PandoraPartyProject

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凶星の消えた日

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『我が、滅ぶ……? 滅ぶのか……!?』
 星の祠から放たれた裁きの光に包まれて、大いなるものの肉体はみるみるうちに朽ちていく。
 抗うように治癒の力を全身に流すも、それを阻止するかのようにイレギュラーズたちが集まっていった。
「ぶち抜け! 星の破撃ーーーー!!」
「無限の光の彼方へ、消え去れ! みゃー!!」
 ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)祝音・猫乃見・来探(p3p009413)の魔法が至近距離で爆発する。
「ボクの最後の一撃を喰らえ!」
 コングによって投げられたレッド(p3p000395)が紅蓮の魔力に満ちた拳を叩き込む。
 魔法が、弾丸が、斬撃が、ありとあらゆる攻撃が集中し、治癒の力を上回る。
『い、嫌だ――』
 大いなるものはそこで初めて、恐怖を抱いた。
『まだ、何も成していない! 何一つ滅ぼせてなどいない! 我が使命は、星へ落ちた意味は! 我は何のために生まれたというのだ! なんの喜びすら、知らぬままに!』
 『大いなるもの』。それは名すら与えられずに産み落とされた、『滅びのシステム』であった。
 圧倒的な力と滅びの使命だけを与えられ、名前もなく、野望もなく、愛するものもなく、憎しみすら抱かず、それはただ世界を蹂躙するためだけに星へと落ちた。
 それが今、終焉の地より出ることすら叶わぬまま、滅びようとしている。
「生きたいか?」
 光に包まれ、意識すら刈り取られたそのなかにあって、声が聞こえた気がした。
 目を開ける。切り落とされたはずの両腕は有り、潰された目もすっかりと元のままだ。血塗れだった自分の姿は、星に落ちたその時のように美しくある。
 だが変だ。世界は極彩色の光に包まれ、上下左右の区別もなくただ浮かんでいる。
 時ですら、止まったかのようだ。
 零・K・メルヴィル(p3p000277)が手を伸ばしてくる。
「もし望むなら、一緒に生きてほしい」
『矮小なる人類と共にだと? 馬鹿馬鹿しい――!』
 払いのけようと叫ぶが、どこかその声は空しかった。
「この力の正体が分かるか? これは、ステラさん達がくれた力だ。この世界の輝きってやつを、端末越しじゃないお前自身の目で見ろ」
 囲 飛呂(p3p010030)が現れ、ライフルを肩に担いで呼びかけてくる。
『世界の輝きだと? これが、そうだというのか?』
「大いなるもの。何も無いなら押し付けますね?」
 星影 向日葵(p3p008750)が苦笑を浮かべ、手を伸ばす。
「貴方に【カーフ】の名を贈ります。
 星言葉は信じる愛と温かい心。
 皆が貴方にあげたいモノ。
 こんなに貴方とも共に在りたいと、生きたいと願う人がいるんです。どうか手を取って!」
 他にも次々とイレギュラーズが姿を現し、声をかけてくる。
 メイメイ・ルー(p3p004460)もまた手を伸ばし、優しく微笑みかけた。
「わたし達と貴方はまだ『終わらない』。『滅び』しか成せない貴方は、もっともっと。知るべきなの、です」
「あなたがいないとステラさんたちが困るかもしれませんしね。
 己の目で奇跡や希望を見守る存在になればいい!」
 鏡禍・A・水月(p3p008354)もまた、手を伸ばした。
「ステラ様たちが観た、世界を……仲間を。あなたももう、知っている、はず……」
 そしてまた、ニル(p3p009185)も。
『確かに、見た。この世界は争いが絶えず、憎しみに狂い、魔に侵され続けていた。滅ぶべき世界だ。そう――見えていた』
「ああ、でもな。それはただ『見なかった』だけだ。大体、滅びの化身ってわりにてめえはステラたちを産んでるじゃねえか。てめえはその時点で、ただの滅びであれなかったんだよ」
 腕を組み、紅花 牡丹(p3p010983)が笑う。
 マリエッタ・エーレイン(p3p010534)がふわりと浮かび、笑みをその顔に浮かべた。
「貴方も本当は見たのでしょう? ステラさんたちの目から、この世界がいかに美しく輝いているか」
「俺たちの願いは、少し我儘だけれど……」
 アルム・カンフローレル(p3p007874)が両手を広げる。
「『大いなるもの』……君に、滅ぼすものとしての役割を終わらせてあげたいんだ。世界を創り守る役目を、代わりに俺から分けてあげたい。
 そして感じるんだ。ステラたちが見ているこの世界を」
 最後に、ユーフォニー(p3p010323)が祈るように組んでいた手を解く。
 閉じていた瞳を、開いた。
「私は、貴方をただ裁くつもりはありません。名も持たず、何も持たず、滅びの力と使命だけを与えられた貴方……産まれてからさいごまで、そんな心で終わらないで。
 万華鏡のような世界へ、一緒に行こう?」
 そっと伸ばしたユーフォニーの手を、大いなるものはじっと見つめた。
『フン……貴様等の命と引き換えに見る世界など、いらぬ』
 首を背けると、背を向けた。
「まって……!」
 呼び止めようとした。けれど、大いなるものにそれは届かなかった。
『世界なら、もう見た。貴様等を通して、な。……美しい世界だ。遺憾ながら』
 大いなるものの姿が、極彩色の光のなかで遠ざかっていく。
 光の中に現れた白きステラと黒きステラが、背を向けたままの大いなるものへと呼びかける。
「行ってしまうの?」
 答えは、なかった。
 さようならも。あるいは、それ以外の何かも。そうすることが、最大の思い遣りであるように、不思議と思えた。
 小さく手を振る二人のステラ。
『何も持たなかった我に、最後に意味を与えてくれたな。良き、滅びであった。礼を言う』

 光が、晴れた。
 一瞬の、夢幻のような時間は過ぎ、そこには横たわる巨大な怪獣の姿だけがあった。
「終わった……のか?」
 汗を拭い、もう動かない巨体を見上げる新道 風牙(p3p005012)。振り向けば、傷だらけのグッドクルーザーが頷いた。
「!? ユーフォニー!」
 ムサシ・セルブライト(p3p010126)がそのそばに倒れていたユーフォニーを見つけ、駆け寄る。
 セレナ・夜月(p3p010688)とマリエッタも空から降下し、急いでそばへと駆け寄った。
「あんなパンドラ残量で無茶をして!」
「息は!?」
 急いで確かめてから、マリエッタは安堵の息を漏らした。
「……大丈夫。眠っているだけです」
 その言葉に仲間達もまた安堵の息を漏らす。
「しかし、しぶとい強敵であったな」
「ああ……」
 大和型戦艦 二番艦 武蔵(p3p010829)レイテ・コロン(p3p011010)が、傷付いた身体を休めるように空を見上げた。
 あれだけ雷撃と暴風で荒れ狂っていた空が、もうこんなに凪いでいる。
 フーガ・リリオ(p3p010595)佐倉・望乃(p3p010720)が自然と手を繋ぎ、顔を見合わせた。
「戻ろうか。陣地も、撤収させないと」
「そうですね……。この場所に長居はできませんから」
 こんなに静かでも、ここは影の領域。ただいるだけで命を削られていく場所だ。
 フーガはトランペットを鳴らすと、【青薔薇隊】に撤収命令を出した。
 常田・円(p3p010798)レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)が馬車をとめ、急いで乗るように手招きしてくる。
 その馬車には、一時撤退していた【騎兵隊】のイーリン・ジョーンズ(p3p000854)たちの姿があった。
「どうやら、大いなるものは仕留められたみたいね」
 一次的に隊を抜けていたフォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)が合流し、頷く。
「うん。犠牲者はなし! ……って、言って良いのかな。大いなるものに第二の人生を歩ませることは出来なかったから」
「それにしては、満足そうな顔をしているね」
 オニキス・ハート(p3p008639)は地面に横たわった大いなるものの顔を見やった。
「これだけ多くのものに見送られたのです。この者も満足しているでしょう」
 ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)がそう告げると、迎えのワイバーンたちが飛んでくるのが見えた。覇竜領域の人々が迎えを寄越してくれたらしい。
「さて、と……『次』へ行きましょうか」
 アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)が自分のワイバーンへと騎乗して言う。
「はーあ、覇竜を守ったと思ったら今度は世界かぁ」
 星華(p3p011367)も翼を羽ばたかせ、とんとんと杖で自分の肩を叩く。
 そうだ。滅びを齎す戦場はここだけではない。未だ残っている決戦の地へ、行かなくては。
 迎えのワイバーンに乗り込み、ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)が振り返る。
 広大な影の領域には大量の星界獣の骸が積み上がり、その中心には大いなるものの骸が横たわっている。
 これが、いずれ巨大な墓標となるのだろう。
 世界をひとつ救った、その証として。

 大いなるものの撃破に成功しました……!

 ※最終決戦が進行中です!
 ※各国首脳が集結し、一時的に因縁と思惑を捨て、ローレットと共に決戦に臨む事で一致しました!


 ※幻想各地にダンジョンが発見されたようです。


 これはそう、全て終わりから始まる物語――

 Re:version第二作『Lost Arcadia』、開幕!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)Bad End 8(終焉編)

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