事だけど、お互いに一年無事でよかったねって言い合えるのっていいよね」
「まーな」
「カオスシードさんだとアラフォーっていうんだっけ。
 ……ま、二桁の年齢(とし)なんて誤差だし。事故さえなければこの先も人生長いよ。
 ……なにとは言わないけど、やりすぎて後ろから刺されないようにね」
 無事を祝い、労うアクセルの言葉、それから釘を刺すセリアの言葉にレオンは「へいへい」と苦笑した。
「お誕生日おめでとうございます。
 三十過ぎると、誕生日は無事に一年を生き延びたと感謝する、節目の日になりますね」
「……何かこの話の流れだと微妙に怖い事言うね」
「ああ、いえ、そういう訳ではないのですが――」
 文からすればレオンはそう慣れていない相手で『びっくりする程、話の種が足りない』。
 同時に彼女からして彼は如何に気さくでいい加減な男とはいえ、大ローレットのオーナーで……
(……ところで、これ本当に普通のキャンプ?
 ギルドマスター自らが出るような、世界の危機的事件は起こらないよね?
 いや、ギルドマスターが外に出た時点て事件といえば事件なんだけど大丈夫?
 キャンプだけど、テントだけじゃなくて心の準備もしておくべき?)
 やや、見当はずれな心配まで始めていた。
 曰く「刺されるような事はしていない」そうなので大した『事件』は起きまい、多分。
「あ、レオンさん三十九歳なんですね……?」
「実はね。素敵でしょ?」
「すてき……うーん、その。いえ、それに何かある訳では無いデス。
 うちの養父とそんなに変わんないなーとか思ってはいませんヨ、ええはい」
「やっぱ星に導いて貰わんとダメだね、これは」
「導きませんよ! そんな事で!
 それはそれとして、年に一度の誕生日ですから!
 ええ、レオンさんにとって素敵な一日になるよう手助けさせていただきます!」
 キャンプに行こうというのに如何せん動き難そうな巫女服をそのままに、何とも乾いた笑みを見せた正純にレオンがちょっと加虐の雰囲気を見せていた。
「お誕生日おめでとうございます。
 私がはたちとちょっとですから、ちょうど倍くらいになられるのですね」
「……親かな?」
「世代にはなるかと」
 その一方でもう一度ダメを押した瑠璃の言葉にレオンは何とも微妙な顔をした。
 ローレットに集まる奇人変人の見本市は『実年齢』に余り意味を求めないが、それはそれとして『真っ当に年を食う』人間種としてはお肌の張りも腰痛も気になるのが本音という所だろうか。
(冒険者と言えば聞こえはいいですが、彼も彼とて、まとまりのない荒くれものや山師をまとめてそれだけの期間を戦い抜いた猛者です。
 達人の所作を学ぶのは万事の基本。この機会にいろいろと学ばせて頂きましょう――)
 軽く凹むレオンの一方で瑠璃の方はと言えば実に涼しい顔あった。
「それはそれとして、やはり森は良いですね――」
 自然に溢れたロケーションというのは特有のヒーリングを感じるものである。
 誕生日というイベント柄か、今日は何時にも増してレオンの周りに人は多かった。
「レオン、お誕生日おめでとうーー! とうーーっ!
 ボクも、いっぱいお手伝いするからねっ!」
 二度目の「とぅーーっ!」は力強いポーズ付きである。
 晴れ渡る空にも負けない程に元気よく、同時に天真爛漫に屈託のないハルアの頭をレオンはポンと撫でていた。ナチュラルにそういう事するのどうなんだという話も無くは無いが今更だ。
「ほえ?」
「期待してるよ、って事で」
 荷運びの馬と並んで歩くハルアは一瞬小首を傾げたものの、すぐに「うん!」と笑顔を弾けさせていた。
「……ま、我ながら意外というかイメージにないというか向いてないというか。
 野宿の類は若い頃たっぷりしたからもういいかと思ったんだけどね。
 飯盒炊爨には最強の助っ人もいる事だし――」
 レオンはゴリョウをちらりと見てから『三歩後ろを行く』華蓮に向き直っていた。
「ちゃーんと『お世話』してくれるんでしょ?」
「ふぇ!? そ、それは勿論なのだわ!」
 言われるまでもない。家事全般はお手の物、『向いてないレオン』の今日が良きものになるように――華蓮としては元より乾坤一擲、力と腕の見せ所と、そんな気だったのである。
「ね? だから大丈夫って訳――」
「ま、任せておいて欲しいのだわ!!!」
 突然の振りに面白い声を上げて――それでも真剣にコクコクと頷いた華蓮にレオンは笑う。
「そんな所に居ないで、隣に来ればいいのに。あ、何なら腕でも組む?」
「――――」
 そんなもの、何時もの言葉遊びに違いなく。
 傍目から見ればどうしたってレオンの手管に過ぎまいに。
 頬を真っ赤に紅潮させた少女には、きっとそれは分からないものなのだった。

成否

成功


第1章 第2節

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
ベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)
雷神
シロヲ(p3p008315)
にわとり
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)
星月を掬うひと
オラン・ジェット(p3p009057)
復興青空教室
アンジェリカ(p3p009116)
緋い月の

●キャンプI
「出不精のレオンさんご指定の場所ですからね。
 街からそれほど遠くない場所だという見当は付いていましたよ」
「成る程」
「ですからね。私もこうして――朝一の『ビジネス』の後にはせ参じた、という訳でして」
「おめでとうございます」と社交辞令的に微笑んだ寛治にレオンはパタパタと手を振った。
 果たして何時もよりずっとカジュアルな格好で現れた寛治の言う通り、レオンの目的地は本拠であるローレットから然程離れていない場所だった。しかしながら、耳ピクピクな幻想種が「こんな所、良く知っていましたね」と少しだけ訝しんだロケーションは全く素人キャンプに適切だった。
 開けており、近くに綺麗な水場もあり、焚き木なんてその辺りに幾らでも転がっている。日頃の行いに反して天候にも恵まれているのだから、これはもう十分過ぎると言えるだろう。
「それにしても、レオンさんもいよいよ後一年で四十路(こちらがわ)ですか。感慨深いですね」
「言うなよ。忘れてたいんだからさ」
「歳を取る楽しみってものもありますよ。まぁ『三十九』の気持ちは分かりますけどね」
「私も通った道ですから」と寛治。
 談笑の一方で森を「……グル」と存在感のある声が震わせていた。
「……あら、偶然?」
 梢の向こうから顔を出したのは見知った巨竜――アルペストゥスだった。
 元々、この辺りの森でうとうとしていた彼は寝床を俄かに騒がしくした一団が『知っている連中』だった故についてきたらしかった。
「悪い。悪い。ま、悪いついでにオマエも遊んでけよ。ゴリョウとかが肉焼くだろうし――」
「グル……」
 姿格好が物騒な割に穏やかなアルペストゥスが概ね同意の意を示していた。
「――それに何より、さ」
 続けたレオンの脳裏に過ぎったのは『狩り』に出た美少女が二人だった。

 ――折角だからレオンさんにスティアちゃんの手料理をごちそうしようと思ってね!
   というわけで幻想グリズリー(※体長五メートル)を狩ってくるね!
   森って色んな動物がいていいよね! 子供の頃に狼に追われた事思い出しちゃうなー!

 ――なになに? 料理をすれば良いの? 私に任せて!
   ……ってグリズリー!? なんか凄いモノを狩りにいくんだね……
   サクラちゃんってたまにすごい事するよね。私はサメの方が得意なんだけど!

 ――期待しててね! 私は料理得意じゃないけど、スティアちゃんは料理上手なんだよー!
   折角の誕生日だしたくさん味わってね! 私はちょっとでいいよ!
   レオンさんがたくさん食べてね! 誕生日だからね! 残さないよね!
   スティアちゃんと出かけるとサメにばっかり襲われるんだけど!
   今日はそんな心配もなさそうでよかったな。
   あ、でも! 襲われたとしても伝説の蒼剣レオン様がいるんだから何とかしてくれるよね?

 ――もー! サクラちゃんには解体を手伝って貰うよ! というか頑張って!!
   大きすぎて丸焼きなんて無理だから!
   せっかくだし、熊鍋の準備と串に刺してバーベキューもできるようにしておこうかな?
   スペシャルなメニューとして熊の手を使った料理を用意しておくね!
   美味しいらしいよ! たぶん!←※多分
   そんなスティアスペシャルをたーんと召し上がってね!
   余ったらきっとサクラちゃんがなんとかしてくれるはず!
   私は自重するつもりだったから悪くなーい! うん、全然悪くない!

「守る必要あるんですかね、あの子達」
「グルル……」と応じるアルペストゥスが如何にも「さあ?」といった風である。
「シロヲはぬいぐるみである。鶏ではない。
 シロヲは玩具である。食べ物ではない。
 シロヲを見て肉を連想する諸兄よ!
 この日この場を利用して、捕食者としての威光を示そうぞ!」
 身の危険(?)を感じてかどうかは知らないが、その姿が愛らしい『鶏』のぬいぐるみであるシロヲは鉄板にくべられてはかなわんと思ったのか、予めたっぷり食材を持ち込み、更に勤勉に落ち葉や折れ木の端を集めている。
「キャンプの楽しみ方と言うのは十人十色だ。
 一人で穏やかな時の流れを過ごすのを好む者がいれば、大勢でアウトドアクッキングや川遊びを楽しむ者もいる。これは素晴らしきかな、だ」
 目を細めて現場を見回すベルフラウは風に揺られて今日も今日とて流麗であった。
 キャンプではあちこちでテントの設営が進んでおり、狩りにいったポン刀ガールWITH超合金を除いても皆各々の作業を進めていた。早々にサボっているのはコーヒーを啜る寛治にレオン位のものであり、この辺りが良く言えば大人、悪く言っても大人といったところか。
「……折角の誕生日。とは言え、祝うにせよレオンの事を知らなさすぎるな。
 故に祝うのは来年に持ち越しだ。今年は卿と語らい知る事に専念するとしよう」
「おや、意外なお誘いだ。じゃあデートしよう」
「構わんが?」とベルフラウ。「私としては別にやぶさかではないのだ」。
「時に卿はどの程度"戦"(や)れるのだ? 赤犬とは拮抗するとは聞いているが。
 例えば我らが麗帝等はどうだ? ゼシュテルの守護神は――」
 但し、主導せんとするのは多分恐らく常に食いついているベルフラウの方である。
 閑話休題。
「御機嫌よう、ギルドマスター殿。
 こうして直接言葉を交わすのは初めてでしょうか?
 何はともあれ先ずはお誕生日おめでとうございます」
「ああ、サンキューな。厳密にはローレット登録以来、かも知れないけど」
 そしてサボりながらも可愛らしい――幼気ではあるのだが――アンジェリカが折り目正しく声を掛ければ、水を得たようなギルドマスターは滑らかになる。
「折角なのでお酒でも…と、お誘いしたくもありますが、お酒を飲むにはまだ早いですからね。
 せめてバーベキューが始まってからでないと、ええ。
 ……何て、一部の人はその限りではないのかも知れませんが――」
「後でお酌してくれるなら俺もちょっとは頑張ろうかな?」
 如何にも飲める年齢には見えないアンジェリカだがレオンは何も言わなかった。
 ローレットには良くある話であり、『彼女』のパーソナルデータを彼は把握している。
 ……その並々ならぬ事情を把握していてそう言うのだから筋金入りに意地悪とも言えるのだが。
「いつもお世話になっていますからね。その位なら」
 淡く微笑んだココロに「珍しいね」とレオン。
「日頃の苦労をねぎらってあげようかと思いまして。ちょっと興味が湧いてきたといいますか――」
 ココロの知るレオンは『美人を見たら食べてしまう噂のある人』。
 しかしながら……
(私は対象外でしょうからね。ユリーカさんが無事なのがその証拠!)
 ……そういう勝算はあったのだが、ユリーカ(それ)は娘や妹に手を出さないのと同じ事である。
 実際、ドラマ・ゲツクさん(101)はココロちゃんはおろかそのユリーカより圧倒的に事案で閑話休題。
「お誕生日ですし、たくさん飲んでも平気ですよ。飲みすぎても介抱させていただきますから」
 相好を崩し、腕まくりをしたレオンの二の腕を見たココロは軽く頬を染めた。
 何と言うか、まぁ。たくましい。そしてココロちゃんはがっしり系の方が好きである。メイビー。
「……昔はすごく強かったと聞きました、良かったら戦いのお話、聞かせてくれませんか?」
「じゃ、ゆっくり」とウィンクをしたレオンに(結果的には)そうはさせじと食いついた男が居た。
「よお、レオン!誕生日なんだってな。おめでとー!
 アンタとは一度やり合ってみたかったんだよな!」
「俺は別にやりたくねーぞ。オマエ可愛くねぇもん」
『良くある』真っ直ぐなオランの挑戦をレオンは秒で撃墜する。
 実際の所、『可愛い子が相手でも面倒くさがる』のが本当だ。彼を動かすには例えば色っぽいおねえちゃん(へべれけ)とのデート、拗らせてるけど可愛い乙女(31)との一夜(確定)等を餌にぶら下げなければならない。本気になってよ。ドナム出番だぞ。←意味のない全方位への加害
「いやいや! 座ってるだけじゃつまんねぇだろ? ジジイみたいな事言うなよ!
 ここらで軽く準備運動と行……」

 ギャオオオオオオオオオオオ――!

 どの道、オランの持ち札ではレオンを動かすのは難しかったに違いないが……
 耳をつんざく咆哮がそんな胡乱なやり取りの邪魔をした。
 仰ぎ見れば高い梢の上から顔を出す推定十メートルを軽く超える何か変なトカゲの姿。
「……あの……レオンさん助けて……!」
 まさか幻想近郊でドラゴンに出会う筈もなかろうが、モンスター知識を利用して『ドラゴン鍋』を作ると息巻いていたフラーゴラが涙目でキャンプ場に走ってきた。
 小鹿サイズを探すといっていたゴラが、見事に釣れたのはアト・サイン(隠語)だったゴラ。
「親戚?」
「グルル……」
 困り風情のアルペストゥスに軽くボケて……
「サクラとスティアも戻ってこい! ほら、都合よく!
 眼鏡、サボるな。人かき集めてこい!
 じゃ、ローレットの親睦を深める――ちょっとした運動といきますかね?」
 嗚呼、何て騒がしい。何と愉快な休日だろう。
 結果的にこれはココロやベルフラウ、或いはオランにとっても良い機会になるのかも知れない。
 レオンが鮮やかに輝くリミットブルーを抜き放つ――

成否

成功

状態異常
フラーゴラ・トラモント(p3p008825)[重傷]
星月を掬うひと

第1章 第3節

チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
アト・サイン(p3p001394)
観光客
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
アイシャ(p3p008698)
スノウ・ホワイト
白夜 希(p3p009099)
死生の魔女

●仕切り直して
「はっぴばーすでーつぅーゆー、はっぴばーすてーつぅーゆー!
 はっぴばーでーでぃあレオン殿ー、はっぴばーすてーつぅーゆー!」
 嬉しそうな百合子にもし尻尾があったならそれはぶんぶんと高速で揺れていた事だろう。
 何というか何者にも制御し難いと思われていた白百合の生徒会長――美少女は不思議な因果でレオンに良く懐いていた。可愛い子とあらば兎にも角にも手が早い彼をして、ほねっこを投げる位にしか手を出さない誰が呼んだかドーベルマン――いや、まぁ、そんな与太はいいのだが。
「お誕生日おめでとうである! レオン殿! 取ってこい遊びするにはよい日であるな!
 まぁ、吾は嵐でも隕石振ってても取って来いと言われればいつでも取ってくるのであるがっ!」
 何れにせよ百合子はご機嫌でぐったりした熊を振り回しながら、持ち前のギフトで小鳥さんとかリスさんとか連れてファンタジーなミュージカルでお祝いするその姿は確かに『美少女』そのものだ。
「その熊は?」
「……この熊?相撲とって遊んでたらしなびたから持ってきたのである。
 そうだ! ちょーっと待ってるといいのである! 今頭砕いて脳みそ出す故!
 醤油かけてつるーっといくとこれがうまいぞ! レオン殿の好きなお酒にも合うと思う!」
「うん、百合子。骨あげるからとっておいで!」
 慣れたレオンが動物の骨を全力で投擲して危機を回避している。
「う~ん、レオじモテるからな~」
「ん、レオンさんってモテるの? そうなんだぁ!」
「そういう解釈してないで助けてくれないかな?」とやや抗議の視線を向けるレオンに構わず、夏子とタイムはあくまでマイペースだった。もうすぐお昼時だからそこかしこから美味しそうな煙が上がり始めている。こんな時の定番は大体『焼く』が鉄板か。
「夏子さんは何が好き? わたしはうーんと、おにく!
 栄養バランス? そうゆうのよく分からない。おにく沢山くださいっ!」
「キャンプ、キャンプか。良いですなあ……
 なんせ可愛い子が、僕に笑顔向けてめっちゃモリモリ飯食ってる。
 はいはい、おにく取ってあげようね」
「あ、やっぱりとうもろこしも食べようかな? 良い匂い~!
 大きいのが丸ごと焼いてある。ね、これ半分こしません?」
「ん、いただいちゃおっかな。半分でも一本でも」
 元々の誘いは『一人じゃ気後れするから』だったのかも知れないが、結果として天真爛漫なタイムのペースに付き合うのは夏子にとっていい気分転換になっていた。
『ちょっとしんどかった』気持ちも晴天二つの前では溶けるように消えてしまうものだから――
 キャンプは何とも言えん状態で続いていた。
「レオンさん、お誕生日おめでとう!
 ローレットではいつもお世話になっています!
 誕生日にキャンプっていうのもまた新鮮だよね!」
 疲労困憊のレオンの前に今度はチャロロが現れた。
「何か疲れてない?」
「ちょっと、重労働したばっかりでね」
「まったくだ」
 嘆息したレオンに同じくくたびれた顔をしたジェイクが同調していた。
「同年代のレオンが頑張っているなら、と思ったが……
 気持ちはどうあれ、やっぱり痛いもんは痛いな。腰は痛い」
「ああ。嫌なもんだよな、誕生日」
 チャロロは先の共同戦線を思い出し、しみじみ言葉を交わすレオンとジェイクの有様に「ふぅん? 良く分からないけど!」と首を傾げる。
「皆様、お疲れ様でした!
 あんなに大きな怪物を討伐してしまうなんて、さすがは経験豊富な皆様ですね……!」
「オマエがそう言ってくれた事がせめてもの救いだわ」
 瞳を輝かせたアイシャがそう言った時、レオンは有難やとわざとらしく拝んでみせた。
「え? そ、そんな大層なものでしょうか!
 私など料理を作る位しか――
 あ、勿論! 心を込めてお料理を作らせて頂きますので、皆さんと召し上がって下さいませね」
「さてさてキャンプッスよ! キャンプといえばバーベキュー、ですよね!
 大きなトカゲは兎も角です!
 こんな事もあろうかと、イルミナ贔屓のお肉屋さんから仕入れて来てますよ! お肉!
 さらにさらに、優雅な時間を過ごせるようにキャンプ用のコーヒーミルもご用意してみました!
 ゆったり豆を挽きながら自然の音に耳を傾ければ……何か新たな境地に到れるかも!」
 改めて腕をぶしたアイシャと今回は本当に気の利いていたイルミナの先回りに、レオンはもう一度「ありがと」とウィンクした。
「……うーん、まぁ、いっか!」
 何の事はない。知らないなら知らない方がマシという話である。この真っ直ぐなチャロロは幸運な事に、フラーゴラがゴラった結果、

 ――やあ、レオン! 誕生日おめでとう!
 飲み込まれそうなところ喉元で踏ん張ってどうしよっかなーって考えてたら!
 助けてくれるなんて流石はギルドマスターだね!

 何故かトカゲの口からアトが当たりで出てきたり。
 百合子が熊と相撲(意味深)していたりした時、丁度焚き木を集めにいっていたとそういう訳である。アトつきの大獲物は水を得た魚のようなポン刀やら超合金(付き合わされた)の手により絶賛解体中である訳だが、レオンは諦めたようにそんなものに見向きはしない!
「……さて、オイラはなにからはじめたらいいかな?
 キャンプと言えばとりあえずバーベキューかなって思うんだけど!
 オイラのいた世界であった――ジンギスカンって料理もお外でやるのが定番だったんだよ」
「ジンギスカンって……ああ、羊か」
「黙って作業もなんだし、そういえば……趣味嗜好位教えてくれるのかな」
「誕生日だから?」
「何も用意してないし、しないんだけどね」と嘯いた希に「そりゃあ平和でいい」と頷いたレオンは軽く笑う。
 一方で飄々とした希とは対照的な者も居た。
「誕生日、おめでとう、だ……」
「ぱぱ」と消え入りそうな声で呟いたエクスマリアの頭をレオンの手がポンと撫でた。
「こういうきの、プレゼントは、手間暇掛けるのが、喜ばれる、と聞いたのだが……」
 トカゲ退治(じゅうろうどう)を終えたレオンを労うようにエクスマリアは魚の串焼きを差し出した。謂わばこれは娘から父に向けられた手料理といった所だろうか――元々はVR空間の真似事であり、意識しているのはほぼエクスマリアの方なのだが、無表情の一方で『プレゼント』に預かったレオンをじっと見つめる彼女の髪は興味深そうにざわついている。
「うん、旨い。オマエはホントにいい子だね。
 いい子じゃないのはこれからきっと来るんだろうけどさ――」
 遠い目をしたレオンの言葉は思わせぶりであり、それはまさに見据えた彼方から土煙を上げながらやって来る二人組の事を指していた。
「オマエは本当に偉いよ!」
 ちょっと二人に視点をずらしてみれば――
「マリィ、やっと見えてきましたわよ! きっと会場はあそこですわ!
 ぜえぜえ……寝坊すると分かっていたら、昨日は素面で寝ましたのに……
 ごめんなさいね、わざわざ起こしに来てもらって……」
「た、たまには! こうして荷物を持って走るのもいいんじゃないかな! 昔を思い出すしね!
 はぁ! はぁ! 君が寝坊するのは何となく想定はしてたからね!
 寝顔が見られたから役得みたいなものさ! それにヴァリューシャ。
 寝坊より寝ぼけたヴァリューシャが暴れた被害の方が大きかったよ!
 ふふっ、そんな所も可愛いけどね!」
 全くやり取りは状況の目に浮かぶ悲惨なものであった。
 大荷物を持って爆走している辺り、二人共案外この催しに参加したい気持ちが強かったのかも知れない。その面目も立ちませんわ、な有様は如何にも容易に想像できるが全肯定マリア・レイシスの前にヴァレーリヤの全ての行いは美しく正当化されると相場が決まっていた。
 かくて二人はずざざっ、とばかりにレオンの待つキャンプ場へと到着する。
「ちょっとレオン、どうして待っていてくれませんでしたの!」
「『おそよう』」
「……た、確かに飲んだくれていた私も悪かったかも知れないけれど……」
 抗議するも少しは罰が悪いのか何処か歯切れの悪いヴァレーリヤに比べ、
「そうだそうだ! 待ってくれないなんてひどいじゃないか!
 ヴァリューシャが寝坊するなんて分かり切っているのに!」
 微妙にひどいことを言うマリアの方は森の空気を胸いっぱいに吸い込んでご機嫌であった。
 彼女からすれば二人きりの強行軍もそれなりに良いものだったのだからそれはそうか――
「まあまあ。まだ始まったばかりだからな。
 まずはテントの設営だろ。遊ぶ時間もたっぷりあるし――
 うん、昼前に起きたならオマエにしちゃ大健闘だ」
「うっ、褒められた気がしない……」
「褒めてる、褒めてる」と笑ったレオンの追及は一旦諦めてマリアとヴァレーリヤは言われた通りテントの設営を開始する。
「マリィ、ちょっと重いから気を付けて頂戴ね?
 せーので下ろしますわよ! せーのっ!」
「……ん!」
 掛け声は「どっせい」ではなく、見れば見たなりに微笑ましい光景だ。
「お外でご飯食べたり、テントで眠ったりするんでしょ!? こういうのも色々楽しみだね!」
「キャンプはあまり経験がないので、自信がないのですが……焔ちゃんはどうですか?」
「マギーちゃんも経験ないの? ボクもちゃんとしたキャンプはしたことないんだよね……
 でも力を合わせれば何とかなるよ!」
「一休みの準備も十分ですし」とマギーが笑えば焔も「そうだね」と笑顔を見せた。
 たっぷりのココアにマシュマロ。苦いコーヒーは苦手なマギーの提案だ。
「よし、この調子で頑張っていきませんと!
 ……あ、レオンさんも甘いのお好きでしょうか?」
 おやつも十分、ちょっとした非日常も十分で――慣れない作業も誰かとならばそれなりに楽しい悪戦苦闘になるというものなのだろう。
 太陽は丁度真上に上がる頃合いで、些かの脱線こそあれ――キャンプは長閑に過ぎていく。

成否

成功

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