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不知夜月の京
不知夜月の京
魔が――
魔が、揺らめいている。
神威神楽の中心地たる高天京に座す高天御所は文化が入り乱れ、寝殿造りの邸宅の中央に天守閣を有する城が聳え立つ。
その上空に棚引く霞が如く妖気揺らめく様を『けがれの巫女』つづりは酷く畏れた。
「セイメイ」
袖引く。
双子巫女そそぎの姿が失せた此岸ノ辺でつづりが頼れるのは『中務卿』建葉・晴明だけであった。
けがれた獄人、忌み子と迫害された巫女の娘と早くに父を喪い後ろ盾少なく正四位上に立つこととなった青年は兄妹同然に育った。
怖い、と唇が震えたその様子に晴明は大丈夫だというように少女の手を取った。
「此処には英雄殿が――あの遙か大海を越え、我らに救いの手を差し伸べてくれた神使達が居る。
大丈夫だ。あの魔なる『大呪』も、そして、迫る脅威も……屹度、彼等ならば退けてくれよう」
『大呪』――それが高天京を包む魔の気配である。
月の魔力が尤も高まる満月が相俟って呪詛はより苛烈な威力を誇ることであろう。
夏祭りの折には呪具の騒ぎがあり、昨今では民の間でも蔓延する呪詛の騒ぎも幾度とあったが……今宵感じる気配はそれらの比ではない。巫女であるつづりはおろか――晴明にも確かに感じられる程に『嫌な気配』が肌に突き刺さりつつあった。
誰が行ったのか。それは豊穣の中枢に巣くう巫女姫に他ならない。
この様なことを天香・長胤がする訳がない、と晴明はそう言った。
彼の男はこの国を愛している。傲慢な男は悪辣なる刻もあり、鬼を排斥する傾向こそあったが、全ては神威神楽が為なのだ。
晴明やつづり『迫害される者』から見れば、悪人である彼も幼子を拾い育てると言った優しさを持ち合わせている。拾い子が蠱毒なる政の世界に踏み入れぬように光差す世界で過ごさせて居たのだから――それも、彼の少年の振る舞いを見てみれば天香による寵愛はよく分かる。
男は、政治家としてならば素晴らしかった。繰り返すが鬼への迫害はともあれとして、だ。
八百万による治政を護るが為に、獄人差別を撤廃し双方の種が、そして『神隠しにて渡った者』が手を取り合う国をと望んだ霞帝を彼が毛嫌いした理由とて、理解できぬ物ではない。
そして『だからこそ』彼ではありえないのだ。
これは、この大呪の空気は『滅ぼす』類のものだ。
この国を良くしようと思っている彼の願いには反する――ならば、この呪詛は巫女姫による物だ。狂った彼女が狂った呪いに手を出したのだ。
天香さえ狂わせて、利己的に物事を推し進める。其れは女の我儘で済む話では無い――
この禍々しい空気は京を、崩壊させる可能性さえある。
「つづり、俺は京へ行かねばならない。この呪詛を止めねば、民が、国が――『彼』が、喪われてしまう」
「……うん」
「大呪が成就したならばもっと、悍ましいことが起きる。高天御所へと攻め入り止めねばならないのだ」
「……うん」
「英雄 殿も手伝ってくれよう。……大丈夫だ、安心しろ。神使は皆、驚くほどに強いだろう」
「……うん」
頷くつづりは「行ってらっしゃい」と穏やかにそう言った。
高天京を包む呪いを食い止めるが為に敵の本拠なる御所に乗り込まねばならない。
その為に、幾人もが都へ向かった。
見送るつづりは何か『嫌な気配を感じ取る』――手薄になった此岸ノ辺は特異運命座標にとって『混沌大陸から渡るためのワープポイント』だ。この気に其処を狙う者が現れたとでも言うのか。
募る焦燥はつづりの胸を締め付けて、しかし。
「……大丈夫。皆が――護ってくれる……」
信じるように、そう祈った。
――寡黙なる皓月、然れど、その魔的な輝きは冴えたナイフのように研ぎ澄まされていた。
※シナリオ『静寂の青、外洋の空』の結果から、クエスト『アクエリア・フェデリア開拓 総督府からの知らせ』が発生しました。
※一度だけ名声を獲得出来るクエスト三年目の祝祭が発生しました。
※一度だけ悪名を獲得出来るクエスト三年目の誘いが発生しました。
※各国領土が獲得出来ます。キャラクターページの右端の『領地』ボタンより!
※――KBH臨時放送のお時間です。
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