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シナリオ詳細

<フイユモールの終>アッシュ・トゥ・アッシュ

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●闘争空間
 加速的な崩壊を見せるヘスペリデス。
 それは楽園の終わりを告げている。
 甘やかで生温い微睡みの時間を覚ます鐘の音だ。
 ベルゼー・グラトニオスが己の権能を制御出来なくなった今。
 彼が守り続けて来た――彼がせめても守りたかったものは滅びの危機に瀕している。
 状況に抗うのは余りにも頼りない希望の糸だけ。さりとて『か細い割にまるで千切れる様子のないそんな糸(イレギュラーズ)』は真深い絶望を切り払うようにして最後の場所まで到達したという訳だ。
「随分と早い再会ではなくて?」
 口元を不敵に歪めたヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)の目前に一人の男が居る。
 激戦の末に一度は退き、機会を『次』に預けた男が居る。
 蒼穹を司る青竜(メテオスラーク)は貴種たる天帝種(バシレウス)の中でも最も旧く強靭な個体の一であった。
 彼は遥かな古来より代替わりすらする事無く、その一角を守り続けている。
 彼とイレギュラーズは覇竜の命運を握るこの一戦で既にやりあったばかりだというのに――
「――つくづく」
「つくづく?」
「考えてはみたのだ。俺は実際、どうする事を一番望んでいるのかをな」
 ――凄絶なまでの竜気を纏うメテオスラークはどう見ても平和な理由でイレギュラーズの前に立った訳では無さそうだった。
「ヘスペリデスのこのざまを見れば、先の事なぞ知れている。
 大方、ベルゼーの奴の我慢もいよいよ限界を迎えたという所であろうよ。
 なれば、このまま捨て置けば覇竜領域は壊れるな。竜も少なからず死ぬだろうよ。
 神託を遠ざける貴様等の願いは叶わず、滅びのアークの器には魔種共の願いが溜まるのだろう。
 それは――実際問題、俺にとっても然程愉快な事ではない」
「じゃあ」
 スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)が一歩を前に踏み出した。
「ここは一時休戦にしたらいいんじゃない……?
 別にここでリターンマッチをする事もないでしょ?
 ベルゼーの権能を食い止めて、それからなら幾らでも――」
「――時間はあるだろうな。『俺にだけなら』」
 スティアの言葉をやや自嘲気味なメテオスラークの声が遮った。
「幻想種の娘。確かに貴様はそれなりに長生きをしようよ。
 人間に比べれば、な。移ろう季節、流れる時の星霜を幾ばくか眺める暇はあろうよ。
 だが、それも俺にとっては誤差に過ぎん。俺にとっては一眠りにしか過ぎんのだ」
「――――」
「譲ったとして。貴様の時を認めても、例えば貴様の相棒はどうだ?
 俺に啖呵を切った赤毛の女は。俺を殴りつけてみせた外界の女はどうなのだ?
『程無く』老いて皺になり、振るうべき力は衰える。次代を待っても同じ事。勇者は揃わん。
『結局はローレットなる特異点はこの時代、滅びの神託が満願を迎えつつあるこの時にしか生じ得ない奇跡に過ぎないのだろう?』」
「……………」
 メテオスラークの言葉にイレギュラーズは思わず息を呑んでいた。
 成る程、長くを生きた――生き過ぎた竜は知っている。
 気が遠くなる程に引き延ばされた時間の末に邂逅し得る勇者の数を。
 この時代、今日この時が歴史の項の中でも如何に際立った特別であるかを他の誰より知っている。
「考えたのだ。この俺が――本気で。
 我が矜持を曲げ、惰弱なる同胞共を慮り。
 ヒト、或いはヒトに近しい身にて。素晴らしく心地良い貴様等に手を貸してやる事も。
『ベルゼーの権能を食い止め、同胞を守り。そんな勇者と改めて決着を付けるその絵までをも』。
 らしくもなく、俺は考えたのだ。今日、この場に限っては――」
 独白めいたその言葉は実際の所、早々と嫌と言う程の結論を告げるものだった。
「――だが、やはりそれは有り得ん話だ。有り得ん話に過ぎなかったのだよ」
「どうして」と尋ねたのは誰だっただろうか。
 この竜には元々人間への敵意は無い。軽侮も無い。
 ベルゼーへの義理も無いと宣い、同胞には幾分かの情を持ち合わせてはいるようだったのに。
「この機会を逸して、限界に高まった貴様等とどうしてやり合える?
 俺が手を貸せば、お人よしの貴様等は俺に妙な情を持つやも知れん。
 首に匕首を突き付けられていなければ、本当の力を引きずり出せんかも知れん。
 俺は俺の闘争以外に興味を持たんが……
 この俺は竜種の誇りにかけて他に命運を賭けさせて俺の勝手を押し通そうとは思わない。
 だが、竜種の興亡の際だと言うのなら、我が事よ。この俺が愉しんで悪い道理もあるまい?」
 例えば深緑の戦いに致命的なまでの横槍を入れなかったのはその為だろう。
 竜の命運は我が事なれば、それを堪能する権利はあると竜は云う。
 何処までも身勝手で傍迷惑な理屈だが、悠久の時で完成した彼一流は言葉で覆るものでは有り得なかろう。
「正直ね」
 サクラ(p3p005004)が嘆息した。
「『分かるよ、その気持ち』」
 致命的な共感に相棒と呼ばれたスティアが顔を覆った。
「全く以て――心地良いと言う他あるまい!」
 共感してしまうからこそ引き合ったようなものなのだろう。
 サクラのみならず咲花・百合子(p3p001385)の言葉も遠からぬものである。
 結局の所、どういう理屈付けをするにせよ、やり合う他は無かったのだ。

 ――次は撃たせろよ。特異運命座標共。

『自制』した彼が一時致命的な決着を先送りにしたとて。
 イレギュラーズが諦めない限りは、ベルゼーと対決しようとする限りは。
 こうなる事は必然だったとしか言えなかったのだろう――
「つくづく、そして重ね重ねの奇運ではあるが……
 吾は個人的にも『借り』がある故。及ばぬまでもその面、もう何度でもぶん殴ってやるのである!」
 ――百合子のみならず、イレギュラーズは覚悟を決めた。
 メテオスラークは最強の竜種だ。彼が苦々しくも、そして驚くべき事に悩みながらも立ち塞がったという事は即ち。
『今日、この場に居るイレギュラーズは一人残らず彼に殲滅されるという事に他ならない。
 凄絶な戦いの末、恐らくは幾分かの傷を刻み。千の勇者を屠った彼の記憶に焼き付くに違いない』。
 先の戦いを考えても到底勝てる戦いでは無く、その結論は余りに明白で確定的だった――
「――ああ。貴様等は俺を殺す事が出来る。
 単なる可能性の提示ではなく、現実的な結末としてな」
「!?」
 ――メテオスラークの意外な言葉を聞くまでは。
「この辺り一帯に俺の『とっておき』を展開した。
 分かるか? 己の律動に耳を傾けろ。そうすれば――貴様等ならすぐに気付く」
 彼の『説明』は酷く胡乱なものだったが、イレギュラーズは語る意味をすぐに知る。
 沸き立つような力がそこにはあった。絶望的過ぎる力の差が、細い希望の先に勝利の後ろ髪を掴める程度には縮まっている!
「竜魔術『剛毅絢爛なる闘技場(アッシュ・トゥ・アッシュ)』。
 この場所は貴様等の可能性を絞り出し、使い果たす殲滅空間だ。
 この俺は展開で力を落とし――逆に貴様等は未来の力を振るう事が出来る。
 貴様等は己が命を屑籠に放り込むように戦う事が出来るだろう。この俺を殺せる程にも!」
 爛々と目を輝かせるメテオスラークに「何故」と問う意味はない。
 結局はこの時の為だったと言っても過言ではないのだろう。イレギュラーズをある意味で『見逃してきた』のは!
「俺は闘争を望むのだ。一方的な殲滅ではない勇者との闘争を。
 莫大な時を埋め、『最高の貴様等』と命を取り合うには――他に無い、最良のやり方であろう?」

 ――何せ。

「――俺だけが安全な決闘なぞ御免蒙る。そんなものは豚の餌にもならぬのだからな!」

GMコメント

 YAMIDEITEIっす。
 今回は全てが『マジ』ですよ。
 以下、シナリオ詳細。

●任務達成条件
・メテオスラークの撃破

●『蒼穹なる』メテオスラーク
 神代種(ガラクシアス)を除く現存する竜種で最も旧い個体です。
 天帝種(バシレウス)の他家が幾度も代替わりする間にも代替わりしていない古竜で竜種最強とも称される武力を有しています。(ジャヴァウォックと一、二を争いますが、こちらは人型を取ったり貴族的に器用です)
 人間形態では竜種並のフィジカルを発揮する事はありませんが、過去の戦いから人間贔屓のメテオスラークは暇にあかせて古今東西の総ゆる武芸に通じる恐ろしい程の達人でもあります。竜種の多くは人間の武術や技に興味を示しませんが、彼は絶大な竜の力を持ちながら人間の器用さを身に着けている存在という事でもあります。
 武器はハルバードや剣、珍しい所では刀等。何でもかんでも次々と使ってきます。
 また人型形態でも竜種魔術とも言うべき究極の力を自由自在に操ります。
 能力傾向は防御に優れていますが、攻撃力が低いという訳ではありません。
 また敵に対応して自身のステータスを組み替えるという能力を持っているようです。
 戦闘開始時点では人型を取っていますが、超巨大な竜種形態に変化する可能性があります。
 竜種形態では攻撃を回避しなくなりますが、一部のBS(行動不能系)が無効化されます。
 又、人型形態・竜種形態共に『BSの割合ダメージ部分』は無効化されます(代わりに代替の固定値ダメージが生じます)
『絢爛なる闘技場』を展開している為、幾分かスペックが落ちています。
 気休めみたいなものですが。
 
●竜魔術『剛毅絢爛なる闘技場(アッシュ・トゥ・アッシュ)』
 自身の周囲の広範囲を魔術的な決闘場に変化させる竜魔術にして遺失魔術。
 物凄い気に入った相手にしか使わない『とっておき』です。
 普通にやってもメテオスラークは真の意味でフェアに人間と戦う事は不可能である事が推測される為、かつて戦ったとされる『暴風』ともこれで殺し合ったんじゃないかと思われます。
 このシナリオにおける最重要ポイントでその効果を以下に纏めます。

・『剛毅絢爛なる闘技場』における皆さんは自身のパンドラを『Bet』出来ます。
 キャラクターはプレイングで指定したパンドラを一番最初に失い、闘技場内における特別な力を得ます。
 この時得る力はシナリオ出発時のパンドラ値に対しての『割合』に応じて強まります。又、この強化は元のステータスの多寡や傾向に従います。
(例:100の人が80をBetすると80%、50の人が40をBetしても80%なので効果は同じです。100の人が60をBetした場合、50の人が40をBetした時よりパンドラの喪失値は大きいですが効果は60%分なので小さくなります)
・『剛毅絢爛なる闘技場』内ではPCは自由自在な飛行能力を得ます。
・『剛毅絢爛なる闘技場』内ではPPPを使えません。
・『剛毅絢爛なる闘技場』に存在する限りPCのパンドラは時間経過で減少します。
・『剛毅絢爛なる闘技場』は隔絶された空間である為、邪魔は一切入りません。
・『剛毅絢爛なる闘技場』は勝者が決まらない限り解除されません。(=全滅ではありません)
・『剛毅絢爛なる闘技場』内ではPCは『イクリプス全身図』の姿になる事を選んでも構いません。

 要約すると『Bet』でドカンとパンドラを賭ける程強くなりますが、時間経過でパンドラが0になった場合死ぬので注意が必要です。
 時間経過だけではなく、メテオスラークにやられても死ぬので賭け方にも注意が必要です。
 強くなるだけではなく、勝つ必要があります。継戦能力も一定に意識するべきです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●Super Danger!
 当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
 PPPで過去運営された全シナリオの中でも最も死が近いです。
 最良のプレイングをかけても死ぬ時は死にます。
 普通に良いプレイングをかけても普通に死ぬかも知れません。
 届かないプレイングをかけた場合、相応確率で死ぬでしょう。
 死亡判定を絶対に受けたくない気持ちがある場合はまず参加してはいけません。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 一応優先付けましたが無理はしないで下さい。
 以上、頑張って下さいませ!


イクリプス全身図
『剛毅絢爛なる闘技場』内での姿の指定です。

【1】使う
イクリプス全身図の姿で戦います。

【2】使わない
通常時の姿のまま戦います。

  • <フイユモールの終>アッシュ・トゥ・アッシュLv:85以上完了
  • 絢爛なる武舞台に死が満ちる。『灰になるまで踊るがいい!』
  • GM名YAMIDEITEI
  • 種別EX
  • 難易度NIGHTMARE
  • 冒険終了日時2023年07月26日 21時15分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費250RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)
天義の聖女
咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
シラス(p3p004421)
超える者
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)
願いの先
サクラ(p3p005004)
聖奠聖騎士
新田 寛治(p3p005073)
ファンドマネージャ
マリア・レイシス(p3p006685)
雷光殲姫

リプレイ

●そして誰もいなくなった
「――実際の所」
 魔獄の如き様相を呈する殲滅空間でその竜は云った。
「俺は、この戦いに昂り、期待以上に満たされている。
 貴様等の――子猫の如き歯牙が竜鱗を撃つ度に。
 幾星霜を積み重ねようと得難き痛みを覚える度に。
 俺という『不可能』を前しても奇跡のような意志を穿ち抜かんとする。
 臆面なき無謀にして何より素晴らしいその挑戦を受け止め続ける程に――」
 朗々としたその言葉は『半ば』独白めいていた。
 その答えは、実を言えば簡単である。
「俺は感謝さえしているのだ。この時間を過ごせる事に。
 失って久しいと思っていたこの情熱は、実に見事にこの俺を生き返らせているのだから!」
 端正な顔に張り付いた哄笑は傷付きながらも変わらず。
 口角を持ち上げ、竜眼を爛々と輝かせたそんなメテオスラークの言葉を受け止めるのは『一人』だけ。
「そんなこと」
 普段の朗らかな調子を僅かばかりも感じさせない『雷光殲姫』マリア・レイシス(p3p006685)の声は冷え切っていた。
「そんなこと、もうどうでもいい。私には一切、何も関係ない」
 にべもなく『友好的』な言葉を切り捨てる彼女を恐らく多くの人間は目撃した事が無いだろう。
「君は絶対に――絶対に許さない!」
 全身に赤い雷光を纏うマリアは犬歯を剥き出しにするように獰猛な貌で言った。

 ――この十人全員、暴風に匹敵する人間だ。私の『魂』が保証します

 過去の『英霊』に手向けを捧げてみせた『ファンドマネージャ』新田 寛治(p3p005073)の痕跡はひしゃげた眼鏡が残るだけ。
 剛腕自慢の『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)は敵が堅牢に突き刺した自慢のストレートだけを残して『消え去った』。
 強気に戦う事を望み続けた最も鉄帝国らしい『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)は満足して逝っただろうか?
 どんな絶望にも折れる事は無く「大丈夫!」の言葉で皆を支えてきた『聖女頌歌』スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)があの頼りになる声を聞かせてくれる事は二度と無く、その親友相方として幾多の鉄火場を共に越えた『聖奠聖騎士』サクラ(p3p005004)の『開花』は赤い血染めの中にある。
 戦場に『白百合清楚殺戮拳』咲花・百合子(p3p001385)の閃光のような連打が瞬く事も無いし、不敵なる『竜剣』シラス(p3p004421)が勇者の奇跡を示せる余地も絶対的に残されてはいない。

 ――せめて、せめてあんただけでも――

 鼓膜の奥に焼き付いた『願いの先』リア・クォーツ(p3p004937)の声はマリアの――残り短いかも知れない――生涯の中でも決して忘れ得ぬ言葉になろう。
 そして、そして何より。

 ――マリィ。

 言わないで。

 ――マリィ……

 聞かせないで。お願いだから。

 ――ごめんなさいましね?

 もうこの世界に『祈りの先』ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)は居ないのだという事実が。
 マリアの全身を怒りと絶望に総毛立たせている。
「絶対に」
 敵が何者であろうと、何を考えていようとも。
 最早マリアには関係が無かった。
「――絶対に殺す」
 宣言は絶対零度よりも尚、冷たく。
 陽だまりの反転したかのようなコキュートスは運命の一戦に怖気立つような願いだけを満たしていた。
「ああ、それでいい」
 メテオスラークは、それが故に歓喜する。
 目の前の敵がこうなれば己を殺し切る事は不可能と知りながらも、最初からそれだけを期待していた。
「殺すッ――!」
 雷迅の如く『迸った』マリアと吠えた竜の巨体が激突する。
 剛毅絢爛なる闘技場(アッシュ・トゥ・アッシュ)。
 観客無き戦いは、最早何を得る事も出来ずとも――『どちらかが終わる瞬間まで終わらない』!。

●最強竜メテオスラーク I
「声が聞こえた気がします。『汝と我等が魂に幾千万の試練あれ』と」
 寛治の冗句めいた――胡乱な言葉にメテオスラークは「奇遇だな」と薄く笑った。
「安心なされよ、蒼穹の竜。
 この十人全員、暴風に匹敵する人間だ。私の『魂』が保証しますよ」
「施しは心底気に入らねえが――」
 口元を皮肉に歪めた貴道の言葉は心底からのものだった。
「――今は。『今だけは』受け入れてやるよ」
 人と竜の身における時間の差は余りにも大きい。
 愚直なまでに己が武道を追求するこの貴道が、
「イヤ? 案外コレは捨てたモンじゃないと思うよ?
 武の頂きの一つにこうやってまみえることが出来るだなんてね!
 悔しいより先に、楽しいが勝るって言うか……まぁ、そんな事言ったら誰かに怒られちゃうかも知れないケドね」
「ああ。対峙するだけで血が凍り、そして沸き立つ。
 たまらないな。ああ、会いたかったぜ、俺もよォ! 『最強竜』メテオスラーク!」
 実に『らしく』屈託なく言ったイグナートが、或いは武を練り上げた者として目の当たりにする『最強』はやはり衝撃的だったらしく獰猛な笑みを隠さないシラスが、例えば目の前の『彼』と同じ時間を有していると言うのなら。
 恐らく『正しい手段』でこの場所に到る可能性はゼロでは無かったに違いない。
 されど、さりとて。幾多の運命を乗り越え、呑み込み。
 総ゆる不可能をねじ伏せてきた特異運命座標とはいえ、そこに届く目は殆ど無い。
 仮に長命の誰かがそれをやり切ったとて、そこに多くの仲間の顔は存在し得ず。
 目の前の最強竜(メテオスラーク)の空腹を満たせる事になるのは、擦り切れた時間の彼方に違いない。
 だからこそ。
「まさかここまでお膳立てしてくれるなんてね。なら命を賭けて応えなけりゃ嘘ってものだよね」
「こうなったサクラちゃんは止まらない事は知ってるから」
「……ごめんね」
 相変わらず鉄火場に付き合わせる事になった親友(スティア)にサクラが申し訳なさそうな顔をした。
 舌を少しだけ出した彼女のバツの悪そうなその顔は、同年代の男子ならば一撃で恋に落ちても仕方ないような――そんな愛らしさに満ちていたが。
「まぁ、サクラちゃんだからね」
 当然ながら相手も相手、『慣れっこ』のスティアが抱いた感想は全く別のものだった。
「……でも、とは言えね。今回については『賛成』だよ。
 まだまだやらないといけない事は一杯ある。
 これは通過点だから――こんな所で負けてなんていられない。
 同じ相手にニ度も負けられないからね。今度こそ打ち勝ってみせるよ!」
 スティアの強い言葉にサクラの笑顔が花咲いた。
 結局、サクラの言葉は実に彼女らしいものではあったが、この場に居る『サクラ的でない』誰にとっても実に納得のいくものだったという事だ。
(ああ、ああ、そうだ。結局コイツは――)

 ――最初から、あたし達を見下してなんていなかった。

(こいつにあるのは……
 そう、頭の芯の、この痛みすらも掻き消す程の、広大な……まるで何処までも広がる青空の様な旋律だ。
 こいつは寧ろ認めてくれている。傲慢に見えて、傲慢じゃない。
 ただこいつは最初から最後まで『空』であるだけで。手の届かない遥か彼方に在るだけで――)
 普段のまるで違う。何処か母を思わせる真白い『玲瓏小公』の姿を取ったリアはメテオスラークから流れる涼やかながら相反して激しい旋律に目を細めるだけだった。
 彼の『音』は本来のベストコンディションからは程遠いリアを励ますかのようである。
『だから』とまでは言わないが、彼との戦いはひとかどに歴戦を重ねてきたこの場の十人を恐ろしい程に昂らせ、研ぎ澄まさせていた。
「まあ、なあ――」
 はち切れんばかりの肉体を完全なまでに『漲らせた』貴道も軽く笑った。
 本来は遥かな高みより、ただイレギュラーズを殲滅可能であろうメテオスラークが、同じ目線まで降りて来て挑戦を受ける事は、確かに彼の言う通り『施し』に違いないのだろう。だが、一流のボクサーは同時に『そうでもしなければ挑戦者すら得られない』孤独なチャンピオンの嘆きを感じ取れない程に鈍感ではない。
「――剛毅絢爛な闘技場(アッシュ・トゥ・アッシュ)だっけ?
 楽しい祭りになりそうだからな。そこはサービスで飲み込んどいてやるよ。
 以前と同じって訳にはいかないが……悪くない、中々のチカラだぜ?」
 拳を握って開いて、『試運転』を見せた貴道がにやりと笑い、
「うむ、相手にとって不足なし!
 で、あるが故に――久しぶりに『遊んでやる』事としようか!」
 百合子は敢えてそんな風に言の葉を紡いでいた。
「――傲慢だな、人の子が」
「くははっ! 至上の不遜は承知の上よ!
 だが貴殿は言う。我々の戦いは対等なのだと!
 吾と貴殿は今度こそ本当に対等なのだと――
 殿方の我儘を叶えてやるのだから、この位の言い回しは許されようぞ!」
「違いない」
 メテオスラークは百合子の――いや、イレギュラーズの物言いにむしろ嬉しそうに頷いていた。
「世界の未来と自分の理想、天秤を掛けて選んだのがそちらだったという事ですわね。
 ……相変わらず気に入らないけれど、熟慮した結果であればもう何も言いませんわよ」
 ヴァレーリヤの嘆息に竜は笑った。
「……実際問題、選べと言われたら……
 私だって理想を取るかも知れませんものね。
 なら、それにああだこうだ言うのは筋違いと言うもので――
 後は、どちらが勝つかを決めるだけ。そういう話になりますわよね?」
 かつての戦いで「嫌い」と言った傲慢も、語るフェーズを過ぎれば後は実力で決めるのはヴァレーリヤの故郷、即ち鉄帝流の範疇だろう。
 彼我の間に流れる空気は決して悪いものでは無い。
 これから『最低最悪の殺し合い』をしようという同士なのに、そこに憎しみに似た感情は薄い。
 限界までに高まった士気と戦士の矜持があふれ出しそうな位の力をギリギリまで身の内に留めているだけだ。
「宣言するよメテオスラーク。今日ここで私達が貴方を討つ!」
 サクラの言葉と共に命を屑籠にBetした『愚かな勇者達』の力が噴き出す。
 血が沸き立つような、魂が震えるような感覚、今日この場所に立てた事は彼女にとっての『幸福』で。
「さぁ、戦おう! 命果てるまで!」
 自然に浮かぶ笑みさえ隠さぬサクラは今日この日に『開花』する!
「これは……何処かの誰かさんが『嫉妬』するかも知れませんね」
「思い切り悔しがらせてやらないとね!」
 寛治の軽口にサクラがやり返す。
「それより、新田さんの方こそ――クリスチアンさんの後だからね。
 生きて帰らなきゃきっとホントに恨まれちゃうよ」
『女心』を語るに目の前の少女は自分より余程適切だろう。
「善処します」とだけ返した寛治は流石に『やられた』感も否めまい――

 ――風が吹く。

 熱を持った肌がビリビリと震えている。
「このヒリつく感じ、久しいね」
 マリアの表情が引き締まり、纏う空気が『まるで』変わった。
「かつての戦場はいつだってこうだった。
 ヴァリューシャ! さあ、準備はいいかい?
 皆! 全員での竜退治を始めよう! この十人なら、不可能だって叶うだろう!?」
 剛毅絢爛の闘技場なる竜魔術の領域に、竜さえ殺す戦士達の気配が満ち満ちた。

 ――それが戦いの始まりを告げていた。

●最強竜メテオスラーク II
「――剣士、サクラ。推して参る!」
 戦場に幾度と無く響いた凛然とした宣言はこの戦いでも揺れる事は無い。
 サクラの威風堂々とした名乗りはそれ自体がパーティの瀑布の如き連鎖攻撃の起点である。
「征くぞ、メテオスラーク!」
 作戦通りに、誰より先に。
 放たれた弾丸のように先鞭を駆けたのは言わずと知れた百合子である。
 風に靡く彼女の黒髪はかつてのような長さではないけれど、その拳の鋭さはかつてにも増してより研ぎ澄まされている。
「見た芸を繰り返すか?」
「お互い様であろう――だが。『厚意』は確かに受け取った!
 吾、美少女にして『人妻』なれば。着飾らせるならばそれ相応に覚悟を果たす事であるなッ!」
 間合いを一瞬で叩き潰す百合子の影はその途上で赤黒くその姿を変えていた。
 華美にして奇異なる赤と黒のドレスは彼女の本質を示すか、或いは彼女の深層が望んだ『ハートの女王』だ。
 それ以上言葉を交わす暇も無く閃光のように叩き込まれた理外の瞬天は元の技の原型も分からぬ程に苛烈に竜を攻め立てた。
「成る程――」
 防御の構えから捌き切れない程の乱打にメテオスラークの目の色が変わる。
「――これ程の覚悟で俺に挑むか!」
 剛毅絢爛なる闘技場における戦闘力は命をどれだけ軽く扱うかの覚悟にも拠る。
「そして。『これ程までに仕上げたか』!」
 同時に――その増幅は元の実力なしには何の意味も果たさない!
 封殺の圧力を加える連打はイレギュラーズがしばしば見せてきた戦術だ。
 回避はこの手数を前にしては無力と言わぬまでも十全に働くまい。
「『派手さ』では一歩譲る他はありませんけどね――」
 寛治の目が百合子の猛撃を受けるメテオスラークの隙を射抜く。
「――生憎と、本日。それ以外を譲る心算はありませんよ」
 百合子の連打は先鞭であり、後に続く全ての味方を押し上げる――号砲ですらある。
 寛治の企図するは敵の封殺。
「小細工を」
「ええ、小細工ですが。この戦いに都合の良い逆転満塁ホームランはありませんから」
『どうせ攻略される一時凌ぎに違いないが、一時凌ぎで得られる時を積み重ねる必要があるのがこの戦いなのだから』。
 こんなものに挑むイレギュラーズもさる事ながら、毎度毎回、愚直に正面から攻勢を受け止めるメテオスラークも大概だ。
 同ヒーラーながらに前衛よりも強固たるスティアがメテオスラークの目前を阻んだ。
「今回も耐えきって見せるからね!」
 花吹雪が如き極小の炎乱が咲き乱れ、青い鎧に絡みつけば流石の彼も鬱陶しそうにこれを払う他はない。
 ほぼ同時に。
「オレはイグナート・エゴロヴィチ・レスキン!
 覚えるヒツヨウはない! イヤでも刻んでみせるからね!」
「今度こそ君の全力を削り切ってみせるよ!」
 強烈な宣言と共にメテオスラークの巨体目掛けて両サイドからイグナートとマリアが肉薄した。
(フィジカルのみの競い合いでは分が悪すぎる。精々頭は使わないとね――)
 互いに殺す力を得たと言うのなら、それをどう使うかは寛治のお得意の領域と言わざるを得まい。
 彼の指示を受けた挟撃の格好は抜群にして絶好の動きに思われた。
 しなやかなイグナートの肉体が躍動し、赤雷を纏った『本来』のマリアがその力を開放する。
 メテオスラーク自身が望んだ、自身を滅ぼし得る力を二人は完全に操り、我がものとしているのだ!
「チカラが溢れるってのはこういう事を言うんだろうね――」
「――まったくだ。今日の私は絶好調だよ!」
 一撃一撃の速さが違う。重さが違う。
 先の百合子やスティアの動きも合わせて、二人から繰り出された技の数々は平時の彼等からすれば信じられない程の猛攻を作り出している。
(……ホントウに、これは)
 イグナートの歴戦の感覚が告げていた。

 ――今回は効いている。

 実際の所、剛毅絢爛な闘技場なくばこのメテオスラークを真の意味で脅かす事は出来なかっただろう。
 だが、運命を燃やす至高の闘技場はその参加者全てに命を賭ける事を求めているのは間違いない。
「少しはソノ気になった?」
「いいや、イグナート。元より今日が最後故、貴様の名、貴様の顔は覚えたぞ!」
 轟と吠えたメテオスラークにイグナートは「そうこなくっちゃ」と笑みを浮かべる――

●最強竜メテオスラーク III
 猛烈な戦いは続いている。
 メテオスラークは最も強力にして防御に優れた竜なれば。
 まさに人型の要塞と呼ぶに相応しいその堅牢は何処までもイレギュラーズの前に立ち塞がるものである。
「愉しいね」
 綻ぶ花のような笑みを見せながら、繰り出す禍華の斬撃は容易に命を刈り取る形(なり)をしている。
 硬質の音を彼我の僅かな間合いに響かせて、無遠慮な一撃を跳ね上げたメテオスラークも似たような顔でやり返す。
「ああ、愉快だな。一撃一撃に実に興が乗っている。
 願わくば、貴様等の失速は見たくないものだがな!」
「むう」と何かを言いたげな顔をしたサクラは語るよりも速度を上げる事を選んでいた。
(今日、この時の為に鍛え上げたのかも知れない!)
 願わくば『出し切れる』事を。
 そしてもう少し欲を張るならば『今の自身でも出し切れない先を望む』。
 それは武芸者なればこそ。『やりたい事』など山とある。
 これ一つで満足する程、サクラ・ロウライトは大人にはなり切れない。
 生き急ぐ二十一歳は羽化しながらもまだ少女のままのようであった。
「はああああああああ――ッ!」
 裂帛の気を吐いて一層鋭さを増したサクラの切っ先がメテオスラークの受けをすり抜けた。
 横薙ぎの深い斬撃に竜の端正な顔が僅かに歪む。
「『今』だよ!」
 この戦いにおいて――イレギュラーズはそんなサクラを中心に主に戦力を二つに分けていた。
 サクラが起点となって動き出すのは変わらないが、彼女はむしろ中心地である。
「まったく竜とは勝手が違うであろうによく此処まで動けるものよな!」
 見事な先制攻撃を加えた百合子、寛治、イグナート、スティアそして当のサクラがAチーム。
 大凡がサクラの『前』に始動する動きを担当している。
 そして主立った部分でサクラの『後』に動き出す役割が多いBチームが貴道、ヴァレーリヤ、シラス、リアにマリアといった面々。
 その得手の関係上、先に仕掛けたマリアと時に後手を取るに有為な支援役に値するリアに除く悉くが『ぶちかます』事を得意とした徹底的な火力枠ばかり。
 要するに、Aチームが食い止め、或いは切り開いた道を吶喊するのがBチームという事になる。
「いい動きです。『予定通りに』」
 寛治の気取るストラテジーはこれまでの所、対戦相手(メテオスラーク)の上を行っているようにも思われた。
 戦況は兎も角として、動きとしては一糸乱れぬパーティ側に即座に敵が対応するのは困難だった。
 幾重と緻密に練り上げた『勝つ為だけの算段』は力任せに振り回すだけの棍棒に非ず。
「予定通り、だと?」
「ええ、まあ。僭越ながら――」
「――『そうでなくてはな』!」
 まさに練り上げた武術と同等に最強の竜を歓喜させていた。
「次はどんな芸を見せてくれる!?」
「芸ですって?」
 リアはかつて『想い人に叩きつけたような啖呵』を切る。
「上等よ! ええ、上等ってもんだわ。
 あんたは確かに空。人の手の届かない空でしょうよ。
 でもね、竜を降す聖者ってのは神話のお約束じゃない?
 あんたを倒せばあたし達も箔が付くってものよね!
 そうよ、空が高くて届かないなら、皆と共にそこまで飛び上がればいいだけでしょ!」
 かつて空に手を伸ばし、夢破れた冒険者が聞いたら何と言う台詞だろうか?
 閑話休題。ことこの戦いにおいては――成る程、リアの言う通りである。
 剛毅絢爛なる闘技場では自在の飛行能力さえ与えられている。
『込み合う』前線も、熱望する対戦相手への道を阻むまい。
「貸しにしとくわ!」
「踏み倒しますわ!」
「嫌な即答するんじゃないわよ!」
 丁々発止と息はピッタリに。支援とそこからの動き出し、見事な掛け合いを見せたリアとヴァレーリヤ。
「まあ、まったく――滾るぜ? 時間一杯にやり合ってもきっとこりゃあ足りねえなあ!」
 一方で何時もより幾分か荒っぽく目を輝かせたシラスが急角度をつけ、メテオスラークの間合いへと飛び込んだ。
「今度は俺に――たっぷり付き合って貰うぜ!」
 吠えたシラスが好むのは『格闘魔術』である。
 一つ一つの技は軽打のそれなれど、完璧に組み上げられたそのコンビネーションは一流と呼ぶに相応しい。
 精悍な体つきに鬼気迫るオーラさえ纏わせた彼の技は卓越の極みにさえ届かんとしている。
 一方のメテオスラークも同じく徒手空拳を選び取った。
 サクラと『遊んで』いた妖刀を放り捨て、シラスの柔とは対照的な剛拳でこれに相対する。
 されど。
「まあ、分かっちゃいるだろうが――そんなに素直じゃないんでね!」
 一瞬、バックステップで距離を取ったシラスが向かってきたメテオスラーク目掛けて閃熱の波を撃ち放つ。
 その暴威に紛れてノーモーションで繰り出された糸(エビルストリング)は竜の自在を阻む密やかで強烈な悪意である。
 当然ながら、その彼と連携を取る『強烈に威力に特化した』ヴァレーリヤはこの隙ばかりを待っていた。
「リアの奢りにもう一つ!」
『既成事実化』には言いたい言葉もあろうが、ヴァレーリヤは『致命者にこそ讃歌を捧ぐ』。

 ――『主の御手は我が前にあり。煙は吹き払われ、蝋は炎の前に溶け落ちる』。

 翳したその手の先に現れた炎は敵の退路を阻み、彼女の行く手を照らす祝福である。
「感謝なさい。この日のため、貴方のためだけに、らしくもなく勉強をし直しましたのよ!」
 不敵に笑った彼女の薄い唇が、

 ――『其は、主の涙である。天に硫黄の火、地には塩の柱。良き者は許され、抗う者は焼け土となる』。

 もう一節、今度は敵を害する聖句を紡ぎ出す。
「――まぁ、お行儀が良いのはこの位で、後は」
 どっせい、と『何時も』の気合が迸る。
 ヴァレーリヤの一撃はシラスの阻害で珍しいミスをしたメテオスラークの鎧の一部をひしゃげさせた。
「――――」
 人型を取る竜の形成において『鎧』は物質では有り得ない。
 鎧とは竜鱗であり、彼の本質そのものだ。つまる所、その見た目が損傷したという事は『見て分かる』傷みが生じたという事に他ならない!
「妬けるぜ」
 短く呼気を吐き出した貴道はボクサーとしてまさか『聖職者』に負ける訳にはいかない理由がある。
「武芸百般なんだって?
『専門』もなしに『何でも』なんて随分な自信家じゃねえか――」
 見事なフットワークで間合いを潰した貴道が幾分かの揺らぎを見せた竜に肉薄した。
「どんなもんか見てやろうじゃねえか! ステゴロだって、一流って言うんなら、な!」
『化け物』は嫌と言う程見てきた貴道の渾身のボディがメテオスラークへ突き刺さる。
「もっと、こい」
「上等だぜ!」
 それでも体を折る事すらない竜に神武の拳は更なる渾身の一撃を振り下ろしていた。
 打ち込みに対して望み通り応じたメテオスラークと貴道の剛拳がぶつかり合い、衝撃波が『闘技場』を駆け巡る。
 並の戦士ならばそこに居るだけで絶命出来そうな殲滅空間は恐ろしく噛み合う武と武の魅せる一時の夢だ。
「チィ――ッ!」
 激しい応酬に貴道の巨体がやや後ろに仰け反った。
「はははははははははは!」
 ややバランスを失った彼に哄笑を上げたメテオスラークが襲い掛かるも。
「だから、今度も止めるって言ったでしょう?」
 その動きを正面から受け止めたのはスティアだった。
 敵と見比べれば余りに華奢と呼ぶしかないその小さな身体で、猛烈なまでの衝撃と質量に正面から立ち向かっている。
「今回は――『引き分け』で終わったりはしないからね」
 嘯いた彼女は『前回』の意味を知らない訳ではない。
 だが、この戦いがあくまで『勝たねばならぬもの』ならば。
『勝たねば生き残る事すら難しい』ものだと言うのならば。
 敵の最大最強の大技を引き出さねば、恐らくは何一つその目は無い。
「――『外砲メテオスラーク』。出さないで倒せるなんて、思わないでね」

●最強竜メテオスラーク IV
「――『来ます』!」
 寛治の警告に従い、パーティが死力の回避を展開した。
 眼前に展開された無数の光球が無慈悲なまでの破壊の力を無数に瞬かせていた。
 相手が千を超える大軍であったとしても『蒸発』せしめるであろうその破壊力に彼は思わず嘆息する。
「これでパワーダウンしているのでしたっけ。
『暴風』氏も随分後世に無茶苦茶な宿題を残してくれたものですよ――」
 とは、言え。
 理由は分からないまでも寛治もまた、この戦いに『らしくもない』熱を感じずにいられない一人だった。
「ええ、ですがそれも結構。燃やし尽くすのでしょう! お互いに! 灰になるまで!」
 幾度と無く狙撃を叩きつけ、普段の彼ならば「安い」とでも言いそうな挑発を繰り返す。
 スティアもそうだったが、パーティはメテオスラークの『ステータス配分』を攻撃力に偏らせようとしていた。
(一つ。まずメテオスラークは『時間切れ』による勝ちを望みますまい)
 寛治は考える。『それ』を是とするような者はこんな闘技場を用意しない。
(二つ。百合子さんをはじめとした――強化された面々の前で『回避』に特化する事は効率に悪い。
 それに趣味でもないでしょうね。『命中』は諦めるしかないでしょうが)
 明らかにメテオスラークは『受ける』戦いを愛好している。
 それは最強の要塞たる自負を含めても当然の結論なのだろう。
(三つ。封殺を嫌うなら『反応』は切れない。『手数』の方も同じ事)
 剛毅絢爛なる闘技場にイレギュラーズだけの時間制限があるのなら、長期戦は望めない。
 なれば削り落としに狙うは、彼の異様なまでの他はないのだ。

 ――『安い』挑発だな。どれもこれも。

「分かっていますよ」とは言わずに寛治は苦笑した。
 竜形態を取ったメテオスラークの巨体が何かを言え大気は渦を巻き、轟と震える。

 ――付き合わぬぞ。これは最早『遊び』ではないのだから。

「はい。タフ・ネゴシエーションという訳ですね」
 寛治は嘯き、それでも諦めない。
 要は『勝つ』ではなく『倒さねばならない』と思わせればいいだけなのだ。
「ここからが――大忙しだね!」
「ま、最初から分かってた話だしね」
 スティアの言葉にリアが笑う。
(私だけじゃない。少しでも長く皆を――サクラちゃんを支えないと!)
(……おかしな話だけど、何時もより勇気が湧いてくる位だわ。
 あんた、分かってるわね。Hades(クソ野郎)。嫌々力まで借りてるんだから――
 しっかりしないとはっ倒すわよ!)
 実際の所、既に傷付き消耗を重ねた二人には言葉や態度程の余裕はない。
 とても笑える状態ではないのだが、強く在らねばとても居られない戦場だった。
 彼女達だけではない。もしスティアが居なかったら、リアが居なかったら立っていられる仲間はどれだけ減っていただろうか。
 最前線でやり合うイグナートやマリアは言うに及ばす。
 強烈な破壊力を猛烈な消耗で吐き出し続けるシラスやヴァレーリヤの攻勢も止まっていたかも知れない。
 この戦いは元より『極細に頼りない勝利の糸を手繰り寄せる理不尽なもの』だった。

 ――果たして。

(まるで災害。これが竜、これが本当のメテオスラーク……!)
 ヴァレーリヤは自身の身体が生理的に震えている事を自覚した。
 目が合うだけで、それが声を発するだけで。生命としての当然の義務が身体を突き動かしそうになるのだ。
 ここから逃げろと。こんな事は辞めてしまえと――
(――は、冗談が過ぎましてよ! ここまで来て怖気づくはずないでしょう?)
 ヴァレーリヤは丹田に力を込めて強く、言い切る。
「参ったと言わせてあげるから、覚悟なさい!」
「流石だね、ヴァリューシャは!」
 恋人のそんな姿を見ればマリアが沸き立つのは当然だった。
(絶対にここは退けない。皆を――ヴァリューシャを守るんだ!)
 共に戦い、共に帰る。
 何百回と繰り返したミッションが今日ばかりは彼方に霞む蜃気楼のようだった。
 軍人としての、或いはイレギュラーズとしてのマリアの経験はそれが『不可能』である事を知っている。
『だが、不可能だからと言って諦めるような者は最初からこの場所に来なかったに違いない』。
「どっせえーーい!!! それから――もう一発貰っていきなさい!」
 幾度目かヴァレーリヤ渾身のフルスイングが巨体を叩いた。
 戦艦に立ち向かう複葉機では戦いは余りにも心もとないだろうが、
「……何度だって!」
 マリアに出来る事は手数を圧倒的に増やし、紅雷で敵が余力を削り取り続ける事。
 どれだけゴールが見えなくてもただ、只管に叩き、奪うそれだけだった。
「ああ! 楽しんでるかい、くそったれ?
 どうだ、とんだ死線だぜ! なあ、どうなんだ! テメェは――熱くなってるかよ!?」
 空を統べるメテオスラークの巨体に砲弾のような貴道のストレートが突き刺さる。
「外砲まで落ちるワケには行かないんだよねぇ……!」
 絶気昂を展開し、何とか体勢を取り戻したイグナートが再び『要塞』へと挑みかかった。
 彼の抱くは勇気と覚悟の拳撃だ。
 彼は罪なき者の盾、彼は境界を譲らない。峻厳たる正義の矜持を示すなら。
 無辜の亜竜(フリアノン)の滅びだけは黙って受け入れる訳にはいかないのだから!
「くはっ! 竜の形。それもまた良し! やっと盛り上がりも半ばと言う事か!?」
 散弾よりも弾けて爆ぜる百合子の連打が城壁に無数の小孔を穿つ。
「以前、外砲は見せてもらった故。
 どう息を入れて、どう動かねばならないか吾は知っている。
 次はどうする!? 青き巨竜よ!」

 ――勝手知ったるは、互いに幸福で不幸よな!

『気の合う』竜の冗句めいた轟音に百合子の口角が持ち上がる。
 メテオスラークの巨体はイレギュラーズの無数の猛攻を飲み込み続けていた。
 しかし莫大な体力と理不尽なまでの防御力はそんな彼等にすら決定打を許していない。
 イレギュラーズの戦いは見事そのもので、その癖まるでメテオスラークに及んでいない!

●分岐点
(分かってたよ)
 シラスはそんな戦いにも冷静だった。
(俺達は攻めに徹しても届かない。それはこれまでもこの先も同じで。
 その上、守勢に回れば押し切られる――)
 最初から真っ当な勝ち筋等転がっては居ないのだ。
 この戦いは悪夢の中の悪夢だから。Nightmareを統べる王のようなものだから――
(――だから。その狭間を『取る』しかない。
 微かな勝機を嗅ぎ取ってやる。絶望を寸断して、すり抜けてやるさ。
 他の誰に出来なくたって――俺なら出来る!)
 猛撃に意志を乗せ、シラスは吠えた。
「――重なり迫る死線を掻い潜れ! 野郎の喉笛に牙を立てろ!
 灰になりたいなら、俺達が灰にしてやるさ!」
 時間制限と激戦の双方はイレギュラーズの命の輝きを削り取り続けていた。
 メテオスラーク自身が施した勇者の加護が無かったなら、全員が軽く数十度は死んでいたかも知れない。
 だが、『その時』まで勇者達は欠ける事無く戦った。
 幾百の危機なる刹那を越え、時に支え合い。
 敵う筈も無い大敵を前に、見事に戦い抜いていた。

 或る意味で。

『だから』だったのだろう。
 パーティは最初から外砲の一撃より産まれる隙を頼み。
 メテオスラークはその望みを知りながら、パーティが最強最後の切り札を使うに相応しき敵と改めて認識した。

 ――実に、良い戦いだったぞ。

 メテオスラークの声が一層の親しみを帯びた気がした。
 粘り、振り切れないイレギュラーズの『時間切れ』は間近であった。
 寛治の読んだ通りメテオスラークはそれを絶対に受け入れない。
 但し、当の本人はそれを知覚する事等出来はしない。
「――――」
 その瞬間、マリアには世界がスローモーションのように見えていた。
 真実かどうかも分からない。幻視か、或いは白昼夢か。妄想か、何やら正体すら分からない『情報』の渦が彼女の脳髄を直撃していた。
 貴道が死んだ。
 スティアが死んだ。
 百合子が死んだ。
 イグナートが死んだ。
 シラスが死んだ。
 サクラが死んだ。
 寛治が死んだ。
 リアが死んだ。
 そして――ヴァレーリヤが死んだ。
『この決定の先に続く未来の風景は非情なまでに絶望的で。彼女が見たくない全てが詰まっていた』。
 だから、心の限りに否定する。

 ――パリン、と澄んだ音を立ててマリアのモノクルが砕け散る。

 或いはマリアが友人のような態度を取ったからかも知れない。
 或いはイレギュラーズがセフィロトでクラリスを救ってくれたからかも知れない。
 もしかしたら、この戦場にリア・クォーツが居たから、だったかも分からない。
 偏屈な神が何を考えているか等、決して人間には分かるまいが。分かっている事は一つだけだ。
 マリアが見た運命の一欠片が、どうあれ決められた敗北を拒めという口下手な『友人(シュペル)』の期待だとするのなら。
(そうさ!)
 尚更、彼女はその光景を否定しなければならない!
「――姉!!!」
 咄嗟に声を発したのは――発せたのは恐らく奇跡だった。
「――!?」
 マリアの声にリアが応じる事が出来たのもまた、奇跡だった。
 安価な運命に頼らない、信頼が故に。習熟が故に。覚悟が故に手が届いた『高い』奇跡だった。
 大きく口を開けたメテオスラークの口内に禍々しい蒼玉が生み出されていた。
「!?」
 イレギュラーズは敵の『外砲の兆候』、或いは都合の良い『必殺の宣言』に目を凝らしていたが『そんなものはなかった』のだ。
 竜は我道を曲げてはおらぬ。
 敵を信じ過ぎた人を愚かと謗るなかれ。
 単に、この竜はリアの言う通り徹頭徹尾人を馬鹿になどしてはいなかっただけだ。
 或る意味で戦い続けた勇者達以上に、勇者達を評価して『勝利(ノーモーション)』を選んだだけだった。
 全ての予想を裏切る外砲は終焉の決定であり、覆せない運命に他ならない!

 ――愉しかったぞ!

 絶望が膨張する。終わりが瞬く。
 瞬いて、次の瞬間全てが――裏返っていた。

●最強竜メテオスラーク V
「間一髪って話じゃない?」
 不敵に嘯いたリアが声を張る。
「――あたし達は仲間から願いを託されて此処に居る!
 アンタが戦うのはあたし達十人だけじゃない!
 人の強さを証明するわ。伝説を越え、蒼穹(あんた)を――天から引きずり下ろす!」
 その運命讃歌はリアがこれまで超えて来た全ての縁を紡ぐ幻奏だ。
『味方の全てに先を打たせる乾坤一擲のその歌唱(オールレンジカウンター)は、まさにこの瞬間に最大の効果を発揮する鬼札』だった。

 ――貴様等……!?

 リアが稼ぎ出したダイヤモンドより貴重なこの刹那を征服する他はない。
 外砲の炸裂より先に、全ての時間が動き出す。
 イレギュラーズが望んだその通りに敵が『攻撃力』に特化したこの一瞬は。
 雨垂れ(マリア)が石を穿ち続けた事で不足したAP(よりょく)を生命力で代替したメテオスラークがこの『不測』を迎えたのは。
 イレギュラーズが与えられた『ハンデ』ではなく、掴み取ったもの。
 メテオスラーク自身が勝ち切るに選んだ選択そのものである。
 故にこれは貴道が吐き捨てた『施し』に非ず。
 シラスが極限で渇望し続けた――パーティに訪れた最初で最後の勝ち筋だった。
 メテオスラークが見え見えの外砲を嫌ったのは、この空間ではそれが致命的な弱体の隙になる事を知っていたからである!
「想い人を残して空に消えた、『暴風』の二番煎じは御免被りますからね!」
 何時に無く強い語調で叫んだ寛治の火線が間合いを灼く。
「我々は悪夢に勝利し、新しい物語を作る! 我が至高の蒼薔薇よ、御覧あれ!」
「ここで竜でも黙らせられなきゃ、斃した漢とした『誓い』なんて果たせない!
 ヤツが冠位魔種に認められたのに、オレが竜種に怯んでたんじゃナサケないってものだろう!?」
 黒風を纏って前に! ただ前に!
 イグナートの吶喊が竜の大顎を跳ね上げた。
「この戦いでっ!
 皆を守れなくて何が聖職者だ。最後の最後まで諦めてなるものかー!」
「これで貴方を倒す事が出来たなら……私達の勝ちだ!」
 スティアが最後の力を振り絞ってサクラに『託す』。
 真に研ぎ澄まされ、生と死のギリギリを縫うように奔ったサクラが裂帛の気合を千載一遇に突き刺した。
「これが私の……落花繚乱だぁぁッ!!!」
 サクラの脳裏を過ったのは仲間で、強敵で、師匠で――兎に角、彼女の全てだった。
 死の光球さえ恐れず、竜の大口をぞぶりと抉った彼女に声ならぬ悲鳴が響く。
 最強の竜が初めて上げた苦痛の声にパーティは一気呵成に攻めかかるだけ。
「楽しかったぜ、竜の勇者よ」
 獰猛な獣のように喰らい付いたシラスをメテオスラークが『必死』に払う。
「そろそろお開きの時間ですわね!
 貴方のために最高のプレゼント、お気に召しまして!?」
 この勝利の女神(ヴァレーリヤ)は横面を張るものなのだ。
 暴力的な一撃はこれまでが嘘のようにメテオスラークを叩きのめす。
(いつまでも遊び回ってないで、さっさと戻って皆のために戦いなさいな――)
 その心根の優しさは言わずに想い。

 おおおおおおおお……!

 絶叫する竜と未来を見据えていた。

 ――敗れるものか。この俺は、蒼穹。最強の、竜!

 死に体に近いメテオスラークがそれでも吠える。

 ――俺は嬉しいのだ。喜んでいるのだ!
   貴様等は、こんなにも素晴らしい!
   もう二度と叶わぬと思っていた『暴風の景色』を、それ以上を。
   今、まさにこの俺に見せてくれているのだからな――

「実に天晴な敵であるな。見事と言う他はない」
「ああ、認めるさ」
 百合子の言葉にマリアは言った。
「想いを! 命を! 魂を! 賭けるに相応しい戦いだったとも!」
「まったく気が合うな」
 貴道もまた笑った。
 この期に及んでも態勢を立て直し、それでも勝ち切ろうとする竜を止めるには賭す以外の術がない。
『この瞬間に倒せないのならば、全員が死ぬのは分かり切っていた』。
「何が起きても恨みっこなしで行くとしよう。泣き言も無しで頼みたい」
 百合子が笑う。
 やり切れば何処にも後悔等残るまい。
「これはそういう戦いなのだ」
「そうだね。でも、私は皆でハイタッチで終わりたいな」
「同感だ」
 野蛮にして美しき戦士は、誰よりもストイックなボクサーは、多くの死を見てきた軍人は視線を合わさずに誓い合った。
「うおおおおおおおおおお――!」
「はああああああああああああああッ!」
「くはははははははッ――良いぞ、実に良いッ!」
 三人はそれぞれに今日最大の気を吐いて、メテオスラークに吶喊する。
 貴道の一撃が竜にめり込む。
「……ッ……! 大サービスだ! 腕の一本くらいはくれてやるさ!」
 口内を恐れる所か飛び込んだマリアは一撃の代償にその右腕を蒸発させ、墜落する。

 ――さあ、来い!

 揺らがず、ぶれぬメテオスラークに最後に百合子が肉薄した。
「実に、数奇な出会いであった」
 彼女の眼前には間もなく放たれるであろう『絶望』が在る。
「彼我は紛れなく敵であり、しかし吾は貴殿が嫌いにはなれなかった」
 恐らくは、メテオスラークも同感だろう。
 我が身に疵を付けた美少女を、心の底から気に入っていた。
 竜は美しく、強い者を好む種族だから。
「故に残念だ。これで終わりなのも――配偶者にも申し訳が立たぬのも」
 尻尾を巻いて逃げてしまえば良かったのだ。
 そうすれば、覇竜が滅びるだけだったのだ。
 そんな事は出来ないから、イレギュラーズはここに在り。
 そんな事は出来ないから、咲花百合子は余りにも気高く、美しい。
「最後としよう。最後の一撃まで、貴殿なら付き合ってくれようが――まさか女に恥をかかせまいな?」
 比翼の声が背中を押した!
 百合子の乱打は彼女のこれまでの中でも最も速く、最も強く乱れ咲き。
 弾けた外砲は目も開けていられない程に世界を白く、白く灼き尽くす。
 剛毅絢爛なる闘技場がひび割れた。
 急速に歪んだ世界が現世へ戻り、滅びを迎えつつある竜域の一幕で生温い風が頬を撫でた。

 ――その風景に竜と少女の姿は、無い。

成否

大成功

MVP

咲花・百合子(p3p001385)
白百合清楚殺戮拳

状態異常

郷田 貴道(p3p000401)[重傷]
竜拳
スティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)[重傷]
天義の聖女
咲花・百合子(p3p001385)[死亡]
白百合清楚殺戮拳
ヴァレーリヤ=ダニーロヴナ=マヤコフスカヤ(p3p001837)[重傷]
願いの星
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)[重傷]
黒撃
シラス(p3p004421)[重傷]
超える者
アベリア・クォーツ・バルツァーレク(p3p004937)[重傷]
願いの先
サクラ(p3p005004)[重傷]
聖奠聖騎士
新田 寛治(p3p005073)[重傷]
ファンドマネージャ
マリア・レイシス(p3p006685)[重傷]
雷光殲姫

あとがき

 YAMIDEITEIです。

 このシナリオの判定は非常に悩み、最後の最後まで『誰』が相応しいか決めかねていました。
 しかしながら、『美しいもの』が散るのはこの竜戦の必然だったのでしょう。
 マリアさんの見た『光景』はすんでで拒否出来た選ばれなかった未来です。
 成功はおろか壊滅でもおかしくないシナリオでした。
 作戦的にはリアさんのオールレンジカウンターが刺さっていました。
 しかしこのシナリオには『一切のハンデはない』訳ですが、ハンデを計算に入れた戦い方をしていないとは言えませんでした。
 そのギャップは致命的な状況を招きかけましたが、或いはそれを食い止めたのも縁や想いだったのかも知れません。
 外砲までに余力を削り続けたのも生きているでしょう。
 勝つ気でなかったのなら酷い結果になっていたのは明白です。
 第一に全員が日和らず、死力を尽くして前を向かなければ確実に勝てませんでした。
 故にこれはほぼベストの結果と言えるでしょう。

 シナリオ、お疲れ様でした。

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