PandoraPartyProject

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竜宮弊キャンペーン!

 さざ波と海鳥と、そして世界中の富が行き交う島。フェデリア島、シレンツィオリゾート。
 その政治中枢にして議事施設、通称『フェデリア・ハウス』の広間には五角形のテーブルがあった。
 中央にはシレンツィオを示すロゴマークが描かれ、それぞれの辺には椅子がひとつずつ。  椅子の背後には国旗が掲げられ。海洋、豊穣、鉄帝、ラサの四つの国旗が掲げられていた。残るひとつの椅子の背後は大きな窓となり、その向こう
には総督府と無限の海と空がある。
 そんな風景を背にして座るのは、海賊風の服を着た幼女であった。
「諸君、良い知らせと悪い知らせがあるのだ」
 椅子の高さを限界まできこきこあげてから、幼女――『シレンツィオ代表執政官』キャピテーヌ・P・ピラータは声をあげた。
「昨今ダカヌ海域に頻出している新種の魔物『深怪魔』への根本的な対処方法が判明したのだ」
「それは良い知らせですの? 悪い知らせですの?」
 怪訝そうな顔で言うカヌレ・ジェラート・コンテュール(p3n000127)。彼女の背後には青い旗に海洋のエンブレム。
「良いほうじゃないっすかね? だって、深怪魔に怪我させられた人は一杯いたっすからね。そのせいでクイーンエリザベス号のクルーズツアーだって中止になっちゃったし」
 一方、ジュースのはいったグラスからのびたストローより口を離していうフィオナ・イル・パレスト(p3n000189)。背後にはオレンジカラーにラサ傭商連合のエンブレムがあった。 「こういった時のセオリーは、どちらを先に話すか尋ねるものだ……と聞いたことがありますが?」
 月ヶ瀬 庚(p3n000221)は行儀良くしつつも背もたれによりかかり。どこかリラックスした様子を見せている。背後にあるのは桜模様と豊穣の紋。
「…………」
 堅っ苦しい顔をしているのはパーヴェルという鉄帝陸軍の制服を着た男だけだ。胸のバッジは首都憲兵隊のものだが、当然ここは鉄帝首都ではない。いかにもな軍人という顔だが、目元の皺には政治家特有のそれがあった。そして彼の背後にはブラックカラーと鉄帝国のエンブレムが輝いている。
 それぞれ国の代表と呼ぶには若干ズレる。しかし代表してもおかしくはない程度の地位や身分をもった者たちである。
 カヌレとフィオナの視線を受け、パーヴェルはその岩のような顔を若干しかめる。
「……悪い方、なのか?」
「いや、どっちでもないのだ。どっちから聞きたい?」
「ならば悪い方からだ」
 パーヴェルの発言にも、場の空気はさして重くならない。フィオナがふたたびジュースに口をつけた所でキャピテーヌが手元のバインダーを開いた。
「深怪魔を封じる力を持つ竜宮城の乙姫殿だが、あいにく必要となる神器『玉匣(たまくしげ)』が壊され、深怪魔の封印が行えない状態にあるそうなのだ」
 パーヴェルが「それではだめではないか」という顔を隠さない一方、庚はすかさず手をかざした。
「良いニュースは?」
「修復方法が分かっていて、充分に可能で、しかも竜宮城の加護も受けられる」
「なるほど」
 庚はゆっくりと二度頷いた。
「僕たちにとって深怪魔は未知の外敵でした。だから対処方法もまた知らなかった。
 そこへ、事態を好転させる手段とその専門家が現れ協力してくれた。充分ポジティブな話ですね」
 話は纏まったのかなという空気をカヌレが出し始めた所で、庚は続ける。
「しかし、その情報だけなら書面でも良かったはず。僕たちを集めた理由があるのでしょう?」
「当然なのだ!」
 よくぞ聞いてくれました。と言わんばかりにキャピテーヌがぴょんと椅子の上に立ち上がる。
「玉匣を修復するためには、散らばってしまった力の欠片こと『竜宮弊(ドラグチップ)』を集める必要があるのだ! 竜宮弊の場所は分かっているけど、危険な場所がいっぱいなのだ。
 そしてこういう時頼りになるなんでも屋を、私達は知っているのだ!
 そう――ローレットなのだ!」
 意気揚々という様子のキャピテーヌを見て、庚が肩の力を抜いた。
 彼女の『ローレット好き』は皆の知るところである。
 リヴァイアサンと戦った父の影を、共に挑んだローレットに重ねているのかもしれない。
「各国の代表者から依頼料を集めて、ローレットに竜宮弊の回収を依頼するのだ!」
「って、ことはー」
 フィオナがちょいっと人差し指をかざした。
「どの国が一番チップをゲットするか勝負っすね!」
「望むところですわ! ローレットの皆さんに、どの国にチップを預けるか投票してもらうことに致しましょう!」
「そうくると思ったのだ」
 といっても、ここシレンツィオリゾートの中の話。どの国も充分に互いの縄張りを尊重し合い、(無番街のようなダークサイドと上手に付き合いながら)それぞれの国が望む利益を上げている。これ以上望むことは特になく、高望みは力の均衡を崩し利を失うことになりかねない。
 つまりこれは、各国代表のおこした――『ゲーム・イベント』なのだ。

 ほどなくして、一番街を中心としてシレンツィオじゅうにこんな広告が広がっていった。

『竜宮弊キャンペーン!』
 竜宮弊(ドラグチップ)をゲットして指定の国家へ投票しよう!
 各国家のマニフェストはこちら!

 豊穣:優勝のあかつきには一番街に瑞の像を建設するものとする。犬バージョンと人バージョンの両方である。……本当に建てるんですか?
 ラサ:最もチップを集めたなら、一番街に大使館を建設するっす。とびっきりオシャレな建物にしましょう!
 海洋:我が国家が投票数一位となったなら、ソルベ氏が自らの生まれた卵の殻を見せて下さるそうです。だ、大胆ですわ! ローレットは皆家族のようなものだそうです。
 鉄帝:リトル・ゼシュテルに鉄帝国の自治権を持たせるものとする。既に経済的独立性は保たれているが念のためだ。

――代表執政官キャピテーヌ・P・ピラータ

 こうして、サマーフェスティバルへのカウントダウンが始まった。
 今年の夏は、アツくなりそうだ。

※シレンツィオリゾートにて竜宮弊キャンペーンが告知されました! 今年は水着に着替えてダカヌ海域へ行こう!

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