PandoraPartyProject

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ああ、鉄の帝よここにあり

 いくつもの戦いがあり……。
 いくつもの勝利を刻んだ……。
 この鉄帝の首都で、進撃は続く。
 されど、あの忌まわしき太陽はいまだ空にあり。
 それはいまだ、我々の頭上より消え去ることはなかった。

「おわりだ」
 誰かがつぶやいた。
「おわりだよ……どんだけ木っ端を倒しても、下っ端を倒しても」
 それは、帝都に住む市民の言葉であり、
「バルナバスには、勝てないのか」
 この国に住むすべての人々の不安であった。
 バルナバスの力は強大である。彼の麗帝ヴェルスを退けたように。そして今まさに、漆黒の破滅を空から落とさんとしているように。
 鉄帝の民は、ローレットに必死に力を貸していた。貸してはいたが、その身の内に『不安』がなかったとは決して言えない。
 勝てない、のではないだろうか。
 死ぬ、のではないだろうか。
 恐怖。不安。絶望。そういったものを、あの黒き太陽は吸っている――。
 帝都よりはずれた、うらぶれた都市。その酒場で酒におぼれる男がいた。
 絶望に、淀んだ顔を空に見上げる女がいた。
 帝都にて決戦はおこれど、すべての民を勇気づけるほどの濁流に程遠い。
 そういった国民たちの負の絶望は、今もなお、あの黒き太陽に流れ込み続けているのだ。
『あきらめないでください』
 ラジオから雑音が流れた。
『我々はアーカーシュ・北辰連合。あなた達とともにあるものです。希望を――』
「またアーカーシュからのラジオか」
 酒場で飲んだくれていた男が言った。
「きれいごとを。奴らは空の上にいるんだろうさ。冬がやばくなったって、太陽が落ちてきたって――自分たちは空の上に逃げられるんだものな」
 それは、ひがみや八つ当たりに近い言葉だ。アーカーシュのメンバーは、自身の身が亡ぶとしても、最後まで戦うだろう。だが、その想いは伝わらない。
 鉄帝と国に、言葉を届けられる手段を持っていても、その言葉を伝える力を持たない。

『反応は芳しくありません』
 通信から響く落胆の声に、マルク・シリング(p3p001309)は、
「そうだろうね」
 と、静かにうなづいた。
 恐れていたことが起きていた。というのも、アーカーシュには『求心力』が足りていない。それを補うように北辰連合とは連携しているが、それでも。
「特に、首都方面に対しての影響力が少ないんだ。これは予期していたこととはいえ――」
「まぁ、確かに。俺たちは空の上で安穏としているよう見えるだろうがよ」
 バクルド・アルティア・ホルスウィング(p3p001219)が悔し気にうめいた。そうではないのだ、ということは、本心では地上の人々も理解しているだろう。だが、心に潜む僅かな翳は、今まさに滅亡が眼前まで迫っているというこの状況下において、その負の感情を増幅し、その眼を曇らせていたことも確かだ。
 端的に言えば。多くの人々は絶望しており。アーカーシュの言葉では、それを拭い去ることはできなかった、といえる。
「私たちの言葉でも足りないか」
 悔し気にうめくベルフラウ・ヴァン・ローゼンイスタフ(p3p007867)へ、マルクはうなづいた。
「北辰連合の求心力は、些か局地的ともいえるからね。
 派閥が六つに分かれてしまった弊害が出てしまったか」
「歯がゆいな……ここにきて、俺たちだけではどうにもならない事態が起きている……」
 ちっ、とその美しい顔をゆがませるルカ・ガンビーノ(p3p007268)。一進一退のこの状況において、必要なのは民の力であることに間違いはなかった。戦うのは、ローレット・イレギュラーズだけではないのだ。これは、国を取り戻すための戦いだ。そこに国民が介在しないのならば、何の意味もない。
 加えて――何度も言うようであるが、国民の絶望とはすなわち『黒き太陽』への力の供給であるともいえる。国民が絶望し続ける限り、彼の太陽は大きく膨れ上がるのであり、我々が希望を見せて一致団結できなければ、すなわち敗残は決まったようなものなのだ。
 力を借りたい。鉄帝の国民すべての。
 だが、アーカーシュ・北辰連合だけでは、力が足りない。
 その打開策を――2陣営は、持ち合わせていない。
 どうすれば、いいのか。
 泥濘に沈みゆくような感覚。だが、そこへ手を差し伸べたのは。
「よう。困ってるようだなァ、アーカーシュ総司令殿?」
 レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン (p3p000394)をはじめとする、帝政派の面々だった。

 町はずれの酒場にて――。
 ぶつ、とラジオの放送が途切れた。いよいよ、放送を続けられるだけの余力もなくなったか、と、酒に飲まれた男は思った。
 終わるのだろう。この国は。潰えるのだろう。多くの命とともに。
 そう思えば思うほど、ふつふつとした絶望とか諦観のようなものが、体があふれて空に飛んでいくように思えた。それは悲しい力になって、空に浮かぶ黒の太陽を一段と大きくするのだろう。それは男の妄想であったけれど、一概に間違っているとも言えなかった。結局の所、人の負の想いを糧にあれは成長するのだから。
 となれば、と、ある女は思う。我々は、己の負によって潰されるのだろうか。いっそそれが、あの時――バルナバスが帝位を簒奪したときに、あきらめた我々に与えられし罰なのだろうか。以上に変わりゆく国を奪還することをあきらめ、弱肉強食というもっともらしい分に屈した、自分たちの。
『そうじゃァねぇ』
 と、ラジオから声が聞こえた。
『皆の諦めないという気持ちが、力になるんだ』
 と――。
 ラジオの声が言った。

「つまり、帝政派の切り札を切るわけです」
 と、オリーブ・ローレル (p3p004352)が言った。
「我々には求心力があります。しかし、この言葉を全国に伝える手段がなかった」
「バイル将軍は、『切り札を切るのを待て』って、私たちに伝言を残していたんだ」
 スティア・エイル・ヴァークライト (p3p001034)が言う。
「たぶん……『このタイミングを待っていたんだ』。最高に効果を発揮できるタイミングで、アーカーシュ・北辰連合の『ラジオ放送』を使える、このタイミングを」
 イズマ・トーティス (p3p009471)がそういうのへ、マルクがうなづく。
「……帝政・南部連合派の求心力があれば」
 マルクが言った。
「国家全土に、僕たちの言葉を伝えられる――」
「そう、派閥の垣根を超えて、言葉を伝える。
 かつての鉄帝を、奪還(とりかえ)す、と。
 六派閥すべての――いいえ、我々すべての、鉄帝国民すべての、力を以って。
 今、我々の想いを一つとすべきなのだろう」
 恋屍・愛無 (p3p007296)が、静かにそう告げるのへ、
 マルクたちの返答は、決まり切っていた。

『我々は、窮地に陥っています。黒き太陽はいまだ潰えず、彼の冠位魔種は、今だ玉座に居座っている』
 ラジオから、声が聞こえた。
 どこかの家のリビングで、
 どこかの酒場で、
 どこかの避難所で、
 どこかの街角で、
 ラジオの音が響いていた。
『我々は、負けてはならないのです。前帝……いいえ、麗帝ヴェルスの治世を、今一度、この手にとり返さなければならないのです』
 誰かが、その声を聴いていた。
 誰もが、その声を聴いていた。
『我々は、立ち上がらなければなりません。
 あるべき、鉄帝の姿を取り戻すために!
 そう――決起の時は、今なのです!
 勇ましき、勇敢なる鉄帝の民としての、意地と力を見せるのは、今、この瞬間なのです!』
 ラジオから聞こえる。声が。思いが。激励が。
『今まで鍛えてきたのは何のためですか!
 今まで生きてきたのは何のためですか!
 今まで鉄と血の国で過ごしてきたのは何のためですか!
 そう、すべては今この瞬間のため!
 立ち上がる時のため!』

 歌が聞こえた。

 ――峻厳なる連峰に、讃えられしわが故郷。

 誰かの呟いた歌だった。

 ――栄光なる鉄と血と、祖より伝わる鋼の体よ。

 それは街角で、酒場で、リビングで、
 どこかで、どこでも、誰かがつぶやいた歌だった。

 ――神よ、我らに力を貸すことなかれ。我らの血肉と矜持とで、万難を排すことを誓わん。

 国歌だった。それは、鉄帝に伝わりし、古い、古い、国歌だった。
 誰かがつぶやいた国歌は、やがて誰もがつぶやく声となった。音となって、歌となって、皆が、皆が、謡うそれになった。

 ――ああ、鉄の帝よここにあり! ああ、鉄の帝よここにあり!

 国歌が歌われる。謡われる。それを言葉にするだけで、まるで古来から刻まれた、鉄帝人としてのDNAが呼び覚まされるような気持がしていた。
 冠位魔種、何するものぞ。我ら鉄帝。鉄帝の民。
 貴様のごとき憤怒で、鍛えられた我らの意をくじくことができると思うな!

「やろう」
 誰かが言った。
「立ち上がるんだ」
 誰かが言った。
「平和のために!」
「祖国のために!」
『立ち上がれ!』
『決起の時は今!!』

『か、各地で住民たちの決起が始まっています!』
 アーカーシュからそう通信が届く。声は届いた。今、すべての国民へ。
 帝都でも、大きなうねりが、国歌の歌声とともに響いていた。

 ――ああ、鉄の帝よここにあり! ああ、鉄の帝よここにあり!

 響く。歌声が。希望が、うねりとなって。

「アンタは、こういったな。レフ・レフレギノ。
 『誰かが英雄にされるなら、誰もが英雄にされなきゃ嘘だ』って」
 レイチェルが、つぶやいた。
「その通りだ。
 『誰かが英雄になれるなら、誰もが英雄になれなきゃ嘘だ』。
 そう思うぜ」

 誰もが英雄になれる時が来た。本当の意味で新時代の英雄たちが、今祖国を取り戻すための決起を起こしたのだ。ここに立ち上がったのだ。
 それは、革命派として決起した人民たちとともに――いや、もはや派閥などは関係ない。
 すべての人民が、今この国を取り戻すために立ち上がった。
 決戦のために!
 いざ、今こそ、最後の決戦の時だ!


 ※帝政派の切り札、『決起の時は今』が発動しました! アーカーシュのラジオ放送を利用し、全国民への決起を促しています!
 グロース師団に勝利しました!
 Im Namen eines Heiligen(聖女の名において)のうねりが、『人民軍』になりました!
 鉄帝全国民、奮起を開始しました! あらゆる戦場で、市民たちが立ち上がり、決戦に挑まんとしています!

 All You Need Is Power(鉄帝国のテーマ) 作曲:町田カンスケ


 ※<鉄と血と>の決戦シナリオで戦勝報告が挙がっています!
 『フローズヴィトニル』の封印を開始するようです。


 ※ラサでは『月の王国』への作戦行動が遂行されています!

鉄帝動乱編派閥ギルド

これまでの鉄帝編ラサ(紅血晶)編シビュラの託宣(天義編)

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