PandoraPartyProject

PandoraPartyProject

『アドラステイア』中層報告

 鉄帝国の動乱の最中、天義との国境線に見られた『悪しき影』は天義本国による鉄帝国への宣戦布告かと思われた。
 だが、未然に防ぐべく動くイレギュラーズ達はその中に冠位魔種の影を見たという。
 果たして其れが『本物』であるかは定かではない。その名を騙る者出会った場合は対応は長期化するであろう――

 そうした動乱の中に独立都市アドラステイアが一枚噛んでいることは報告に上がっていた。
「中層の防衛を行なう聖騎士の数は減少しているみたいです。外に出てる子供達も多いみたいだから」
『イコル』の過剰摂取を行なった子供の保護を行ないたいと考えていたココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は中層から子供を連れ出せたという成功例から見ても、アドラステイアは現在手薄であると感じていた。
「それは殉教者の森やその一帯の一連事件に噛んでいる所為か」
 レオパル・ド・ティゲールの問い掛けにココロは頷く。中層が手薄であり、地図が手に入った今はアスピーダ・タラサの地形と照らし合わせれば活動に支障はない。
 アドラステイアと呼ばれた独立都市はそもそもが『港湾警備都市』を元にして作られている。
 元は不凍港を見張るために設置された警備都市であったが冠位強欲による『大災』の際に騎士が出払い、その隙にアドラステイアに乗っ取られたのだろうと天義は考えていた。
 聳え立った高き塀が都市を隠すように覆い、更に外周にも塀を作ることで本来は存在していなかった『下層』部分が建設されたのだ。
 下層はスラムと呼ぶに相応しき現状であるが中層に登れば石畳の街が広がっているのもこれに起因する。
「……、下層で他者を蹴落としてでも中層へ登りたいと子供たちが望むのは無理もない現状です。
 彼等はそれをきっと、意図してやっているのでしょうね。人の見にくさと弱さを知り、敢て其れを利用している」
 苦々しげに呟いた小金井・正純(p3p008000)にレオパルは「だろうな」と苦々しげに吐出した。
 下層の子供達は『疑雲の渓』と名付けられた渓底に魔女達を落としている。当たり前に、生き残る為に。
 この都市では『不正義』や『裏切者』を魔女と呼び、魔女裁判を起こし他者を蹴落とすことで報酬が得られる仕組みなのだ。
 その理由も様々だ。例えば、息をして普通に生きていただけなのに「誰かに色目を使った」として魔女裁判に掛けられるラヴィネイル・アルビーアルビーのように。
 魔女の烙印を押されてしまえば集団で糾弾され暴力の果て、渓底に落とされ続ける恐ろしき場所。
 その地に変化が起きたのは寒々しい『一つ前の冬』の事であった。
「イコルの製造工場が落とされた――という話しはご存じよね?」
 問うたのはアーリア・スピリッツ(p3p004400)であった。彼女の傍にはマリエッタ・エーレイン(p3p010534)クロバ・フユツキ(p3p000145)の姿も見える。
「イコルの製造工場があったのはフォルトゥーナという地区。壊滅状態になったあの場所に居たファーザー・バイラム――肉腫であったから、彼の寄生体――は現在行方知らずなの」
「……けれど、上層から細々とイコルの供給は続いていて……」
 マリエッタは引き攣ったような声を漏した。イコルの原材料は『神様の血』と『バイラムの肉片』であったのだから。
 少しは上層で確保されていた理由も保険としてバイラムの肉片を保管していたティーチャー・カンパニュラが居たからなのだろう。
 だが、在庫も底をつく可能性があった。だからこそアドラステイアが新たに行ない始めたのが『成人の儀式』なのだという。
「……聖銃士幹部生(プリンシパル)は帰ってこない――か」
 苦々しく呟いたクロバにЯ・E・D(p3p009532)は「見てしまったから、はっきりと『報告』する」と告げる。
「イコルは。『神の血』を飲んだものは聖獣に転じる
 これは元からイレギュラーズの中では知られていた。騎士団は、真実であるか計りかねていたみたいだけど」
「そして、イコルの供給量が減った今、アドラステイアは『神の血』を飲ませる『大人の儀』をプリンシパルに行って居ます。
 聖盃を傾け……直ぐに体を変化させてしまうそうです。
 今まで下層に流通していたのは『薄めたイコル』でしたから即効性はなかったのですが――その為に下層の子供を『大人の儀』に呼び、新しく孤児達が売られている」
 取引記録を手にしたのだと柊木 涼花(p3p010038)は告げる。二人の報告にマリエッタは「そうして、手駒を増やしているそうです」と絞り出した。
 全ての情報は『どうせイレギュラーズは死ぬだろう』と考えて何でも話してくれたマザー・カチヤが情報源である。
 其れを裏付けるようにア・プリオリ図書館からは資料が幾つも見つかっていた。
 そして生き証人は――
「……あの、アリソンさんは?」
 アリソン・コレット・ブトナ――それはスティア・エイル・ヴァークライト(p3p001034)にとっては苦い思い出ではあるが、アドラステイア内部で見つかった彼女は『サクラちゃんバリア』等で見事、確保に至ったのだ。
 アリソンはイレギュラーズの報告と押収資料が正しいことを尋問で証言したのだそうだ。ブトナ家にも調査は伸び、女主人は現在姿を眩ましているという。
「我々が見た獣は人であったモノ。それは人間を作り給った神への冒涜ではありませんでしょうか」
 ゼノビア・メルクーリは朗々と宣言した。『ガラテヤの光』とも呼ばれた信仰の徒は現状を憂うように声を張る。
「渓底に『投げ捨てた子供』は『魔女喰い』と呼ばれる獣が食らうと言う書物までもが見つかったと言います。
 その様な状況で手を拱いていることが出来ましょうか。投げ居られた子供は『神の供物』となるというのです」
「……魔女喰い」
 レオパルが聞き直せば、その問いに答えたのは笹木 花丸(p3p008689)であった。
「正純さんが見付けた絵本、だったけど。その中にあった『魔女喰い』は渓底で『神の糧』を得ているらしいんだ。
 もしも、本当に存在していたら……アドラステイアの神様は人を食っているか、人の死を養分にして居る可能性もある」
「なんと神を愚弄する行為でしょうか!」
 ゼノビアは叫ぶ。その危機迫る様子にシキ・ナイトアッシュ(p3p000229)は息を呑んだ。
「……その、アドラステイアの攻略作戦はいつになるんだろう?
 実は『家族』が潜入していて、こんな状況だから心配なんだ」
 レオパルは直ぐにでも作戦を立案し隊を編成するようにと騎士達に声を掛ける。
 出来るならば彼を――イレイサ (p3n000294)を、早くあの地から抜け出させてやりたい。そう願うシキの傍でアーリアは「急がないと」と呟いた。
「あの時、私達を逃がす時……プリンシパル・アウセクリスが、イレイサ君の『大人の儀』が決まったって」
 ――どうやら、手を拱いている時間は本当に無さそうだ。

※独立都市アドラステイア中層の調査が完了しました(『幸せの詩、本質の鎖』『繊月の影に』)
※<大乱のヴィルベルヴィント>二つの期間限定クエストが開始されています。


鉄帝動乱編派閥ギルド

これまでの鉄帝編アドラステイア

トピックス

PAGETOPPAGEBOTTOM