PandoraPartyProject
『ただの』ヘスペリデス
昏き朱染の空に雷鳴が轟く。
湿度を持った闇が粘つく、不快な空気は肺さえ侵す毒の如きままである。
そんな『ただの』ヘリペリデスに大乱以上の異変は無い。
……否、その痕跡が残されていないというだけの話である。
誰にも観測されない、誰も知り得ない『その戦い』は確かにそこに在ったのだ。
血は沸いた。
肉は踊った。
魂を焦がし、存在を削り合うかのような『闘争』は確かにそこに在った筈なのだ。
全ては竜の魔術がその故だ。
力ある存在のその深奥は、神話伝説に残る奇跡さえ些細な児戯にするという事なのだろう。
嗚呼、まるで『何もなかったよう』なんて。
それこそ、嘘のような光景だ。
聖女然とした『普通の女』は誓って云った。
――今日、自分達は天を掴んで見せるのだと。
眼鏡をかけた皮肉屋は『素直』に頷いた。
――これは最大最高。敵は最大最強だ、と。
雷を纏う軍人は云った。
――この死に場こそ、全員で超えるに相応しいと。
誰より勇者らしい、元・野良犬の青年は云った。
――誰にも出来ないなら、俺に相応しい役割だろうと。
聖職ならぬ聖職は、その癖誰より優しい赤毛の女は渋々云った。
――嫌いでも、こうなれば認めてやると。
穏やかながらに揺らがない銀色の少女は強かに云った。
――守るべきものがあるから、ここは譲れないのだと。
百花繚乱の剣士は云った。
――この時間は何にも代え難い時間だと。
鉄帝国らしい戦いの中に生きる青年は笑った。
――敵が強い程滾るのだと。不可能な程に燃えるのだと。
拳を握る豪鬼は尋ねた。
――愉しいかと。今、お前は熱を持っているのかと。
そして、気高く咲いた百合の花は名前よりも美しく笑って見せた。
――それでこそ、己が闘争なのだと。お前はお前だからこそ、己が闘争に相応しいのだと。
竜が吠え、戦士が吠えた――剛毅絢爛な闘技場は既に無い。
色濃い破滅の満ちる竜域は結論の前の小康を保つだけだった――
※『或る死戦』が決着を迎えたようです……
※ヘスペリデスの戦いにおける戦況報告が届いています――!
※希望ヶ浜を騒がしていた『静羅川立神教 死屍派』の一件が解決したようです――
※『黒聖女』マリアベルの『無慈悲な呼び声』を空中神殿のざんげが『空繰パンドラ』発動で阻害したようです……!
代わりに空繰パンドラの現在値が100000低下しました……
※『空繰パンドラ』の発動を経てベルゼー・グラトニオスによる『裏切り』が発生しました……!
『<フイユモールの終>Goodbye Dear You.のシナリオ内容・情報が更新されました。
※『双竜宝冠』事件が新局面を迎えました!
※豊穣に『神の国』の帳が降り始めました――!
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