PandoraPartyProject
エウカリストの終焉
聖都は賑わいを見せた。真白き都を包むのは『正義遂行』を終えた騎士達への労いと、祝宴の気配である。
子供らを洗脳し、偽りの神――それは終焉獣(ラグナヴァイス)と呼ばれる滅びの手先であった――を信仰していた国であったという情報は瞬く間に天義内に知れ渡った。
その理由は単純だ。
――聖遺物が燃えた。
銀は毒を孕み、水は腐る。
法王フェネスト六世に信託が降りた。
彼を偽の預言者とし、真なる遂行者が正しき歴史に導くというものだ。
直ぐに箝口令が敷かれたが実害を被る港街エル・トゥルルから天義国内にその噂が巡るのは早かった。
その噂を掻き消すようにアドラステイアの話しが国内へと広がったのだ。天義騎士団も国家を護る為に奔走したのだろうかとアンナ・シャルロット・ミルフィール
(p3p001701)は考える。
「時に、アドラステイアは?」
「……信仰の中心であり彼等の信じていた神『ファルマコン』を、僕たちが倒したんだ。
アドラステイア、いや、アスピーダ・タラサは元の姿に戻っていくだろうね。時間は掛かるだろうけれど」
まずは下層に当たる部分の外壁を壊すのだろうとマルク・シリング(p3p001309)は告げた。
「ああ。先ずは、アドラステイア上層攻略作戦の成功に感謝を。イレギュラーズの力添えなければ、彼の地はあの儘であった筈だ」
リンツァトルテ・コンフィズリーは騎士団を代表して恭しく頭を下げた。アドラステイア上層作戦に参加していた騎士達は傷を癒やす他、保護することになる子供達の治療や出自調査にあたっているらしい。
「うん。皆の頑張りが、偽物の神を打倒したんだ。それに、イコル中毒の治療方法も分かったんだろう?
聖獣になってしまっては、もう……救えないが、イコル中毒の段階の子供なら、治療できるらしい」
やはり全てを救いきる事は出来ないのだろう。だが、イコルを常習的に飲んでいた『だけ』の子供ならば中毒症状を薄れさせ通常の生活に戻れるというのは吉報だ。
イル・フロッタは傍らに立っていたスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)と手を繋ぎながらほっと胸を撫で下ろした。
「皆、怪我は?」
「……まあ、無理する人が居るのは確かかも?」
スティアがちらりと見遣ったのはサクラ(p3p005004)であった。視線が逸らされる。咳払いをする彼女にアーリア・スピリッツ(p3p004400)はくすくすと笑った。
「ええ。けれど生きていれば儲けものよ。
……けれど、それだけを話すために集めたんじゃないでしょう?」
「そうですね。『魔女喰い』を通してファルマコンと会話したときも、色々と気になることがありましたし」
疑雲の渓と呼ばれていた渓谷にて『魔女喰い』の撃破を終えたココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)はマルク達と共に『魔女喰い』を撃破した。
それは渓底に落ちてきた子供達を喰らい糧にしていたらしい。
アドラステイアの『魔女裁判』――キシェフのコインを手に入れるために他者を蹴落とす子供達は日々、魔女として友を蹴落として来たのだ。
そうしてファルマコンを肥やすばかりであったアドラステイアの最終戦では幾つもの不可解な事があったという。
――我が方舟は、選ばれし者を運ぶが為に必要して居た。それ以外の地は全て朽ち滅されるのだ。
「……まるで、預言のようだね」
マルクが言えば小金井・正純(p3p008000)が頷いた。
「ファルマコンは終焉獣、つまりは『滅びのアーク』によって産み出された生き物だった。此処までは在っていますね?
それは、故意的に何者かが産み出した生物であった。そこからファルマコンを利用して様々な者の思惑が混ざり合って今がある」
リンツァトルテは頷く。正純の言う通り最初はファルマコンが産み出され、アスピーダ・タラサに座したのだろう。
そして、ティーチャー・ティマイオスやティーチャー・カンパニュラを始め、マザー・カチヤや肉腫バイラム、新世界が集まり今があった。
「問題は――そのファルマコンを産み出したのが誰か……だね?」
シキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は共に戦ったサンディ・カルタ(p3p000438)やリア・クォーツ(p3p004937)、クロバ・フユツキ(p3p000145)を思い出す。
誰もが幼い命を救うために奔走した。命をも賭して良い、それが誰かの明るい未来になるならばとも願ったほどだった。
「ファルマコンが名前を言ってた……ルスト……。それって……『傲慢』……?」
皆を導く為に邁進したフラーゴラ・トラモント(p3p008825)は呟いた。
リンツァトルテは「恐らくは」と紡ぐ。
「アドラステイアは――子供達が犠牲になるあの魔女の都市は、壊滅した。これ以上のあの地での犠牲はないはずだ。
だが、エル・トゥルルを中心に起っている神託騒動はこの都市の成り立ちにも密接に関わっているかも知れない」
じわじわと何かが輪郭を帯びていく。だが、まだ全容は掴めない。
神託を降ろしたと言うことはその順序の通りに物事が進んでいく。
『今がサーカス事変をイレギュラーズが止めなかったと言う場面を真似ている』ならば――つまり、そう、あの一件は始まったばかりなのだろう。
「『傲慢』の影がちらつくのも困ったものだね。……警戒は続けなくちゃ。でも、それより。ねえ?」
「うんうん、そうだよ、リンツさん。先ずは勝利を喜ばなくっちゃ! ねー、イルちゃん!」
サクラとスティアに促されてからイルは「先輩よくぞご無事で!」と突進して行き、見事に転んだのだった。
※アドラステイアの『神』ファルマコンを撃破しました――!
※アドラステイアは壊滅状態となり天義聖騎士団の管理下に置かれることとなりました。
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