PandoraPartyProject

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シビュラの託宣

 ――さて、何が起こったのか。
 預言者ツロと名乗る遂行者によりイレギュラーズへと送り届けられた招待状には複数の選択肢があった。
 一つ、離反し遂行者として活動しないかという誘い。一つ、一時その選択を保留して領域内に留まるという選択。
 この場に居るイレギュラーズは『誘いは受けなかったが遂行者の領域に留まる』事を選んだ者達である。
 彼等が幸運であったのは招かれたのがカロルの薔薇庭園であったこと。そして、カロル・ルゥーロルゥーがそれ程悪辣で無かったことだ。
 遂行者マスティマに言わせれば非常に無駄な行ないであったのだろうが、遂行者達は茶会を楽しむ事を選んだようである。
 雑談の最中、夢見 ルル家 (p3p000016)はふと問うた。
「疑問だったのですが、原罪であるイノリ殿ってどうやって生まれたんでしょうか?
 ざんげ殿と兄妹って事は生まれてから後天的に原罪になったって事ですかね?
 で、イノリ殿を原罪にしたのがアーク側の神……遂行者の皆が言う偽りの神の対になる存在で合ってます?」
 そもそも、魔種とは何か。その疑問に行き着くのも無理はない。
 この薔薇庭園は滅びのアークにコーティングされた『聖竜』の力が核となっているというのだから。
 タイム(p3p007854)自身も「この世の神や原罪について深く理解してないからうまく纏められない」と呻いたものだ。
 神様とは何か。魔種とは何か。そもそも、滅びた先とは何か――偽りの神と呼ばれたのがこの世界の『神様』なのだとすれば、ルストや遂行者は何を成そうとしているのか。
 カロルははたと考えてから「イノリが生まれた理由? そうねえ、私も聞いただけよ」と口火を切る。
「創造主、つまりは天に御座す神が生命を造り上げた。それがイノリと呼ばれる存在でしょう。
 創造された生命はまあ、通り一遍等に善悪の知識と人間の一般的な想念を有していたワケ。
 ……でもそれって人じゃない神の『失敗』だったのよねえ!
 常識で考えたら分かるじゃない。空中神殿の妹様みたく、気が遠くなるような時間をあんな風に過ごしたい? 人間が、よ?
 だからこそ彼は主の与え給うた世界を管理する役割を拒絶した。神託の男はかくて永遠に消え失せたワケ!
 ……ところで、アンタは出来る? アイツは世界に必要ないから芽を詰めとかそういうの。
 人間一般の想念、つまりは七つの罪源を有した存在は役割を拒否した結果、変質した。
 考え方が逆よ。順番が逆なのよ。イノリという存在が拒絶したからざんげって女が産み出された。
 アンタ達の知ってる神様ってそういうクズなの。アレは『イノリで失敗したからざんげをああいう風に作った』の。
 ――ってルスト様が語ってくれたわ! 真実かどうかはしらないけどね!」
 あ、ちなみにねえ、話してるときのルスト様は素敵だった。顔が良い。
 そんな不必要な情報を添えたカロルにベネディクト=レベンディス=マナガルム(p3p008160)は眉間に皺を寄せた。
「イノリとざんげの話は初耳だな。少なくとも俺達よりも事情を知っていたか……となると、ざんげが空中庭園から外に出るという事は……」
 何か思うことがあったのだろう。アーリア・スピリッツ(p3p004400)はカロルが開示した情報の多さに驚きながらもイノリの顔がいい話じゃなくって、と口にしてから「ルストだったわ」と慌てて訂正した。彼の好きな部分を語っても良いと告げればカロルは幸せそうに笑う。
「ルスト様はね、右の耳朶に黒子がある気がしたからツロに聞いたらゴミを見る目をされたわ。
 ティーカップを掴む指先が最高。あと時々笑った顔、エグい。好き」
「……へえ、そうかい。
 イノリってヤツは与えられた仕事を全うせずにバックレた無責任野郎って考えりゃあ、原罪も大したヤツにゃ見えねえなあ!」
 グドルフ・ボイデル (p3p000694)がからからと笑う。彼もルル家も離反した側だ。これから行なわれる選択には携わることは出来ないが茶会に出席する権利は得ていた。
 神妙な顔をして居た星穹(p3p008330)は「何が正しくて、正解なのかは、難しいところですが。それもまた一つの答えなのでしょうね」と頷く。
「なる、ほど。そのざんげとイノリの誕生秘話が事実なら、確かに酷い。
 一声もなく突然異世界から拉致してくるような神だし、な」
 やや理解出来る部分はあるのだとエクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)は頷いた。
 だからといって全てを肯定できるわけではないとマリエッタ・エーレイン(p3p010534)は知っている。
「ルルさん、私達は何をすれば良いのですか?」
「私の友人である親愛なる聖竜『―――』の心臓をある程度清く保っていて欲しいの。この子の自我を保つためにね。
 その前に……まあ、私は聖女だから『あなた達に聞こえる声で話すわ』」
 遂行者には聞こえず、イレギュラーズにのみ耳に出来る声音はこの庭園の主であったからなのだろう。隣で大人しく茶菓子を囓っていた遂行者アドレを一瞥してから小金井・正純(p3p008000)は彼が何も耳に為ていないことに気付く。

『どうせ、仲間から聞いているのでしょう? 茄子子に、美咲に。聞かされたと思うのだけれど』
 ぎくりと肩を揺れ動かす佐藤 美咲(p3p009818)の傍では遂行者テレサが不思議そうに微笑んだ。
 相変わらず詰らなそうな楊枝 茄子子(p3p008356)は『で?』と問い返す。
『何が言いたいの』
『ああ、そうだね。聖女ルル、君の提示する条件を聞かなくては』
 居住いを正したマルク・シリング(p3p001309)の傍では不安げな表情を浮かべたリュコス・L08・ウェルロフ(p3p008529)が座っていた。
(……本当に、何が正しいのか分からない。心があるのに世界を保つシステムになるなんて、耐えられやしないし。
 それに……遂行者だって心があって自分で判断してる……ルルは……何を、求めるんだろう……?)
 リュコスの視線を受け止めてからカロルはにんまりと微笑んだ。
『聖核は滅びのアークによってコーティングされているわ。ええ、ここにはルスト様だって入り込めやしない。
 だって、コーティングよ? ルスト様だってこの子の全てを取り込む事は出来なかった。それだけ、この子は強かった。
 ……私ったら傲慢だから。もう一度おさらいをしてあげる。

 この聖核は神の国のある程度を担っているわ。冠位魔種の権能だけじゃない。更にそれを拡張するための力の媒体なの。
 よろしいかしら?
 これは、ルスト様の権能に打撃を与える可能性がある代物なの。お前達がコレに干渉すると、ルスト様の居所まで至る可能性がある』

『どうして、教えてくれるの?』
 アーリアは慎重に問い掛けた。タイムは敵に何故チャンスを与えたのかと理解出来ないような顔をする。
『え、単純じゃない』
 カロルは鼻で笑った。
『私に逢ってくれないから。
 女の子ってね、ある程度の餌を貰えないと時々意地悪になるものよ。あの人に私はなくてはならないと思わせなくっちゃいけないの』
 その時、聖女と呼ばれた娘の浮かべていた笑顔は聖女らしからぬものだと正純は思った。
 ああなんて、欲に満ちた微笑みだろうか。

『選びなさい、イレギュラーズ――私は聖女だもの。審判は見守ってあげる』

 ※預言者ツロに招待された者達が『選択』を行った様です――!


 ※プーレルジールでアイオンキャンプ&マナセの小旅行が行なわれているようです……?
 双竜宝冠事件が劇的に進展しています!


 ※プーレルジールで奇跡の可能性を引き上げるためのクエストが発生しました!

これまでの天義編プーレルジール(境界編)終焉の兆し(??編)

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