PandoraPartyProject

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帝都星読キネマ譚:鯨波

 高天御所――天蓋飾る月は陽に貪られ、昼空の如き明るさを有している。
 先程、『滝倉の神子』の身を借りて豊底比売が言葉を発せられたとの報が天津神宮より届けられた。
 其れが故に天は光に満ちあふれたのであろうか。
「豊底比売は我慢の限界とも見える。長胤殿もすっかり鬱ぎ込んでいる。どうにも、見てられんな」
 そうぼやいた霞帝の傍らで彼を心配そうにうかがい見るのは今園 章、霞帝の姪である。
「長胤のおじさまも義弟を亡くされるのですもの……蛍のおばさまも……」
 悲しげに呟いた章に「章も。亭主を戦場に駆り出すこととなり申し訳ない。暫し我慢してくれ」と霞帝は悔しげに言った。
 神咒曙光の現状は決して良いとは言えないだろう。
 ――これは、彼ら側の話だ。
 神咒曙光とは『神霊と共に成長』した国である。神霊は人々の信仰を糧に人智及ばぬ『神異』を国へともたらすと言い伝えられている。故に、神咒曙光は此程の急成長を経た。全ては土地神なる『母』の豊底比売の権能である。豊かな恵みを、そして日々の営みを送るが為の成長を豊底比売は齎した。
 だが、国が豊かになればなる程に零れ落ちる者が居た。八百万という『国の代表者』でありながら、信仰を捨てた天香遮那のように。
 彼の義兄であり天香当主の長胤は義弟の命は諦めた。せめて盃を交わした兄弟の手で屠ってやって欲しいと霞帝に縋り付きながら酷く憔悴しながら。
 政は遮那一人の『わがまま』で一度停止することとなった。政を担う天香当主が使い物にならないのだ。霞帝の一人では負担が重すぎる。
 日々を走り回る『中務卿』は何としても霞帝の負担を抑えたいと願っていたが其れも難しいか。
「報告いたします。高天京特務高等警察が此方に反旗を翻すことで確定した、と。……そして天香遮那の足取りでございますれば。柊遊郭に知る者ありと」
 淡々と報告する建葉晴明の背後には御庭番衆『暦』の姿が揃い踏みであった。
 頭領の鬼灯の姿を見つけ、章が「鬼灯くん!」と華やげばその空間だけ夫婦の愛が漂い始める。
「章殿……」
 彼女を抱き締めてやりたいが、事態はそうも許さない。鬼灯は己を律し「伽羅太夫」と口にした。
「どうやら天香に出入りしている小金井の巫女にも繋がりはありそうですが」
「まあ、鬼灯くん、遊郭になんて行ったの!?」
「……ち、違うんだ。章殿。神無月、報告を任せられるか」
 頬を膨らませる章に鬼灯が静まれと言わんばかりに声をかけている。今日も彼女は愛らしいのだと小さく笑った神無月は「承知いたしました」と応えた。
「高天京特務警察とは我らも接敵致しました。瑞神の眷属を連れ行きましたが、彼らが『賊軍』であるのは確かかと」
「僕もそう思います!!!」
 勢いよく前足をあげた白薬叉大将に潰されそうになる大月 逢華は「びゃ」と声を上げる。
「白太郎、潰れてしまうから……」
「ああ、ごめんなさい! でも、あいつら許せないんですよ!
 おひぃさまの事を悪く言いますし、此方が洗脳されてるみたいな言い方なんです! ひどいです!」
 怒り続ける白薬叉大将をさておいて。
 水無月は「引き続きナナシと共に偵察はしよう」と提案した。水無月班は偵察、地形把握、作戦立案まで幅広く担当している。
 此度の霞帝からの指令は『天香遮那』の捕縛だ。その舞台をセッティングし、長胤の願いを叶えたいという事なのだろう。
「それでは俺達は天香遮那の動向を観察します。……奥方、どうかお気を付けて。
 奴らは悪鬼です。お優しき貴女の御身を狙う可能性までありますゆえに」
 拐かされる可能性を示唆して涼暮 流星は苦々しくそう呟いた。
「……瑠璃雛菊。貴殿は刑部省の者達と共に出陣の準備を」
「承知いたしました。この刀に誓い、必ずや主上の命を果たしましょう」
 恭しく言った瑠璃雛菊――本来の名をルーキス・ファウンと言う青年は霞帝の傍らに立つ少女に目を瞠る。
 それは霊銀鐘の煌めき。
 霞帝が保有する『天香遮那』との対。
『別れえぬ因縁』を有する封魔星穹鞘『無幻』はその身を顕現させ、再びの『彼との邂逅』を心待ちにしているかのようであった。

これまでの再現性東京 / R.O.O

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