PandoraPartyProject

ギルドスレッド

造花の館

執務室(鬼楽)

豊穣風の屋敷との奥にある、半ば私室と化した執務室。
畳と土壁に囲まれた部屋には、幻想風の調度品が並べられ、見る者が見れば時代錯誤な調和を思わせるだろう。

セレマは訳知りの個人的客人はこちらに通すらしい。
いつ来ても部屋いっぱいに焚かれた香(のような独特の香り)があなたを出迎えてくれるだろう。
然るべき客人であるならば。


●やってはいけないこと
・知らない声が聞こえても返事をしてはならない
・執務机の載せた天秤はアンティークではないので触れてはいけない


●過去(練達)
https://rev1.reversion.jp/guild/1238/thread/18142/6?

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そのくらいの理解か。
ならまず交易に寄せて説明するのがいいな。

(卓上に鎮座する鈍色の天秤を中心に、部屋の主の手が動く。
 あなたの手元には玩具の貨幣を。幻想の印が刻まれた、軽い陶製のそれが巾着に詰まっている。
 自らの手元には玩具の鍋、剣、家具、造花……人形遊びに使うようなものがいくつか。)


これは簡単な「ごっこ遊び」だ。
休日、お前は退屈しのぎに街へと繰り出す。懐には金貨をいっぱいに抱えた財布がある。
お前は何気なく立ち寄った商店で、ひとつだけ買い物をすることにした。
衝動買いか、それとも必要に駆られてか…まあ、そこはどうでもいい。
売り物は一律金貨2枚で取引できる。
お前は何が欲しい?

(とん、と指先がテーブルを叩いた。
 あなたの目の前には、「商品」と称されるミニチュアが商品のように並んでいる。
 天秤はまだ傾いていない。)
ふーん?
じゃあこれにする。

(商品として並べられたものを見回した後、指差したのは棚を模した玩具だ)
構わないぞ。支払え。
(店主が天秤にミニチュアを乗せると、空いた皿が持ち上がりあなたに催促をする。)
(言われるがままに天秤に玩具の硬貨を2枚乗せ、確認をする様に貴方を見た)
(陶器の貨幣が天秤の皿に載せられると、皿が平行の状態に戻った………)

これで取引は成立だ。
お前は何事もなく望みの品を手に入れる。
(店主は皿の上の貨幣を回収すると、棚をあなたの前に置いた。)


…さて、ここで質問だが。
お前は先ほど、どうやってその棚を手に入れたんだ?
通貨で買った。

(瞬発力だけで答えてから、相手の質問の意図を考え始め)

……んー、いや。
相手が棚に対して提示した価値と同程度の物と交換した?
そういうことだ。
もっと言えば、貨幣というのは国家・集団という力によってその価値を保証されている。それが金本位制であるか土地本位制であるかはさておき、その集団に所属している限りその価値を共有できる。
そして価値を共有できるからこそ、実用価値のある棚と、たかが土から穿り返した石ころを鋳造しなおしただけでしかない貨幣を、その価値を吊り合わせることができるわけだ。
これが『公正な取引』になる。
じゃあ次だ。

(こつ、こつ、と。窓を掻くような耳障りな音。)

お前が店を出てしばらくした後、見知らぬ人間が声をかけた。
聞くところによると、そいつは今日主人のもとに送るべきであった棚を壊してしまったらしい。
そこに偶然通りかかったお前を見た時、その棚が主人が欲しがっていたそれと、全く同じ見た目であるということに気付いた。

そいつは急いでいるのもあって、宝石2つで譲ってほしいと頼み込んだ。応じるか?
(天秤の上に硝子細工が2つ、からりと音を立てて転がった。)
(一瞬窓から鳴る音に気を取られかけたが、すぐに視線を天秤、その向こうにいる貴方へと移し)

相手にとって緊急の付加価値がついて価値が上がったという訳か。
吾にとっては別に他のものでも良い品であるしな。
買値の金貨2枚で応じるところだが……心理テストでもないし宝石2つで応じようか。
(棚が天秤の皿に載せられると、皿は再び平行の状態に戻る。
 ………つまり、陶貨2枚と棚と硝子細工2つは、同じ重さということになる。)

貨幣を用いないやり取りというのは、大半が社会活動を伴わない…即ち個人間で成立する取引だ。
『公正な取引』が貨幣という保証された価値を仲介にしているのに対し、こちらは互いの納得を仲介としている。それがどのような価値を持っているかは関係なく、相手の差し出すものが、自分の差し出すものに相応しいかそれ以上であれば成立する。これによって表面上は互いに利益を得るという式が成り立つ。

これが『公平な取引』になる。
ボクが扱う契約という技術そのものは取引だ。
貨幣共通の価値を扱う存在に対しては『公正な取引』を。
価値観は合うものの貨幣を持たない存在に対しては『公平な取引』を。
自らの扱うリソースを取引によって増やし、その増えたリソースでさらに大きな取引を成立させる……それを繰り返すことで強力な価値を得ることが、ボクの目的であり手段だ。

だが一方で、この市場には魅力的な商品を持っていながら貨幣を扱わず、そして価値観も合わないものが存在する。
即ち公正さも公平さも意味を持たない、怪物のような存在だ。

(ここでようやく茶葉が蒸れた。
 薄暗い部屋の中で、紅茶がカップの底を叩いているのが香りで分かった。)

『契約魔術』はそのような相手に対して使う。
うーん?

(鞄からノートを取り出して考えをまとめようとぐりぐりと書きつける。
 頭の中の取っ散らかった思考をそのまま書きだしているのだろう。時々、明らかに文字でないペンの動きをする)

待ってくれ。
要するに互いの主観上で価値が釣り合ったものを交換する事を『公正な取引』と定義している……のか?
他者から見て不公平な取引であったとしても、取引する相手と相互に合意が取れていれば問題ない……。
明確な単位が無い、基準がない、そういうものが基盤だということか?
旅人だけでなく、この世界に産まれて生きている存在でさえ、『取引』がなぜ成立し『貨幣』がなぜ有効であるか…それを知らないから、まずこの話に触れることになる。

(暗がりの中で、あなたの側へ運ばれるティーカップを追っていた三日月が、なだらかな動作で会話へと戻る。)

そもそも、取引というのは納得なしには成立しない。
それは取引というものが数式的なものではなく、文法的なものだからだ。

お前が買った棚は、森を預かる貴族が長い年月をかけて育て、その貴族が許可した者が伐採を行い、職人の手によって設計されたそれに形作られ、商人が仕入れたものだ。さらには合間合間で運搬をせねばならない。そのいずれの場合にも手間賃がかかる。
お前が支払った金貨2枚というのはそれらにかかった経費と、これに携わった者たちの取り分とを総計したものだ。これを彼らが得るべき『納得』の総量と言い換えてもいい。

他者から見て不公平な取引というのは、当人同士で得られる納得が吊りあうから成立するものだろう。
お前も改めて考えてみるといい。お前は棚を金貨2枚で購入したが、その棚は本当に金貨2枚分の価値があるのか?その宝石は本当に金貨2枚分の価値があるのか?

(指先が天秤の皿をなぞる。
 重量…つまり数式的に見れば明らかに吊りあうはずのないものを、この天秤は吊り合わせている。)

なんということはない。
これは数式ではなく文法だ。
文法であるからこそ、お前の語る曖昧さが存在しうる。
その一方で…
当人同士ですら納得を得られない取引というものも確かに存在する。
安くしないと買ってもらえない商品、金はないが買わねば食っていけぬ問題……納得はできず、その不利と不利益を自覚しながら取引に応じる。
しかしこのような取引も、貨幣を媒介とする限り取引としても文法としても正しい。
なぜなら貨幣が納得させる相手というのは社会そのものであるからだな。

…………まあここらへんは経済学の話になるな。
貨幣の価値というのは国や情勢に対する信頼の表れであって、棚の本質的な価値とは直接的には比べられない。
直接的に比べられないものを、互いの「納得」をもって等号で結びつける。
これが公平な取引。

(僅かに肩眉が上がった、なんとなくうさん臭さがある。
 きな臭さと言い換えてもいい。

 例えば詐欺にかけられる直前のような)

話の腰を折って悪かったな。
それで、『契約魔術』とは?
やって見せたほうが早いな。

(先ほどの取引を天秤から降ろすと、今度は一塊の粘土を持ち出した。)

まずこれを人の形に捏ねろ。簡単でいい。

(その間に3つの人形を、机の影からテーブルへ持ち出す。
 ひとつは見栄えの良く、重い、ブリキの人形。
 ひとつは簡単に折れ曲がる、安いビニール製。
 ひとつは……かろうじて人の形に見える、軽くてみすぼらしい骨細工。
 どれも球体関節などで節目が着脱可能であることがわかる。)
ふうん?

(膝に乗せていたノートを横に置き、粘土塊をつかみ取る。
 ぎゅうぎゅうと柔らかくなるまでこねて、頭が一つと一対の腕と足。
 直立する人型を作り上げてテーブルの上に置いた)

……これで?どうするんだ?
(風に揺れる枝の窓を掻くような音は、何時の間にか止んでいた。)


これは簡単な「ごっこ遊び」だ。(改めて、念を押すように。)
お前は先の取引で得た宝石、そして財布一杯の貨幣を抱えたまま帰路に就く。

………が、しかしだ。
お前は不幸な事故に巻き込まれる。
その事故で、お前は利き腕を喪失した。
(テーブル向こうから伸びた指先が、あなたの粘土細工の右腕を千切り取った。)
一命はとりとめたものの、腕というのは生活に欠かせないものだ。
仕事にも支障が出るだろう。
普通の人間ならば自暴自棄になるか。賢い人間でも自らの蓄えを温存或いは投資することで、生きながらえる未来を見出そうとする。

だがお前は不幸の中にあって幸運に巡りあった。
お前の腕の代替となるどころか、より素晴らしい腕を提供する魔性と巡りあえたんだ。
幸いにもお前は魔性と取引をする術も心得ている。
つまり、吾は腕を失えば生えてこないタイプの人間で、尚且つ貨幣で損失した腕は補えず、腕をよみがえらせるには魔性との取引をしなければならないという事だな。
だが……より素晴らしい腕と言われても分からない。
一体どんな腕が元の腕よりも素晴らしいんだ。
   (間。)

(その間に響く、廊下をなにかが引きずる音。)




……理解が早くて助かる。

生えねーよ。
この世界の人間は部位を喪失したら二度と帰ってこねーんだよ。
話を戻すぞ。
お前の疑問に対し、丈夫で簡単な不幸では失われない腕を、魔性は提供することにした。

(天秤の上にブリキ人形の腕が置かれた。
 カクンッと重い音を立てて天秤が傾く。)

お前は持てるモノをこの腕の為に支払い、天秤を吊り合わせることでこれを購入していい。
そうすればこれはお前が自由に扱える腕になる。
これはそういう取引だ。
(腕をもいでもすぐに引っ付く美少年を前にして納得いかないとばかりに眉を寄せた)

むぅ。
たしかに靭性が上がるのはアップデートといえよう。

(天秤に乗せられたブリキの腕……そしてもう片方の殻の皿を見る)

それで持てるモノとは?
文脈的に直接貨幣は使えないんだろう。
(ちらとオモチャの金貨袋を見やるが……)

……こういう時、お前は魔性の欲望を引き出すとか探るとか言ってなかったか?
何事にも順番があるし、特に失敗からは多くを得られる。
安心しろ。これは簡単なごっこ遊びだ。
ゲームではない、ということだな。
乗せるぞ。

(天秤の片方にオモチャの金貨袋を置く)
(天秤はわずかに揺れて、止まった……。)

………まあ、こうなるな。
考えてみれば当たり前だ。陶器の欠片如きがブリキの塊と吊りあうはずがない。
実のところお前のその硝子玉を乗せたところで、吊り合いを取るにはあともう少し足りないんだ。
お椀と違って水も汲めないし、芸術的価値を見出すにもちょっと形が単純だな。

で、どうするんだ。
このままでは交換してもらえないぞ。
……性能のいい腕を手に入れるために、無事な方の腕を差しだすとか言うんじゃないだろうな。
察しはいいが見積もりが甘い。
もう片方の腕だけで済むとしたら、それは相手が極めて無欲か物の価値を知らないかのどちらかだ。
そもそも価値観の合わない相手との取引であるなら、追加で両脚を取られる程度はまあありうる。

安心していいぞ。
換えの脚も取り扱っている。
換えの脚の代金を払うために次は何処を差し出すんだ?
そんなこと続けたら全身ブリキ製になって、元々の自分なんてなくなってしまうじゃないか。
テセウスの舟だな。

ともあれこれが魔性と取引する際、公正さや公平さを期待したせいで失敗する例だ。
貨幣がないから公正さなど端から期待できず、価値観の根本が合わないから……今回の場合は物の価値を「物の質量」で見ていたから、天秤を並行に戻せない。
これと取引を行うとしたら最低でも『公平』の線まで持ち込まねばならない。

そこで改めて契約魔術という技術が、どのようにして役に立つかということになるのだが……
ボクがこの前話した、『混沌にいる人類は認識を直接介することで会話を成立させている』という仮説を覚えているか?
言語を介して一種テレパシーの様に認識のやり取りをしている。というやつか?
あの時は、実際には言い間違いや認識の齟齬が起きるという事実を補足しきれない、みたいな話をしたと認識しているが。
話が早いな。
ボクはあの仮説を『ボクの取り扱う分野にも影響する』と言ったところまで覚えているかどうか、までは定かじゃあないが。

結論から言えばだ。
契約魔術とは、認識上でのみ存在する値札ないし小切手を用意し、それに貨幣の役割をさせるんだ。

数字が通じない、価値観が合わないから文章も通じない。
だから「私はこんなにもそれを望んでいる」という欲望の総量を直接共有し、欲望を満たす行為を交換するという形で取引をする。そうすれば形の上での公平さは保てる。
欲しいと思っているものを交換する時は高くついて、欲しくないものを交換する時は安くつく、ということか?

んんんん、それだとアレだぞ。さっきの腕を交換とか云々という話に戻すぞ。
奴は質量を元に見てたわけで……交換基準は1:1だとしよう。
本来ならば腕と同じ程度の質量を用意すればいい所を、「どうしても腕を取り戻したい」と切実な思いを抱いていたら何倍もの質量を用意しないといけなくないか?
その通りではあるが、違うともいえる。
お前が相手の持ち物の中から「どうしても欲しい」と思うものを選び取った時、同時に相手も「どうしても欲しい」と思えるものをお前の持ち物から選び取る権利が生まれる。
それが必ずしもお前にとって「かけがえのないもの」とは限らないし、「失えば致命的なもの」とは限らない。
だからボクは取引を行う前に、相手の欲望を推し量るところから始まる。リスクを最小限に抑えるためだ。

それにこの話については以前も少し触れたな。
ボクが不老不死を求めるとしたら、それは時間という万能の回答によって、あらゆる願いを貶めるため。願いに明確な形と像を与えないのは、「どうしても」などとは思わないようにするためだ。
詭弁では?
だってお前、それって逆を返せば何時だって「失えば致命的なものと交換される可能性」があるじゃないか。
どんなに願いを矮小化したところで、相手の交換対象に自分の命なんかが入ったらお終いだろ。
その通りだ。そんなに都合のいい取引相手はこの世に居やしない。
だから『こっちの命なんぞ簡単に奪い去れる化け物』と取引するのに、これほどちょうどいい技術はないだろう?

(こつ、こつ、と。搔くようなノック音が執務室の扉を叩いた。
 そんな音など存在しないように言葉を続ける。)

考えてもみろ。
仮にボクが「目的を達成するための強力な力」を「強く」欲していたとしよう。
契約魔術によってそれを手に入れたいと望むなら、やはり人間などいともたやすく葬り去れる怪物との取引が自然に挙がる。人間自体にそれほどの価値を見出していないならなお良い。

では今度は、その怪物が果たしてボク程度の命を「強く」欲するかということを考える。腕を振るえば簡単に心臓をえぐり取れる怪物が、ボクの心臓を欲しがるか?そもそも取引する必要もないくらい簡単に手に入れてしまえるなら、ボクの命に対する欲望は、ボク自身の欲望を凌駕しないのではないか?
相手の性質、欲望、願いを精査し。自分の核となる部分が相手の願いから外れるように立ち回り、まだ「致命的ではない」欲望の的を用意することで、己の核を守り通せばいい。

少なくともボクはそうしてきた。
お前の命でも贖いきれないものを強制的に相手から引き出すという点では有用だな。

(外が無性にうるさい。今日は休日で誰も居ない筈だが……)

だが、なぁ。致命的ではない欲望の的だって、本来お前には払いきれないものだろう。
お前の出来る事は相手にもできるのが当たり前だからだ。
……でも、魔性はお前から取り立てるものを用意しなければならない。これはそういう魔術だから。
じゃあどこから取る。となれば、もうそれは将来的に行うと空手形を切るしかなくないか?
まあ、そういうことになる。
他にも他所から奪い取ってきたものを差し出すのもあるな。
手段さえ選ばなければ、支払いかたなんぞいくらでも考えられる。

その詳細な方法に関しては……これについて言及するのは流石に不利益だな。


ともあれ。ボクが「心構えさえできていれば」と言ったのはそういうことだ。
先に論じた注意点を心にとどめたうえで、失う覚悟と出し抜く悪辣さがあれば、必要なものを手にする足がかり程度は容易に確保できる。
それこそどんな能のない人間でもな。


(掻く音に混じる囁きが、部屋の中に向かって何かを訴えているようだった。
 耳をすませば「替えよう」とか「ある」とか、そのような低い言葉の羅列の垂れ流すさまが聞こえる。
 けれど部屋の主はやはり、聞こえないように振舞っている。)
まぁ……大体わかった。これは吾とって相性の悪い魔術だ。
使用する方としても使用される方としても。
熱くなる輩には向かない術には違いないな。

……さて。
契約に関する基本についてはここまでだ。
特に質問がなければ講習はここまでにするが?
……では、質問だが。

力の強い魔性と取引するとなれば、取引を終えた後にでも気まぐれで殺されかねないしルールも捻じ曲げられかねないと思うのだ。
……お前はこの間、スウィンバーンと明確に敵対したよな。
それでも取引で手に入れたものに影響はないのか?
それは『契約の魔性』というもう少し踏み込んだ話にはなるが……

端的に言えばだ、個体差はあるものの『それとこれとは別』だから問題がない。
敵対してても契約内容は律儀に守る、ということか?
魔術自体に拘束能力があるのではなく?

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