シナリオ詳細
<月だけが見ている>Zuchtigen
オープニング
●
――月の砂漠に夜が降る。
吸血鬼ファティマ・アル=リューラはそう述べた。
「厳密には大分違うけれど……そうね、答えを偉いわ、こっちへいらっしゃい」
「ん……」
天義に伝承される魔種であり、吸血鬼(ノスフェラトゥ)にして月の王国の『剣客』であるレディ・スカーレットは、ファティマを抱き寄せて、優しく頭を撫でてやった。
一方のファティマは元幻想種の奴隷であり、烙印を経て吸血鬼(ヴァンピーア)となった存在だ。本来の主は王国の女王であり、出自の異なるレディ・スカーレットに懐く言われはないのだが――
そんな月の王国は、ラサの鏡映しのような存在だ。
カーマルーマなる遺跡からの転移陣の向こうに存在し、永遠の夜の中に満月を抱き続ける歪んだ場所。
そんな空間――偽の王国は、今や滅びの過渡にある。
頼みの頭脳であるアレイスターは赤犬に斬られ、イレギュラーズによって多くの吸血鬼が傷を負い、侵入を阻む大結界すら破られてしまっていた。
剣の寵姫、女王の侍女にして側近であるエルナトとて半死半生に近い。
では肝心の女王リリスティーネはどうしているのか。
リリスティーネは暴君である。
幼く些細な我儘や嫌がらせに始まり、暴力や粛正を無軌道に繰り返してきた。
おおよその人々が悪と断じる行為を、何の躊躇いもなく行う。
かつての世界『宵闇』でも、この世界『混沌』でも。それは何一つ変わらないはずだった。
――悪事の定義とは何だろう。
規範への違反か。
それともモラルの逸脱か。
あるいはその両方か、複合か。
夕食前にパンケーキをねだるなんて、単に諭せば済むことだ。
重い洗濯物を担いだ侍女の膝を面白半分に蹴ったなら、二度とやらぬよう叱ればいい。
だが奴隷となった哀れな幻想種の少女が、粗相を働いた瞬間に首をはねるならどうか。
忠実な僕となった吸血鬼の胸を、気まぐれに抉り抜くならどうか。
リリスティーネはひどいきかん坊だった。
抑えというものがなかった。
見た者は軽蔑し、やがて恐れる。
ある種のカリスマ性さえ帯びていたともされている。
リリスティーネは紛れもない悪だった。
そんなはずだった。
接見の間、その豪奢な玉座でリリスティーネは足を組んでいた。
前にはイレギュラーズとの戦いで重傷を負ったエルナトが、ひれ伏している。
満身創痍で拳を絨毯へ打ち、頭を垂れ、臣下の礼のまま震えている。
エルナトはひどく寒かった。
自身の報告と、主の反応に怯えている訳ではない。
身体から零れすぎた花びら――血がほとんど残って居なかったからだ。
「申し訳ございません。このエルナトへ罰をお与え下さいますよう、どうか」
絞り出すようなか細い声は、今まさにエルナトの命が燃え尽きようとしていることを示している。
単に『なかなか死ねない』だけだ、吸血鬼というものは。
エルナトはリリスティーネを愛している。
リリスティーネはエルナトを弄んでいる。エルスという名と似ているというだけの理由で。
それが本来における両者の関係であり、けれど両者はそれを互いに良しとしていた。
リリスティーネは苛烈な性格であり、賞罰を厳密に適用する。
しかしこのところ、どちらも与えようとしなかった。
まるで感情が抜け落ちでもしているかのように。
「そんなことより、乾いたわ」
「ご用意も、難しく……」
王国にはラーガ・カンパニーが用意した多数の幻想種奴隷が居たはずで、吸血鬼の食料だった。
だが今や、多くがイレギュラーズによって救助された状態である。
そもそもここへイレギュラーズが踏み込んでくるのは、時間の問題だった。
賞罰だの食事だのと悠長を抜かしている場合ではないはずなのだが――
「貴女が居るじゃない」
「……!?」
血を吸われるのは甘美な賞だ。
失態を繰り返すエルナトが賜るべきものではない。
「しかし」
「ほら、はやく」
惨めな罰こそが相応しいというのに――エルナトが身を寄せる。
指が首を這い、髪が払われ、唇と舌が撫で――鋭く痛んだ。
やがて痛みはじんと鈍り、甘い熱と脱力と、それから恍惚がやってくる。
「……リリ様」
焦らされてすらいないのに、吐息交じりの声がはしたなく熔けている。
いやずっとずっと『焦れてはいた』のだ。
エルナトは長いこと、賞も罰も賜ってはいなかったのだから。
もう何もかも、どうでも良かった。
このまま吸い尽くされ、滅びることこそ本懐とも思えた。
心が晴れていく。
主へ身と心の全てを捧げることが出来るのだと。
「あっは、変な味ね。そうだ、貴女も乾いているでしょう」
花びらまみれの口元をほころばせ、主が首を傾ける。
主の言葉、その意味を咀嚼する。
吟味し、逡巡する。
理解した瞬間、心臓が早鐘を打った。
まさかの事態だ。
偉大なる純血種(オルドヌング)の姫君の血を、混血種(ハルプ)風情の下僕が賜るなど。
「いけませんリリ様。そのようなご無礼など、とても――」
「どうして?」
言葉を被せたリリスティーネが、しゃなりと身を寄せてくる。
道理も根拠も原則も、全てが抜け落ちてしまったのか。
けれどエルナトは血を流しすぎていた。乾ききっていた。誘惑に逆らうことが出来ない。
この後に及んで生にすがりつく自身を浅ましく感じた。
けれど抗うことなんて出来はしなかった。
主の首に牙を突き立て、背徳の赤い蜜を味わう。
全身が震える。甘やかな悦びが溢れる。
抱きしめれば、体温を感じる。
甘い香りは濃く、僭越にも、あまりに愛おしく。
徐々に柔らかく伝わる湿度に、胸奥の疼きがとまらない。
ひとしきり夢中になっていると、リリスティーネが耳元へ唇を寄せる。
腕の中で呟いた。
――呪われろ。
エルナトは、総毛立った。
主の声ではなかったと感じた。
まるで呪縛のような、それは。
けれどエルナトにはもう、この甘い破滅だけで充分だった。
「私(リリ)は私(呪縛)よ、エルナト。そんなことよりも、大切なのは……」
やっと来てくれる。
これで、やっと。貴女(寵姫)なんかじゃなく。
真に偉大なる王に、私のことを。
与えられた権力を振りかざしてみた。
誰かの大切なものを奪ってみた。
気に入らぬことへ身を焦した。
怒り狂い何かを傷つけた。
許されぬ情に耽った。
衝動に身を任せた。
全て投げ出した。
七つ罪の全てを犯してさえ、それ以上を続けてさえも、軽蔑だけを感じる。
どうにもならない呪縛に、絡まり蝕まれていく。
それがきっと、終わってくれると。
――
――――
「戦には勝ち筋というものがあるわ、ファティマ」
貴賓室のソファでファティマを撫でるレディ・スカーレットの声音は諭すようだった。
王国は最早、死に体だというのに。
「この空間を接続し、砂の都へ落としましょう」
「……ん」
ファティマが甘えるように、スカーレットの膝へ頬をすりつける。
「接合と転写、歪曲、あとは時間へのアプローチ。『司祭』も喜ぶわ、なによりもあの――」
スカーレットは賓客である。
剣客(用心棒)とされているが、それだけではあるまい。
おそらく『博士』に何らかの技術なりを供与し、見返りを得ているはずだ。
目的は不明だが、危険な第三勢力の一角であることだけは間違いないだろう。
●
一行が門の前へ立つと、異様な気配を感じた。
城内が騒然としているではないか。
「あの子は殺すわ、これは絶対よ」
満月の下――赤髪のエルス・ティーネ(p3p007325)は、ただそれだけを告げた。
あの子、即ちリリスティーネを殺害することについて、赤犬の傭兵達からは渋る声もあった。
無論リリスティーネは博士と共に、ラサに喧嘩を売り多大な被害を与えていた。
感情的な嫌忌があったのは、エルスの義妹であるという一点だ。
しかしエルスはそれを固辞した。なぜならばエルスを蝕む呪いの根源こそが、リリスティーネであると確信出来るからだ。そして実際に、事実でもあった。
リリスティーネは変わってしまっていた。
おそらくはずっとずっと前から。
いっそ、初めから。
(……)
リースヒース(p3p009207)は予感した。
喜劇はもちろん、悲劇ですらない、救いなき呪われた物語(現実)だと。
これが喜劇ならばどうか。たとえば赤犬の色男を姉妹で奪い合う面白おかしい物語になるだろう。
悲劇ではどうか。その中で、誰かが命を落としてしまい、けれど心ばかりは救われるのではないか。
どちらとも違う、呪縛だけがそこにある。
それは弔ってやった魂や、風が教えてくれたこと。
だからイレギュラーズはすぐに終わらせなければならない。
「気になることはあるわ」
「――レディ・スカーレット」
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)に長月・イナリ(p3p008096)が答えた。
レディ・スカーレットは天義に伝承される吸血鬼であり、ラサを騒がせているものとは出自を異にする。
イナリ達の推測では、天義を中心に広がりつつある何らかの異変に関連していると思われる。
それは実のところイナリの敵である狂神なる存在にも連なる話だが、今は詳細については割愛しよう。
ともかく今後につながる話であるのは確かだ。
「あとファティマという吸血鬼」
レイリー=シュタイン(p3p007270)に、天之空・ミーナ(p3p005003)が頷く。
元幻想種奴隷であり望まぬ烙印を刻まれた。
なんとかしてやりたいとは思うが、おそらくはもう――
表情を曇らせたレイリーの肩をミーナが抱き寄せた。
「風は私が追っかける、任せてもらっていい」
「はてさて、吸血鬼というのは始祖――失礼、この場合純血種でしょうか。ともかく主に従う」
新田 寛治(p3p005073)が続けた。
ファティマはリリスティーネに従うのが筋であると。
だが実際には魔種であるレディ・スカーレットに懐いていた。
吸血鬼化は擬似反転と思われるが、考えられるのは『原罪の呼び声』か。
「いずれにせよ、謎は全て解き明かす他にないだろうな」
クロバ・フユツキ(p3p000145)の視線は鋭い。
「それで、お名前を伺っても?」
寛治が名刺を向けた先、黒いフードを降ろしたのは一人の女だった。
「失礼しました。名乗り遅れましたわね。わたくしは紅百合・もえと申します。練達佐伯製作所Project:IDEA開発部所属、現状は――詳細は諸事情あり伏せさせて頂きたいのです。『天義に力を貸している』とだけはお伝え可能なのですが、それよりも」
寛治は記憶を辿る。どこかで会ったことがあるような。
「或いは、少々言いづらいながら、わたくしを再現したR.O.OのNPC、私の本名でもありますディアナ・K・リリエンルージュが、皆さんにお見苦しい所をお見せしたかと」
もえ――ディアナは「その節は申し訳ございませんでした」と腰を折った。
「ディアナ!?」
驚いた声をあげたのはセララ(p3p000273)だった。
「ええ、セララ様。厳密には初めましてではございますが、活躍は嬉しく拝見させて頂きました」
NPCが世界を滅ぼそうとしたのは確かだが、現実世界の彼女とは無関係ではあるのは間違いない。
「わたくしが調査したいのは、綜結教会や統一理論推進会を名乗るカルト教団についてです」
その言葉を聞いた時、イナリの左耳は微かにぴくりと震えた。
「わたくし達、実践の塔は練達復興公社などと連携をとりながら調査をしておりまして」
練達復興公社という単語を聞いた佐藤 美咲(p3p009818)と、ディアナという名前を聞いた普久原・ほむら(p3n000159)は、互いに別の理由で心から嫌そうな表情をしたが、それはともかく。
彼女が伝えたのは、世界各地に広がるそのカルト教団が、練達でも暗躍を始めた事。そしてどうやら本拠地が天義であること――
さらにはラサにも、若干の関与が見られることを掴んでいるらしいことなど、多々あった。
そしてディアナは普通に戦うことの出来る旅人(ウォーカー)であり、助太刀してくれるようだ。
「情報を整理するわね」
イナリが述べた課題はいくつかある。
吸血鬼や晶獣達の討伐作戦。
そして敵幹部や、頭であるリリスティーネの斬首作戦。
それからレディ・スカーレットが企む『なんらか』の阻止である。
イナリが所属する『杜』の情報網によれば、レディ・スカーレットはなんらかの大規模な儀式を執り行おうとしていると思われる。おそらくはラサに壊滅的な被害をもたらすものだ。
イレギュラーズを苦しめる烙印なる厄介な呪いは、おそらく博士やリリスティーネの討伐によって解除されるだろう。逆をいえば、しくじればどうなるか分からないということだ。
魂を歪められ、あの吸血鬼達のように変貌してしまうのだろう。
あとは――
誰かがエルスの顔を見た。
ラサにおける事実上の王『赤犬』ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)の行方。
しかしこれは、放っておいてもどうにかなるようなものではない。
ある種の安心もあった。
なんなら好きに暴れてくれるだろう。
ともあれイレギュラーズは月の宮殿を制圧し、全てを終わらせねばならなかった。
- <月だけが見ている>ZuchtigenLv:40以上完了
- GM名pipi
- 種別決戦
- 難易度HARD
- 冒険終了日時2023年05月26日 22時05分
- 参加人数40/40人
- 相談7日
- 参加費50RC
参加者 : 40 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(40人)
リプレイ
●目論み I
月明かりに濡らされた砂だけの丘陵は、波か布かあるいは柔肌めいていた。
無限の寂寞の中に、ただ一つだけ存在を主張する宮殿、その大門前の石畳を無数のシンダール(革長靴)が駆ける様は、雷轟のようだった。ラサが誇る傭兵団『赤犬』の精鋭達、そしてイレギュラーズである。
天井からぶら下がるコウモリのような怪物――晶獣サン・エクラの視線が一行へ注ぐ。
――来る。
一斉に舞った怪物共へ、彩陽は星狩りの大弓を引き絞る。
弦音と共に放たれた矢は閃光を帯び――殺到する群れの中心を撃ち貫いた。
耳元を掠めた怪物は呪詛のような奇声を残し、慣性のまま視界の後ろへと消え、赤い結晶となり砕ける。
傭兵達とイレギュラーズの連合軍は広大なエントランスを抜け、運動競技でも出来そうなホールへと突入していた。のべ数百名にも及ぶ精鋭達の向かう先は三手だ。
始めに幻想種達を拉致したラーガカンパニーの首魁を攻略する軍勢。
次に錬金術を悪用し数々の非道な実験を繰り返し、吸血鬼なる怪物を作り上げた博士を攻略する軍勢。
そして最後に、ここに集った面々は、月の女王とされるリリスティーネを討ち取らんとしていた。
一行ホールを駆け抜けると、そこは迷路めいた巨大な中庭だった。
ここが大広間、そして接見の間へ向かう道筋である。
白虎は辺りを一瞥した。
庭は四角く渡り廊下が囲っている。あちらこちら月明かりを反射する眼が光り、一面にうなり声が響く。
「うう、前にも戦争に参加したけど、やっぱり怖いなぁ」
震える身体を自覚する白虎は、幾度か首横にを振ってから、果敢に前を向く。
「でもここで勝たないと皆いなくなっちゃう! それだけはダメ。だからまずはここをなんとかしないと!」 白虎は拳を握り戦場中枢へと斬り込む竜爪となる。
拾ってくれた家族のためにも。仲間の為にも。
命を無駄にしたりなんかしない。必ず生き残ってみせると白虎は飛びかかる晶獣を拳で打ち据える。
この一連の事件、その背景は複雑ではあるが――ドラマのはらわたは煮えている――少なくとも多くの深緑の幻想種が攫われたあげく、吸血鬼へと変貌させられているのだ。
ドラマにとって、それだけで今回の首謀者を屠るに足る充分な理由となる。
「何かしら……対策も講じないと、ですかね」
戦場を俯瞰したドラマは前線へと駆け抜ける。
視線の先、まずは多量の敵が出現しつつある通路への入り口を抑えたい。
自身へと敵を惹き付け、それから――敵影の中に幻想種の姿を見つけた。
怜悧な思考に思わず熱が籠もる。
烙印の影響を受けているのは明白だ。戦術的には敵であるが、せめて命は奪いたくない。
「書物を紐解けばまだ、間に合うかも知れませんから」
突入開始から僅か十数分だが、中庭は激戦となっていた。
彩陽は眉を顰め「まだまだか」と呟く。
広域を観察し、慎重に敵と味方の位置を把握し――再び弓を引く。
矢雨に仲間を巻き込むわけにはいかない。
そして他の戦場に敵を侵攻させてなるものかと彩陽は歯を食いしばる。
生きて帰って来いと言われたのだ。
何が何でも生きて帰らねばならないと彩陽は顔を上げた。
「約束したから」
この一矢は生き残る為のもの。
渡り廊下へ踏み込んだヴァレーリヤとマリアの赤い髪がなびく。
「ラダや咲耶のためにも、この戦いに勝たないとですわね」
「ふふ! ラダ君と咲耶君は大事な友人だからね!」
「行きましょう、マリィ! ここで恩義を売ってお酒飲み放題でございますわー!」
「ああ、勝利を捧げるとも!」
仲間が進む為の道を切り開くのがヴァレーリヤ達が自分に課した役目。
赤き雷迅と賛歌を纏った二人は戦いの先陣を切って敵影へと駆ける。
「露払いはお任せ下さいまし。貴方達は、女王のところへ!」
「頑丈な敵は任せておくれ! 我が雷撃に強度は関係ない!
さぁ! ここは私達に任せて先へ進みたまえ!」
晶竜の前に駆けたマリアとヴァレーリヤは二人で顔を見合わせ強い笑みを浮かべる。
「どっせえーーい!!」
響き渡るヴァレーリヤの声にマリアは「相変わらずだの破壊力だ」と頷いた。
「さぁ! ただでさえ対応し辛い真上からの攻撃! あの火力を捌きながら凌げるかい!?」
「もちろんですわ! 何たってマリィが居てくれるんですもの」
●目論み II
「ふふーん、敵がいっぱいだね」
得意げにちらりと舌を見せたソアが、僅かに腰を屈めた。
「ボクは雷に愛されているの、見せてあげるね」
殺到する晶獣を鋭い爪でいなし、ソアは雷撃を放った。
薔薇のひとひらさえ掠めることのない精密な雷撃が降り注ぎ敵陣を穿つ。
中庭では依然として戦いが続いていた。
ここを突破されれば多量の増援が先行する仲間を挟撃することになってしまう。
させる訳にはいかない、それに――
「こちらをお守りすればよろしいのですね、わたくしにお任せを」
そんな風に剣を振るう練達からの客人にも良い所を見せたい所だ。たとえ脳髄を甘い何かが誘惑しても、美味しいご飯にお酒、エストとお姉様――もっと楽しいことで塗り替える。
美咲にとって、聞きたいことは山ほどある。
レティ氏はいるのか、あの姿(ぬいぐるみ)なのか、なぜ天義の黒衣を纏っているのか。
そして公社――ウチ(機関)の担当は誰か。
ともあれ。
(ま、生きててよかったっスよ)
ショッケンにせよ、アストリアにせよ、R.O.Oの知り合いは故人ばかりだから。
「公社の佐藤美咲様でいらっしゃいますわね。いつもお世話になっております」
「こちらこそ、ああ、公社はこき使っていいと思いまスよ」
背中合わせの格闘戦を軽口に乗せて。
ともかく誰の目的が何であるにせよ、『上』の好きにさせるつもりもない。
この敵の数を捌くのであれば、最終的な結果を見届けることは、おそらく出来ないだろう。
けれど――アンナが吸血鬼を斬り伏せる――ここで為すべきを成し遂げるまで。
「お久しぶり、でいいのかしら。向こうの私を把握してるかわからないけど……」
「初めましてともお久しぶりとも難しい所ですわね。ともあれ存じております、アンナ様」
R.O.OのディアナはアバターでなくNPC(コピー)だったから、厳密には初対面ではある。
だが現実のディアナはプロジェクトに深く関わった職員であり、様々なことを知っているらしい。
「お久しぶりです、ディアナさん。いや、『こちらの世界』では初めましてなのですが」
「これは寛治様、お世話になっております」
素早い名刺交換を終え、眼前の敵を掃射する。
今宵の役目は露払い。だが舞台を整えるのもプロデューサーの手腕という訳だ。
「『聖頌姫ディアナ』さんとは、相応に深く関わらせていただきましてね。こうして”オリジナル”とお会いできて光栄です」
「こちらこそ光栄ですわ、それにそちらにいらっしゃるのはフローライト様では?」
フローラが息を飲む。
「はい、そうです。こちら側でも出会えて光栄です」
宮殿に足を踏み入れてから、心身への異変――烙印の進行が強まっているのを感じた。
だが――敵陣へと雷撃を放ち、フローラは思う。
一緒に戦えることは目標だったのだ。烙印などに負けてはいられない。
「ディアナちゃん、こっちでは初めまして! 魔法騎士セララだよ」
「ええ初めまして、可愛いらしい勇者様」
「友達になってくれると嬉しいな。この戦いが終わったら一緒にドーナツ食べに行こうね」
「もちろんです」
吸血鬼へ雷撃纏う聖剣技を叩き込んだセララが尋ねたのは、天義の黒衣についてだ。
「もしかして、ここにも聖遺物が持ち込まれてたり、遂行者が暗躍してたりするの?」
「否定は出来ません、現時点で観測されているのはレディ・スカーレットなる天義の魔種ですが」
一行は敵を撃破しながらディアナと情報交換をしていた。
彼女は練達から天義へ派遣され、小さな騎士隊を率いているらしい。国同士では話が通っており、黒衣を纏うローレットのイレギュラーズに似た立場を持つようだ。
「今後、神の国なる現象は、おそらく全世界へと波及するものと思われます」
つまりディアナ達は『練達も狙われる可能性が高い』と判断しているという訳だ。
そして『公社』による被害予測――諜報活動の結果だろう――では、天義を発端とするカルト教団『綜結教会』の関与も疑われている。
アンナは殺到する無数の晶獣、そして続く晶竜の爪撃を布でいなし斬撃を叩き込む。
そして後背へ跳び、ディアナと背中を合わせた。
「カルト教団の件、私もかなり気になるわ」
「ええ、練達にも増えつつあるようですが、なかなか尻尾が掴めず」
「何かあれば私達も協力するから、ぜひ声をかけて頂戴」
「ありがとうございます、アンナ様」
「この後、よろしければラサの喫茶店でお茶でもいかがですか?」
「ええ、寛治様。楽しみにしております」
●ティベリヤの乾き I
苛烈な戦場をくぐり抜け、イレギュラーズの一隊が大広間へと突入した。
そこは赤々と禍々しい光に満ちている。
「ようこそ、お客人方。お茶も出せずに申し訳ないけれど」
最奥で微笑んだのはレディ・スカーレットと呼ばれる魔種だった。
「ここは引き受けます、今のうちに」
連射式クロスボウを構えたオリーブが、飛びかかる無数の晶獣を掃射する。
何はなくとも制圧せねばはじまらない。
リュコスはレディ・スカーレットをじっと見つめ首を傾げる。
彼女は天義出身で『吸血鬼』としても別物のような存在なのだろう。
「もしかすると……」
今天義で起っている異変とも関係しているのかもしれない。
「これはつきとめないと!」
走り出したリュコスは一歩一歩レディ・スカーレットへ向かい歩んだ。
そして「おはなししよう?」と微笑む。
「あら、何をお話しようというのかしら?」
「きみのこと、ぼくにおしえてほしいんだ」
「あらあら、可愛いお嬢さんだこと……お坊ちゃん? まあ、何方でも良いわ。
でも、簡単には教えてあげないわよ。貴方が私を楽しませてくれたら、ね?」
妖艶に微笑んだレディ・スカーレットの剣を、リュコスは盾でいなした。
重い――だが教えてくれないのは織り込み済。
リュコスの目的は魔法陣の仕掛けを暴くこと。
いっそこのまま放置し、起る現象を観測したい。
好奇心の獣が胸中に起き上がり――イナリはそれをいなしつける。
(大人しく、けれどその企みは潰させてもらうわ)
斬撃の嵐が敵陣を引き裂き、レディ・スカーレットへ迫る。
「そろそろ企みを教えて欲しいわね?」
「楽しませてくれたらと約束したわ」
「これじゃ不十分?」
「まだ、そう、もう少しね」
「時間稼ぎはいいけど、大した理由なんてなかったり?」
「たとえば?」
「綜結教会の連中から幸福になれる天使の壺なんて購入したから肉体労働で返済中とか!」
「あら、良いわね。そうってことにしておきましょう、ファティマ、いらっしゃい」
「そうはさせないでござるよ」
烙印が熱を帯びる。
咲耶はじくじくとした甘い痛みに、歯を食いしばった。
「暫く振りでござるな、今度は最後まで付き合って頂く……覚悟はよいな?」
ファティマの前に剣を走らせた咲耶は相手の顔を睨み付ける。
大広間の明りに反射する刀身が数度の応酬を経て、お互いの力に弾かれた。
距離を取った咲耶は深呼吸をして剣柄を握り締める。
「狂気に心を委ねるのは楽かもしれぬ。しかしそれは己の意思を捨てる事。拙者は屈する気はござらぬ。
お主……スカーレットに鞍替えしたのでござるな。何故にあの者に従うのでござるか?」
「……」
沈黙は迷いか、それとも……咲耶はファティマの真意が分からずにいた。
「しかしそれでラサの者に危害を与えるならば捨て置けぬ。この儀式、止めさせて頂こう!」
広間の床を蹴った咲耶の刀がファティマの胸元を切り裂く。
「今宵の私は見目麗しいお嬢様方の騎士。月下の舞踏会を邪魔する無粋な輩はおかえり願おうか!」
ブレンダの高らかな名乗りに、無数の晶獣が殺到する。
「あら、わたくしは混ぜては下さらないの?」
レディ・スカーレットが小首を傾げた。
「ご安心めされよ、レディ。麗しの姫君お二方がお相手致すゆえ」
「嬉しいわ。なら美しい騎士様、後であなたもいらっしゃいな。それまで、ばてないでね」
そんな言葉へ不敵に微笑みを返したブレンダは目配せ一つ。合図を受けたアーリアとヴィリスが大広間の中央へ踏み込んだ。。魔方陣へは、ピンヒールの爪痕を忘れずに。
「ティベリヤの乾き――昔々、恐ろしい吸血鬼のお話を読んだことがあるわ」
アーリアは思う。その伝承の人物がまさかラサに居るとは。
「博識ね、可愛らしいお嬢さん」
「まあ、お世辞?」
「心からの言葉よ」
「そうね、おとぎ話にだってなっているもの」
「あら、わたくしも有名になったものね」
「お眼鏡に叶う美貌の三人よ、一緒に舞踏会でもどう?」
艶やかな言の葉と共に、熱線が走る。
レディの胸の中心を穿ち抉り――傷も衣装もみるみると塞がった。
再生能力か。
吸血鬼、怖くて怖くてたまらない。
けれどヴィリスは一人ではない、だから。
「私たちのパ・ド・トロワをどうぞご覧あれ!」
「なら、しっかりついていらっしゃいな」
放たれた混沌の波がレディを飲み込み――闇を切り裂いて飛来したレディの豪剣を、ブレンダは二振りを交差させて受け止めた。両方のかかとが石畳を抉りふたえのわだちを描く。
人の領域を逸脱した魔種の剣は重く、速く、鋭い。
だがブレンダは片足の先を軸に、弧を描いて身体を反転、重心の移動を上乗せした一撃を刻む。
――其れは刃烈婦の命。戦場に居続け戦い抜いた証。
この傷は癒えることなく――だが真横一文字に駆けたレディの傷が再び消え失せた。
それに赤いドレスも元通りに見える。
これはおそらく再生ではない。つまり先程のアーリアの一撃も有効打であった証左。
「ファティマ、何を遊んでいるの?」
「ごめん」
コウモリの群れに変じたファティマが一行へ襲い来る、その瞬間。
「そうはさせません」
オリーブが放った無数のクォレルに撃ち貫かれる。
幻想種の姿へと戻ったファティマが転げ、苦しげに呻きながら立ち上がる。
「……」
「これが弱点ですね」
予想通り。変化はしていても元が一つならば、全てを一斉に傷つけたなら損害はより大きくなる訳だ。
頭の中も、胸の内も、耐えがたい。
(もはや正気を保つのも難しいか)
急がねばならないが――癒やしの術式を展開したリースヒースは思案する。
現状の戦況は五分五分といった所か。どうにか下支えしているが、長引かせたくはない。
多少の興味としては『女』の姿となった自身にレディ・スカーレットがどのような反応を示すかだが。
「素敵よ」
耳元の声音に怖気が走り、間一髪、斬撃をかわす。
「だあめ、浮気なんて、させてあげないわ」
アーリアは投げキス一つ、レディ・スカーレットが紡ぐ術式が霧散する。
「――ッ」
「何を企んでいるかは知らないけど、気に食わないのよ貴女!」
●呪縛 I
一千年も彼女は孤独だった。
一千年も彼女は何も出来なかった。
一千年も彼女は封じ込められていた。
一千年も彼女は。はじめから、ずっと、ずっと、ずっとずっと。
宮殿の最奥は、一際豪奢であり、一際瘴気に満ちていた。
空気が澱む接見の間に足を踏みいれたクーアとリカは、玉座に座るリリスティーネを見据える。
「不遜な肩書を聞いて何事かと思えば、実態はまるであの妙な宝石の傀儡……」
リリスティーネは曖昧な微笑みを浮かべたまま、踏み込んだ一同を見据えていた。
「いらっしゃい、お客人方」
それは言った。
「姫様……なぜそのように……お気をたしかに」
侍女エルナトが立ちはだかり、細剣を抜き放つ。
だがかなり消耗しているのだろう、足元がふらついた。
「あの姿のどこが女王だと言うのです」
それは空っぽだった。
威厳も傲慢も、あるいは彼女が為してきた悪徳さえも過去に過ぎないとでもいうかのように。
「欲望のままに力を振るう気持ちはどうだったのかとか、紅結晶の事とか言ってやりたかったのに……」
まるで抜け殻ではないかとリカは眉を顰めた。きっとそれは哀れな女王なのだと。
「せめて苦まず逝きなさい……私はリカ・サキュバス、悪夢を喰らう夢の女王よ!」
「兎角、月下に女王はリカ一人で充分なのです。我らが全力を以て解放して差し上げましょうか!」
飛び出したクーアとリカへリリスティーネが片手をあげ、血の槍が降り注ぐ。
身体中が熱に苛まれる。
「やってくれるわね」
リリスティーネの一撃一撃に、他の吸血鬼とは比にならない濃度の瘴気が感じられる。
近づけば近づくほど、その烙印さえ進行を早めるだろう。
「大層な呪いですね……」
それでもリカはリリスティーネに魅了の夢魔術を放つ。
「……効かないわよね、でもね、これが心を支配する魔王としての礼儀よ?」
闘争は続く、引導を渡すまで。
天井にぶらさがる無数の晶獣が殺到する。
「さて、ラサの大乱もこれが大詰めですか」
ロウランは腰に手を当てて溜息を吐く。
結局分析を繰り返しても、これといった解析をする事は叶わなかった。
「とりあえず、烙印持ちはリリスティーネさんに近づくと危ない気がしますし、烙印のない私たちで倒しましょう……と言いたいところですが」
ロウランは仲間が次々にリリスティーネの攻撃を受け烙印を押されているのをじっと観察する。
彼女の攻撃には強い烙印の呪いが掛けられているのだろうとロウランは考えに至った。
「厄介ですね。でも、手加減はしません。私の攻撃が緩むなど……期待しないでください?」
――風の糸の結界は……あなた達を綺麗に散らす。
そして絶対零度の魔導は、吸血鬼とて凍てつかせ。
激闘は続いていた。
エルナトは防戦に追い込まれつつある。徐々に終わりの時が近付いているかと思われた。
その時だ、リリスティーネは鷹揚げに玉座から立ち上がると再び片腕をあげた。
無数の血槍が豪雨のように一行へ降り注ぐ。疼き、烙印が花開く。
因縁なんてありはしないが――飛呂と世界は戦場を見つめる。
「でも苦しめられてる人や仲間を見た」
戦いの最中、飛呂の身体にも烙印は刻まれていた。
「はっ、この程度で俺の愛情塗りつぶせると思うなよ! 俺の愛は女王になんか向けない」
向けるのは銃口だけだと、飛呂は狙い澄ます。
飛呂の怒りは博士にも女王にも向けられていた。
腹立たしくてたまらないのだ。
「なあ。向けられた敵意も愛情も、ちゃんと見ろよ。俺は怒ってるけど、そうじゃない人もいるだろ」
きちんと向き合えと飛呂は弾丸に想いを込める。
世界にとっても、今回の事件に深く関わったわけでもなくば、ラサへの思い入れも……無くはないがほんの僅かだろう。そんな世界が何故此処へ立っているのか。答えは明確だった。
「ここにはアイツがいる。それだけで死地に身を投じる理由に値する」
エルスのために世界はこの戦場に存在していた。
「何故かって?」
独白は戦場の剣檄に飲まれ、誰にも聞こえて居なかったが。
「そりゃ退屈を紛らわす面白い話(恋バナ)を聞けなくなるのは俺にとっても十分な痛手だからな」
それで良いと世界は己の手に剣を顕現させる。
前へ出るエルスの支援をするため、世界は戦場の只中へ駆け込んだ。
至東もまた抜刀、踏み込む刹那の一閃。
「この至東、恥ずかしながら、目についた吸血鬼というだけで、斬りとうございます。
哀れにも激情に狂う女の、戯言と知ったなら、その首、落とされませ」
狂っているのだと自覚はあれど、身に染みついた動きは、違わぬと至東は笑みを浮かべる。
刀身は接見の間の証明に煌めき、至東の頬に赤い血が飛び散った。
「何十何百と繰り返してきた手口でございますが、サテ吸血鬼にどれほど通じるものか――」
血を流せ、吸血鬼と至東が吠える。
「そもこの身は、嫁ぐべき帝を決めて作られたモノ。吸血鬼などに堕ちるいわれはございません」
「結局、リリスティーネとはその実、生まれながらに堕落していた吸血鬼だったのね」
シャルロットは玉座の上のリリスティーネへ顔を上げる。
「いいでしょう。同じ異界より召喚された吸血鬼として、引導を渡してあげるわ」
群がる多くの敵を射程に捉えたシャルロットは接見の間を走った。
同じ吸血鬼として血を吸う度に彼女の紅剣は輝きを増す。
「堕落したとて貴様の血は甘美よな」
その身に烙印を宿したシャルロットは不敵に微笑んだ。
「呪えるならば呪え、そなたの血の呪いなど、振る舞いすぎて薄れておるわ!」
●ティベリヤの乾き II
(ミーナなら帰ってこれる。友のイーリンも傍にいる)
――口づけだって、交したから。
だから大丈夫――念じるようにレイリーは戦場へ斬り込む。
「幸潮、私の背を頼むわよ」
一瞬だけ幸潮を見遣ったレイリーは笑顔で背を向けた。
短い付き合いだが幸潮の事を信頼している。
――我が肯と恋慕の彼は紫電たる願望機と共にこの戦場を駆け抜けることだろう。
幸潮もまた同じ気持ちでこの戦場に立っていた。ならば、己のすべきことはレイリーを支える事。
「当然だ。『傲慢』たる汝が欲──終幕まで『我』が紡ぎ続けよう」
その為に『夢野幸潮』はここに立っているのだと笑みを零す。
「私の名はレイリー=シュタイン。吸血鬼ファティマ、会いに来たわ!」
ファティマの前に手を差し出したレイリーはダンスに誘うように強い眼差しを向ける。
「貴女の主、レディ・スカーレットの企みは阻止するわ」
「月光に当てられ狂い咲く血の花よ。晶涙の感動を以て踊るがいい」
レイリーの魅力を歌う幸潮の瞳には彼女が美しき騎士に見えただろう。
「貴女の主は女王様? スカーレット? それとも、昔の仲間? ねぇ、貴女の心にいるのは誰?」
囁くレイリーの声にファティマは距離を取る。
「レディ、私の主は一人だけ」
「でも、今だけは私を見てよね!」
「別にいいけど」
「……吸血鬼であり、魔種。天義の異変にも関わりがありそう、とのことですが……なにを、目的としているのか。少しでも、情報が得られたなら、良いのですが」
ネーヴェの疑問は当然だった。
それに足元の魔方陣。
レディ・スカーレットの目的は何なのだろうか。
情報を取りこぼさないように注意深くネーヴェは戦場を見渡す。
現状では破壊は難しいだろうか。否、その可能性を自ら捨てるなどあってはならない。
「貴女の思い通りには、させられない」
この先の未来のためにも。
ネーヴェは魔法陣へと全力の魔力を解き放つ。
「やあね、何をしてくれるの?」
激しく明滅する魔方陣へ視線を送ったレディ・スカーレットが視界から掻き消えた。
その瞬間、ネーヴェの眼前に現われた彼女の剣が首へ迫る。
澄んだ音と共に、剣を弾いたのはクロバだった。
「やらせはしないさ。そして謎の一端、その真実を解き明かさせてもらう」
「――ッ!」
爆音と共にクロバの剣が加速し、袈裟懸けに斬る。
「ファティマの様子からも、アンタが鍵だ。再反転だか多重反転だかに、アンタ一枚噛んでいるな」
現状、少なくとも判明していることはいくつかあった。
一つ、この魔方陣は破壊出来ること。
二つ、博士は錬金術を用いて反転の研究をしており、吸血鬼は擬似反転であること。
三つ、レディ・スカーレットは博士と技術交換をしていること。
――錬金術は俺と父を繋ぐもの。本気にもなるさ。
その神秘。俺の傲慢(エゴ)が解き明かし、分解する。
阻止の方法は理解出来た。
だが実行は一筋縄ではいかないだろう。
「けれど、これ以上の犠牲者を出す訳にはいきません」
沙月は狙うはレディ・スカーレット。
抜いた刀で道行きの晶獣を払い、沙月は吸血鬼の元へと走り込んだ。
「大規模な術式を使える敵を逃す訳にはいきません」
「ふふ、貴女も中々に美しいわね。コレクションにしたいぐらいだわ」
レディ・スカーレットの指先を払い除けるように沙月は刀を振り抜く。
「もう少し遊びましょうか? ねえ?」
可愛いお嬢さんと微笑むレディ・スカーレットの懐へ沙月は踏み込んだ。
研ぎ澄まされた刃が敵の胴を血に濡らす。その血が解け蝙蝠となって再び沙月の前に現れた。
「やるわね、貴女」
楽しげに唇を歪めるレディ・スカーレットの瞳に沙月の刀が映り込む。
「さあ、もっともっと踊り明かしましょう」
魔方陣を切り刻みながら、ヴィリスは敵陣へ術式を紡ぎ――遂にネーヴェの三撃目で、魔方陣は閃光と共に光りの破片と砕けた。
そして――
「晶竜は撃破しました」
大広間へ飛び込んできたのはドラマだ。
「エントランス、ホール、中庭は赤犬、凶、レヴィナスカが制圧しておりますわ!」
続けたヴァレーリヤの表現はやや誇張が含まれて居たが、半分は事実である。
辺りの戦域から味方の援軍が城内へ突入を開始していた。
「私達はこのまま加勢するね!」
マリアの声を皮切りに、イレギュラーズが次々に大広間へ足を踏み入れる。
初めてレディ・スカーレットの表情が変わった。
「それでは約束の話でも?」
「何のことだったかしら。けれど一つだけおしえてあげる」
「……」
「――多重反転」
リースヒースの問いにレディ・スカーレットはとぼけ、ファティマを抱き寄せ闇へ溶け消えた。
「……次は天義だな」
クロバが呟く。
あとは雑魚の掃討と、それから――
――そんな城の外郭をミーナ達を乗せたパカダクラとラムレイが駆けていた。
脳髄を灼く甘い疼きは、熟れすぎた果実の苦みのように心を蝕む。
けれどそんなことは言ってはいられない。
「どこに居るかは、だいたい分かるんだ」
「切り拓くのはミーナ、帰還はイーリンが。だからマリアが守り切る」
マリアは中庭方面へ殺到する晶獣を追い抜きざまに斬り捨てる。
「本当、どこに居るのよ」
イーリンのぼやく通り、そしてミーナの観測通りに、おそらくディルクは中庭方面から正門へ向けて敵をなぎ払っているに違いない。
最も敵の多い場所を、たった一人で、何に怯むこともなく。
結果的にミーナ、マリア、イーリンもまた大量の敵を相手取る羽目になった訳ではある。
だが視点を変えれば中庭付近の激戦区を援護していることにもなった。
ともかくまずはディルクを発見せねばなるまい。
「敵は無尽蔵、私達は三人。向かう先は敵の中枢、答えは――強行突破一択ね」
「乗りかかった船だ、付き合うぜ」
「ああ、全て守ってみせよう……一応言っておくが、全部にはイーリンも含めている、ぞ?」
口角をあげ、三者は敵陣へ肉薄、一斉に斬り込んだ。
どれほど斬ったろう。
どれほど傷ついたろう。
永劫に続くかと思われた浸透戦術は――
「人のこと散々口説いておいて、何ポッと出の女王に口説かれそうになってるのよ」
「あん?」
イーリンが嘯く。
「単刀直入に言うぜ。あんたの姫さんが宿命に決着つけに向かってる」
ミーナの剣が晶獣を切り裂いた。
「手伝わずとも、見届けるのが男の甲斐性だろ!」
「昔の晶竜相手の借りを返すわ。特等席でお姫様の勇姿を見させてあげる」
現われたのはもう一頭の、魔書より顕現した伝説の牝馬ラムレイだった。
ディルクを接見の間へ送り届けるには、中庭の激戦区と大広間を切り抜けるしかない。
もっともこの男が居るならば、そしてこの三名であればどうにでもなるだろう。
●呪縛 II
――本当はただの一つだけだった。
望みなんて些細なものだった。
七つ罪を犯し続けることさえ、本質ではかった。
彼女は呪縛に蝕まれていた。
本当は、ただ――
「さぁ、愚者の行進だ! 道を開けろ!」
ファニーは星を纏いながら一直線にリリスティーネの元へと駆け抜ける。
その身を穿つ攻撃など見向きもしない。
女王以外の相手はしない。何があろうと一歩も退かない。
「このまま終わっていいのかよ! 誰にも聞こえない場所で誰かを呪い続けるなんて寂しいだろ!
アンタが言いたかったこと全て皆に伝えてやる!
アンタが死んだら、この国(ラサ)を喪に服させてやる!」
たとえこの身に宿したのが呪いなのだとしても、偽りだったとしても。
胸を焦がす想いは愛情だ。
だからどうか、その心に寄り添わせてくれよ。
「なぁ、リリ様」
何故なにも答えない。
「――それは私(呪縛)が私(リリ)だからよ」
そう思った時、突如リリスティーネが表情を変えた。
「あれが女王……」
ハンナは「何だか様子が妙だ」と首を傾げる。
「何かあったのでしょうか?」
明らかにリリスティーネは常軌を逸している。
リリスティーネとエルスが話し合える時間を作りたいとハンナは此処までやってきたのだ。
「……と、心配はここまでに致しましょう」
自分もこれから挑まねばならない人がいる。ハンナは剣をエルナトに向けた。
「大変申し訳ないのですが、退くつもりはありません。貴女はここで止めさせていただきます!」
エルスの邪魔はさせまいとハンナは剣を振り抜く。
それを受け止めたエルトナもまた一歩も引けぬ立場であった。
「あまり長くはもたないと思いますが、決して無傷では通しませんよ!」
「また様子がおかしいのかな」
ともかく烙印などというものを刻む相手は看過出来ない。その元凶は討伐の必要がある。
それに個人的にも、その事情はあった。
星の杖を握り締めたフォルトゥナリアは自己強化の術式を組み上げる。
彼女の周りに魔法陣が浮き上がり身体が光に包まれた。
「後ろは任せて!」
傷付いた人達を支えるのがフォルトゥナリアの役目である。
倒れて挫けそうな心をフォルトゥナリアの癒やしが支えとなって、立ち上がる勇気が湧いてくるのだ。
煌めく閃光を携え、彼女は戦場を駆け巡る。
そんな玉座の間、激戦の中、絨毯の上を一歩一歩と進んでいったのはエルスだった。
「……ねぇ、そう言えば私達。 まともに言葉を交わした事はあったかしらね?」
リリスティーネの顔が微かに歪み、掻き消える。
鋭い爪の一撃を、エルスはかろうじて大鎌ではらった。
「……あー、あー」
「ッ!」
リリスティーネが飛びすさり、再び血槍が降り注ぐ。
「ないんじゃない? それより」
宙空に浮かぶリリスティーネは、おかしなことを言いだした。
行動と言動が、まるで一致していない。
「一体何を?」
「美味しかった? 私(呪縛)の血」
「……」
「紅茶に、毎日、毎日、溶かした血」
続く爪撃を払ったエルスの背を、薄ら寒さが包んだ気がする。
血を毎日とは、何を言っているのか。
「耳を貸すでない、尋常ではないぞ」
刀を抜き放つ夢心地が、エルスを背に庇うように歩み出た。
鬱金香に変わり遂に紫陽花となった髷――烙印が鮮やかに花開く。
「私(リリ)を殺せば、私(呪縛)が消えるだなんて、本気で信じているのかい?」
「……誰なの?」
「私(呪縛)は私(リリ)よ、お姉様」
リリスティーネが哄笑し、烙印が強く蝕む。
「このまま月と一つになりましょう、さあ、さあ、さあ!」
呪縛の気配が濃密さを増し、瘴気に溺れてしまいそうに思えてくる。
数名のイレギュラーズが烙印へ手をあて、奥歯を食いしばった。
「さあ、おいで。こちらへ……」
リリスティーネが両手を広げ、小首を傾げた。
「……呪われろ」
それでも踏み込んだハンナの前に、再び決死の形相のエルナトが立ち塞がり――
駆けるハンナの斬撃がエルナトを貫いた。
花びらが散り、エルナトが膝を付く。
「ひ、め、さま。お逃げ、くだ……」
そしてエルナトはそのまま縋るように、リリスティーネの足元へ這い寄った。
「君は愉快な玩具だったよ。あなたは愉快な玩具だったわ」
術式が貫き、エルナトが一握の花びらとなる。
「さあ、このまま全て呪ってやろう」
「何かが居るということね」
「何かなんて、他人行儀じゃないか」
リリスティーネの身体から数度、放射状の瘴気が駆けた。
月の宮殿全てを包むほどの濃密な呪いの気配がする。
頭が酷く痛む。
胸が焼けるように苦しい。
呪縛の力が宮殿中を駆け抜け、
けれど――胸の奥底に、エルスは微かな気配を感じていた。
「この感覚……きっと私は知っている」
眼前の存在へ、リリスであってリリスではない何かへ抗う、小さな、けれど温かな力。
それを解き放つようにエルスはそう願いを込めた。
その瞬間だった。
接見の間に張り詰めていた瘴気を打ち祓う何かが輝いた。
リリスティーネの表情が、初めて歪んだ。
驚愕に目を見開き、僅かに口をあけた。
「おい、ふざけるなよ」
リリスティーネへと肉薄するラダの表情は苛立ちに歪んでいた。
「一連の事件を起こしたからではなく、私の意志を勝手に歪めようとしてくれたからこそ
どちらかが折れるまで戦う意味があるというのに、そのザマはなんだ」
――そんな腑抜けた体たらくで終わる事はゆるさない。
――何よりも私の命にふさわしい者でなくば許さない。
「女王よ。例えそれが偽物であろうと、私が本物へと変えてやる!」
ラダはリリスティーネへ銃身を向ける。
「受けて立てよ、女王」
唸る弾丸がリリスティーネの胸を打ち貫いた。
「そもそも誰だ、そこに居るのは」
「だから言っているじゃないか」
リリスティーネが――リリスティーネに潜む彼女ではない何かが笑う。
「あなた(呪縛)は呼んでいないわ。リリスティーネ、私が知りたいのは貴女」
エルスがリリスティーネを見据える。
開きなさいとエルスは妹に『命令』する。見せなさいと手を伸ばした。
それは『姉』故の傲慢さであったかもしれない。
「――本当に? 理解しようと思ってるの?」
呪縛が答える。
「理解しようとしているわ」
嘘だ。と、呪縛はエルスの言葉を否定した。諦めにも似た棘がエルスの心に突き刺さる。
きっと、以前の彼女ならそのまま踵を返し立ち去っただろう。
「解り合えないと思っていた。だって貴女は私から逃げてばかりだったもの」
そうだ。リリスティーネはエルスから逃げてばかりで、向き合おうとしなかった。
けれどそれは、エルスとて同じではないか。
ハッとエルスは顔を上げる。
――ああ、そうだ。
「だけどもう観念なさい……」
その言葉はリリスティーネに向けたもの。そして自分自身に向けたもの。
リリスティーネに向き合えていなかったのは自分も同じだとエルスは唇を噛みしめた。
だから、だからこそ!
「……私はもう『解らない』で居たくないのよ!」
エルスの叫びが接見の間に響き渡る。
「麿は強い人間では無い」
夢心地は戦場で小さく呟く。
刀を握る手が、リリスティーネを斬らせてくれない。
「じゃがな、Ers・tine」
あのどうしよもなく不器用で、どうしようもなく一途な女子。
彼の地に残してきたわが娘のような少女の姿だけは見逃さない。
そして夢心地は、呪いに――烙印に逆らうのをやめた。
刀を構え一行の前に立ち塞がる。
「殿!?」
誰かが眉をひそめた。
リリスティーネの放つ瘴気は、烙印の進行を加速させる。
もしかしたら夢心地は、もう――
吸血鬼へと変貌を遂げたのだろうか。
緊迫した空気が戦場を覆っていた。
夢心地はリリスティーネを庇うように立ち塞がっている。
――あるいは、その真意を捉えられたのはエルスだけだっただろうか。
リリスティーネへの斬撃いなした夢心地は突如自らの腹を愛刀で貫いた。
「――ッ!?」
烙印の狂気に身を預け、けれど共に貫かれていたのはリリスティーネだった。
夢心地ははらりと紫陽花の花びらを吐き、リリスティーネが喀血する。
「こうでもせねば、麿は麿でなくなってしまったろう」
決死の覚悟が紡ぎ上げた隙を逃すイレギュラーズは居なかった。
よろめき唖然とするリリスティーネ――呪縛を一行の猛攻が襲う。
そしてエルスは床を強かに蹴った。
大鎌がリリスティーネを切り裂く。
「姉様……」
リリスティーネが崩れ落ち、膝を付いた。
辺りを包む瘴気が急速に薄れていくのが分かる。
呪縛は――リリスティーネの中に潜む呪いの根源は、悶え苦しんでいた。
呪っている。
誰をも、彼をも。
今も呪い続けている。
けれどもう、誰にも届かない。
だからようやく言える言葉がある。
――私を見てお姉様――始祖、月の王。
胸から刃を引き抜く刹那、その視線が交差した。
僅か一瞬、けれどリリスティーネの瞳は、その輝きは、これまでとはまるで違っていた。
「……やっと、見てくれた」
既に今際、崩れ落ちるリリスティーネが、ゆっくりと顔をあげる。
「……え、様」
「本当に、本当に……馬鹿な子」
ちゃんと残っていたではないか。
エルスが妹をしかとその瞳に映したのは、初めてだったかもしれない。
「貴女の心――呪縛から解き放ってあげる……だって私は貴女の姉なのよ、リリー」
腕の中で微かに笑んだリリスティーネがその両手を伸ばし、指先が頬へ触れた。
――私を見て。
リリスティーネの身体が徐々に軽くなって行く。
足先から花びらへとかわり、舞い散っていく。
こうすることが、きっと宵闇の女王の責任だった。
花びらの最後の一枚が、エルスの手のひらから宙へ溶け消えるのを見届け――
それが呪縛と、そしてリリスティーネの終わりだった。
祝福を得たエルスは、これから全てを知るのだろう。
彼女にはごく近く、大きな変革が起きるのだろう。
けれど今は一握の真実と厳かな勝利だけを喜ぶべきか。
――見上げれば、月なんてもうどこにも居やしなかった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼お疲れ様でした。
MVPは決死の覚悟を示した方へ。
それではまた、皆さんとのご縁を願って。pipiでした。
GMコメント
pipiです。
決戦ですね。
克服すべき古の呪縛を断ち切り、過去を取り戻し、未来を勝ち取りましょう。
●排他制限
こちらのRAIDに参加した場合、他のRAIDには参加出来ません。
●目的
・リリスティーネの殺害(必須)
・レディ・スカーレットの阻止(必須)
・怪物や吸血鬼などの敵の撃退または討伐(努力目標)
●フィールド
月の王国、宮殿内です。
〇中庭と渡り廊下
魔血を吸った深紅の元白薔薇が咲く庭園です。
『敵』
晶竜(キレスアッライル):サラーサ・アシャル
13の魔物を混ぜたキメラです。
毒の炎を吐く他、強力な物理攻撃を行います。
吸血鬼×数体
元幻想種の奴隷です。
可哀想ですが擬似魔種です。
魔術などを操ります。
晶獣:サン・エクラ×たくさん
小動物や小精霊などが、紅血晶に影響されて変貌してしまった小型の晶獣です。
鋭い水晶部分による物理至~近距離戦闘を行うことが多いです。
量産型天使(?):×多少
つぎはぎだらけの、翼が生えた人型の怪物です。
飛行しながら遠距離物理攻撃を行います。
『味方』
普久原・ほむら(p3n000159)
皆さんと同じイレギュラーズです。両面戦闘型アタックヒーラー
闘技用ステシよりは強いです。
ディアナ・K・リリエンルージュ(p3n000238)
練達の旅人。一応イレギュラーズです。
一部の敵が、練達や天義でも悪さをしていることを調査をしています。
両面戦闘型アタックヒーラー。割と普通に戦えます。
今後のために、今から協力関係を築いておくのも良いでしょう。
〇大広間
レディ・スカーレットが何らかの儀式を行っています。
魔方陣の破壊、敵の撃退などによってこれを阻止してください。
『敵』
魔種:レディ・スカーレット
天義の伝承に記された吸血鬼です。こちらは色欲の魔種。
剣技と魔術を非常に高い次元で行使します。
何らかの別の目的を有していると思われます。
戦意が高くなさそうなのが救いです。
吸血鬼:ファティマ・アル=リューラ
元幻想種の吸血鬼です。
血は花びらとなり、水晶の涙を流します。
魔力の大鎌による近接攻撃、魔術攻撃、コウモリの群れ化、霧化などを行います。
保有BSはHA吸収、出血系。
言動や行動に他の吸血鬼と違った奇妙な揺らぎが見えます。
推測ですが、完全な『反転』をしている可能性があります。
吸血鬼×数体
元幻想種の奴隷です。
可哀想ですが擬似魔種です。
魔術などを操ります。
晶獣:サン・エクラ×たくさん
小動物や小精霊などが、紅血晶に影響されて変貌してしまった小型の晶獣です。
鋭い水晶部分による物理至~近距離戦闘を行うことが多いです。
量産型天使(?):×多少
つぎはぎだらけの、翼が生えた人型の怪物です。
飛行しながら遠距離物理攻撃を行います。
レディ・スカーレットに従って行動しています
〇接見の間
最奥にリリスティーネが居ます。
敵を排除して下さい。
月の女王:リリスティーネ
エルスさんの義妹です。
残虐で冷酷無比な性格のはずでしたが、今は虚ろです。
魂のほとんどを喪失し、呪縛によって動いている状態です。
擬似魔種の状態であり非常に強力です。
能力:
全てのステータスが高く、回避、反応、EXAが特に高い両面スピード型です。
・爪(A):物至列、毒、猛毒、致死毒、廃滅、出血、流血、失血、変幻大
・エナジードレイン(A):神中単、HA吸収大、多重影大
・不明(A):効果不明。物理に関わる大技。
・不明(A):効果不明。神秘に関わる大技。
・呪縛の魔眼(P):ターン開始時、神中範に自動発生。高命中、不遇、不運、呪縛、魅了、恍惚、懊悩、呪殺
・闇のカリスマ(P):高確率の烙印付与。
また烙印状態のキャラクターがリリスティーネの半径40m以内に近付いた場合、以下が発生。
烙印経過速度の異常上昇。
毎ターン80%の確率で3TのBS『魅了』を受ける。
・古の呪縛(P):特定BS系統(不明)数種類の影響を受けない。おそらく『心』に関連する。
・不明(P):自動発動型の防御能力。
・不明(P):HP/APに関わるもの。
・飛行(非戦)
剣の寵姫:エルナト
リリスティーネに従う旅人(ウォーカー)の女性です。
前衛両面トータルファイター。
剣術に優れ、また魔術も行使します。
月の王国の吸血鬼となりましたので、スペックが向上しています。
血は花びらとなり、水晶の涙を流します。
コウモリの群れ化、霧化なども行います。
吸血鬼×数体
元幻想種の奴隷です。
可哀想ですが擬似魔種です。
魔術などを操ります。
晶獣:サン・エクラ×たくさん
小動物や小精霊などが、紅血晶に影響されて変貌してしまった小型の晶獣です。
鋭い水晶部分による物理至~近距離戦闘を行うことが多いです。
『味方』
・傭兵団『赤犬』の精鋭×20
ラサの傭兵団『赤犬』の精鋭達です。
皆さんと連携して行動してくれます。またお願いなどがあれば聞いてくれます。
●その他の味方
『赤犬』ディルク・レイス・エッフェンベルグ(p3n000071)
王宮内のどこかに居るはずです。
勝手に暴れているでしょう。
●エルスさん
心の奥中で、何かか細い力のざわめき――祝福のようなものを感じます。
これを強く願った際、リリスティーネの力が僅かな時間だけ大幅に低下すると思われます。
たとえば烙印におかされた仲間に降りかかる災いの低減なども含みます。
●他
他の戦場の状況に応じて、こちらの戦場に味方の増援が出現する可能性もあります。
●フィールド特殊効果
月の王宮内部では『烙印』による影響を色濃く受けやすくなります。
烙印の付与日数が残80以下である場合は『女王へと思い焦がれ、彼女にどうしようもなく本能的に惹かれる』感覚を味わいます。
烙印の付与日数が残60以下である場合は『10%の確率で自分を通常攻撃する。この時の命中度は必ずクリーンヒットとなり、防御技術判定は行わない』状態となります。
●特殊判定『烙印』
当シナリオでは肉体に影響を及ぼす状態異常『烙印』が付与される場合があります。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●Danger!
当シナリオにはパンドラ残量に拠らない死亡判定が有り得ます。
予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
行動場所
以下の選択肢の中から行動する場所を選択して下さい。
【1】中庭と渡り廊下
多数の敵が残存しています。
徹底的な攻勢を加えて下さい。
この戦場の戦果が、他二箇所の効率に直結します。
またここには味方としてディアナが居ます。
いろいろな事情がありそうなので、今のうちに交友を深めても良いでしょう。
【2】大広間
レディ・スカーレットが恐るべき儀式をしているようです。
多数の敵を撃破し、儀式を阻止しましょう。
【3】接見の間
多数の敵を撃破し、リリスティーネに引導を渡して下さい。
彼女を倒すことが吸血鬼への対処になると予測されています。
【4】その他
何か出来そうなこと。
※シナリオに関連のない行動は、採用率が低くなる可能性があります。
Tweet