PandoraPartyProject

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夢の終わりと明日の階

 『すべて忘れろ』。それが、原罪のシュプレヒコールと呼ばれた男の最後の言葉だった。
「ロナルド、君は……」
「忘れよう、小鳥。アレの意思を無視して覚えておく嫌がらせより、小鳥の人生にアレがこびりつく方が我(アタシ)は嫌だよ」
「うん……そうだね、肉腫の命まで支払って生き延びようとした汚い相手を覚えておくのは、二人にとっても良くないもんね……」
 ヨタカ・アストラルノヴァ(p3p000155)が何事か言葉を紡ごうとして、その言葉はしかし宙を彷徨った。武器商人(p3p001107)はその亡骸すらも彼の視界に入れぬよう遮り、入り口へと顔を向けさせた。辛うじて最後まで立ちはだかり、二人を守ったフラーゴラ・トラモント(p3p008825)も武器商人の言葉には異論なく、終わった戦いで、殺した相手に思いを馳せることを拒絶した。
 異世界と化したノウェル領主館の内部は既に通常の空間へと戻り、ダンスホールに降り立ったイレギュラーズ達は目の前に転がり落ちた勝利という事実をまだ受け止めきれていない――尤も、残された怪王種達を討つ必要もあったため、安堵していられる余裕がなかったというのも本音であるが。
「ここに居たか、ヨタカ。皆も……」
「無事なようならなによりですよ。私達はかなり消耗してるので」
 そんなダンスホールへと顔を見せたのは、ゲオルグ=レオンハート(p3p001983)ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)の二人。両者ともに相当な消耗状態にあり、決して楽な戦いではなかったことをありありと感じさせる。
「ゲオルグ……! 玄黒は?!」
「アーヴィンの旦那、その様子だと芳しくなかったようだが大丈夫かい?」
 ヨタカと武器商人の言葉に、両者はともに渋面で返す。作戦の如何はさておき、どうやらこの戦いで小賢しく飛び回った2匹の小蝿は仕留めそこねたと見える。
「少なくとも、この領地からは追い返した。追撃は機会を待ってになるだろう」
「なに、面倒そうなお嬢さんはもうキズモノですよ。あれじゃあ人前に出るのもしばらく無いでしょう」
「うん……色々あったけど、皆無事で良かった……!」
 二人の報告の是非は置いても、フラーゴラの言葉が真理である。イレギュラーズは、ノウェル領での戦いで誰一人欠けることなく、勝利を収める格好となったのである。

 これからについて簡潔に語ろう。
 ノウェル領に関しては、領主以下肉腫となっていた者達に関しては不可逆的状況にあり、最終的にその全てが命を落とした。
 ここに大きな政治的空白が生まれることになるが、早晩、メフ・メフィートから執政官が送られるなりして情勢の安定が図られることだろう。
 魔種グリム・サンセールとの戦いでは市街地に火の手が及んだ。
 少なくとも、領地のなかで無事と言える場所の方が少ないのは間違いない。
 だが……だが、それでも、イレギュラーズは『原罪のシュプレヒコール』に関わる一連の事件に決着をつけ、『旅人が生み出す滅びの軍勢』という最悪の状況を幻想王国から払拭することに成功したのである。
 幻想王国を照らす太陽は、未だ中天高くに在る。

※<Sprechchor al fine>に決着がつきました!

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