PandoraPartyProject

シナリオ詳細

キャンプ・ローレット

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●シティ・ボーイじゃなかったの?
「キャンプしたい」
 特に夏場は外に出る事を嫌う『蒼剣』レオン・ドナーツ・バルトロメイ(p3n000002)がそんな事を言い出したのは文字通り蒼天の霹靂の如く、突然の出来事だった。
「……インドア派じゃなかったっけ?」
 訝しくイレギュラーズが問うのも無理からぬ事だった。このレオンは筋金入りの怠け者なのである。少なくともイレギュラーズの知る近年の彼は積極的に外を出歩くようなタイプではなく、公私の分け隔てなく怠惰なのだからこの反応は当然の事である。
「いやー、何となくやりたくなって。最近割と涼しくなってきたし」
「確かに。びっくりする位秋の気配はハッキリしてきましたけどね」
「森とか湖とかいけばもっと涼しいかなって。
 練達製のエアコンにどっぷりだったもんだから、最近体力落ちてるしさぁ」
「……一応、伝説的な冒険者としての体面を保っていただきたいんですけどね」
 身も蓋も無い現実を告げるレオンにイレギュラーズは苦笑した。その辺りは何処まで本気か分からないが、レオンが珍しくアウトドア活動をしたいのは本気であるらしい。
「そんな訳で――めんどくせーからあんまり遠くはいかないけど。
 幻想近隣の森? なんか適当な所でキャンプをしようと思いまして。
 諸君等もそれに付き合いませんか、というお話です」
「……なんで俺達が?」
「交流を深め、明日の戦いに一致団結して挑む為かな」
 心にもなさそうな発言ではあるが、愉快そうなレオンは続ける。
「いいじゃん、たまには。非日常を愉しみ、綺麗所と一杯飲んで。
 嬉し恥ずかし何かイベントもあるかも知れないし――何より」
「何より」
「オマエ等、そう断らんでしょ」
「なんでそう思う」
「俺、今日が誕生日だしね――」

 ……成る程、大した自信家だ。

GMコメント

 YAMIDEITEIっす。
 そういう訳でレオンの誕生日シナリオ。
 今年は何故かゆるキャンです。
 以下詳細。

●任務達成条件
・何となくいい感じに終わる事

●森
 幻想近郊の風光明媚な森。
 かなり開けた場所がありそこにキャンプを張ります。
 近くには湖と川のせせらぎがあり、夏は終わりましたがちょっとした水遊びも。
 大雑把にキャンプするには問題の無いロケーションです。

●パート
 朝、昼、晩の三パートを予定しています。
 最初のパートは朝です。出発、道中到着から設営、準備なんかに触れていきます。
 アウトドアに強い人はちょっと差をつけたり、弱い人は困ったりしましょう。
 その辺で現地調達を考えてもいいし、おひるごはんの支度をしてもよい。
 お友達同士で協力したり、その辺を散歩したり下見したりなんかいい感じに遊んで下さい。水遊びは昼のパート、夜のパートは何かお楽しみをやったりすると思います。
 別に複数のパートに参加しても構いません。

●レオン・ドナーツ・バルトロメイ
 ローレットのギルドマスター。
 不良中年。39歳になったそうな。
 お祝いしてもよいし、普通に遊んでいても良い。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 そんな訳で宜しければご参加下さいませませ。

  • キャンプ・ローレット完了
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別ラリー
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2020年11月21日 18時03分
  • 章数3章
  • 総採用数84人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

●午後の時間
 いいね、大トカゲとか熊とかいなかった。
 百合子はほねをとってきた。
 アトは消化されかかったりしなかった。スティアさんは変な料理をしなかった。
 ヴァレーリヤはテントを壊したりしなかった。夏子はきっと元気出た。
 太陽が真上に上がる頃、キャンプ会場は十分な数のテントの設営が終わっていた。
 実に長閑なる休日の風景は些かの物騒な例外を別にしてのんびりとした時間を演出していた。
「……さて、フライングした連中もいるみたいだが、飯時だし。
 この時期に時間ならまだ寒くもないからな。何なら川ででも遊んでみたら?」
 食べたり飲んだり友好を深めたり、遊んだり――
 一仕事を終えたキャンプはお約束にして一番重要な自由時間へと突入するのだ。
 まぁ、最初から皆自由だったとか言わないように。
 一応ここからが遊んだり食べたりの時間なのである――
「ところで」
 レオンは問う。
「なんでオマエここに居るの?」
「さあ? 何となく――気分が向いたからかしら」
 彼の視線の先にはかのおぜう様、リーゼロッテ・アーベントロートその人が佇んでいた。
 唐突とか言ってはいけない。お嬢様は優雅な散策の末、たまたまここへやって来た。
 これ書いてる丁度明日は誕生日じゃないか。時系列的に9/24の出来事であるとか気にしなくていいんだよ!



 GMコメント

 キャンプにおける昼の時間です。
 フライングで既に食べてた連中もいますが、この時間はお昼を食べたり、お三時をしたり、川で遊んだり、その他友好を温めたり。そういう事をする自由時間のフェーズです。
 そんな感じで適当に過ごすと適当に描写される事でしょう。

 宜しければご参加くださいませ。


第2章 第2節

アルペストゥス(p3p000029)
煌雷竜
ドラマ・ゲツク(p3p000172)
蒼剣の弟子
チャロロ・コレシピ・アシタ(p3p000188)
炎の守護者
善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000665)
レジーナ・カームバンクル
コラバポス 夏子(p3p000808)
八百屋の息子
古木・文(p3p001262)
文具屋
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
セリア=ファンベル(p3p004040)
初日吊り候補
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫
エル・ウッドランド(p3p006713)
閃きの料理人
メリー・フローラ・アベル(p3p007440)
虚無堕ち魔法少女
タイム(p3p007854)
女の子は強いから
ハルア・フィーン(p3p007983)
おもひで
マギー・クレスト(p3p008373)
マジカルプリンス☆マギー
笹木 花丸(p3p008689)
堅牢彩華
鏡(p3p008705)
トキノエ(p3p009181)
恨み辛みも肴にかえて
黄野(p3p009183)
ダメキリン

●めしとかかわとか
「ふう、壊してしまったテントの部品も、レオンから(無断で)もらって何とかなったし!
 これで一安心ですわねっ! 流石私達。この世は全て事もなし、というものですわ!」
「うんうん! あの程度で壊れる軟弱なテントが悪いんだよ……!
 ヴァリーシャは虎である私と違って、繊細な天使だからね!
 そんなヴァリューシャに壊されるなんてきっと不良品だったのさ!
 だからレオン君も許してくれるよ!」
 設営に失敗したヴァレーリヤとマリアが窃盗の結果今夜の寝床を完成させたのは太陽が真上に昇った後の出来事だった。普段から敬虔なのかも知れないが色々問題の多いシスターは罪悪感という機能を忘れてこの世に産まれ落ち、心優しく誰からも愛される軍人は特定一名と共にある時だけ倫理観を喪失する。これもまあ何時もの事であった。
「――お昼ですよ!
 さぁさぁ、お誕生日の方々は席にどしーん! と座っててくださいよ!
 遠慮なく、さあ! バンバン食べてくださいね!
 ふっふっふ……イルミナの家事の腕を見せる時ッス!
 このイルミナ・アイが焼き加減を完璧に見極め、イルミナ・アームが全てを掴む!
 これぞまさに圧倒というもので……あっ、それまだ焼けてないッスよ!
 こっちは焼き過ぎちゃうッス、誰か食べ……そっちはまだ!!!」
「オマエも難儀なタイプだねぇ」
 目を白黒させるイルミナをからかうようにレオンが言った。
 アウトドアを楽しもうというのだから特に強い目的は無いのだが、逆を言えば夜露に塗れて眠らない為にも、空腹を満たす為にも。『やらなくてはいけないこと』があるのは言うまでもない。
「まったくもう!
 いくら慣れないキャンプ料理だからって……みんな手際悪すぎるわよ!
 その肉はまだ生焼けだし、そっちの鍋は焦げ付いてるし……
 そもそも薪の使い方も習ってないんじゃない?
 ちょっと貸してみなさい、ちゃっちゃと仕上げちゃうから!」
「幸せそうな人ですわねぇ」
「まーね。多分きっと幸せなんだろうねぇ」
 どうしてか合流したドレス姿のリーゼロッテに肩を竦めたレオンが応じる。
 ……中にはハンモックで涎を垂らし、恐らく有能な自分を夢見ているそんなセリアみたいな奴もいるが、その一方で先程のように頑張るイルミナに加え明らかな主力も存在している。
「ぶはははっ、飯盒の米も炊けてるし、鉄板に金網も準備完了だ!
 というわけで、ここから俺は修羅(ちょうり)に入る! 期待して貰おうか!」
「もたれねぇ飯を見せてやる!」と大きな鮭を片手にぶら下げ腕をぶすゴリョウは何とも頼もしく、
「丁度いいです。お腹が空いたので、お昼にしようと思います」
 一方でこれ幸いと焚火にホットサンドメーカーを取り出したエルは手際良く材料を用意し、同じく「きゃんぷだ! きゃんぷだー!!」と華やいだ声を上げる黄野は串に刺したマシュマロを炙っておやつの時間を愉しんでいるようだった。
「さて、そろそろいい具合かな……?
 タレに漬け込んだ味つけジンギスカン。生ラムとか薄切りとかいろいろあるけど、オイラのいたとこじゃこれが主流だったんだよ!」
「チャロロのはジンギスカンか。それにしても何だか楽しそうだねぇ」
「再現性東京なる場所できゃんぷの定番と聞いたのでな!」
 屈託なく笑ったチャロロと楽し気な黄野の様子をレオンがしげしげと覗き込む。
「アンタがギルドマスターか?
 こっちは最近入った新入りだ。ひとつよろしく頼むぜって言いたい所だが……
 アンタ、何でも誕生日なんだって?」
「まあね」と頷いたレオンの背中からタイミング良く花丸が顔を出した。
「タダ飯の気配がするとこに花丸ちゃんアリっ!
 お魚にお菓子、ジンギスカン! 誕生日って事で誰かがご飯を用意してくれるんでしょ!?」
「オマエがしなさいよ」
「えー、違うの? そ、そんなーっ!?」
「……これ挨拶の印にってわけじゃねえがみんなで食ってくれ」
 冗句めいた言葉にも丁寧に分かり易くショックを受ける花丸にレオンが笑う。
 黄野と共にこの集まりに参加してみたトキノエが丁度いいと助け船を出せば、「ご丁寧にどうも」とレオンはこれも予定通りといった風であった。
 そして、水を向けるといえばもう一つ。
「華蓮」
「……は、はい! なのだわ!」
 相変わらず押しが弱い為、二歩下がってレオンの近くにそっと居たりする華蓮を勝手知ったる感のあるレオンは逃がさない。
「花丸に大盛で取り分けてやって。後、お酌宜しく」
「……!」
 何だかいいように使っている気もしないでもないが、この華蓮ちゃん――概ねお世話を焼くのが好きなので実はそういうのに異論は無かったりするのだろう。
(た、頼られてる。お世話するのだわ!)
 当然、このママ味溢れるえんじぇるは昼間から飲み始めるダメな大人にも滅茶優しい。相手が大好きなレオンであるならば尚更甘いといった所か――
「本当にオマエって難儀なやつだからねぇ」
 ――レオンはレオンで今一つ理由をつけなければ自分の隣に来にくいらしい彼女の事を良く理解していると言えなくはない。可愛い子、好きなだけかもしんないけど。
「お、おい、ちょっ――」
 まぁンな感じでいちゃついてる一方でトキノエはと言えば、このすぐ後に黄野に熱いマシュマロを咥えさせられ実に面白い顔をする事になるのだが、余談であろう。
「本当に何て言うか騒がしい人達ですわねぇ」
 さて。そして、どういう運命の悪戯か『お嬢様(リーゼロッテ)』がここに居るという事は、
「――お嬢様がキャンプ場に来られるなんて!」
 ……今日も必死なレジーナを引き付けるという事でもある。
「いつも汝(あなた)のそばにいられますように……
 我(わたし)はいつもそう願っております故に」
「あら、愛の告白みたい」
 コロコロと笑うリーゼロッテに「べつにまちがっていませんが」と口の中でごにょつくレジーナ。
 土煙でも上げんかの如き勢いで地平線より駆けつけた彼女の頬は色々な理由で上気していたが、恐らくリーゼロッテはそういった機微の諸々も含め、満更でもなさそうに微笑んでいる。手間がかかって面倒くさいというアレでソレな理由で誕生日シナリオを合流させるという天の暴挙も、恋する彼女からすれば福音に違いないのだろう――
「す、少し季節外れですが……折角ですし川で涼んでは行きませんか?」
「あら、そういうのお好きでしたの?」
「ふふふ。解放感のある場所ですから――我(わたし)も少しはしゃいでるのかもしれません」
 レジーナにせよリーゼロッテにせよ基本的には重装備(ドレス)なタイプだ。
 しかし断る事は無く水を向けた蒼薔薇に従者は微笑(わら)う。
「あ、リーゼロッテだ! あそぼー! って遊ぶ話してるんだよね!?」
 丁度タイミング良く顔をぴょこんと出したハルアにリーゼロッテはまた「あらあら」と笑った。
 ハルアとは沢山の面識がある訳ではないが、不思議とそんな気もしない――例えば夢の中で沢山遊んだかのような。そんな『錯覚』はさて置いて、幻想の蒼薔薇は長らく嫌われ者であったから、そういった所をまるで見せない特異運命座標に対してとても好意的なのだ。
「では、ご一緒しましょうか。構いませんわよね?」
「はい。お嬢様のお気に召すままに」
 恭しく言ったレジーナにハルアは「わーい!」と分かり易く元気の良い反応を返していた。
「うん、皆中々元気だね」
 川辺の木陰に腰を落ち着け、ゆっくりと読み進めていた本から顔を上げた文が川遊びの連中に視線をやった。
(楽しそうな声をBGMにするのも乙なもの。
 どうしてリーゼロッテさんがここにいるのか――
 うん、実にミステリアス。それでいい。ちょっとだけ慣れてきた。
 しかし、過ごしやすい陽気だし、木陰で過ごしているとつい眠くなってしまうね……)
 小さな欠伸を噛み殺し背筋をぐっと伸ばした文の視線の先で乙女達が水と戯れている。
 そんな――何とも牧歌的で平和的なやり取りを半眼で眺めるのは鏡であった。
(あれがリーゼロッテ・アーベントロートちゃんですかぁ)
 この幻想に暮らす者ならば知らない者は居ないような名前である。
(――綺麗な人だ。きっと凄く美味しいだろうなぁ。
 その白い肌に一太刀傷を――我慢しないと駄目だけど)
 実に剣呑な感情を辛うじて飲み込んだ鏡は、視線を感じたらしく向き直ったリーゼロッテに「私は銘を鏡といいますお見知りおきを」と温く笑って一礼した。
「あら、今度はすっごい綺麗な人も来てる。あの人が有名なアーベントロート家の」
「え……お嬢居たっけ……? マジだ。居るじゃん」
 傍らのタイムの言葉に遅ればせながらキャンプ場の『異物』に気付いた夏子はふと考えた。
「お嬢が居るって事はジャーマネが……あ、いや、やめよ」
「……?」
 夏子は独り言めいた自分の顔を小首を傾げて見上げたタイムを見て一人で大きく頷いた。
(風光明媚 花鳥風月 琴歌酒賦。
 美少女が爽やかに良い感じの場所でね、笑顔向けて喋りかけてくれてるんスよ。
 これぞまさにローレット所属冥利に尽きるってモンでしょ?)
 全くであり、平和な空間の異物やらそれに纏わり眼鏡を割られそうな男の事なぞ考える必要はない。
「フライングでお腹いっぱいになっちゃったし運動がてらにお散歩にいきたいなって。
 山の色の鮮やさって新鮮で、風も気持ちいいし。川沿いを歩きながらお喋りとか楽しそう。
 ……ホント、いい天気で良かったね! 夏子さんの話も色々聞きたいし!」
 果たしてタイムchangは夏子滂沱のまさに天使のようであった。
 ついでに言えば、
「いらっしゃいませ、お嬢様。別荘地以外のアウトドアにおいでとは、珍しいですね」
「たまには良いかと思いまして。誕生日が面倒くさかったですし」
「おや、幻想の至宝の特別な日を面倒くさいなんて。とんでもない神もいたものですね?」
「本当にね。平気で忘れたりしますから」
「時にお嬢様? せっかくいらっしゃったのですし、川釣りでもいかがですか?
 大自然の中、糸を垂れて渓流と対話する時間は、中々に得難いものです。
 きっとお気に召して頂けるかと存じますが――」
「ふむ」
「何、遠慮は要りません。お代は頂いているようなものです。
 何せ、水と戯れる貴女様のドレスはそれはそれは透けていて、ラインの方もバッチリです。
 唯、そこに居て頂けるだけで百点どころの話ではありませんからね!」
「……」
「――ファンドッ!?」←断末魔
 要約すれば例の眼鏡はこうだったので夏子さん、早晩忘れておいて正解でもあった。
 川遊びは色んな意味で盛り上がっていた。
「秋に入り始めていますし、水着は寒くありませんか!?」
「いいからいいから」
「良くないですよ!? 寒いのは私ですが!?」
「修行だから、修行。師匠の言う事は聞くもんだから」
「絶対違いますよね!?」
 抗弁こそしてみるものの全く子猫の甘噛みのような抵抗にしかならないドラマがレオンに結局水着を着せられている。
(……改めて考えると、随分と攻めた格好をしてしまっている気がしますが……
 こういうのを、レオン君はどう思っているのでしょう?)
 少しはにかみ、上目遣いに自分の顔を見るドラマの気持ちを知ってか知らずか、
「うん。役得だね。目の保養だね」
 ……レオンは軽薄にそんな事ばかり言う。
「可愛いですか?」
「うん」
「似合います?」
「似合うね」
「えっちですか?」
「エロいね」
「……」
「……………ばか……」
 言っておいてドラマは「どっちがバカだ」とほんの少しだけ自分で自分を叱りたくなる。
「そうだ、レオン君!
 そろそろ小腹が空いたりしていませんか?スコーンを焼いてきたのですが……」
 大袈裟な咳払いをしてドラマは態勢を立て直した。「もうおしまいです!」とタオルを被り、用意したバスケットをごそごそとやる。料理は得意ではないけれど、お菓子は分量通りに作れば失敗しにくい――分量通りに出来ない人間には鬼門なのだが、彼女は非常に几帳面である――為、『頑張ってみた』代物であった。
「へぇ」と頷いて一つ摘まんだ彼は「好きなんだよね」と呟いた。
「知ってますよ」と減らず口を叩いたドラマが作ったのは彼が好きな柑橘のスコーンだった。
 はい、イチャイチャ! 閑話休題!
「よーし! 休憩もして元気いっぱいだし遊ぶぞー!
 もう今年はこれ以上機会もなさそうだから……今のうちに最後の水遊びね!」
 シーズンから外れちゃいるが細けぇ事はいいんだよ。今日はとにかくあったかいんだ(書いているのは十一月)な川に焔が足を遊ばせた。
「ひんやりして気持ちいいよ、ほらマギーちゃんもはやく!」
「お日様ピカピカですし、川遊びにはぴったりの気温ですね!」
 飛沫を上げた焔にマギーが目を細める。
「あっ、でもボク泳ぐのはちょっとだけ苦手だから浅いところで遊ぼうね!
 泳げないわけじゃないんだよ、今年は五メートルくらいなら泳げるようになったからね!」
「はい、流されちゃわないように、浅いところで遊びましょう!」
 慌てたように言い訳めいた焔にマギーはくすりと笑みを浮かべて大きく頷いて見せた。
 ブーツを脱いで水面に足を浸せば、川の水は心地良い冷たさを伝えてくれる。
「……グル」
 何処と無く意思疎通がうまくいったようでどこか満足げな顔しているのはアルペストゥス。
 リーゼロッテの来訪から騒がしくも賑やかになった風景に小首をかしげながら、川に体の半分を浸し、魚や鳥を捕まえてはのんびりとした時間を過ごしていた。
 そんな彼が聞いたのは『たんじょうび』の言葉。
「ギャウ」
「……あら。くれますの?」
 ざばざばと水から出て茂みを掻き分け、壊さないように優しく口で摘んだ花を差し出せば、極上の美少女は「ありがとうございます。素敵なドラゴンさん」とその口元にくすぐったいようなキスをした。
 レオンに怒られる前に速攻逃走したマリアとヴァレーリヤも川遊びを楽しんでいる。
「ヴァリューシャは海洋料理が好きだったよね? だったらお魚は好きかな?
 川で魚でも獲りに行かないかい?」
「でも、私――釣り竿をお家に置いてきてしまいましたわ。
 誰かに借りられれば……」
「大丈夫、私の能力ならあれしてこれして全部ビリビリでお魚くわえたドラ猫だよ!
 何だかいい加減にはしょった説明をさせられた気もするけど大丈夫!」
 じゃあ、私は――焚火の係で! すぐに火をおこしますわねっ!」
 紆余曲折、兎に角騒がしかった設営を終えたキャンプ一行の自由時間はそれは素敵なものだった。
 人心地ついた面々は休憩時間のような――自由時間のような。それは辿り着いたご褒美でもある。
 昼の時間も平和に、何事も無く過ぎていく――
「ねーねー! この前、依頼でハイエスタの戦士候補と決闘したの。
 相手にほとんど何もさせずに勝ったのよ。ほめてほめて!」
「褒めてやるけどさ、オマエ何だか犬みたいだね」
 自身の周りをぐるぐる回るかのようなメリーに何処ぞのドーベルマン等を思い出し、シベリアンハスキー? 等と思いを巡らせるレオンであった。
「いーまーのーうーちー」
「戦略撤退だね。流石ヴァリューシャ!」
「――あと、そこの画面からフェードアウトしようとしてるアカ二名。逃がさねぇからそこに直れ」

 だめだった。

成否

成功

状態異常
新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ

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